2020年08月25日

3人の信長 邦画DVD

3人の信長 邦画DVD 2019年公開

 1560年の桶狭間の合戦で、織田信長に逆転負けをした今川義元の家臣たちが、1570年の金ヶ崎の戦い(現在の福井県敦賀市)で朝倉義景の軍に追われて敗走する途中の織田信長を捕らえて、主君だった今川義元の仇討(あだうち)をしようとするスタートです。
 織田信長を捕らえてはみたものの、影武者が混じっていて、三人の信長がいるのです。今川軍の武士たちが困惑します。三人とも斬ることは武士の恥になるそうです。
 おもしろい設定です。発想がいい。
 コメディのようなギャグのようなシーンもあります。どの信長が本物の織田信長なのかわかりません。
 始まってしばらくして、自分なりに、オチを想像してみました。あたっていました。されど、さらにひとつ、ふたつとひねってあって、そこまでは知恵が及びませんでした。
 刀を使った斬り合いですからちょっとグロテスクなところもありますが、楽しい映画でした。
 言葉数の多い映画です。コメディが含まれているので、本格的武士道映画というわけではありません。娯楽映画です。
 記憶に残ったのは、「うつけ」という言葉、それから、「いつの時代も変わり者が天下を変える」というような内容のセリフでした。それから、伏線として、「のろし」
 影武者も組織を維持していくうえでは、必要な人材です。
 映画には説明はありませんが、やはり、『敵は手の内に置け。そして、敵を大事にせよ』は、負けないための戦法の鉄則です。組織が滅びるときは、外部からの力ではなく、内部からの力で崩れていきます。  

2020年08月24日

むこう岸 安田夏菜

むこう岸 安田夏菜(やすだ・かな) 講談社

 生活保護を受給している世帯にいる中学生を素材にした物語のようです。読みながら感想を付け足していきます。
 本の装丁として、カバーの絵が暗い。大丈夫だろうか。色彩は、黒と黄色しかありません。炭で絵が描いてあるような感じです。
 まず、36ページ付近まで読みました。自分は落ちこぼれだとして元気をなくした中学生男子がアルコールに酔って、陸橋(歩道橋)から飛びおりるんじゃないかというようなシーンがありました。そのシーンをイメージしてあるのだろうというカバーと表紙の絵です。
 彼の目の前には都会の風景が広がっています。林立するビルと走り回る車とお互いを知らないおおぜいの人たちです。人間はたくさんいるけれど、ひとりひとりは孤独です。そして、彼は、生活保護を受けている主人公ではありません。彼はお金持ちの子どもです。

 二人主役のような構成です。最初は、男子がふたりかと思いましたが、片方は、女子でした。
 シンプルに、生活保護を受けている中学生の話かと思って読み始めたので意外でした。テーマを二本並べて並行して進めていくのは、読み手にとっては、わかりにくくなりはしないだろうか。

 それはさておき、まず主な登場人物のうちのひとりめが、
山之内和真(やまのうち・かずま):中学三年生。医師の息子。有名私立中学蒼洋中学(そうようちゅうがく)で勉強についていけず、中学三年生の一学期から公立中学に転入した。運動はできないそうです。母親香澄と父方の祖母、それから妹の穂波4年生と同居しています。
 もうひとりが、
佐野樹希(さの・いつき 女子です):中学三年生。山之内和真が転入してきた同じクラスの一員。小学五年生の時にパパが交通事故死して、ママが精神病になって、今は生活保護を受けている。妹として、保育園に通う3歳の奈津希がいる。保育園の送り迎えを佐野樹希がしている。佐野樹希自身は、弱虫ではない。気が強い。上がり気味のくっきりまゆ毛。ボーイッシュな見た目です。ちょっと言葉づかいが汚いのが気になりました。
 ほかに、
 喫茶店「カフェ・居場所」のマスターがいます。「カフェ・居場所」は、貧困暮らしをしている児童・生徒のたまり場になっているようです。
 それから、市が運営している無料塾として、青少年センターで週二回開催されている「あおぞら」が出てきます。

 このまま読みながら登場人物を追加していきます。
渡辺アベル:中学一年生。黒人の少年。父はナイジェリア人で、いまはもう日本にはいない。母は日本人で介護職をしている。佐野樹希とは別の隣の中学校に通っている。がっしりとした大きな体格をしている。「カフェ・居場所」で、山之内和真に数学を教えてもらう。彼の性格は見た目の反対で、人見知りをする。恥ずかしがり屋。小学生の時にショックを受けたことがあって、しゃべらなくなった。見た目は怖そうだが、じっさいは、気弱そう。
城田エマ:佐野樹希の同級生。叔父さんがいる。

