2020年01月31日

幸福な食卓 瀬尾まい

幸福な食卓 瀬尾まいこ(せお・まいこ) 講談社文庫

 有名な作品のようですが、読むのは初めてです。
 4本の短編です。互いに関連があるのかないのかはまだわかりません。読み始めてみます。

「幸福な朝食」 2003年初出
 中原家の家族の崩壊話です。父親である中学社会科教師の中原弘さん43才ぐらいが、朝食時に、「父親をやめる」と宣言します。妻は5年前に家を出ています。離婚はしていないようです。卒婚みたいなものです。夫婦の交流はあります。長男が直ちゃんで20才、高校を出て働いています。物語の進行役が長女の佐和子さんで、中学2年生です。彼女の中学1年の終わりごろから2年生の6月梅雨時までのことが書いてあります。
 父親をやめるというフレーズに記憶があります。たしか、父親を辞めて母親になるという設定でした。よしもとばななさんの作品だったと思います。たしか、「キッチン」でした。この作品の読み始めにそのことを思い出しました。
 家族がそろう(今となっては父親、長男、長女の3人)朝食時に、重要な話を出す習慣があります。
 父親は、中学教師を辞める。「父親」も辞める。(父親の役割を果たせないからという意味にとれました)辞めて、浪人生になって、大学の薬学部を目指すそうです。
 こどもふたりは、容認します。なぜ容認するかというと、5年前梅雨の時期に父親が首や手首を切って自殺未遂を図ったことがあるからです。それが原因で母親は家を出ていきました。父親の弘さんは、人間として、無理をしていた。なにかに耐えきれなかった。そして、弘さん自殺企図時にそこにいた妻と長男二人の行動が不可解、不思議でした。119番通報したのは、事後に現場に着いた小学3年生ぐらいだった佐和子さんです。
 落ち着いて、淡々と書いてありますが、内容は風変りであり、深刻でもあります。「人は……」を問う純文学の世界です。
 人間の淋しさが伝わってきます。最後はひとりという言葉も浮かびます。されど、それがすべてではないと思いたい。
 シンプルに生きる。農業とか水産業の話が出ます。サバをどうするかとか。卵を産むニワトリのクリスティーヌとか。ニワトリは人間のような扱いです。
 中2の佐和子さんが、せっかく友だちになれた転校生の坂戸君は夜逃げ同然に引越していきます。彼の家もまた家族崩壊した母子家庭だそうです。
 気に入った表現の趣旨などとして、「攻撃的な食べっぷり」、「お互いの曲がった感情」、「父さんといると苦しい」、「俺の家庭は崩壊している」、「言い古されたあいさつは、ちっとも心に響くものがなかった」、「もう父さんじゃないから許可はいらないはず」、「気がつかないところで、中原(佐和子)は守られている」、「父さんはもう父さんには戻らないの?」
 弘さん、直ちゃん、佐和子さん、三人はみんな同じ遺伝子をもっている。

「バイブル」 2003年初出
 バイブル:聖書。生き方の参考になるもの。
 中学3年生中原佐和子さんの恋の一歩手前、異性との親友関係のようなもののお話です。相手の大浦勉学君は、どうもお金持ちらしい。でも、勉強は、平凡で、佐和子さんより塾での順位は下らしい。そのへんが、微妙な位置関係の付き合いになっていきます。女子中学生の心理です。そして、大浦勉学君はいいやつです。
 中原直さんには、新しい恋人ができたように見えますが、それは、ほんとうの恋ではないという実母の判断と指摘があります。
 この小説の読者対象者は、女子中学生なのだろうか。
 気に入った表現の要旨として、「町から田舎へ行く道は、人気(ひとけ)がなくなる分、星も月もくっきりしていく」、「あんな高校」、「良かったのは成績だけだった」、「(母の言葉)父さんを愛することが最優先だった」
 苦労の体験談を語りあって、互いの努力を讃えあう宗教団体のような集まりが登場します。喜怒哀楽を共有して励まし合い慰め合うのです。佐和子の母親にとっての「誠心会」、兄にとっての「青葉の会」
 朝は、野菜サラダのみをたっぷり、水は一日2リットル飲む。ダイエット法です。
 妹の佐和子から見て、兄直は苦労知らずの人間に見えていますが、実は違います。彼は悩んでいます。成績優秀者の限界が成長するにつれて訪れました。試験で思うように点数をとれません。点数がとれなくなったら、それはもう彼ではなくなったということです。彼には、点数しか生きている価値がなかったのです。
 調べた言葉として、「いけすかない:気にくわない」直の恋人は、化粧も衣装も派手で、複数の男性と同時に付き合っていますが、人間的にはいい人らしい。
 直の長いセリフがよかった。「死」をみつめる小説です。今年読んで良かった1冊になりました。名作です。さわやかです。体験のない人には発想できないと思うのですが、こどもの頃に親を亡くすと、こどもは、成長過程において、自分も親が亡くなったときの年齢まで、生きていられるだろうかという思いが心に浮かぶときがあります。自分が、親の死亡時の年齢を過ぎると、ほっとします。わたしの実体験です。同様の体験をもつ方はみなさんそうだと思います。
 直さんは、生きるために、「真剣さ」を捨てます。長生きの秘訣が、真剣さを捨てることなのです。果たして、それは、正解でしょうか。そうは思えません。作者はこのあとこの件をどう整理するのでしょう。読み進めるのが楽しみです。タイトル「バイブル」の意味がなんとなく伝わってきます。生きていくための心の支えとなるものです。

