2025年01月13日
果てしなき渇き 深町秋生
果てしなき渇き(はてしなきかわき) 深町秋生(ふかまち・あきお) 宝島文庫
こちらの作品について、単行本の発行が、2005年(平成17年)です。
文庫本の発行が、2007年(平成19年)で、2022年(令和4年)現在、18刷です。
よく読まれている推理小説です。
映画化もされています。『渇き』スリラー、ミステリー、2013年(平成25年)118分
さて、小説はいきなり殺人事件シーンです。
コンビニで、店員(青年)とお客(黄色い髪をたばねた中年女性)、そして、もうひとりのお客(眼鏡をかけた少年)が無残に(むざんに)刺殺されています。
売上金8万円が盗まれた。防犯カメラの録画データは持ち去られた。
読み始めて、名前はまだわかりませんが、警備会社勤務の警備員男性が現場に到着します。どうも彼は元警察官のようです。機動隊、捜査一課、所轄の警察署に知り合いがいるらしい。
そして、警察車両がコンビニに押し寄せて来ました。
ファイブマーケット深作店 24時間営業のコンビニ店 国道16号に近い住宅地にある。
東大宮にある警備会社
舞台は、埼玉県です。区画整理中の新興住宅地です。
物語が流れ始めました。
藤島秋弘:埼玉県内国道16号沿いにある大手警備会社の社員。埼玉県東部地域の担当。警備会社の所長には気に入られている。元警察官で係長職だった。不祥事で依願退職した。妻の浮気相手の男をボコボコにした。身長180cm。神経科に通院して服薬している。自家用車はグレイのカローラ。7年前にマンションを買って、家族三人で暮らし始めた。当時娘は11歳小学5年生ぐらい。
加奈子:17歳。浦和にある高校に通う女子高生。藤島秋弘の娘。小さな顔、きゃしゃな体、大きな瞳、母親似。美しい少女。成績優秀で、都内の国立大学を目指している。私立中学に行きたいという夢をお金が無いからと言って、藤島秋弘がつぶした。その後妻が浮気をして、藤島秋弘がその浮気相手に暴力をふるって、ふたりは離婚した。娘の親権者は、元妻。娘は元妻と同居していたが突然行方がわからなくなった。家から姿を消した。娘の部屋に、覚せい剤とそれを使用する道具があった。娘がいなくなったとき、元妻は一晩中、男とホテルにいた。
桐子:藤島秋弘の元妻。実家はお金持ち。父親のコネで、不動産会社の事務員をしている。8階建てのマンション、4DKに娘と住んでいる。もともと家族3人で住んでいた。桐子の父親の援助で買った。103号室に住んでいる。
岩中:桐子の浮気相手。桐子が働いている不動産会社の役員。車はアウディ
浅井衛(あさい・まもる)巡査部長:大宮署の刑事課一係所属で、一年半前までは、藤島秋弘とコンビを組んでいた。
地取り:現場周辺の聞き込み捜査
敷鑑(しきかん):警察用語。犯人と被害者の関係を調査して犯人を発見する操作方法
恫喝(どうかつ):きびしくおどすこと。威圧すること。
憐憫(れんびん):あわれむこと。
なにかしら乱暴な内容の文章です。映画化を意識して書いてあるような文章に見えます。
藤島秋弘夫婦のいさかいのことが書いてあります。
藤島秋弘は、仕事人間です。警察の仕事にかかりっきりで、家のことは何もしません。ゆえに、妻や娘の日常生活のことを知りません。
ありがちなことです。
以前、番組『徹子の部屋』にゲストで呼ばれた太川陽介さんが、ひとり息子が就職して家を出て行ったら、夫婦ふたりになって、夫婦の会話がない状態になった。今までは、息子が家族の会話の中心にいてくれたというお話をされていました。
太川陽介さんも仕事人間です。昭和の時代の男はたいてい、男は仕事、女は家庭という意識が強い。太川さんも前期高齢者の年齢です。サラリーマンならもう定年退職して家にいる年齢です。年金生活者です。いらぬことですが、太川さんも仕事を減らして奥さんに気を使われたほうがいい。
歳をとっても仲がいい夫婦というのはいますが、お互いに気を使っているから仲がいいのです。奥さんのために、奥さんが喜びそうなことをしてあげたほうがいい。いっしょに旅行に行くとかではなくて、料理をするとか、お米をたくとか、食器を洗う、洗濯して洗濯物を干して、乾いた洗濯物を取り入れてたんすの引き出しにしまう、ふとんも干すし(ほすし)、掃除機かけもする。モップで床清掃、枝が伸びた庭木を切ってきれいにする。ゴミ出し(生ごみ、資源ごみ、粗大ごみ)、車を運転しての食材等の買い出し、町内会の仕事、日常生活を送っていると、やること、やらねばならないことはいくらでもあります。年齢的に病院通いをすることが多い。病気や病院のことを話したり、今どきだと、新型NISA(ニーサ)で貯蓄を増やすとかを話したり、話すことはいくらでもいろいろあります。
自分から体を動かして家のことをあれこれやれば、一日中会話がない夫婦なんぞにはなりません。朝から晩まで、ずーっとしゃべり続ける夫婦になります。こどもたちや孫たちの話題、親の介護をはじめ、お互いの親族のことや友人の話、話題はいくらでも出てきます。テレビ番組やラジオの人生相談、最近の世の中の動きに関すること、興味は尽きません。
前期高齢者の年齢になったら、終活も始めておいたほうがいい。終活は、けっこうめんどうで時間がかかります。まだいいと思っていても、いきなり、『あなたは癌です。余命はちびっとです』と言われてもおかしくない年齢です。
終活で、身の回りのいらない物は捨てて(本人にとっては大事なものでも、ほかの人にとってはゴミということもあります)、デジタルデータ(パスワードとかIDとか)や資産も含めて、自分が死んだあと妻子が困らないようにいろいろしたくをしておいたほうがいい。遺言も書いて、公証人役場に出しておけばいい。
話がだいぶずれてしまいました。本に戻ります。
警察職員、とくに優秀な警察職員は、職場では輝いていても、仕事を離れるとやっかいな性質、性癖をもった人に思えます。
『人を疑う』ことを仕事にしている人だからです。容疑者を疑うのは仕事だからわかりますが、家族を疑うようになったらコワイことになります。本に出てくる藤島秋弘さんは、現役刑事だった当時、妻の浮気を疑って、妻を尾行(びこう)するようになります。ストーカーみたいな尾行です。盗聴器まで仕掛けています。
