2025年02月05日
ぐうたら旅日記 恐山・知床をゆく 北大路公子
ぐうたら旅日記 恐山・知床をゆく 北大路公子(きたおおじ・きみこ) PHP文芸文庫
『わたしの、本のある日々 小林聡美(こばやし・さとみ) 毎日文庫』で、こちらの作家さんが紹介されていたので取り寄せてみました。
その本を読んだ時には、『いやよいやよも旅のうち 北大路公子 集英社文庫』という本のことが書いてあったのですが、関連で、青森県恐山のことが書いてあるこの本も読みたくなりました。
2年ぐらい前でしたか、NHKのテレビ番組、『72時間』で、恐山(おそれざん)を訪れる人たちのことが放送されていたのを見て、ちょうど、高齢だった妻の両親(義父母)が相次いで亡くなって間もなくの時期であったので、一度恐山にお参りに行きたいねと夫婦で話しました。
番組企画は、歴代のベスト10を決めるような内容だったと思います。『ドキュメント72時間 恐山 死者たちの場所 2014年6月6日放送(平成26年)』
されど、放送された当時はコロナ禍であり、その後、クマが出たり、地震の心配もあったりして、恐山への旅はまだ実現していません。
とりあえず、この本を読んで、行った気分になってみたい。
本に書いてある旅の内容は、恐山と知床が、2011年(平成23年)、積丹半島(しゃこたんはんとう)が、2006年~2008年(平成18年~平成20年)ですから、ちと古い。
(1回目の本読み)
わたしは、実用書の類(たぐい)は、まず、ひととおりゆっくりページを最後までめくりながら、どんなことが書いてあるのかを把握してから、最初のページに戻ってゆっくり読み始めます。
後ろ向きな言葉、後ろ向きな態度から文章が始まりました。旅はめんどくさいから嫌いだそうです。めんどくさがりいのおばちゃんですな。
70ページ、『ヒグマはあなたのすぐ横に』という記事があります。知床ですな。
もうずいぶん昔のことになりますが、自分たち家族が子ども連れで北海道へ行ったときに訪れた場所が、本に、次々と出てきます。レンタカーを運転して北海道を回りました。まだ、こどもたちも小さかった。
摩周湖、硫黄山、川湯温泉(横綱大鵬(たいほう)の故郷)、阿寒湖、屈斜路湖、網走、帯広、本の記事では、場所は、青森県に移って、三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき。確か、縄文時代の遺跡が展示してありました)、それらは、わたしも訪れたことがある観光地です。
後半は、旅とは関連のないエッセイも含まれているようです。
(2回目の本読み)
『春の恐山四人旅』
2011年5月の旅です。
20ページあたりまで読んで、うーむ。これは失敗したかもしれない。作品として成立するのだろうか。旅の雑記です。
旅した時期もかなり古い。2011年5月ですから、東日本大震災が3月11日にあったあとです。どうしてもそのことが頭の中にありながらの旅行記読書になってしまいます。
中年男女の春の恐山紀行です。40代女子が3人、男子がひとりというメンバーです。
男子は、『コパパーゲさん、編集者』、女子は、『シマさん、自営業、女子』、『みわっち、編集者』、そして、著者です。
女衒(ぜげん):女を遊女屋に売る仲介人
著者は、北海道から青森にフェリーで渡るのですが、フェリーの朝風呂で、おっぱいの大きな女の人を見ます。(フェリーに、ふろがあるのか。驚きました)
苫小牧からの出発ですが、到着地がどこかは書いてありません。調べたら、青森県八戸市でした。7時間半から8時間30分かかります。なんだか、旅の参考にはならない本のようです。
青森駅近くで、他のメンバーと合流し、『尻屋崎(しりやざき)恐山のずいぶん東の岬の突端』へと車を運転しながら移動します。変わったルートです。
なんか、40代男女のとっぴょうしもない旅が予想されます。結婚されているような雰囲気がありません。
ああ、先に恐山に寄ってから、尻屋崎に向かうのか。それなら納得です。
わたしが行って見たいなあと思っている、『恐山』の記述があるのですが、読んでもそれほど参考にはなりません。このあと間をおいて、再び、『恐山』を訪れた記事が出てくるはずです。
あまり得るものがないような旅行記です。雑記にすぎない。
なんというか、全体的に雑記、日記のたぐいの文章です。読む価値があるのだろうか?と思いつつも、まだ読み始めたばかりだからという気持ちで文章を目で追いかけています。
わたしは、ふだん、『学び』があるブログを作成しようと心がけています。わたしの文章を読んだ方に、『発見』がある。なにかひとつ知識が増えて、得をしたという気分になる。そういう文書を書こうという気持ちが、書き手である自分のスタンス(立ち位置)だと思っています。
ゆえに、わたしは逆に、『学び』があるブログをフォローしています。自分が見て、読んで、ほうそうなのかと気づきを与えてくれるブログをけっこうたくさんフォローしていて、なるべく毎日見たり読んだりするようにしています。自分が体験していなくても、読むだけで、体験した気持ちになれます。
そんなこんなを考えていると、この本は、読んで、『学び』があるのだろうかと疑問を持ちながら読んでいるのです。
お酒のみの人たちのようです。
いらぬ話ですが、ときおり、ネットやテレビ報道で、『貧困』の話が出るのですが、貧困に至る原因を観察してみると、たいていは、アルコール、ニコチン、ギャンブルでお金を使い果たしての貧困なのです。なかなか同情する気持ちにはなれないのです。
移動がひんぱんな旅です。旅の目的はなんだろう。
奇怪な(きっかいな)岸壁の仏ヶ浦(ほとけがうら)、(マグロ漁で有名な)大間(おおま)、大間-函館のフェリー、前の車の中で、カップルがキスをした、函館五稜郭(ごりょうかく)、文章にはリズムがあります。啄木小公園(石川啄木(いしかわたくぼく)の公園)、なんだか忙しい。車であちゃこちゃ回ります。札幌市内の渋滞では、車がほとんど動かない。
『夏の知床ミステリーツアー』
2011年8月の旅です。(平成23年)。メンバーは、3人。著者と30代女性と40代編集者男性です。
なんか、地理を知らない著者です。頭の中にある北海道内の地図が、正常ではありません。まあ、地理を知らない人はたくさんいるのでしょう。世の中は誤解と錯覚で成り立っているのです。
先日テレビで、野球のルールを知らない人が、球団のオーナーになっていたということを放送していたのを聞いて、なんだかなあと思いました。権力とお金をもっている人間はなんでもやれちゃいます。
斜里町、『津軽藩士殉難慰霊の碑(つがるはんしじゅんなんいれいのひ)』
1807年、江戸時代、ロシア方向からの侵略を防ぐ。100名中、寒さで、72名が死去。28名が生存。(そんなことがあったのか)
まあ、日記みたいです。
『(刑事)コロンボ』(なつかしい。中学生ぐらいの頃好きでいっしょうけんめい見ていました。NHKで流れていた刑事ドラマです。成人して見て、キライになりました。コロンボは、わざと容疑者をだますようにして逮捕に結びつけるのです。姑息な手段だと思いました。こそく:卑怯者(ひきょうもの)
摩周湖:自分も行ったことがあります。本の中では霧の中で湖面も見えなかったとありますが、わたしが行ったときは全体がはっきりと見えました。カラスが多かった。7月という夏だったのに、とても寒かった。
ときおり著者は、気に入らない人たちに、心の中で呪いを(のろいを)かけます。
著者は子供がキライみたいです。子供がさきざき、ぐれて家族に迷惑をかけるといいなというような呪いの言葉が多い。
わたしはたまに考えることがあります。結婚していない、配偶者がいない、こどもがいない、当然孫もいない、そういう人って、年齢を重ねて、どんな感じなのかなあと。
以前、そういう人たちにそのような質問をしたことがあります。答えは、『わからない』という返事でした。体験したことがないから、配偶者やこども、孫がいるという環境とか感覚がわからないそうです。
わたしが思うに、単身の人の頭の中は、18歳ぐらいの意識のままで、歳(とし)をとって、加齢で肉体が衰えていく状態なのだろうということです。永遠の少年・少女なのです。だから、家族持ちと単身者は、お互いにわかりあえないということはあろうかと思います。
わたしも訪れたところが次々と出てきます。屈斜路湖(くっしゃろこ)、阿寒湖(あかんこ)、ただ、読んでいて、その場所の描写が薄いような……
『恐山再びの旅』
2011年10月の旅です。
旅のメンバーは、著者と高校の同級生女子ふたり、40代編集者男性です。なんだかへんな組み合わせです。男性は著者のなんなのか。互いに異性を感じない親友なのか。
どういうわけか、奈良公園の鹿の写真があります。それから、神戸の中華街の写真もあります。恐山の旅レポートではないのか。なんでもありです。まあ、いいけど。
アルコールばっかり飲んでいます。いとうあさこさんたちの旅番組みたいです。お酒のみですなあ、
イタコの口寄せについて体験記が書いてあります。
まあ、霊がおりてくるというのはうそですな。
それでも行列ができていて、4時間は待たねばならぬようです。
まあ、ほかにやることもないからですな。
マグロ漁の大間に行きます。(おおま)
浅虫温泉(あさむしおんせん)にも行きます。(わたしも宿泊したことがあります)
棟方志功さんの記念館のことが書いてあります。わたしは去年、棟方志功の本、『板上に咲く 原田マハ 幻冬舎』を読みました。棟方夫婦の心温まる(こころあたたまる)物語でした。
酸ヶ湯温泉(すかゆおんせん)と八甲田連峰(はっこうだれんぽう)は、わたしも訪れたことがあります。11月下旬にロープウェイで山頂へ上りました。一面の銀世界(雪が積もって)で、感動しました。無音の世界で、空気が澄んでいました。岩木山が近く見えました。
八甲田山雪中行軍記念館:わたしは、小説を読んで、映画も見ました。日露戦争のための訓練で、大勢の人たちが亡くなりました。
映画の感想メモが残っています。
『不朽の名作(ふきゅうの、後世まで残る秀作)です。明治35年(1902年)雪山での軍事訓練中に参加者が大量死した事件・事故です。
音楽・映像・脚本・原作、そして演技、いずれも魂がこもっています。史実と映画は異なることでしょうが、女性案内人に対する高倉健さんの心熱い感謝の姿勢が気持ちを揺り動かしました。映画は夢です。希望です。こうあったらいいなという人の気持ちに触れることができます。
この映画はいくつかの対比を含んだ作品です。北大路欣也さんと高倉健さん、それぞれの隊の雪中行軍の形態は正反対です。二次的なこととして自意識過剰・能力不足の上司をもった部下の不幸が描かれています。一次的なことは反戦です。雪中行軍で帰還した高倉健さんたちも、のちの日露戦争で戦いに勝利したものの本人たちは戦死しています。戦争で失うものは大きい。立派ないい人材が命を落としていきます。日本国の損失です。
『ぐうたら夜話』
なんというか、旅の行き先はあまり意味がないのかなあ。
みんなで、わいわいがやがややる雰囲気がまずはだいじなのです。
本のタイトルは、『ぐうたら旅日記』なのですが、どういうわけか、この部分は、旅とは無関係ない内容です。
短いお話が数本入っています。
まえがきを読み直してみると、インターネットの交流サイトに投稿したショート・ストーリーだそうです。
丸川ヤマオという人物が登場したりしなかったりします。『湯』、『完璧なゆで卵』、『そろばん師』、『アンケート』、『家族』。
丸川ヤマオ:地方公務員。お大師様の夢をみる。お大師様:弘法大師。空海。真言宗。和歌山県高野山。
まあ、なんというか、あまり中身のないお話でした。
『心のふるさと積丹(しゃこたん)をゆく』
ウニへの道とあります。みんなでウニを食べに行くようです。
2006年8月の旅です。(もうずいぶん昔のことです。平成18年です)
同行者は、30代女性、40代女性姉妹、さらに40代女性、30代女性、いつもの40代男性編集者、著者を入れて合計7人です。
おたる水族館、移動しながらのアルコールの話が多い。アワビの話。
なつかしい。『水戸黄門の歌』が出てきました。
ふと思い出したことがありました。わたしは中学生のころ、熊本県の天草(あまくさ)という島で一時期暮らしていたのですが、海が近くにあったので、中学校が終わると、級友と漁船が泊まる港の岩場へ行き、ウニやサザエを取ってきて、家へ持ち帰り、七輪(しちりん)の火で貝類を焼いてみんなで食べていました。なつかしい。
『新ウニへの道』
2007年(平成19年)8月の記録です。
著者を含んで16人大所帯での旅です。
車3台で出発です。
ルートは前回と同じ、のんだくれの大騒ぎが続きます。
カニの話やら、ジンギスカンやら。北海道はうまいものがたくさんあります。
『ウニツアーというよりウニ合宿』
2008年(平成20年)8月、合計12人です。
ケモノのようなおばちゃんたちです。
おばちゃんたちは強い。
『あとがき』
2012年11月の日付で書いてあります。
『私は読者の方から「本当にエッセイに書かれているようないい加減な暮らしをしているのか。いい年してそれはどうか』と説教されるそうです。(わたしも同感です)
(読み終えて)
なんだったのだろう。なにも得るものがなかった。
読書に要した時間を返してほしい……
これは、旅ではない。
おおいなる人生の時間つぶしだ。
されど、そこが人生のいいところなのだろう。
そう思うしかない。
『わたしの、本のある日々 小林聡美(こばやし・さとみ) 毎日文庫』で、こちらの作家さんが紹介されていたので取り寄せてみました。
その本を読んだ時には、『いやよいやよも旅のうち 北大路公子 集英社文庫』という本のことが書いてあったのですが、関連で、青森県恐山のことが書いてあるこの本も読みたくなりました。
2年ぐらい前でしたか、NHKのテレビ番組、『72時間』で、恐山(おそれざん)を訪れる人たちのことが放送されていたのを見て、ちょうど、高齢だった妻の両親(義父母)が相次いで亡くなって間もなくの時期であったので、一度恐山にお参りに行きたいねと夫婦で話しました。
番組企画は、歴代のベスト10を決めるような内容だったと思います。『ドキュメント72時間 恐山 死者たちの場所 2014年6月6日放送(平成26年)』
されど、放送された当時はコロナ禍であり、その後、クマが出たり、地震の心配もあったりして、恐山への旅はまだ実現していません。
とりあえず、この本を読んで、行った気分になってみたい。
本に書いてある旅の内容は、恐山と知床が、2011年(平成23年)、積丹半島(しゃこたんはんとう)が、2006年~2008年(平成18年~平成20年)ですから、ちと古い。
(1回目の本読み)
わたしは、実用書の類(たぐい)は、まず、ひととおりゆっくりページを最後までめくりながら、どんなことが書いてあるのかを把握してから、最初のページに戻ってゆっくり読み始めます。
後ろ向きな言葉、後ろ向きな態度から文章が始まりました。旅はめんどくさいから嫌いだそうです。めんどくさがりいのおばちゃんですな。
70ページ、『ヒグマはあなたのすぐ横に』という記事があります。知床ですな。
もうずいぶん昔のことになりますが、自分たち家族が子ども連れで北海道へ行ったときに訪れた場所が、本に、次々と出てきます。レンタカーを運転して北海道を回りました。まだ、こどもたちも小さかった。
摩周湖、硫黄山、川湯温泉(横綱大鵬(たいほう)の故郷)、阿寒湖、屈斜路湖、網走、帯広、本の記事では、場所は、青森県に移って、三内丸山遺跡(さんないまるやまいせき。確か、縄文時代の遺跡が展示してありました)、それらは、わたしも訪れたことがある観光地です。
後半は、旅とは関連のないエッセイも含まれているようです。
(2回目の本読み)
『春の恐山四人旅』
2011年5月の旅です。
20ページあたりまで読んで、うーむ。これは失敗したかもしれない。作品として成立するのだろうか。旅の雑記です。
旅した時期もかなり古い。2011年5月ですから、東日本大震災が3月11日にあったあとです。どうしてもそのことが頭の中にありながらの旅行記読書になってしまいます。
中年男女の春の恐山紀行です。40代女子が3人、男子がひとりというメンバーです。
男子は、『コパパーゲさん、編集者』、女子は、『シマさん、自営業、女子』、『みわっち、編集者』、そして、著者です。
女衒(ぜげん):女を遊女屋に売る仲介人
著者は、北海道から青森にフェリーで渡るのですが、フェリーの朝風呂で、おっぱいの大きな女の人を見ます。(フェリーに、ふろがあるのか。驚きました)
苫小牧からの出発ですが、到着地がどこかは書いてありません。調べたら、青森県八戸市でした。7時間半から8時間30分かかります。なんだか、旅の参考にはならない本のようです。
青森駅近くで、他のメンバーと合流し、『尻屋崎(しりやざき)恐山のずいぶん東の岬の突端』へと車を運転しながら移動します。変わったルートです。
なんか、40代男女のとっぴょうしもない旅が予想されます。結婚されているような雰囲気がありません。
ああ、先に恐山に寄ってから、尻屋崎に向かうのか。それなら納得です。
わたしが行って見たいなあと思っている、『恐山』の記述があるのですが、読んでもそれほど参考にはなりません。このあと間をおいて、再び、『恐山』を訪れた記事が出てくるはずです。
あまり得るものがないような旅行記です。雑記にすぎない。
なんというか、全体的に雑記、日記のたぐいの文章です。読む価値があるのだろうか?と思いつつも、まだ読み始めたばかりだからという気持ちで文章を目で追いかけています。
わたしは、ふだん、『学び』があるブログを作成しようと心がけています。わたしの文章を読んだ方に、『発見』がある。なにかひとつ知識が増えて、得をしたという気分になる。そういう文書を書こうという気持ちが、書き手である自分のスタンス(立ち位置)だと思っています。
ゆえに、わたしは逆に、『学び』があるブログをフォローしています。自分が見て、読んで、ほうそうなのかと気づきを与えてくれるブログをけっこうたくさんフォローしていて、なるべく毎日見たり読んだりするようにしています。自分が体験していなくても、読むだけで、体験した気持ちになれます。
そんなこんなを考えていると、この本は、読んで、『学び』があるのだろうかと疑問を持ちながら読んでいるのです。
お酒のみの人たちのようです。
いらぬ話ですが、ときおり、ネットやテレビ報道で、『貧困』の話が出るのですが、貧困に至る原因を観察してみると、たいていは、アルコール、ニコチン、ギャンブルでお金を使い果たしての貧困なのです。なかなか同情する気持ちにはなれないのです。
移動がひんぱんな旅です。旅の目的はなんだろう。
奇怪な(きっかいな)岸壁の仏ヶ浦(ほとけがうら)、(マグロ漁で有名な)大間(おおま)、大間-函館のフェリー、前の車の中で、カップルがキスをした、函館五稜郭(ごりょうかく)、文章にはリズムがあります。啄木小公園(石川啄木(いしかわたくぼく)の公園)、なんだか忙しい。車であちゃこちゃ回ります。札幌市内の渋滞では、車がほとんど動かない。
『夏の知床ミステリーツアー』
2011年8月の旅です。(平成23年)。メンバーは、3人。著者と30代女性と40代編集者男性です。
なんか、地理を知らない著者です。頭の中にある北海道内の地図が、正常ではありません。まあ、地理を知らない人はたくさんいるのでしょう。世の中は誤解と錯覚で成り立っているのです。
先日テレビで、野球のルールを知らない人が、球団のオーナーになっていたということを放送していたのを聞いて、なんだかなあと思いました。権力とお金をもっている人間はなんでもやれちゃいます。
斜里町、『津軽藩士殉難慰霊の碑(つがるはんしじゅんなんいれいのひ)』
1807年、江戸時代、ロシア方向からの侵略を防ぐ。100名中、寒さで、72名が死去。28名が生存。(そんなことがあったのか)
まあ、日記みたいです。
『(刑事)コロンボ』(なつかしい。中学生ぐらいの頃好きでいっしょうけんめい見ていました。NHKで流れていた刑事ドラマです。成人して見て、キライになりました。コロンボは、わざと容疑者をだますようにして逮捕に結びつけるのです。姑息な手段だと思いました。こそく:卑怯者(ひきょうもの)
摩周湖:自分も行ったことがあります。本の中では霧の中で湖面も見えなかったとありますが、わたしが行ったときは全体がはっきりと見えました。カラスが多かった。7月という夏だったのに、とても寒かった。
ときおり著者は、気に入らない人たちに、心の中で呪いを(のろいを)かけます。
著者は子供がキライみたいです。子供がさきざき、ぐれて家族に迷惑をかけるといいなというような呪いの言葉が多い。
わたしはたまに考えることがあります。結婚していない、配偶者がいない、こどもがいない、当然孫もいない、そういう人って、年齢を重ねて、どんな感じなのかなあと。
以前、そういう人たちにそのような質問をしたことがあります。答えは、『わからない』という返事でした。体験したことがないから、配偶者やこども、孫がいるという環境とか感覚がわからないそうです。
わたしが思うに、単身の人の頭の中は、18歳ぐらいの意識のままで、歳(とし)をとって、加齢で肉体が衰えていく状態なのだろうということです。永遠の少年・少女なのです。だから、家族持ちと単身者は、お互いにわかりあえないということはあろうかと思います。
わたしも訪れたところが次々と出てきます。屈斜路湖(くっしゃろこ)、阿寒湖(あかんこ)、ただ、読んでいて、その場所の描写が薄いような……
『恐山再びの旅』
2011年10月の旅です。
旅のメンバーは、著者と高校の同級生女子ふたり、40代編集者男性です。なんだかへんな組み合わせです。男性は著者のなんなのか。互いに異性を感じない親友なのか。
どういうわけか、奈良公園の鹿の写真があります。それから、神戸の中華街の写真もあります。恐山の旅レポートではないのか。なんでもありです。まあ、いいけど。
アルコールばっかり飲んでいます。いとうあさこさんたちの旅番組みたいです。お酒のみですなあ、
イタコの口寄せについて体験記が書いてあります。
まあ、霊がおりてくるというのはうそですな。
それでも行列ができていて、4時間は待たねばならぬようです。
まあ、ほかにやることもないからですな。
マグロ漁の大間に行きます。(おおま)
浅虫温泉(あさむしおんせん)にも行きます。(わたしも宿泊したことがあります)
棟方志功さんの記念館のことが書いてあります。わたしは去年、棟方志功の本、『板上に咲く 原田マハ 幻冬舎』を読みました。棟方夫婦の心温まる(こころあたたまる)物語でした。
酸ヶ湯温泉(すかゆおんせん)と八甲田連峰(はっこうだれんぽう)は、わたしも訪れたことがあります。11月下旬にロープウェイで山頂へ上りました。一面の銀世界(雪が積もって)で、感動しました。無音の世界で、空気が澄んでいました。岩木山が近く見えました。
八甲田山雪中行軍記念館:わたしは、小説を読んで、映画も見ました。日露戦争のための訓練で、大勢の人たちが亡くなりました。
映画の感想メモが残っています。
『不朽の名作(ふきゅうの、後世まで残る秀作)です。明治35年(1902年)雪山での軍事訓練中に参加者が大量死した事件・事故です。
音楽・映像・脚本・原作、そして演技、いずれも魂がこもっています。史実と映画は異なることでしょうが、女性案内人に対する高倉健さんの心熱い感謝の姿勢が気持ちを揺り動かしました。映画は夢です。希望です。こうあったらいいなという人の気持ちに触れることができます。
この映画はいくつかの対比を含んだ作品です。北大路欣也さんと高倉健さん、それぞれの隊の雪中行軍の形態は正反対です。二次的なこととして自意識過剰・能力不足の上司をもった部下の不幸が描かれています。一次的なことは反戦です。雪中行軍で帰還した高倉健さんたちも、のちの日露戦争で戦いに勝利したものの本人たちは戦死しています。戦争で失うものは大きい。立派ないい人材が命を落としていきます。日本国の損失です。
『ぐうたら夜話』
なんというか、旅の行き先はあまり意味がないのかなあ。
みんなで、わいわいがやがややる雰囲気がまずはだいじなのです。
本のタイトルは、『ぐうたら旅日記』なのですが、どういうわけか、この部分は、旅とは無関係ない内容です。
短いお話が数本入っています。
まえがきを読み直してみると、インターネットの交流サイトに投稿したショート・ストーリーだそうです。
丸川ヤマオという人物が登場したりしなかったりします。『湯』、『完璧なゆで卵』、『そろばん師』、『アンケート』、『家族』。
丸川ヤマオ:地方公務員。お大師様の夢をみる。お大師様:弘法大師。空海。真言宗。和歌山県高野山。
まあ、なんというか、あまり中身のないお話でした。
『心のふるさと積丹(しゃこたん)をゆく』
ウニへの道とあります。みんなでウニを食べに行くようです。
2006年8月の旅です。(もうずいぶん昔のことです。平成18年です)
同行者は、30代女性、40代女性姉妹、さらに40代女性、30代女性、いつもの40代男性編集者、著者を入れて合計7人です。
おたる水族館、移動しながらのアルコールの話が多い。アワビの話。
なつかしい。『水戸黄門の歌』が出てきました。
ふと思い出したことがありました。わたしは中学生のころ、熊本県の天草(あまくさ)という島で一時期暮らしていたのですが、海が近くにあったので、中学校が終わると、級友と漁船が泊まる港の岩場へ行き、ウニやサザエを取ってきて、家へ持ち帰り、七輪(しちりん)の火で貝類を焼いてみんなで食べていました。なつかしい。
『新ウニへの道』
2007年(平成19年)8月の記録です。
著者を含んで16人大所帯での旅です。
車3台で出発です。
ルートは前回と同じ、のんだくれの大騒ぎが続きます。
カニの話やら、ジンギスカンやら。北海道はうまいものがたくさんあります。
『ウニツアーというよりウニ合宿』
2008年(平成20年)8月、合計12人です。
ケモノのようなおばちゃんたちです。
おばちゃんたちは強い。
『あとがき』
2012年11月の日付で書いてあります。
『私は読者の方から「本当にエッセイに書かれているようないい加減な暮らしをしているのか。いい年してそれはどうか』と説教されるそうです。(わたしも同感です)
(読み終えて)
なんだったのだろう。なにも得るものがなかった。
読書に要した時間を返してほしい……
これは、旅ではない。
おおいなる人生の時間つぶしだ。
されど、そこが人生のいいところなのだろう。
そう思うしかない。
2025年01月22日
名もなき世界のエンドロール 行成薫 集英社文庫
名もなき世界のエンドロール 行成薫(ゆきなり・かおる 男性) 集英社文庫
『俺』キダちゃん(亡くなったキダタローさんを思い出しました):30歳過ぎの男性。ビビリ症。183cm、80kg。運動はできる。
澤田マコト:『俺』の同級生。小学一年生からの付き合いがある。変人。俺がつくったニックネームが、『ドッキリリスト』。現在は、ワイン輸入代行会社の社長。アルコールを扱う仕事なのに下戸(げこ。酒を飲めない。そんな人がこの仕事に就けるとは思えません。メロンソーダが好きだそうです)。体格は、キダちゃんと比べるとかなり劣る。でも、神経はキダちゃんよりずいぶん太い。
はじまりから何度も、『煙草(たばこ)を吸う話』ばかりです。なんだかなあ。現代社会は禁煙の世の中です。
セリフで話をつないでいく文章の表現方式です。
俺は高校時代、野球部員だった。甲子園を目指していたが、地方予選であっさり負けた。
14ページまで読んで、煙草と酒の話が多いので、もう読むのをやめようかなと思う。
だらしない人間の手記のようです。
15ページになって、『この一本を吸い終えたら、煙草をやめることになる(禁煙する)』という文章が出てきたので読み進めることにしました。
その後、『俺』は、いなか道にある押しボタン式信号が青になったので、道を渡ろうとしたら、信号無視の猛スピードで走ってきた黒いステーションワゴンにはねられそうになりました。『俺』の命はかろうじて助かりました。(この部分は、未来で起きることの暗示です)
『硬直した世界とナポリタン』
◇半年前 三十歳
ミルキー・ミルキー:ファミリーレストランの店舗名
タバスコ:とうがらしでつくった赤くて辛い(からい)ソース
ブート・ジョロキア:世界一辛いとうがらし
リサ:真っ赤なスポーツカーを運転している。マコトの彼女。大手飲食店グループの社長の一人娘ファッションモデルをしている。知名度あり。ワガママ娘
『断片(1)』
どういう形式の文章なのだろうか?
