2020年04月02日

海よりもまだ深く 邦画DVD

海よりもまだ深く 邦画DVD 2016年公開

 今年観て良かった映画でした。最後は観た人にこの親族の未来を想像してもらう終わりかたです。それぞれ、こうなってほしいと思うところがあるのでしょう。家族関係の修復ができるとか、できないとか、一発なにか良いことで大当たりがないかとか、ハッピーエンドの未来を想像したい。

 最初のうちは、主人公の篠田良多(しのだりょうた。阿部寛さん、離婚して、13才の息子に養育費を支払う義務と面会の権利あり)のいいかげんな生活ぶりが熱演で、観ていて嫌気がさすのですが、それも監督の意図するところでしょう。
 後半、台風のために、祖母、長男、長男の元妻、孫の四人が、ひとり暮らしをしている祖母宅で一夜を過ごします。家族の「回復」を求める風景がかいま見られる優れた作品へと発展していきます。

 篠田良多は島尾敏夫賞を受賞して、その後、売れない小説家をしながら、興信所で人の弱みを握った写真で、不正なポケットマネーを手に入れつつ、その金を競輪につぎ込んで失うというような生活をしています。あわせて、ひとり暮らしをしている母親の部屋からもお金を盗んでばくちにつぎ込んで失います。まあ、いいかげんな男ですが、こういう人はいます。ものすごくひどいというわけではありません。暴力がないだけいい。篠田良多は息子をよく可愛がります。息子も父親になついています。父親本人も人格的にはこどもで、まだ、大人になりきれていない部分があるのでしょう。あるいは、本人も気づいていない状態で父親の深層心理として、大人になりたくないのかも。
 彼の受賞話を聞いて、島尾敏夫作品の内容は第二次世界大戦中の話で、高校生のころに読んだことがあるのを思い出しました。

 母親役の樹木希林さんが発信する言葉の意味が深い。樹木希林さんと長女役の小林聡美さんとのふたり芝居、同様に、希林さんと阿部寛さん、希林さんと真木よう子さん(長男の元妻)の各シーンで、希林さんのセリフが光っていました。
「(子どもの数が減って団地内の公園に子どもがいない)静かだね。もう遊ぶ子どもがいないからね」
「(花も実もつけない木に水をやりながら、息子に対して)あんたみたいだね」
「(だれでも)なにかの役には立っている」
(13才の息子が父親に向かって)「お金だいじょうぶ?」
(同じく孫が祖母に)「宝くじが当たったらいっしょに暮らそう」
13才の息子が、父親の篠田良多と連れションをするのですが、そのときのトイレでの父親の姿が情けない。
(孫が父親篠田良多が買ってくれた野球のスパイクを家ではいて、床が傷だらけ。祖母の樹木希林さんが)「おばあちゃんといっしょ。傷だらけ」
「(台風の)こんな日に、おばあちゃんをひとり残して帰っていくの?泊っていきなさいよ」(孫が泊ることになって)「ほら(わたしは)急に元気になっちゃった」
「文才はとってもステキなもの」
(元妻の言葉)「愛だけじゃ生きていけないのよ大人は」
(孫の言葉)「ヒーローはおばあちゃん」

 祖母宅でみんなが集まっているところで孫が作文を読むシーンを観て、そういえば、自分もそういうことがあったと、もう忘れていた小さいころの記憶が呼び起こされました。父が病死する少し前のことでした。

 不倫を盗撮されるのは芸能人やタレントばかりだと思っていたら、映画のなかでのことですが、興信所の職員がバンバンそういう写真を撮っているのを見て一般人もかと驚きました。

 BGMの口笛の音色に気持ちが落ち着きました。

 昭和40年代の大規模団地の生活の記憶がよみがえりました。タコのすべり台がなつかしい。

 父親になるってどういうことだろうと主人公が思うシーンがありました。
 母は子を産んだことから母親になれますが、父は父になる努力をしなければ父親にはなれないのです。

 相手の至らないところを許していっしょに生活していくのが家族

 先日NHKのテレビ番組で観た愛知県内で暮らす89才のひとり暮らし高齢者女性が決断した時の言葉を思い出しました。施設入所か、東京に住む娘さん夫婦と同居するのか迷うのですが、「人生の最後は、他人に迷惑をかけるのではなく、身内に迷惑をかけることにしました」という言葉が名言として心に残っています。  

