2025年01月18日

すぐに忘れてしまう

すぐに忘れてしまう

 加齢で物忘れをすることが多くなりました。
 しかたがありません。
 どんな人でも、そうなるのです。

 歳をとる前はできていたことが、歳をとってから、できなくなってきていることが自分でわかります。
 
 わたしは、ずいぶん前から、『メモをする』ことを習慣にしています。
 着用している洋服の胸ポケットに、折りたたんだA4サイズ白紙のメモ用紙とボールペンが入っています。
 忘れないようにといろいろとメモをしています。

 アルツハイマー型認知症を扱った名作に、『明日の記憶』があります。もうずいぶん前に読みました。主人公の男性が、自分の記憶が消えていくので、メモ魔になるのです。
 読書感想メモが残っています。2008年(平成20年)に読みました。2004年出版の作品で、渡辺謙さんの主演で映画化もされています。
 『明日の記憶 荻原浩 光文社文庫』
 物語の主人公である佐伯部長は自信過剰でエネルギッシュです。典型的な会社人間です。アルツハイマーの彼が運転する車は怖い。(こわい)
 やさしい奥さんには拍手を送りたい。読み手である自分がもし徐々に記憶を失う病気にかかったらどうしようかと腕を組みながら考え込みました。読み進むけれど、哀しくて(かなしくて)、つらくて、そしてスリルもあります。
 日記の日付が進むのが怖い。10月9日から始まる。そして、4月27日が最後となる。だんだん破滅が近づいてくる。ホラー(恐怖)小説のようでもある。佐伯部長は悪あがきをしている。
 記憶が消えるので、佐伯部長は、めったやたらとメモをするのです。でも、病気は進行して、最後は、奥さんのことがわからなくなって、自分が誰なのかもわからなくなるのです。

 たとえばわたしの場合は、今考えていたことが、わずか5分後には、頭の中から消えています。
 次はこうしようとかああしようとか思っても記憶が消えるのです。記憶が消えたことはわかります。自分はさっき、何かしようとしたけれど、何をしようとしたのかを思い出せないのです。
 最初の頃はあせりましたが、今は、まあいいか、そのうち思い出すだろうとのんきに構えるようにしました。たいしたことではないのです。そして、しばらくするとふと、思い出すのです。
 あせらない、あせらない。ゆっくりていねいに、やり忘れたら、思い出した時にやればいい。
 最近は、物忘れをなるべく防ぐ(ふせぐ)ために、思いついたときに、その場ですぐにその行為をするように心がけています。  

Posted by 熊太郎 at 07:01Comments(0)TrackBack(0)熊太郎の語り

2025年01月16日

ドラマ、『ライオンの隠れ家』

ドラマ、『ライオンの隠れ家』 動画配信サービス

 NHKドラマの、『団地のふたり』とか、『3000万』とか、『宙かける教室(そらかけるきょうしつ)』のほうに目がいっていたので、以下の民放ドラマ3本は見落としていました。
 動画配信サービスでざーっと見てみます。ドラマ、『ライオンの隠れ家』と『無能の鷹』と『海に眠るダイヤモンド』です。

 今回は、『ライオンの隠れ家』の感想です。

『ライオンの隠れ家』 TBS金曜ドラマ 午後10時から。わたしは、TVer(ティーバー)で観ました。

小森洸人(こもり・ひろと):柳楽優弥(やぎら・ゆうや)。市役所福祉課職員

小森美路人(こもり・みちと):坂東龍汰(ばんどう・りょうた)。小森洸人の弟。自閉症スペクトラム症あり。

橘愁人(たちばな・しゅうと):佐藤大空(さとうたすく)。彼が、タイトルにある『ライオン』という存在です。まだ幼児です。テレビで最初に見たときは、4歳児か5歳児に見えました。(子役さん本人は5歳児)。家庭に恵まれないこどもという設定で、小森兄弟の家に住みつきます。

 第1話の全編と、第1話から第6話までのダイジェスト版(各10分ぐらい)を観ました。
 わたしには、合わない作品だと感じました。
 
 役所モノ、福祉モノ(DV家庭内暴力とか障害とか、貧困とか)です。

 動物図鑑のエピソードが良かった。(同じ本が2冊あった)

 『プライド』という言葉が良かった。『そのプライドは安全ですか』(プライドは、ライオンの群れという意味)

 親の役割を果たせない親の話です。こどもが迷惑をしています。
 現実社会でも、親の役割を果たす能力をもちあわせていない親はいます。
 親であるご本人が努力してもどうしてもできないのです。しかたがありません。
 ドラマでは、そこをなんとかしようとするのですが、むだです。(わたしは、割り切る人間です)

 こどものめんどうをみることができない親に対して、こどもの立場にある者から言わせると、『サヨナラ』です。もうめんどうをみてもらわなくてもいいです。自分でなんとかやっていきます。

 こどもというのは、いつまでもこどもではありません。こどもでいる時間・期間は案外短い。すぐに成人して、社会に出て、あっという間に、三十代になっていきます。そして、すぐ四十代です。自分で自分のことがやれるような年齢になります。親を頼り過ぎないほうがいい。自分のことは自分でやるのです。

『第10話 愛の掛け違い』
 テレビで観ることができました。
 
 血のつながりについて、DV男が主張します。自分とこどもは、血のつながりがあるから、他人のおまえは関係ない、あっち行け!という主張です。
 血のつながりがあるからといって、暴力をふるわれて、ケガをさせられたり、殺されたりしたらたまりません。わたしはあなたの所有物ではありませんと反論します。あなたに(親に)、支配される筋合い(合理的な理由)はございません。わたしはわたしという人格、あなたはあなたという人格です。

 血がつながっていても、こどもが親を親だと思わなければ、その人は親ではないのです。
 血がつながっていなくても、こどもが親だと思えば、その人は親なのです。
 毒親がいます。
 子離れができない親です。
 いつまでたっても、こどもを支配しようとする親です。
 
 長いこと生きてきて思うのは、親は次のシーンでは、こどもの意見や意向に反対しないほうがいい。うまくいかないと、さきざき親子関係がかなりこじれます。修復不可能なくらい対立します。深刻です。
 シーンとして、進学先の決定、就職先の決定、結婚相手の決定のときです。親はこどもの希望を受け入れるべきです。
 たとえば、父親というのは、娘が結婚したい相手として、どんな男を連れてこようが、『おめでとう』と言うしかないのです。それが、父親の役目なのです。

 ドラマでは、ライオンを演じるこどもさんが可愛い。
 現実のちびっこは、映像にあるような物言いや行動はしてくれませんが、ドラマはいい雰囲気でした。
 
 親というものは、自分が育ててもらったように自分のこどもを育てます。こどもの育て方を教えてくれるのは、自分の親です。なかなか子育てはむずかしい。  

2025年01月15日

ドラマ、『海に眠るダイヤモンド』

ドラマ、『海に眠るダイヤモンド』 動画配信サービス

 2024年秋のドラマで評判のいい3本です。
 NHKドラマの、『団地のふたり』とか、『3000万』とか、『宙かける教室(そらかけるきょうしつ)』のほうに目がいっていたので、以下のタイトル3本は見落としていました。動画配信サービスでざーっと見てみます。『ライオンの隠れ家』と『無能の鷹』と『海に眠るダイヤモンド』です。

 今回は、『海に眠るダイヤモンド』を観てみます。

 長崎県にある、『端島(はしま。軍艦島)』は、わたしがこどもの頃から知っていた炭鉱です。もう半世紀ぐらい前から自分にある知識です。なぜ、いまさらという気持ちも湧きます。また、自分自身が、こどものころに福岡県、熊本県、茨城県の炭鉱町で炭坑長屋(炭住たんじゅうと言っていました)で過ごしたことがあるので、ドラマを観ると、なんだかなあという気持ちになりそうです。過去にじっさいあった現実とは、かけ離れているのだろうなあという気持ちです。(まだ見ていませんが)。見ながら感想をつぎ足していきます。

『海に眠るダイヤモンド』
 昔は、『石炭』のことを、『黒ダイヤ』と呼んだものです。お金になるのです。

 TBS日曜劇場。夜9時

『第1話 地底の闇を切り開く』
 1955年(昭和30年)春。長崎端島(軍艦島。石炭採掘産業のための島)です。
玲央(れお):ホスト。神木隆之介

いづみ:謎のご婦人。宮本信子。(わたしは、昭和三十年代に端島(軍艦島)にいた草笛リナ(歌手。池田エライザさん)か、百合子(炭鉱夫の娘。土屋太鳳(つち・やたお)さん)ではなかろうかと第一話を観てピントくるものがありました。うまく話がつくってあります。(推理ははずれました)
 宮本信子さんを見ていると、NHK朝ドラ、『あまちゃん』の夏ばっぱを思い出します。のんさんのおばあちゃん、小泉今日子さんの母親役、『天野夏』です。