 「章(文章の区切り目)」として、山之内和真と佐野樹希のそれぞれが、ひとり語りをしながら物語を進行させていきます。
 うーむ。おとなが書く中学生の気持ちです。表現がむずかしそう。中学生の脳みそと人生体験だと、現実には、「わからない」ということが多い。
 生活保護制度はおとなの世界のことなので、対象者を中学生としてどのように物語をつくるのだろうかという部分に興味をもって読み始めました。就労体験も納税体験もない中学生にはよくわからないことだと思います。

 以下、読みながら湧き出た疑問点などです。
 山之内和真が主張する「賢いから、金持ちだから」いじめられたという理由は、いじめられる理由として弱いような気がしました。ふつうは逆で、「ばかだから、びんぼうだから」という理由でいじめられます。
 
 勉強についていけないから中学校を変えるという山之内和真の父親の理屈は理解できませんでした。中学校は義務教育です。登校して、規定の時間数の授業を受けて、一定の水準の成績をおさめることができれば卒業です。お金がなくなったから公立中学へ行くことになったということは聞いたことがありますが、学力不足で私立中学をやめたということはきいたことがありません。本人があまりにもみじめです。
 人間に、「落ちこぼれ」なんてあるのだろうか。人生はとても永い。どの時点で、「落ちこぼれ」が決まるのだろうか。そう考えると、人間に、「落ちこぼれ」というものはないのです。
 もうひとつは、医師である山之内和真の父親と、患者として生活保護の費用負担で医療行為を受けている人との距離は近いと思うのですが、本の中で、医師の父親が、生活保護制度に理解のない発言をしたことが不思議でした。生活保護制度がないと、病気の治療をしても医療費が病院に入ってきません。

 佐野樹希(さの・いつき)が母のことをいうときに、母親の「母」を、どうして、カタカナの「ハハ」と書くのかわかりませんでした。「母」でいいと思います。

 ケースワーカーたちの対応が不可解です。人によって家族に対する対応が変わるのは変です。だれがやっても同じにならなければなりません。
 精神病の母親に対して、働け、いつまでも生活保護を受け続けるなみたいな指導はしないと思います。父親が交通事故死した運が悪かった気の毒な母子家庭です。精神病にかかってしまった母親、中学一年生女子、保育園女児3歳の母子三人の家庭です。主治医がいて病院に通院して服薬治療をしている精神病の母親に働けという指導をして追い込んだ結果、一家三人心中事件が起こって、全員死亡にでもなれば、大問題が起こります。基本的人権の無視です。
 常識で考えると、母親は病気の治療に専念で、娘ふたりは、心すこやかに育ってほしいです。そして、将来は、娘ふたりが働いて病気の母親を支えて、生活保護から脱却してほしいとなります。また、母親が障害年金をもらえる可能性もあります。

  生活保護世帯に対する世間の冷たい対応がありますが、それは、主におとなの世界のことで、生活保護を受けている家庭のこどもを攻撃するような非情なことはしないと思います。こどもに責任はありません。

 生活保護制度のあり方を攻撃するよりも、こどもには、勉強させた方がいい。いまはまだ中学生です。社会から受けた恩恵は、のちのち社会にお返しするという気持ちで、いまは、勉強に励めばいい。

 まじめすぎるのと、おとなは、本に書いてあるようなことを中学生のこどもには話しません。話の中身は、佐野樹希の親権者である母親に話す内容です。
 かなりがちがちに生活保護制度をとらえてあるので、そうかなあと考えながら読んでいたら、「例外」の話が出てきました。そうなのです。法律には、「原則」と「例外」があるのです。だから、これしかないと決めつけないほうがいい。
 思うに、「法律」は、自分の身を守るために、できるだけそうしたほうがいいということが書いてあると思うのです。でも、そうできないときもあります。人間は、感情の生き物だからです。そのかわり、できなかったとき、法律は自分の身を守ってくれません。