2020年04月01日

うなぎ 邦画DVD

うなぎ 邦画DVD 1997年公開

 名作といわれますが、わたしには合わない作品でした。ストーリーが破たんしています。あわせて雰囲気が暗かった。
 
 冒頭で謎の女によって、奥さまが浮気をしているという密告の手紙が読まれますが、この時点で、「この女性はだれ?」という疑問が湧きました。

 何の事情も聴かずに夫が妻をいきなり刃物で刺すという設定はどうなのか。
 受刑者で仮釈放中の主人公である山下さんは、飼育するうなぎと話をするのですが、話をするシーンは少ない。うなぎと人間がしゃべるのは異様です。
 
 役所広司さんと清水美沙さんのふたり劇、役所広司さんと佐藤允(さとうまこと)さんのふたり劇、役所広司さんと柄本明さんのふたり劇です。柄本さんは若い。まるで柄本明さんの息子さんを見ているようでした。

 清水美沙さんが服薬自殺未遂するところが不可解。好きになってはいけない男(ひと)を好きになったようには、その後の経過からそう見えません。

 宇宙人を呼び寄せる話題は何を意味したのか。人間が苦手、人間がキライ、だから宇宙人と話す。同じようにうなぎと話すという理屈が紹介されますがピンときません。

 柄本明さん(山下と同様の刑務所での服役囚)の横入りの登場は、安易な展開

 市原悦子さんが怖かった。突き抜けていて、フラメンコを踊る姿が珍妙でもありました。

 仮釈放制度と保護司制度のことがあり、関係者が見たらいい気持ちがしないかも。

 (浮気をした妻を刺殺したのは)好きだから許せなかった。(愛が憎しみに変化した)
 
 しょせん「金(かね)」なのか。

 うなぎが人間を笑っているような。

 映画の一番の難点は、他人のこどもを自分の子としては、なかなか育てられないということ。  

2020年03月31日

不思議の国のアリス ルイス・キャロル

不思議の国のアリス ルイス・キャロル 佐野真奈美 訳 ポプラポケット文庫

 有名なお話ですがしっかり読んだことがありません。
 1865年、日本は江戸時代末期の作品ですから、原語訳をそのまま読んでも現代人にはわかりにくいような気がします。

 アリスは、白いうさぎを追いかけて、生垣の下にある大きな巣穴に入っていきました。アリスは、地球の中心方向へ向かって穴の中を落ちていきます。穴の底についたアリスはなにかを飲んで身長が30センチぐらいに縮みました。次にケーキを食べて、身長が3メートルぐらいになりました。そのあとせんすであおぐとまた小さく縮みます。
 『ぜんぜんびっくり』という言葉があります。書中では間違った言葉遣いとして記事がありますが、現在では間違いではなくなりました。昔は否定するときに使う『ぜんぜん』でした。どうもこの物語では、そういった言葉ネタがあるようで、日本人には理解しにくい面があるような気がします。

 エイダ:髪が長くてカールしている。
 メイベル:物知りではない。
 ダイナ:アリスの家の飼いネコ。おとなしくてかわいい。ねずみや鳥をつかまえることが上手
 メアリー・アン:女中
 侯爵夫人
 女王さま
 パッド:ウサギのしもべ
 ビル:トカゲ。ウサギのしもべ
  
 ネズミとの出会いがあります。議員総会としてほかにも、アリスを囲む動物たちとして、インコ、ドードー鳥、白ウサギ(落とし物として、せんすと白い皮の手ぶくろ)、トカゲ(名前はビル)、カモ、ワシの子、モルモット、子犬、アオムシ、ハト、人間の赤ちゃん(ブタになったらしい)、チェーシャーネコ

 アリス本人は、自分の体が伸び縮みしたり、自分の首がろくろっくびみたいにのびる状態を、自分が、おとぎ話の世界に入り込んでしまっていると考えます。

 演劇の台本を読んでいるみたいです。

 ウサギって、けっこう怖い感じがして意外でした。

 調べたこととして、クロッケー:ゲートボールみたいな競技

 気に入ったセリフとして、チェーシャーネコの「ぼうし屋も三月ウサギもどっちもいかれてる」

 だじゃれとか言葉遊びがあるようです。日本語だとわかりません。

 お茶会が始まります。三月ウサギとぼうし屋(男性の人間の姿)と動物のヤマネがいます。
 記憶に残った表現の言葉として、ぼうし屋の言葉として、「こやつは時間をぺしゃんこのつぶしている(ヤマネがそうしている)。それ以来、時間は願いを聞いてくれなくなった。いまではずっと6時のままだ」、「先生は年をとった海ガメ」

