2025年01月10日

父と暮らせば 邦画 2005年

父と暮らせば 邦画 2005年(平成17年) 1時間38分 動画配信サービス

監督:黒木和雄
俳優:宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信

 先日観た映画が、『母と暮らせば 邦画 2015年(平成27年)』でした。
 その時に知ったのですが、こちらの『父と暮らせば』と関連がある。
 劇作家、小説家、放送作家であられた井上ひさしさんの作品で、『戦後命の三部作』にあたるそうです。
 広島:父と暮らせば 2005年邦画 1994年舞台
 長崎:母と暮らせば 2015年邦画 2018年(平成30年)舞台
 沖縄:木の上の軍隊 2013年(平成25年)舞台

 こまつ座という劇団が関係していることを知りました。
 こまつ座:1983年(昭和58年)結成。井上ひさし作品を上演する。
 井上ひさし:2010年(平成22年)75歳没
 たまたまですが、先月、大竹しのぶさんが、小説家の林芙美子さんを演じる、『太鼓たたいて笛吹いて』を名古屋駅前にある劇場へ観に行きました。(ウィンク愛知、愛知県産業労働センターホール)。演劇と映画がつながり、縁を感じました。いずれの作品も、『反戦』がテーマです。戦争反対です。

 こちらの映画は、むずかしい内容の映画でした。
 ふたり芝居で、長いセリフの会話が続きます。語りが、娘と父親の交互で長く続きます。
 劇を観ているようでもありました。
 途中で、眠ってしまいました。全体で90分ぐらいのうちのまんなか30分ぐらいが睡眠で、中抜けの鑑賞になってしまいました。(あとで、ちゃんと見直してみます。とりあえず、ここまでの感想です)

 死別した親子の四日間です。
 亡父福吉竹造(ふくよし・たけぞう)は、広島への原子爆弾の投下で命を落としました。
 娘の福吉美津江23歳は、同じく原子爆弾の投下を受けましたが、物陰にいて命は助かりました。
 死んだ父福吉竹蔵が、この世に戻ってきて、延々とふたりで会話を続けるのです。

 宮沢りえさんと原田芳雄さんの魅力を観る映画です。
 生きている娘と、亡き(なき)父の会話が続きます。
 家の中はとてもきれいです。ふたりが着ている洋服もきれいです。
 娘に好意をもっている木下さん(浅野忠信さん)は、たまに画面に出るだけです。広島原爆の資料を集めるために、図書館で働いている宮沢りえさんを訪ねます。
 
 被爆者の気持ちが語られます。
 原子爆弾投下の痛みが表現されている作品です。
 木下は、美津江が好きだけれど、美津江は拒みます。自分は、人を好きになってはいけない。原子爆弾で死んだ人たちのために自分は幸せになってはいけない。自分も原子爆弾で死んでおけば良かった。そんな理屈が語られます。(ちょっと自分には理解できない思考です)
 死ぬのが自然で、生きているのが不自然、生きているのが申し訳ないそうです。不思議な心理です。
 本人の希望として、できるだけ静かに生きる。(結婚は望まない)
 <ここらあたりで、眠ってしまいました。そして、目が覚めたあとのことです>

 金曜日と表示があります。(映画は、火曜日から始まりました)
 自問自答のような会話が続きます。
 戦後生きている人と死んでいる人との会話です。

 二十年ぐらい前の映画ですから、ふたりともお若い。(宮沢りえさんと原田芳雄さん)
 宮沢りえさんが、顔が半分ただれたお地蔵さんにこだわりをもちます。亡くなった友人と重ねておられるようです。

 『幸せになる資格がある人間』とは、どういう人間のことをいうのだろう。

 亡父が、孫が欲しいというような意思表示を娘にします。
 子孫へ歴史を伝えたいのだと受け取りました。自分の血を残したいということもあるでしょう。
 だから、恋愛をして、結婚して、子を産んでほしいと、娘に願っていることがわかります。

 ラストシーンは、原爆ドームの中でした。
 わたしは、原爆ドームを何度か見たことがあるので、リアルに感じました。
 命の物語でした。

(翌日、もう一度観てみました)
 