『捻じ曲がった秩序とコーラ(ねじまがったちつじょとコーラ)』
◇十三年前 十七歳
高校三年生二学期。俺とマコトの日々
ヨッチ:男ふたりの同級生女子。小学校5年生の2学期途中に転校してきた。親がいない(施設からの通学だろうか。なお、マコトも俺も、親がいないらしい。ヨッチは、背はそんなに高くない。かわいくはないけれどブスでもない。やたら体が細い。金髪
楠田(くすだ):ニックネームが、「クソ田」。体罰をする小学校の女教師。三十代なかば。三人の思い出話に出てくる。こどものころ、楠田に仕返しをした。コーラ缶を振って、楠田にぶちまけた。
(なかなかおもしろい。わたしが小学校低学年のときは、児童間のいじめよりも教師の体罰がひどかったことを思い出しました。合法的な暴力です。親も助けてくれません。むしろ、親は、暴力を振るう先生の味方をしていました。女性の教師でもひどかった。授業中にクラスメートがパンパン連続でビンタされると、自分がたたかれているようで悲しかったことを覚えています。半世紀ぐらい前までは、先生は神様か聖職者扱いでした)
なんだか、せつなそうな展開になりそうです。
(つづく)
『断片(2)』
とくにコメントはありません。
『憂鬱な雨と不法侵入』
◇七年前 二十四歳
佐々木:マキシマムフードサービスの経営者
キダ(城田):佐々木に殺し屋と間違えられるが、殺し屋ではない。「交渉屋」である。
佐々木に、女と別れてくれと交渉する。
う~む。この小説は、どうしたいのだろうか。
『断片(3)』
さきほどの女が、「リサ」だと判明する。
う~む。なぜもう終ってしまった昔のことばかりにこだわるのだろう。過ぎてしまったことは、過ぎてしまったことです。(読み終えて、こだわらなければならないのでした)
『赤い傷痕(きずあと)とチキン・レース』
◇十年前 二十歳
澤田マコトが働いている店の「有限会社宮沢板金塗装」という看板を、「AUTO SHOP JIM(オートショップジム)」に変える。JIMは、洋画、「理由なき反抗」でジェームス・ディーン(車で事故死した。24歳没)が演じた主役のジムのこと。(なつかしい。1955年昭和30年の作品です)
生きていくために必要なもの(勇気、想像力、少しの金。引用は、洋画チャップリンの「ライムライト」から)
バカ女が出てきます。金さえ出せば、なんでもできると思っているバカ女です。
リサです。
『断片(4)』
わたしからのコメントは、とくにありません。
『生きる意味とエンドロール』
◇五ヶ月前 三十歳
㈱川畑洋行(かわばたようこう)の川畑:交渉屋の城田(きだ)に仕事を回している。
城田は、仕事をするにあたって、リンゴがほしい。川畑からもらう。(リンゴは、比喩(ひゆです。何かをリンゴにたとえている)
ヨッチは、中の上の高校へ進学した。
城田とマコトは、底辺から少し上の高校へ進学した。
ヨッチ(女子)には、病死した実父(本パパと呼ぶ)と、母親再婚後の継父(偽パパと呼ぶ)がいる。
ヨッチの母親は、こどもよりも男を取った。
ヨッチは、母方祖父母に引き取られた。ヨッチが小学5年生のときだった。
ヨッチは、映画が好きだ。映画のエンドロールを見ることが好きだ。(エンドロール:関係者名簿)
『生きるということに理由が必要なんじゃなくて、みんな自分が生きていることに理由をつけたいだけなんだよ……』(昨年暮れのM-1を見ていたら、出場したコンビのひとりが、『人生に意味なんていらないんだ!』と言ったところで爆笑しました。確かに、人が生きていくうえで、『意味』はいらないのです。意味:内容、概念がいねん。形、説明)
『断片(5)』
道路で、犬が車にひかれて、死んでいます。
小学生のヨッチが、犬のそばにしゃがんていた。朝からずーっと、学校にこないで、しゃがんで、犬のおなかを指先でなでていた。
そのうち、回収業者が来て犬を回収していった。
『夕暮れの海と約束のフィルム』
◇十六年前 十五歳
作者は、青春の残像(思い出)を描きたいのか。
三人はいつもいっしょにいる。
三人とも、実親がいない者どうしだから、気持ちが通じ合うものがある。
城田(キダ)とマコトは、親戚の家に預けられている。ヨッチは、母方祖父母の家に預けられている。おとなの顔色をうかがいながら生活していたと話がある。
『親が死んでさ、自分の根っこを失くしたんだと思うんだよ』
男ふたりは、ヨッチに会うまで、笑うことがなかった。ヨッチは、根っこがなくても笑う人だった。いっしょにいて、救われるものがあった。
マコトは、ドッキリ企画が好きである。
ドッキリを仕掛けて、相手が驚いた顔を見たい。快感がある。
148ページあたりが、この小説の主題(テーマ)か。
女子であるヨッチの話です。
『(自分がそこにいるという)存在を消されるのが怖い(こわい)』
小学生のときにいじめにあった。
最後は存在を消された。存在を消された時が、一番つらかった。
(だから、映画のエンドロールを自分の人生として、関係者名簿であるエンドロールに、自分の名前を載せたいという願望があるのでしょう)
『最後はさ、無いもの扱いされる。教室にある自分の名前が書いてあるものが消されて、椅子も机もなくなって、誰も話しかけてくれないし、教室に居場所がなくなって、あたしは、床に座って何もせずに過ごすしかない。先生も助けてくれなかった……』
『いじめられる方が悪いなんてことは、一ミリたりとも、絶対にねえんだよ』
いじめた人間たちは、今もどこかで生きていて、平気な顔をして暮らしている。
いじめられた人間は、一生、いじめた人間のことを忘れない。(この小説のテーマが、『復讐(ふくしゅう。仕返し)』です)
三人は、ヨッチをいじめた男たちに話をしに行って殴り合いのケンカになります。
『断片(6)』
また、煙草の煙を吸っています。(禁煙して幸せになりましょう)
『見下ろす夜景と見上げる灯り』
◇四ヶ月前 三十歳
小野瀬(おのせ。マコトの苗字(みょうじ))
ボブ:黒人
ジジイ:会社社長。ワインの輸入業。金持ち。末期がんで余命半年。家族に逃げられた孤独なジジイ
JIM:澤田マコトが働いていた店の「有限会社宮沢板金塗装」の変更後の店名のこと。「AUTO SHOP JIM(オートショップジム)」。JIMは、洋画、『理由なき反抗』でジェームス・ディーンが演じた主役のジムのこと。
澤田マコトは、JIMを半年前に退職して、東京へ行った。城田(キダちゃん)は、東京へ行き澤田マコトと再会した。澤田マコトは、黒人のボブに顔をなぐられて、顔がはれていた。
プロポーズ大作戦:婚活のことだろうか。派手なモデルみたいな女、『リサ』と結婚したいということだろうか。ちょっと今は意味がわかりません。
澤田マコトは、4500万円用意して、お金持ちのジジイからジジイの会社を買いたい。
ワイン会社だが、澤田マコトは、お酒は飲めない。
<186ページ(全体で339ページ)まできましたが、いったん一部分を整理してみます>
なぜ、こんなに、昔の部分にこだわる書き方(レイアウト)をしてあるのだろう。今はまだわかりません。
① 半年前 30歳(年齢は、語り手の城田ちゃん(きだちゃん)、小野瀬マコトとヨッチ(女性)の年齢。三人は同級生。
② 7年前 24歳 リサが登場する(お金持ちのわがまま娘。小野瀬マコトは、リサと結婚してお金持ちになりたい)
③ 10年前 20歳
④ 5か月前 30歳
⑤ 16年前 15歳
⑥ 4か月前 30歳
⑦ 7年前 24歳
⑧ 13年前 18歳
(読んでいる部分に戻ります)
リンゴ:リンゴがこのあと鍵を握るようです。(リンゴ=爆弾)
IPO:Initial Public Offering 新規株式公開。企業が初めて株を市場で売り出す。
192ページから深い話になります。
小野瀬マコト(いつの間にか苗字(みょうじ)が、澤田マコトから小野瀬マコトに変わっています。201ページに種明かしがあります)の話です。
マコトはリサと結婚したい。リサはわがままで勝手な性格だから、まともな男では、結婚は長続きしない。リッチなリサの父親は、娘婿(むすめむこ)に次のことを期待する。自分の手足になってくれる若い男に娘を押し付ける。娘婿をいろいろ利用しよう。(それが現実だ)
リサは、金や物はたっぷり与えられたが、純粋な愛情を与えてもらえない立場だ。父親にとって娘は、自分が商売をしていくうえでの道具だ。
『断片(7)』
学校のことです。教頭の訓示のような話があります。
(教頭は、生徒のために話しているのではない。話をしている自分が教育熱心という印象をもたれたいから話している)
この部分を読んで自分なりに思い出したことがあります。
学校時代、教師から、おまえたちは、そんなふうでは、社会に出てからちゃんとやっていけないぞとよく叱られました。もっとまじめにやれと教育されました。
社会に出たら、まわりは、いいかげんな人でいっぱいでした。人をだまして、人がかせいだお金を横取りしようとする人がいっぱいいました。うそつきがいっぱいいました。何度もだまされました。
『(人を)信じる』ことは大事ですが、同時に、『疑う』ことも大事です。学校で、きれいごとだけを教えられたら、こどもの心は社会に出たら、へし折れます。
そんなことを思い出しました。
いいなあと思ったセリフです。
『私たちには、無限の未来なんかありません……』
なかなか良くなってきました。今年読んで良かった一冊になるかもしれません。
『沈黙の銃とアイデンティティ』(アイデンティティは、自分の信念、価値観、自分の社会的役割、自分の根っこ。自分とは何かという問いに対する答(こたえ))
◇七年前 二十四歳
交渉屋:城田(きだ)のこと。
ID:アイディー。アイデンティティ
『つまり、僕は、存在ごと売却されたわけだ……』(この話の肝(きも。肝心なところ)かもしれない)
『自分って、いったいなんなんだ……』
『自分は何のために生きてるんだ……』(哲学的です)
『そういうこと考えると、死にたくなるだろ……』(でも、たいていは死なない)
株式会社川畑洋行:輸入代行業。輸入以外にもいろいろやっている。
この時城田は21歳だった。
城田の両親は、城田が9歳の時に事故死した。
(両親がいなくなってから、城田はどんな気持ちで生きてきたのだろう。自分の存在をどのように定義してこの世に存在してきたのだろう。この世に、いてもいなくても良い存在だったのかもしれないという雰囲気があります)
『必然性と理由があれば……』(人殺しもありか)
ときおり、『ドッキリ』の話が出ます。どっきりカメラのどっきりです。
びっくりする。びっくりさせられる。びっくりさせる。
『この世界を回している人間は、九十九パーセントが嘘つきだからね……』(同感です。世界は、誤解と錯覚で成り立っているのです)
『……自分を放棄して待っていた……』(自分を放棄する)
運び屋:運搬専門
親がいないこどもの人生は、もう消えてなくなっているようなものだそうです。
『断片(8)』
世の中は、非情です。
『マチルダ』
◇十三年前 十八歳
マコトが、『どっきり』にこだわる理由:マコトの母親が、(心の病が原因で)しゃっくりがひどかった。母親のしゃっくりを止めるために、こどもだったマコトは、母親にどっきりをしかけることを覚えた。マコトの父親は、女をつくって家から出て行っていた。マコトにとって、母親は唯一の頼れる存在だった。どっきり=びっくり(しゃっくりが止まった)。でも、母親は失踪して、マコトの前から消えた。
『誰かに、何かを伝えるって、難しいね』
『さびしい、ってかさ、さみしい』
城田ちゃんの両親は、城田ちゃんが小学校にあがる数日前、ふたりで買い物に行った。ふたりが乗っていた車に、トラックの荷台から数トンもある鋼材が落ちてきて、両親の体は一瞬でつぶれてしまった。両親が死んだというよりも、突然いなくなった。城田ちゃんは、叔父さん伯母さんの家で育てられた。
『両親のことを思うと、さみしいというよりは、懐かしいという、気分になるよ』
自分の人生にリアリティがないと城田ちゃんが言います。俺は、『俺』という人間をずっとうしろからながめながら生きている。(なかなか書けることではありません)
自分の人生を他人事のような立場でながめている。
同じく親がいないヨッチが言います。『あたしたちは、やっぱりちょっと、何かが欠けている』
洋画、『フォレスト・ガンプ』の話が出ます。名作です。わたしも何度も見返しました。
無粋(ぶすい):微妙なやりとりがわからない感覚。やぼ。融通がきかない。ユーモアを受け入れない。男女のことがわかっていないなど。
繊細です。(せんさい:微妙で感じやすい。かぼそい)
『運命』とか、『宿命』を感じます。『恋愛ドラマ』、『人生ドラマ』です。
洋画、『レオン』(観たことがあります。すさまじい撃ち合いシーンがあった記憶です。マチルダという少女が出てきます。少女が、殺し屋を味方につけて、ギャングと戦います。少女はギャングに殺されそうなのです)
ヨッチが、小学校でいじめられた話が出ます。
ヨッチは、マチルダだった。マコトと城田が、殺し屋だった。ヨッチは、マコトと城田に救われた。三人とも親がいないこどもだった。
優しい物語です。今年読んで良かった一冊になりました。
『運命に従う』
『俺は、遅かった……』
詩を読むようです。
『断片(9)』
とくに書きたいことはありませんが、『一日あれば、世界は変わる。二日あったら、宇宙がなくなってもおかしくない』という文章が、この物語の鍵を握るようです。ヨッチの本パパ(実父)の日記に書いてあったそうです。
『十年間と地下駐車場』
◇前夜 三十一歳
ここまで読んできて、ちょっとわからないことがあるのです。(最後まで読んで、わかりました)
澤田マコトは、小野瀬マコトになり、『プロポーズ大作戦』とやらで、財閥の娘真っ赤なスポーツカーを乗り回すわがまま娘と結婚して入り婿(いりむこ)になりたい。
ヨッチは、自分の結婚相手として、マコトか、城田(きだ)か、どちらの男でもいいと思っていて、先に自分にプロポーズしてくれたほうと結婚すると決めていた。
ふたりのうちで、先にヨッチにプロポーズしてくれたのは、マコトのほうだった。
すると、マコトは、重婚状態になってしまうのです。
わたしの理解が間違っているのだろうか。
(259ページで、マコトは、ヨッチと築15年のアパートで暮らすことにしたとあります。アパートの部屋でクリスマス会をやる。参加者は、マコトとヨッチと城田とサエキとコンちゃんとミチルとコジケン)
ジェームス・ボンド:1953年(昭和28年)に誕生したシリーズの主人公で、スパイ。コードナンバーが、『007(ダブルオーセブン)』
リング・ピロー:指輪をのせる小さな枕(まくら)
『断片(10)』
アパートに、ヨッチが帰ってきません。
大粒の涙をぼろぼろと零す(こぼす)
『小さなリングと白い聖夜』
◇十二月二十四日 三十一歳
クライマックスです。激しい。
復讐劇です。
殺せばいいとか、(自分が)死ねばいいとか。今どきの、『無敵』みたいではある。
う~む。殺せばいいとか、死ねばいという理屈は社会では通用しません。安全のために、罪を法令で整理せいとんするのがベターな手法です。
親がいないから、自分がこの世にいなくてもいい存在になってしまったという感情をもつ人間になってしまったということを表現してある小説でした。
いいなあと思った文節として、『……脳が疲れた……』
シルバー・ベルズ:クリスマスソング
ビング・クロスビー:アメリカ合衆国の歌手、俳優。1977年(昭和52年)74歳没
カサブランカ:洋画。1942年(昭和17年)
ハンフリー・ボガード:アメリカ合衆国の俳優。1957年(昭和32年)57歳没
パソコンのインターフェイス:パソコンと周辺機器を接続するための端子、手段
PA:イベントで、音響機器担当。パブリックアドレス
『あたしは、死ぬ必要がないから生きてるし、生きてる必要がなくなったら死ぬんだよ、きっと』(あたしの命は、あたしではなくて、運命とか、宿命とか、そういった目には見えないものが決めるのよと受け取りました)
じっさい、ニュースを見ていると、『ひき逃げ』というひどいことをする人はあんがい多い。
救急車を呼んでいれば、助かる命もあるにちがいない。
お金持ちが、権限と権力をもつ役所の人間に働きかけて、罪や罰を握りつぶす。
人に迷惑をかけることをなんとも思っていない人間がいます。
自分は何をやっても許されると思っている人間がいます。
近づかないほうがいい。
十年かけて、復讐した。
物語づくりの基本は、『忠臣蔵』です。
人は、死んだあとのことを考えます。
この時代の地球上に、自分という人間が存在していた証拠を残しておきたい。
なのに、それを拒んだ(こばんだ)人間たちがいた。
お金持ちや権力を握っている人間たちが、ヨッチの存在を地球上から消した。
ヨッチは、この世にいなかったものとして扱われた。だから、マコトとキダは、復讐するのです。
そして、マチルダ(洋画レオンに登場する少女)です。
『メリークリスマス』(これを書いている日がたまたま2024年12月25日水曜日です)
なんともいえない終わり方です。
『世界の終わりと冬の青空』
◇十二月二十五日 三十一歳
隠遁(いんとん):世間と関わらずに心安らかに暮らす。
もうすぐ読み終わりますが、『リサ』の人物像の描写が薄かったかなあ。
このかたまりの部分の記述は、いらなかったんじゃないかなあ。
この前のかたまりの部分の、『説明』になっています。
『プロポーズ大作戦』というのは、仕返し大作戦ということだったのか。
最後の最後はちょっとひっくりかえしあります。じょうずです。
おもしろいなあとは思いますが、そこまでしなくても……
『ポケット』という短いかたまりの作品がくっついていました。
まあ、タバコ小説ですな。
『冬なんてさ……亀でも熊でも(家に閉じこもってじっとしている)』(最近のクマは、冬でも人里に降りてきて、食料を狙うようになりました。先日のテレビで、食べ物があれば、クマは冬眠しないと説明がありました)
違和感がありました。
自動車の板金塗装業をしているマコトが、押しボタン式信号のボタンを押すような状況になることはないと思うのです。
自動車関係の仕事をしている人は、移動手段はたいてい車です。小説を読んでいて、マコトが徒歩移動をすることが不自然でした。
いい文章だと思ったのが、(ヨッチの気持ちとして、マコトとキダがこの世からいなくなったら)『……二人がいなくなった世界には、きっと色がない……』
『機関銃の斉射(354ページ)』は、『機関銃の一斉射撃(いっせいしゃげき)』と書きたかったのではなかろうか。
『(洋画)俺たちに明日はない』をたとえにして、『俺たちには明日があるだろ』(ありません)
悲しいお話でした。
『俺』キダちゃん(亡くなったキダタローさんを思い出しました):30歳過ぎの男性。ビビリ症。183cm、80kg。運動はできる。
澤田マコト:『俺』の同級生。小学一年生からの付き合いがある。変人。俺がつくったニックネームが、『ドッキリリスト』。現在は、ワイン輸入代行会社の社長。アルコールを扱う仕事なのに下戸(げこ。酒を飲めない。そんな人がこの仕事に就けるとは思えません。メロンソーダが好きだそうです)。体格は、キダちゃんと比べるとかなり劣る。でも、神経はキダちゃんよりずいぶん太い。
はじまりから何度も、『煙草(たばこ)を吸う話』ばかりです。なんだかなあ。現代社会は禁煙の世の中です。
セリフで話をつないでいく文章の表現方式です。
俺は高校時代、野球部員だった。甲子園を目指していたが、地方予選であっさり負けた。
14ページまで読んで、煙草と酒の話が多いので、もう読むのをやめようかなと思う。
だらしない人間の手記のようです。
15ページになって、『この一本を吸い終えたら、煙草をやめることになる(禁煙する)』という文章が出てきたので読み進めることにしました。
その後、『俺』は、いなか道にある押しボタン式信号が青になったので、道を渡ろうとしたら、信号無視の猛スピードで走ってきた黒いステーションワゴンにはねられそうになりました。『俺』の命はかろうじて助かりました。(この部分は、未来で起きることの暗示です)
『硬直した世界とナポリタン』
◇半年前 三十歳
ミルキー・ミルキー:ファミリーレストランの店舗名
タバスコ:とうがらしでつくった赤くて辛い(からい)ソース
ブート・ジョロキア:世界一辛いとうがらし
リサ:真っ赤なスポーツカーを運転している。マコトの彼女。大手飲食店グループの社長の一人娘ファッションモデルをしている。知名度あり。ワガママ娘
『断片(1)』
どういう形式の文章なのだろうか?
