2020年08月02日

おこだでませんように くすのきしげのり・作 石井聖岳・絵

おこだでませんように くすのきしげのり・作 石井聖岳(いしいきよたか)・絵 小学館

 タイトルは、「おこられませんように」という意味で、登場人物となる小学一年生のやんちゃ坊主くんが、たなばたのたんざくに書いた願いごとです。
 「おこだでませんように」の音の響きがユーモラスで、読み手の興味をひきつけます。

 思い出してみると、昭和40年代ぐらいまでのこどもというのは、怒られるどころか、たたかれていました。家では、親にたたかれ、そして、きょうだいにたたかれ、学校では先生にたたかれ、さらに、けんかをするとクラスメートにもたたかれていました。そして、たたかれたらたたきかえすこともありました。体罰が容認されていた時代でした。けして、それが良かったとは思いません。まあ、親や祖父母の世代も子だくさんの社会のなかで、そのように鍛えられたのでしょう。いまは、こどもの数がへりました。まけてたまるかという人間力も弱くなっているかもしれません。

 本の表紙で、主人公の「ぼく」の顔がこわい。目が大きくて、まゆ毛がつりあがって、どうみても怒っています。口は真一文字です。相手にけんかを売っています。

 読んでいると、おこられるのは、なぜなのかがわかります。
 「ぼく」は、イライラしています。なぜかというと、おかあさんをはじめとした、まわりの人たちからの愛情に飢えているからです。人は、人からやさしくされないと、人にやさしい人間になるのはむずかしい。

 小学生低学年にみえる「ぼく」は、まだ幼稚園生ぐらいに見えるいもうとにあたりちらします。
 いもうともかわいそうですが、じつは、「ぼく」もかわいそうなのです。
 これは、こどもが読む絵本ではなく、親が読む絵本です。

 相手がいやがることをするから、おとなから怒られます。
 いわゆる迷惑行為があります。
 らんぼうでもあります。
 かまってほしいから、あいてがいやがることをするということはあります。
 
 「ぼく」へのアドバイスです。
 ほめる。おだてる。ごまをする。じぶんがいい思いをするために種をまきましょう。
 なのに、おかあさんには、「きれいだね」といえばいいのに、「おこると、しわが、ふえるで」と言ってしまいます。
 だから、「ぼく」は、おこられて、孤独になっていきます。

 たなばたのたんざくにかいたおねがいごとのひらがなもじは、いちぶが、かがみ文字になっています。机の上に置いてあるけしごむも、ちぎれたような、けしごむです。ものは、ていねいにあつかいましょう。
 それから、言いたいことがあったら、ちゃんと声に出して、相手に言いましょう。言わないと伝わりません。

 さいごは、心があったかくなるいいお話でした。

 思い出してみると、こどものころ、親にほめられたことがありません。
 あのころの日本には、こどもは、ほめるものではないというような下向きの風潮がありました。  

Posted by 熊太郎 at 06:25Comments(0)TrackBack(0)読書感想文