仕事人間の男は、妻が浮気をしても、(家庭を顧みなかった(かえりみなかった))自分に原因があるとか、自分に非があるとかは思いません。全面的に妻が悪いと決めつけます。自分はやるべきことを(仕事を)一生懸命やっていたと自己肯定します。悪いのは妻だ。
光景描写がとても細かい文章です。観察するような文章です。
ガンコロ:覚せい剤の結晶
パケ:小袋(失踪した娘の部屋にあった。末端価格はかるく100万円を超える)
アルミのパイプ、ハイライト(タバコの銘柄だろうか)フィルターだけを取り出して、フィルターを注射器用の簡易ろか器として使用するそうです。
藤島秋弘は、娘に対して、父親の役割を果たしてこなかった。
藤島秋弘は、よくタバコを吸うのね。
タバコばっかり吸っています。
(つづく)
シーンが変わりました。
「三年前」とあります。
藤島秋弘以外の人物が語っています。
あとでわかりましたが、藤島秋弘の娘の友だちだった緒方誠一のことが書かれています。語っているのは、緒方誠一君を知っている人物です。彼の語りの部分の文章だけが活字の字体を変えてあります。ちょっと太そうな明朝体で、雰囲気は習字で書いたような字体です。
語り手は、まだ中学生3年生です。男子に思えます。この項目の始まりに、『3年前の出来事として』というように書いてあります。3年前の1から始まって、2,3と続いていくようです。物語は、そういうスタイルのお話になっているようです。
語り手は、学校でいじめられています。
いじめていたのが、『島津』と『A:大柄で長髪』と『B:柔道部員五厘(ごりん)刈り(2ミリ程度の丸坊主頭)』で、語り手と同じクラスです。クラスのほとんどが、緒方誠一にとって敵だそうです。ひどい。金まで要求されます。大人なら逮捕、刑罰適用です。強盗ですな。
松下恵美と長野知子:失踪した藤島加奈子と同じ予備校に通うふたりです。加奈子と交流はあるが、友だちではないと松下恵美が言う。上尾市から通う松下恵美は背が高いモデルタイプの女性で気が強い。
与野市から通う長野知子は、暗い感じだが、加奈子のことをよく知っているような雰囲気です。でも話してはくれない。(長野知子は薬物をやっているかもしれない。腕に形跡がありそうです)。
力いっぱい書いてある文章です。緊張感が高すぎて、読んでいて疲れてきました。
辻村:辻村神経内科クリニック医師。腹の出た40歳ぐらいの男性。加奈子の主治医だが、最後の診察は三か月前です。
藤島秋弘の娘加奈子の小学校からの友人として、
神永明美:小5のときの同級生。加奈子と一緒に登校していた。加奈子には二年前から会っていない。加奈子は人が変わった。神永の家は貧乏。父親の失業保険で食べている。神永明美は、スーパーでレジ打ちのアルバイトをしている。
加奈子と写真に写っていた人物として、
棟方泰博(むなかた・やすひろ):この男が殺人と加奈子の失踪に関係しているのではないかと読み手のわたしは思う。無表情な男。茶色い髪とほっそりした顔立ち。
遠藤那美:棟方も遠藤も不良。
なにかしら乱暴な筆致(ひっち)の書きようが続く文章です。
エチゾラム:不安や緊張をやわらげる薬。藤島秋弘が飲んでいる。父も娘も精神科クリニックが良いです。薬を飲むよりもおいしいごはんを食べたほうが、気分が良くなるのに。
娘が覚せい剤をやっているみたいなので、警察には届けられない元警察官の藤島秋弘です。
自分が不祥事(妻の浮気相手をボコボコにして、全治3か月の体にした)で警察を辞めさせられた(依願退職)こともあって、警察に相談することができません。
フォールディングナイフ:折り畳み式のナイフ
ローライダー:車高を低くした自動車
緒方誠一のニックネーム:運に見放された草食動物
なんだか、暗い話です。
『三年前 2』
中学野球部に入部した語り手男子です。(まだ、だれだかわかりません)
石橋:野球部のキャプテン。キャッチャー。4番打者
宮下:ピッチャー
手塚:レフト。生徒会長
ぼく(語り手):ライト、8番。
ぼくの祖父:九州嬉野(うれしの。佐賀県)に住んでいる。亡くなる。嬉野でお葬式がある。
ぼくは祖父の葬式で九州に行き部活を一週間休んだあたりから部活に足が向かなくなり野球部を、受験を口実に辞めます。
いじめが原因で緒方誠一が首つり自殺をして亡くなります。いじめのターゲットが、語り手である『ぼく』になります。
ブルーバード:なつかしい車種です。ニッサンの大衆車でした。そういえば、ニッサンはホンダとくっつくそうです。昔だったら考えられません。時代が変わりました。どこもかしこも統廃合で、日本の社会や産業は、しぼんでいきます。
野球部の練習には行かずに、栃木県の宇都宮とか、群馬県の前橋に遊びに行く語り手です。
部活の最中に水を飲んだことで責められる語り手です。(昔の話ですなあ)。自分が中学生のころを思い出しながら読んでいます。中学生の部活について、本に書いてあるほど部活へのこだわりはなかったように思います。中学では部活に熱心な生徒が多かったけれど、だからといって、強制的だった思い出はありません。いやならぶらぶらしていても文句は言われませんでした。部活は、やりたい人間がやるのです。
それから、本の内容では、いじめがきついのですが、自分が小中学生だったときは、いじめよりも教師による体罰がきつかった。暴力を振るう先生がたくさんいました。戦時中の軍国教育が尾を引いていました。今とは大違いです。先生にさからえば、びんたが飛んできて、正座させられることはしょっちゅうでした。親もどうぞやってくださいという態度でした。
半世紀前のこどもは、親にたたかれ、先生にたたかれ、兄弟姉妹にたたかれ、ひどいめにあっていました。そしてたくましく育ったのです。なにくそ負けてたまるかです。
死んだ緒方誠一と警官の娘であった藤島加奈子は仲良しだったそうです。
(つづく)
あやしい男が三人います。
アポカリプス:不良グループ。アポカリプスは、キリスト教で、『黙示(もくし。神の啓示、教え)』
東理恵(あずま・りえ):藤島加奈子の高校の担任教師。藤島加奈子の薬物使用を知っていた。
父と娘の関係の書き方が疑問です。
主人公の父親がものすごく娘の心配をするのですが、自然な愛情とは思えないのです。
仕事人間で、家庭や家族を顧みなかった(かえりみなかった。考えなかった。配慮しなかった。愛情のある対応をしなかった)人間が、書いてあるような深い愛情を娘にもつとは思えないのです。