 なぜそんなに大学進学にこだわるのでしょう。大学へ行くメリットは、将来のための人間関係づくりです。さきざき、その大学の卒業生がいる会社や組織に入って、顔見知りの仲間で、利益の追求をしていきます。そこには、人事権をもつ人を中心にして派閥があったりもします。先輩後輩で、幹部ポストを順番に回していったりもします。師匠と弟子の師弟関係を築いたりもします。あるいは、個人営業にしても、大学同窓生同士で、ギブアンドテイクという手法で、助け合って仕事をしていきます。大学は、自分にとって将来の利益を形成するための人間関係づくりの場所です。そういうことを望まない人にとっては、無意味で苦痛な四年間を過ごす場所になってしまいます。歳をとってみてわかるのですが、人生においていらなかったと思うもののひとつが、「学歴」です。そして、「学問」は、何歳からでもスタートできます。

(読書はさらにつづく)

 貧困差別について書いてあります。
 遠い昔を思い出してみると、第二次世界大戦の終戦後からしばらくはみんな貧乏暮らしで、小中学校では、生活保護をもらっていた家庭も多かった記憶です。
 昭和と平成をまたいだころのバブル経済華やかだったころは、ああこれで、日本も生活保護をもらう家がぐっと減っていくのだろうと思いました。でも、最近は、かなり増加したようです。年金が少ない高齢者の単身世帯も増えています。もう働ける年齢ではありません。親族からの援助も期待できない世の中です。なかなかむずかしいものがあります。

 この本のいいところです。
 こどもにとって、貧困を脱出するてっとり早い方法は、勉強をして、テストでいい点をとることです。そこから、道が開けていきます。むずかしいことではありません。小中学校の教室で習ったことを何回も繰り返し読んで書いて暗記してテストにのぞむのです。授業で出たことがテストに出ます。この物語はそういう流れにのっかっている配慮があります。
 貧困と頭の良さは関係ありません。貧乏な家に生まれても、脳みそのできがいいこどもはたくさんいます。
 さらに、貧乏な家に生まれたからといって、一生貧乏な生活を送るわけではありません。ひとりの人間でも、長い人生のうちには、お金がたくさんある時期もあるし、お金があまりない時期もあったりします。基本的には自分でコントロールすることになります。

 佐野樹希(さの・いつき)の母親の姿が見えません。全体的におとなの姿が見えない物語です。

 よかったセリフとして、
「(山之内和真が渡辺アベルに)きみは、バカではありません」  

Posted by 熊太郎 at 06:22Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2020年08月23日

インベージョン 洋画DVD

インベージョン 洋画DVD 2007年公開

 THE INVASION:侵略

 スペースシャトルが爆発して地球に落下した。落下したとき機体の破片に、宇宙に存在するウィルスが付着した。人間がウィルスに感染すると感情がなくなる。外見は人間、中身はエイリアン、あるいは、きれいなゾンビになるというような流れです。

 セリフに中身がないような。(説明ゼリフが多い)

 こじれた夫婦関係とか、前夫とのこどもさんとか、ウィルスとは関係のない話がからんでくるので、ややこしい。

 ウィルスという敵の姿が明確に見えるわけではありません。透明な粘着体です。大騒ぎはあるのですが、感染拡大で数千万人もが感染したといわれても実感が湧いてこない映像でした。
 人間がいる限り、戦争はなくならない。世界が平和になるためには、人間から感情を抜かなければならないというようなメッセージがこめられている作品でした。ただ、賛同はしがたい。

 ホラー映画でした。進行は、ゾンビコミックマンガの物語を見るようでした。

 眠ると感染するので、眠ってはいけません。レム睡眠:脳が活動していて夢をみる時間帯

 救世主はやはり、『ワクチン』でした。

 そろそろコロナもおさまってほしい。  

2020年08月22日

愛を読むひと 米・独合作洋画DVD

愛を読むひと 米・独合作洋画DVD 2008年公開

 タイトルは原作どおりの『朗読者』のほうが良かった。内容に合っています。
 文字の読み書きができない36歳の女性に15歳の少年が本を読んであげる話でした。
 女性の名前は、「ハンナ」でドイツ人です。第二次世界大戦のユダヤ人差別、虐殺の出来事がからんできます。ドイツ側の話が中心です。ユダヤ人収容所の看守として働いていたハンナが、終戦後に300人のユダヤ人の殺人行為で裁判にかけられるシーンが始まって、なかなか、厳しい内容になりそうだと感じました。

 まあ、エッチなシーンもありますが、主人公15歳のマイケル・バーグ少年には、かなり年上の女性であるハンナと体験をもったことで、だれにも言えない秘密ができてしまいました。そして彼は家族にうそをつきます。うそつきは、おとなの始まりです。