 眠ってしまっていた部分を観なおしました。
 『水曜日』
 広島県で、7つの川が1本にまとまって(太田川)、広島市内を流れている。
 おとぎ話と原爆投下をつなげる話をつくると原田芳雄さんが言う。みんなが知っている昔話に、原爆の話を取り込んでみんなに話す。
 桃太郎のような話だったり、一寸法師のような話だったりする。
 宮沢りえさんが、話を改変してはいけないと主張する。話をいじっちゃいかん。
 宮沢りえさんは、『昔話研究会』という研究会を友だちとつくっていた。
 戦争のさいちゅうに、好ましくない活動だと軍から指摘を受けて解散したそうです。

 原爆の1万2000度の熱線で変形した物が出てきます。
 瓦(かわら)、ガラス、薬瓶(くすりびん)、ビール瓶(びん)、楽器のホルンのような形になった一升瓶(いっしょうびん)
 広島弁の語りが続きます。
 原爆は、広島市上空580mで爆発した。
 太陽がふたつあるように見えた。まぶしかった。ほんの1秒か2秒だった。(本当の太陽と爆発でできた太陽のような強くてまぶしい光の玉だろうと想像しました)
 風速350mの風が吹いた。
 原田芳雄さんの熱演です。ひとり芝居で、体と声を使って、原子爆弾の爆発を再現します。
 こっぱみじんです。
 先日観た原田芳雄さんの映画、『大鹿村騒動記』を思い出します。原田芳雄さんの動きは、歌舞伎のようです。
 
 『木曜日』
 雨降りです。
 天井から雨漏りをしています。
 原爆病の話が出ます。
 被ばくした本人だけではなく、被爆した女性のこどもも原爆病になるという話が出ます。
 
 おふたりとも、長いセリフをよく暗記できたものだと感嘆します。かんたん:おどろく。感心する。

 『とっつあん、Bが何か落としよったか(B29爆撃機が広島市上空で、原子爆弾を落とした)』
 青白い世界です。
 父は、正面から光を浴びて亡くなった。
 娘は、石灯籠の陰にいて命が助かった。(女友だちから来た手紙をたまたま落としてしゃがんだことが幸いした)。娘に手紙をくれた女ともだちは、原爆で亡くなった。
 『命の恩人の友だち(あきさん)の分まで、幸せにならないけん』と父は言うけれど、娘は、それはできないと主張する。
 戦争体験世代の人たちがつくった世界です。野坂昭如さんの(のさかあきゆきさん)、『火垂るの墓(ほたるのはか』を思い出します。
 被ばくして死にかけている人たちのむごい体の状態の話が続きます。
 手紙をくれた女友だち(亡くなった)の母親が宮沢りえさんに言ったそうです。
 『なして、あんたが生きとる?』
 『うちの子やのうて、あんたが生きとるんはなんでですか?(自分の悲しみを娘の友にぶつける)』
 その後、その母親も亡くなります。
 <重い話です>
 『うちが生き残ったのが、申し訳ない』

 本を一冊思い出しました。
 『ヒロシマ消えたかぞく 指田和(さしだ・かず) 写真・鈴木六郎 ポプラ社』
 かなりせつない。写真絵本です。
 おとうさんは、鈴木六郎さんで、床屋さんです。おかあさんが、フジエさん。英昭おにいちゃんがいて、本のなかにいる『わたし』が、公子(きみこ)さん、いっしょに写真に写っているのが、和子ちゃんです。その全員が、原子爆弾で亡くなります。つらいです。原爆のバカヤローです。
 ペットの猫のクロと犬のニイも写真の中にはいます。でもきっと、原子爆弾が爆発したあと、二匹とも、この世には、もういなかったと思います。
 からだが少し大きくなったこどもの公子(きみこ)さんが、猫のクロを背中におんぶしています。公子(きみこ)さんは、のんびりした雰囲気をただよわせながら、笑顔で写真に写っています。
 扇風機の前で、前足を出して足を振っている猫のクロはまるで、人間みたいな動きをしています。

 宮沢りえさんが演じる福吉美津江23歳は、純粋な人です。

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