生物学的に親子でも、日常から親子であることを意識して生活していないと、気持ちの交流は築けません。親子は親子であろうと日々努力していなければ親子にはなれないのです。
この物語の設定の場合は、仕事人間の父親は、母親にこう言って終わりです。『おまえのせいで、娘がおかしくなった』(オレは、あとは知らない。オレのせいじゃない)
繰り返しになりますが、これほど親子関係が希薄な男が、娘の心配をするだろうか。生物学的に親子でも日ごろから親子である努力をお互いにしていないと親子は親子になれません。
さらに、この主人公元刑事の男は、自分の思いどおりにならないと暴力を振るう男です。
DV男です。とんでもない奴です。
あきらめることができない男です。
ねちっこく、粘ることが、人間としてあるべき姿と勘違いしている男です。相手をいじめぬくことが、最高の喜びだと誤解している男です。当然、不幸になります。
今、読み手である自分は、126ページ付近にいます。これ以上読んでも得るものはないかも……
いつものことですが、旅をするように、本の中を旅しています。
『三年前 3』
読んでいて気分が悪くなるような内容の文章です。
いじめのようすが書いてあります。男子中学生たちが、ひよわな同級生をいじめぬきます。
「待て」「逃げんな」「捕まえろ」です。
わたしなら歯向かっていきます。やられたらやりかえすのが男の道と、今は亡き乱暴者の父にこどもの頃、教えられました。じっさいにやりかえしたことが何回かあります。だれも助けてくれないのです。自分でがんばるのです。大声上げて、こぶしを振り上げて向かっていくしかないのです。今、世界各地で起きている戦争と同じです。きれいごとを言ってもどうしようもないときもあるのです。それが現実です。暴力反対と正論を吐いて意地を張っていると、相手に攻め入られて、自分の陣地と家族と生活を相手に奪われてしまうのです。それが人間界の現実です。
作者は何を訴えたいのだろう。
他者に救いを求めたいのだろうか。
いじめは反対、保護が必要、そして、ならば復讐(ふくしゅう。仕返し)だーーなのか。
極端な書き方がしてある文章なので、趣旨がよくわかりません。
(つづく)
藤島加奈子には二面性があるようです。善人と悪人の二面性です。
父親は藤島加奈子を善人だと思いこんでいる。
藤島加奈子のまわりにいる人間は、藤島加奈子が悪人であることを知っている。
そんな感じです。
元警官の娘は、悪のグループでは、ボス的存在なのです。
父親である藤島秋弘は、のちに深く後悔するでしょう。仕事人間だったことで、家族や家庭が壊れたのです。
スピード:薬物。覚せい剤のこと。
警察官でもないのに、以前使っていた名刺1枚で、娘の行方を調べるために事情聴取をする藤島秋弘です。その行為は、すでに犯罪です。自分の身を守るための組織(警察)はバックになく、道具(拳銃)ももっていません。殺されちゃいます。
田村:集団暴行を受けていた少年
『三年前 4』(三年前というのは、中学三年生当時ということであろうと思いながら読んでいます。だから、現在は、高校三年生なのです)
瀬岡尚人(せおか・なおと):いじめで閉じ込められたが脱出した。この、『三年前』の部分を書いている人物ではなかろうか。
A:田村:いじめにあっていた男子のようです。(いじめにあっていた緒方誠一は自殺した)。田村は今、いじめる側にいる。
B:大場
C:瀬岡をいじめるために、針金を取り出した男。Cは以前、いじめにあったことがある。
棟方泰博:犯罪グループ、『アポカリプス(黙示録という意味)』のメンバー
岩間:ひとり語りをする男の1歳年下の男。野球部員180cm、長打力あり。
神永朱美(かみなが・あけみ):藤島加奈子の昔の友だち。小学生時代から中学にかけての友だち。
(つづく)
藤島加奈子は、アポカリプスに拉致(らち)されたのかとありますが、拉致はされていないのでしょう。むしろ、本事件を操る(あやつる)立場にいる。
エス:警察用語で、「情報屋」。スパイ
走狗(そうく):人の手先になって働く者。いやしい者
警察が張り込んでいたはずなのに、藤島秋弘は、犯罪グループに捕まって、ボコボコにされてしまいました。不可解です。その後、藤島秋弘が乗用車を運転して移動するのですが、それも含めて不可解です。運転できるような体の状態ではありません。
写真?(何の写真だろう。犯罪グループにとって都合の悪い写真です。見つかりません)
力作です。
『三年前 5』
神永朱美が、瀬岡に近づこうとしている。
(つづく)
エクスクラメーション・マーク:感嘆符で、『!』のこと。
石丸組:コングロマリット(多種類の事業を営む企業)。関東を中心とした広域指定暴力団。印旛会(いなばかい)の傘下団体(さんかだんたい)。飲食、風俗、ゲーム、金融、廃棄物処理など。シャブの元締め。
またひとり殺されました。
主人公の元刑事藤島秋弘は、このゆきづまった状況をどう打開するのだろう。
このヤマにおまわりが関わっている。(共犯者に警察関係者がいる)
打擲(ちょうちゃく):なぐる。たたく。
殺された小山順平は、愛用のカメラで、撮ってはいけない物を撮影した。そのことで命を奪われた。その写真は、藤島加奈子に託された。(なんだろう。撮ってはいけない物とは)
『三年前 6』
語り手の瀬岡(中学三年生男子)が、母親に友だちと花火大会に行くと偽って家を出る。不良のたまり場へ行く。リンチを受ける。(残酷な暴力)
遠藤那美:不良仲間のひとり。
アストロ:シボレー・アストロ。アメリカ車
イーグルス:アメリカ合衆国のロックバンド。
読んでいて思い浮かぶ作品は、1970年代自分が若い頃に読んだ、『限りなく透明に近いブルー 村上龍』、それから、2022年(令和4年)に読んだ、『テスカトリポカ 佐藤究(さとう・きわむ)』です。テスカトリポカは、『闇を支配する神』です。現在のメキシコ中部にあったアステカ文明が関係しています。内容の雰囲気が、こちらの小説と同種、同分類です。
棟方がいる。ボウガンを持っている。(弓矢のように矢を発射する装置)
薬物の類(たぐい)がある。
藤島加奈子の話が出る。
ドレッドヘアー:髪の毛がロープのような形状になっている。
