2019年12月05日

82年生まれ、キム・ジヨン

82年生まれ、キム・ジヨン チョ・ナムジュ 訳 齋藤真理子 筑摩書房

 これから読み始めます。売れている本だそうです。憑依もの(ひょうい。のりうつり)ということを知りました。性差別を理由とした韓国人女性の生きづらさが書いてあるようです。

 1982年生まれの韓国人女性がいます。2015年の時点で、33歳、名前が、キム・ジヨン、夫が、36歳でチョン・デヒョン、子どもが女児で1歳のチョン・ジウォンです。
 彼女に最初にのりうつるのが、彼女の実母です。次にのりうつるのが、去年死んだ大学の3年先輩で、チャ・スンヨンです。夫と大学の同期生です。
 そうやって、のりうつられながら、キム・ジヨンが、女性差別を受けたことを語るようです。
 日本でいうところの盆正月夫の実家へ家族そろって帰省することへの嫁の心労話があります。

 続けて、精神科医の語りがあります。

「1982年-1994年」 キム・ジヨンが、0歳から12歳まで
 男尊女卑に関することを、自分の2歳上の姉、自分、5歳下の弟に対する親の扱い態度をもとにして書いてあります。男である弟のことのほうが、女である姉や自分よりも優先されます。

 ややこしい部分もあるので、家系図を書きながら読み続けています。
 キム・ジヨンの実母のことが書いてあります。厳しい男尊女卑の生活の中で、男兄弟は、大学へ行って、高いポジションの職に就きますが、女姉妹は、夜間中学や内職で、教育や職業選択における差別待遇がありました。
 日本にも似たようなことがありますが、韓国のほうがきつい。そして、だれもそのことをなんとも思っていない。当然のこととして、受け止めている社会です。韓国社会のほうが性別差別が深刻に見えます。
 女が生まれるとがっかりする一族です。男なら、姉よりも弟のほうが優遇されます。女性にとってつらかった過去の掘り起こし話です。
 読んでいていい気持ちがしません。嫌なら男社会と闘うしかありません。
 7歳児のキム・ジヨンの実母は小学校で男児にいじめられます。教師は、男児が実母を好きだからちょっかいを出すのだと言って実母にがまんを勧めます。
 教師の暴力的な指導があります。
 記述にもありますが、女性の大統領が生まれたのは画期的なことだったのでしょうが、彼女のその後は不幸です。

「1995年-2000年」 キム・ジヨンが13歳から18歳まで
 女性が、セクハラ、パワハラを受ける社会のことが書いてありました。通学路には変態男がいます。あとは、韓国の厳しい受験競争、いずれも男女差別、女性軽視のことがからんでいます。
 女性は被害者なのに、被害に遭うような環境に存在していたり、立場になったりしたことのほうが責められるのです。被害者となった女性のほうが責められる不思議な男性優位の社会です。理不尽であります。「平等」がありません。女よりも男が大事ということを当然のこととして、だれも問題提起をせずに慣例に従っていることが不気味でもあります。女性に人権はありません。女性は人間扱いされていません。闇の部分です。
 出産における男女比において、男児のほうがかなり高い。書中では、女児100人に対して、男児116.5人とあります。あかちゃんが、母親のおなかのなかにいるときに女性であることがわかると堕胎している気配があります。
 日本とは教育制度が異なります。高校受験は原則としてないそうです。どこの高校に行くかは、割り当てられるとあります。あと、男女共学でも、男女別学級編成だそうです。
 どこの国でもいるのだなあと、「露出狂」です。見せて自分の存在を誇示する人間心理です。自分は何をしても許されると思っている誤解です。病気なのでしょう。
 まじめな救いの言葉として、「(へんな男もいるけれど)世の中には、いい男の人のほうが多いのよ」、同様に、世の中には、いい人間のほうが多いということもあるのでしょう。
 
「2001年-2011年」 キム・ジヨンが19歳から29歳まで
 IMF危機:1997年(平成9年)。韓国通貨危機(国家破たんの危機)。韓国は国際通貨基金に(IMF)経済主権を委ねた。資金支援。2001年全額返済。日本では、山一證券の破綻があった。
 
