2020年08月31日

ムーンライズ・キングダム アメリカ映画DVD

ムーンライズ・キングダム アメリカ映画DVD 2012年公開

 タイトルの意味は、「月が昇る王国」だろうか。幻の国です。
 観始めてしばらくは、なんのことかわかりませんでした。意味がつかめないという時間帯が続きますが、そのうち、味わい深い心情の広がりがあります。
 コメディにしては笑えるシーンは少ない。ファンタジーの空想作品です。暗くさみしい部分もあります。心に優しい映画でした。

 12歳、日本でいえば、小学六年生同士の少年少女が、こどもから思春期へ向かうときの変化を幻想的に映像化してあります。

 孤児の男児であるサム・シャカスキーが、里親から見放されます。情緒不安定で周囲の人間に迷惑をかけるからです。
 いまは、ボーイスカウトみたいな訓練施設に入隊していますが、彼は自主的にそこからの退所を図ります。関係者に捕まったら、福祉局を通じて、少年収容所行きです。それでも、サムは訓練施設を脱走したい。
 いっぽうの女子スージー・ビショップは、両親と弟たち三人と暮らしていますが、両親の関係は良好とはいえず、母親は浮気をしています。スージーは、家出をしたい。

 サムとスージのふたりで逃亡して暮らし始めた場所が、ムーンライズ・キングダムです。
 この映画は、小学生カップルのかけおち物語です。
 サムがつくったコガネム虫のアクセサリーをスージにプレゼントしたシーンには笑いました。

サム「将来どうなるかはわからない」
サム「ぼくは、おねしょをするかもしれない。言いたくないけれど、君を怒らせないために言っておく」
 君を愛している。私も愛しているとなるのですが、でもまだ、年齢的に愛し方は知らない。よくわからないけれどキスをしてみる。それでなにかを感じることができたわけでもない。そのあたりがおもしろい。小学生が思春期に向かう時期のほんのりほんわかした雰囲気のある物語です。

 おとなたちは、異端児のサムに冷たいわけではなく、彼が少年収容所に入れられたら、脳に電気ショックを与えられるというデマを苦にして、なんとかして、サムを探し出して保護したいと願っています。
 サムのまわりにいた少年たちもサムがかわいそうだと、サムを責める声はなく、話はだんだんややこしくなっていきます。

 1965年9月5日に、ふたりの小学生はみんなの前で結婚式を挙げました。
 こどもたちが、羊の群れのようでした。

 サムのセリフです。「僕と結婚してくれてありがとう。君と出会えてよかった。スージー」

 不完全で、やっかい者とされるすべての人間同士が、お互いを認め合って共存をめざす映画でした。