ルルル動物病院 後藤みわ子

ルルル動物病院 後藤みわ子 岩崎書店

1巻 走れドクターカー
 「まゆこ先生」は、小学校の先生ではなくて、学習塾「牧原塾」の先生。
 主人公は、小坂井輝(こざかい・てる)小学4年生。
 ドクターカーは、ペット動物を扱う獣医の車。獣医は、犬吠埼太郎という獣医3年目の若者。

 鳥の話が最初に出てきます。もうおとなになった息子が主人公と同じく小学4年生だった頃、里山で飛べなくなったセキセイインコを拾ってきて長いこと育てたことがあるのを思い出しました。
 
 動物好きなこどもさん、動物好きなおとなのための本です。
 犬吠埼太郎の「犬、犬」がおもしろい。「ルルル」の由来も愉快です。タマル・アニマル・ホスピタルで、タマルは多丸で地名です。
 「大」の字、「犬」の字もおもしろい。犬の命名もおもしろい。

 木に登って降りることができなくなった猫の救出は、猫をどうやっておろすのだろうかとオチが気になりました。

 10才小4の小坂井輝と獣医犬吠埼太郎の出会いと過去は秘密でありドラマでもあります。人の縁が感じられます。

 こどもさんにとっての将来の仕事探しの本という側面ももっています。

 調べた単語として、「サバトラの猫:明るい灰色に黒っぽいしま模様」、「コーギー:犬種。イギリス産。胴長、短足、牧畜犬」


2巻
 小坂井輝の妹がだいぶ歳は離れていますが、「りん」で1才です。ふたりのパパは単身赴任中、ママは育児休業中です。
 井野原百合さんの年齢は80代で、もと書道の先生です。「あらあらのおばあさん」がニックネームです。
 同級生の尾田恭輔と遠藤マコトがうまくいっていません。理由は、マコトが友達付き合いよりもペットのネコである「ミルク」の世話を優先するからです。友達同士の気持ちの交流を図れません。
 
 「友犬:犬を通じての人間の友だち。友達のいない人が犬を友達にすることかと思いました」

 お花である「ゆり」が、猫には毒だと、初めて聞きました。

 調べた単語として、「アビシニアン:猫の品種」、「キャリー:小動物用運搬かご」


3巻
 3巻では、最初のうち、獣医の犬吠埼太郎は休日で登場しません。
 主人公小坂井輝の妹りんちゃんは2才になります。
 妊娠している捨て犬の登場です。
 ペット禁止のマンションのことがでます。最近は条件付きでペット可のマンションが増えました。
 去勢の話。ペットもたいへんです。猫の名づけがおもしろい。「クツシタ」、「サーモン」
 動物が好きなだけでは獣医はできない。獣医は動物の飼い主も好きでなければならない。

 あとがきに、一生の間に出会える人間の数について記述があります。なにかしらの関係をもつ人の数は、わたしは、5000人ぐらいだと思っています。地球上には70億人以上いますがそれぐらいの人としか交流しないという感じです。
作者は続けて、ペットとのふれあいの期間は長くはないと記します。だからその期間を大切にしましょうというメッセージです。人間同士も同じです。

 調べた単語として、「エリザベスカラー:円錐台形状態の保護具。ロートのような形状で動物の首に巻く。外傷をなめることができないようにする」  

日本文学盛衰史 高橋源一郎

日本文学盛衰史 高橋源一郎 講談社文庫

 文学史の本かと思いながら読み始めました。違います。
 明治時代の文豪の名前が次々と出てきます。まじめな雰囲気の歴史小説家と思いきやいきなりセクシュアルな記述に変化したりします。歌手の桂銀淑(ケイウンスク)とか玩具のたまごっちが出てきてびっくりしました。「もののけ姫」も出てきます。
 文章量は多く、ページ全体に文字があります。突然横書きのローマ字表記に変わったりもします。何だろうこの小説は。なにかしら、明治時代の人間が明治と平成を行ったり来たりするような不思議、不可解な感覚があります。政治闘争、学園紛争の雰囲気もあります。
 石川君(たくぼく)がいて森田君がいて私がいる。私はだれなのか。
 ちょっと私にとっては本作品は難解です。

(つづく)

 わたしが、「国木田独歩」として書かれている部分もあります。
 なにに感動すればいいのかわからなくなりました。流し読みに入ります。

(つづく)