 女王さまがいるところのお庭にはトランプカードがいます。
 ハリネズミも出てきました。
 いろんな動物が登場します。にせ海ガメ、陸ガメ、フラミンゴ、グリフォン(ワシの頭と翼、ライオンの体をした架空の動物)、イカ、ロブスター、アザラシ、サケ、タラ、イルカ、フクロウ、パンサー(ヒョウ、ピューマ)

 調べた言葉として、「カモミール:キク科のお花、いい香りがする」、「からし:本の中では、鉱物でしたよねと話が出ます。その後、野菜とアリスが言います。香辛料になる植物です」、「シロップ:濃厚な糖液」

 トランプの王さまが裁判官、女王さまがいて、陪審員がいます。法廷風景があります。タルト(洋菓子、焼き菓子)を盗んだものがいるらしい。
 やりとりの内容は読んでいてもよくわかりません。150年ぐらい前の作品ですからその当時の感覚ではおもしろい言い回しだったのでしょう。
 
 そうか。お昼寝だったのか。アリスはお姉さんに起こされました。なんだか、安心しました。

 巻末にあった文庫創設の言葉に印象深い文節がありました。2005年10月の記事です。「若者が本を読まない国に未来はないと言います」日本はだいじょうぶだろうか。  

Posted by 熊太郎 at 06:52Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2020年03月30日

ドラゴンボール DRAGON BALL 鳥山明

ドラゴンボール DRAGON BALL 鳥山明 集英社

 人気マンガです。初版が1985年で、そのころわたしはすでにおとなだったので、このマンガを読んだことがありません。今回、まず第一巻を読んでみました。中学生を中心とした少年向けのマンガだと感じました。ちょっとすけべなところが特徴で、ギャグっぽいところもおもしろい。予測ができないキャラクターの反応が楽しめます。奇想天外な冒険活劇です。明るくエロい。ファンが多い理由がわかります。
 (二巻まで読んで理解したこと:七つのドラゴンボールを集めると神龍が出てきて夢をひとつかなえてくれる。夢がかなったあと、七つのドラゴンボールは各地へ飛び散る。その後は、1年経過すると再び同様のパターンで夢がかなう)

「巻一 孫悟空と仲間たち」
 中国の物語「西遊記」がベースになっていて、そこに、アラジン、そして、ウルトラマンとかウルトラセブン、ドラえもんなどのパターンが重なります。
 七つのドラゴンボールを集めて呪文を唱えると龍が現れて願い事をひとつかなえてくれる。ドラゴンボールは、ドラゴンレーダーで探す。
 主人公が、「孫悟空:しっぽがある妖怪でしょう。14才。亡くなった育ての親が『孫悟飯』、武術の師匠が『亀仙人』」、孫悟空の仲間が、「ブルマ:16才女子。学校が夏休み中の30日間のうちに七つのドラゴンボールを集めるつもり」、もうひとりの仲間が、「ウーロン:ぶたさん。孫悟空のはっかいのポジション」、この巻で対立相手の立場にあるのが、ヤムチャ(青年)とプーアール(猫みたいな妖怪)、牛魔王。
 孫悟空の父母の姿は見えません。

