2024年09月25日

なにわ介護男子 宮川大助・花子

なにわ介護男子 宮川大助・花子 笑いと涙の闘病介護記 主婦の友社

 テレビ番組、『徹子の部屋』におふたりが出演されて、この本を出されたと紹介があったので、さっそく取り寄せて読んでみました。
 放送を見ましたが、花子さんのご病気で、おふたりとも、ご苦労されています。

 最初にゆっくり最後のページまでめくってみましたが、おふたりともご病気で本当にご苦労されています。
 人生は障害物競走みたいなものです。病気や事故、自然災害や事件に巻き込まれることは日常茶飯事のようなものです。なかなか平穏無事に日常生活を送ることはむずかしい。

宮川大助:1949年(昭和24年)生まれ。74歳。既往症として、脳内出血、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)、感染症、グラム陽性菌敗血症(ぐらむようせいきんはいけつしょう)

宮川花子:1954年(昭和29年)生まれ。70歳。既往歴として、自律神経失調症、胃がん、2018年(平成30年)3月9日余命半年と宣告される。形質細胞腫。多発性骨髄腫。2022年(令和4年)10月29日心不全。現在は車いすの身体障害者手帳所有者です。

 おふたりのお子さんとして、娘さんがひとりおられます。『さゆみ』さんです。

 本は、最初に序章、それから年表があって、次に、第1章から第5章まで、過去から現在、そして未来という流れで書いてあるようです。

 日曜夕方の番組、『笑点』に6年ぶりに出演されたときのネタが書いてあります。病気が良くなったから出演できたのでしょう。『……結婚しました、子どもできました』(けっこう重い言葉です)
 話ははずれますが、たまに、笑点を3月で降りられた林家木久扇(はやしや・きくおう)さんを思い出します。木久扇さんは笑いの天才です。本を読みました。バカのすすめ 林家木久扇(はやしや・きくおう) ダイヤモンド社です。
 人生では、ときに、バカにならないとやれないこともあります。バカになればできることがあります。 理屈ではないのです。やるしかないのです。バカになってやると、たいてい、うまくいきます。

 おふたりについての年表を見ます。
 見ていて、生きてるだけで幸せということはあります。
 病(やまい)との付き合いが続きます。

『第1章 余命半年と宣告されて』
 宮川花子さんの語りでお話がスタートしました。2024年7月発行の本です。闘病生活6年と書いてあります。病名は、『多発性骨髄腫(血液のがん)』です。背骨にがんがある。

 花子さんは、2019年(令和元年)6月に鎖骨が折れる。命はとりとめたものの車いす生活となる。

 どうも、前作の本があるようで、そこまでが、前著の内容ですとなっています。(前作は、『あわてず、あせらず、あきらめず』でした。2022年(令和3年)1月出版)

『第2章 大助・花子の波乱万丈! 続・闘病記』
 2020年(令和2年)4月7日:新型コロナウィルスにより7都道府県に緊急事態宣言発令。同月16日に宣言が全国に拡大。花子さんは、リハビリ中だった。

 本をつくるためには、ネタ(材料)が必要です。
 ふつう、文筆家は、毎日、日記や日誌のようなものをつけていると思います。喜怒哀楽の感情はあまり出さずに、その日に起きた事例を箇条書きにしていると思います。なにもないところから文章を起こすことはとてもむずかしい。
 こちらの本は、花子さんの文章で書いてあります。漫才師の方ですから、ネタ帳のようなものを持たれているのかもしれません。
 花子さんがつくられた文章に、編集者の手は入っているのでしょう。読みやすい。
 時系列(物事が起きた順序)が、ちょっとわかりにくい。月日だけではなく、西暦なり年号なりを月日の頭につけていただいたほうがわかりやすい。
 
PET検査(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー検査):放射性薬剤を使って、細胞の活動を検査する。がんの病巣等(びょうそうとう)の発見に使用する。

寛解状態(かんかいじょうたい):症状や異常が消失した状態。

センターマイク:漫才で使用されるステージ中央のマイクのこと。

 読みながら思うのは、元気なうちに人生を楽しむ。余生を楽しむということです。
 歳をとってくると、今年の今はいいけれど(できるけれど)、来年の今は、どうなっているかはわからないということはあります。(できなくなっているかもしれない)。後悔しないように、できることはできるときにさっさとやってしまったほうがいいのです。

 2022年(令和4年)10月29日、花子さんは、抗がん剤の副作用で、肺に水がたまり、心肺停止に近い状態になります。
 
 2023年(令和5年)、新型コロナウィルスが5類(インフルエンザと同じ。1類が一番危険)に移行して、外出自粛の要請がなくなる。
 
 大助・花子さんは、名古屋にある大須演芸場や御園座(みそのざ)の舞台で漫才をされています。
 わたしは大須演芸場には入ったことはありませんが、道ばたから建物を見たことはあります。なにかの講演会で、大須演芸場の経営者の方(席亭(せきてい。支配人)の講演は聞いたことがありますが、もうずいぶん昔のことです。
 御園座(みそのざ)は、わたしは、今年は2回訪れました。山崎育三郎さんの『トッツィー』と山﨑玲奈さんの『ピーターパン』を観劇しました。来年1月は、草彅剛さん(くさなぎつよしさん)の『ベニスの商人』を観たいと思っていますが、チケットがとれるかどうかはわかりません。