 すさまじい文字数です。とても精読できません。こういうものが芸術か。
 100年前に活躍していた人たちです。
 さらけ出す小説です。明治時代当時の自然主義文学を再現しています。
 「坊ちゃん」は夏目漱石が11日間で原稿用紙200枚あまりに書いたとあります。すごいなあ。
 虚無的な部分もありますが、内容は、事実へと変化していきます。
 エロっぽい部分は読むのがきつくて読み飛ばします。
 作者が強調したいこととして、「誰も読まない明治の小説」そして、「本物の作家じゃない」

「二葉亭四迷:ふたばてい・しめい。明治42年1909年45才没。本名長谷川辰之助」、「島崎藤村:昭和18年1943年73才没」、「北村透谷:きたむら・とうこく。明治27年1894年25才自死」、「宮下太吉:明治44年1911年35才没死刑。天皇暗殺計画者」、「夏目漱石:大正5年1916年49才没」、「石川啄木:明治45年1912年26才没」、「森鴎外:大正11年1922年60才没」、 「金田一京助:昭和46年1971年89才没」、「蒲原有明:かんばら・ありあけ詩人昭和27年1952年76才没」、「国木田独歩:明治41年1938年36才没」、「田山花袋:たやま・かたい。昭和5年1930年58才没」、「柳田邦男:昭和37年1962年87才没」、「自然主義文学:真実を描くために美化を否定する」、「伊藤整:いとう・ひとし。昭和44年1969年64才没」、「高村光太郎:昭和31年1956年73才没」、「樋口一葉:明治29年1896年24才没病死」、「中上健次:平成4年1992年46才病死」  

オーパーツ超古代文明の謎 南山宏

オーパーツ超古代文明の謎 南山宏 二見レインボー文庫

 理屈が説明できない古代につくられたものを「オーパーツ」というそうです。書中では、「場違いな事物」とあります。
 大昔の科学技術ではつくることができないものが遺跡や遺物として残っている。だれも解明できない。ある意味、解明不能として放置されている。そこに光を当てる本です。オーパーツには、「知識」と「技術」があると記されています。
 小学生の頃、雑誌のなかのひとつのジャンル記事として掲載があり読んだことがあるのを思い出します。
 古代の謎、神秘、不思議に関する写真が冒頭に並べられています。
 文明が開化して、精神的物質的に人間が豊かになってから5000年です。
 発掘・発見の地は、18か所あり、世界の旅を楽しめます。
 昔の人間のほうがレベルが低かったというのは、現代人の思い込みと誤解でしょう。新しければ優れているというものではありません。むしろ、昔の人間のほうが生命力も想像力も意思も強かった。生活の知恵はレベルが高かった。進化と発展によってむしろ人間は弱くなったという考えもあります。
 
 オーパーツに対して、①事実と認める②虚構と判断する③ほおっておくのパターンがあるかと思います。つついてもメリットがないとなれば③になります。書中の言葉を借りれば、「解かれざるミステリー」です。それが、UFOとか宇宙人のしわざまで想像が広がります。
 
 62ページまで読みました。世界遺産の紹介みたいです。
 とうてい古代には作成不能であると思われる「正確な球形の石」、「恐竜を形どった粘土細工」、「スペースシャトルを模した工芸品のようなもの」などが紹介されています。

 読んでいると古代に吸い込まれる不思議な感覚が生じます。古代には現代文明よりも高い文明が存在していた。それは、核戦争で廃墟となったか、宇宙人のしわざかというものです。
 地球上には、まだ解明されていないたくさんの謎があるようです。巨大で重量のある加工した岩や石をどうやって運んだのか。今よりも高度な土木建築技術があったのではないか。2000年前に電力が存在していたのではないか。
 
 イースター島のモアイ像は、5~6体ぐらいだと思いこんでいました。1000体ぐらいはあるそうです。どうやってつくって、どうやって運搬したのか。小さな島の中で、人口もそれほどないと思われるのに。

 学術の本です。学校で習ったチグリス・ユーフラテスとかインダスとか文明を思い出します。

 調べた単語類として、「虚心坦懐:きょしんたんかい。なんのわだかまりもない。さっぱりしている」、「アスファルト:原油からできる」、「インダス文明:インド、パキスタン、アフガニスタン」  

男はつらいよ(11-14)