あいまいな記述が続く270ページあたりです。
藤島加奈子というのは、どういう人間なのか。あいまいです。
頭の中でつくった世界がいっぱい書いてあります。
作者の意識は盛り上がっている。
熱狂と冷却があります。
黄色いジャケットと黒いパンツの女。
琥珀色(こはくいろ):くすんだ赤味の黄色。だいだい色
チョウ:ボスという意味だろうか。
炯眼(けいがん):ギラギラ光る目。するどい目
(つづく)
シーマ:日産自動車の高級乗用車
読みながら、『つくってある話』なんだなあと思う。
コルト:軍用自動拳銃
『三年前 7』
作者はこんなことを書いて楽しいのだろうか。(読み手である自分はついていけない)
出版社は、こういう作品を世に出して、してやったりと思うのだろうか。(してやったり:思いどおりにうまくやれた)
現実社会にもいるエロ政治家とか組織の上層部にいる人間を糾弾したかったのか。(英雄色を好む。(えいゆういろをこのむ)。男色(だんしょく)も好む)。某芸能事務所の不祥事のようでもある。(案外そこに、創作のヒントがあったのかもしれない)
(つづく)
小山順平は、殺されてもしかたがないほどのことをしたことを理解しました。彼は恨まれた(うらまれた)。
『三年前』という手記を書いているのは、『瀬岡』という人物だろうと思って書いていますが、じっさいそうなのかというと、自信がありません。
趙義哲(ちょう・下の名前の読みはちとわかりません):実業家。ビルのオーナー。パチンコ、ホテル(大宮センターホテル)、レストランなどの不動産をたくさんもつお金持ち。
藤島秋弘には記憶がないようだが、酔って、妻や娘に暴力を振るったことがあるらしい。それもかなりひどいことをした。(精神的な病気がありますな)
『三年前 8』
棟方泰博が、不良グループ『アポカリプス(黙示録)』がメンバーで狂暴。
藤島加奈子は、宇宙にあるブラックホールのような存在。人間として欠けた穴がある。穴が、まわりにいる人間を吸い込んでしまう(転落していく)。
(つづく)
344ページまで読み進めてきましたが、藤島加奈子の実像がいまだはっきりしません。
白いエルグランド:日産自動車のミニバン。こちらの作者さんの特徴として、車の車種を目印に使うということがあります。
ガキ好きの変態がいる:某芸能事務所みたいな話が出ます。単行本は、2005年の発行です。(平成17年)。先日読んだ、『書いてはいけない 日本経済墜落の真相 森永卓郎 三五館シンシャ(さんごかんしんしゃ)』にこう書いてありました。
2003年7月東京高等裁判所判決:加害者と事務所による名誉棄損で出版社を訴えた裁判の判決は、加害者による性被害を認めた。民事事件だった。
2004年2月、最高裁が上告を棄却。高裁の判決が確定した。明らかに刑事事件に該当する事件だった。
警察は動かなかった。マスコミは騒がなかった。
以降も性被害は続いた。(この作品のヒントになったのだろうか)
やばいことが写っている写真の回収をする話が出ます。コピーの話しも出ます。この作品ができたのは、まだ、SNS(ソーシャルネットワークシステム)は構築されていない、流通していない時代背景です。現在なら、いったんネットにあげた写真や映像の回収は不可能です。
デコスケ:警察官のこと。
人間の業(ごう。悪行(あくぎょう)。理性でコントロールできない心の働き、動き)を描くことが、この作品のテーマなのだろうか。
(つづく)
『三年前 9』
髪を梳く:かみをすく。櫛の歯で髪をとかす。すきばさみでカットするという意味もあります。もう量を減らす。ハサミの片方の歯がクシのような形をしている。
いじめていたのが、『島津』。
チョウというは、趙義哲のこと。
374ページまで読みました。
(つづく)
父藤島秋弘の気持ちと娘藤島加奈子の気持ちがかみ合っていない。
藤島加奈子の人物像に関する記述が薄い。
391ページ、どう話をまとめるのだろうか。あと100ページぐらいです。
『三年前 10』
手記ではない。第三者が観察する文章になっている。
錯覚があります。味方だと思っていた(藤島加奈子)が敵だった。
そういうことって、現実にもあります。
社会では受け入れられにくい作品です。
暴力でこと(課題)を解決しようとする主人公です。
(つづく)
リボルバーの男:回転式けん銃を持っている男。警察官
(つづく)
『三年前 11』
名ゼリフです。『ぼくは幽霊なんだ。もう生きているのか、死んでいるのか、自分でもわからない……』
(つづく)
茗荷谷(みょうがだに):東京都文京区
藤島加奈子が主催者であるホラー・恐怖物語です。
『加奈子の復讐は完成する……』
禁忌(きんき):禁止する。避ける。
『三年前 12』
う~む。
中学校でいじめを受けた人間が、仕返しをする話だろうか。いずれにしても復讐(ふくしゅう)ではある。暴力には、暴力で立ち向かう。
(つづく)
散弾銃で、先台をポンピングする:散弾銃のまんなかの木製部分(先台さきだい)を、後ろにスライドして弾薬を装填(そうてん)する。弾(たま)の発射が可能になる。
『……この国の男どもは変態ばかりになった(性的なこととして)……』(ニュースでは聞きますが、そういう人を見たことはありません)
沢渡組(さわたりぐみ):暴力団。殺人をシノギにしている。(収入を得るための活動)
『エピローグ(終わりの部分)』
剣呑(けんのん):危険や不安を感じているようす。
携帯電話をこどもに買うか買わないかが、ひとつの伏線になっていました。
親に携帯電話を買ってもらえないと、こどもは違法行為をしてでもお金を手に入れようとするのです。
(読み終わりました)
ふーっ。長かった。
『解説 深町秋生との出会いは衝撃的だった 池上冬樹(文芸評論家)』
加藤小判と赤城修史:深町秋生氏の別名
ジェイムズ・エルロイ:アメリカ合衆国の小説家。1948年(日本だと昭和23年)生まれ76歳。
エピゴーネン:有名な人をまねする創作活動
破滅型ノワール:犯罪映画のジャンル。1940年から1950年代後半(昭和15年~昭和34年ころ)
リーダービリティ:文章や文字が読みやすいこと。
2007年5月(平成19年)の日付で書かれている文章です。ちょっとわたしにはむずかしい解説でした。わからない言葉がたくさんありました。