 ラテン語、ギリシャ語、ドイツ語、ヨーロッパですからいろいろな言語があります。
 読んだことのない本のタイトルがいくつも出てきました。
 ドイツの劇作家レッシングの「エミリア・ギャロティ(戯曲)」、古代ギリシャホメロスの長編抒情詩「オデュッセイア(旅の物語)」、「チャタレイ夫人」、「(タイトル不明)マンガ(あとで、タンタンの冒険と判明しました)」、アントン・チェーホフの「犬を連れた奥さん」不倫エロ話が多い。

 なかなか解釈がむずかしい映画です。
 ハンナは、文字の読み書きができないことを、人間としての「恥(はじ)」ととらえ、そのことをひた隠しに隠して、裁判で、嘘の証言をして無期懲役刑に処せられます。ある意味冤罪(えんざい。彼女一人に重い罪が押し付けられた)の判決が出されました。

 ハンナの虚偽証言は、それで良かったのだろうか。彼女は文字の読み書きができなかったから、ユダヤ人の虐殺が行われていた現実を知らなかったようにみえる映像です。別の選択肢の道があったけれど、だれも教えてくれなかった。

 服役囚であったハンナのその後の行動をみると、以前読んだ別の本や映画でのシーンを思い出します。長い間刑務所に入っていた服役囚が出所して体験したことです。『刑務所の外のほうが地獄だった』拘束されているとはいえ衣食住が保障されている刑務所暮らしです。刑務所の外に出れば収入源が見つかりません。
 
 市電の車掌をしていた女性が、ユダヤ人収容所の看守をしていたということにもびっくりしました。経験とか資格とか関係なかったようです。募集に応募して採用です。

 裁判は、法解釈の闘いで、事実の究明にはなっていませんでした。裁判はかけひきの場でしかありません。ハンナには、自分がした証言で自分がどうなるのかを考えるための知識がなかった。
 裁判制度の盲点があります。「正義の裁き」というものはなく、強い者が強い者のために判断を下すことを、「社会は法で動いている」と表現しています。

 しばらく考えたのは、なぜ、15歳のときにハンナに世話になったマイケル・バーグは、服役中のハンナに朗読テープを送り続けたのか。そして、なぜ、テープは送っても手紙は送らなかったのか。
 自分なりには、マイケル・バーグは自分自身の平和な日常生活を守るために一定のところで線引きをしていたのだろうかと思いました。マイケル・バーグには、離婚した妻と妻が引き取った娘がいて、娘とは現在交流があります。そして、ほかにも親族がいたことでしょう。

 マイケル・バーグは、21歳年上のハンナを愛していた。ハンナがマイケルの前から姿を消したからですが、その後、彼は結婚して、娘が生まれて、離婚して、娘は妻のほうへついていった。
 ハンナのことを思い続けながら結婚して別の女性と暮らしたから結婚生活に失敗した。マイケル・バーグにとっての理想の女性は、彼を「ぼうや」と呼んでくれた年上の女性ハンナだった。そういう恋愛感情もあると受け止めました。
 さらに深く考えると、最初は、愛というよりも、体優先のイレギュラーな恋愛から始まったから、その後、うまく愛を育めなかった(はぐくめなかった)ということもあります。
 対して、ハンナもマイケルに愛情を抱いていたと思いたい。自分の息子のよう年齢の異性ですが、恋愛に歳の差はないのでしょう。

 ハンナを演じた女優さんは、体当たりの熱演でした。マイケルに返事をするときに、声を出さずに、首をゆっくり振るだけで演じたシーンとか、マイケル・バーグを、「ぼうや」と呼ぶシーンが印象的でした。気丈な誇り高き女性像を演じていました。ゆえに自分が文字の読み書きができないということを知られたくなかったという自尊心があります。彼女は、自分の名前を書くこともできませんでした。

 あとは、ハンナが市電の仕事をしていたときにマイケルが市電の二両目に乗っていたことをものすごく怒ったのですが、意味がわかりませんでした。一両目にいたハンナが二両目にいたマイケルに「観察」されたことがいやだったのだろうかと思いました。

 ハンナに対して、文字の読み書きができない劣等感があるなら勉強すればいいのにと思っていたら、刑務所の中で勉強して、読み書きができるようになったので良かった。

 裁判中のハンナのひとことが良かった。ハンナが裁判官に向かって、「もし、あなただったらどうしましたか?」続けて、「(わたしの)仕事選びが間違っていたのでしょうか?」文字の読み書きができなくてもできる仕事がユダヤ人収容所の看守だった。その前にしていた市電の車掌のときは、上司に昇進を伝えられたけれど、昇進すると文字の読み書きが必要な事務をしなければならないので自ら退職の道を選んだ。