男はつらいよ 邦画DVD

第11作 寅次郎忘れな草 1973年 昭和48年8月
 浅丘ルリ子さんです。これまでのマドンナ役とは雰囲気が異なります。これまでは、「お姫さま」扱いでした。今回は、自立した女性として描かれています。浅丘さんは、親分肌です。底辺の暮らしが背景に置いてあります。濃厚なドラマがあります。
 ロケ地は北海道網走で、劇中ひろしさんが言うのですが、地平線が見えます。話のつなぎかたが上手な脚本です。北海道の景色と蒸気機関車の映像が貴重です。
 冒頭付近、法事風景で、笠智衆さんのお坊さんがお経をあげているときに渥美清さん演じる寅さんがふざけるわけですが、演じている皆さんが演技で笑っているのではなく、本当におかしくて笑っていることがわかります。
 押したり引いたりの話運びがうまい。わらえます。外面は良くても内面はぼろぼろ、寅さんのような人物は本来やっかい者ですが、親族のなかにはひとりぐらいこういうタイプがいそうです。
 まんなかに廊下があって、両側に部屋がある昔のアパートの構造、寅さんの老眼鏡をかける様子、まだ舗装されていない北海道の真っ直ぐな道、バックグラウンドミュージックなど、浅丘さんが出るシーンはイタリア映画を観ているような雰囲気でした。
 サブストーリーとして、印刷工場の水原君と女子の恋愛話があります。神経質すぎる気もするのですが清純な付き合いです。
 フーテンの男女が意気投合して、「自分たちは、あぶくのようなもの」 のちのバブル経済の破綻を思い出しました。


第12作 私の寅さん 1973年 昭和48年12月
 赤ちゃんのときから出演していたひろしさんとさくらさんの息子満男くんが演技をします。「おならぶー」と寅さんに電話ごしに言うシーンです。名シーンとして残るのでしょう。
 珍しく、旅先で美女に出会うのではなく、友人の妹という設定で岸恵子さんが画家として登場します。前田武彦さんも津川雅彦さんも若い。津川さんは「相棒」で老人役で出ているのでなおさらです。もうおふたりともあの世の人です。
 だんだんパターンに飽きてきたところで、寅さんの例のひがみ根性は観ていて嫌悪感をもちます。本音と建前がコロコロ変わる。個性的な顔立ちは一度見たら忘れられない。いろいろな要素があります。美女二人を「らっきょときりぎりす」とからかいます


第13作 寅次郎恋やつれ 1974年 昭和49年8月
 第9作で登場した吉永小百合さんが再登場です。このとき吉永さんが29才、渥美清さんが46才です。
 島根県津和野が舞台で、まだ、蒸気機関車が走る映像があります。トロイメライの曲が流れています。ラジコン飛行機もなつかしい。
 吉永さんが帝釈天のだんご屋に来て、「わたし、来ちゃった」、2年前の「バターの話し(写真撮影時のチーズ)」が出て笑います。笑いのパターンとして、言ったこととそのあとの対応が正反対になる(本音とたてまえ)、言葉遊び(洋酒のナポレオンとワシントン)があります。
 吉永さん親子(父親は小説家)はともに同じ性格です。がんこで強情っぱり(自分を主張して他人を受け入れない)です。

 今回の映画は、「父親の娘に対する謝罪」を描いた映画です。

 車寅次郎については、同じ場所に根を張って、地道に働けない人物を描いています。


第14作 寅次郎子守歌 1974年 昭和49年12月
 赤ちゃん置き去り騒動の話から始まって、看護婦さんとコーラスグループの指揮者との恋愛成就にまで至ります。
 寅さんの口上に出てくる「熊坂長範:くまさかちょうはん。平安末期の盗賊。牛若丸に討たれた」
 おいちゃんが下条正巳さんで、車家の良心が伝わってきます。満男くんは5歳ぐらいに見えます。たまに演技をするのがいい。
 ロケ地は佐賀県唐津です。映像を観ていると福井県若狭の風景にも似ている。日本海側の漁港なので似るのでしょう。  

水の匂いがするようだ 野崎歓

水の匂いがするようだ 野崎歓(のざき・かん) 集英社

 小説家井伏鱒二(いぶせ・ますじ)氏の研究書です。
 井伏鱒二:1993年平成5年95才没。山椒魚、黒い雨ぐらいしか知りません。明治31年生まれ

 井伏鱒二氏は、魚が好きらしい。だから、「鱒(ます)」という字が名前に入っている。先入観とはいけないもので、優等生だと思っていたら、そうでもないらしき経歴が書かれていました。魚を主題として書く作家ともあります。