 『炭鉱員』と表現してありますが、当時は、『炭鉱夫(たんこうふ)』と言っていました。

荒木一平:炭鉱夫。国村準

荒木鉄平:一平の息子。神木隆之介(ふた役。昭和30年の人物。もうひと役は、現代のホスト玲央の役。じょうずに設定してあります。現代に生きるご婦人いづみとセットにしてあります。セリフに過去と現在の交流・交差があります)

荒木進平:鉄平の兄。斎藤工(さいとう・たくみ)。第二話でわかるのですが、結婚していた奥さんえいこさんは、台風の時に海に流されて行方不明になったそうです。(亡くなっている)

荒木ハル:一平の妻。鉄平と進平に母親

鷹羽鉱業:炭坑の持ち主。経営主体の会社

 大学卒という設定が不可解ではありました。当時、炭鉱労働者のこどもで大学へ行ける人はいなかった記憶です。高校もなかなか行けなかった。親世代が中学卒で、親が教育に対して理解がなかった時代でした。
 義務教育を卒業したら、炭鉱へ就職して肉体労働をしたか、都会へ出て住み込みで働いたか、ぐらいでした。集団就職でした。NHKドラマ『宙わたる教室(そらわたる教室)』の登場人物であった長嶺省造(ながみね・しょうぞう、演者:イッセー尾形)さんの立場です。
 炭鉱夫を管理・監督する立場である炭坑経営者の側(がわ)の家のこどもだったら大学へ進学できたでしょう。

賢将(けんしょう):鉄平の幼なじみ。鉄平と賢将と百合子は、長崎大学の同級生。同時に卒業して端島(はしま。軍艦島)に戻ってきた。清水尋也(しみず・ひろや)

辰雄:賢将の父。鷹羽工業所の職員。沢村一樹(さわむら・いっき)

百合子:土屋太鳳(つちや・たお)。炭鉱夫の娘。母親はメンタルの病気があるようです。宗教に洗脳されているようなようすもみられます。

朝子:食堂で働く娘。杉咲花さん

草笛リナ:歌手。池田エライザさん

 長崎市の街並みが映像に出てきました。
 なつかしい。最後に行ったのは何年前だろう。思い出してみました。7歳の時、19歳の時、28歳のときに行きました。7歳の時は両親と、19歳の時は高校の友だち数人と、28歳の時は、妻と義父母と観光旅行をしました。妻のおなかの中にはこどもがいました。親戚の結婚式にも顔を出しました。もう義父母もあの世の人になってしまいました。

 長崎ですから、キリスト教の教会が映像に出てきます。
 『あなたがたは、世の光である』。宗教的なメッセージが流れました。

 端島の炭坑は、1974年(昭和49年)に閉山したと出ました。

 昔の端島を再現するわけか。
 明治時代から1955年代(昭和30年代)に栄えた。以降全国にたくさんあった炭鉱の閉山は続きました。たくさんの労働者が仕事を失い、家族は転々と日本各地を引っ越しました。そういう時代がありましたが、もうそのことを口にする人は少なくなりました。苦労した思い出ですから、思い出したくないのです。

 地下600m以上の深い場所で働く。8時間労働の3交代制で、24時間稼働する。(かどう:働く。機械も動かす。現代のコンビニみたいです)。劣悪な労働環境です。恐怖感には慣れるのでしょう。

 現代の女性相手のホスト(玲央役の神木隆之介)と、昭和30年の炭坑職員(一平役の神木隆之介)をどうつないでいくのだろう。この物語におけるひとつのポイントです。

 『人生で、さからうとは』。さからうことがない人生。さからったことがない人生を否定します。さからいなさい!です。

 ビジネスの話です。
 雇う者と雇われる者がいます。人間です。基本的に上下関係はありません。
 でも、現実は違います。
 女性差別がきつい時代です。職業差別もあります。
 炭鉱夫以外でも、いくらでも差別があった時代です。
 会社のえらいさんに、『たかが端島(のくせに)』とばかにされます。
 『言い返しても良かったんじゃないですか』という声があります。
 まあ、会社のえらいさんには、すけべオヤジもいます。頭の中は、女性のおっぱいとおしりのことばかりです。部下も困ります。でもさからえません。ひどい世界です。
 労働者は、労働組合をつくって、雇用主と話し合います。そういうシステムができつつあった時代でもありました。
 
 さだまさしさんが住職の役で出てきたので端島にお寺があったのだろうかと疑問をもちました。調べたらありました。すごいなあ。やはり、人間にとって宗教はだいじなのでしょう。

 『人生を変えたくないか、ここから変えたくないか』(このあたりのセリフ回しがうまい)

 炭鉱町に映画館、あったなあ。炭坑ではありませんが、栃木県の山奥にある銅山の町で暮らした時は、プロレスの興行とか、歌謡ショーとかもあった記憶です。まだこどもだったので、記憶はあやふやですが、労働者家族へのサービスイベントがよくありました。運動会とかお祭りとか。楽しみでした。

 白洲次郎さんという人の本を思い出しました。炭坑とは関連がありませんが、労働者をだいじにした人でした。
『プリンシプルのない日本 白洲次郎 新潮文庫』
 「プリンシプル principle」 著者本人が記した言葉ですが、文中で本人はどう訳せばいいのかわからないと言明しています。「原則」だろうかという解釈になっています。
 あたりまえのことをあたりまえにやりましょうと呼びかけておられると思います。彼の考えの背景には、正直者が馬鹿をみる世の中にしてはいけませんという正義感があります。若者に対する教育に情熱がある人です。

『風の男 白洲次郎(しらす) 青柳恵介 新潮文庫』
 戦後の新しい日本を築くことを目的として吉田茂首相の側近にいた重要人物という位置づけです。白洲氏の信条として紹介されている「自分で見て、自分の頭で考えて、自分が責任をとる」、ともすれば、だれしもが、「力が強いと思われる他人にやらせて、その人に責任をとってもらう」となりがちです。その信条は、本人の気質でしょう。

 若い男女が複数いるので、三角関係になりそうです。じっさいは、四画関係みたいで複雑です。

 映像では、海の夕映えがきれいです。
 途中、炭鉱の立て坑(たてこう)の映像が出るのですが、福岡県田川市にある石炭・歴史博物館で見学したことがある立て坑にそっくりでした。たぶんそこからひっぱってきてある映像なのだろうと勝手な推測をしました。

 動画は、1話から3話まで、ダイジェスト版があって、第7話とあります。第8話はこれから放送です。見ることができる部分だけ見て感想を終えるつもりです。

『第2話 スクエアダンス』
 う~む。想像していたものとなにか違う。なんだろう。なんか、ゆるいのです。(進行とか、内容とか)
 炭鉱の話ではないのだろうか。今回は、『恋愛』と『水』の話です。
 昔はよく停電しました。だから、劇中台風で停電するのですが、映像にあるような大騒ぎはしませんでした。電気がなくても生きていける。台風が去るまでのがまんでした。

 さしあたって、『人生変えたくないか? ここから、変えたくないか!』(これが、ドラマ全体を貫くテーマ(主題)でしょう。

 ホストの売掛金の話が出ます。しばらく前に社会でいけないこととしてニュースで流れたことです。女の人がホストに入れ込んで支払いができなくなって、売春したり、取り立てが、女の人の実家まで押しかけたり、そんな話がありました。

 端島(はしま)では、男女関係の赤い糸がもつれています。いわゆる三角関係っぽいものがあります。
 以下は、わたしの予想です。あたりはずれがあるかもしれません。
草笛リナ:歌手。池田エライザさんは、やがて、荒木進平:鉄平の兄。斎藤工(さいとう・たくみ)と男女の仲になるのでしょう。

朝子:食堂で働く娘。杉咲花さんは、荒木鉄平(神木隆之介)が好きですが、荒木鉄平はまだそのことに気がついていません。

百合子:土屋太鳳(つちや・たお)さん。炭鉱夫の娘は、賢将(けんしょう):鉄平の幼なじみ。鉄平と賢将と百合子は、長崎大学の同級生。同時に卒業して端島に戻ってきた。清水尋也(しみず・ひろや)とできているように見えるが実はそうではない。賢将は、朝子(杉咲花)が好きだとわたしは見抜いているつもりです。そして、百合子は、自分が賢将に愛されていないことを自覚しているのです。

 (現代の)玲央(れお。ホスト。神木隆之介)は、昭和30年の端島(はしま)にいる荒木鉄平(神木隆之介。炭坑で働く労働者とその家族の世話役。労務管理の職務を担当している)

 片桐はいりさんが、映画館のもぎりをされています。
 片桐はいりさんが書いた本を昔読んだことがあります。
 『もぎりよ今夜も有難う 片桐はいり 幻冬舎文庫』(石原裕次郎さんの歌曲「夜霧よ今夜も有難う」にあやかったタイトルでしょう。もぎりは、映画館の入場券のはしっこを切り取る動作です。
 映画好き、を超えて、映画館好き、雑然とした暗い映画館の中にある雰囲気が好きな女子の思い出と映画に対する愛着・愛情の記録です。60代の方が読むと共感が生まれるでしょう。
 最初のほうでは、18歳から7年間、アルバイトで映画館の入場券もぎりをしていたことが、東京銀座の映画館「銀座文化劇場(現在のシネスイッチ銀座)」を舞台に熱く語られます。片桐はいりさんはやがて、映画を観る立場から出る立場(女優)に変わって、もぎりの仕事がやりにくくなり、やめてしまうのですが、心中(しんちゅう)では、一生「もぎり」をやりたいのです。
 