『捻じ曲がった秩序とコーラ(ねじまがったちつじょとコーラ)』
◇十三年前 十七歳
高校三年生二学期。俺とマコトの日々
ヨッチ:男ふたりの同級生女子。小学校5年生の2学期途中に転校してきた。親がいない(施設からの通学だろうか。なお、マコトも俺も、親がいないらしい。ヨッチは、背はそんなに高くない。かわいくはないけれどブスでもない。やたら体が細い。金髪
楠田(くすだ):ニックネームが、「クソ田」。体罰をする小学校の女教師。三十代なかば。三人の思い出話に出てくる。こどものころ、楠田に仕返しをした。コーラ缶を振って、楠田にぶちまけた。
(なかなかおもしろい。わたしが小学校低学年のときは、児童間のいじめよりも教師の体罰がひどかったことを思い出しました。合法的な暴力です。親も助けてくれません。むしろ、親は、暴力を振るう先生の味方をしていました。女性の教師でもひどかった。授業中にクラスメートがパンパン連続でビンタされると、自分がたたかれているようで悲しかったことを覚えています。半世紀ぐらい前までは、先生は神様か聖職者扱いでした)
なんだか、せつなそうな展開になりそうです。
(つづく)
『断片(2)』
とくにコメントはありません。
『憂鬱な雨と不法侵入』
◇七年前 二十四歳
佐々木:マキシマムフードサービスの経営者
キダ(城田):佐々木に殺し屋と間違えられるが、殺し屋ではない。「交渉屋」である。
佐々木に、女と別れてくれと交渉する。
う~む。この小説は、どうしたいのだろうか。
『断片(3)』
さきほどの女が、「リサ」だと判明する。
う~む。なぜもう終ってしまった昔のことばかりにこだわるのだろう。過ぎてしまったことは、過ぎてしまったことです。(読み終えて、こだわらなければならないのでした)
『赤い傷痕(きずあと)とチキン・レース』
◇十年前 二十歳
澤田マコトが働いている店の「有限会社宮沢板金塗装」という看板を、「AUTO SHOP JIM(オートショップジム)」に変える。JIMは、洋画、「理由なき反抗」でジェームス・ディーン(車で事故死した。24歳没)が演じた主役のジムのこと。(なつかしい。1955年昭和30年の作品です)
生きていくために必要なもの(勇気、想像力、少しの金。引用は、洋画チャップリンの「ライムライト」から)
バカ女が出てきます。金さえ出せば、なんでもできると思っているバカ女です。
リサです。
『断片(4)』
わたしからのコメントは、とくにありません。
『生きる意味とエンドロール』
◇五ヶ月前 三十歳
㈱川畑洋行(かわばたようこう)の川畑:交渉屋の城田(きだ)に仕事を回している。
城田は、仕事をするにあたって、リンゴがほしい。川畑からもらう。(リンゴは、比喩(ひゆです。何かをリンゴにたとえている)
ヨッチは、中の上の高校へ進学した。
城田とマコトは、底辺から少し上の高校へ進学した。
ヨッチ(女子)には、病死した実父(本パパと呼ぶ)と、母親再婚後の継父(偽パパと呼ぶ)がいる。
ヨッチの母親は、こどもよりも男を取った。
ヨッチは、母方祖父母に引き取られた。ヨッチが小学5年生のときだった。
ヨッチは、映画が好きだ。映画のエンドロールを見ることが好きだ。(エンドロール:関係者名簿)
『生きるということに理由が必要なんじゃなくて、みんな自分が生きていることに理由をつけたいだけなんだよ……』(昨年暮れのM-1を見ていたら、出場したコンビのひとりが、『人生に意味なんていらないんだ!』と言ったところで爆笑しました。確かに、人が生きていくうえで、『意味』はいらないのです。意味:内容、概念がいねん。形、説明)
『断片(5)』
道路で、犬が車にひかれて、死んでいます。
小学生のヨッチが、犬のそばにしゃがんていた。朝からずーっと、学校にこないで、しゃがんで、犬のおなかを指先でなでていた。
そのうち、回収業者が来て犬を回収していった。
『夕暮れの海と約束のフィルム』
◇十六年前 十五歳
作者は、青春の残像(思い出)を描きたいのか。
三人はいつもいっしょにいる。
三人とも、実親がいない者どうしだから、気持ちが通じ合うものがある。
城田(キダ)とマコトは、親戚の家に預けられている。ヨッチは、母方祖父母の家に預けられている。おとなの顔色をうかがいながら生活していたと話がある。
『親が死んでさ、自分の根っこを失くしたんだと思うんだよ』
男ふたりは、ヨッチに会うまで、笑うことがなかった。ヨッチは、根っこがなくても笑う人だった。いっしょにいて、救われるものがあった。
マコトは、ドッキリ企画が好きである。
ドッキリを仕掛けて、相手が驚いた顔を見たい。快感がある。
148ページあたりが、この小説の主題(テーマ)か。
女子であるヨッチの話です。
『(自分がそこにいるという)存在を消されるのが怖い(こわい)』
小学生のときにいじめにあった。
最後は存在を消された。存在を消された時が、一番つらかった。
(だから、映画のエンドロールを自分の人生として、関係者名簿であるエンドロールに、自分の名前を載せたいという願望があるのでしょう)
『最後はさ、無いもの扱いされる。教室にある自分の名前が書いてあるものが消されて、椅子も机もなくなって、誰も話しかけてくれないし、教室に居場所がなくなって、あたしは、床に座って何もせずに過ごすしかない。先生も助けてくれなかった……』
『いじめられる方が悪いなんてことは、一ミリたりとも、絶対にねえんだよ』
いじめた人間たちは、今もどこかで生きていて、平気な顔をして暮らしている。
いじめられた人間は、一生、いじめた人間のことを忘れない。(この小説のテーマが、『復讐(ふくしゅう。仕返し)』です)
三人は、ヨッチをいじめた男たちに話をしに行って殴り合いのケンカになります。
『断片(6)』
また、煙草の煙を吸っています。(禁煙して幸せになりましょう)
『見下ろす夜景と見上げる灯り』
◇四ヶ月前 三十歳
小野瀬(おのせ。マコトの苗字(みょうじ))
ボブ:黒人
ジジイ:会社社長。ワインの輸入業。金持ち。末期がんで余命半年。家族に逃げられた孤独なジジイ
JIM:澤田マコトが働いていた店の「有限会社宮沢板金塗装」の変更後の店名のこと。「AUTO SHOP JIM(オートショップジム)」。JIMは、洋画、『理由なき反抗』でジェームス・ディーンが演じた主役のジムのこと。
澤田マコトは、JIMを半年前に退職して、東京へ行った。城田(キダちゃん)は、東京へ行き澤田マコトと再会した。澤田マコトは、黒人のボブに顔をなぐられて、顔がはれていた。
プロポーズ大作戦:婚活のことだろうか。派手なモデルみたいな女、『リサ』と結婚したいということだろうか。ちょっと今は意味がわかりません。
澤田マコトは、4500万円用意して、お金持ちのジジイからジジイの会社を買いたい。
ワイン会社だが、澤田マコトは、お酒は飲めない。
<186ページ(全体で339ページ)まできましたが、いったん一部分を整理してみます>
なぜ、こんなに、昔の部分にこだわる書き方(レイアウト)をしてあるのだろう。今はまだわかりません。
① 半年前 30歳(年齢は、語り手の城田ちゃん(きだちゃん)、小野瀬マコトとヨッチ(女性)の年齢。三人は同級生。
② 7年前 24歳 リサが登場する(お金持ちのわがまま娘。小野瀬マコトは、リサと結婚してお金持ちになりたい)
③ 10年前 20歳
④ 5か月前 30歳
⑤ 16年前 15歳
⑥ 4か月前 30歳
⑦ 7年前 24歳
⑧ 13年前 18歳
(読んでいる部分に戻ります)
リンゴ:リンゴがこのあと鍵を握るようです。(リンゴ=爆弾)
IPO:Initial Public Offering 新規株式公開。企業が初めて株を市場で売り出す。
192ページから深い話になります。
小野瀬マコト(いつの間にか苗字(みょうじ)が、澤田マコトから小野瀬マコトに変わっています。201ページに種明かしがあります)の話です。
マコトはリサと結婚したい。リサはわがままで勝手な性格だから、まともな男では、結婚は長続きしない。リッチなリサの父親は、娘婿(むすめむこ)に次のことを期待する。自分の手足になってくれる若い男に娘を押し付ける。娘婿をいろいろ利用しよう。(それが現実だ)
リサは、金や物はたっぷり与えられたが、純粋な愛情を与えてもらえない立場だ。父親にとって娘は、自分が商売をしていくうえでの道具だ。
『断片(7)』
学校のことです。教頭の訓示のような話があります。
(教頭は、生徒のために話しているのではない。話をしている自分が教育熱心という印象をもたれたいから話している)
この部分を読んで自分なりに思い出したことがあります。
学校時代、教師から、おまえたちは、そんなふうでは、社会に出てからちゃんとやっていけないぞとよく叱られました。もっとまじめにやれと教育されました。
社会に出たら、まわりは、いいかげんな人でいっぱいでした。人をだまして、人がかせいだお金を横取りしようとする人がいっぱいいました。うそつきがいっぱいいました。何度もだまされました。
『(人を)信じる』ことは大事ですが、同時に、『疑う』ことも大事です。学校で、きれいごとだけを教えられたら、こどもの心は社会に出たら、へし折れます。
そんなことを思い出しました。
いいなあと思ったセリフです。
『私たちには、無限の未来なんかありません……』
なかなか良くなってきました。今年読んで良かった一冊になるかもしれません。
『沈黙の銃とアイデンティティ』(アイデンティティは、自分の信念、価値観、自分の社会的役割、自分の根っこ。自分とは何かという問いに対する答(こたえ))
◇七年前 二十四歳
交渉屋:城田(きだ)のこと。
ID:アイディー。アイデンティティ
『つまり、僕は、存在ごと売却されたわけだ……』(この話の肝(きも。肝心なところ)かもしれない)
『自分って、いったいなんなんだ……』
『自分は何のために生きてるんだ……』(哲学的です)
『そういうこと考えると、死にたくなるだろ……』(でも、たいていは死なない)
株式会社川畑洋行:輸入代行業。輸入以外にもいろいろやっている。
この時城田は21歳だった。
城田の両親は、城田が9歳の時に事故死した。
(両親がいなくなってから、城田はどんな気持ちで生きてきたのだろう。自分の存在をどのように定義してこの世に存在してきたのだろう。この世に、いてもいなくても良い存在だったのかもしれないという雰囲気があります)
『必然性と理由があれば……』(人殺しもありか)
ときおり、『ドッキリ』の話が出ます。どっきりカメラのどっきりです。
びっくりする。びっくりさせられる。びっくりさせる。
『この世界を回している人間は、九十九パーセントが嘘つきだからね……』(同感です。世界は、誤解と錯覚で成り立っているのです)
『……自分を放棄して待っていた……』(自分を放棄する)
運び屋:運搬専門
親がいないこどもの人生は、もう消えてなくなっているようなものだそうです。
『断片(8)』
世の中は、非情です。
『マチルダ』
◇十三年前 十八歳
マコトが、『どっきり』にこだわる理由:マコトの母親が、(心の病が原因で)しゃっくりがひどかった。母親のしゃっくりを止めるために、こどもだったマコトは、母親にどっきりをしかけることを覚えた。マコトの父親は、女をつくって家から出て行っていた。マコトにとって、母親は唯一の頼れる存在だった。どっきり=びっくり(しゃっくりが止まった)。でも、母親は失踪して、マコトの前から消えた。
『誰かに、何かを伝えるって、難しいね』
『さびしい、ってかさ、さみしい』
城田ちゃんの両親は、城田ちゃんが小学校にあがる数日前、ふたりで買い物に行った。ふたりが乗っていた車に、トラックの荷台から数トンもある鋼材が落ちてきて、両親の体は一瞬でつぶれてしまった。両親が死んだというよりも、突然いなくなった。城田ちゃんは、叔父さん伯母さんの家で育てられた。
『両親のことを思うと、さみしいというよりは、懐かしいという、気分になるよ』
自分の人生にリアリティがないと城田ちゃんが言います。俺は、『俺』という人間をずっとうしろからながめながら生きている。(なかなか書けることではありません)
自分の人生を他人事のような立場でながめている。
同じく親がいないヨッチが言います。『あたしたちは、やっぱりちょっと、何かが欠けている』
洋画、『フォレスト・ガンプ』の話が出ます。名作です。わたしも何度も見返しました。
無粋(ぶすい):微妙なやりとりがわからない感覚。やぼ。融通がきかない。ユーモアを受け入れない。男女のことがわかっていないなど。
繊細です。(せんさい:微妙で感じやすい。かぼそい)
『運命』とか、『宿命』を感じます。『恋愛ドラマ』、『人生ドラマ』です。
洋画、『レオン』(観たことがあります。すさまじい撃ち合いシーンがあった記憶です。マチルダという少女が出てきます。少女が、殺し屋を味方につけて、ギャングと戦います。少女はギャングに殺されそうなのです)
ヨッチが、小学校でいじめられた話が出ます。
ヨッチは、マチルダだった。マコトと城田が、殺し屋だった。ヨッチは、マコトと城田に救われた。三人とも親がいないこどもだった。
優しい物語です。今年読んで良かった一冊になりました。
『運命に従う』
『俺は、遅かった……』
詩を読むようです。
『断片(9)』
とくに書きたいことはありませんが、『一日あれば、世界は変わる。二日あったら、宇宙がなくなってもおかしくない』という文章が、この物語の鍵を握るようです。ヨッチの本パパ(実父)の日記に書いてあったそうです。
『十年間と地下駐車場』
◇前夜 三十一歳
ここまで読んできて、ちょっとわからないことがあるのです。(最後まで読んで、わかりました)
澤田マコトは、小野瀬マコトになり、『プロポーズ大作戦』とやらで、財閥の娘真っ赤なスポーツカーを乗り回すわがまま娘と結婚して入り婿(いりむこ)になりたい。
ヨッチは、自分の結婚相手として、マコトか、城田(きだ)か、どちらの男でもいいと思っていて、先に自分にプロポーズしてくれたほうと結婚すると決めていた。
ふたりのうちで、先にヨッチにプロポーズしてくれたのは、マコトのほうだった。
すると、マコトは、重婚状態になってしまうのです。
わたしの理解が間違っているのだろうか。
(259ページで、マコトは、ヨッチと築15年のアパートで暮らすことにしたとあります。アパートの部屋でクリスマス会をやる。参加者は、マコトとヨッチと城田とサエキとコンちゃんとミチルとコジケン)
ジェームス・ボンド:1953年(昭和28年)に誕生したシリーズの主人公で、スパイ。コードナンバーが、『007(ダブルオーセブン)』
リング・ピロー:指輪をのせる小さな枕(まくら)
『断片(10)』
アパートに、ヨッチが帰ってきません。
大粒の涙をぼろぼろと零す(こぼす)
『小さなリングと白い聖夜』
◇十二月二十四日 三十一歳
クライマックスです。激しい。
復讐劇です。
殺せばいいとか、(自分が)死ねばいいとか。今どきの、『無敵』みたいではある。
う~む。殺せばいいとか、死ねばいという理屈は社会では通用しません。安全のために、罪を法令で整理せいとんするのがベターな手法です。
親がいないから、自分がこの世にいなくてもいい存在になってしまったという感情をもつ人間になってしまったということを表現してある小説でした。
いいなあと思った文節として、『……脳が疲れた……』
シルバー・ベルズ:クリスマスソング
ビング・クロスビー:アメリカ合衆国の歌手、俳優。1977年(昭和52年)74歳没
カサブランカ:洋画。1942年(昭和17年)
ハンフリー・ボガード:アメリカ合衆国の俳優。1957年(昭和32年)57歳没
パソコンのインターフェイス:パソコンと周辺機器を接続するための端子、手段
PA:イベントで、音響機器担当。パブリックアドレス
『あたしは、死ぬ必要がないから生きてるし、生きてる必要がなくなったら死ぬんだよ、きっと』(あたしの命は、あたしではなくて、運命とか、宿命とか、そういった目には見えないものが決めるのよと受け取りました)
じっさい、ニュースを見ていると、『ひき逃げ』というひどいことをする人はあんがい多い。
救急車を呼んでいれば、助かる命もあるにちがいない。
お金持ちが、権限と権力をもつ役所の人間に働きかけて、罪や罰を握りつぶす。
人に迷惑をかけることをなんとも思っていない人間がいます。
自分は何をやっても許されると思っている人間がいます。
近づかないほうがいい。
十年かけて、復讐した。
物語づくりの基本は、『忠臣蔵』です。
人は、死んだあとのことを考えます。
この時代の地球上に、自分という人間が存在していた証拠を残しておきたい。
なのに、それを拒んだ(こばんだ)人間たちがいた。
お金持ちや権力を握っている人間たちが、ヨッチの存在を地球上から消した。
ヨッチは、この世にいなかったものとして扱われた。だから、マコトとキダは、復讐するのです。
そして、マチルダ(洋画レオンに登場する少女)です。
『メリークリスマス』(これを書いている日がたまたま2024年12月25日水曜日です)
なんともいえない終わり方です。
『世界の終わりと冬の青空』
◇十二月二十五日 三十一歳
隠遁(いんとん):世間と関わらずに心安らかに暮らす。
もうすぐ読み終わりますが、『リサ』の人物像の描写が薄かったかなあ。
このかたまりの部分の記述は、いらなかったんじゃないかなあ。
この前のかたまりの部分の、『説明』になっています。
『プロポーズ大作戦』というのは、仕返し大作戦ということだったのか。
最後の最後はちょっとひっくりかえしあります。じょうずです。
おもしろいなあとは思いますが、そこまでしなくても……
『ポケット』という短いかたまりの作品がくっついていました。
まあ、タバコ小説ですな。
『冬なんてさ……亀でも熊でも(家に閉じこもってじっとしている)』(最近のクマは、冬でも人里に降りてきて、食料を狙うようになりました。先日のテレビで、食べ物があれば、クマは冬眠しないと説明がありました)
違和感がありました。
自動車の板金塗装業をしているマコトが、押しボタン式信号のボタンを押すような状況になることはないと思うのです。
自動車関係の仕事をしている人は、移動手段はたいてい車です。小説を読んでいて、マコトが徒歩移動をすることが不自然でした。
いい文章だと思ったのが、(ヨッチの気持ちとして、マコトとキダがこの世からいなくなったら)『……二人がいなくなった世界には、きっと色がない……』
『機関銃の斉射(354ページ)』は、『機関銃の一斉射撃(いっせいしゃげき)』と書きたかったのではなかろうか。
『(洋画)俺たちに明日はない』をたとえにして、『俺たちには明日があるだろ』(ありません)
悲しいお話でした。
2025年01月13日
果てしなき渇き 深町秋生
果てしなき渇き(はてしなきかわき) 深町秋生(ふかまち・あきお) 宝島文庫
こちらの作品について、単行本の発行が、2005年(平成17年)です。
文庫本の発行が、2007年(平成19年)で、2022年(令和4年)現在、18刷です。
よく読まれている推理小説です。
映画化もされています。『渇き』スリラー、ミステリー、2013年(平成25年)118分
さて、小説はいきなり殺人事件シーンです。
コンビニで、店員(青年)とお客(黄色い髪をたばねた中年女性)、そして、もうひとりのお客(眼鏡をかけた少年)が無残に(むざんに)刺殺されています。
売上金8万円が盗まれた。防犯カメラの録画データは持ち去られた。
読み始めて、名前はまだわかりませんが、警備会社勤務の警備員男性が現場に到着します。どうも彼は元警察官のようです。機動隊、捜査一課、所轄の警察署に知り合いがいるらしい。
そして、警察車両がコンビニに押し寄せて来ました。
ファイブマーケット深作店 24時間営業のコンビニ店 国道16号に近い住宅地にある。
東大宮にある警備会社
舞台は、埼玉県です。区画整理中の新興住宅地です。
物語が流れ始めました。
藤島秋弘:埼玉県内国道16号沿いにある大手警備会社の社員。埼玉県東部地域の担当。警備会社の所長には気に入られている。元警察官で係長職だった。不祥事で依願退職した。妻の浮気相手の男をボコボコにした。身長180cm。神経科に通院して服薬している。自家用車はグレイのカローラ。7年前にマンションを買って、家族三人で暮らし始めた。当時娘は11歳小学5年生ぐらい。
加奈子:17歳。浦和にある高校に通う女子高生。藤島秋弘の娘。小さな顔、きゃしゃな体、大きな瞳、母親似。美しい少女。成績優秀で、都内の国立大学を目指している。私立中学に行きたいという夢をお金が無いからと言って、藤島秋弘がつぶした。その後妻が浮気をして、藤島秋弘がその浮気相手に暴力をふるって、ふたりは離婚した。娘の親権者は、元妻。娘は元妻と同居していたが突然行方がわからなくなった。家から姿を消した。娘の部屋に、覚せい剤とそれを使用する道具があった。娘がいなくなったとき、元妻は一晩中、男とホテルにいた。
桐子:藤島秋弘の元妻。実家はお金持ち。父親のコネで、不動産会社の事務員をしている。8階建てのマンション、4DKに娘と住んでいる。もともと家族3人で住んでいた。桐子の父親の援助で買った。103号室に住んでいる。
岩中:桐子の浮気相手。桐子が働いている不動産会社の役員。車はアウディ
浅井衛(あさい・まもる)巡査部長:大宮署の刑事課一係所属で、一年半前までは、藤島秋弘とコンビを組んでいた。
地取り:現場周辺の聞き込み捜査
敷鑑(しきかん):警察用語。犯人と被害者の関係を調査して犯人を発見する操作方法
恫喝(どうかつ):きびしくおどすこと。威圧すること。
憐憫(れんびん):あわれむこと。
なにかしら乱暴な内容の文章です。映画化を意識して書いてあるような文章に見えます。
藤島秋弘夫婦のいさかいのことが書いてあります。
藤島秋弘は、仕事人間です。警察の仕事にかかりっきりで、家のことは何もしません。ゆえに、妻や娘の日常生活のことを知りません。
ありがちなことです。
以前、番組『徹子の部屋』にゲストで呼ばれた太川陽介さんが、ひとり息子が就職して家を出て行ったら、夫婦ふたりになって、夫婦の会話がない状態になった。今までは、息子が家族の会話の中心にいてくれたというお話をされていました。
太川陽介さんも仕事人間です。昭和の時代の男はたいてい、男は仕事、女は家庭という意識が強い。太川さんも前期高齢者の年齢です。サラリーマンならもう定年退職して家にいる年齢です。年金生活者です。いらぬことですが、太川さんも仕事を減らして奥さんに気を使われたほうがいい。
歳をとっても仲がいい夫婦というのはいますが、お互いに気を使っているから仲がいいのです。奥さんのために、奥さんが喜びそうなことをしてあげたほうがいい。いっしょに旅行に行くとかではなくて、料理をするとか、お米をたくとか、食器を洗う、洗濯して洗濯物を干して、乾いた洗濯物を取り入れてたんすの引き出しにしまう、ふとんも干すし(ほすし)、掃除機かけもする。モップで床清掃、枝が伸びた庭木を切ってきれいにする。ゴミ出し(生ごみ、資源ごみ、粗大ごみ)、車を運転しての食材等の買い出し、町内会の仕事、日常生活を送っていると、やること、やらねばならないことはいくらでもあります。年齢的に病院通いをすることが多い。病気や病院のことを話したり、今どきだと、新型NISA(ニーサ)で貯蓄を増やすとかを話したり、話すことはいくらでもいろいろあります。