 「山椒魚」を読んだのは2012年のことでした。太りすぎて岩の間から出ることができなくなった山椒魚と、山椒魚がいじわるで意図的に自分のいる場所に閉じ込めたカエルのやりとりがありました。それを人間に置き換えて考える。井伏自身もひきこもりではなかったのか。

 面白かった記述主旨として、「大学には、絶望した人、病人は来ない」、「質屋に行くような貧窮作家になりたい」

 子ども好きな面もあるようです。戦場で我が子を楽しませる童話を書いた外国人作家に親しみを述べています。

(つづく)

 井伏鱒二氏の漢詩の翻訳がすばらしい。漢字だけなのに上手に日本語に転換されています。

 『さざなみ軍記』という作品に長文が使用されています。

 よくわからないのですが、架空の翻訳として、原作がないのに、翻訳本を作成したとか、よそから話をもってきたとか、そういう不可解、不思議な手法で書かれた作品もあるようです。

 1930年代に肥満で悩む。30代です。作品に太った自分のかわりを登場させる。

 旅人になる。釣り師になる。

 太宰治が弟子。

 作品の内容の背景がこの本では詳しく書かれています。戦時中のこととして初耳のことも多い。大阪城に作家、画家、漫画家、マスコミ関係者が兵隊として集められた。

 1年間の輸送船への乗船で戦地体験あり。やはり小説家は体験が大事だと感じる。
 戦争は正しくありませんとあります。

 「日記」の重要性、習慣性が書いてあります。

 昭和45年70才でも魚釣りと創作意欲は盛り上がっています。釣りに熱中するのは、弟子の太宰治が入水自殺したからであるという説です。太宰治との関係を「水」を素材にして濃密に表現してあります。これが、この本のタイトル「水の匂いがするようだ」につながります。続いて太宰の故郷青森の記述へと流れていきます。
 
 印象に残った言葉として、「井伏文学の『川』」

 調べた単語類として、「ヴェクトル:物事の向かう方向と勢い」  

父からの手紙 小杉健治

父からの手紙 小杉健治 光文社文庫

 2003年の作品でロングセラーです。ふたつの流れがあります。ひとつ目は、阿久津麻美子を中心にした阿久津ファミリーで殺人事件発生、ふたつ目は、秋山圭一を中心にした秋山ファミリーで自殺の話。今、130ページを過ぎたあたりを読んでいます。ふたつのファミリーの話がどこかでつながるはずです。
 10年間、年に1回、阿久津麻美子に両親離婚後別離した父から手紙が届く。東野圭吾「手紙」とか三浦しおん「のの花通信」を思い浮かべます。
 
 阿久津麻美子24歳には弟信吾と母がいる。麻美子には婚約者がいるが、金づるがらみのわけあり婚約者である。
 秋山圭一40歳はどうもやむにやまれない理由によって悪徳警察官を殺害した過去があり、9年間の服役を終えて刑務所を出所したところから始まる。
 秋山圭一の身の上話が続きます。

(つづく)

 阿久津麻美子の婚約者の遺体発見、婚約者の愛人の遺体発見は、加害者は婚約者の模様。
 そのほか、首つりが出てきて、なんだか、遺体がたくさん出る物語です。
 女の本音の部分(ろくでなしの夫が死んでよかった。だけど、それを表面には出さない)がいい。
 不倫の話。娯楽小説です。
 殺人犯人は「父」というような設定で進み始めます。
 毎月20万円養育費を仕送りしてくれる離婚後に別れた父です。
 父親からの手紙の内容は牧師の言葉のようで父親の実感がありません。どこもぎくしゃくとしていてどうしてこの作品がロングセラーなのだろうと思い始めました。
 277ページまできて、父親に関するからくりに気づきました。手紙の筆跡はどうなっているのだろう。全体で428ページです。とても長い。
 過去を追い求める小説です。出会いが偶然ばかりです。一人称のひとり語り記述が延々と続きます。父親の生存確認は戸籍でできるのにと思いながら読んでいます。
 保険金殺人ではないか。最後の手紙は胸を打ちました。
 しかし、長かった。
 調べた単語類として、「喚く:わめく。読めませんでした」、「義姉:ぎてい。もしくは、おねえさん」、「青砥駅:あおとえき」、「JR香田駅:関東地方に設定した架空の駅」、「慙愧:ざんき。反省して恥じ入る」、「縋る:すがる」、「傲岸不遜:ごうがんふそん。いばって人を見下す」