「救世主」 2004年初出
 タイトルは、イエス・キリストを意味するのだろうか。迷える中原直22才男子の救世主となるのは、彼の新恋人小林ヨシコです。彼女は外見も言動も、人から引かれそうですが、心意気は強い。直の顔をペットボトルでたたいてけがさせます。たたかれても、直ちゃんは満足します。これまで、直にそこまでした女性はいません。初めてです。彼に、『役割』という発想が生まれます。生きがいのためには、『役割』が必要で、父さんには、父さんの役割が必要。父さんは、父さんであってほしいという気持ちが生まれます。付け加えて、人の役割を奪ってはいけない。秩序が壊れて、組織が腐るから。
 良かった文節として、「不安は人を動かす」
 学校教室内での重苦しい雰囲気があります。中原佐和子が無理やり学級委員にさせられて、苦労します。いじめです。読んでいて、読み手の気持ちも暗くなります。作者は、この苦しい行き詰まり状況をどうまとめるのだろう。
 対立する二者を調整する役割の人がいます。タイトルどおり、「救世主」が現れます。調整ができる人は貴重な人です。強くて力をもっている人間、ボス的人間がいないと組織はひとかたまりで動きません。
 結局この世は、誤解と錯覚、ごますり、物とカネで動きます。詐欺に近い行為が合法的な範囲内であると許容されれば成功できます。
 悩める女子中学生や女子高生を救う名作の一話でした。まさに、「救世主」です。いい話でした。

「プレゼントの効用」 2004年初出
 11月24日の日付から始まります。
 高校1年生中原佐和子の同級生の恋人大浦勉学が、佐和子にクリスマスプレゼントを贈る資金づくりのために、新聞配達を始めます。
 母親が家を出て5年が過ぎています。母親の帰ってこようかなという提案に、佐和子は、意思に反して、帰って来なくていいという意志表示をしてしまいます。
 大きな転換事項が書いてあります。上手に書いてありますが、事柄は、突然すぎて、読み手は気持ちがついていけません。
 兄、直(なお)の恋人小林ヨシコの意見に同感です。死んだ人間(大浦勉学)は、いくら待っても帰ってきません。過去を変えることはできません。それはそれとして、これからさきまだ長い人生のことを考えなければなりません。生きている人間は、もう一度恋人を探すのが賢明です。そして、家族をつくるのです。それが生きているものの本能です。
 そして、「父親をやめる」と宣言したお父さんは、「やっぱり父親をやる」と意志を固めたのです。『家族』を尊ぶ、いい本でした。
 調べた単語などとして、「風体:ふうてい。身なり」
 良かった表現の趣旨などとして、「大浦君が便箋の中にいるみたい」、「家族は大事だっていうことを知っておかないとやばい」、「甘いものを体に入れたせいか、少しだけ元気になった気がした」
  

Posted by 熊太郎 at 06:33Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2020年01月30日

累犯障害者(るいはんしょうがいしゃ) 山本譲司

累犯障害者(るいはんしょうがいしゃ) 山本譲司 新潮文庫

 累犯:るいはん。何度も罪を犯すこと。
 「ケーキの切れない非行少年たち」宮口幸治著・新潮新書からこの本にきました。

「安住の地は刑務所だった 下関駅放火事件」
 2006年、山口県下関駅放火事件から始まります。そういえば、そういうことがありました。死者はなかったそうです。犯人は74歳150センチ台の背たけの小柄な男性で、刑務所を出所して1週間ぐらい、行くところもなく生活できず再び刑務所に入るために放火しました。本人にとっては、シャバ(刑務所外の世界)よりも刑務所の中のほうが快適だという現実があります。