スクエアダンス:アメリカ合衆国のフォークダンス。4組のカップル、8人でダンスをする。指示者の合図に合わせながら隊列を変化させていくそうです。

 『水』の話が出ます。端島では、長崎から毎日、一日三回、船で水が運ばれてくるそうです。
 思い出してみると、島でなくても、昔の炭坑では、水道は、炭鉱住宅があるひとつのかたまりに水道の蛇口が1個あって、共同で使っていたことがありました。
 それから、井戸です。手押し式のポンプが集落にいくつかあって、共同で使っていました。
 いずれにしても、バケツでくんだ水を自宅の台所にあるコンクリート製の甕(かめ)に溜めて(ためて)使っていた記憶です。
 あとは、里山に湧き出る水があると、バケツをもって汲みに行っていました。小学生でも水くみが仕事でした。
 そんなわけで、衛生上はよくない水の使い方でした。今は本当に便利になりました。
 まあ、なにをやるにしても昔は共同でした。がまんして協力して分担された仕事をやらないと生活がやれないということはありました。お互いに助け合うという仲間意識は強かったと思います。

 端島での住宅の部屋割りは、公営住宅の抽選みたいです。
 昔は、公営住宅に入りたい人がとても多かった。
 今はどうかわかりません。家賃が安い民間アパートも増えました。

『第3話 孤島の花(桜のことでした)』
 1957年10月、昭和32年です。端島に水道が開通しました。長崎県からパイプでつないだのでしょう。昭和32年だと、まだ、上下水道が未整備の島はたくさんありました。

 ウソの映画撮影、オーディションの話があります。
 
 いずみ(宮本信子。現代のおばさん)と婚約者の玲央(れお。現代。神木隆之介。昭和30年代の荒木鉄平と二役)です。

 なんというか、設定があまりにも極端です。78歳ぐらいのいずみと28歳ぐらいの玲央が婚約中とは思えません。おばあさんと孫の年齢です。

 ドラマは、『炭坑』の話ではないようです。『恋愛』と、『お金』、そして、『家族とか家庭』のお話です。
 『気持ち』をだいじにしようとしています。

 現代にいるホストの「玲央」は、昭和30年代にいる炭坑労務管理職員の「荒木鉄平」の孫だろうか。
 現代にいる「いずみ(宮本信子)」は、昭和30年代にいる「朝子(杉咲花。食堂の娘)」本人だろうか。

 第4話以降は、TVerで見ることはできませんでした。ダイジェスト版を見てみます。

『第1話から第5話までのダイジェスト版』
 冒頭、女とあかちゃんが、端島を脱出・脱走するように小舟で海を陸へと渡るシーンが出ます。女はだれなのか、そして、あかちゃんはだれなのか。

 炭鉱ですから、労働者と経営者で対立します。昭和30年代ですから暴力も起きます。そういう時代背景でした。昭和40年代になると大学生が暴れます。激しい学生運動がありました。

 昭和の時代の職場でよく用いられた言葉に、『なになに一家(いっか)』というものがありました。「なになに」の部分には、会社名とか、所属名とかが入りました。職場のメンバーは、家族の集まりなのです。協力して仕事を仕上げていくのです。
 こちらのドラマでは第五話で、『一島一家(いっとういっか)』と表現されました。
 第4話では、わたしは観ることはできませんでしたが、『精霊流し(しょうろうながし)』が描かれました。わたしは、実際に精霊流しを12歳のときに熊本の離島で観たことがあります。病死したわたしの父親の精霊舟でした。さだまさしさんの歌曲、『精霊流し』を聴くとそのときのことを思い出して、胸にこみあげてくるものがあります。

 やっぱり、朝子(杉咲花)さんが、いずみでした。

 第6話はわたしの契約の場合動画配信サービスを見ることができないので、次は第7話を観てみます。
 内容は、今の若い人が見たら感動するのでしょう。
 過去という歴史の事実を体験した高齢の世代が見ると、こんなだったかなと首をかしげるでしょう。
 日本人の生活のしかたが、かなり変化しました。

『第6話 希望の種』(パス)わたしは観ることができませんでした。

『第7話 消えない火』
 荒木進平とリナが夫婦のようなものになっている。1歳の息子がいる。
 進平と鉄平の両親である荒木一平とハルは、孫の誕生も含めて喜んでいる。
 賢将と百合子は結婚している。
 鉄平と朝子は、結婚待ちの状態にある。

 でも、海底深くにある炭坑の穴の先端で、ガス爆発が起きます。

 炭鉱の事故で、わたしが自分の人生で知っているところでは、わたしがこどものころにあった、福岡県大牟田市にあった三井三池炭鉱の爆発事故が1963年(昭和38年)でした。死者458人、一酸化炭素中毒が約839人と記録が残っています。
 同じく、福岡県にあった三井山野炭坑(当時の稲築町(いなつきまち)、現在の嘉麻市(かまし))の爆発事故が1965年(昭和40年)で、死者237人、負傷者38人と記録が残っています。
 1984年(昭和59年)福岡県高田町(現在は、みやま市)三井三池炭鉱有明坑で火災が発生し、死者83人が出ています。

 人間は、生きているのが一番です。
 生きているだけで、家族は安心です。
 映像を見ていて思ったのですが、小学生ぐらいのこどもは、『いってきまーす』と言って学校へ行って、『ただいまーー』と言って帰って来てくれたら、何も言うことはありません。勉強ができるとかできないとか、運動ができるとかできないとかは関係ありません。

 ドラマでは、火災をなかなか消火することができません。
 
 進平とリナのこどもであるあかちゃんの演技がよかった。『ごちそうさまでした』の両手あわせのあいさつがじょうずでした。

 いろいろ思うのですが、『産業構造の変化に逆らうことはできません。石炭の時代は終わっていくのです。坑内の火災を消火できてもできなくても、炭鉱は閉山へと向かっていくのです』

 ちょっと気になったのは、女性は坑内に入ることはできなかったというドラマ内の説明でした。
 端島はそうだったのかもしれませんが、福岡県内にある筑豊地区の炭坑では、たしか、明治時代のころから女性も坑内の作業をしていました。労働は過酷で、坑内で出産する女性もいたと聞いたことがあります。(戦後、法令の規制が入ったのだろうか。調べてみました。労働基準法がつくられて、女性やこどもの重労働が制限されたようです)
 自宅の本箱にある一冊の本のページをめくったら、記事がありました。『画文集 炭鉱(ヤマ)に生きる 地の底の人生記録 山本作兵衛 講談社』、100ページに、「それにしても一番ひどかったのは、女坑夫であります…… 短い腰巻き(女性の下着)一つになって、スラを曳いたり(木製の箱型そりをひいたり)、セナを担うたり(運搬用の籠(かご)をになう(かつぐ))、命がけの重労働です……」とあります。
 本の内容はおもに、明治・大正時代の炭鉱の記録です。山本作兵衛さんは、独学で絵を勉強して描かれています。克明な記録です。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の『世界記憶遺産』に指定されています。

『第8話 ダイヤモンド』
 『推理』が主体の内容です。
 苦言を書かせてもらえば、演者がセリフをしゃべっているときに背後で流れる歌詞入りのBGM(バックグラウンドミュージック)がわずらわしい。
 神木くんのひとり語りが長すぎます。聞いていて疲れて暗い気持ちになります。
 
 わけありのあかちゃんは、戸籍がないようです。救済措置はあるような気がします。だから、めげてはいけない。ドラマでは不正な取り扱いがなされています。戸籍がないならないと言って、正直にやればいいと思います。

 秘書のおじいさんが関係していたのね。

『第9話 あの夜』
 名探偵コナンの推理みたいです。

『第10話 記憶は眠る』
 尻すぼみか。人間はもっと自由に生活できます。う~ん。どうかなあ。意図的に一定の枠にあてはめようとしています。
 
 『外勤(がいきん)』という言葉がピンときませんでした。
 外勤:事務室、事務所の外で働く。営業とか、作業とか。
 鉄平さんのお仕事は、社員のために、社員のことを考えながら働く、人事・労務管理を中心とした総務の仕事でした。

 まあ、正直にいろいろ書いてみました。  

2025年01月14日

ドラマ、『無能の鷹』

ドラマ、『無能の鷹』 動画配信サービス

 NHKドラマの、『団地のふたり』とか、『3000万』とか、『宙かける教室(そらかけるきょうしつ)』のほうに目がいっていたので、民放で放送された以下のタイトル3本は見落としていました。動画配信サービスでざーっと見てみます。『ライオンの隠れ家』と『無能の鷹』と『海に眠るダイヤモンド』です。