 先日見た、テレビ番組『徹子の部屋』で、大助さん夫婦が仕事終わりに、今くるよ・いくよさんに呼ばれて、お説教された話が印象的でした。
 当時、大助さんは、漫才の台本を書いて、夫婦で稽古(けいこ)をしていたわけですが、花子さんは、娘さんのめんどうをみたかった。
 されど、大助さんは、家庭のことは考えず、仕事のことばかりを考えていた。いやがる花子さんを引き留めて、稽古をやめて帰宅するという約束の時間を過ぎて、夜遅くまで、漫才の稽古を続けていた。そのあいだ、娘さんは家でひとりぼっちだった。
 ご夫婦は、今いくよ・くるよさんに呼ばれて、今いくよさんが大助さんに言ったそうです。
 『あんたの一番大事なものはなんや。こどもと花ちゃんと違うんか。宝物と違うんか。漫才で花ちゃんをイジメるのはやめろ!(一番大事なものは、けして、仕事ではない)』
 大助さんは、おおいに反省したそうです。花子さんは、一児の母である。花子さんは、母親をしたかった。
 今いくよさん:2015年(平成27年)5月、胃がん。67歳没。やせていた。未婚。
 今くるよさん:2024年(令和6年)5月、膵がん(すいがん)。76歳没。ギャグとして、腹をたたく、『どやさ』と言う。未婚。
 お説教をされたときに、自分たちには夫もこどももいない。あんた(大助さん)にはいる。家族をだいじにしなさいと言われたそうです。

 読んでいて思うのは、大助・花子さんは、気持ちで生きている人たちです。

 62ページ、『お風呂での死亡事故は交通事故死の6倍……』(気をつけましょう)

 2023年(令和5年)9月下旬。花子さんの右の頭の骨に、新しい形質細胞腫が見つかる。

 花子さんは、MRI検査(磁気共鳴画像法)が閉所恐怖症でにがてだと書いてあります。
 たしかに、苦しいです。
 わたしは、今年初夏に頚椎症(けいついしょう。首の骨の間が詰まっている。右肩から右腕、右中指までが激痛になる。しびれや震えも出ます)でMRI検査を受けました。背中にナイフで刺すような痛みがあったので、かなり苦しかった。検査は時間が長いです。真っ暗なところに入れられて、あおむけでじっとしながら、30分間ぐらいから40分間ぐらいかかった覚えです。その後、服薬と通院で治りました。二か月ぐらいかかりました。

カンファレンス:会議

 花子さんのおしめを大助さんが変える:夫婦だからできることです。
 病気になると、うんこ・しっこのコントロールがたいへんです。

クランクチョコ:ザクザクとした素材の小さなかたまりのチョコレート。

 花子さんは、ご自身が、介護施設に入ることを考えた。(花子さんのお母さんが94歳で施設に入ったというお話も出ます)
 花子さんが施設に入ることは、大助さんがさみしがったのでやめたそうです。

 2024年(令和6年。今年です)1月、能登半島地震、次いで、羽田空港での航空機衝突炎上事故です。
 早いもので、もう今年ももうすぐ10月です。時は、淡々と、されど確実に経過していきます。

 おふたりとも仕事人間ですが、お金のためではなく、ほかのことのために働いておられます。読んでいてそう思います。漫才ができる幸せをかみしめたいと書いてあります。

『第3章 なにわ介護男子の胸のうち ~大助と花子のぶっちゃけトーク~』
 ここまで、多発性骨髄腫という病気の詳細は書かれていませんでした。(その後、医師の解説・説明ページが出てきました)
 本の趣旨は、『夫婦愛』です。
 だれかの支えがあるからがんばれるのです。お互いにです。支え合っています。夫婦であり、親友であるのです。

 まこちゃん:花子さんの昔の芸名だそうです。

 花子さんの親の遺言として、『夫婦仲よくしなさい。漫才が原因で離婚するようなことになったら、漫才をやめなさい』
 
 大助さんは田舎者で、貧困暮らしを味わったそうです。
 ご自身のこどものころの体験として、農家の肥料として、畑に人糞をまいたという話が書いてあるのですが、わたしにも類似の体験があります。
 わたしはまだ7歳ぐらいだったので、人糞を畑にまいたことはありませんが、父方の祖父母宅が農家で、祖母が、2個の肥え樽(こえたる)を、天秤棒を使って肩でかついで行くうしろをついていって、祖母が畑に人糞をまく姿をながめていた記憶が残っています。
 
バルーンカテーテル:医療器具。尿道から膀胱に(膀胱に)挿入する。(そうにゅうする)。尿が出るようにする。

紫綬褒章(しじゅほうしょう):芸術分野等で功績があったと国家(天皇)から表彰される。

『第4章 主治医・天野先生に聞く ~多発性骨髄腫のキホンと花子さんの本当の姿~』
 発症年齢の中央値は60代後半ですとあります。わたしも気をつけねば。されど、どう気をつけるのだろう。予防のしようがないような……
 
『第5章 今までと、これからと』
 漫才の台本をご主人の大助さんが書いているということが意外でした。奥さんの花子さんが書いていると思っていました。
 漫才では、奥さんは、なにせ、機関銃のような早口でまくしたてます。頭の回転が早い人に見えます。対して、大助さんのしゃべりはゆっくりです。そんなところから、台本作成は奥さんのほうだと思っていました。

 全体を読み終えての感想です。
 生きているとか、生きることを学ぶ本でした。
 
 本のカバーをはずして、本の表紙・裏表紙を見ました。
 挿絵(さしえ)が優しい(やさしい)。  

Posted by 熊太郎 at 07:26Comments(0)TrackBack(0)読書感想文