 この本は、作者自身が服役者で、それがきっかけでできあがった本でもあります。元国会議員の方です。

 精神障害者、知的障害者、認知症老人、聴覚障害者、視覚障害者、肢体不自由者などの服役者のお話です。刑務所が、福祉施設化している。彼らにとって、一番暮らしやすいところとあります。書中にあるとおり、彼らにとって、社会に居場所がありません。幼児期はひどい虐待を受けて、体中に火傷の跡が残っているそうです。むごい。まだこどもだったので、本人の意思表示ができず、福祉施策につなげるルートがありませんでした。親がおかしい。地域力の低下と言われる最近ですが、昔がずばぬけて良かったわけでもありません。
 福祉制度にのっかる前に、犯行が始まって、再犯が繰り返される。本人にとって、刑務所が安住の地になってしまう。
 読んでいて安全のためにはいろいろとお金がいると思いました。

「第一章 レッサーパンダ帽の男 浅草・女子短大生刺殺事件」
 そういうことがありました。2001年4月、レッサーパンダの帽子を着用した男が、19歳の女子短大生を刺殺しました。
 読んでいて、加害者本人は、かぶっていたものが、レッサーパンダだと思わずに犬だと思っていたという文節には、がくぜんとさせられました。つまり、それだけの学力しかない人なのです。そこに至るまでの経過が記されています。何度も警察沙汰になっています。福祉、医療面でのサポートがあれば、防げた殺人事件でした。親もまた知的障害者であることが、親が50代後半になって判明するなど、不幸が幾重にも重なっています。
 脳の中に、「反省」という概念(意味とか内容)がないようです。また、動機は理解できない「誤解」です。仲良くなりたかったから相手に刃物を向けた。拒否されて、パニックになって、記憶が喪失された。彼には、普通とは、違う世界が見えていた。
 調べた言葉などとして、「愁然:しゅうぜん。うれいに沈む」、「囲繞:いにょう。いじょう。まわりを取り囲む」、「カニューレ:心臓、血管、器官に挿入する管(くだ)」、「塒:ねぐら」、「欣々然:きんきんぜん。ひどくよろこぶ」
 この本は、今年読んで良かった1冊です。

「第二章 障害者を食い物にする人々 宇都宮・誤認逮捕事件」
 かなりショッキングな内容です。食い物にしているのは、知的障害者に無実の罪をかぶせる警察であり、それを容認する検察庁であり、障害年金や生活保護費を横取りする反社会勢力です。本来手を差し伸べるべき福祉は、量の多さと個々の事例の深刻さで疲弊しているようです。
 学力が、3歳児から5歳児ぐらい。迎合的な受け答えしかできない。オウム返しが会話のベース。相手に言われるままに誘導されて調書がつくられて母音を押すのでしょう。怖い。
 冤罪(えんざい)、無実の罪で服役している障害者がいる。本人は自分の置かれている立場を理解できていない。刑務所が福祉施設化しています。
 読んでいると、人民の人民による人民のための政治が、権力者の権力者による権力者のための法律に思えてきます。結局、そのとき一番の権力をもっている人間が法律を自分の都合のいいように解釈して運用します。弱者はつらい。明確な誤りがあっても、権力者は謝罪してくれません。逆に被害者である相手のせいにします。そこの組織では、そういうことができる人間が、仕事ができる人間だと評価されるのでしょう。異常です。
 
「第三章 生きがいはセックス 売春する知的障害者たち」
 ラベリング:評価を定める。
 悲惨で、なにも書けません。本を買って読んでください。

「第四章 ある知的障害者の青春 障害者を利用する偽装結婚の実態」
 障害者を利用した偽装結婚グループのなかに元警察職員がいます。
 気が重くなる内容でした。

「第五章 多重人格という檻(おり) 性的虐待が生む情緒障害者たち」
 フラッパー的:おてんば娘
 父親に近親相姦された娘の気が狂います。多重人格者になって、自分の心を守ろうとします。父親を教育しなければなりません。母親は止めてくれません。母親も教育しなければなりません。両親とも安定した職の公務員なのにどうかしています。
 この事例のパターンは、事が明るみに出ると、両親は離婚、父親は自殺するという経過に至るようです。父親はどうかしている。脳に傷でもあるのではないか。あるいは、人間として大切な脳の部分が欠落している。
 結局、娘は、自分でがんばるしかないのか。