自分から体を動かして家のことをあれこれやれば、一日中会話がない夫婦なんぞにはなりません。朝から晩まで、ずーっとしゃべり続ける夫婦になります。こどもたちや孫たちの話題、親の介護をはじめ、お互いの親族のことや友人の話、話題はいくらでも出てきます。テレビ番組やラジオの人生相談、最近の世の中の動きに関すること、興味は尽きません。
前期高齢者の年齢になったら、終活も始めておいたほうがいい。終活は、けっこうめんどうで時間がかかります。まだいいと思っていても、いきなり、『あなたは癌です。余命はちびっとです』と言われてもおかしくない年齢です。
終活で、身の回りのいらない物は捨てて(本人にとっては大事なものでも、ほかの人にとってはゴミということもあります)、デジタルデータ(パスワードとかIDとか)や資産も含めて、自分が死んだあと妻子が困らないようにいろいろしたくをしておいたほうがいい。遺言も書いて、公証人役場に出しておけばいい。
話がだいぶずれてしまいました。本に戻ります。
警察職員、とくに優秀な警察職員は、職場では輝いていても、仕事を離れるとやっかいな性質、性癖をもった人に思えます。
『人を疑う』ことを仕事にしている人だからです。容疑者を疑うのは仕事だからわかりますが、家族を疑うようになったらコワイことになります。本に出てくる藤島秋弘さんは、現役刑事だった当時、妻の浮気を疑って、妻を尾行(びこう)するようになります。ストーカーみたいな尾行です。盗聴器まで仕掛けています。
仕事人間の男は、妻が浮気をしても、(家庭を顧みなかった(かえりみなかった))自分に原因があるとか、自分に非があるとかは思いません。全面的に妻が悪いと決めつけます。自分はやるべきことを(仕事を)一生懸命やっていたと自己肯定します。悪いのは妻だ。
光景描写がとても細かい文章です。観察するような文章です。
ガンコロ:覚せい剤の結晶
パケ:小袋(失踪した娘の部屋にあった。末端価格はかるく100万円を超える)
アルミのパイプ、ハイライト(タバコの銘柄だろうか)フィルターだけを取り出して、フィルターを注射器用の簡易ろか器として使用するそうです。
藤島秋弘は、娘に対して、父親の役割を果たしてこなかった。
藤島秋弘は、よくタバコを吸うのね。
タバコばっかり吸っています。
(つづく)
シーンが変わりました。
「三年前」とあります。
藤島秋弘以外の人物が語っています。
あとでわかりましたが、藤島秋弘の娘の友だちだった緒方誠一のことが書かれています。語っているのは、緒方誠一君を知っている人物です。彼の語りの部分の文章だけが活字の字体を変えてあります。ちょっと太そうな明朝体で、雰囲気は習字で書いたような字体です。
語り手は、まだ中学生3年生です。男子に思えます。この項目の始まりに、『3年前の出来事として』というように書いてあります。3年前の1から始まって、2,3と続いていくようです。物語は、そういうスタイルのお話になっているようです。
語り手は、学校でいじめられています。
いじめていたのが、『島津』と『A:大柄で長髪』と『B:柔道部員五厘(ごりん)刈り(2ミリ程度の丸坊主頭)』で、語り手と同じクラスです。クラスのほとんどが、緒方誠一にとって敵だそうです。ひどい。金まで要求されます。大人なら逮捕、刑罰適用です。強盗ですな。
松下恵美と長野知子:失踪した藤島加奈子と同じ予備校に通うふたりです。加奈子と交流はあるが、友だちではないと松下恵美が言う。上尾市から通う松下恵美は背が高いモデルタイプの女性で気が強い。
与野市から通う長野知子は、暗い感じだが、加奈子のことをよく知っているような雰囲気です。でも話してはくれない。(長野知子は薬物をやっているかもしれない。腕に形跡がありそうです)。
力いっぱい書いてある文章です。緊張感が高すぎて、読んでいて疲れてきました。
辻村:辻村神経内科クリニック医師。腹の出た40歳ぐらいの男性。加奈子の主治医だが、最後の診察は三か月前です。
藤島秋弘の娘加奈子の小学校からの友人として、
神永明美:小5のときの同級生。加奈子と一緒に登校していた。加奈子には二年前から会っていない。加奈子は人が変わった。神永の家は貧乏。父親の失業保険で食べている。神永明美は、スーパーでレジ打ちのアルバイトをしている。
加奈子と写真に写っていた人物として、
棟方泰博(むなかた・やすひろ):この男が殺人と加奈子の失踪に関係しているのではないかと読み手のわたしは思う。無表情な男。茶色い髪とほっそりした顔立ち。
遠藤那美:棟方も遠藤も不良。
なにかしら乱暴な筆致(ひっち)の書きようが続く文章です。
エチゾラム:不安や緊張をやわらげる薬。藤島秋弘が飲んでいる。父も娘も精神科クリニックが良いです。薬を飲むよりもおいしいごはんを食べたほうが、気分が良くなるのに。
娘が覚せい剤をやっているみたいなので、警察には届けられない元警察官の藤島秋弘です。
自分が不祥事(妻の浮気相手をボコボコにして、全治3か月の体にした)で警察を辞めさせられた(依願退職)こともあって、警察に相談することができません。
フォールディングナイフ:折り畳み式のナイフ
ローライダー:車高を低くした自動車
緒方誠一のニックネーム:運に見放された草食動物
なんだか、暗い話です。
『三年前 2』
中学野球部に入部した語り手男子です。(まだ、だれだかわかりません)
石橋:野球部のキャプテン。キャッチャー。4番打者
宮下:ピッチャー
手塚:レフト。生徒会長
ぼく(語り手):ライト、8番。
ぼくの祖父:九州嬉野(うれしの。佐賀県)に住んでいる。亡くなる。嬉野でお葬式がある。
ぼくは祖父の葬式で九州に行き部活を一週間休んだあたりから部活に足が向かなくなり野球部を、受験を口実に辞めます。
いじめが原因で緒方誠一が首つり自殺をして亡くなります。いじめのターゲットが、語り手である『ぼく』になります。
ブルーバード:なつかしい車種です。ニッサンの大衆車でした。そういえば、ニッサンはホンダとくっつくそうです。昔だったら考えられません。時代が変わりました。どこもかしこも統廃合で、日本の社会や産業は、しぼんでいきます。
野球部の練習には行かずに、栃木県の宇都宮とか、群馬県の前橋に遊びに行く語り手です。
部活の最中に水を飲んだことで責められる語り手です。(昔の話ですなあ)。自分が中学生のころを思い出しながら読んでいます。中学生の部活について、本に書いてあるほど部活へのこだわりはなかったように思います。中学では部活に熱心な生徒が多かったけれど、だからといって、強制的だった思い出はありません。いやならぶらぶらしていても文句は言われませんでした。部活は、やりたい人間がやるのです。
それから、本の内容では、いじめがきついのですが、自分が小中学生だったときは、いじめよりも教師による体罰がきつかった。暴力を振るう先生がたくさんいました。戦時中の軍国教育が尾を引いていました。今とは大違いです。先生にさからえば、びんたが飛んできて、正座させられることはしょっちゅうでした。親もどうぞやってくださいという態度でした。
半世紀前のこどもは、親にたたかれ、先生にたたかれ、兄弟姉妹にたたかれ、ひどいめにあっていました。そしてたくましく育ったのです。なにくそ負けてたまるかです。
死んだ緒方誠一と警官の娘であった藤島加奈子は仲良しだったそうです。
(つづく)
あやしい男が三人います。
アポカリプス:不良グループ。アポカリプスは、キリスト教で、『黙示(もくし。神の啓示、教え)』
東理恵(あずま・りえ):藤島加奈子の高校の担任教師。藤島加奈子の薬物使用を知っていた。
父と娘の関係の書き方が疑問です。
主人公の父親がものすごく娘の心配をするのですが、自然な愛情とは思えないのです。
仕事人間で、家庭や家族を顧みなかった(かえりみなかった。考えなかった。配慮しなかった。愛情のある対応をしなかった)人間が、書いてあるような深い愛情を娘にもつとは思えないのです。
生物学的に親子でも、日常から親子であることを意識して生活していないと、気持ちの交流は築けません。親子は親子であろうと日々努力していなければ親子にはなれないのです。
この物語の設定の場合は、仕事人間の父親は、母親にこう言って終わりです。『おまえのせいで、娘がおかしくなった』(オレは、あとは知らない。オレのせいじゃない)
繰り返しになりますが、これほど親子関係が希薄な男が、娘の心配をするだろうか。生物学的に親子でも日ごろから親子である努力をお互いにしていないと親子は親子になれません。
さらに、この主人公元刑事の男は、自分の思いどおりにならないと暴力を振るう男です。
DV男です。とんでもない奴です。
あきらめることができない男です。
ねちっこく、粘ることが、人間としてあるべき姿と勘違いしている男です。相手をいじめぬくことが、最高の喜びだと誤解している男です。当然、不幸になります。
今、読み手である自分は、126ページ付近にいます。これ以上読んでも得るものはないかも……
いつものことですが、旅をするように、本の中を旅しています。
『三年前 3』
読んでいて気分が悪くなるような内容の文章です。
いじめのようすが書いてあります。男子中学生たちが、ひよわな同級生をいじめぬきます。
「待て」「逃げんな」「捕まえろ」です。
わたしなら歯向かっていきます。やられたらやりかえすのが男の道と、今は亡き乱暴者の父にこどもの頃、教えられました。じっさいにやりかえしたことが何回かあります。だれも助けてくれないのです。自分でがんばるのです。大声上げて、こぶしを振り上げて向かっていくしかないのです。今、世界各地で起きている戦争と同じです。きれいごとを言ってもどうしようもないときもあるのです。それが現実です。暴力反対と正論を吐いて意地を張っていると、相手に攻め入られて、自分の陣地と家族と生活を相手に奪われてしまうのです。それが人間界の現実です。
作者は何を訴えたいのだろう。
他者に救いを求めたいのだろうか。
いじめは反対、保護が必要、そして、ならば復讐(ふくしゅう。仕返し)だーーなのか。
極端な書き方がしてある文章なので、趣旨がよくわかりません。
(つづく)
藤島加奈子には二面性があるようです。善人と悪人の二面性です。
父親は藤島加奈子を善人だと思いこんでいる。
藤島加奈子のまわりにいる人間は、藤島加奈子が悪人であることを知っている。
そんな感じです。
元警官の娘は、悪のグループでは、ボス的存在なのです。
父親である藤島秋弘は、のちに深く後悔するでしょう。仕事人間だったことで、家族や家庭が壊れたのです。
スピード:薬物。覚せい剤のこと。
警察官でもないのに、以前使っていた名刺1枚で、娘の行方を調べるために事情聴取をする藤島秋弘です。その行為は、すでに犯罪です。自分の身を守るための組織(警察)はバックになく、道具(拳銃)ももっていません。殺されちゃいます。
田村:集団暴行を受けていた少年
『三年前 4』(三年前というのは、中学三年生当時ということであろうと思いながら読んでいます。だから、現在は、高校三年生なのです)
瀬岡尚人(せおか・なおと):いじめで閉じ込められたが脱出した。この、『三年前』の部分を書いている人物ではなかろうか。
A:田村:いじめにあっていた男子のようです。(いじめにあっていた緒方誠一は自殺した)。田村は今、いじめる側にいる。
B:大場
C:瀬岡をいじめるために、針金を取り出した男。Cは以前、いじめにあったことがある。
棟方泰博:犯罪グループ、『アポカリプス(黙示録という意味)』のメンバー
岩間:ひとり語りをする男の1歳年下の男。野球部員180cm、長打力あり。
神永朱美(かみなが・あけみ):藤島加奈子の昔の友だち。小学生時代から中学にかけての友だち。
(つづく)
藤島加奈子は、アポカリプスに拉致(らち)されたのかとありますが、拉致はされていないのでしょう。むしろ、本事件を操る(あやつる)立場にいる。
エス:警察用語で、「情報屋」。スパイ
走狗(そうく):人の手先になって働く者。いやしい者
警察が張り込んでいたはずなのに、藤島秋弘は、犯罪グループに捕まって、ボコボコにされてしまいました。不可解です。その後、藤島秋弘が乗用車を運転して移動するのですが、それも含めて不可解です。運転できるような体の状態ではありません。
写真?(何の写真だろう。犯罪グループにとって都合の悪い写真です。見つかりません)
力作です。
『三年前 5』
神永朱美が、瀬岡に近づこうとしている。
(つづく)
エクスクラメーション・マーク:感嘆符で、『!』のこと。
石丸組:コングロマリット(多種類の事業を営む企業)。関東を中心とした広域指定暴力団。印旛会(いなばかい)の傘下団体(さんかだんたい)。飲食、風俗、ゲーム、金融、廃棄物処理など。シャブの元締め。
またひとり殺されました。
主人公の元刑事藤島秋弘は、このゆきづまった状況をどう打開するのだろう。
このヤマにおまわりが関わっている。(共犯者に警察関係者がいる)
打擲(ちょうちゃく):なぐる。たたく。
殺された小山順平は、愛用のカメラで、撮ってはいけない物を撮影した。そのことで命を奪われた。その写真は、藤島加奈子に託された。(なんだろう。撮ってはいけない物とは)
『三年前 6』
語り手の瀬岡(中学三年生男子)が、母親に友だちと花火大会に行くと偽って家を出る。不良のたまり場へ行く。リンチを受ける。(残酷な暴力)
遠藤那美:不良仲間のひとり。
アストロ:シボレー・アストロ。アメリカ車
イーグルス:アメリカ合衆国のロックバンド。
読んでいて思い浮かぶ作品は、1970年代自分が若い頃に読んだ、『限りなく透明に近いブルー 村上龍』、それから、2022年(令和4年)に読んだ、『テスカトリポカ 佐藤究(さとう・きわむ)』です。テスカトリポカは、『闇を支配する神』です。現在のメキシコ中部にあったアステカ文明が関係しています。内容の雰囲気が、こちらの小説と同種、同分類です。
棟方がいる。ボウガンを持っている。(弓矢のように矢を発射する装置)
薬物の類(たぐい)がある。
藤島加奈子の話が出る。
ドレッドヘアー:髪の毛がロープのような形状になっている。
あいまいな記述が続く270ページあたりです。
藤島加奈子というのは、どういう人間なのか。あいまいです。
頭の中でつくった世界がいっぱい書いてあります。
作者の意識は盛り上がっている。
熱狂と冷却があります。
黄色いジャケットと黒いパンツの女。
琥珀色(こはくいろ):くすんだ赤味の黄色。だいだい色
チョウ:ボスという意味だろうか。
炯眼(けいがん):ギラギラ光る目。するどい目
(つづく)
シーマ:日産自動車の高級乗用車
読みながら、『つくってある話』なんだなあと思う。
コルト:軍用自動拳銃
『三年前 7』
作者はこんなことを書いて楽しいのだろうか。(読み手である自分はついていけない)
出版社は、こういう作品を世に出して、してやったりと思うのだろうか。(してやったり:思いどおりにうまくやれた)
現実社会にもいるエロ政治家とか組織の上層部にいる人間を糾弾したかったのか。(英雄色を好む。(えいゆういろをこのむ)。男色(だんしょく)も好む)。某芸能事務所の不祥事のようでもある。(案外そこに、創作のヒントがあったのかもしれない)
(つづく)
小山順平は、殺されてもしかたがないほどのことをしたことを理解しました。彼は恨まれた(うらまれた)。
『三年前』という手記を書いているのは、『瀬岡』という人物だろうと思って書いていますが、じっさいそうなのかというと、自信がありません。
趙義哲(ちょう・下の名前の読みはちとわかりません):実業家。ビルのオーナー。パチンコ、ホテル(大宮センターホテル)、レストランなどの不動産をたくさんもつお金持ち。
藤島秋弘には記憶がないようだが、酔って、妻や娘に暴力を振るったことがあるらしい。それもかなりひどいことをした。(精神的な病気がありますな)
『三年前 8』
棟方泰博が、不良グループ『アポカリプス(黙示録)』がメンバーで狂暴。
藤島加奈子は、宇宙にあるブラックホールのような存在。人間として欠けた穴がある。穴が、まわりにいる人間を吸い込んでしまう(転落していく)。
(つづく)
344ページまで読み進めてきましたが、藤島加奈子の実像がいまだはっきりしません。
白いエルグランド:日産自動車のミニバン。こちらの作者さんの特徴として、車の車種を目印に使うということがあります。
ガキ好きの変態がいる:某芸能事務所みたいな話が出ます。単行本は、2005年の発行です。(平成17年)。先日読んだ、『書いてはいけない 日本経済墜落の真相 森永卓郎 三五館シンシャ(さんごかんしんしゃ)』にこう書いてありました。
2003年7月東京高等裁判所判決:加害者と事務所による名誉棄損で出版社を訴えた裁判の判決は、加害者による性被害を認めた。民事事件だった。
2004年2月、最高裁が上告を棄却。高裁の判決が確定した。明らかに刑事事件に該当する事件だった。
警察は動かなかった。マスコミは騒がなかった。
以降も性被害は続いた。(この作品のヒントになったのだろうか)
やばいことが写っている写真の回収をする話が出ます。コピーの話しも出ます。この作品ができたのは、まだ、SNS(ソーシャルネットワークシステム)は構築されていない、流通していない時代背景です。現在なら、いったんネットにあげた写真や映像の回収は不可能です。
デコスケ:警察官のこと。
人間の業(ごう。悪行(あくぎょう)。理性でコントロールできない心の働き、動き)を描くことが、この作品のテーマなのだろうか。
(つづく)
『三年前 9』
髪を梳く:かみをすく。櫛の歯で髪をとかす。すきばさみでカットするという意味もあります。もう量を減らす。ハサミの片方の歯がクシのような形をしている。
いじめていたのが、『島津』。
チョウというは、趙義哲のこと。
374ページまで読みました。
(つづく)
父藤島秋弘の気持ちと娘藤島加奈子の気持ちがかみ合っていない。
藤島加奈子の人物像に関する記述が薄い。
391ページ、どう話をまとめるのだろうか。あと100ページぐらいです。
『三年前 10』
手記ではない。第三者が観察する文章になっている。
錯覚があります。味方だと思っていた(藤島加奈子)が敵だった。
そういうことって、現実にもあります。
社会では受け入れられにくい作品です。
暴力でこと(課題)を解決しようとする主人公です。
(つづく)
リボルバーの男:回転式けん銃を持っている男。警察官
(つづく)
『三年前 11』
名ゼリフです。『ぼくは幽霊なんだ。もう生きているのか、死んでいるのか、自分でもわからない……』
(つづく)
茗荷谷(みょうがだに):東京都文京区
藤島加奈子が主催者であるホラー・恐怖物語です。
『加奈子の復讐は完成する……』
禁忌(きんき):禁止する。避ける。
『三年前 12』
う~む。
中学校でいじめを受けた人間が、仕返しをする話だろうか。いずれにしても復讐(ふくしゅう)ではある。暴力には、暴力で立ち向かう。
(つづく)
散弾銃で、先台をポンピングする:散弾銃のまんなかの木製部分(先台さきだい)を、後ろにスライドして弾薬を装填(そうてん)する。弾(たま)の発射が可能になる。
『……この国の男どもは変態ばかりになった(性的なこととして)……』(ニュースでは聞きますが、そういう人を見たことはありません)
沢渡組(さわたりぐみ):暴力団。殺人をシノギにしている。(収入を得るための活動)
『エピローグ(終わりの部分)』
剣呑(けんのん):危険や不安を感じているようす。
携帯電話をこどもに買うか買わないかが、ひとつの伏線になっていました。
親に携帯電話を買ってもらえないと、こどもは違法行為をしてでもお金を手に入れようとするのです。
(読み終わりました)
ふーっ。長かった。
『解説 深町秋生との出会いは衝撃的だった 池上冬樹(文芸評論家)』
加藤小判と赤城修史:深町秋生氏の別名
ジェイムズ・エルロイ:アメリカ合衆国の小説家。1948年(日本だと昭和23年)生まれ76歳。
エピゴーネン:有名な人をまねする創作活動
破滅型ノワール:犯罪映画のジャンル。1940年から1950年代後半(昭和15年~昭和34年ころ)
リーダービリティ:文章や文字が読みやすいこと。
2007年5月(平成19年)の日付で書かれている文章です。ちょっとわたしにはむずかしい解説でした。わからない言葉がたくさんありました。
こちらの作品について、単行本の発行が、2005年(平成17年)です。
文庫本の発行が、2007年(平成19年)で、2022年(令和4年)現在、18刷です。
よく読まれている推理小説です。
映画化もされています。『渇き』スリラー、ミステリー、2013年(平成25年)118分
さて、小説はいきなり殺人事件シーンです。
コンビニで、店員(青年)とお客(黄色い髪をたばねた中年女性)、そして、もうひとりのお客(眼鏡をかけた少年)が無残に(むざんに)刺殺されています。
売上金8万円が盗まれた。防犯カメラの録画データは持ち去られた。
読み始めて、名前はまだわかりませんが、警備会社勤務の警備員男性が現場に到着します。どうも彼は元警察官のようです。機動隊、捜査一課、所轄の警察署に知り合いがいるらしい。
そして、警察車両がコンビニに押し寄せて来ました。
ファイブマーケット深作店 24時間営業のコンビニ店 国道16号に近い住宅地にある。
東大宮にある警備会社
舞台は、埼玉県です。区画整理中の新興住宅地です。
物語が流れ始めました。
藤島秋弘:埼玉県内国道16号沿いにある大手警備会社の社員。埼玉県東部地域の担当。警備会社の所長には気に入られている。元警察官で係長職だった。不祥事で依願退職した。妻の浮気相手の男をボコボコにした。身長180cm。神経科に通院して服薬している。自家用車はグレイのカローラ。7年前にマンションを買って、家族三人で暮らし始めた。当時娘は11歳小学5年生ぐらい。
加奈子:17歳。浦和にある高校に通う女子高生。藤島秋弘の娘。小さな顔、きゃしゃな体、大きな瞳、母親似。美しい少女。成績優秀で、都内の国立大学を目指している。私立中学に行きたいという夢をお金が無いからと言って、藤島秋弘がつぶした。その後妻が浮気をして、藤島秋弘がその浮気相手に暴力をふるって、ふたりは離婚した。娘の親権者は、元妻。娘は元妻と同居していたが突然行方がわからなくなった。家から姿を消した。娘の部屋に、覚せい剤とそれを使用する道具があった。娘がいなくなったとき、元妻は一晩中、男とホテルにいた。
桐子:藤島秋弘の元妻。実家はお金持ち。父親のコネで、不動産会社の事務員をしている。8階建てのマンション、4DKに娘と住んでいる。もともと家族3人で住んでいた。桐子の父親の援助で買った。103号室に住んでいる。
岩中:桐子の浮気相手。桐子が働いている不動産会社の役員。車はアウディ
浅井衛(あさい・まもる)巡査部長:大宮署の刑事課一係所属で、一年半前までは、藤島秋弘とコンビを組んでいた。
地取り:現場周辺の聞き込み捜査
敷鑑(しきかん):警察用語。犯人と被害者の関係を調査して犯人を発見する操作方法
恫喝(どうかつ):きびしくおどすこと。威圧すること。
憐憫(れんびん):あわれむこと。
なにかしら乱暴な内容の文章です。映画化を意識して書いてあるような文章に見えます。
藤島秋弘夫婦のいさかいのことが書いてあります。
藤島秋弘は、仕事人間です。警察の仕事にかかりっきりで、家のことは何もしません。ゆえに、妻や娘の日常生活のことを知りません。