 ハンナにすべての責任を押し付けて、自分たちは助かろうとする元同僚女性看守たちの証言があります。ほかにも、裁く側にも、登場人物のひとりひとりみんなが、心の奥に「悪」をもっています。「悪」があぶりだされている映画です。

 刑務所の中にも図書館がありました。ほっとしました。
 あまり表面には出ませんが、半世紀ぐらい前は、日本でも文字の読み書きができない人はままいました。中学生の時に、駅やバスターミナルでとまどっているお年寄りがいたら、読み書きができない人かもしれないから声をかけてあげなさいと先生に教わりました。

 戦争の悲劇があります。「ユダヤ人収容所は、なにも生まれない場所」という収容されていた人の証言がありました。
 戦争のない地球を願っても無理とは思いたくない。  

2020年08月21日

ストレイト・ストーリー アメリカ映画DVD

ストレイト・ストーリー アメリカ映画DVD 2000年日本公開

 アメリカ合衆国の73歳おじいさんアルヴィン・ストレイトさんが、けんかして10年間会っていなかった兄が脳卒中になったので、時速8kmのトラクターを運転して560kmの道を5週間ぐらいかけて、兄に会いにいくロードストーリーです。
 
 1994年にあった実話に基づくとありますが、ふつう、身内が脳卒中と聞けば、すみやかに、飛行機なり、電車なり、車で会いに行きます。
 病気は最初から深刻なものではなかったし、旅の途中のエピソードは、脚本家による創作だろうと思いながら鑑賞しました。
 ストレイトじいさんは目が悪いから車の運転はできない。だから、最初は、芝刈り機で出発しますが、すぐに芝刈り機が壊れて、1966年製のトラクターを購入して再出発します。

 出川哲朗さんの充電バイクの旅みたい。
 高齢者の気持ちの持ちようのお話です。
 ストレイトさんの娘さんは知的障害があるようで、そのことも話題になっています。父親と娘の気持ちのさぐりあいがあります。社会福祉の映画でもあります。
 ストレイトさんは、第二次世界大戦にも参戦されていて、反戦の主張もこめられた映画です。
 
 のんびりとした流れと雰囲気の映画でした。
 距離は遠いとはいえ、田舎道の連続です。アイオワ州からウィスコンシン州までの道程だそうです。田園風景のなかにある直線道路をゆっくり進むトラクターの映像がいい。
 暴漢や盗賊に襲われそうな年寄りのひとり旅なのですが、出てくるのは善人ばかりです。ストレイトじいさんを迎えてくれる土地の人たちは皆さん親切です。映画の中とはいえ、あんなに親切なアメリカ合衆国の人たちが、現実社会では、黒人差別をすることが不思議に思えました。
 ストレイトじいさんいわく、第二次世界大戦で戦地に行ったことがあるので、野宿は怖くないそうです。

 自分は、戦地では、狙撃手だった。ドイツ軍兵士を何人も撃った。終戦間近のときは、兵士が不足したためか、少年兵の数が多かった。そして、だれにも言っていないが実は誤射して味方である優秀な能力をもつ仲間を撃ち殺してしまったことがあると告白があります。
 ストレイトじいさんは、重い罪を背負った気持ちを胸におさめて戦地から帰還しています。
 ストレイトじいさんと通りすがりの戦争体験者のじいさんが思い出酒をくみかわします。アル中になったことがある。深酒の原因は、戦争体験で受けた心の傷だと戦争体験者同士のふたりが話をします。戦勝国の兵士も戦争被害者です。
 
 ストレイトじいさんと妊娠中の家出女性との出会いはちょっとショッキングでした。
 家出中の若い女性は、自分が妊娠していることをこどもの父親に話していない。家族のだれにも話していないそうです。
 ストレイトじいさんが、父親の男にも自分の家族にも妊娠していることを話しなさい。みんなで、協力して子育てをしなさいとうながします。

 「道徳」の話を聴くような展開が続きますが、胸にじんときます。思いどおりにいかないのが人生。それでも生きる。

 ゆっくり、静かに進む映画です。

 よかったセリフとして、困っている人を見かけたときは、ストレイトじいさんも出会う人たちも、「なにか、手伝うことはないか」と救いの手をさしのべます。

 もうひとつよかったセリフとして、ストレイトじいさんがお世話になった家のご夫婦の家で、奥さんがご主人さんに、「あんたは優しい人だから、ママの反対を押し切って(あんたと)結婚したのよ」