 今回は、『無能の鷹』です。
 TBS金曜ナイトドラマ 23時15分から。
 わたしは、TVer(ティーバー)、ABEMA(アベマ)で観ました。

鷹野ツメ子(菜々緒):見た目は仕事ができそうな人間に見えるが、中身はなにもできない女性。無能な鷹野さんです。(どうして採用試験に合格したのか観ていて不思議です)、普通なら解雇対象の社員です。採用してはいけません。

鶸田(ひわだ)(塩野瑛久しおの・あきひさ):鷹野ツメ子の同僚・同期。まじめで努力家だが、ひ弱。
ふたりは、ITの会社(システムを売り込む会社)で働いている。『ひわ』という鳥の分類があるそうです。

第一羽 『無能ですが何か?脱力系オフィスコメディ爆誕(「話」を鳥にたとえて、「第一羽」としてあります)』を全編観ました。おもしろい。

 菜々緒さんの役柄は、『成瀬は天下を取りに行く 宮島美奈 新潮社』に出てくる主人公の、『成瀬あかり』のような風貌(ふうぼう。姿かたち)、イメージです。でも、小説に出てくる成瀬あかりは、有能です。東京大学や京都大学に合格できるほどの学力をもっています。ただ、奇人です。でも、善人です。そういう人って、現実にもいます。いい人です。

 ぎこちない部分はあります。話のもっていきかたがむずかしい。
 本来ならやれないこと、できないことを、うまくまとめようとしていく話の流れです。

 バカリズム脚本作品とか、NHKドラマの、『正直不動産』と似た雰囲気があります。

 ビジネスのことを知っている人、ビジネスが好きな人が観るとおもしろく感じる作品です。

 まあ、好みが分かれます。

 ラブコメディみたいな部分もあります。

 『会社を辞めない』ということが主題のドラマです。

 いったん採用した正社員を解雇することは容易ではありません。


第二羽 『優しい人が損をする、それが会社である』
 パソコンを使えない鷹野ツメ子です。
 パソコン操作をいまどきの人たちはどこで覚えるのだろうかと思うことがあります。学校がすべてを教えてくれるとも思えませんが、けっこうみなさんおじょうずです。
 わたしたち前期高齢者の世代は、1995年のウィンドウズ95が出たあたりからパソコン教育が熱心になりました。わたしは、自費で自分の仕事が休みの日に(当時は、土日出勤、平日に二日間休みでした)アビバとかいうところに習いに行って、タッチタイピング(キーボードを見ずに文章作成をする)ができるようになりました。あとは、名古屋にある大須商店街のパソコンショップに行って、部品を買ってきて、デスクトップパソコンのふた(カバー)を開いて、グレードアップのために部品交換をしながら装置について学びました。そのころのパソコンはNECの箱型の大きなパソコンで、自分でふたを開けて中身をいじることができました。

 そんな体験があるので、ドラマに出てくる鷹野ツメ子が、パソコンができないのは当然ではなかろうかと推察するのです。自分から積極的に学ぼうとしないとパソコン操作は身に付きません。

 ゆえに、番組中のパソコン操作にまつわる笑い話エピソードは好印象でした。
 なお、業務を電算化(IT化)するということは、その分、人員を削減するということです。労働者にとってはいいことばかりではありません。人間が機械に職を奪われてしまいます。

 映像に東京駅丸の内出口あたりの風景がときおり出てきていいなーーという気分になります。
 ときおりの東京見物に行ったときに、たまに自分が歩くあたりです。ビルばっかしです。
 それでも、自分が行ったことがある場所がテレビに出てくるとうれしくなります。

 なぜかしら、鷹野ツメ子が、指先を使ってのボールペン回しに熱中します。できるようになるのかと思ったらできませんでした。なんだったのだろう。(その後、できるようになったようです)

 BGM(バックグランドミュージック)が、やさしい音色(ねいろ)で、とてもいい感じです。

第三羽 『野望と愛欲に塗れた社内相関図』
 菜々緒さんがかっこいい。
 ITシステムを売り込む会社なのに、パソコンのことを知らない無能な社員の菜々緒さんです。
 どうやって、相手に提案を受けてもらえるかの、『営業手法』を提案するドラマです。
 あわせて、心が折れそうになる営業現場のストレスを解消するドラマでもあります。仕事のストレスがある人が見るとスカッとするドラマです。
 まあ、全体的に不思議な雰囲気がただようドラマでもあります。

 『自由』とは、『勝手なことをする』ということではありませんというアピールがあります。
 演じているのは、NHK朝ドラ『虎に翼』に出ていた土居志央梨(どい・しおり)さんです。朝ドラでは、がんこで強気な弁護士志望の山田よねという女性を演じておられました。
 博多華丸・大吉さんと鈴木奈穂子アナウンサーがやっている朝のNHK番組、『あさイチ』に土居志央梨さんがゲストで出ておられましたが、役とは、まるっきり正反対の性格の方でその差があまりにも大きくてびっくりしました。明るくて、おしゃべりで、よく笑う人でした。
 土居さんは、こちらのドラマでも、やっぱりきついへんてこりんな女性を演じておられます。

 義務教育のゆとり教育のためなのか、IT授業の浸透が原因なのか、昭和の時代みたいにがむしゃらに働くことがいいこととはされない世の中に変化してしまいました。
 番組内容を見ていると、出世を希望しない社員が増えたというような印象の内容でした。むしろ、出世をしたい社員にとっては、出世しやすいというチャンスの時なのでしょう。
 ふりかえってみれば、わたしが働き始めたころは、勤務時間というものは、『だいたいの目安(めやす)』でした。始業時刻の30分ぐらい前には職場に着いて、ぞうきんとバケツをもって、自分やみなさんの机をふいていました。女子はお茶くみの用意なんかをしていました。終業時刻になっても、30分ぐらいはだらだらとみんなとおしゃべりをしながら職場にいて仕事をしていました。サービス残業(無給)です。そんな時代がありました。

第四羽 『地雷を踏まない会社の歩き方』、第五羽 『愛される老害になるためには』、第六羽 『会社に行かない主義の君へ』、第七羽 『恋をするとはキモくなること』の放送はわたしが契約している動画配信サービスでは設定がありませんでした。TELASA(テラサ)で見ることができるようですが、あいにくわたしには契約がありません。

最終羽(第八羽) 『無能は世界を平和にする!?』こちらは、わたしの現在の契約で観ることができました。
 鷹野ツメ子が、株式をやると言います。
 でも、ボタンの掛け違えのように、株式投資と㈱を間違えています。社名㈱の表示を、株をやるとう意味にとっています。なんとも不可解な内容ですがおもしろいなあという気分になれました。

 人間関係が濃密でべたべたしていた昭和の時代を思い出すようです。今は人間関係が薄くなりました。
 昭和の時代は、チームワーク重視でした。どこの職場でも派閥のようなものがあって、グループには、「村長」がいて、村長を中心にまとまる「村人」がいました。「番頭さん」という言葉もよく使いました。まとめ役が必要なのです。社員は、「家族」でした。会社が、「家庭」でした。そういう時代がありました。それで、わりとまとまっていました。勤務時間外でもみんなでだれかの家に集まって、マージャンをやったり、バーベキューをしたり、それぞれの車に分乗して泊りの旅行に行ったりもしました。
 好景気の時代でした。メンタルの病気になる人は少なかった記憶です。力不足の人でも役割を果たせるようなすきま仕事がありました。電算化・IT化で、いっけんムダに見えるすきま仕事が減りました。科学の発展が、すべての人にとっていいことだとは言い切れません。むずかしいところです。

 鶸田(ひわだ)(塩野瑛久しおの・あきひさ)さんの演技は、名作、『北の国から』に出てくる純くんの演技に似ていました。黒板純(吉岡秀隆さんのこども時代)、黒板五郎(田中邦衛たなかくにえ)さんと令子(いしだあゆみ)さんの長男です。純君は、うじうじしていて、はっきりしない男なのです。

 最後のほうの20分間ぐらいは、創作として力尽きたのかなあ。時間を埋めるための過去のふりかえりとハッピーエンドでした。
 全体的にマンガのような仕上りのドラマでした。(原作はマンガです)  

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2025年01月13日

果てしなき渇き 深町秋生

果てしなき渇き(はてしなきかわき) 深町秋生(ふかまち・あきお) 宝島文庫

 こちらの作品について、単行本の発行が、2005年(平成17年)です。
 文庫本の発行が、2007年(平成19年)で、2022年(令和4年)現在、18刷です。
 よく読まれている推理小説です。
 映画化もされています。『渇き』スリラー、ミステリー、2013年(平成25年)118分

 さて、小説はいきなり殺人事件シーンです。
 コンビニで、店員(青年)とお客(黄色い髪をたばねた中年女性)、そして、もうひとりのお客(眼鏡をかけた少年)が無残に(むざんに)刺殺されています。
 売上金8万円が盗まれた。防犯カメラの録画データは持ち去られた。
 読み始めて、名前はまだわかりませんが、警備会社勤務の警備員男性が現場に到着します。どうも彼は元警察官のようです。機動隊、捜査一課、所轄の警察署に知り合いがいるらしい。
 そして、警察車両がコンビニに押し寄せて来ました。