ありがちなことです。
以前、番組『徹子の部屋』にゲストで呼ばれた太川陽介さんが、ひとり息子が就職して家を出て行ったら、夫婦ふたりになって、夫婦の会話がない状態になった。今までは、息子が家族の会話の中心にいてくれたというお話をされていました。
太川陽介さんも仕事人間です。昭和の時代の男はたいてい、男は仕事、女は家庭という意識が強い。太川さんも前期高齢者の年齢です。サラリーマンならもう定年退職して家にいる年齢です。年金生活者です。いらぬことですが、太川さんも仕事を減らして奥さんに気を使われたほうがいい。
歳をとっても仲がいい夫婦というのはいますが、お互いに気を使っているから仲がいいのです。奥さんのために、奥さんが喜びそうなことをしてあげたほうがいい。いっしょに旅行に行くとかではなくて、料理をするとか、お米をたくとか、食器を洗う、洗濯して洗濯物を干して、乾いた洗濯物を取り入れてたんすの引き出しにしまう、ふとんも干すし(ほすし)、掃除機かけもする。モップで床清掃、枝が伸びた庭木を切ってきれいにする。ゴミ出し(生ごみ、資源ごみ、粗大ごみ)、車を運転しての食材等の買い出し、町内会の仕事、日常生活を送っていると、やること、やらねばならないことはいくらでもあります。年齢的に病院通いをすることが多い。病気や病院のことを話したり、今どきだと、新型NISA(ニーサ)で貯蓄を増やすとかを話したり、話すことはいくらでもいろいろあります。
自分から体を動かして家のことをあれこれやれば、一日中会話がない夫婦なんぞにはなりません。朝から晩まで、ずーっとしゃべり続ける夫婦になります。こどもたちや孫たちの話題、親の介護をはじめ、お互いの親族のことや友人の話、話題はいくらでも出てきます。テレビ番組やラジオの人生相談、最近の世の中の動きに関すること、興味は尽きません。
前期高齢者の年齢になったら、終活も始めておいたほうがいい。終活は、けっこうめんどうで時間がかかります。まだいいと思っていても、いきなり、『あなたは癌です。余命はちびっとです』と言われてもおかしくない年齢です。
終活で、身の回りのいらない物は捨てて(本人にとっては大事なものでも、ほかの人にとってはゴミということもあります)、デジタルデータ(パスワードとかIDとか)や資産も含めて、自分が死んだあと妻子が困らないようにいろいろしたくをしておいたほうがいい。遺言も書いて、公証人役場に出しておけばいい。
話がだいぶずれてしまいました。本に戻ります。
警察職員、とくに優秀な警察職員は、職場では輝いていても、仕事を離れるとやっかいな性質、性癖をもった人に思えます。
『人を疑う』ことを仕事にしている人だからです。容疑者を疑うのは仕事だからわかりますが、家族を疑うようになったらコワイことになります。本に出てくる藤島秋弘さんは、現役刑事だった当時、妻の浮気を疑って、妻を尾行(びこう)するようになります。ストーカーみたいな尾行です。盗聴器まで仕掛けています。
仕事人間の男は、妻が浮気をしても、(家庭を顧みなかった(かえりみなかった))自分に原因があるとか、自分に非があるとかは思いません。全面的に妻が悪いと決めつけます。自分はやるべきことを(仕事を)一生懸命やっていたと自己肯定します。悪いのは妻だ。
光景描写がとても細かい文章です。観察するような文章です。
ガンコロ:覚せい剤の結晶
パケ:小袋(失踪した娘の部屋にあった。末端価格はかるく100万円を超える)
アルミのパイプ、ハイライト(タバコの銘柄だろうか)フィルターだけを取り出して、フィルターを注射器用の簡易ろか器として使用するそうです。
藤島秋弘は、娘に対して、父親の役割を果たしてこなかった。
藤島秋弘は、よくタバコを吸うのね。
タバコばっかり吸っています。
(つづく)
シーンが変わりました。
「三年前」とあります。
藤島秋弘以外の人物が語っています。
あとでわかりましたが、藤島秋弘の娘の友だちだった緒方誠一のことが書かれています。語っているのは、緒方誠一君を知っている人物です。彼の語りの部分の文章だけが活字の字体を変えてあります。ちょっと太そうな明朝体で、雰囲気は習字で書いたような字体です。
語り手は、まだ中学生3年生です。男子に思えます。この項目の始まりに、『3年前の出来事として』というように書いてあります。3年前の1から始まって、2,3と続いていくようです。物語は、そういうスタイルのお話になっているようです。
語り手は、学校でいじめられています。
いじめていたのが、『島津』と『A:大柄で長髪』と『B:柔道部員五厘(ごりん)刈り(2ミリ程度の丸坊主頭)』で、語り手と同じクラスです。クラスのほとんどが、緒方誠一にとって敵だそうです。ひどい。金まで要求されます。大人なら逮捕、刑罰適用です。強盗ですな。
松下恵美と長野知子:失踪した藤島加奈子と同じ予備校に通うふたりです。加奈子と交流はあるが、友だちではないと松下恵美が言う。上尾市から通う松下恵美は背が高いモデルタイプの女性で気が強い。
与野市から通う長野知子は、暗い感じだが、加奈子のことをよく知っているような雰囲気です。でも話してはくれない。(長野知子は薬物をやっているかもしれない。腕に形跡がありそうです)。
力いっぱい書いてある文章です。緊張感が高すぎて、読んでいて疲れてきました。
辻村:辻村神経内科クリニック医師。腹の出た40歳ぐらいの男性。加奈子の主治医だが、最後の診察は三か月前です。
藤島秋弘の娘加奈子の小学校からの友人として、
神永明美:小5のときの同級生。加奈子と一緒に登校していた。加奈子には二年前から会っていない。加奈子は人が変わった。神永の家は貧乏。父親の失業保険で食べている。神永明美は、スーパーでレジ打ちのアルバイトをしている。
加奈子と写真に写っていた人物として、
棟方泰博(むなかた・やすひろ):この男が殺人と加奈子の失踪に関係しているのではないかと読み手のわたしは思う。無表情な男。茶色い髪とほっそりした顔立ち。
遠藤那美:棟方も遠藤も不良。
なにかしら乱暴な筆致(ひっち)の書きようが続く文章です。
エチゾラム:不安や緊張をやわらげる薬。藤島秋弘が飲んでいる。父も娘も精神科クリニックが良いです。薬を飲むよりもおいしいごはんを食べたほうが、気分が良くなるのに。
娘が覚せい剤をやっているみたいなので、警察には届けられない元警察官の藤島秋弘です。
自分が不祥事(妻の浮気相手をボコボコにして、全治3か月の体にした)で警察を辞めさせられた(依願退職)こともあって、警察に相談することができません。
フォールディングナイフ:折り畳み式のナイフ
ローライダー:車高を低くした自動車
緒方誠一のニックネーム:運に見放された草食動物
なんだか、暗い話です。
『三年前 2』
中学野球部に入部した語り手男子です。(まだ、だれだかわかりません)
石橋:野球部のキャプテン。キャッチャー。4番打者
宮下:ピッチャー
手塚:レフト。生徒会長
ぼく(語り手):ライト、8番。
ぼくの祖父:九州嬉野(うれしの。佐賀県)に住んでいる。亡くなる。嬉野でお葬式がある。
ぼくは祖父の葬式で九州に行き部活を一週間休んだあたりから部活に足が向かなくなり野球部を、受験を口実に辞めます。
いじめが原因で緒方誠一が首つり自殺をして亡くなります。いじめのターゲットが、語り手である『ぼく』になります。
ブルーバード:なつかしい車種です。ニッサンの大衆車でした。そういえば、ニッサンはホンダとくっつくそうです。昔だったら考えられません。時代が変わりました。どこもかしこも統廃合で、日本の社会や産業は、しぼんでいきます。
野球部の練習には行かずに、栃木県の宇都宮とか、群馬県の前橋に遊びに行く語り手です。
部活の最中に水を飲んだことで責められる語り手です。(昔の話ですなあ)。自分が中学生のころを思い出しながら読んでいます。中学生の部活について、本に書いてあるほど部活へのこだわりはなかったように思います。中学では部活に熱心な生徒が多かったけれど、だからといって、強制的だった思い出はありません。いやならぶらぶらしていても文句は言われませんでした。部活は、やりたい人間がやるのです。
それから、本の内容では、いじめがきついのですが、自分が小中学生だったときは、いじめよりも教師による体罰がきつかった。暴力を振るう先生がたくさんいました。戦時中の軍国教育が尾を引いていました。今とは大違いです。先生にさからえば、びんたが飛んできて、正座させられることはしょっちゅうでした。親もどうぞやってくださいという態度でした。
半世紀前のこどもは、親にたたかれ、先生にたたかれ、兄弟姉妹にたたかれ、ひどいめにあっていました。そしてたくましく育ったのです。なにくそ負けてたまるかです。
死んだ緒方誠一と警官の娘であった藤島加奈子は仲良しだったそうです。
(つづく)
あやしい男が三人います。
アポカリプス:不良グループ。アポカリプスは、キリスト教で、『黙示(もくし。神の啓示、教え)』
東理恵(あずま・りえ):藤島加奈子の高校の担任教師。藤島加奈子の薬物使用を知っていた。
父と娘の関係の書き方が疑問です。
主人公の父親がものすごく娘の心配をするのですが、自然な愛情とは思えないのです。
仕事人間で、家庭や家族を顧みなかった(かえりみなかった。考えなかった。配慮しなかった。愛情のある対応をしなかった)人間が、書いてあるような深い愛情を娘にもつとは思えないのです。
生物学的に親子でも、日常から親子であることを意識して生活していないと、気持ちの交流は築けません。親子は親子であろうと日々努力していなければ親子にはなれないのです。
この物語の設定の場合は、仕事人間の父親は、母親にこう言って終わりです。『おまえのせいで、娘がおかしくなった』(オレは、あとは知らない。オレのせいじゃない)
繰り返しになりますが、これほど親子関係が希薄な男が、娘の心配をするだろうか。生物学的に親子でも日ごろから親子である努力をお互いにしていないと親子は親子になれません。
さらに、この主人公元刑事の男は、自分の思いどおりにならないと暴力を振るう男です。
DV男です。とんでもない奴です。
あきらめることができない男です。
ねちっこく、粘ることが、人間としてあるべき姿と勘違いしている男です。相手をいじめぬくことが、最高の喜びだと誤解している男です。当然、不幸になります。
今、読み手である自分は、126ページ付近にいます。これ以上読んでも得るものはないかも……
いつものことですが、旅をするように、本の中を旅しています。
『三年前 3』
読んでいて気分が悪くなるような内容の文章です。
いじめのようすが書いてあります。男子中学生たちが、ひよわな同級生をいじめぬきます。
「待て」「逃げんな」「捕まえろ」です。
わたしなら歯向かっていきます。やられたらやりかえすのが男の道と、今は亡き乱暴者の父にこどもの頃、教えられました。じっさいにやりかえしたことが何回かあります。だれも助けてくれないのです。自分でがんばるのです。大声上げて、こぶしを振り上げて向かっていくしかないのです。今、世界各地で起きている戦争と同じです。きれいごとを言ってもどうしようもないときもあるのです。それが現実です。暴力反対と正論を吐いて意地を張っていると、相手に攻め入られて、自分の陣地と家族と生活を相手に奪われてしまうのです。それが人間界の現実です。
作者は何を訴えたいのだろう。
他者に救いを求めたいのだろうか。
いじめは反対、保護が必要、そして、ならば復讐(ふくしゅう。仕返し)だーーなのか。
極端な書き方がしてある文章なので、趣旨がよくわかりません。
(つづく)
藤島加奈子には二面性があるようです。善人と悪人の二面性です。
父親は藤島加奈子を善人だと思いこんでいる。
藤島加奈子のまわりにいる人間は、藤島加奈子が悪人であることを知っている。
そんな感じです。
元警官の娘は、悪のグループでは、ボス的存在なのです。
父親である藤島秋弘は、のちに深く後悔するでしょう。仕事人間だったことで、家族や家庭が壊れたのです。
スピード:薬物。覚せい剤のこと。
警察官でもないのに、以前使っていた名刺1枚で、娘の行方を調べるために事情聴取をする藤島秋弘です。その行為は、すでに犯罪です。自分の身を守るための組織(警察)はバックになく、道具(拳銃)ももっていません。殺されちゃいます。
田村:集団暴行を受けていた少年
『三年前 4』(三年前というのは、中学三年生当時ということであろうと思いながら読んでいます。だから、現在は、高校三年生なのです)
瀬岡尚人(せおか・なおと):いじめで閉じ込められたが脱出した。この、『三年前』の部分を書いている人物ではなかろうか。
A:田村:いじめにあっていた男子のようです。(いじめにあっていた緒方誠一は自殺した)。田村は今、いじめる側にいる。
B:大場
C:瀬岡をいじめるために、針金を取り出した男。Cは以前、いじめにあったことがある。
棟方泰博:犯罪グループ、『アポカリプス(黙示録という意味)』のメンバー
岩間:ひとり語りをする男の1歳年下の男。野球部員180cm、長打力あり。
神永朱美(かみなが・あけみ):藤島加奈子の昔の友だち。小学生時代から中学にかけての友だち。
(つづく)
藤島加奈子は、アポカリプスに拉致(らち)されたのかとありますが、拉致はされていないのでしょう。むしろ、本事件を操る(あやつる)立場にいる。
エス:警察用語で、「情報屋」。スパイ
走狗(そうく):人の手先になって働く者。いやしい者
警察が張り込んでいたはずなのに、藤島秋弘は、犯罪グループに捕まって、ボコボコにされてしまいました。不可解です。その後、藤島秋弘が乗用車を運転して移動するのですが、それも含めて不可解です。運転できるような体の状態ではありません。
写真?(何の写真だろう。犯罪グループにとって都合の悪い写真です。見つかりません)
力作です。
『三年前 5』
神永朱美が、瀬岡に近づこうとしている。
(つづく)
エクスクラメーション・マーク:感嘆符で、『!』のこと。
石丸組:コングロマリット(多種類の事業を営む企業)。関東を中心とした広域指定暴力団。印旛会(いなばかい)の傘下団体(さんかだんたい)。飲食、風俗、ゲーム、金融、廃棄物処理など。シャブの元締め。
またひとり殺されました。
主人公の元刑事藤島秋弘は、このゆきづまった状況をどう打開するのだろう。
このヤマにおまわりが関わっている。(共犯者に警察関係者がいる)
打擲(ちょうちゃく):なぐる。たたく。
殺された小山順平は、愛用のカメラで、撮ってはいけない物を撮影した。そのことで命を奪われた。その写真は、藤島加奈子に託された。(なんだろう。撮ってはいけない物とは)
『三年前 6』
語り手の瀬岡(中学三年生男子)が、母親に友だちと花火大会に行くと偽って家を出る。不良のたまり場へ行く。リンチを受ける。(残酷な暴力)
遠藤那美:不良仲間のひとり。
アストロ:シボレー・アストロ。アメリカ車
イーグルス:アメリカ合衆国のロックバンド。
読んでいて思い浮かぶ作品は、1970年代自分が若い頃に読んだ、『限りなく透明に近いブルー 村上龍』、それから、2022年(令和4年)に読んだ、『テスカトリポカ 佐藤究(さとう・きわむ)』です。テスカトリポカは、『闇を支配する神』です。現在のメキシコ中部にあったアステカ文明が関係しています。内容の雰囲気が、こちらの小説と同種、同分類です。
棟方がいる。ボウガンを持っている。(弓矢のように矢を発射する装置)
薬物の類(たぐい)がある。
藤島加奈子の話が出る。
ドレッドヘアー:髪の毛がロープのような形状になっている。
あいまいな記述が続く270ページあたりです。
藤島加奈子というのは、どういう人間なのか。あいまいです。
頭の中でつくった世界がいっぱい書いてあります。
作者の意識は盛り上がっている。
熱狂と冷却があります。
黄色いジャケットと黒いパンツの女。
琥珀色(こはくいろ):くすんだ赤味の黄色。だいだい色
チョウ:ボスという意味だろうか。
炯眼(けいがん):ギラギラ光る目。するどい目
(つづく)
シーマ:日産自動車の高級乗用車
読みながら、『つくってある話』なんだなあと思う。
コルト:軍用自動拳銃
『三年前 7』
作者はこんなことを書いて楽しいのだろうか。(読み手である自分はついていけない)
出版社は、こういう作品を世に出して、してやったりと思うのだろうか。(してやったり:思いどおりにうまくやれた)
現実社会にもいるエロ政治家とか組織の上層部にいる人間を糾弾したかったのか。(英雄色を好む。(えいゆういろをこのむ)。男色(だんしょく)も好む)。某芸能事務所の不祥事のようでもある。(案外そこに、創作のヒントがあったのかもしれない)
(つづく)
小山順平は、殺されてもしかたがないほどのことをしたことを理解しました。彼は恨まれた(うらまれた)。
『三年前』という手記を書いているのは、『瀬岡』という人物だろうと思って書いていますが、じっさいそうなのかというと、自信がありません。
趙義哲(ちょう・下の名前の読みはちとわかりません):実業家。ビルのオーナー。パチンコ、ホテル(大宮センターホテル)、レストランなどの不動産をたくさんもつお金持ち。
藤島秋弘には記憶がないようだが、酔って、妻や娘に暴力を振るったことがあるらしい。それもかなりひどいことをした。(精神的な病気がありますな)
『三年前 8』
棟方泰博が、不良グループ『アポカリプス(黙示録)』がメンバーで狂暴。
藤島加奈子は、宇宙にあるブラックホールのような存在。人間として欠けた穴がある。穴が、まわりにいる人間を吸い込んでしまう(転落していく)。
(つづく)
344ページまで読み進めてきましたが、藤島加奈子の実像がいまだはっきりしません。
白いエルグランド:日産自動車のミニバン。こちらの作者さんの特徴として、車の車種を目印に使うということがあります。
ガキ好きの変態がいる:某芸能事務所みたいな話が出ます。単行本は、2005年の発行です。(平成17年)。先日読んだ、『書いてはいけない 日本経済墜落の真相 森永卓郎 三五館シンシャ(さんごかんしんしゃ)』にこう書いてありました。
2003年7月東京高等裁判所判決:加害者と事務所による名誉棄損で出版社を訴えた裁判の判決は、加害者による性被害を認めた。民事事件だった。
2004年2月、最高裁が上告を棄却。高裁の判決が確定した。明らかに刑事事件に該当する事件だった。
警察は動かなかった。マスコミは騒がなかった。
以降も性被害は続いた。(この作品のヒントになったのだろうか)
やばいことが写っている写真の回収をする話が出ます。コピーの話しも出ます。この作品ができたのは、まだ、SNS(ソーシャルネットワークシステム)は構築されていない、流通していない時代背景です。現在なら、いったんネットにあげた写真や映像の回収は不可能です。
デコスケ:警察官のこと。
人間の業(ごう。悪行(あくぎょう)。理性でコントロールできない心の働き、動き)を描くことが、この作品のテーマなのだろうか。
(つづく)
『三年前 9』
髪を梳く:かみをすく。櫛の歯で髪をとかす。すきばさみでカットするという意味もあります。もう量を減らす。ハサミの片方の歯がクシのような形をしている。
いじめていたのが、『島津』。
チョウというは、趙義哲のこと。
374ページまで読みました。
(つづく)
父藤島秋弘の気持ちと娘藤島加奈子の気持ちがかみ合っていない。
藤島加奈子の人物像に関する記述が薄い。
391ページ、どう話をまとめるのだろうか。あと100ページぐらいです。
『三年前 10』
手記ではない。第三者が観察する文章になっている。
錯覚があります。味方だと思っていた(藤島加奈子)が敵だった。
そういうことって、現実にもあります。
社会では受け入れられにくい作品です。
暴力でこと(課題)を解決しようとする主人公です。
(つづく)
リボルバーの男:回転式けん銃を持っている男。警察官
(つづく)
『三年前 11』
名ゼリフです。『ぼくは幽霊なんだ。もう生きているのか、死んでいるのか、自分でもわからない……』
(つづく)
茗荷谷(みょうがだに):東京都文京区
藤島加奈子が主催者であるホラー・恐怖物語です。
『加奈子の復讐は完成する……』
禁忌(きんき):禁止する。避ける。
『三年前 12』
う~む。
中学校でいじめを受けた人間が、仕返しをする話だろうか。いずれにしても復讐(ふくしゅう)ではある。暴力には、暴力で立ち向かう。
(つづく)
散弾銃で、先台をポンピングする:散弾銃のまんなかの木製部分(先台さきだい)を、後ろにスライドして弾薬を装填(そうてん)する。弾(たま)の発射が可能になる。
『……この国の男どもは変態ばかりになった(性的なこととして)……』(ニュースでは聞きますが、そういう人を見たことはありません)
沢渡組(さわたりぐみ):暴力団。殺人をシノギにしている。(収入を得るための活動)
『エピローグ(終わりの部分)』
剣呑(けんのん):危険や不安を感じているようす。
携帯電話をこどもに買うか買わないかが、ひとつの伏線になっていました。
親に携帯電話を買ってもらえないと、こどもは違法行為をしてでもお金を手に入れようとするのです。
(読み終わりました)
ふーっ。長かった。
『解説 深町秋生との出会いは衝撃的だった 池上冬樹(文芸評論家)』
加藤小判と赤城修史:深町秋生氏の別名
ジェイムズ・エルロイ:アメリカ合衆国の小説家。1948年(日本だと昭和23年)生まれ76歳。
エピゴーネン:有名な人をまねする創作活動
破滅型ノワール:犯罪映画のジャンル。1940年から1950年代後半(昭和15年~昭和34年ころ)
リーダービリティ:文章や文字が読みやすいこと。
2007年5月(平成19年)の日付で書かれている文章です。ちょっとわたしにはむずかしい解説でした。わからない言葉がたくさんありました。
2024年12月21日
儚い羊たちの祝宴 米澤穂信
儚い羊たちの祝宴(はかないひつじたちのしゅくえん) 米澤穂信(よねざわ・ほのぶ) 新潮文庫
ミステリー小説です。(犯罪・事件の推理小説)。
短編が5本あります。連続・関連があるのだろうか。
読み始めます。
それぞれのタイトルについて、読み方とか、意味がわかりにくいものもあります。
『身内に不幸がありまして』
<村里夕日の手記>から始まりました。
村里夕日(むらさと・ゆうひ):人の名前です。彼女の語りで物語が進みます。孤児院育ちで、5歳のときに、上紅丹地方(かみくたんちほう)を支配する丹山因陽(たんざん・いんよう)という資産家に引き取られて、丹山家のお嬢さまである3歳年上の吹子の世話係として仕える(つかえる)ことになった。夕日が小学校5年生のときに、吹子は、中学一年生です。吹子の父親が、丹山高人(たんざん・たかひと)、母親が、丹山軽子(たんざん・かるこ)です。
吹子の部屋を和風から洋風に変えて、本棚をつくった。吹子は読書家です。
本棚に扉をもうけて、本棚の奥に、隠し部屋をつくった。
文机(ふづくえ):床に座って使う和風の机
典籍(てんせき):書籍、書物
横溝正史(よこみぞ・せいし。推理作家。1902年(明治35年)-1981年(昭和56年)79歳没)の『夜歩く』(昭和23年頃の作品。ドラマ化された)。
谷崎潤一郎:小説家。1965年(昭和40年)79歳没。作品として、『柳湯の事件』
志賀直哉:小説家。1971年(昭和46年)88歳没。作品として、『濁った顔(にごったかお)』