こちらの作品について、単行本の発行が、2005年(平成17年)です。
文庫本の発行が、2007年(平成19年)で、2022年(令和4年)現在、18刷です。
よく読まれている推理小説です。
映画化もされています。『渇き』スリラー、ミステリー、2013年(平成25年)118分
さて、小説はいきなり殺人事件シーンです。
コンビニで、店員(青年)とお客(黄色い髪をたばねた中年女性)、そして、もうひとりのお客(眼鏡をかけた少年)が無残に(むざんに)刺殺されています。
売上金8万円が盗まれた。防犯カメラの録画データは持ち去られた。
読み始めて、名前はまだわかりませんが、警備会社勤務の警備員男性が現場に到着します。どうも彼は元警察官のようです。機動隊、捜査一課、所轄の警察署に知り合いがいるらしい。
そして、警察車両がコンビニに押し寄せて来ました。
ファイブマーケット深作店 24時間営業のコンビニ店 国道16号に近い住宅地にある。
東大宮にある警備会社
舞台は、埼玉県です。区画整理中の新興住宅地です。
物語が流れ始めました。
藤島秋弘:埼玉県内国道16号沿いにある大手警備会社の社員。埼玉県東部地域の担当。警備会社の所長には気に入られている。元警察官で係長職だった。不祥事で依願退職した。妻の浮気相手の男をボコボコにした。身長180cm。神経科に通院して服薬している。自家用車はグレイのカローラ。7年前にマンションを買って、家族三人で暮らし始めた。当時娘は11歳小学5年生ぐらい。
加奈子:17歳。浦和にある高校に通う女子高生。藤島秋弘の娘。小さな顔、きゃしゃな体、大きな瞳、母親似。美しい少女。成績優秀で、都内の国立大学を目指している。私立中学に行きたいという夢をお金が無いからと言って、藤島秋弘がつぶした。その後妻が浮気をして、藤島秋弘がその浮気相手に暴力をふるって、ふたりは離婚した。娘の親権者は、元妻。娘は元妻と同居していたが突然行方がわからなくなった。家から姿を消した。娘の部屋に、覚せい剤とそれを使用する道具があった。娘がいなくなったとき、元妻は一晩中、男とホテルにいた。
桐子:藤島秋弘の元妻。実家はお金持ち。父親のコネで、不動産会社の事務員をしている。8階建てのマンション、4DKに娘と住んでいる。もともと家族3人で住んでいた。桐子の父親の援助で買った。103号室に住んでいる。
岩中:桐子の浮気相手。桐子が働いている不動産会社の役員。車はアウディ
浅井衛(あさい・まもる)巡査部長:大宮署の刑事課一係所属で、一年半前までは、藤島秋弘とコンビを組んでいた。
地取り:現場周辺の聞き込み捜査
敷鑑(しきかん):警察用語。犯人と被害者の関係を調査して犯人を発見する操作方法
恫喝(どうかつ):きびしくおどすこと。威圧すること。
憐憫(れんびん):あわれむこと。
なにかしら乱暴な内容の文章です。映画化を意識して書いてあるような文章に見えます。
藤島秋弘夫婦のいさかいのことが書いてあります。
藤島秋弘は、仕事人間です。警察の仕事にかかりっきりで、家のことは何もしません。ゆえに、妻や娘の日常生活のことを知りません。
ありがちなことです。
以前、番組『徹子の部屋』にゲストで呼ばれた太川陽介さんが、ひとり息子が就職して家を出て行ったら、夫婦ふたりになって、夫婦の会話がない状態になった。今までは、息子が家族の会話の中心にいてくれたというお話をされていました。
太川陽介さんも仕事人間です。昭和の時代の男はたいてい、男は仕事、女は家庭という意識が強い。太川さんも前期高齢者の年齢です。サラリーマンならもう定年退職して家にいる年齢です。年金生活者です。いらぬことですが、太川さんも仕事を減らして奥さんに気を使われたほうがいい。
歳をとっても仲がいい夫婦というのはいますが、お互いに気を使っているから仲がいいのです。奥さんのために、奥さんが喜びそうなことをしてあげたほうがいい。いっしょに旅行に行くとかではなくて、料理をするとか、お米をたくとか、食器を洗う、洗濯して洗濯物を干して、乾いた洗濯物を取り入れてたんすの引き出しにしまう、ふとんも干すし(ほすし)、掃除機かけもする。モップで床清掃、枝が伸びた庭木を切ってきれいにする。ゴミ出し(生ごみ、資源ごみ、粗大ごみ)、車を運転しての食材等の買い出し、町内会の仕事、日常生活を送っていると、やること、やらねばならないことはいくらでもあります。年齢的に病院通いをすることが多い。病気や病院のことを話したり、今どきだと、新型NISA(ニーサ)で貯蓄を増やすとかを話したり、話すことはいくらでもいろいろあります。
自分から体を動かして家のことをあれこれやれば、一日中会話がない夫婦なんぞにはなりません。朝から晩まで、ずーっとしゃべり続ける夫婦になります。こどもたちや孫たちの話題、親の介護をはじめ、お互いの親族のことや友人の話、話題はいくらでも出てきます。テレビ番組やラジオの人生相談、最近の世の中の動きに関すること、興味は尽きません。
前期高齢者の年齢になったら、終活も始めておいたほうがいい。終活は、けっこうめんどうで時間がかかります。まだいいと思っていても、いきなり、『あなたは癌です。余命はちびっとです』と言われてもおかしくない年齢です。
終活で、身の回りのいらない物は捨てて(本人にとっては大事なものでも、ほかの人にとってはゴミということもあります)、デジタルデータ(パスワードとかIDとか)や資産も含めて、自分が死んだあと妻子が困らないようにいろいろしたくをしておいたほうがいい。遺言も書いて、公証人役場に出しておけばいい。
話がだいぶずれてしまいました。本に戻ります。
警察職員、とくに優秀な警察職員は、職場では輝いていても、仕事を離れるとやっかいな性質、性癖をもった人に思えます。
『人を疑う』ことを仕事にしている人だからです。容疑者を疑うのは仕事だからわかりますが、家族を疑うようになったらコワイことになります。本に出てくる藤島秋弘さんは、現役刑事だった当時、妻の浮気を疑って、妻を尾行(びこう)するようになります。ストーカーみたいな尾行です。盗聴器まで仕掛けています。
仕事人間の男は、妻が浮気をしても、(家庭を顧みなかった(かえりみなかった))自分に原因があるとか、自分に非があるとかは思いません。全面的に妻が悪いと決めつけます。自分はやるべきことを(仕事を)一生懸命やっていたと自己肯定します。悪いのは妻だ。
