2020年08月04日

ユダヤ人を救った動物園 英米合作映画DVD

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命 英米合作映画DVD 2017年公開

 1939年夏です。場所は、ポーランドにあるワルシャワ動物園です。1939年9月ドイツ軍ポーランド侵攻です。1945年5月、ドイツの無条件降伏まで戦争が続きます。

 外国の動物園に行って見学をしているようないい気分で映像が始まりました。
 上野動物園みたい。

 次に、ギスギスした雰囲気のパーティ風景のシーンに移りました。なにかしらおかしい。この映画には、ついていけないかも。気取った感じがしました。また、つくりもののハプニングが起こるような予感がしました。
 ゾウの出産シーン、ドイツ軍が来るというシーンに続いていきます。
 1939年9月1日。空襲が始まりました。戦時下だと、人間の安全のために、動物園の動物は銃殺されるようです。その前に、価値のある希少動物は、ドイツ軍に奪われるように移送されます。

 動物園は武器庫になる予定でしたが、園長夫婦の機転で、ドイツ軍に肉を供給するための養豚場に転換されます。されど、ドイツ軍にばれないように、ひそかに、ドイツ軍に迫害されるユダヤ人を逃がすための一時的滞在地として使用されます。

 内容において、園長の奥さんアントニーナ・ジャビンスカと、ドイツ軍の動物学者ルーツ・ヘックとのあれこれが余計でした。
 ユダヤ人の人権保障問題からはずれたようなお話です。
 個人対個人のバトルになっていました。奥さんがあそこまでルーツ・ヘックにこびるシーンはいらなかった。いきすぎです。映画の尺(しゃく)をとる(時間で埋める)ためのつくり話ではないだろうか。
 それから、ドイツ軍兵士によるレイプとかルーツ・ヘックによる奥さんに対するエロ行為とかが描かれていたのですが、観たくもないシーンでした。こちらも、つくりばなしっぽい。

 はじめのうちは、ヒューマン(人間味のある)な真面目(まじめ)な映画だったのに残念です。せっかくロケ地の舞台や動物をそろえて、いい環境づくりができていたのに、がっかりしました。
 映画では、ヒトラーの配下にある動物学者の彼ルーツ・ヘックの存在をはずして、ナチスドイツという組織と闘ったポーランド人組織という構図のほうが、イメージがよかった。そして、人間からは、『自由』を奪い取ることはできないことを強調してほしかった。

 うさぎとこぶたちゃんが可愛かった。

 よかったセリフとして、
「大切な親友だからユダヤ人をかくまう」という奥さんの発言に、だんなさんが、「見つかれば殺される。(だから)覚悟を決めて、周到な準備をする」
 命のビザを発行した日本人外交官の杉浦千畝(すぎうら・ちうね)さんを思い出しました。
「(ユダヤ人強制収容区域のゲットーで)ここに安全はない。明日はどうなるかはわからない」「(ゲットーから動物園に脱出してきて)ここは、動物園なの。ここにいれば安全(地下室に隠れます)」「これから、夜行性の人間になる」
 以前、「マルカの長い旅」という本を読んだことがあります。ゲットーで、ひとりぼっちで逃げ回って暮らした7歳のユダヤ人少女マルカの話で、実話であり、悲惨でした。
 隠れ家として活用された動物園のおかげで、300人近いユダヤ人の命が助かったそうです。まずは、『生きていること』が大事です。