木々高太郎(きぎ・たかたろう):大脳生理学者、小説家。1969年(昭和44年)72歳没。作品として、『睡り人形(ねむりにんぎょう)』。
小酒井不木(こさかい・ふぼく):医学者、推理作家。1929年(昭和4年)肺炎で38歳没。作品として、『メヂューサの首』。
浜尾四郎:検事、弁護士、探偵小説家。1935年(昭和10年)39歳没。脳溢血(のういっけつ)。作品として、『夢の殺人』。
海野十三(うんの・じゅうざ):小説家。1949年(昭和24年)51歳没。結核。作品として、『地獄街道』。
夢野久作:小説家。1936年(昭和11年)47歳没。脳溢血。作品として、『ドグラ・マグラ』。
江戸川乱歩:推理作家。1965年(昭和40年)70歳没。作品として、『夢遊病者の死』、『二癈人(にはいじん)』
ジャン・コクトー:詩人、小説家。フランス人。1963年(昭和38年)74歳没
ヨハンナ・スピリ:スイスの女性作家。1901年(明治34年)74歳没。作品として、『アルプスの少女』
シェイクスピア:イングランドの劇作家、詩人。1616年51歳没。作品として、『マクベス』。
革の書皮(しょひ):ブックカバー
記紀(きき):古事記と日本書紀
衣通姫(そとおりひめ):古事記と日本書紀に登場する女性
丹山宗太(たんざん・そうた):丹山吹子の兄。不行跡(ふぎょうせき。行いが良くない。暴力を振るう。粗暴)だった。
大旗神代(おおはた・かみよ):丹山吹子の大叔母(祖父母の姉妹)。吹子をいじめていた。
満美子:丹山吹子の伯母(父母の姉妹)。吹子をいじめていた。
エラリー・クイーン:アメリカ合衆国の推理作家、編集者。従兄(いとこ)同士、男性ふたりのペンネーム。フレデリック・ダネイ(1982年(昭和57年76歳没)とマンフレッド・ベニントン・リー(1971年(昭和46年)66歳没)のふたり。本書に出てくるのは、『十日間の不思議』という作品です。1948年(昭和23年)の長編推理小説。
う~む。文章が作為的に感じられます。(意図があって、読者を誘導しようとしている)
詐欺的でもあり、洗脳の気配(読者の心理をコントロールしようという試み)があります。
だまし本です。
吹子お嬢さんは、大学で、『バベルの会』という読書界に入った。バベル:旧約聖書に出てくる伝説の塔。バベルの塔。ヘブライ語で、混乱、ごちゃまぜ。
毎年8月1日に避暑を兼ねて、涼しい蓼沼(たてぬま)というところで読書会を行う。
御前様(ごぜんさま):おじいさんのことでしょう。丹山因陽(たんざん・いんよう)のこと。
奇貨(きか):めったにない機会。丹山宗太は、生きているのに死んだことにされてしまいました。葬式があります。吹子はバベルの会の読書会へ行けませんでした。
宗太はどこかへ逃げていなくなった。
読み終わりました。
つくってある話です。(つくり話)。
無残な殺しがあります。
ストーリーに仕掛けがあります。(わたしはあまり好まない仕掛けでした。現実味がありません。錯覚です)。
種明かしはわかりましたが、怖くはありません。(こわくはありません)。
最後のオチは、なぜそうなるのか、わたしにはわかりません。
言下に(げんかに):言い終わったすぐあと。
泉鏡花:小説家。1939年(昭和14年)65歳没。作品として、『外科室』
『北の館の罪人』
千人原地方(せんにんばらちほう)での出来事です。
六綱家(むつなけ)という家の出来事です。
当主(その家の主人):六綱光次(むつな・こうじ) 三十歳前後の年齢
わたし(物語の語り手)内名あまり(うちな・あまり)女性。敷地の中にふたつ屋敷があって、『北の館』に住んでいる。内名あまりは、妾の子(次に出てくる六名虎一郎の子)
六綱虎一郎(むつな・こいちろう):六名光次の父親。事故で寝たきり状態にある。
六綱早太郎(むつな・そうたろう):六名光次の兄。北の館に住んでいる。
疎林(そりん):木がまばらに生えた林
絵がある。本館(六名光次が住む)の絵は、青い空、青い海、青い人影。空は、紫がかった色。
別館(北の館)の絵は、また違う雰囲気であるというような書き方がしてあります。
語り手の内名あまりと、六名早太郎は、北の館から出ることができない状態にある。
内名あまりは、六名早太郎の掃除と給仕(雑用、飲食)の世話をする。
戦前の日本のようです。
基本的人権の尊重はありません。移動の自由とか、居住の自由がありません。
どんな事件が起きるのだろう。
(つづく)
千代:本館の使用人
初代六綱龍之介(むつな・りゅうのすけ):紡績工場を興した。その後、製薬工場を興した。
正一:初代六綱龍之介の長男。奇矯の振る舞いがあった。(言動が異様)
先々代六綱恭一郎(むつな・きょういちろう):好色(こうしょく。すけべ)。変態。サディスト
六綱早太郎と光次の妹 詠子(よみこ)
黒窓館(別館・北の館のこと)
不気味ではある。
六綱早太郎も内名あまりも北の館で軟禁状態です。でも、ふたりとも外に出たいとは思いません。
内名あまちだけが、六綱早太郎に頼まれて買い物に行きます。六綱光次はそれを許可します。
内名あまりが買ってくるものとして、ビネガー(酢)、画鋲(がびょう)、糸鋸(いとのこ)、乳鉢(にゅうばち。薬を入れてすりつぶすときに使う)、鉛、木材、ニス、凧糸(たこいと)、卵、牛の血、ラピスラズリの原石(青い鉱物)……
獄卒(ごくそつ):牢獄の番人。役人
いろいろ事情があります。
文章は読みやすい。さきほどの『身内に不幸がありまして』よりも腹に落ちる話です。(理解できる)
青色にこだわる作品です。
『バベルの会(読書会)』:紫を観た。露草の青と紅(くれない。べにばな)の赤を加えてつくった紫。露草の青は、色あせしやすい。紫は、赤に変化する。
114ページ、そうか。予測できなかった殺人事件です。ひそかに人殺しが行われました。動機は、復讐と相続です。まだ、殺人行為は続くのでしょう。
『山荘秘聞(さんそうひぶん。家や地区に密かに(ひそかに)伝わっていること)』
わたし(この短編での語り手)屋島守子19歳ぐらい。『飛鶏館(ひけいかん)』という別荘の管理人をしている。別荘の所有者は、東京目黒に住む貿易商の辰野嘉門という人物。別荘の管理人室で、住み込みで働いている。
八垣内(やがきうち):別荘地。山のかなり奥地にある。
越智靖巳(おちやすみ):山の崖地から落ちて遭難した大学登山クラブ所属の人
原沢登:産大山岳部長
読み終えて、恐ろしい人がいたものだと、ぞっとしました。<現実にもこういう人がいそうです>
この本では、人格が異常な人が殺人事件の犯人として順番に紹介されていきます。
きちょうめんでまじめな殺人犯人です。
自分に与えられた仕事(別荘の管理)に生きがいをもっています。
やるべきことはきちんとやるのです。なんでもできる有能な人間です。
仕事優先、仕事好き、仕事人間です。されど、人間として大切な脳みその一部が欠けているような人間です。きちんとした仕事を最高レベルで達成するためには人をも殺します。
ドローイングルーム:客間、宴会場
ルバーブ:食用植物。和名は、ショクヨウダイオウ。
ハーケン:登山道具。岸壁の割れ目に打ち込んで使用する。
リヴ・ヴォールト:ゴシック建築における天井の様式。アーチ型
殺人者は、お客が欲しかった。自分の仕事の成果をお客に見てもらいたかった。
仕事の面ではいい人なのですが、殺人を行うその人は、人格異常者です。
『玉野五十鈴の誉れ(たまのいすずのほまれ)』
誉れ(ほまれ):名誉、いい評判
言葉がむずかしいので、言葉を理解するのに調べる時間が必要で、読むのがたいへんです。
いわゆる、『イヤミス(いや~な気持ちで読み終えるミステリー小説)』作品が続きます。殺人者優位で末尾が結ばれます。あとは、読者の想像におまかせします、です。
玉野五十鈴(たまの・いすず):15歳。豪邸の使用人。令嬢の世話人。令嬢もまた15歳。玉野五十鈴は頭がいい。もともとは、自分自身も令嬢だったようです。家が火災で燃えて、親族も焼死でなくなって身寄りがなくなったような経過がうかがえます。
小栗純香(おぐり・すみか):15歳。名家小栗家のひとり娘。跡継ぎの立場なので、祖母の帝王教育がきつい。(地位にふさわしい教育を受ける)。祖母が、この名家の癌(がん)のような存在になっている。厳しい。
玉野五十鈴の父:婿養子で、何の力もない。
玉野五十鈴の母:男の子を産めなかった(男子の跡取りを産めなかった)ことで、立場が弱い。
祖母は、男三人を産んだが、それぞれ、戦死、病死、事故死で亡くした。
小栗家は、駿河灘(するがなだ)に面した、高大寺(こうだいじ)という土地の名家
『鵠は日に浴せずして白し』(ことわざ:白鳥は水浴びしなくてもいつも白い。いい容姿や性質は、なにもしなくても悪い方へは変わらない)
詠雪の才(えいせつのさい):文学的な才能がある女性。ほめ言葉
『直き(なおき)を友とし、諒(まこと)を友とし、多聞(たぶん)を友とするは益なり』(正直な人、誠実な人、多聞(博識)な人を友だちにすることは有益です)
『其の子を知らざれば、其の友を視よ(みよ)』(その子のことがわからないときは、その子の友だちをみなさい。その子が付き合っている友だちをみれば、その子の性格や性質などがわかる)こちらの本の場合は、おろかな者と付き合うなという祖母の孫娘に対する教育があります。
祖母はかなり勝手な人です。跡継ぎ候補の小栗純香(おぐり・すみか)15歳は孤高の人(こどくな人)になってしまいますが、そこに、利口(りこう。頭がいい)な玉野五十鈴が小栗純香の世話人として現れます。
文房四宝(ぶんぼうしほう):中国の書道で欠かせない道具。筆、墨(すみ)、紙、硯(すずり)のこと。
稀覯書(きこうしょ):世の中に出回ることが少ない貴重な書物、古書のこと。
須臾(しゅゆ):しばらくの間、わずかの間
一損(いちゆう):会釈、おじぎ
書見台(しょけんだい):本が見やすいように、本の後ろに立てかける台。ブックスタンド、読書台
諧謔(かいぎゃく):おもしろい気の利いた(きいた)冗談。ユーモア
轍鮒の急(てっぷのきゅう):危険や困難が迫っている状況。車が通ったあどにできた轍(わだち。タイヤの跡)にたまった少しの水の中に鮒(フナ)がいる。フナがもう死んでしまうかもしれないという緊急の状態
霖雨(りんう):幾日も降り続く長雨(ながあめ)
有徳の人(ゆうとくのひと):金銀財宝をたくさん持っている裕福な人
『紫蘭の室に入るが如し(しらんのしつにはいるがごとし)』(徳の高い人と付き合っていると、自然に良い影響を受ける)
有象無像(うぞうむぞう):世の中にたくさんあるくだらないもの。
『鮑魚の肆に入るが如し(ほうぎょのいちぐらにいるがごとし)』:(悪い仲間と付き合っているとそれに染まってしまう)
軛(くびき):複数いる牛馬を横につなぐ木製の棒
小栗純香(おぐり・すみか)は、大学へ行き、外の世界を知り、学びたいと祖母に申し出て、玉野五十鈴を世話人として連れて、高大寺を出ます。玉野五十鈴が10日に一度、報告書を祖母に送るそうです。
小栗純香(おぐり・すみか)は、2か月にならない期間、高大寺を離れた。(大学通学にしては短い。実家で殺人事件が起きたのです。老夫婦は縛り(しばり)あげられ、孫ふたりは刺殺されました。犯人は、蜂谷大六(はちや・だいろく)。小栗純香(おぐり・すみか)の父の兄です)。
小栗純香(おぐり・すみか)は、大学で、読書会である『バベルの会』に入会した。
折竹孫七(おりたけ・まごしち):小説家小栗虫太郎の秘境探検小説に登場する人物。鳥獣採集人。理学士
マーヴィン・バンター:推理小説に出てくる召使。
玉野五十鈴は外国作家の推理小説が好きで、小栗純香(おぐり・すみか)にも勧めます。
殺人事件の発生により、小栗家から小栗純香(おぐり・すみか)の父親が追い出されました。
小栗純香(おぐり・すみか)も出て行けとの祖母の命令です。
玉野五十鈴の小栗純香(おぐり・すみか)を世話する役ははずされて、単なる召使になりました。
玉野五十鈴の小栗純香(おぐり・すみか)に対する態度が冷たくなります。
ジーヴス:なんでも知っていて、なんでもできる従者。小説の登場人物
イズレイル・ガウ:小説に出てくる召使
一高:旧制第一高等学校。東京大学教養学部、千葉大学医学部、薬学部の前身。帝国大学の予科(予備教育課程)
物語は、小栗純香(おぐり・すみか)が孤独になっていく経過をたどります。
小栗純香(おぐり・すみか)は、小栗家にとって不要な人間となり、部屋に閉じ込められ、『飼い殺し』状態です。ときに、自害を(自殺を)迫られたりもします。
どうぞ、ご賢察(けんさつ)ください:お察し(さっし)ください。(毒種をもられたときに玉野五十鈴から小栗純香が聞いた言葉)
小栗純香(おぐり・すみか)は、死にません。
祖母が死にます。死んでまわりの人間から喜ばれる祖母がいます。
権力闘争があります。
大学の学生(上流階級の)読書会である『バベルの会』とは何なのだろう。
不気味な話です。
昭和50年代にはやった(1975年代)、横溝正史(よこみぞ・せいし 推理作家1981年(昭和56年)79歳没)の怪奇映画シリーズを思い出します。『八つ墓村』、『犬神家の一族』、『獄門島(ごくもんとう)』など。
怖い話(こわいはなし)、恐ろしい(おそろしい)話でした。
たまたまなのですが、最近、小泉今日子さんの本で紹介されていたホラー映画を順番に動画配信サービスで観ています。映画と小説の恐ろしさが重なります。
『儚い羊たちの晩餐(はかないひつじたちのばんさん)』
この本のタイトルと同じだと思いこんでいたら違っていました。
この本のタイトルは、『儚い羊たちの祝宴』でした。なんの意味があって、異なるタイトルなのだろうか。
(わたし)大寺鞠絵(おおでら・まりえ):読書会『バベルの会』の会費を払えなくて、会を除名された。金はあってもケチなパパが会費を出してくれなかった。パパは、読書を道楽と判断した。
おじいちゃんが大寺家を築いた。立派な人だった。パパはだめな人。鞠絵はおじいちゃんを大好きだった。
大寺鞠絵のパパ
厨娘(ちゅうじょう。):女性の料理人で名前は、『夏 なつ。美人。鮮やかな赤い上着に翠(みどり)のスカート姿。ちょっとツンとしている。二十歳ぐらい。夏の小間使いか見習いが、文(あや。10歳ぐらい)という名前。大寺家に住み込みで働く。料理はじょうずです。ただ、お金や物にがめつい(欲張りみたいです)
馬淵(まぶち):大寺家のもとからいたお手伝い。
黒井:大寺家の召使
第一話の『丹山家(たんざんけ)』と第二話の『六綱家(むつなけ)』のことが出てきます。
日記とか日誌の書き方です。これまでの短編とは雰囲気が異なります。
『バベルの会はこうして消滅した』とあります。
口入れ屋:奉公人、雇い人、芸者などのあっせん仲介業者
アイリッシュ:アメリカ合衆国の推理作家。1968年(昭和43年)64歳没
ダール:イギリスの小説家、脚本家。1990年(平成2年)74歳没
ダンセイニ:アイルランドの小説家、軍人。1957年(昭和32年)79歳没
羊頭肉(ようとうにく):マトン。ヒツジの肉
慨嘆(がいたん):嘆いたり(なげいたり)、心配したり。
鵝掌(がしょう):ガチョウの足を料理したもの。
文章は、だれかが(女学生)、大寺鞠絵が描き残した日記を読んでいる光景です。
パパが画商から絵を買うつもりだ。
絵を買うのは投資目的です。
テオドール・ジェリコーの『メデュース号の筏(いかだ)』:フランスの画家。1824年32歳没
バベルの会:幻想と現実とを混乱してしまう儚い者(はかないもの)たちの聖域(せいいき。アジール)という意味の会。宿痾(しゅくあ。長く続く心の病(やまい))を抱えた者たちが集まる会。現実のあまりの単純さ、複雑さに耐えきれない人間の集まり。逃避のために物語を読んでいる。現実逃避のために夢想家になっている。
実際家:現実家。夢はみない。日常生活を現実的に処理していく。理屈も理論も理想も追わない。理想は幻想でしかないとする。
殺人の話が出ます。
鳥兜(トリカブト):毒を持つ植物
アミルスタン羊:羊ではない。
僭越ながら(せんえつながら):出過ぎたことをしますが。
柘榴(ざくろ):実が食用になる。
葱:ねぎ
遥拝(ようはい):はるかに遠いところから拝むこと。(おがむこと)
『夢見る儚い羊たち(ゆめみるはかないひつじたち)』(意味がわかりました)
オソロシイ
不気味です。
心がザワザワします。
読み終えました。
『解説』に書いてあるとおりでした。
目的のためにはどんな無慈悲な行為も辞さない登場人物たちの……
奸計合戦(かんけいかっせん):悪だくみの応酬(おうしゅう。やりとり)
ミステリー小説です。(犯罪・事件の推理小説)。
短編が5本あります。連続・関連があるのだろうか。
読み始めます。
それぞれのタイトルについて、読み方とか、意味がわかりにくいものもあります。
『身内に不幸がありまして』
<村里夕日の手記>から始まりました。
村里夕日(むらさと・ゆうひ):人の名前です。彼女の語りで物語が進みます。孤児院育ちで、5歳のときに、上紅丹地方(かみくたんちほう)を支配する丹山因陽(たんざん・いんよう)という資産家に引き取られて、丹山家のお嬢さまである3歳年上の吹子の世話係として仕える(つかえる)ことになった。夕日が小学校5年生のときに、吹子は、中学一年生です。吹子の父親が、丹山高人(たんざん・たかひと)、母親が、丹山軽子(たんざん・かるこ)です。
吹子の部屋を和風から洋風に変えて、本棚をつくった。吹子は読書家です。
本棚に扉をもうけて、本棚の奥に、隠し部屋をつくった。
文机(ふづくえ):床に座って使う和風の机
典籍(てんせき):書籍、書物
横溝正史(よこみぞ・せいし。推理作家。1902年(明治35年)-1981年(昭和56年)79歳没)の『夜歩く』(昭和23年頃の作品。ドラマ化された)。
谷崎潤一郎:小説家。1965年(昭和40年)79歳没。作品として、『柳湯の事件』
志賀直哉:小説家。1971年(昭和46年)88歳没。作品として、『濁った顔(にごったかお)』
木々高太郎(きぎ・たかたろう):大脳生理学者、小説家。1969年(昭和44年)72歳没。作品として、『睡り人形(ねむりにんぎょう)』。
小酒井不木(こさかい・ふぼく):医学者、推理作家。1929年(昭和4年)肺炎で38歳没。作品として、『メヂューサの首』。
浜尾四郎:検事、弁護士、探偵小説家。1935年(昭和10年)39歳没。脳溢血(のういっけつ)。作品として、『夢の殺人』。
海野十三(うんの・じゅうざ):小説家。1949年(昭和24年)51歳没。結核。作品として、『地獄街道』。
夢野久作:小説家。1936年(昭和11年)47歳没。脳溢血。作品として、『ドグラ・マグラ』。
江戸川乱歩:推理作家。1965年(昭和40年)70歳没。作品として、『夢遊病者の死』、『二癈人(にはいじん)』
ジャン・コクトー:詩人、小説家。フランス人。1963年(昭和38年)74歳没
ヨハンナ・スピリ:スイスの女性作家。1901年(明治34年)74歳没。作品として、『アルプスの少女』
シェイクスピア:イングランドの劇作家、詩人。1616年51歳没。作品として、『マクベス』。
革の書皮(しょひ):ブックカバー
記紀(きき):古事記と日本書紀
衣通姫(そとおりひめ):古事記と日本書紀に登場する女性
丹山宗太(たんざん・そうた):丹山吹子の兄。不行跡(ふぎょうせき。行いが良くない。暴力を振るう。粗暴)だった。
大旗神代(おおはた・かみよ):丹山吹子の大叔母(祖父母の姉妹)。吹子をいじめていた。
満美子:丹山吹子の伯母(父母の姉妹)。吹子をいじめていた。
エラリー・クイーン:アメリカ合衆国の推理作家、編集者。従兄(いとこ)同士、男性ふたりのペンネーム。フレデリック・ダネイ(1982年(昭和57年76歳没)とマンフレッド・ベニントン・リー(1971年(昭和46年)66歳没)のふたり。本書に出てくるのは、『十日間の不思議』という作品です。1948年(昭和23年)の長編推理小説。
う~む。文章が作為的に感じられます。(意図があって、読者を誘導しようとしている)
詐欺的でもあり、洗脳の気配(読者の心理をコントロールしようという試み)があります。
だまし本です。
吹子お嬢さんは、大学で、『バベルの会』という読書界に入った。バベル:旧約聖書に出てくる伝説の塔。バベルの塔。ヘブライ語で、混乱、ごちゃまぜ。
毎年8月1日に避暑を兼ねて、涼しい蓼沼(たてぬま)というところで読書会を行う。
御前様(ごぜんさま):おじいさんのことでしょう。丹山因陽(たんざん・いんよう)のこと。
奇貨(きか):めったにない機会。丹山宗太は、生きているのに死んだことにされてしまいました。葬式があります。吹子はバベルの会の読書会へ行けませんでした。
宗太はどこかへ逃げていなくなった。
読み終わりました。
つくってある話です。(つくり話)。
無残な殺しがあります。
ストーリーに仕掛けがあります。(わたしはあまり好まない仕掛けでした。現実味がありません。錯覚です)。
種明かしはわかりましたが、怖くはありません。(こわくはありません)。
最後のオチは、なぜそうなるのか、わたしにはわかりません。
言下に(げんかに):言い終わったすぐあと。
泉鏡花:小説家。1939年(昭和14年)65歳没。作品として、『外科室』
『北の館の罪人』
千人原地方(せんにんばらちほう)での出来事です。
六綱家(むつなけ)という家の出来事です。
当主(その家の主人):六綱光次(むつな・こうじ) 三十歳前後の年齢
わたし(物語の語り手)内名あまり(うちな・あまり)女性。敷地の中にふたつ屋敷があって、『北の館』に住んでいる。内名あまりは、妾の子(次に出てくる六名虎一郎の子)
六綱虎一郎(むつな・こいちろう):六名光次の父親。事故で寝たきり状態にある。
六綱早太郎(むつな・そうたろう):六名光次の兄。北の館に住んでいる。
疎林(そりん):木がまばらに生えた林
絵がある。本館(六名光次が住む)の絵は、青い空、青い海、青い人影。空は、紫がかった色。
別館(北の館)の絵は、また違う雰囲気であるというような書き方がしてあります。
語り手の内名あまりと、六名早太郎は、北の館から出ることができない状態にある。
内名あまりは、六名早太郎の掃除と給仕(雑用、飲食)の世話をする。
戦前の日本のようです。
基本的人権の尊重はありません。移動の自由とか、居住の自由がありません。
どんな事件が起きるのだろう。
(つづく)
千代:本館の使用人
初代六綱龍之介(むつな・りゅうのすけ):紡績工場を興した。その後、製薬工場を興した。
正一:初代六綱龍之介の長男。奇矯の振る舞いがあった。(言動が異様)
先々代六綱恭一郎(むつな・きょういちろう):好色(こうしょく。すけべ)。変態。サディスト
六綱早太郎と光次の妹 詠子(よみこ)
黒窓館(別館・北の館のこと)
不気味ではある。
六綱早太郎も内名あまりも北の館で軟禁状態です。でも、ふたりとも外に出たいとは思いません。
内名あまちだけが、六綱早太郎に頼まれて買い物に行きます。六綱光次はそれを許可します。
内名あまりが買ってくるものとして、ビネガー(酢)、画鋲(がびょう)、糸鋸(いとのこ)、乳鉢(にゅうばち。薬を入れてすりつぶすときに使う)、鉛、木材、ニス、凧糸(たこいと)、卵、牛の血、ラピスラズリの原石(青い鉱物)……
獄卒(ごくそつ):牢獄の番人。役人
いろいろ事情があります。