 トラクターで、ミシシッピー川にかかる橋を渡るシーンが見せ場でした。

 ストレイトじいさんは、険悪な関係になっている兄と仲直りをしたい。

 ようやく会った弟と兄は、老齢のため、もうふたりともよろよろです。ふたりとも杖(つえ)をついて、体を支えています。
 ふたりの頭の上には、ふたりがこどもだったころと変わらず、満天の星空が広がっていました。いつだって、一生懸命生きてきた。そして、老いを迎えた。

(追記 2020年9月2日)
 上の記事を書いた翌々日の8月23日にこの映画の舞台にあるウィスコンシン州で、白人警官が黒人の背後から黒人めがけて拳銃で7発も発砲するという事件が起きました。記事で、黒人差別のことを少し書いたのですが、未来を予測するようなものになって、自分でも驚いています。やはり、映画は映画であって、現実のものではなく、加工された物語だと思って観たほうがいいのでしょう。ちょっとさみしい。  

2020年08月20日

(再読) 英語のリスニングは発音力で決まる! 宇田豊

(再読) 英語のリスニングは発音力で決まる! UDA式30音練習帳 宇田豊 ジャパン・タイムズ社

(1回目の本読みとして)
 英語の「発音」に重点をおいたこの本を読んで英語の練習をしたのはもうずいぶん前のことです。
 自宅のクローゼットの中から引っ張り出してきた本は、2004年初版の本で、2005年第5刷とあります。付属のCDが、どこを探しても見つからなくて、再度注文して手に入れました。
 手に入れた新しいほうの本は、2018年第29刷ですから息長く売れ続けています。2020年のいまはさらに伸びているようです。(その後、衣装ケースの中から昔のCDが見つかりました。同じ本がふた組になりましたが気にしません)

 わたくしごとですが、数年前に脳血管障害で脳に血がたまってしまい、脳の手術を二度体験したこともあって、今は旅行を控えていますが、体力が回復したらまた外国へ行ってみたいという希望をもっています。そのときを楽しみに英会話の練習を再び始めることにしました。
 旅先で、三十代、四十代のころのように、びゅんびゅん体を動かすことはできませんが、パターンを変えて、同じところでゆったりして時間を過ごしたい。

 これから新しいことを覚えるということではなく、昔覚えていてできたことを思い出す作業になります。いちおう英検は二級で、トーイックは650点ぐらいでした。たいしたことはない英会話能力ですが、いくらかでも取り戻したい。

 とりあえず、発音と聞き取りができるようになりたい。
 まず、CDをひととおり聴いてみました。古いCDプレーヤーは一部壊れていて、ラジオしか聴けませんでした。しかたなく、これまた古いVHSデッキに付いているDVDプレーヤーに入れたら音が出ました。これで練習しよう。
 CD全体をひととおり流して聴きました。90分間ぐらいでした。60分を過ぎて睡魔に襲われしばし熟睡してしまいましたが、CDが終わる前に目が覚めました。

 ネットで調べていたら、著者の方はすでにご病気でご逝去されたようです。ご遺族が意志を引き継いでおられます。ご冥福をお祈りいたします。熱量を注いでつくられたこの本で練習させていただきます。

(2回目以降の本読みとして)
 DVDのデッキでは、録音の頭出しをするための「トラック」を瞬時に出せないことに気づきました。
 よく考えたら、パソコンのDVDドライブでできました。ここ数年パソコンのDVDドライブを使っていなかったので忘れていました。

(その後)
 CDを数回繰り返し聴いてある程度は内容を思い出しました。

(さらに)
 まとめてみます。
 音について30音がある。22ページから24ページにかけて発音記号があります。まず、濁らない音と濁る音のセットがあります。次に、舌やくちびるの使い方、鼻の奥に響かせる音などの説明があります。そして、「r」の発声方法、いろいろな「ア」の発声方法となります。
 とりあえず、発音方法を思い出したので、今度は別の本で、構文(英文の決まった型)を学んでみます。そのときそのときに必要な単語をあてはめれば、会話ができます。単語がわからないときは、「あれ、これ、それ」の代名詞を入れれば通じることが多い。あとは、度胸です。観光の場合は、お金を払うほうの立場なので、相手は親切に対応してくれます。だから、安心して下手くそな英語をしゃべることができます。  

Posted by 熊太郎 at 07:26Comments(0)TrackBack(0)読書感想文