2024年09月23日

ツィゴイネルワイゼン 邦画 1980年

ツィゴイネルワイゼン 邦画 1980年(昭和55年) 2時間24分 動画配信サービス

 タイトルは聞いたことがありますが、映画は、初めて観ました。
 シュールレアリスム(超現実主義。じっさいには、目には見えない世界である思考、意識、夢などを絵にする)の映画だと思いました。
 怪談話、妖怪、スリラー、ホラー、性風俗、まあ裏世界の雰囲気がただよっています。
 この映画が製作された日本の時代によくあった男尊女卑(だんそんじょひ。妻は給仕(きゅうじ。召使(めしつかい)のようなもの)、女性蔑視(べっし。男子が女子をさげすむ)、女性差別、映像には、障害者の人権侵害にも触れるようなシーンもあります。半世紀ぐらい前、日本はそういう時代でした。

 鈴木清順監督(弟さんがNHKアナウンサーだった鈴木健二さんだったことは知りませんでした)、原田芳雄さん、大谷直子さん、藤田敏八(ふじたとしや)の三人さんを中心にストーリーは流れていきます。ほかに、身体障害者役の旅芸人さんたち3人が出ていて、なかなかいい演技を披露されています。春歌(しゅんか。性風俗の楽曲、歌)がおもしろい。

 死体、裸体、芸者、カニ、ウナギ、毒薬、(赤い)人骨など、芸術作品なのか、映画の趣旨はわかりにくい。
 不倫、不貞(ふてい。浮気)、夫婦間のイザコザ、人間生活の裏側を表に引っ張り出します。

 パブロ・デ・サラサーテ:スペイン出身の作曲家、ヴァイオリニスト。1844年(日本は江戸時代)-1908年(明治41年)64歳没。ツィゴイネルワイゼンのヴァイオリン演奏者。
 映画では、レコードに、本人の話し声が入っているという話が出ます。録音中に入ったらしい。

 ゆうれいが出たよーーみたいなシーンがところどころにあります。
 宮澤賢治作品、『銀河鉄道の夜(死者の霊が列車にのってあの世へ行く)』の雰囲気を感じました。
 キツネにだまされた。
 ツィゴイネルワイゼンという曲は、人間の悲しみ(哀しみ)を表現してあるように受け止めました。
 ニワトリの絵は、江戸時代の画家若冲(じゃくちゅう)という人の絵に見えました。ち密な描画です。

 『あなた、あたしの骨が好きなんでしょ。透き通った(すきとおった)桜の花びらみたいな骨が取れると思っているんでしょ……』(毒が骨にしみこんで骨が赤くなるというような話でした)

 なんだか、きもい。(気持ち悪い。グロテスク)

 腐り(くさり)かけがいい。なんでも腐っていくときが一番うまいそうです。

 BGM(バックグランドミュージック)が独特です。鈴の音です。それから、柱時計が時を打つ音。
 絵画のような描写の映像です。現実+幻想の世界です。
 
 男は、動物、野獣扱い。

 人間の一番美しい姿は、ガイコツ。

 鎌倉の切通し(きりどおし。鎌倉幕府防衛のための狭い通路)の風景がたびたび出てきます。
 列車は江ノ電でしょう。
 
 グロいけれど笑えます。
 シュールレアリスムの世界です。
 
 主人公の中砂(なかさご。原田芳雄さんが演じている)さんが亡くなりました。山の中で死んでいました。事故死扱いです。麻酔薬みたいなものを吸って死んだそうです。
 中砂さんは、暴れん坊な人なので、観ていて、なんだかほっとしました。
 だけど、そこからまだ長時間の上映時間が残っています。
 どう話をつなげていくのだろう。

 『皮と肉を除いて、ガイコツだけを残すのは可能かね?』(不可能だそうです)

 こども3人の旅芸人のセリフが良かった。
 『今、オニとすれ違いましたよ』

 5年の時が流れました。
 中砂(なかさご)があなた(青地あおち。中砂の友人のドイツ語教授)に貸したあれを返してくださいというやりとりが何度か続きます。
 本そして、ツィゴイネルワイゼンのレコード(額に隠してありました。隠したのは、青地の妻です)
 すれ違いから、女の愛情を屈折した状態で表現してある映画なのか。
 シーンは最初に戻ります。
 鏡。
 怪談話か。小泉八雲(こいずみやくも。ラフかディオ・ハーン)を思い出します。
 
 死んでいるほうは、あたしじゃなくて、あなたのほうなんです。
 洋画、『シックスセンス』を思い出しました。

 鈴木監督も原田芳雄さんも亡くなってしまいました。
 映像を通じて、永遠に生きいかれる人たちです。