文章は読みやすい。さきほどの『身内に不幸がありまして』よりも腹に落ちる話です。(理解できる)
青色にこだわる作品です。
『バベルの会(読書会)』:紫を観た。露草の青と紅(くれない。べにばな)の赤を加えてつくった紫。露草の青は、色あせしやすい。紫は、赤に変化する。
114ページ、そうか。予測できなかった殺人事件です。ひそかに人殺しが行われました。動機は、復讐と相続です。まだ、殺人行為は続くのでしょう。
『山荘秘聞(さんそうひぶん。家や地区に密かに(ひそかに)伝わっていること)』
わたし(この短編での語り手)屋島守子19歳ぐらい。『飛鶏館(ひけいかん)』という別荘の管理人をしている。別荘の所有者は、東京目黒に住む貿易商の辰野嘉門という人物。別荘の管理人室で、住み込みで働いている。
八垣内(やがきうち):別荘地。山のかなり奥地にある。
越智靖巳(おちやすみ):山の崖地から落ちて遭難した大学登山クラブ所属の人
原沢登:産大山岳部長
読み終えて、恐ろしい人がいたものだと、ぞっとしました。<現実にもこういう人がいそうです>
この本では、人格が異常な人が殺人事件の犯人として順番に紹介されていきます。
きちょうめんでまじめな殺人犯人です。
自分に与えられた仕事(別荘の管理)に生きがいをもっています。
やるべきことはきちんとやるのです。なんでもできる有能な人間です。
仕事優先、仕事好き、仕事人間です。されど、人間として大切な脳みその一部が欠けているような人間です。きちんとした仕事を最高レベルで達成するためには人をも殺します。
ドローイングルーム:客間、宴会場
ルバーブ:食用植物。和名は、ショクヨウダイオウ。
ハーケン:登山道具。岸壁の割れ目に打ち込んで使用する。
リヴ・ヴォールト:ゴシック建築における天井の様式。アーチ型
殺人者は、お客が欲しかった。自分の仕事の成果をお客に見てもらいたかった。
仕事の面ではいい人なのですが、殺人を行うその人は、人格異常者です。
『玉野五十鈴の誉れ(たまのいすずのほまれ)』
誉れ(ほまれ):名誉、いい評判
言葉がむずかしいので、言葉を理解するのに調べる時間が必要で、読むのがたいへんです。
いわゆる、『イヤミス(いや~な気持ちで読み終えるミステリー小説)』作品が続きます。殺人者優位で末尾が結ばれます。あとは、読者の想像におまかせします、です。
玉野五十鈴(たまの・いすず):15歳。豪邸の使用人。令嬢の世話人。令嬢もまた15歳。玉野五十鈴は頭がいい。もともとは、自分自身も令嬢だったようです。家が火災で燃えて、親族も焼死でなくなって身寄りがなくなったような経過がうかがえます。
小栗純香(おぐり・すみか):15歳。名家小栗家のひとり娘。跡継ぎの立場なので、祖母の帝王教育がきつい。(地位にふさわしい教育を受ける)。祖母が、この名家の癌(がん)のような存在になっている。厳しい。
玉野五十鈴の父:婿養子で、何の力もない。
玉野五十鈴の母:男の子を産めなかった(男子の跡取りを産めなかった)ことで、立場が弱い。
祖母は、男三人を産んだが、それぞれ、戦死、病死、事故死で亡くした。
小栗家は、駿河灘(するがなだ)に面した、高大寺(こうだいじ)という土地の名家
『鵠は日に浴せずして白し』(ことわざ:白鳥は水浴びしなくてもいつも白い。いい容姿や性質は、なにもしなくても悪い方へは変わらない)
詠雪の才(えいせつのさい):文学的な才能がある女性。ほめ言葉
『直き(なおき)を友とし、諒(まこと)を友とし、多聞(たぶん)を友とするは益なり』(正直な人、誠実な人、多聞(博識)な人を友だちにすることは有益です)
『其の子を知らざれば、其の友を視よ(みよ)』(その子のことがわからないときは、その子の友だちをみなさい。その子が付き合っている友だちをみれば、その子の性格や性質などがわかる)こちらの本の場合は、おろかな者と付き合うなという祖母の孫娘に対する教育があります。
祖母はかなり勝手な人です。跡継ぎ候補の小栗純香(おぐり・すみか)15歳は孤高の人(こどくな人)になってしまいますが、そこに、利口(りこう。頭がいい)な玉野五十鈴が小栗純香の世話人として現れます。
文房四宝(ぶんぼうしほう):中国の書道で欠かせない道具。筆、墨(すみ)、紙、硯(すずり)のこと。
稀覯書(きこうしょ):世の中に出回ることが少ない貴重な書物、古書のこと。
須臾(しゅゆ):しばらくの間、わずかの間
一損(いちゆう):会釈、おじぎ
書見台(しょけんだい):本が見やすいように、本の後ろに立てかける台。ブックスタンド、読書台
諧謔(かいぎゃく):おもしろい気の利いた(きいた)冗談。ユーモア
轍鮒の急(てっぷのきゅう):危険や困難が迫っている状況。車が通ったあどにできた轍(わだち。タイヤの跡)にたまった少しの水の中に鮒(フナ)がいる。フナがもう死んでしまうかもしれないという緊急の状態
霖雨(りんう):幾日も降り続く長雨(ながあめ)
有徳の人(ゆうとくのひと):金銀財宝をたくさん持っている裕福な人
『紫蘭の室に入るが如し(しらんのしつにはいるがごとし)』(徳の高い人と付き合っていると、自然に良い影響を受ける)
有象無像(うぞうむぞう):世の中にたくさんあるくだらないもの。
『鮑魚の肆に入るが如し(ほうぎょのいちぐらにいるがごとし)』:(悪い仲間と付き合っているとそれに染まってしまう)
軛(くびき):複数いる牛馬を横につなぐ木製の棒
小栗純香(おぐり・すみか)は、大学へ行き、外の世界を知り、学びたいと祖母に申し出て、玉野五十鈴を世話人として連れて、高大寺を出ます。玉野五十鈴が10日に一度、報告書を祖母に送るそうです。
小栗純香(おぐり・すみか)は、2か月にならない期間、高大寺を離れた。(大学通学にしては短い。実家で殺人事件が起きたのです。老夫婦は縛り(しばり)あげられ、孫ふたりは刺殺されました。犯人は、蜂谷大六(はちや・だいろく)。小栗純香(おぐり・すみか)の父の兄です)。
小栗純香(おぐり・すみか)は、大学で、読書会である『バベルの会』に入会した。
折竹孫七(おりたけ・まごしち):小説家小栗虫太郎の秘境探検小説に登場する人物。鳥獣採集人。理学士
マーヴィン・バンター:推理小説に出てくる召使。
玉野五十鈴は外国作家の推理小説が好きで、小栗純香(おぐり・すみか)にも勧めます。
殺人事件の発生により、小栗家から小栗純香(おぐり・すみか)の父親が追い出されました。
小栗純香(おぐり・すみか)も出て行けとの祖母の命令です。
玉野五十鈴の小栗純香(おぐり・すみか)を世話する役ははずされて、単なる召使になりました。
玉野五十鈴の小栗純香(おぐり・すみか)に対する態度が冷たくなります。
ジーヴス:なんでも知っていて、なんでもできる従者。小説の登場人物
イズレイル・ガウ:小説に出てくる召使
一高:旧制第一高等学校。東京大学教養学部、千葉大学医学部、薬学部の前身。帝国大学の予科(予備教育課程)
物語は、小栗純香(おぐり・すみか)が孤独になっていく経過をたどります。
小栗純香(おぐり・すみか)は、小栗家にとって不要な人間となり、部屋に閉じ込められ、『飼い殺し』状態です。ときに、自害を(自殺を)迫られたりもします。
どうぞ、ご賢察(けんさつ)ください:お察し(さっし)ください。(毒種をもられたときに玉野五十鈴から小栗純香が聞いた言葉)
小栗純香(おぐり・すみか)は、死にません。
祖母が死にます。死んでまわりの人間から喜ばれる祖母がいます。
権力闘争があります。
大学の学生(上流階級の)読書会である『バベルの会』とは何なのだろう。
不気味な話です。
昭和50年代にはやった(1975年代)、横溝正史(よこみぞ・せいし 推理作家1981年(昭和56年)79歳没)の怪奇映画シリーズを思い出します。『八つ墓村』、『犬神家の一族』、『獄門島(ごくもんとう)』など。
怖い話(こわいはなし)、恐ろしい(おそろしい)話でした。
たまたまなのですが、最近、小泉今日子さんの本で紹介されていたホラー映画を順番に動画配信サービスで観ています。映画と小説の恐ろしさが重なります。
『儚い羊たちの晩餐(はかないひつじたちのばんさん)』
この本のタイトルと同じだと思いこんでいたら違っていました。
この本のタイトルは、『儚い羊たちの祝宴』でした。なんの意味があって、異なるタイトルなのだろうか。
(わたし)大寺鞠絵(おおでら・まりえ):読書会『バベルの会』の会費を払えなくて、会を除名された。金はあってもケチなパパが会費を出してくれなかった。パパは、読書を道楽と判断した。
おじいちゃんが大寺家を築いた。立派な人だった。パパはだめな人。鞠絵はおじいちゃんを大好きだった。
大寺鞠絵のパパ
厨娘(ちゅうじょう。):女性の料理人で名前は、『夏 なつ。美人。鮮やかな赤い上着に翠(みどり)のスカート姿。ちょっとツンとしている。二十歳ぐらい。夏の小間使いか見習いが、文(あや。10歳ぐらい)という名前。大寺家に住み込みで働く。料理はじょうずです。ただ、お金や物にがめつい(欲張りみたいです)
馬淵(まぶち):大寺家のもとからいたお手伝い。
黒井:大寺家の召使
第一話の『丹山家(たんざんけ)』と第二話の『六綱家(むつなけ)』のことが出てきます。
日記とか日誌の書き方です。これまでの短編とは雰囲気が異なります。
『バベルの会はこうして消滅した』とあります。
口入れ屋:奉公人、雇い人、芸者などのあっせん仲介業者
アイリッシュ:アメリカ合衆国の推理作家。1968年(昭和43年)64歳没
ダール:イギリスの小説家、脚本家。1990年(平成2年)74歳没
ダンセイニ:アイルランドの小説家、軍人。1957年(昭和32年)79歳没
羊頭肉(ようとうにく):マトン。ヒツジの肉
慨嘆(がいたん):嘆いたり(なげいたり)、心配したり。
鵝掌(がしょう):ガチョウの足を料理したもの。
文章は、だれかが(女学生)、大寺鞠絵が描き残した日記を読んでいる光景です。
パパが画商から絵を買うつもりだ。
絵を買うのは投資目的です。
テオドール・ジェリコーの『メデュース号の筏(いかだ)』:フランスの画家。1824年32歳没
バベルの会:幻想と現実とを混乱してしまう儚い者(はかないもの)たちの聖域(せいいき。アジール)という意味の会。宿痾(しゅくあ。長く続く心の病(やまい))を抱えた者たちが集まる会。現実のあまりの単純さ、複雑さに耐えきれない人間の集まり。逃避のために物語を読んでいる。現実逃避のために夢想家になっている。
実際家:現実家。夢はみない。日常生活を現実的に処理していく。理屈も理論も理想も追わない。理想は幻想でしかないとする。
殺人の話が出ます。
鳥兜(トリカブト):毒を持つ植物
アミルスタン羊:羊ではない。
僭越ながら(せんえつながら):出過ぎたことをしますが。
柘榴(ざくろ):実が食用になる。
葱:ねぎ
遥拝(ようはい):はるかに遠いところから拝むこと。(おがむこと)
『夢見る儚い羊たち(ゆめみるはかないひつじたち)』(意味がわかりました)
オソロシイ
不気味です。
心がザワザワします。
読み終えました。
『解説』に書いてあるとおりでした。
目的のためにはどんな無慈悲な行為も辞さない登場人物たちの……
奸計合戦(かんけいかっせん):悪だくみの応酬(おうしゅう。やりとり)
2024年12月20日
背中の蜘蛛(くも) 誉田哲也(ほんだ・てつや)
背中の蜘蛛(くも) 誉田哲也(ほんだ・てつや) 双葉文庫
推理小説を読みます。警察モノです。
背中の蜘蛛という言葉からは、背中に蜘蛛の入れ墨がある人間がいるという発想が生まれます。さて、どうなりますか。(入れ墨は関係ありませんでした)
『第一部 裏切りの日』
本宮夏生(もとみや・なつお):池袋署刑事課長(彼が語りながら物語が進行していきます)。眼鏡をかけている。53歳か54歳ぐらい。成人した娘がひとりいる。娘は大学卒業後、神戸の電子医療機器メーカーに勤務している。今は、ひとり暮らし。15年前に妻を胃がんで亡くした。
担当係長、統括係長。制服職場、上下関係のきつい職場です。指示・命令と服従が基本です。
組対(そたい):組織犯罪対策課。
上山:本宮夏生刑事課長が渋谷署にいたときの後輩。富坂(東京都文京区東京ドーム北西)の近くにある、『サイバー攻撃対策センター』に配属されて日が間もない。公安担当(国家体制を脅かす(脅かす)事案担当)。アメリカ合衆国FBI(連邦捜査局)で10か月間の研修を受けて帰国して2週間がたったばかり。細身の美男子。係長職。45歳か46歳。
浜木和昌(はまき・かずまさ):ガイシャ(殺人事件の被害者)。43歳。定職なし。転々としていた。住所は、川崎市多摩区登戸(のぼりと)。
9月25日20時19分、西池袋五丁目において、遺体で見つかった。(目白署との境)。目撃者なし。死因は腹部の刺し傷。刺されたあと歩いた形跡あり。傷害致死か。
浜木名都(はまき・なつ):浜木和昌の妻。江戸時代とか室町時代ぐらいの古風な顔立ちの女性。目が細くてのっぺりとしている。
西池袋五丁目路上男性殺人事件特別捜査本部:池袋署7階講堂。総勢55名で捜査開始。
防犯カメラに5人の男が映っている。そのうちの黒っぽいスーツの男が怪しい(あやしい)。
<人がたくさん出てきます。家で使用済みになったカレンダーの裏白い紙に登場人物名を書いて、整理整頓(せいりせいとん)しながら、内容を理解していきます。77ページで、第一の殺人事件が解決しました。この本は、個別の事件解決を紹介するというよりも、警察組織の上層部にいる人間同士のあれやこれやをあぶりだすことがテーマのように見受けられます>
SSBC:捜査支援分析センター
『第二部 顔のない目』
渋谷区千駄ヶ谷二丁目、北参道駅あたり。それから、杉並区浜田山三丁目、西永福駅あたり。
警察職員がたくさん出てきます。薬物売人逮捕のための捜査です。
植木範和(うえき・のりかず):警視庁所属。警部補。35歳。妹がいる。実家は山梨。父は死去。母は存命
佐古充之(さこ・みつゆき):高井戸署所属。巡査部長。29歳
千倉葵(ちくら・あおい):キャバ嬢。
森田一樹(もりた・かずき):25歳無職なれど、薬物の売人。身長180cm以上。千倉葵と関係がある。
Nシステム:自動車ナンバー自動読取装置。
ナカジマアキラ:薬物所持者
浅沼係長:捜査一課
本宮管理官(もとみやかんりかん):捜査一課(第一部の本宮夏生。人事異動で、池袋署から警視庁へ移った。刑事課長から管理官になった。管理官も課長職)
漢(おとこ):男子という意味
湾岸署:東京湾岸警察署。江東区
違法薬物:大麻、覚せい剤、MDMA(合成幻覚剤)
17日:中島逮捕
特捜部(特別捜査本部):警視庁捜査一課が仕切っている。
階級:巡査→(巡査長(正式名ではないそうです))→巡査部長→警部補→警部(係長職)→警視→警視正→警視長→警視監→警視総監
刑事部、組織犯罪対策部、生活安全部、地域部、公安部(国家警察)。
なにやら、組織の中のかけひきとかがありそうな小説の内容です。事件よりも、そちらのほうがメインぽい。
タレコミ:密告、裏切り、内通(ないつう)
サツカン:警察官
捜査一課 本宮管理官:特別捜査本部の最高責任者
『第三部 蜘蛛の背中』
冒頭は不思議な記述です。
意識もうろうとした状態で、だれが、語っているのかわからない文章が続きます。
理(おさむ):この人物男性がひとり語りをしています。
涼太(りょうた):飲み屋で理と知り合った。27歳。父親の顔は知らない。母親もよくわからず、母親は癌で死んだ。涼太が小学校三年生、姉の幹子が中学二年生だった。その後、悲惨な暮らしが続いている。施設ではなく、異母兄安藤光雄が世話してくれたが、異母兄はハングレ(準暴力団員)だった。生活費の面倒はみてくれたが、暴力で支配された。
幹子(涼太の姉):姉と弟涼太のふたり暮らし。身長170cmにとどくぐらい。涼太も幹子も不幸な家庭に生まれて苦労して、今は、ハングレ(やくざ者。準暴力団。異母兄安藤光雄)の支配下におかれて、違法行為をしている。かなりすさんだ暮らしをしている。
理のひとり語りが途絶えて、ひと区切りついたあと、情景描写は、警察関係の場所に移りました。
上山章宏:警察官。係長職。官舎住まい。46歳ぐらい。妻咲子165cmぐらい、長男蓮(れん)16歳、長女唯(ゆい)10歳ケータイが欲しいが父が許さない。
ねまわし、下地づくりをして上司長谷川管理官にプランをあげることが仕事。調整役。警務部人事二課、刑事部捜査一課、操作支援分析センターほかの幹部・関係者と調整を図る。
國見健次:警部補。統括主任。上山章宏にとって、年上の部下。52歳ぐらい。
松尾信晴:警部補。担当主任。元公安二課極左担当43歳
天野照良:警部補。担当主任。36歳独身。元SE(システムエンジニア)運三(警視庁総務部情報管理課運用第三係)の創立メンバーで、経験は2年7月。以前の所属は、生活安全部のサイバー犯罪対策課。松尾信晴と天野照良は、ステングレイによる張り込みの交代要員。
ステングレイ:携帯電話の番号で、電波の発信地を見つける装置。アメリカのハリス社が開発した携帯端末の追跡と盗聴を可能にする装置。ステングレイは、海にいる魚、『アカエイ』という意味。
阿川喜久雄:巡査部長。警視庁総務部情報管理課運用第三係所属と刑事部捜査支援分析センター職を併任。
向野哲郎(こうの・てつろう41歳)、荒山:運用第三係のメンバー。刑事畑での経験が豊富。
理(おさむ)という男は何者なのかを想像する読書です。
理はなんだかフラフラです。認知症の症状みたいです。薬物中毒かとも思えたりします。
お金ももっていません。
涼太は、まっとうな人間ではないでしょう。涼太は、理を犯罪行為で利用するでしょう。(利用はしませんでした)。
下井草駅:杉並区。西武新宿線。
高田馬場駅:新宿区
愛宕警察署の隣に警視庁新橋庁舎12階建てがあって、最上階が、上山章宏の職場。コールセンターのような部屋。パソコンが並んでいる。『捜査員』はいない。『技官』がいる。そこを、『平場』という。捜査員の部屋が、『奥』という。窓はどこにもない。部署名は、『警視庁総務部情報管理課運用第三係』
特殊詐欺の主犯格のアカウント。
アカウントで犯人をシステム上で追跡するようです。
鑑取り(かんどり):容疑者等の人間関係を調べる。
タレコミで容疑者逮捕の事案が二件あって、タレコミの主が警察職員らしいことに疑問をもった本宮夏生であった。
タレコミを受けたのは、佐古充之(さこ・みつゆき):高井戸署所属。巡査部長。29歳。
前回、本宮夏生にタレコミしたのは、警視庁の小菅捜査一課長だった。今の捜査一課長は、徳永警視正。同じ携帯電話の番号を使っているはず。殺人班の浅沼係長がからんでいるはず。そもそもタレコミはなかったのではないか。タレコミ以外の状態で、情報が提供されたのではないか。
デジタル犯罪とか、デジタル捜査のたいへんさが書いてあります。警察内でUSBメモリなどの情報量映画内容に厳しい管理体制がしかれていて、異変があったときは、システムがストップする仕組みになっています。
マルA:ステングレイ。携帯電話の電波の発信地を探す機器。
マルC:新橋庁舎にある総合検索システム、『スパイダー』(「蜘蛛」。この小説のタイトル蜘蛛の背中と関係があるのだろうか)。
預金詐欺事案:ネット空間で、預金が吸い取られて消えていく。どこに入金されていくのかがわからない。イットコイン:アメリカ発祥の暗号資産。
違法薬物の事件。
複数の事件が、重なって進行していきます。
サーフウェブ:一般的なパソコンユーザーが触れているネットワークの空間。インターネットの表層にある。検索エンジンで探すことができる。無料で閲覧できる。インターネット内に占める割合は1%未満
ディープウェブ:アクセス権をもつ限られたメンバーだけが閲覧できるページのこと。非公開ページ。有料サイト、有料動画配信サービス。インターネット内に占める割合は、99%以上
ダークウェブ:ディープウェブのさらなる奥底に存在する。一般のブラウザ(グーグルクロームとか)ではアクセスできない。専用のソフトウェアが必要になる。
匿名性が高い。違法薬物、偽造免許、偽造パスポート、偽札、違法ポルノ、児童ポルノ、改造拳銃、正規の軍用拳銃、爆弾、(この部分の記述を読んで、なるほどと感心しました。わかりやすい)
こだわりがあります。
薬物の売人である中島晃は、『ナカジマ・アキラ』と読むのか、『ナカシマ・アキラ』と読むのか。(なるほど)
捩じ込む:ねじこむ。(読めませんでした)
DOR:ダイレクト・オニオン・ルーター。タマネギのようになっている。皮を何度もむかないと核心に到達できない。
伝々(でんでん):次から次へ。
どん底の生活があります。
ちっぽけな弱者
理(おさむ)が動き出しました。
321ページまで読んで、かなり時間をかけて、ゆっくり調べて、状況を把握しながら読んでいます。
情報量は多いのですが、話自体は、シンプルにゆったりと進んできています。
全体で573ページあるので、あと252ページです。
これからどうなるのだろう。
(つづく)
朝陽新聞の記者 宇治木丈博(うじき・たけひろ):殺された。
PRS:台湾の総合電機メーカー
アース・エレクトロニクス:国内電子機器メーカーとヤマト電通:自衛隊が使用する防衛装備品等の開発をしている。
どうも、警視庁の情報管理機器のデータが何者かに乱されているらしい。
マルウェア:コンピューターの正常な動作を妨げたり(さまたげたり)、データやシステムの破壊等を行う、悪意を持って開発されたソフトウェアの総称。
サイバー戦争:コンピューターネットワーク上で行われる戦争。敵からのサイバーテロ(破壊行為)とシステムの防御・反撃。
防御だけではなく、相手のシステムをダウンさせる。反撃能力がないときは、ネットから離脱する。離脱すれば、ハッキングはされない。(乗っ取り)。
第二勾留(こうりゅう。取り調べのために拘束する(こうそく)):複数の罪を勾留理由にする。二番目の理由での勾留が第二勾留。
『テクノロジーは、人を幸せにもするけれど、確実に不幸せにもする……(いまどきの、スマホアプリを使った犯罪のあれこれを思い浮かべる言葉です)』
『蜘蛛(くも)』がネット上を回遊している。蜘蛛=警視庁が、ネット上に犯罪情報がないかと見回っている。『蜘蛛』の背中をよしよしとなでる犯罪者がいる。『蜘蛛』は、犯罪者の言いなりになる。
蜘蛛=スパイダー=米国が開発した通信監視、検索、分析プログラム。
だんだん話が見えてきました。
犯人は、バックドアをつくって、バックドアからシステムに入ってくる。
昔、組織運営の研修で習った言葉を思い出します。
『組織は、外部からの力ではなく、内部からの力で崩壊する。』
『……この三十年、四十年で我々が住む社会は、生きる世界は、大きく様変わりしてしまった。』(善意を悪用する人間が増えました)。
439ページに、『世界の真実がどれほど残酷か、この男にはわかるまい』とあるのを読んで、そのあとの記述も含めてですが、この人たちだけの世界で通用する事柄だと感じました。『違法捜査』は、ちゃんと暮らしている一般人にとっては、興味のないことです。人間界は、それほど狭くはありません。ごく狭い世界での警察と犯罪との戦いが繰り広げられています。
必要悪:良くないことではあるが、社会を維持していくうえでやむを得ず必要であること。
447ページまで読んできて、ようやくこの小説のテーマが見えてきました。長かった。