 キム・ジヨンさんのご家族は、奥さんの知恵があって、夫の勧奨退職後、金銭には困らない順調な暮らしぶりです。
 それでも、求職活動をするジヨンさんは、女性差別を第一として、いろいろな差別を受けます。学歴、どこの大学を出たか、セクハラに順応できるかなどです。女性の採用される比率は申し込んだ人の3割程度です。それでも採用率が高いと喜んでいるという報道には、首をかしげます。男性優先の採用です。ジヨンさんは、61社に不採用で落ちています。
 
 韓国国内の制度や施策なので、日本人の自分は、なんともいえる立場にありません。ただ、読んでいると、韓国の人たちは、チャンスがあれば、他国へ移住してしまうのではないかと予測してしまいます。自分の国に愛着をもてなくなります。それと、男も女もない現代です。タクシーの運転手が女性客を乗せて、しかたがないからのせてやったと言います。それが、同国では、普通の常識のようです。

 ジヨンさんはようやく採用されました。
 
(つづく)

 読み終えました。
 精神科医の手記という形をとった小説でした。キム・ジヨンさんはうつ病の患者なのです。病気の原因は、男性中心社会、男性優位の制度、女性蔑視、女性軽視、女性差別、そういった大韓民国の実情です。
 
 女性は、ビジネス社会では、夜の接待でアルコールを強要される。
 男女の賃金格差がひどい。男性を100としたとき、女性は63.3とあります。
 大学を出たのに、アイスクリームを盛るアルバイトともありました。なんのために大学まで通ったのかわかりません。
 結婚するにあたって、勉強と仕事だけに没頭してきたので、家事は免除されていた。家事はこれから覚えるという記事もありました。
 結婚したら、出産しなければならない。産まないと欠陥があると思われる。出産に当たっては、女子ではなく男子を出産しなければならない。出産したら仕事は辞めなければならない。
 
 だんだん愚痴とも思えるような記述が延々と続くようになりました。なにかしら、すべてが後ろ向きの記述で、読むことが苦痛になってきました。未来に向かって、夢も希望もない言葉が続きます。社会だけのせいではないような。意識の問題もあるような。
 大韓民国は、女性が生きづらい国であることが伝わってきます。女性は男性のための道具というような位置づけに見えます。
 働く女性にとっては、子どもが生まれてくることが、幸せなことではないというようにもとれます。産休、育休、退職の選択があります。老いた両親に子を預けるのも限界があります。結局、退職を選ぶ女性が多い。夫が働き、妻が子どもを育てる。夫は妻に育児を押し付けて、仕事に専念する。

 疑問に思ったのは、結婚式を挙げても、婚姻届けを出すことや出す時期は急がない。

 大韓民国の戸籍制度(戸主制度)は、2005年に廃止された。登録簿で平穏無事に生活している。

 主婦は、相手にとって都合のいいようにそのときどきで評価されてしまいます。「家で遊んでいる」と言われることもあれば、「家族の守る(尊い)仕事」と言われることもあると書いてあります。

 キム・ジヨンは女児の子育て専業主婦になったが、本当は、マスコミの記者になりたかった。結局、33歳の今、彼女は、メンタルの病気になった。ときどき、別人になる。生きている人にもなるし、死んでしまった人にもなる。

 最後は、これまでを語った精神科医男性の話になります。
 同僚の精神科医が病院を辞めるとあります。理由は、出産です。まわりの協力が十分得られません。「辞めてもらってうまくいった」、「後任には未婚の女性を探す」

 損か得かの世界です。

 大韓民国の出生率は、1.05(2017年)、日本は、1.44(2016年)、大韓民国にしても、日本にしても、いずれは、国が自然消滅してしまうのではなかろうか。

 調べた単語などとして、「幽体離脱話法:前大統領朴槿恵パク・クネが使用している。自分のことをほかの人のことのように話す」、「ナムル:もやし、ぜんまいなどの山菜、野菜を塩ゆでして味付けしたもの」、「リップグロス:化粧品。油分が多く、柔らかい。発色は薄い」

 心に残ったセリフや記述などとして、「わたしも先生になりたかった(女子だから教育を受けられなかった)」、「女はお金を稼いで男に貢ぐもの」、「母性愛は宗教なのか」、「男はみんな性犯罪者(予備軍)のような表現」、「(大韓民国は)セクハラ予防教育が浸透していない」、「2013年度から無償保育が始まった」、「スーパーのアルバイト、時給約600円」、「女性には徴兵制がないことを男性は不公平だと考えている)」