 ファイブマーケット深作店 24時間営業のコンビニ店 国道16号に近い住宅地にある。
 東大宮にある警備会社
 舞台は、埼玉県です。区画整理中の新興住宅地です。

 物語が流れ始めました。

藤島秋弘:埼玉県内国道16号沿いにある大手警備会社の社員。埼玉県東部地域の担当。警備会社の所長には気に入られている。元警察官で係長職だった。不祥事で依願退職した。妻の浮気相手の男をボコボコにした。身長180cm。神経科に通院して服薬している。自家用車はグレイのカローラ。7年前にマンションを買って、家族三人で暮らし始めた。当時娘は11歳小学5年生ぐらい。

加奈子:17歳。浦和にある高校に通う女子高生。藤島秋弘の娘。小さな顔、きゃしゃな体、大きな瞳、母親似。美しい少女。成績優秀で、都内の国立大学を目指している。私立中学に行きたいという夢をお金が無いからと言って、藤島秋弘がつぶした。その後妻が浮気をして、藤島秋弘がその浮気相手に暴力をふるって、ふたりは離婚した。娘の親権者は、元妻。娘は元妻と同居していたが突然行方がわからなくなった。家から姿を消した。娘の部屋に、覚せい剤とそれを使用する道具があった。娘がいなくなったとき、元妻は一晩中、男とホテルにいた。

桐子:藤島秋弘の元妻。実家はお金持ち。父親のコネで、不動産会社の事務員をしている。8階建てのマンション、4DKに娘と住んでいる。もともと家族3人で住んでいた。桐子の父親の援助で買った。103号室に住んでいる。

岩中:桐子の浮気相手。桐子が働いている不動産会社の役員。車はアウディ

浅井衛(あさい・まもる)巡査部長:大宮署の刑事課一係所属で、一年半前までは、藤島秋弘とコンビを組んでいた。

地取り:現場周辺の聞き込み捜査
敷鑑(しきかん):警察用語。犯人と被害者の関係を調査して犯人を発見する操作方法
恫喝(どうかつ):きびしくおどすこと。威圧すること。
憐憫(れんびん):あわれむこと。

 なにかしら乱暴な内容の文章です。映画化を意識して書いてあるような文章に見えます。
 
 藤島秋弘夫婦のいさかいのことが書いてあります。
 藤島秋弘は、仕事人間です。警察の仕事にかかりっきりで、家のことは何もしません。ゆえに、妻や娘の日常生活のことを知りません。
 ありがちなことです。
 以前、番組『徹子の部屋』にゲストで呼ばれた太川陽介さんが、ひとり息子が就職して家を出て行ったら、夫婦ふたりになって、夫婦の会話がない状態になった。今までは、息子が家族の会話の中心にいてくれたというお話をされていました。
 太川陽介さんも仕事人間です。昭和の時代の男はたいてい、男は仕事、女は家庭という意識が強い。太川さんも前期高齢者の年齢です。サラリーマンならもう定年退職して家にいる年齢です。年金生活者です。いらぬことですが、太川さんも仕事を減らして奥さんに気を使われたほうがいい。
 歳をとっても仲がいい夫婦というのはいますが、お互いに気を使っているから仲がいいのです。奥さんのために、奥さんが喜びそうなことをしてあげたほうがいい。いっしょに旅行に行くとかではなくて、料理をするとか、お米をたくとか、食器を洗う、洗濯して洗濯物を干して、乾いた洗濯物を取り入れてたんすの引き出しにしまう、ふとんも干すし(ほすし)、掃除機かけもする。モップで床清掃、枝が伸びた庭木を切ってきれいにする。ゴミ出し(生ごみ、資源ごみ、粗大ごみ)、車を運転しての食材等の買い出し、町内会の仕事、日常生活を送っていると、やること、やらねばならないことはいくらでもあります。年齢的に病院通いをすることが多い。病気や病院のことを話したり、今どきだと、新型NISA(ニーサ)で貯蓄を増やすとかを話したり、話すことはいくらでもいろいろあります。
 自分から体を動かして家のことをあれこれやれば、一日中会話がない夫婦なんぞにはなりません。朝から晩まで、ずーっとしゃべり続ける夫婦になります。こどもたちや孫たちの話題、親の介護をはじめ、お互いの親族のことや友人の話、話題はいくらでも出てきます。テレビ番組やラジオの人生相談、最近の世の中の動きに関すること、興味は尽きません。
 前期高齢者の年齢になったら、終活も始めておいたほうがいい。終活は、けっこうめんどうで時間がかかります。まだいいと思っていても、いきなり、『あなたは癌です。余命はちびっとです』と言われてもおかしくない年齢です。
 終活で、身の回りのいらない物は捨てて(本人にとっては大事なものでも、ほかの人にとってはゴミということもあります)、デジタルデータ(パスワードとかIDとか)や資産も含めて、自分が死んだあと妻子が困らないようにいろいろしたくをしておいたほうがいい。遺言も書いて、公証人役場に出しておけばいい。

 話がだいぶずれてしまいました。本に戻ります。
 警察職員、とくに優秀な警察職員は、職場では輝いていても、仕事を離れるとやっかいな性質、性癖をもった人に思えます。
 『人を疑う』ことを仕事にしている人だからです。容疑者を疑うのは仕事だからわかりますが、家族を疑うようになったらコワイことになります。本に出てくる藤島秋弘さんは、現役刑事だった当時、妻の浮気を疑って、妻を尾行(びこう)するようになります。ストーカーみたいな尾行です。盗聴器まで仕掛けています。

 仕事人間の男は、妻が浮気をしても、(家庭を顧みなかった(かえりみなかった))自分に原因があるとか、自分に非があるとかは思いません。全面的に妻が悪いと決めつけます。自分はやるべきことを(仕事を)一生懸命やっていたと自己肯定します。悪いのは妻だ。

 光景描写がとても細かい文章です。観察するような文章です。

ガンコロ:覚せい剤の結晶
パケ:小袋(失踪した娘の部屋にあった。末端価格はかるく100万円を超える)
アルミのパイプ、ハイライト(タバコの銘柄だろうか)フィルターだけを取り出して、フィルターを注射器用の簡易ろか器として使用するそうです。

 藤島秋弘は、娘に対して、父親の役割を果たしてこなかった。

 藤島秋弘は、よくタバコを吸うのね。
 タバコばっかり吸っています。

(つづく)

 シーンが変わりました。
 「三年前」とあります。
 藤島秋弘以外の人物が語っています。

 あとでわかりましたが、藤島秋弘の娘の友だちだった緒方誠一のことが書かれています。語っているのは、緒方誠一君を知っている人物です。彼の語りの部分の文章だけが活字の字体を変えてあります。ちょっと太そうな明朝体で、雰囲気は習字で書いたような字体です。

 語り手は、まだ中学生3年生です。男子に思えます。この項目の始まりに、『3年前の出来事として』というように書いてあります。3年前の1から始まって、2,3と続いていくようです。物語は、そういうスタイルのお話になっているようです。
 語り手は、学校でいじめられています。
 いじめていたのが、『島津』と『A:大柄で長髪』と『B:柔道部員五厘(ごりん)刈り(2ミリ程度の丸坊主頭)』で、語り手と同じクラスです。クラスのほとんどが、緒方誠一にとって敵だそうです。ひどい。金まで要求されます。大人なら逮捕、刑罰適用です。強盗ですな。

松下恵美と長野知子:失踪した藤島加奈子と同じ予備校に通うふたりです。加奈子と交流はあるが、友だちではないと松下恵美が言う。上尾市から通う松下恵美は背が高いモデルタイプの女性で気が強い。
与野市から通う長野知子は、暗い感じだが、加奈子のことをよく知っているような雰囲気です。でも話してはくれない。(長野知子は薬物をやっているかもしれない。腕に形跡がありそうです)。

 力いっぱい書いてある文章です。緊張感が高すぎて、読んでいて疲れてきました。

辻村:辻村神経内科クリニック医師。腹の出た40歳ぐらいの男性。加奈子の主治医だが、最後の診察は三か月前です。

 藤島秋弘の娘加奈子の小学校からの友人として、
神永明美:小5のときの同級生。加奈子と一緒に登校していた。加奈子には二年前から会っていない。加奈子は人が変わった。神永の家は貧乏。父親の失業保険で食べている。神永明美は、スーパーでレジ打ちのアルバイトをしている。

 加奈子と写真に写っていた人物として、
棟方泰博(むなかた・やすひろ):この男が殺人と加奈子の失踪に関係しているのではないかと読み手のわたしは思う。無表情な男。茶色い髪とほっそりした顔立ち。

