2008年03月17日
北京
北京
凶犯(きょうはん) 張平(ジャン・ピン)著 荒川啓子訳
写真は北京の天安門です。昨年9月に北京を訪れてみて、中国の人たちは、とても頑張っていることが伝わってきました。街中に人や車があふれて活力に満ちていました。
さて中国にちなんで、以前読んだ1冊をご紹介します。この本は傑作です。私は日本の文学作品でここまでの迫力をもつ書き方をした本を読んだことがありません。「凶犯」中国人 張平(ジャン・ピン)著、荒岡啓子訳。軍隊特殊部隊出身の国有林監視員主人公と違法に森林を伐採売却する村人たちとの闘いです。舞台は中国の厳しい貧困にあえぐ秘境の山村。十分な飲料水もない。
事件発生時点を0とし、事件発生前、発生後を交互に記述しながら、描写が進んでいきます。私は今まで、そのような手法で書かれた本を読んだことがなかったので、新鮮に感じました。
2007年09月28日
門
門 夏目漱石 新潮文庫
中国北京故宮(こきゅう)にてガイドさんが説明してくれたのですが、写真は映画ラストエンペラーの主人公清朝皇帝溥儀(ふぎ)がこどもの頃遊んだ場所だそうです。塀の中で暮らす同世代の友だちもいないさびしい境遇だったそうです。
さて、中国というところは、なんと門が多いところだろうかという感慨をもちました。万里の長城しかりです。外敵から身を守るために門をつくる、内部の反乱者を外に出さず内部で処分するために門をつくる、私はそう受け取りました。加えて、中国は「石」の文化があると受け取りました。木造2階建て建売住宅様のものが市内に見当たらない。レンガ造りの1戸建てかマンションです。ひるがえって日本を見ると防御は「堀」、建物文化は「木」と中国に行って確認しました。
何か門にちなんだ作品の感想はないかとさがしたら夏目漱石作がみつかりましたので記します。
テレビはない。パソコンも携帯電話も車もない。古き良き明治時代のお話です。伊藤博文氏の暗殺の報道が話題として出てくる。(明治42年10月没)
親族間のお金のごたごた話が出る。上流階級のお話です。読んでいて距離感あり。日記を文章化してある。それを作品化してある。夫婦と個人をめぐるなりわい話である。何がいいたいのか。お金持ちが時間つぶしに読む読み物になっている。この作品は試作品ではないかと疑心暗鬼になってくる。夫婦が結ばれた過去をさかのぼることによってふたりの哀しさが伝わってくる。友人の恋人あるいは妻と恋愛関係になって、その人を友人から奪うことに後ろ向きの気持ちでありながらも罪悪感を感じつつ実行してしまった主人公。同じ作者の「こころ」を思い出す。
2007年09月27日
筑豊(ちくほう)のこどもたち
筑豊のこどもたち 土門拳 築地書館
「筑豊(ちくほう)のこどもたち」は胸にズシンときます。福岡県の産炭地(炭鉱)だったところです。本人たちにとっては隠しておきたいあるいは忘れたい暮らしだったと思いますが、今となっては本人も忘れかけているくらい昔の出来事になりました。
写真は北京の街中(まちなか)風景です。私は不思議な感覚に陥りました。昭和30年代のみすぼらしい日本と美しい高層ビル群が目立つ現代日本の風景が混在しているのです。台車に横たわって物乞いをする少年やパンツ1枚で堂々と人ごみの中をまっすぐに歩いてくる浮浪者がいる。道路は人と車であふれ車は減速してくれない、BGMのようなクラックションの音、加えて自転車とリヤカーと観光客向けの三輪車、車椅子も多い、小さな車からなつかしいオート三輪、大きな観光バスやトレーラーまで、こういうのを坩堝(るつぼ)というのだなあ。暗い夜、玄関前に置いた1台のテレビに住民が集まっている。下着姿の父親がこれまた裸同然の幼い息子をもちあげてあやしている。廃屋とも思える小屋のようなところで老若男女が生活している。これは、タイトルの写真集に似たものがあります。