 「キム・ジヨン」という女性像は、韓国における1980年代生まれの一般的な女性像だそうです。お名前もよくある名前だそうです。いろいろと考えさせられました。  

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2019年11月30日

白狐魔記(しらこまき) 元禄の雪 斉藤洋

白狐魔記(しらこまき) 元禄の雪 斉藤洋 偕成社

 316年前の出来事です。
 忠臣蔵の時期となりました。映画、「決算! 忠臣蔵」を観に行く予定です。
 本は、こちらを読んでみます。

 赤穂浪士の仇討(あだうち):1680年就任五代将軍生類憐みの令で有名な犬公方徳川綱吉の時代です。この本でも犬を始め動物を大切にするエピソードが書いてあります。狐の白狐魔丸(しらこままる)にとっては、すごしやすい環境があります。
 1701年、現在兵庫県赤穂藩(あこうはん)の浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が、現在の愛知県吉良藩(本書では三河の宮迫村みやばさまむらが領地のひとつとあります)の吉良上野介(きらこうずけのすけ)を江戸城松の廊下で切りつける。徳川綱吉の命により、浅野内匠頭は即日切腹。吉良上野介におとがめなし。切りつけた理由は不明だが、吉良上野介から浅野内匠頭に圧力があったもよう。
 1703年1月(旧暦元禄15年12月14日)大石内蔵助以下四十七士が江戸城下の吉良邸に討ち入りをして、吉良上野介を討ち取った。
 
 白狐魔丸は、奈良吉野の山から岐阜、近江を経て、大坂堺から船で九州博多へ行き、長崎へと旅をします。読者は本を読みながら、長崎まで旅をした気分になれます。
 白狐魔丸は、人間である商売人の九十九小吉となったり、犬に化けたりします。

 登場人物は、愛知県三河の宮迫村みやばさまむら出身のもとは百姓、今は武士の清水義久。それから、化ける狐の雅姫つねひめ(桜木雅春と名のっている)。
 時代は元禄13年の設定です。
 ポルトガル人は排除され、オランダ人が長崎の出島にいます。

 調べた言葉などとして、「脇息:きょうそく。ひじかけ」、「長州赤間関:ちょうしゅうあかまがせき。山口県下関市」

 生類憐みの令のおかげで、犬に化身していれば、食うに困ることはないそうです。

 73ページ、ここまで読んできて、吉良側を擁護する立場で書くのだろうかという雰囲気です。

 浅野内匠頭の人物像です。歳は30歳ぐらい。ほそおもての平氏顔(ほっそりとして、目の細い、色白の顔)、浅野内匠頭は線が細い。ふだんはおだやかで気さくな人柄だが、一度腹を立てると、あとさきがなくなる。かっと頭に血がのぼりやすい気性。

 狐の白狐魔丸は、武士が嫌いです。そして、城が嫌いです。城は権力の象徴です。白狐魔丸の気持ちがわかります。

 同作者のシリーズに「ルドルフとイッパイアッテナ(どちらも猫の名前)」があるのですが、そちらは、黒猫ルドルフ、こちらの白狐魔丸シリーズは、白い狐の語り口調児童向け小説です。

 白狐魔丸は、芝居とか、人形浄瑠璃に興味を持ち始めました。人形浄瑠璃は、大坂、京都だけで、江戸ではやっていなかったということは、初めて知りました。先日読んだ直木賞受賞作「渦 UZU 妹背山婦女庭訓魂結び(いもせやまおんなていきんたまむすび) 大島真寿美作を思い出します。

 ふと思う。なぜに男が女を演じ始めたのか。歌舞伎です。そして、宝塚歌劇は、なぜに女が男を演じるのか。それぞれに、異性を表現することに、なにか、胸がわくわくするものがあるのでしょう。
 狐の白狐魔丸(しらこままる)は、狐は人間に化けるけれど、人間の男は、人間の女に化ける。また、人間は、芝居で、別の人間に化けると観察をしています。