光景描写がとても細かい文章です。観察するような文章です。
ガンコロ:覚せい剤の結晶
パケ:小袋(失踪した娘の部屋にあった。末端価格はかるく100万円を超える)
アルミのパイプ、ハイライト(タバコの銘柄だろうか)フィルターだけを取り出して、フィルターを注射器用の簡易ろか器として使用するそうです。
藤島秋弘は、娘に対して、父親の役割を果たしてこなかった。
藤島秋弘は、よくタバコを吸うのね。
タバコばっかり吸っています。
(つづく)
シーンが変わりました。
「三年前」とあります。
藤島秋弘以外の人物が語っています。
あとでわかりましたが、藤島秋弘の娘の友だちだった緒方誠一のことが書かれています。語っているのは、緒方誠一君を知っている人物です。彼の語りの部分の文章だけが活字の字体を変えてあります。ちょっと太そうな明朝体で、雰囲気は習字で書いたような字体です。
語り手は、まだ中学生3年生です。男子に思えます。この項目の始まりに、『3年前の出来事として』というように書いてあります。3年前の1から始まって、2,3と続いていくようです。物語は、そういうスタイルのお話になっているようです。
語り手は、学校でいじめられています。
いじめていたのが、『島津』と『A:大柄で長髪』と『B:柔道部員五厘(ごりん)刈り(2ミリ程度の丸坊主頭)』で、語り手と同じクラスです。クラスのほとんどが、緒方誠一にとって敵だそうです。ひどい。金まで要求されます。大人なら逮捕、刑罰適用です。強盗ですな。
松下恵美と長野知子:失踪した藤島加奈子と同じ予備校に通うふたりです。加奈子と交流はあるが、友だちではないと松下恵美が言う。上尾市から通う松下恵美は背が高いモデルタイプの女性で気が強い。
与野市から通う長野知子は、暗い感じだが、加奈子のことをよく知っているような雰囲気です。でも話してはくれない。(長野知子は薬物をやっているかもしれない。腕に形跡がありそうです)。
力いっぱい書いてある文章です。緊張感が高すぎて、読んでいて疲れてきました。
辻村:辻村神経内科クリニック医師。腹の出た40歳ぐらいの男性。加奈子の主治医だが、最後の診察は三か月前です。
藤島秋弘の娘加奈子の小学校からの友人として、
神永明美:小5のときの同級生。加奈子と一緒に登校していた。加奈子には二年前から会っていない。加奈子は人が変わった。神永の家は貧乏。父親の失業保険で食べている。神永明美は、スーパーでレジ打ちのアルバイトをしている。
加奈子と写真に写っていた人物として、
棟方泰博(むなかた・やすひろ):この男が殺人と加奈子の失踪に関係しているのではないかと読み手のわたしは思う。無表情な男。茶色い髪とほっそりした顔立ち。
遠藤那美:棟方も遠藤も不良。
なにかしら乱暴な筆致(ひっち)の書きようが続く文章です。
エチゾラム:不安や緊張をやわらげる薬。藤島秋弘が飲んでいる。父も娘も精神科クリニックが良いです。薬を飲むよりもおいしいごはんを食べたほうが、気分が良くなるのに。
娘が覚せい剤をやっているみたいなので、警察には届けられない元警察官の藤島秋弘です。
自分が不祥事(妻の浮気相手をボコボコにして、全治3か月の体にした)で警察を辞めさせられた(依願退職)こともあって、警察に相談することができません。
フォールディングナイフ:折り畳み式のナイフ
ローライダー:車高を低くした自動車
緒方誠一のニックネーム:運に見放された草食動物
なんだか、暗い話です。
『三年前 2』
中学野球部に入部した語り手男子です。(まだ、だれだかわかりません)
石橋:野球部のキャプテン。キャッチャー。4番打者
宮下:ピッチャー
手塚:レフト。生徒会長
ぼく(語り手):ライト、8番。
ぼくの祖父:九州嬉野(うれしの。佐賀県)に住んでいる。亡くなる。嬉野でお葬式がある。
ぼくは祖父の葬式で九州に行き部活を一週間休んだあたりから部活に足が向かなくなり野球部を、受験を口実に辞めます。
いじめが原因で緒方誠一が首つり自殺をして亡くなります。いじめのターゲットが、語り手である『ぼく』になります。
ブルーバード:なつかしい車種です。ニッサンの大衆車でした。そういえば、ニッサンはホンダとくっつくそうです。昔だったら考えられません。時代が変わりました。どこもかしこも統廃合で、日本の社会や産業は、しぼんでいきます。
野球部の練習には行かずに、栃木県の宇都宮とか、群馬県の前橋に遊びに行く語り手です。
部活の最中に水を飲んだことで責められる語り手です。(昔の話ですなあ)。自分が中学生のころを思い出しながら読んでいます。中学生の部活について、本に書いてあるほど部活へのこだわりはなかったように思います。中学では部活に熱心な生徒が多かったけれど、だからといって、強制的だった思い出はありません。いやならぶらぶらしていても文句は言われませんでした。部活は、やりたい人間がやるのです。
それから、本の内容では、いじめがきついのですが、自分が小中学生だったときは、いじめよりも教師による体罰がきつかった。暴力を振るう先生がたくさんいました。戦時中の軍国教育が尾を引いていました。今とは大違いです。先生にさからえば、びんたが飛んできて、正座させられることはしょっちゅうでした。親もどうぞやってくださいという態度でした。
半世紀前のこどもは、親にたたかれ、先生にたたかれ、兄弟姉妹にたたかれ、ひどいめにあっていました。そしてたくましく育ったのです。なにくそ負けてたまるかです。
死んだ緒方誠一と警官の娘であった藤島加奈子は仲良しだったそうです。
(つづく)
あやしい男が三人います。
アポカリプス:不良グループ。アポカリプスは、キリスト教で、『黙示(もくし。神の啓示、教え)』
東理恵(あずま・りえ):藤島加奈子の高校の担任教師。藤島加奈子の薬物使用を知っていた。
父と娘の関係の書き方が疑問です。
主人公の父親がものすごく娘の心配をするのですが、自然な愛情とは思えないのです。
仕事人間で、家庭や家族を顧みなかった(かえりみなかった。考えなかった。配慮しなかった。愛情のある対応をしなかった)人間が、書いてあるような深い愛情を娘にもつとは思えないのです。