遠藤那美:棟方も遠藤も不良。

 なにかしら乱暴な筆致(ひっち)の書きようが続く文章です。
 
エチゾラム:不安や緊張をやわらげる薬。藤島秋弘が飲んでいる。父も娘も精神科クリニックが良いです。薬を飲むよりもおいしいごはんを食べたほうが、気分が良くなるのに。

 娘が覚せい剤をやっているみたいなので、警察には届けられない元警察官の藤島秋弘です。
 自分が不祥事(妻の浮気相手をボコボコにして、全治3か月の体にした)で警察を辞めさせられた(依願退職)こともあって、警察に相談することができません。

フォールディングナイフ:折り畳み式のナイフ
ローライダー:車高を低くした自動車

緒方誠一のニックネーム:運に見放された草食動物

 なんだか、暗い話です。

『三年前 2』
 中学野球部に入部した語り手男子です。(まだ、だれだかわかりません)
石橋:野球部のキャプテン。キャッチャー。4番打者
宮下:ピッチャー
手塚:レフト。生徒会長
ぼく(語り手):ライト、8番。
ぼくの祖父:九州嬉野(うれしの。佐賀県)に住んでいる。亡くなる。嬉野でお葬式がある。

 ぼくは祖父の葬式で九州に行き部活を一週間休んだあたりから部活に足が向かなくなり野球部を、受験を口実に辞めます。
 いじめが原因で緒方誠一が首つり自殺をして亡くなります。いじめのターゲットが、語り手である『ぼく』になります。

ブルーバード:なつかしい車種です。ニッサンの大衆車でした。そういえば、ニッサンはホンダとくっつくそうです。昔だったら考えられません。時代が変わりました。どこもかしこも統廃合で、日本の社会や産業は、しぼんでいきます。

 野球部の練習には行かずに、栃木県の宇都宮とか、群馬県の前橋に遊びに行く語り手です。
 部活の最中に水を飲んだことで責められる語り手です。(昔の話ですなあ)。自分が中学生のころを思い出しながら読んでいます。中学生の部活について、本に書いてあるほど部活へのこだわりはなかったように思います。中学では部活に熱心な生徒が多かったけれど、だからといって、強制的だった思い出はありません。いやならぶらぶらしていても文句は言われませんでした。部活は、やりたい人間がやるのです。
 それから、本の内容では、いじめがきついのですが、自分が小中学生だったときは、いじめよりも教師による体罰がきつかった。暴力を振るう先生がたくさんいました。戦時中の軍国教育が尾を引いていました。今とは大違いです。先生にさからえば、びんたが飛んできて、正座させられることはしょっちゅうでした。親もどうぞやってくださいという態度でした。
 半世紀前のこどもは、親にたたかれ、先生にたたかれ、兄弟姉妹にたたかれ、ひどいめにあっていました。そしてたくましく育ったのです。なにくそ負けてたまるかです。

 死んだ緒方誠一と警官の娘であった藤島加奈子は仲良しだったそうです。

(つづく)

 あやしい男が三人います。

アポカリプス:不良グループ。アポカリプスは、キリスト教で、『黙示(もくし。神の啓示、教え)』

東理恵(あずま・りえ):藤島加奈子の高校の担任教師。藤島加奈子の薬物使用を知っていた。

 父と娘の関係の書き方が疑問です。
 主人公の父親がものすごく娘の心配をするのですが、自然な愛情とは思えないのです。
 仕事人間で、家庭や家族を顧みなかった(かえりみなかった。考えなかった。配慮しなかった。愛情のある対応をしなかった)人間が、書いてあるような深い愛情を娘にもつとは思えないのです。
 生物学的に親子でも、日常から親子であることを意識して生活していないと、気持ちの交流は築けません。親子は親子であろうと日々努力していなければ親子にはなれないのです。
 この物語の設定の場合は、仕事人間の父親は、母親にこう言って終わりです。『おまえのせいで、娘がおかしくなった』(オレは、あとは知らない。オレのせいじゃない)

 繰り返しになりますが、これほど親子関係が希薄な男が、娘の心配をするだろうか。生物学的に親子でも日ごろから親子である努力をお互いにしていないと親子は親子になれません。

 さらに、この主人公元刑事の男は、自分の思いどおりにならないと暴力を振るう男です。
 DV男です。とんでもない奴です。
 あきらめることができない男です。
 ねちっこく、粘ることが、人間としてあるべき姿と勘違いしている男です。相手をいじめぬくことが、最高の喜びだと誤解している男です。当然、不幸になります。

 今、読み手である自分は、126ページ付近にいます。これ以上読んでも得るものはないかも……
 いつものことですが、旅をするように、本の中を旅しています。

『三年前 3』
 読んでいて気分が悪くなるような内容の文章です。
 いじめのようすが書いてあります。男子中学生たちが、ひよわな同級生をいじめぬきます。
 「待て」「逃げんな」「捕まえろ」です。
 わたしなら歯向かっていきます。やられたらやりかえすのが男の道と、今は亡き乱暴者の父にこどもの頃、教えられました。じっさいにやりかえしたことが何回かあります。だれも助けてくれないのです。自分でがんばるのです。大声上げて、こぶしを振り上げて向かっていくしかないのです。今、世界各地で起きている戦争と同じです。きれいごとを言ってもどうしようもないときもあるのです。それが現実です。暴力反対と正論を吐いて意地を張っていると、相手に攻め入られて、自分の陣地と家族と生活を相手に奪われてしまうのです。それが人間界の現実です。

 作者は何を訴えたいのだろう。
 他者に救いを求めたいのだろうか。
 いじめは反対、保護が必要、そして、ならば復讐(ふくしゅう。仕返し)だーーなのか。
 極端な書き方がしてある文章なので、趣旨がよくわかりません。

(つづく)
 
 藤島加奈子には二面性があるようです。善人と悪人の二面性です。
 父親は藤島加奈子を善人だと思いこんでいる。
 藤島加奈子のまわりにいる人間は、藤島加奈子が悪人であることを知っている。
 そんな感じです。
 元警官の娘は、悪のグループでは、ボス的存在なのです。
 父親である藤島秋弘は、のちに深く後悔するでしょう。仕事人間だったことで、家族や家庭が壊れたのです。

 スピード:薬物。覚せい剤のこと。

 警察官でもないのに、以前使っていた名刺1枚で、娘の行方を調べるために事情聴取をする藤島秋弘です。その行為は、すでに犯罪です。自分の身を守るための組織(警察)はバックになく、道具(拳銃)ももっていません。殺されちゃいます。

田村:集団暴行を受けていた少年


『三年前 4』(三年前というのは、中学三年生当時ということであろうと思いながら読んでいます。だから、現在は、高校三年生なのです)

瀬岡尚人(せおか・なおと):いじめで閉じ込められたが脱出した。この、『三年前』の部分を書いている人物ではなかろうか。

A:田村:いじめにあっていた男子のようです。(いじめにあっていた緒方誠一は自殺した)。田村は今、いじめる側にいる。

B:大場

C:瀬岡をいじめるために、針金を取り出した男。Cは以前、いじめにあったことがある。

棟方泰博:犯罪グループ、『アポカリプス(黙示録という意味)』のメンバー

岩間:ひとり語りをする男の1歳年下の男。野球部員180cm、長打力あり。

神永朱美(かみなが・あけみ):藤島加奈子の昔の友だち。小学生時代から中学にかけての友だち。

(つづく)

 藤島加奈子は、アポカリプスに拉致(らち)されたのかとありますが、拉致はされていないのでしょう。むしろ、本事件を操る(あやつる)立場にいる。

エス:警察用語で、「情報屋」。スパイ
走狗(そうく):人の手先になって働く者。いやしい者

 警察が張り込んでいたはずなのに、藤島秋弘は、犯罪グループに捕まって、ボコボコにされてしまいました。不可解です。その後、藤島秋弘が乗用車を運転して移動するのですが、それも含めて不可解です。運転できるような体の状態ではありません。

 写真?(何の写真だろう。犯罪グループにとって都合の悪い写真です。見つかりません)

 力作です。

 
 『三年前 5』

 神永朱美が、瀬岡に近づこうとしている。

(つづく)

エクスクラメーション・マーク:感嘆符で、『!』のこと。

石丸組:コングロマリット(多種類の事業を営む企業)。関東を中心とした広域指定暴力団。印旛会(いなばかい)の傘下団体(さんかだんたい)。飲食、風俗、ゲーム、金融、廃棄物処理など。シャブの元締め。

 またひとり殺されました。
 主人公の元刑事藤島秋弘は、このゆきづまった状況をどう打開するのだろう。
 
 このヤマにおまわりが関わっている。(共犯者に警察関係者がいる)

打擲(ちょうちゃく):なぐる。たたく。

 殺された小山順平は、愛用のカメラで、撮ってはいけない物を撮影した。そのことで命を奪われた。その写真は、藤島加奈子に託された。(なんだろう。撮ってはいけない物とは)

 
『三年前 6』
 語り手の瀬岡(中学三年生男子)が、母親に友だちと花火大会に行くと偽って家を出る。不良のたまり場へ行く。リンチを受ける。(残酷な暴力)
 