 江戸には、武士と町人が半分ずついたけれど、それぞれ、住む地域が分かれていた。鎌倉にはもう漁師と坊主しかいない。その部分の記述が良かった。
 
 中天起渦降雨の術:ちゅうてんきかこううのじゅつ。キツネの白狐魔丸ができる雨を降らせる術。

 むじな:タヌキ、アナグマ、ハクビシン

 江戸城内には、「邪気(じゃき。悪い気配。不気味な雰囲気)」があるそうです。

 徳川家以外の大名を太らせないための参勤交代(費用支出)、江戸城ほかの普請(工事)を他の藩の財政もちやること、大名の家族を江戸に置いての人質など、江戸幕府のシステムには感嘆します。誰が思いついていたのは知りませんが優秀なブレイン(頭脳集団)がいました。

 島原の乱のことが書いてあります。狐の雅姫(つねひめ)は、キリシタン益田四郎(天草四郎時貞)ではなく、幕府側の人間板倉重昌(いたくら・しげまさ愛知県三河の藩主)が好きです。それも、この物語の時点で、60年ぐらい前のことです。

 浅野内匠頭(あさの・たくみのかみ):35歳ぐらい。
 吉良上野介(きら・こうずけのすけ):60歳ぐらい。
 清水義久:吉良上野介の家来。清水一学と名のる。
 大高源吾:赤穂浪士のひとり。切腹した。俳諧の知識あり。茶人として吉良邸にスパイのように入り込んで、俳句の茶会を利用して、吉良上野介の在宅日を把握した。
 片岡源五右衛門:赤穂浪士のひとり。切腹。
 萱野三平(かやの・さんぺい):討ち入りをする予定のメンバーのひとりだったが、吉良とつながりのある家への仕官(その家の職員となる)となり悩んで切腹。
 寺坂吉右衛門:途中で行方不明になった足軽。
 
 支配される者の苦しさがあります。主従関係は不自由です。だれかの上司自身もだれかの部下です。
 接待、贈収賄の世界です。権力者に銭を握らせて希望をかなえてもらう。

 作者は、江戸城松の廊下の刃傷事件を狐をからめて、どのように書くのだろうと強い興味をもって読みました。お見事でした。

 ありえないこと、あってはならないことが起こるのが、事件・事故・自然災害です。状況は常に最悪の方向へ向かって矢印がのびています。江戸城の中で、切りつけるという自滅行為をするのはありえないこと、あってはならないことです。突発的なものでしょう。気持ちが落ち着いていれば城外で計画的に行われる抗議活動です。

 辞世の句:じせいのく。死ぬときに詠む(よむ)和歌。浅野内匠頭の辞世の句「風さそう 花よりもなお われはまた 春のなごりをいかにとやせん」(仇討を期待する句です)このままでは死ぬに死ねないという思いが伝わってきます。もし、この句がなかったら仇討もなかったのかもしれません。

 吉良様の描き方ですが、虚構で、セクハラじじい、いじわる人間(浅野内匠頭に嘘の儀礼方式を教える。浅野内匠頭がつけとどけ(贈り物)をしてくれないから。してくれても気に入るものではないから)と、町の噂が出ています。お客へのもてなし不十分は、明智光秀が織田信長に叱られたことを思い出します。たしか、あれも上司から部下への暴力がありました。パワハラです。そのほか吉良には、いなか侍という相手を見下す、差別意識に基づく侮辱もあります。
 
 浅野内匠頭が吉良上野介を切りつけた理由は、吉良上野介にあり、浅野内匠頭だけが、切腹のお仕置きを受けて、藩は取りつぶし、一方、吉良上野介におとがめなしは、不公平だという不満が江戸中に充満していきます。みんなが、仇討を期待して応援するという異様な雰囲気があります。

 化け狐である雅姫(つねひめ)のコメントは、落ち着いていて信ぴょう性が高い(信用できる)。吉良上野介の浅野内匠頭に対するパワハラ、モラハラがあります。精神的ないやがらせです。その原因は、浅野内匠頭が吉良上野介に十分なお金を払わないことにあります。かわいげがないそうです。まじめなだけではだめなのです。酔狂な部分がいるそうです。たとえば、織田信長に対する豊臣秀吉の態度と紹介があります。ふつうとはちょっと違うユーモラスな面が相手に受け入れられるのです。自分で自分を見下して見せる自虐的な部分があります。
 化け狐同士で、雅姫(つねひめ)が白狐魔丸(しらこままる)に教えるという手法で、話は進んでいきます。
 
 幕府に策略があります。浅野内匠頭が吉良上野介に仇討をすることによって、吉良家一族の領地を奪い、自分たちのグループにいる親しい者にその領地を与えようという悪だくみです。