生物学的に親子でも、日常から親子であることを意識して生活していないと、気持ちの交流は築けません。親子は親子であろうと日々努力していなければ親子にはなれないのです。
この物語の設定の場合は、仕事人間の父親は、母親にこう言って終わりです。『おまえのせいで、娘がおかしくなった』(オレは、あとは知らない。オレのせいじゃない)
繰り返しになりますが、これほど親子関係が希薄な男が、娘の心配をするだろうか。生物学的に親子でも日ごろから親子である努力をお互いにしていないと親子は親子になれません。
さらに、この主人公元刑事の男は、自分の思いどおりにならないと暴力を振るう男です。
DV男です。とんでもない奴です。
あきらめることができない男です。
ねちっこく、粘ることが、人間としてあるべき姿と勘違いしている男です。相手をいじめぬくことが、最高の喜びだと誤解している男です。当然、不幸になります。
今、読み手である自分は、126ページ付近にいます。これ以上読んでも得るものはないかも……
いつものことですが、旅をするように、本の中を旅しています。
『三年前 3』
読んでいて気分が悪くなるような内容の文章です。
いじめのようすが書いてあります。男子中学生たちが、ひよわな同級生をいじめぬきます。
「待て」「逃げんな」「捕まえろ」です。
わたしなら歯向かっていきます。やられたらやりかえすのが男の道と、今は亡き乱暴者の父にこどもの頃、教えられました。じっさいにやりかえしたことが何回かあります。だれも助けてくれないのです。自分でがんばるのです。大声上げて、こぶしを振り上げて向かっていくしかないのです。今、世界各地で起きている戦争と同じです。きれいごとを言ってもどうしようもないときもあるのです。それが現実です。暴力反対と正論を吐いて意地を張っていると、相手に攻め入られて、自分の陣地と家族と生活を相手に奪われてしまうのです。それが人間界の現実です。
作者は何を訴えたいのだろう。
他者に救いを求めたいのだろうか。
いじめは反対、保護が必要、そして、ならば復讐(ふくしゅう。仕返し)だーーなのか。
極端な書き方がしてある文章なので、趣旨がよくわかりません。
(つづく)
藤島加奈子には二面性があるようです。善人と悪人の二面性です。
父親は藤島加奈子を善人だと思いこんでいる。
藤島加奈子のまわりにいる人間は、藤島加奈子が悪人であることを知っている。
そんな感じです。
元警官の娘は、悪のグループでは、ボス的存在なのです。
父親である藤島秋弘は、のちに深く後悔するでしょう。仕事人間だったことで、家族や家庭が壊れたのです。
スピード:薬物。覚せい剤のこと。
警察官でもないのに、以前使っていた名刺1枚で、娘の行方を調べるために事情聴取をする藤島秋弘です。その行為は、すでに犯罪です。自分の身を守るための組織(警察)はバックになく、道具(拳銃)ももっていません。殺されちゃいます。
田村:集団暴行を受けていた少年
『三年前 4』(三年前というのは、中学三年生当時ということであろうと思いながら読んでいます。だから、現在は、高校三年生なのです)
瀬岡尚人(せおか・なおと):いじめで閉じ込められたが脱出した。この、『三年前』の部分を書いている人物ではなかろうか。
A:田村:いじめにあっていた男子のようです。(いじめにあっていた緒方誠一は自殺した)。田村は今、いじめる側にいる。
B:大場
C:瀬岡をいじめるために、針金を取り出した男。Cは以前、いじめにあったことがある。
棟方泰博:犯罪グループ、『アポカリプス(黙示録という意味)』のメンバー
岩間:ひとり語りをする男の1歳年下の男。野球部員180cm、長打力あり。
神永朱美(かみなが・あけみ):藤島加奈子の昔の友だち。小学生時代から中学にかけての友だち。
(つづく)
藤島加奈子は、アポカリプスに拉致(らち)されたのかとありますが、拉致はされていないのでしょう。むしろ、本事件を操る(あやつる)立場にいる。
エス:警察用語で、「情報屋」。スパイ
走狗(そうく):人の手先になって働く者。いやしい者
警察が張り込んでいたはずなのに、藤島秋弘は、犯罪グループに捕まって、ボコボコにされてしまいました。不可解です。その後、藤島秋弘が乗用車を運転して移動するのですが、それも含めて不可解です。運転できるような体の状態ではありません。
写真?(何の写真だろう。犯罪グループにとって都合の悪い写真です。見つかりません)
力作です。
『三年前 5』
神永朱美が、瀬岡に近づこうとしている。
(つづく)
エクスクラメーション・マーク:感嘆符で、『!』のこと。
石丸組:コングロマリット(多種類の事業を営む企業)。関東を中心とした広域指定暴力団。印旛会(いなばかい)の傘下団体(さんかだんたい)。飲食、風俗、ゲーム、金融、廃棄物処理など。シャブの元締め。
またひとり殺されました。
主人公の元刑事藤島秋弘は、このゆきづまった状況をどう打開するのだろう。
このヤマにおまわりが関わっている。(共犯者に警察関係者がいる)
打擲(ちょうちゃく):なぐる。たたく。
殺された小山順平は、愛用のカメラで、撮ってはいけない物を撮影した。そのことで命を奪われた。その写真は、藤島加奈子に託された。(なんだろう。撮ってはいけない物とは)
『三年前 6』
語り手の瀬岡(中学三年生男子)が、母親に友だちと花火大会に行くと偽って家を出る。不良のたまり場へ行く。リンチを受ける。(残酷な暴力)
遠藤那美:不良仲間のひとり。
アストロ:シボレー・アストロ。アメリカ車
イーグルス:アメリカ合衆国のロックバンド。
読んでいて思い浮かぶ作品は、1970年代自分が若い頃に読んだ、『限りなく透明に近いブルー 村上龍』、それから、2022年(令和4年)に読んだ、『テスカトリポカ 佐藤究(さとう・きわむ)』です。テスカトリポカは、『闇を支配する神』です。現在のメキシコ中部にあったアステカ文明が関係しています。内容の雰囲気が、こちらの小説と同種、同分類です。
棟方がいる。ボウガンを持っている。(弓矢のように矢を発射する装置)
薬物の類(たぐい)がある。
藤島加奈子の話が出る。
ドレッドヘアー:髪の毛がロープのような形状になっている。
あいまいな記述が続く270ページあたりです。
藤島加奈子というのは、どういう人間なのか。あいまいです。