遠藤那美:不良仲間のひとり。

アストロ:シボレー・アストロ。アメリカ車
イーグルス:アメリカ合衆国のロックバンド。

 読んでいて思い浮かぶ作品は、1970年代自分が若い頃に読んだ、『限りなく透明に近いブルー 村上龍』、それから、2022年(令和4年)に読んだ、『テスカトリポカ 佐藤究(さとう・きわむ)』です。テスカトリポカは、『闇を支配する神』です。現在のメキシコ中部にあったアステカ文明が関係しています。内容の雰囲気が、こちらの小説と同種、同分類です。

 棟方がいる。ボウガンを持っている。(弓矢のように矢を発射する装置)
 薬物の類(たぐい)がある。
 藤島加奈子の話が出る。
 
ドレッドヘアー:髪の毛がロープのような形状になっている。

 あいまいな記述が続く270ページあたりです。
 藤島加奈子というのは、どういう人間なのか。あいまいです。

 頭の中でつくった世界がいっぱい書いてあります。
 作者の意識は盛り上がっている。
 熱狂と冷却があります。
 
 黄色いジャケットと黒いパンツの女。
 琥珀色(こはくいろ):くすんだ赤味の黄色。だいだい色

 チョウ:ボスという意味だろうか。
 炯眼(けいがん):ギラギラ光る目。するどい目

(つづく)

シーマ:日産自動車の高級乗用車

 読みながら、『つくってある話』なんだなあと思う。

コルト:軍用自動拳銃


『三年前 7』
 作者はこんなことを書いて楽しいのだろうか。(読み手である自分はついていけない)
 出版社は、こういう作品を世に出して、してやったりと思うのだろうか。(してやったり:思いどおりにうまくやれた)

 現実社会にもいるエロ政治家とか組織の上層部にいる人間を糾弾したかったのか。(英雄色を好む。(えいゆういろをこのむ)。男色(だんしょく)も好む)。某芸能事務所の不祥事のようでもある。(案外そこに、創作のヒントがあったのかもしれない)

(つづく)
 小山順平は、殺されてもしかたがないほどのことをしたことを理解しました。彼は恨まれた(うらまれた)。

 『三年前』という手記を書いているのは、『瀬岡』という人物だろうと思って書いていますが、じっさいそうなのかというと、自信がありません。

趙義哲(ちょう・下の名前の読みはちとわかりません):実業家。ビルのオーナー。パチンコ、ホテル(大宮センターホテル)、レストランなどの不動産をたくさんもつお金持ち。

 藤島秋弘には記憶がないようだが、酔って、妻や娘に暴力を振るったことがあるらしい。それもかなりひどいことをした。(精神的な病気がありますな)

『三年前 8』
 棟方泰博が、不良グループ『アポカリプス(黙示録)』がメンバーで狂暴。
 藤島加奈子は、宇宙にあるブラックホールのような存在。人間として欠けた穴がある。穴が、まわりにいる人間を吸い込んでしまう(転落していく)。

(つづく)
 344ページまで読み進めてきましたが、藤島加奈子の実像がいまだはっきりしません。

白いエルグランド:日産自動車のミニバン。こちらの作者さんの特徴として、車の車種を目印に使うということがあります。

 ガキ好きの変態がいる:某芸能事務所みたいな話が出ます。単行本は、2005年の発行です。(平成17年)。先日読んだ、『書いてはいけない 日本経済墜落の真相 森永卓郎 三五館シンシャ(さんごかんしんしゃ)』にこう書いてありました。
 2003年7月東京高等裁判所判決:加害者と事務所による名誉棄損で出版社を訴えた裁判の判決は、加害者による性被害を認めた。民事事件だった。
 2004年2月、最高裁が上告を棄却。高裁の判決が確定した。明らかに刑事事件に該当する事件だった。
 警察は動かなかった。マスコミは騒がなかった。
 以降も性被害は続いた。(この作品のヒントになったのだろうか)

 やばいことが写っている写真の回収をする話が出ます。コピーの話しも出ます。この作品ができたのは、まだ、SNS(ソーシャルネットワークシステム)は構築されていない、流通していない時代背景です。現在なら、いったんネットにあげた写真や映像の回収は不可能です。

デコスケ:警察官のこと。

 人間の業(ごう。悪行(あくぎょう)。理性でコントロールできない心の働き、動き)を描くことが、この作品のテーマなのだろうか。

(つづく)
 
『三年前 9』
髪を梳く:かみをすく。櫛の歯で髪をとかす。すきばさみでカットするという意味もあります。もう量を減らす。ハサミの片方の歯がクシのような形をしている。

 いじめていたのが、『島津』。
 チョウというは、趙義哲のこと。
 374ページまで読みました。

(つづく)

 父藤島秋弘の気持ちと娘藤島加奈子の気持ちがかみ合っていない。
 藤島加奈子の人物像に関する記述が薄い。
 
 391ページ、どう話をまとめるのだろうか。あと100ページぐらいです。

『三年前 10』
 手記ではない。第三者が観察する文章になっている。
 錯覚があります。味方だと思っていた(藤島加奈子)が敵だった。
 そういうことって、現実にもあります。

 社会では受け入れられにくい作品です。
 暴力でこと(課題)を解決しようとする主人公です。

(つづく)

 リボルバーの男:回転式けん銃を持っている男。警察官

(つづく)

『三年前 11』
 名ゼリフです。『ぼくは幽霊なんだ。もう生きているのか、死んでいるのか、自分でもわからない……』

(つづく)

茗荷谷(みょうがだに):東京都文京区

 藤島加奈子が主催者であるホラー・恐怖物語です。
 『加奈子の復讐は完成する……』

禁忌(きんき):禁止する。避ける。

『三年前 12』
 う~む。
 中学校でいじめを受けた人間が、仕返しをする話だろうか。いずれにしても復讐(ふくしゅう)ではある。暴力には、暴力で立ち向かう。

(つづく)

散弾銃で、先台をポンピングする:散弾銃のまんなかの木製部分(先台さきだい)を、後ろにスライドして弾薬を装填(そうてん)する。弾(たま)の発射が可能になる。

 『……この国の男どもは変態ばかりになった(性的なこととして)……』(ニュースでは聞きますが、そういう人を見たことはありません)

沢渡組(さわたりぐみ):暴力団。殺人をシノギにしている。(収入を得るための活動)

『エピローグ(終わりの部分)』
剣呑(けんのん):危険や不安を感じているようす。

 携帯電話をこどもに買うか買わないかが、ひとつの伏線になっていました。
 親に携帯電話を買ってもらえないと、こどもは違法行為をしてでもお金を手に入れようとするのです。

(読み終わりました)
 ふーっ。長かった。

『解説 深町秋生との出会いは衝撃的だった 池上冬樹(文芸評論家)』
加藤小判と赤城修史:深町秋生氏の別名

ジェイムズ・エルロイ:アメリカ合衆国の小説家。1948年(日本だと昭和23年)生まれ76歳。

エピゴーネン:有名な人をまねする創作活動

破滅型ノワール:犯罪映画のジャンル。1940年から1950年代後半(昭和15年~昭和34年ころ)

リーダービリティ:文章や文字が読みやすいこと。

 2007年5月(平成19年)の日付で書かれている文章です。ちょっとわたしにはむずかしい解説でした。わからない言葉がたくさんありました。  

Posted by 熊太郎 at 07:16Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2025年01月11日

NHKBSデジタル放送メッセージを消す

NHKBSデジタル放送メッセージを消す

 人に教えられてやってみたら、画面から、注意書きが消えました。
 今まで勘違いをしていました。
 衛星放送契約は、テレビ1台ごとに1契約をするものだと思いこんでいました。
 1世帯1契約で、家にテレビが複数台あっても、どのテレビでも、メッセージ表示なしで見ることができるのです。知りませんでした。

 うちはケーブルテレビ会社に依頼して、NHK放送受信料をケーブルテレビ代金といっしょにNHKへ支払っています。
 テレビにケーブルテレビのチューナーの接続がない2台のテレビは、NHKBSにチャンネルを合わせると、NHKに連絡してね(受信料を払ってね)みたいな注意書きの表示が画面左下あたりに出ていました。
 だから、チューナーがセットしてある1台のテレビだけで、メッセージが出てこないNHKBS番組をリアルタイムで見ていました。そういうものだと思いこんでいました。

 テレビをつけて、リモコンの青いボタンを5秒ちょっと押すと、画面の右側に説明文が出てきて、NHKに電話してもいいし、テレビ画面にある二次元コードをスマホで読み込んで、それぞれのテレビに差し込んであるカード番号をスマホで入力してもいい。(番号は画面に表示されています)
 わたしは、スマホで処理して、これまでOKだった1台に2台を加えて、合計3台のテレビが、デジタル放送メッセージなしで、見ることができるようになりました。
 さらに、ささいなことを付け加えると、わたしは、二次元コード(にじげんコード。QRコード)をスマホで読み込むときは、専用の読み取りアプリでないと読み込めないと思いこんでいました。でもダウンロードしたアプリだと宣伝のリンクがはってあって、ときおり間違えて、宣伝のリンクのほうをタップしてうまくやれないこともありました。
 二次元コードを読み取るアプリをダウンロードして使わなくても、スマホに付いているカメラ機能で二次元コードを読み込めることをしばらく前に知りました。