 大石内蔵助はなかなか仇討をしません。それは、相手を油断させる策略だと今ではわかっています。化け狐の雅姫(つねひめ)は、イライラしています。武士は死んでこそ武士、城中で浅野内匠頭が切りつけたわけで、浅野内匠頭のその行為がいいとか悪いとかは関係ない。自分のめんどうをみてくれた主君の無念を晴らすのが主君に世話になった家臣の努め。相手を斬って、自分は切腹する。体面(まわりに対する名誉、誇り)を保つ。それが武士の生き方。武士は、切腹を持って責任をとる。だから、百姓や町人は、武士の勝手を許すという理屈を強調します。

 討ち入りの光景記述を読みながらタイムトラベルをして過去の現場に立ち会っているような気分になりました。読者が、白狐の白狐魔丸(しらこままる)になります。クーデター未遂昭和11年に起きた2・26事件を扱った宮部みゆき作品「蒲生邸事件」の様子が脳に蘇りました。

 白狐魔丸(しらこままる)の基地のようになっているのは、日本橋近くの旅籠町にある「千川」という宿です。

 人殺しをする侍を嫌う白狐魔丸(しらこままる)の気持ちが伝わってきます。

 淋しい話です。もとはといえば、吉良上野介のパワハラ、モラハラ、それから浅野内匠頭のしんぼうがと工夫が足りない性格・資質からくる事件でした。だれも幸せになれません。変な上司の部下になると部下は苦労します。

 最後のどんでん返しが良かった。おもしろかった。堪能しました。充分に楽しめて満足しました。
 
 調べた単語などとして、「俳諧:はいかい。遊戯性を高めた連続的な俳句。上の句、下の句をつなげていく」、「邪:よこしま。道にはずれていること」、「地口:じぐち。ことわざ。猫に小判など」、「邪険:じゃけん。意地悪で冷たい態度」、「大名:徳川将軍に仕える者。元禄時代には243名。本を読んでいると、徳川家の人間の接待で大変だったようです」、「織田信長:妹がお市、妻が濃姫」、「本丸、二の丸、三の丸、櫓、天守閣:城。核が本丸で、補佐が二の丸、三の丸、円を描いているから丸。櫓(やぐら)は見張りの防衛。天守閣は、象徴。利用は物置」、「遺恨:いこん。忘れられないほど深いうらみ」、「刃傷:にんじょう。刃物で人を傷つける(なぜ城内で小刀の携帯が許されていたのだろう)」、「事件発生の時刻:午前11時半過ぎ」、「江戸城平河門:罪人を通す門」、「浅野家の屋敷は、鉄砲洲(東京都中央区明石町)、赤坂(港区赤坂)、本所(墨田区本所)、吉良家の屋敷は、呉服橋(中央区八重洲)」、「意趣返し:いしゅがえし。積年のうらみをかえす。仕返しする。復讐する」、「旗本:原則江戸住まいの家臣」、「一番槍:抗戦の口火を切った個人。本作品の場合は、間十郎光興はざまじゅうろうみつおき」、「大目付:侍を監査する役」、「足軽:あしがる。臨時雇い」

 印象に残った表現などとして、「いつおむかえがくるかわかりません。(90歳ぐらい南蛮堂煙之丞もとの名を巴右近の言葉)」、「大高源吾が言ったこととして、(藩主に辞世の句を残してほしい。人間は死ねば消えてしまう。絵に残っても信ぴょう性に欠ける。しかし、)言葉は、そのまま何百年も残る」、「徳川綱吉は側近の言いなり」、「戦がなくって、武士にうっぷん(ストレス)がたまっていた(なにか、刺激的なことが起こるといいのにという期待感があった)それを本作品では、『邪気』といっているようです」、「心の中で50ほど数を数えてから歩きだした」、「このころ切腹は形がい化していた。腹は切る真似だけで、介添え人が首を切り落とすことで死んでいた」、「火付けは死罪」、「大高源吾の辞世の句:梅でのむ 茶屋もあるべし 死出の山 」、「(大高源吾の言葉の趣旨として、武士ならば、仇討は)したいとか、したくないとかではなく、しなければならないもの」、「(大石内蔵助の言葉の趣旨として)ほんとうは、仇討などしたくなかった。長生きしたかった。家臣に切腹させたくなかった。まあ、しかたなしに仇討をすることになった」(読んでいて、しみじみしました)「大石内蔵助の辞世の句:あら楽し 思いは晴るる 身は捨つる 浮世の月に かかる雲なし」、「赤い狐:化ける狐の雅姫(つねひめ)のこと」  