「巻二 ドラゴンボール危機一髪」
 フライパン山の大火事を消しに行くお話です。
 武天老師(亀仙人)といっしょになってドラゴンボールを探しに行く旅でもあります。武天老師の一番弟子が孫悟空の祖父孫悟飯で、二番弟子が牛魔王だそうです。牛魔王の娘さんがチチで小学校低学年ぐらいの感じの女の子です。
 孫悟空のもっている如意棒の強さに魅力があります。
 交渉:なになにしてくれたら、なになにするのパターンです。
 武天老師(亀仙人)がパワフルに変化する姿は感動が湧きます。いままで、死んだふりをしていたのではないか。いろいろとおもしろい。奇想天外です。
 エッチな表現がありますが、1986年当時は普通のことと受け止められていたことも2020年の今ではセクハラ表現にあたります。時代は変化しました。それと、当時の女性像は秘密に包まれていましたがいまはあからさまです。男にとって女子が未知だったころのお話でもあります。
 ウサギ団という悪党が出てきました。昔の時代劇で観たことがあるようなシーンです。ウサギ団のボスに触るとニンジンにされてしまいます。
 孫悟空が突然切れて活躍するところに爽快感が生まれます。
 背景は、中国からアラブの国に変わったようです。
 ドラゴンボールはあと1個、一星球のみになりました。
 新しいキャラクターとして、ピラフ一味で、中華料理店の店主みたいな人でピラフ大王、     彼の部下で女性がひとり、それから、オオカミ忍者の姿のソバさんが出てきました。七つのドラゴンボールを横取りして神龍にこの世の支配者になるよう願い出るそうです。
 ドラゴンボールというのはこんなすけべな漫画だったのか。平和です。
 神龍がかなえた夢がおもしろい。
 満月の変化。狼男とかでは、ハリーポッターアズカバンの囚人のシーンを思い出しました。孫悟空は狼ではなく違う巨大動物に変化します。
 孫悟空は、弱点のしっぽが切られたあと、以降は、なにが弱点になるのだろう。

「巻 三 天下一武道会はじまる!!」
 ランチという二重人格のような女子が登場します。ふだんはおとなしいのに、くしゃみをすると凶暴な女子に変化します。くしゃみで、ハクション大魔王を思い出しました。あとは、クリリンという13才のぼうずあたまの男の子が出てきます。彼も孫悟空と一緒に亀仙人のもとで亀仙流武術の修業に励みます。
 自由な発想のギャグ(笑いづくりのための短い言葉や動作)がおもしろい。エッチ、すけべ、ナンセンス(ばかばかしい)、ほら話など。孫悟空自身は純真で、悪いことを知りません。男女の性別はわからないし、セクハラもわかっていません。人をだますことを知りません。それから、ビールも知りません。そういう性格設定、人格設定です。
 対立しているように見えますが、出てくるみんなは楽しい仲間です。
 読みながら、何のために修行をするのだろうとか、どうやって食べていっている(生活費を得ているのか)のだろうかという疑問が湧きました。(その後、8か月後に開催される天下一武道会で優勝することをめざしていることがわかりました。また、牛乳配達をするシーンが出てきました。やはり、新聞配達と牛乳配達はアルバイトの基本です。それができればたいていのアルバイトはできます。毎日休まず、なるべく一年中、短時間労働であっても継続して働くのです)
 落語を聴いているようで、おもしろいオチです。
 亀仙人が背負っている亀の甲羅(こうら)は20キロもあって、筋力をつけるための重しであることには気づけませんでした。
 大男と戦う孫悟空の動きは大相撲の小柄な力士である炎鵬(えんほう)のようです。クリリンは、むかし自分をいじめていた相手を倒します。
 良かった言葉などとして、「オラたちじいちゃんの修行でいつのまにかものすごくきたえられていたんだ」、勝利した理由として、そうか、クリリンには鼻がないんだ。
 絵が可愛らしくてきれいでした。
  

Posted by 熊太郎 at 06:18Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2020年03月29日

スターウォーズ ジェダイの帰還 エピソード6 DVD

スターウォーズ ジェダイの帰還 エピソード6 DVD 1983年公開

 映像を楽しむ映画なのでしょう。今回は、宇宙を巡る戦いシーンと手づくり的な森の中での戦いシーンを交互に出すことによって、おもしろさが拡大されていました。
 宇宙戦闘機が飛び交う最新式な戦闘のシーンがあったかと思えば、原始林みたいなところで、餌につられて網につかまる罠が出てくるなど、対比のアンバランスがありました。未来都市と原始ジャングルの対比があります。
 あわせて、闇の国と闇ではない地域のふたつの世界があるということがなんとなくわかりました。
 宇宙空間での超高速の飛行機同士の戦闘は、一度すれ違ったら、また出会うまでにかなり時間がかかると思います。
 家族関係のいろいろな秘密が明かされていきます。少ない登場人物数のなかでやりくりがなされます。
 カエルや昆虫のような変な顔の宇宙人ばかりが出てきますが、少々気味が悪い。
 ダースベイダーが最高司令官だと勘違いしていました。皇帝がいて、ダースベイダーは皇帝の部下でした。なんだか、ドイツ軍がらみの戦争映画をみているみたいでした。
  