読んでいて、『幸せって何だろう?』という気持ちになりました。きれいごとだけでは生活していけません。理想を追うことは大事ですが、現実を乗り切ることはもっと大事です。ブレーキを踏みながらアクセルを踏む行為ですから、慎重にやらねば事故になります。
肚括って:はらくくって。覚悟を決めて。
本宮は先輩で、上山は後輩
システムを使う人間の行為によって、不幸な事件が起きる。
携帯電話は弄る(いじる):読めませんでした。
フロントガラスが、斑(まだら)に曇っている:同じく読めませんでした。
読んでいて、3000万円というお金で済む話ではないと思う。
こういう結末にしたのか。う~む。なんと言っていいのか思いつかない。
鬼畜(きちく):心のある人間のすることではない。残酷な行為をする者
『信頼関係』のために、蜘蛛を取り除く。
心の病(やまい)があります。
変な人間がいます。(人間は権力をもつと気持ちの持ちようが変化します。支配者になるのです。自分は何をやっても許されると勘違いするのです)。
いろいろ理屈はありますが、職員が定年退職すると終わってしまうことです。
法令に寄りかかってやるしかない事柄なのでしょう。
全体で564ページを一週間ぐらいかけて読みました。
読書をしたという実感がひたひたと湧いてきて満足しました。
いい作品でした。よかった。
事件が起きる。
表向きの理由がある。
裏向きの理由で本音(ほんね)が出る。
個人に番号を付けて特定して、行動を記録して、保存しておいて、なにかあったら、組織が利用する。考えてみれば、マイナンバーカードとか、交通系ICカードとか、クレジットカードを使った時のデータは、どこかに集約されて保存されているのでしょう。
その人が、いつどこで電車に乗っていくら使って、どんな病気でどこの病院にかかって、どんな薬をどれだけもらって、お金の出し入れはいつどこでいくら動かして…… いろいろなことが本人の知らない間に、電子データを管理運営する組織で働く他人が知ることになる。
本人が自分の端末で履歴を削除しても、元データはどこかに残っているような気がします。
国家組織が、組織を維持するために個人の情報を利用する。そのとき、個人の都合は聞かない。
そんな話です。
素材をじょうずに組み合わせて、お話がつくってありました。
推理小説を読みます。警察モノです。
背中の蜘蛛という言葉からは、背中に蜘蛛の入れ墨がある人間がいるという発想が生まれます。さて、どうなりますか。(入れ墨は関係ありませんでした)
『第一部 裏切りの日』
本宮夏生(もとみや・なつお):池袋署刑事課長(彼が語りながら物語が進行していきます)。眼鏡をかけている。53歳か54歳ぐらい。成人した娘がひとりいる。娘は大学卒業後、神戸の電子医療機器メーカーに勤務している。今は、ひとり暮らし。15年前に妻を胃がんで亡くした。
担当係長、統括係長。制服職場、上下関係のきつい職場です。指示・命令と服従が基本です。
組対(そたい):組織犯罪対策課。
上山:本宮夏生刑事課長が渋谷署にいたときの後輩。富坂(東京都文京区東京ドーム北西)の近くにある、『サイバー攻撃対策センター』に配属されて日が間もない。公安担当(国家体制を脅かす(脅かす)事案担当)。アメリカ合衆国FBI(連邦捜査局)で10か月間の研修を受けて帰国して2週間がたったばかり。細身の美男子。係長職。45歳か46歳。
浜木和昌(はまき・かずまさ):ガイシャ(殺人事件の被害者)。43歳。定職なし。転々としていた。住所は、川崎市多摩区登戸(のぼりと)。
9月25日20時19分、西池袋五丁目において、遺体で見つかった。(目白署との境)。目撃者なし。死因は腹部の刺し傷。刺されたあと歩いた形跡あり。傷害致死か。
浜木名都(はまき・なつ):浜木和昌の妻。江戸時代とか室町時代ぐらいの古風な顔立ちの女性。目が細くてのっぺりとしている。
西池袋五丁目路上男性殺人事件特別捜査本部:池袋署7階講堂。総勢55名で捜査開始。
防犯カメラに5人の男が映っている。そのうちの黒っぽいスーツの男が怪しい(あやしい)。
<人がたくさん出てきます。家で使用済みになったカレンダーの裏白い紙に登場人物名を書いて、整理整頓(せいりせいとん)しながら、内容を理解していきます。77ページで、第一の殺人事件が解決しました。この本は、個別の事件解決を紹介するというよりも、警察組織の上層部にいる人間同士のあれやこれやをあぶりだすことがテーマのように見受けられます>
SSBC:捜査支援分析センター
『第二部 顔のない目』
渋谷区千駄ヶ谷二丁目、北参道駅あたり。それから、杉並区浜田山三丁目、西永福駅あたり。
警察職員がたくさん出てきます。薬物売人逮捕のための捜査です。
植木範和(うえき・のりかず):警視庁所属。警部補。35歳。妹がいる。実家は山梨。父は死去。母は存命
佐古充之(さこ・みつゆき):高井戸署所属。巡査部長。29歳
千倉葵(ちくら・あおい):キャバ嬢。
森田一樹(もりた・かずき):25歳無職なれど、薬物の売人。身長180cm以上。千倉葵と関係がある。
Nシステム:自動車ナンバー自動読取装置。
ナカジマアキラ:薬物所持者
浅沼係長:捜査一課
本宮管理官(もとみやかんりかん):捜査一課(第一部の本宮夏生。人事異動で、池袋署から警視庁へ移った。刑事課長から管理官になった。管理官も課長職)
漢(おとこ):男子という意味
湾岸署:東京湾岸警察署。江東区
違法薬物:大麻、覚せい剤、MDMA(合成幻覚剤)
17日:中島逮捕
特捜部(特別捜査本部):警視庁捜査一課が仕切っている。
階級:巡査→(巡査長(正式名ではないそうです))→巡査部長→警部補→警部(係長職)→警視→警視正→警視長→警視監→警視総監
刑事部、組織犯罪対策部、生活安全部、地域部、公安部(国家警察)。
なにやら、組織の中のかけひきとかがありそうな小説の内容です。事件よりも、そちらのほうがメインぽい。
タレコミ:密告、裏切り、内通(ないつう)
サツカン:警察官
捜査一課 本宮管理官:特別捜査本部の最高責任者
『第三部 蜘蛛の背中』
冒頭は不思議な記述です。
意識もうろうとした状態で、だれが、語っているのかわからない文章が続きます。
理(おさむ):この人物男性がひとり語りをしています。
涼太(りょうた):飲み屋で理と知り合った。27歳。父親の顔は知らない。母親もよくわからず、母親は癌で死んだ。涼太が小学校三年生、姉の幹子が中学二年生だった。その後、悲惨な暮らしが続いている。施設ではなく、異母兄安藤光雄が世話してくれたが、異母兄はハングレ(準暴力団員)だった。生活費の面倒はみてくれたが、暴力で支配された。
幹子(涼太の姉):姉と弟涼太のふたり暮らし。身長170cmにとどくぐらい。涼太も幹子も不幸な家庭に生まれて苦労して、今は、ハングレ(やくざ者。準暴力団。異母兄安藤光雄)の支配下におかれて、違法行為をしている。かなりすさんだ暮らしをしている。
理のひとり語りが途絶えて、ひと区切りついたあと、情景描写は、警察関係の場所に移りました。
上山章宏:警察官。係長職。官舎住まい。46歳ぐらい。妻咲子165cmぐらい、長男蓮(れん)16歳、長女唯(ゆい)10歳ケータイが欲しいが父が許さない。
ねまわし、下地づくりをして上司長谷川管理官にプランをあげることが仕事。調整役。警務部人事二課、刑事部捜査一課、操作支援分析センターほかの幹部・関係者と調整を図る。
國見健次:警部補。統括主任。上山章宏にとって、年上の部下。52歳ぐらい。
松尾信晴:警部補。担当主任。元公安二課極左担当43歳
天野照良:警部補。担当主任。36歳独身。元SE(システムエンジニア)運三(警視庁総務部情報管理課運用第三係)の創立メンバーで、経験は2年7月。以前の所属は、生活安全部のサイバー犯罪対策課。松尾信晴と天野照良は、ステングレイによる張り込みの交代要員。
ステングレイ:携帯電話の番号で、電波の発信地を見つける装置。アメリカのハリス社が開発した携帯端末の追跡と盗聴を可能にする装置。ステングレイは、海にいる魚、『アカエイ』という意味。
阿川喜久雄:巡査部長。警視庁総務部情報管理課運用第三係所属と刑事部捜査支援分析センター職を併任。
向野哲郎(こうの・てつろう41歳)、荒山:運用第三係のメンバー。刑事畑での経験が豊富。
理(おさむ)という男は何者なのかを想像する読書です。
理はなんだかフラフラです。認知症の症状みたいです。薬物中毒かとも思えたりします。
お金ももっていません。
涼太は、まっとうな人間ではないでしょう。涼太は、理を犯罪行為で利用するでしょう。(利用はしませんでした)。
下井草駅:杉並区。西武新宿線。
高田馬場駅:新宿区
愛宕警察署の隣に警視庁新橋庁舎12階建てがあって、最上階が、上山章宏の職場。コールセンターのような部屋。パソコンが並んでいる。『捜査員』はいない。『技官』がいる。そこを、『平場』という。捜査員の部屋が、『奥』という。窓はどこにもない。部署名は、『警視庁総務部情報管理課運用第三係』
特殊詐欺の主犯格のアカウント。
アカウントで犯人をシステム上で追跡するようです。
鑑取り(かんどり):容疑者等の人間関係を調べる。
タレコミで容疑者逮捕の事案が二件あって、タレコミの主が警察職員らしいことに疑問をもった本宮夏生であった。
タレコミを受けたのは、佐古充之(さこ・みつゆき):高井戸署所属。巡査部長。29歳。
前回、本宮夏生にタレコミしたのは、警視庁の小菅捜査一課長だった。今の捜査一課長は、徳永警視正。同じ携帯電話の番号を使っているはず。殺人班の浅沼係長がからんでいるはず。そもそもタレコミはなかったのではないか。タレコミ以外の状態で、情報が提供されたのではないか。
デジタル犯罪とか、デジタル捜査のたいへんさが書いてあります。警察内でUSBメモリなどの情報量映画内容に厳しい管理体制がしかれていて、異変があったときは、システムがストップする仕組みになっています。
マルA:ステングレイ。携帯電話の電波の発信地を探す機器。
マルC:新橋庁舎にある総合検索システム、『スパイダー』(「蜘蛛」。この小説のタイトル蜘蛛の背中と関係があるのだろうか)。
預金詐欺事案:ネット空間で、預金が吸い取られて消えていく。どこに入金されていくのかがわからない。イットコイン:アメリカ発祥の暗号資産。
違法薬物の事件。
複数の事件が、重なって進行していきます。
サーフウェブ:一般的なパソコンユーザーが触れているネットワークの空間。インターネットの表層にある。検索エンジンで探すことができる。無料で閲覧できる。インターネット内に占める割合は1%未満
ディープウェブ:アクセス権をもつ限られたメンバーだけが閲覧できるページのこと。非公開ページ。有料サイト、有料動画配信サービス。インターネット内に占める割合は、99%以上
ダークウェブ:ディープウェブのさらなる奥底に存在する。一般のブラウザ(グーグルクロームとか)ではアクセスできない。専用のソフトウェアが必要になる。
匿名性が高い。違法薬物、偽造免許、偽造パスポート、偽札、違法ポルノ、児童ポルノ、改造拳銃、正規の軍用拳銃、爆弾、(この部分の記述を読んで、なるほどと感心しました。わかりやすい)
こだわりがあります。
薬物の売人である中島晃は、『ナカジマ・アキラ』と読むのか、『ナカシマ・アキラ』と読むのか。(なるほど)
捩じ込む:ねじこむ。(読めませんでした)
DOR:ダイレクト・オニオン・ルーター。タマネギのようになっている。皮を何度もむかないと核心に到達できない。
伝々(でんでん):次から次へ。
どん底の生活があります。
ちっぽけな弱者
理(おさむ)が動き出しました。
321ページまで読んで、かなり時間をかけて、ゆっくり調べて、状況を把握しながら読んでいます。
情報量は多いのですが、話自体は、シンプルにゆったりと進んできています。
全体で573ページあるので、あと252ページです。
これからどうなるのだろう。
(つづく)
朝陽新聞の記者 宇治木丈博(うじき・たけひろ):殺された。
PRS:台湾の総合電機メーカー
アース・エレクトロニクス:国内電子機器メーカーとヤマト電通:自衛隊が使用する防衛装備品等の開発をしている。
どうも、警視庁の情報管理機器のデータが何者かに乱されているらしい。
マルウェア:コンピューターの正常な動作を妨げたり(さまたげたり)、データやシステムの破壊等を行う、悪意を持って開発されたソフトウェアの総称。
サイバー戦争:コンピューターネットワーク上で行われる戦争。敵からのサイバーテロ(破壊行為)とシステムの防御・反撃。
防御だけではなく、相手のシステムをダウンさせる。反撃能力がないときは、ネットから離脱する。離脱すれば、ハッキングはされない。(乗っ取り)。
第二勾留(こうりゅう。取り調べのために拘束する(こうそく)):複数の罪を勾留理由にする。二番目の理由での勾留が第二勾留。
『テクノロジーは、人を幸せにもするけれど、確実に不幸せにもする……(いまどきの、スマホアプリを使った犯罪のあれこれを思い浮かべる言葉です)』
『蜘蛛(くも)』がネット上を回遊している。蜘蛛=警視庁が、ネット上に犯罪情報がないかと見回っている。『蜘蛛』の背中をよしよしとなでる犯罪者がいる。『蜘蛛』は、犯罪者の言いなりになる。
蜘蛛=スパイダー=米国が開発した通信監視、検索、分析プログラム。
だんだん話が見えてきました。
犯人は、バックドアをつくって、バックドアからシステムに入ってくる。
昔、組織運営の研修で習った言葉を思い出します。
『組織は、外部からの力ではなく、内部からの力で崩壊する。』
『……この三十年、四十年で我々が住む社会は、生きる世界は、大きく様変わりしてしまった。』(善意を悪用する人間が増えました)。
439ページに、『世界の真実がどれほど残酷か、この男にはわかるまい』とあるのを読んで、そのあとの記述も含めてですが、この人たちだけの世界で通用する事柄だと感じました。『違法捜査』は、ちゃんと暮らしている一般人にとっては、興味のないことです。人間界は、それほど狭くはありません。ごく狭い世界での警察と犯罪との戦いが繰り広げられています。
必要悪:良くないことではあるが、社会を維持していくうえでやむを得ず必要であること。
447ページまで読んできて、ようやくこの小説のテーマが見えてきました。長かった。
読んでいて、『幸せって何だろう?』という気持ちになりました。きれいごとだけでは生活していけません。理想を追うことは大事ですが、現実を乗り切ることはもっと大事です。ブレーキを踏みながらアクセルを踏む行為ですから、慎重にやらねば事故になります。
肚括って:はらくくって。覚悟を決めて。
本宮は先輩で、上山は後輩
システムを使う人間の行為によって、不幸な事件が起きる。
携帯電話は弄る(いじる):読めませんでした。
フロントガラスが、斑(まだら)に曇っている:同じく読めませんでした。
読んでいて、3000万円というお金で済む話ではないと思う。
こういう結末にしたのか。う~む。なんと言っていいのか思いつかない。
鬼畜(きちく):心のある人間のすることではない。残酷な行為をする者
『信頼関係』のために、蜘蛛を取り除く。
心の病(やまい)があります。
変な人間がいます。(人間は権力をもつと気持ちの持ちようが変化します。支配者になるのです。自分は何をやっても許されると勘違いするのです)。
いろいろ理屈はありますが、職員が定年退職すると終わってしまうことです。
法令に寄りかかってやるしかない事柄なのでしょう。
全体で564ページを一週間ぐらいかけて読みました。
読書をしたという実感がひたひたと湧いてきて満足しました。
いい作品でした。よかった。
事件が起きる。
表向きの理由がある。
裏向きの理由で本音(ほんね)が出る。
個人に番号を付けて特定して、行動を記録して、保存しておいて、なにかあったら、組織が利用する。考えてみれば、マイナンバーカードとか、交通系ICカードとか、クレジットカードを使った時のデータは、どこかに集約されて保存されているのでしょう。
その人が、いつどこで電車に乗っていくら使って、どんな病気でどこの病院にかかって、どんな薬をどれだけもらって、お金の出し入れはいつどこでいくら動かして…… いろいろなことが本人の知らない間に、電子データを管理運営する組織で働く他人が知ることになる。
本人が自分の端末で履歴を削除しても、元データはどこかに残っているような気がします。
国家組織が、組織を維持するために個人の情報を利用する。そのとき、個人の都合は聞かない。
そんな話です。
素材をじょうずに組み合わせて、お話がつくってありました。
2024年12月19日
『ねこはい 南伸坊』と、『ねこはいに』
『ねこはい 南伸坊(みなみ・しんぼう) 青林工藝社(せいりんこうげいしゃ)』と、『ねこはいに』
南伸坊:編集者、イラストレーター、エッセイスト 1947年(昭和22年)生まれ77歳
『わたしの、本のある日々 小林聡美(こばやし・さとみ) 毎日文庫』で紹介されていた本です。もう一冊、『ねこはいに』と合わせて読んでみます。『ねこはいに』は、『ねこはい』の二冊目という意味です。
まず、『ねこはい』からです。
絵本だと思っていたら違いました。俳句集でした。
『まえがき』に、ねこがはいくをつくるから(じっさいは、南伸坊さんがつくるのですが)、『ねこはい』だそうです。五・七・五の俳句です。だから、次の本は、『ねこはいに』なのか。なるほど。
文章は、ひらがなでできています。
絵も南伸坊さんです。自費出版みたいなつくりです。(じっさいは、商業出版です)
数えたら、24の俳句がありました。
わたしは、俳句のことについて詳しくはないのですが、一句ずつ、噛みしめるように読むと、それぞれ味わいがあります。
ねこの立場に立ってつくった俳句だそうです。なぜねこの立場でつくるのかを考えました。
きっと猫がお好きなのでしょう。
絵がおだやかで、落ち着きます。
絵本みたいです。
ねこがいて、金魚がいて、てるてるぼうずやらカエルやらがいます。
気に入った一句です。
『どろぼうと ののしるこえを おいぬいて』
黒いねこがさんまを口にくわえて走って行きます。
もうひとつ。
『おおぞらに くもひとつなし ひるのつき』
ねこも青空が好きなのでしょう。
ねこが煮干しを17匹食べて満腹(まんぷく)のようすですが、最近のねこは、煮干しを食べてくれません。キャットフードか、かつおぶしがいいらしい。
先日、公園でノラネコにエサをやっている人がそんなものを与えているのを見ました。
この句がとてもいい。気に入りました。
『ゆきだるま いつあっても むくち……』
変な絵が出てきました。
壁から白い木の棒のようなものが突き出ています。少々長い棒です。
なにかをひっかけるのだろうか?
俳句の中にある言葉で、『こぞことし』の意味がわかりませぬ。
調べました。こぞことし=去年今年だそうです。新年の季語だそうです。むずかしいですな。
尻切れトンボのような終わり方でした。
『……ニャー』とあります。
『ねこはいに 南伸坊(みなみ・しんぼう) 青林工藝社(せいりんこうげいしゃ)』
「ねこはいを、もう一冊だしてもいいといわれたので、また猫になって書きました」とあります。おもしろい。
絵には自然がいっぱいあります。
海、野生の草花、ひまわり、セミ、あかとんぼ、季節の歳時記です。さいじき:季節を表現する俳句を載せた書物。
ねこの気持ちになる。いぬの気持ちとは違うのでしょう。
『う』にてんてんのひらがな単語がありますが、このノートパソコンではその文字が出ません。ヴィオロンです。フランス語で、バイオリンです。うに点々が、ヴの部分です。
ひらがな文章です。味わいがあります。
あんか:見かけなくなりました。暖房のための用具。冬、寒い時期に、布団に入れて、足もとを温める。
うすらひ:薄く張った氷。薄ら氷(ひ)。
はつすずめ:元旦の雀(すずめ)のこと。雀のさえずりのこと。
ゆきうさぎ:雪で体をつくり、目はナンテンの実、耳はユズリハの葉でつくる。
観察する。散歩する。徘徊(はいかい。うろつく)する。俳句づくり、言葉さがしです。
ひざかり:太陽が盛んに照りつける。
上品な俳句集でした。
南伸坊:編集者、イラストレーター、エッセイスト 1947年(昭和22年)生まれ77歳
『わたしの、本のある日々 小林聡美(こばやし・さとみ) 毎日文庫』で紹介されていた本です。もう一冊、『ねこはいに』と合わせて読んでみます。『ねこはいに』は、『ねこはい』の二冊目という意味です。
まず、『ねこはい』からです。
絵本だと思っていたら違いました。俳句集でした。
『まえがき』に、ねこがはいくをつくるから(じっさいは、南伸坊さんがつくるのですが)、『ねこはい』だそうです。五・七・五の俳句です。だから、次の本は、『ねこはいに』なのか。なるほど。
文章は、ひらがなでできています。
絵も南伸坊さんです。自費出版みたいなつくりです。(じっさいは、商業出版です)
数えたら、24の俳句がありました。
わたしは、俳句のことについて詳しくはないのですが、一句ずつ、噛みしめるように読むと、それぞれ味わいがあります。
ねこの立場に立ってつくった俳句だそうです。なぜねこの立場でつくるのかを考えました。
きっと猫がお好きなのでしょう。
絵がおだやかで、落ち着きます。
絵本みたいです。
ねこがいて、金魚がいて、てるてるぼうずやらカエルやらがいます。
気に入った一句です。
『どろぼうと ののしるこえを おいぬいて』
黒いねこがさんまを口にくわえて走って行きます。
もうひとつ。
『おおぞらに くもひとつなし ひるのつき』
ねこも青空が好きなのでしょう。
ねこが煮干しを17匹食べて満腹(まんぷく)のようすですが、最近のねこは、煮干しを食べてくれません。キャットフードか、かつおぶしがいいらしい。
先日、公園でノラネコにエサをやっている人がそんなものを与えているのを見ました。
この句がとてもいい。気に入りました。
『ゆきだるま いつあっても むくち……』
変な絵が出てきました。
壁から白い木の棒のようなものが突き出ています。少々長い棒です。
なにかをひっかけるのだろうか?
俳句の中にある言葉で、『こぞことし』の意味がわかりませぬ。
調べました。こぞことし=去年今年だそうです。新年の季語だそうです。むずかしいですな。
尻切れトンボのような終わり方でした。
『……ニャー』とあります。
『ねこはいに 南伸坊(みなみ・しんぼう) 青林工藝社(せいりんこうげいしゃ)』
「ねこはいを、もう一冊だしてもいいといわれたので、また猫になって書きました」とあります。おもしろい。
絵には自然がいっぱいあります。
海、野生の草花、ひまわり、セミ、あかとんぼ、季節の歳時記です。さいじき:季節を表現する俳句を載せた書物。
ねこの気持ちになる。いぬの気持ちとは違うのでしょう。
『う』にてんてんのひらがな単語がありますが、このノートパソコンではその文字が出ません。ヴィオロンです。フランス語で、バイオリンです。うに点々が、ヴの部分です。
ひらがな文章です。味わいがあります。
あんか:見かけなくなりました。暖房のための用具。冬、寒い時期に、布団に入れて、足もとを温める。
うすらひ:薄く張った氷。薄ら氷(ひ)。
はつすずめ:元旦の雀(すずめ)のこと。雀のさえずりのこと。
ゆきうさぎ:雪で体をつくり、目はナンテンの実、耳はユズリハの葉でつくる。
観察する。散歩する。徘徊(はいかい。うろつく)する。俳句づくり、言葉さがしです。
ひざかり:太陽が盛んに照りつける。
上品な俳句集でした。