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2019年11月29日

会話は、とぎれていい 愛される48のヒント 加藤綾子

会話は、とぎれていい 愛される48のヒント 加藤綾子 文響社

 もう何十年間もテレビはあまり見なかったので、著者がどんな人なのかは知りません。人気アナウンサーの方のようです。経歴を見て音大卒のアナウンサーは珍しいと思い読み始めました。元フジテレビアナウンサー。
 まず全体をめくってみて、教科書のような構成だと感じました。本人は、はじめにの部分で、マニュアル本ではなく、伝えたいことがあると強調しておられます。「仕事とプライベートで役立つ話し方の本」という企画提案が出版社からあったそうです。
① コミュニケーションは楽しい。
② 話すことを楽しむ。
③ 目の前にいる相手への優しさ、気遣い。思いやり。そういう姿勢さえあれば、相手にとっては必ず心地よい。
 働く場面での会話の秘訣かなと思いながら読み始めました。
 教示ではなく、伝達という立ち位置でいくそうです。文章というよりは、話しかけられているような文脈です。

 たくさんの有名人のかたたちの名前が登場します。体験記です。
 テレビの中のひとたちのお話です。ただ、わたしにとっては知らない人が多い。フルタイムで働いている人たちは、ゆっくりテレビ番組を見る時間はないと思います。テレビを見ているのは、高齢者、主婦、こどもさんなどでしょう。
 
 話し方のマニュアル本、手引書です。ただ、現役仕事中の人向けのものです。無理して会話をしなくてもいい人にはあまり参考になりません。
 周囲にいる人をべたぼめする内容でもあります。
 ページの文末に内容を要約したヒントがあるのですが、目ざわりで、読むのは飛ばしました。本文が短いので、文末にまとめる必要がありません。項目が48もあるのは多すぎます。数を減らして、1項目ごとの文章を長くした方がいい。今の文章量だと、箇条書きを読んでいるようです。深みがありません。

 ノウハウは、自己防衛の方法にみえます。いい人になろうとするアドバイスです。
 
 「なになにすべき」という文脈からは、ストレスがたまりそうです。心の健康を考えるとありのままのほうがいい。

 インタビューの内容を本にしてあるような文脈です。アナウンサーというよりアイドル。

  仕事人間の印象が残りました。

 売るための戦略的な本でした。

 記憶に残った記述の趣旨などとして、「自分の意見をもたいないで、その場の雰囲気に合わせる発言を繰り返していると信用を失う」、「(評価として)3割引き(評判だけで実力が伴っていない)」
「人の話を聞いているときに顔が死んでいる」、「(意図的だと思われる)オーバーリアクション」、「ワイプ(テレビ画面のなかの枠内に表示された出演者の表情)」  

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2019年11月26日

明日への一歩 津村節子

明日への一歩 津村節子 河出書房新社

 津村節子さん:小説家。1928年(昭和3年)生まれ。1965年(昭和40年)「玩具」で芥川賞受賞。
 吉村昭さん:小説家。1927年(昭和2年)生まれ。2006年(平成18年)79歳没。「星への旅」、「戦艦ムサシ」、「三陸海岸大津波」