2020年03月28日

ハリーポッターとアズカバンの囚人 DVD

ハリーポッターとアズカバンの囚人 DVD 2004年公開

 話の中身はややこしくて、わかりにくい。本作品シリーズは、映像を楽しむ映画なのでしょう。
 空中にろうそくがたくさん浮いているシーンが好きです。
 移動手段としての、蒸気機関車、三階建てバス、翼が付いている四つ足の動物が良かった。
 空中からいきなり飛んできた雪玉にびっくりしました。ハリーポッターが透明マントを付けていました。
 さらし首みたいな生首がしゃべるのは気味が悪い。
 空を飛んだり移動したりは、映画館の大画面で見ると迫力があるのでしょう。

 魔法用語のようなわからない言葉がいっぱい出てきます。
 短い魔法の杖を手にもって呪文を唱えると魔法がかかる。
 魔法使いというものは、不老不死だと思っていましたが、ハリーポッターの両親は、陰謀だか策略だかで亡くなっています。劇中何度も「殺してやる」というセリフが出るのは、子どもさん向けなのでどうかと疑問をもちました。  

2020年03月27日

ライオンのおやつ 小川糸

ライオンのおやつ 小川糸 ポプラ社

 人が死ぬ話はもういいかと思いながら敬遠していましたが評判がいいので読んでみることにしました。36ページあたりまで読んだところです。おそらく癌で、ステージ4の宣告を受けた30代始めの女性海野雫(うみのしずく)さんが、最期を瀬戸内海に浮かぶ島にあるホスピスで迎えるという舞台設定で始まりました。迎えてくれるのは、マドンナという通称名の初老らしき白髪の多いお下げ髪の女性でした。
 海野雫さんは、身寄りがないようですが、両親と暮らしたことはないけれど、父親代わりの男性とふたり暮らしだった。本人は、結婚はしていないし、子どももいないという情報提供があります。おそらく叔父さんぐらいの関係の人に育てられたのでしょう。友人関係にも別れを告げて、ひとりで、この瀬戸内の島にあるホスピスで寿命を終えるところです。
 以前瀬戸内海を船で移動する旅をしたことがあるので、物語のなかにある風景を容易に想像することができてよかった。読みながら、角田光代さんの「八日目の蝉(せみ)」も思い出しました。

 ホスピスでは、「おやつの時間」というのがあるそうです。患者さんたちからリクエストをもらって、そのうちのひとつだけのおやつをつくって、日曜日のお昼三時にみなで集まってお茶会をするそうです。

 なぜ、ライオン?

 レモンが登場するのは、瀬戸内海の名物だからかも。

 登場人物たちとして、かの姉妹(姉がシマさんおだんごあたま、妹が舞さんわかめちゃんカット)六花(ロッカ。ワンちゃん。亡くなった人のペットだった。セラピー犬の立場)、

 読んでいると切なくなってきました。

 小豆粥(あずきがゆ)→コーヒー→豆花(トウファ。台湾の豆乳を使ったデザート)→カヌレ(フランス菓子。卵黄でつくる。溝のついた円柱形のケーキみたいなもの。外側はカリッとしていて中身は柔らかい)→モルヒネワイン→炒り玄米茶→アップルパイ→チョココロネ(円錐形で中にチョコが入ったパン)→バナナ(バナナがしゃべる)→牡丹餅(ぼたもち)→イイダコのおでん→アイスクリーム→ミルクレープ(ケーキ。クレープでクリームや果実を挟んで何枚も重ねる)→鶏鍋→雑炊
 知らないおやつが多いので、読んでいて身近に感じられませんでした。

 近いうちに「死」を迎えることが決定している人の日常生活のサイクルはどんなだろう。寝る→食べる→寝るが基本サイクルとあります。

 おやつタイムのメンバーとして、医師、ケアマネジャー、ヘルパー、薬剤師

 ロッカ(わんちゃん、女子、小さな体格の犬)の役割が大きい。

 本当にこれから死ぬのだろうかという感想をもちながら69ページ付近を読んでいます。

 恋が生まれます。

 次々と人が亡くなっていきます。

 主人公は嘆きます。抗がん剤の痛みに耐えて治療に取り組んだのに、抗がん剤の効果はなかった抗がん剤治療に、一縷(いちる。一本の糸。少しの)の望みをかけたけれど報われなかった。彼女は残された道「まもなく死ぬ」を選択するしかない。