 いろいろ勘違いがあります。
 しかたがありません。だれかが研修をしてくれて教えてくれるわけではありません。自分なりに四苦八苦しながら学ぶようにしています。

 参考までに、NHKBSの番組をテレビにつないだハードディスクに録画すると、注意書きのメッセージなしで、再生することができました。これまではそうして観ることが多かった。
 リアルタイムの視聴だと、オリンピックとか、サッカーほかのワールドカップとか、大相撲、アメリカ大リーグの試合とかをチューナーと接続してある1台のテレビだけで一生懸命観ていました。これからは、ほかのテレビでもゆっくり見ることができます。やれやれ。  

Posted by 熊太郎 at 06:47Comments(0)TrackBack(0)熊太郎の語り

2025年01月10日

父と暮らせば 邦画 2005年

父と暮らせば 邦画 2005年(平成17年) 1時間38分 動画配信サービス

監督:黒木和雄
俳優:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信

 先日観た映画が、『母と暮らせば 邦画 2015年(平成27年)』でした。
 その時に知ったのですが、こちらの『父と暮らせば』と関連がある。
 劇作家、小説家、放送作家であられた井上ひさしさんの作品で、『戦後命の三部作』にあたるそうです。
 広島:父と暮らせば 2005年邦画 1994年舞台
 長崎:母と暮らせば 2015年邦画 2018年(平成30年)舞台
 沖縄:木の上の軍隊 2013年(平成25年)舞台

 こまつ座という劇団が関係していることを知りました。
 こまつ座:1983年(昭和58年)結成。井上ひさし作品を上演する。
 井上ひさし:2010年(平成22年)75歳没
 たまたまですが、先月、大竹しのぶさんが、小説家の林芙美子さんを演じる、『太鼓たたいて笛吹いて』を名古屋駅前にある劇場へ観に行きました。(ウィンク愛知、愛知県産業労働センターホール)。演劇と映画がつながり、縁を感じました。いずれの作品も、『反戦』がテーマです。戦争反対です。

 こちらの映画は、むずかしい内容の映画でした。
 ふたり芝居で、長いセリフの会話が続きます。語りが、娘と父親の交互で長く続きます。
 劇を観ているようでもありました。
 途中で、眠ってしまいました。全体で90分ぐらいのうちのまんなか30分ぐらいが睡眠で、中抜けの鑑賞になってしまいました。(あとで、ちゃんと見直してみます。とりあえず、ここまでの感想です)

 死別した親子の四日間です。
 亡父福吉竹造(ふくよし・たけぞう)は、広島への原子爆弾の投下で命を落としました。
 娘の福吉美津江23歳は、同じく原子爆弾の投下を受けましたが、物陰にいて命は助かりました。
 死んだ父福吉竹蔵が、この世に戻ってきて、延々とふたりで会話を続けるのです。

 宮沢りえさんと原田芳雄さんの魅力を観る映画です。
 生きている娘と、亡き(なき)父の会話が続きます。
 家の中はとてもきれいです。ふたりが着ている洋服もきれいです。
 娘に好意をもっている木下さん(浅野忠信さん)は、たまに画面に出るだけです。広島原爆の資料を集めるために、図書館で働いている宮沢りえさんを訪ねます。
 
 被爆者の気持ちが語られます。
 原子爆弾投下の痛みが表現されている作品です。
 木下は、美津江が好きだけれど、美津江は拒みます。自分は、人を好きになってはいけない。原子爆弾で死んだ人たちのために自分は幸せになってはいけない。自分も原子爆弾で死んでおけば良かった。そんな理屈が語られます。(ちょっと自分には理解できない思考です)
 死ぬのが自然で、生きているのが不自然、生きているのが申し訳ないそうです。不思議な心理です。
 本人の希望として、できるだけ静かに生きる。(結婚は望まない)
 <ここらあたりで、眠ってしまいました。そして、目が覚めたあとのことです>

 金曜日と表示があります。(映画は、火曜日から始まりました)
 自問自答のような会話が続きます。
 戦後生きている人と死んでいる人との会話です。

 二十年ぐらい前の映画ですから、ふたりともお若い。(宮沢りえさんと原田芳雄さん)
 宮沢りえさんが、顔が半分ただれたお地蔵さんにこだわりをもちます。亡くなった友人と重ねておられるようです。

 『幸せになる資格がある人間』とは、どういう人間のことをいうのだろう。

 亡父が、孫が欲しいというような意思表示を娘にします。
 子孫へ歴史を伝えたいのだと受け取りました。自分の血を残したいということもあるでしょう。
 だから、恋愛をして、結婚して、子を産んでほしいと、娘に願っていることがわかります。

 ラストシーンは、原爆ドームの中でした。
 わたしは、原爆ドームを何度か見たことがあるので、リアルに感じました。
 命の物語でした。

(翌日、もう一度観てみました)
 
 眠ってしまっていた部分を観なおしました。
 『水曜日』
 広島県で、7つの川が1本にまとまって(太田川)、広島市内を流れている。
 おとぎ話と原爆投下をつなげる話をつくると原田芳雄さんが言う。みんなが知っている昔話に、原爆の話を取り込んでみんなに話す。
 桃太郎のような話だったり、一寸法師のような話だったりする。
 宮沢りえさんが、話を改変してはいけないと主張する。話をいじっちゃいかん。
 宮沢りえさんは、『昔話研究会』という研究会を友だちとつくっていた。
 戦争のさいちゅうに、好ましくない活動だと軍から指摘を受けて解散したそうです。

 原爆の1万2000度の熱線で変形した物が出てきます。
 瓦(かわら)、ガラス、薬瓶(くすりびん)、ビール瓶(びん)、楽器のホルンのような形になった一升瓶(いっしょうびん)
 広島弁の語りが続きます。
 原爆は、広島市上空580mで爆発した。
 太陽がふたつあるように見えた。まぶしかった。ほんの1秒か2秒だった。(本当の太陽と爆発でできた太陽のような強くてまぶしい光の玉だろうと想像しました)
 風速350mの風が吹いた。
 原田芳雄さんの熱演です。ひとり芝居で、体と声を使って、原子爆弾の爆発を再現します。
 こっぱみじんです。
 先日観た原田芳雄さんの映画、『大鹿村騒動記』を思い出します。原田芳雄さんの動きは、歌舞伎のようです。
 
 『木曜日』
 雨降りです。
 天井から雨漏りをしています。
 原爆病の話が出ます。
 被ばくした本人だけではなく、被爆した女性のこどもも原爆病になるという話が出ます。
 
 おふたりとも、長いセリフをよく暗記できたものだと感嘆します。かんたん:おどろく。感心する。

 『とっつあん、Bが何か落としよったか(B29爆撃機が広島市上空で、原子爆弾を落とした)』
 青白い世界です。
 父は、正面から光を浴びて亡くなった。
 娘は、石灯籠の陰にいて命が助かった。(女友だちから来た手紙をたまたま落としてしゃがんだことが幸いした)。娘に手紙をくれた女ともだちは、原爆で亡くなった。
 『命の恩人の友だち(あきさん)の分まで、幸せにならないけん』と父は言うけれど、娘は、それはできないと主張する。
 戦争体験世代の人たちがつくった世界です。野坂昭如さんの(のさかあきゆきさん)、『火垂るの墓(ほたるのはか』を思い出します。
 被ばくして死にかけている人たちのむごい体の状態の話が続きます。
 手紙をくれた女友だち(亡くなった)の母親が宮沢りえさんに言ったそうです。
 『なして、あんたが生きとる?』
 『うちの子やのうて、あんたが生きとるんはなんでですか?(自分の悲しみを娘の友にぶつける)』
 その後、その母親も亡くなります。
 <重い話です>
 『うちが生き残ったのが、申し訳ない』

 本を一冊思い出しました。
 『ヒロシマ消えたかぞく 指田和(さしだ・かず) 写真・鈴木六郎 ポプラ社』
 かなりせつない。写真絵本です。
 おとうさんは、鈴木六郎さんで、床屋さんです。おかあさんが、フジエさん。英昭おにいちゃんがいて、本のなかにいる『わたし』が、公子(きみこ)さん、いっしょに写真に写っているのが、和子ちゃんです。その全員が、原子爆弾で亡くなります。つらいです。原爆のバカヤローです。
 ペットの猫のクロと犬のニイも写真の中にはいます。でもきっと、原子爆弾が爆発したあと、二匹とも、この世には、もういなかったと思います。
 からだが少し大きくなったこどもの公子(きみこ)さんが、猫のクロを背中におんぶしています。公子(きみこ)さんは、のんびりした雰囲気をただよわせながら、笑顔で写真に写っています。
 扇風機の前で、前足を出して足を振っている猫のクロはまるで、人間みたいな動きをしています。

 宮沢りえさんが演じる福吉美津江23歳は、純粋な人です。