 おふたりは、ご夫婦です。
 随筆集です。41作品あります。1作品が4ページぐらいです。
 いくつかについて、感想を記します。

「ひとりごと」
 東京吉祥寺の地理とか、歴史とかのお話です。歳をとってひとりごとが多くなった。知らない人が見たら認知症だと思うのかもしれない。
「飛脚の末裔」
 訪問看護師と押し車を押しながらの散歩です。足を骨折したらしく歩行がむずかしいようです。亡くなったご主人も作家で、ご主人の言葉に触れられています。
「ある訃報」
 手紙に関する記述が多い本書の内容です。親せき筋からの手紙です。夫が生きているうちに書いた死んだときに親族へ渡す手紙を、夫の死後に奥さんが親族へ言葉を添えて送っておられます。不思議な感じがします。存命中の感謝の言葉とこの書面をもって、お別れのあいさつと致しますという文言があります。
「転機・夫・吉村昭の手紙(Ⅰ)」
 戦争体験のこと。小説家として食べていくためのおふたりの苦労。こどもさんふたりをかかえての苦労。転居。ご主人は取材のためにひとりで海外を転々と旅しておられます。南アフリカケープタウンで黒人差別を見ています。同国のラグビーチームのラグビーワールドカップでの優勝シーンをテレビで観たのは先日のことです。文章を読むと実感が湧きます。
 1969年、昭和44年ころのこととあります。
 今年読んで良かった1冊です。
「汽車は枯野を。夫・吉村昭の手紙(Ⅱ)」
 文学で身を立てるまでの苦労話が続きます。最後に登場する室生犀星氏の記事が胸にしみました。「室生犀星氏は本当に心やさしい方だった」
 随筆。自分の日常生活をさらけだして書いて、他者の感情を動かす文学作品。
「物書き同士の旅」
 旅とは人生でしょう。60年前、文学を志していた人たちの当時の様子です。文学賞が少なかった。同人雑誌の活動のことが書いてあります。
 6畳一間、台所とトイレは共用。家賃3000円。月収が1万2000円。たしかにそういう時代がありました。「思い起こせば長い道のりだった」とあります。先駆者による貴重な記事と記録です。
「初めての歴史小説」
 新潟県佐渡金山の取材話です。やむにやまれず6歳のご長男連れです。翌年、翌々年と佐渡島を訪問されています。作品「海鳴」(1965年。昭和40年)とあります。先日テレビで観た出川哲朗充電バイクの旅佐渡島編を思い出しました。
「心に残る一作」
 ふりかえって、「15年間、ひたすら書くことをやめず、ときどき文学賞の候補になる」
「一歩、また一歩」
  書名「浮巣:うきす。鳥カイツブリの巣のこと」
「作家と生地」
 彰義隊:しょうぎたい。徳川慶喜の警護」
 原稿を仕上げるための取材の旅がきつい。
「初詣(はつもうで)」
 1969年、昭和44年の東京近郊は意外に静かです。
「段飾り」
 ひな人形の段飾りです。「いい春が来たな」の文節が良かった。
「延命」
 姉は90歳まで長生きだったから始まります。人生を振り返って、富んでいたころ、貧しかったころ、山あり、坂ありです。最後の「自分の意識があるうちに自分の命の終わりを決めておきたい」
 遺志が胸に響きます。
「片眼の世界」
 右目の視力がないことを書かれています。
「海へのだんだん」
 ヨーガのお話です。
「井の頭池かいぼり」
 かいぼりとは、池の水を抜いて、保護する生き物、しない生き物に分けて、池をきれいにする作業です。
「憩いの町」
 新潟、越後湯沢のお話です。越後湯沢は、川端康成の町とあります。「雪国」を執筆したところ。
 へぎそば:へぎといううつわに盛りつけたそば。そばには、海藻を使用してある。
「夜明けの電話」
 日記を読むようです。夜明けの電話は、近しい人の危篤や死を連絡してくる電話のことです。そんな電話がかかってこなくなった。もう、みんな亡くなった。
「同窓会」
 85歳の小学校卒業同窓会です。すごい。
 70歳のときの、もう夜飲む会は体にこたえるが、実感があります。
「移り征く年月」
 戦時中、人と物にあふれる東京です。ご長命なみなさんに感嘆します。
「幻の街」
 戦時中のお話です。先日読んだ本「なんにもなかった」くらしの手帖社編作品と内容が重なる部分があり、ご苦労にしみじみしました。
「私の宝-室生犀星」
 室生犀星:1889年(明治22年)-1962年(昭和37年)72歳没
「ふるさと」、「年末を迎えて」、「文芸若狭に期待」
 後半は、お生まれになってこどものころ小学4年生11歳になるころまですごされたふるさと福井県のことが書いてあります。文学賞である「ふくい風花随筆文学賞」の審査員をながらくつとめておられたことなどが書いてあります。雑誌「公募ガイド」にからめて、ふるさとの文学の土壌について述べられています。文学への愛着や愛情が伝わってくる文脈です。
 福井県は宣伝が下手な県とあります。よく言えば謙虚、悪く言えば引っ込み思案だそうです。日本人的です。
「二人旅」
 ご主人の取材のための旅の回数の多さに驚かされます。自分も四国宇和島、松山などは、10代のころに行ったことがあるので、文章を読みながら思い出深く思い出されます。
 筆者ご本人はこの部分を書かれたときはもう90歳近いわけで、周囲から付き添い付きの旅行を勧められています。
「3・11を心に刻んで」
 津波のことが書いてあります。知りませんでした。明治以降に三陸を襲った津波として、明治29年1896年6月15日死者2万人、昭和8年1933年3月3日死者3021人不明者43人、昭和35年1960年5月22日チリ地震の影響。平成23年2011年3月11日東日本大震災。人間の予想や知恵を超えた自然の驚異があります。  