 セラピー犬、音楽療法士、モルヒネ、睡眠薬、蘇(そ。牛の乳。ヨーグルト→生クリーム→バター→醍醐)
 
 「スジャータ」が人の名前だとは知りませんでした。

 体を壊して、読書の最後にたどり着くのは、「絵本」を読むこと。

 記述にあった別れた奥さんは会いには来ないと思う。

 完治する新薬ができた夢をみる。

 死が近いこどもさんのお話には胸が詰まりました。こどもさんが書いた習字の文字として「生きる」

 読んでいて思ったこととして、自分のことを人に話せていないことがたくさんある人はメンタルの病気にかかりやすいのではなかろうか。

 主人公はついに自力歩行ができない車いす生活になりました。

 ラストに向かっての記述内容はわたしには合わないものでした。美しすぎます。命が巡ります。夢が続きます。おやつのリクエストに応えるということはリクエストした人が亡くなったということを意味します。
 主人公に関して思ったのは、三十三才とは思えない「死」でした。母親も短命。娘も短命。長く生き続けることがむずかしい人たちがいます。
 どんな人生を歩んだとしても死んだら終わりです。思い出話をいくらしても過去は返ってきません。

 偶然ですが、以前読んだ「線は、僕を描く」砥上裕將作品と設定が重なります。若い人の両親が事故死して若い人がひとりになります。
 事件や事故、自然災害で突然近しい人を亡くすと遺された者の気持ちは沈みます。

 自分は孤独だと思う人は孤独だし、孤独だと思わない人は孤独ではない気がします。

 人は死んで花になる。

 意味深い言葉がたくさんでてきて、味わいのある文章です。趣旨などとして、「視界のどこかに必ず海が見える」、「繭の中(まゆ)」、「生まれることと亡くなることは背中合わせ」、「みんなが平等なんてしょせんありえない」、「私には私しかいない」、「癌になる根本的な原因はストレス」、「眠ることは重要です」、「男性から可愛いと思われたい」、「死んだ後のお楽しみ」、「あって当たり前だと思っていたものがとても貴重なものだった」、「私はまだ死んではいない」、「ライオンにはなりたくない」、「(お金だけの人間だから)あなたが死んでも悲しむ人はいない。あなたがもっていたのはお金だけ」、「チェロの音色が感情をなだめてくれる」、「血管の中を無数の針が流れている(若い頃病気をして入院した時に似た体験をしたことがあります。血管の内側を無数の針でつつかれるような痛みでした)」、「まだ、死にたくない」、「人間は笑うことも大事だけど泣くことも大事」、「自分で自分を好きになる」、「わたしの人生には、『今』しか存在しなくなる」、「生きてて、よかった」、「もう元気なころの体には戻れない」、「人は死んだら光になる」、「お父さんはわたしのなにを知っているの?」、「おやつは心の栄養、人生へのご褒美」、「(人生という)ろうそくは自分で火をつけることはできないし火を消すこともできない」、「おいしいワインになろうね」

 調べたこととして、「ラプンツェルの童話:グリム童話。ラプンツェルという女性が出てくる」、「カーゴバイク:物語では乗客や荷物をのせるための三輪自転車と思われます」、「ホスピス:終末医療、緩和ケアを受ける場所。物語の中では教会のようです」、「ソ:乳加工食品」、「粥有十利しゅうゆうじり:おかゆは心身の健康に良い」、「ジノリ:イタリアの陶磁器メーカー」、「ロゼワイン:ピンク色のワイン」、「夜間セデーション:夜間、睡眠薬で深く眠る」、「エンドルフィン:脳内にある神経伝達物質。喜び、幸せを感じたときに出る」、「QOL:クオリティオブライフ。幸福を感じる生活の質」、「QOD:クオリティオブデス。良い死」、「トルコブルー:トルコ石の色。緑がかった青」
  

Posted by 熊太郎 at 07:04Comments(0)TrackBack(0)読書感想文