頭の中でつくった世界がいっぱい書いてあります。
作者の意識は盛り上がっている。
熱狂と冷却があります。
黄色いジャケットと黒いパンツの女。
琥珀色(こはくいろ):くすんだ赤味の黄色。だいだい色
チョウ:ボスという意味だろうか。
炯眼(けいがん):ギラギラ光る目。するどい目
(つづく)
シーマ:日産自動車の高級乗用車
読みながら、『つくってある話』なんだなあと思う。
コルト:軍用自動拳銃
『三年前 7』
作者はこんなことを書いて楽しいのだろうか。(読み手である自分はついていけない)
出版社は、こういう作品を世に出して、してやったりと思うのだろうか。(してやったり:思いどおりにうまくやれた)
現実社会にもいるエロ政治家とか組織の上層部にいる人間を糾弾したかったのか。(英雄色を好む。(えいゆういろをこのむ)。男色(だんしょく)も好む)。某芸能事務所の不祥事のようでもある。(案外そこに、創作のヒントがあったのかもしれない)
(つづく)
小山順平は、殺されてもしかたがないほどのことをしたことを理解しました。彼は恨まれた(うらまれた)。
『三年前』という手記を書いているのは、『瀬岡』という人物だろうと思って書いていますが、じっさいそうなのかというと、自信がありません。
趙義哲(ちょう・下の名前の読みはちとわかりません):実業家。ビルのオーナー。パチンコ、ホテル(大宮センターホテル)、レストランなどの不動産をたくさんもつお金持ち。
藤島秋弘には記憶がないようだが、酔って、妻や娘に暴力を振るったことがあるらしい。それもかなりひどいことをした。(精神的な病気がありますな)
『三年前 8』
棟方泰博が、不良グループ『アポカリプス(黙示録)』がメンバーで狂暴。
藤島加奈子は、宇宙にあるブラックホールのような存在。人間として欠けた穴がある。穴が、まわりにいる人間を吸い込んでしまう(転落していく)。
(つづく)
344ページまで読み進めてきましたが、藤島加奈子の実像がいまだはっきりしません。
白いエルグランド:日産自動車のミニバン。こちらの作者さんの特徴として、車の車種を目印に使うということがあります。
ガキ好きの変態がいる:某芸能事務所みたいな話が出ます。単行本は、2005年の発行です。(平成17年)。先日読んだ、『書いてはいけない 日本経済墜落の真相 森永卓郎 三五館シンシャ(さんごかんしんしゃ)』にこう書いてありました。
2003年7月東京高等裁判所判決:加害者と事務所による名誉棄損で出版社を訴えた裁判の判決は、加害者による性被害を認めた。民事事件だった。
2004年2月、最高裁が上告を棄却。高裁の判決が確定した。明らかに刑事事件に該当する事件だった。
警察は動かなかった。マスコミは騒がなかった。
以降も性被害は続いた。(この作品のヒントになったのだろうか)
やばいことが写っている写真の回収をする話が出ます。コピーの話しも出ます。この作品ができたのは、まだ、SNS(ソーシャルネットワークシステム)は構築されていない、流通していない時代背景です。現在なら、いったんネットにあげた写真や映像の回収は不可能です。
デコスケ:警察官のこと。
人間の業(ごう。悪行(あくぎょう)。理性でコントロールできない心の働き、動き)を描くことが、この作品のテーマなのだろうか。
(つづく)
『三年前 9』
髪を梳く:かみをすく。櫛の歯で髪をとかす。すきばさみでカットするという意味もあります。もう量を減らす。ハサミの片方の歯がクシのような形をしている。
いじめていたのが、『島津』。
チョウというは、趙義哲のこと。
374ページまで読みました。
(つづく)
父藤島秋弘の気持ちと娘藤島加奈子の気持ちがかみ合っていない。
藤島加奈子の人物像に関する記述が薄い。
391ページ、どう話をまとめるのだろうか。あと100ページぐらいです。
『三年前 10』
手記ではない。第三者が観察する文章になっている。
錯覚があります。味方だと思っていた(藤島加奈子)が敵だった。
そういうことって、現実にもあります。
社会では受け入れられにくい作品です。
暴力でこと(課題)を解決しようとする主人公です。
(つづく)
リボルバーの男:回転式けん銃を持っている男。警察官
(つづく)
『三年前 11』
名ゼリフです。『ぼくは幽霊なんだ。もう生きているのか、死んでいるのか、自分でもわからない……』
(つづく)
茗荷谷(みょうがだに):東京都文京区
藤島加奈子が主催者であるホラー・恐怖物語です。
『加奈子の復讐は完成する……』
禁忌(きんき):禁止する。避ける。
『三年前 12』
う~む。
中学校でいじめを受けた人間が、仕返しをする話だろうか。いずれにしても復讐(ふくしゅう)ではある。暴力には、暴力で立ち向かう。
(つづく)
散弾銃で、先台をポンピングする:散弾銃のまんなかの木製部分(先台さきだい)を、後ろにスライドして弾薬を装填(そうてん)する。弾(たま)の発射が可能になる。
『……この国の男どもは変態ばかりになった(性的なこととして)……』(ニュースでは聞きますが、そういう人を見たことはありません)
沢渡組(さわたりぐみ):暴力団。殺人をシノギにしている。(収入を得るための活動)
『エピローグ(終わりの部分)』
剣呑(けんのん):危険や不安を感じているようす。
携帯電話をこどもに買うか買わないかが、ひとつの伏線になっていました。
親に携帯電話を買ってもらえないと、こどもは違法行為をしてでもお金を手に入れようとするのです。
(読み終わりました)
ふーっ。長かった。
『解説 深町秋生との出会いは衝撃的だった 池上冬樹(文芸評論家)』
加藤小判と赤城修史:深町秋生氏の別名
ジェイムズ・エルロイ:アメリカ合衆国の小説家。1948年(日本だと昭和23年)生まれ76歳。
エピゴーネン:有名な人をまねする創作活動
破滅型ノワール:犯罪映画のジャンル。1940年から1950年代後半(昭和15年~昭和34年ころ)
リーダービリティ:文章や文字が読みやすいこと。
2007年5月(平成19年)の日付で書かれている文章です。ちょっとわたしにはむずかしい解説でした。わからない言葉がたくさんありました。
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