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2019年11月25日

書いて安心エンディングノート

書いて安心エンディングノート 主婦の友社

 書店で何冊か見て自分にはこれが使い勝手がいいだろうと選んで購入しました。
 つくると死んじゃうんじゃないかといういちまつの不安が頭をよぎりましたが、つくればなかなか死なないだろうと前向きに考えることにしました。

 まず、1ぺーじずつ、ゆっくり、なにが書いてあるのかを見ながら、全ページをめくりました。実用書を読むときのわたしのくせです。その動作を何回か繰り返したあとで、書き込みを始めました。まず、自分の氏名と書いた日付を記入してくださいとあります。

 自分自身のためということもあるのですが、思うに、遺された家族のためのノートです。

 ノートが役立つ理由が箇条書き形式で書いてあります。ごもっともなことばかりです。
 本人の意思確認、記憶確認がとれなくなったときに役立ちます。
 病気や事故のときのために準備をしておいたほうがいい。
 ペットは飼っていませんが、ペットを残して逝ってしまったあとのことも考えなければならないことがわかりました。
 
 書けるところから書くというアドバイスです。
 たしかに、一度に全部を書き上げることはたいへんです。時間がかかります。
 少しずつ書き足して、完成させるノートです。途中の内容変更もありです。
 正式な遺言書は付いていません。別途、用意するのでしょう。

 別の用紙や、写真、CD・DVDもはさめるようになっている便利なグッズです。

 2017年発行、2018年に12刷されています。需要が多い。

(つづく)

 毎日ゆっくり書き足していきました。数日かかりました。
 書きながら頭の中を整理整とんしました。
 何度か書くものでしょう。同じページを使用しながら、日付を見え消しで変更したり書き足したりすることになるでしょう。
 ちょっと安心しました。  

Posted by 熊太郎 at 06:38Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2019年11月24日

きいろいばけつ もりやまみやこ

きいろいばけつ もりやまみやこ作 つちだよしはる絵 あかね書房

 人生とか、人間の生き方とかを考える絵本でした。
 きつねのこどもが野原できいろいばけつを見つけます。自分のものにしたいのですが、持ち主が現れるかもしれないので、1週間様子をみます。
 きつねのこは、きいろいばけつに愛着をもちます。自分のものになったらという仮定であれこれ夢を描きます。
 1週間後、きいろいばけつはなくなります。だれかがもっていってしまったのだと思います。
 でも、きつねのこは、めげないのです。
 すぎてしまった過去にひきずられずに、未来を見ながら生きていこうとしていると理解しました。

 「きつねの こが まるきばしの たもとで、」というように、言葉のあいだに、てん「、」ではなく、スペースを入れる書き方は、珍しいと思いながら読み始めました。
 きいろいばけつの底にたまった水を鏡がわりにしながら表情をつくるきつねのこの絵がかわいい。「きつねが」ではなく「きつねの こが」という表現がいい。優しい色あいの絵です。きつねのこ、くまのこ、うさぎのこが洋服を着ている姿もかわいい。

 きいろいばけつをほしいけれど1週間がまんする。
 きつねのこのなまえは、「こんすけ」
 なにかの体験がもとになっている作品なのでしょう。
 月があって、雨がふって、風がふいて、身近に自然があります。黄色があって、青があって、色があります。
 きいろいばけつに愛情をそそぐきつねのこです。ばけつ=希望です。67ページにどんでんがえしがあります。
 さびしくなりました。
 ばけつとは、縁がなかったとあきらめる。
 日本人らしい心理です。

 1985年初版。150刷されているロングセラー作品でした。  

Posted by 熊太郎 at 06:33Comments(0)TrackBack(0)読書感想文