「第六章 閉鎖社会の犯罪 浜松・ろうあ者不倫殺人事件」
 同じ聾学校を卒業した障害者集団の仲間内で起った殺人事件です。加害者の男が、不倫をばらすぞと脅してきた不倫相手の女性を殺します。障害者でも犯罪をおかす人はいます。殺人小説を読むような感じですが、事実が元になっています。
 咫尺の間(しせきのかん):距離が近い。
 放恣:ほうし。きままでだらしがない。
 面罵:めんば。面と向かってののしる。
 日本式の手話の教科書での手話は、生まれながらの聴覚障害者には通じないというのは新鮮な情報でした。手話は、日本語ではないそうです。「手話語」という外国語のようなものだそうです。
 殺さなくてもいい殺人事件でした。
 携帯メールの普及が、ろうあ者の生活を良い方向へと一変させたという記事も新鮮でした。

「第七章 ろうあ者暴力団 「仲間」を狙いうちする障害者たち」
 世も末。これが実態。障害者に就職先、生きがいを確保しないといけないという気になりました。されど、障害者枠で役所に職を得たけれど、現場では、おいてきぼりにされた、ほおっておかれたという優秀な聴覚障害者の感想があります。
 障害児に対する学校教育は、ポーズだけで、学力的には9歳程度までの内容しか教えることができないとあります。聞こえないことによる限界があるようです。
 手話による脅迫があります。怖さを実感できないのですが、そうとうしつこい。
 敷衍:ふえん。言い換えて詳しく説明する。
 聴者:生来の聴覚障害者ではない人のする手話
 テレビやステージ横でやっている手話は、生来のろうあ者には通じていないようです。彼らには彼ら仲間同士で通じる手話語があるという記事内容です。耳が聞こえる人の手話と生まれながらに聞こえない人の手話は異なるそうです。よって、裁判の時の手話通訳者の手話も通じていない。世の中は、聞こえる人たちの自己満足で成立しています。
 人と人とがわかりあうということは、むずかしいと感じる内容でした。
 この事件の犯人は、刑務所を出所したら自分のこどもと遊ぶことを楽しみにしていますが、彼は殺人事件の犯人です。こどもにとっては、刑務所に入った親とは縁を切ることがこどもの幸せです。離婚届が刑務所に送られてきました。

「終章 行きつく先はどこに 福祉・刑務所・裁判所の問題点」
 「孤独」があります。心に闇をかかえた人がたくさんいます。個人ではなく、家族単位で闇をかかえています。
 著者は、大きなものに挑戦しています。なかなか変えられないものです。
 服役者の言葉「ここが一番暮らしやすい」は、塀の外が彼らにとっては刑務所のようなものという表現です。刑務所の外は、自分が差別される地獄です。
 
 文庫版あとがきは、力が入りすぎていて、あまりにも文字数が多かったので読みませんでした。本文で十分趣旨は伝わってきました。
 数値的なものは、機械的な感じがして、読んでいても楽しくありませんでした。
 本の後半に犯罪を扱った何冊かの本の広告があり、こういう分野があったのかと知りました。

*本の最終近くまで読んできて思ったことがあります。ひとつは、知的障害者や聴覚障害者でなくても、専門用語が飛びかう裁判や警察の取り調べで、自分の意志表現が下手な人間は、無実なのに罪を押し付けられることがあるのではないか。もうひとつは、判断は、裁判所、検察庁、警察署の職員次第になってしまうのではないか。相当強い志をもっていないと、彼らにとっては、毎月給料がもらえれば、それでいいということになり、相手が、有罪だろうが無罪だろうがかまわないというところまで、意識が至ってしまうということです。行政組織が悪い方向で、集団でグル(仲間)になったら、弱者はなかなか勝てません。
 今年読んで良かった1冊でした。タイトルの「累犯障害者(るいはんしょうがいしゃ)」をすんなり読めず、意味もとりにくいことから、別のタイトルにすれば良かったのにという感想をもったことを付け足しておきます。  

Posted by 熊太郎 at 07:49Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2020年01月29日

相棒シーズン7 DVD

相棒シーズン7 DVD 2008年(平成20年)10月-2009年(平成21年)3月

「第1話」
 2時間ものだと思っていたら、犯人のうちのひとりが逮捕されたあと、亀山刑事が共犯者を求めて東南アジアの国へ行ったところで、(つづく)になりました。意外でした。

 杉下右京と亀山薫への風当たりが異様に強い。警視庁の幹部たちが怒っています。ふたりをリストラしたい。されど、下のほうのメンバーは、ふたりの事件解決力に頼りたい。
 ホテルの部屋で殺人事件発生。密室殺人です。トリック、手口、たねあかし、お見事でした。
 海外協力事業と海外の資源を巡る利権が素材になっています。
 政治家の瀬戸内米蔵先生も出ています。霞が関埋蔵金というのは、税金が財源のようです。
 杉下右京の推理があいかわらず鋭い。ホテルの部屋が豪華すぎる。灰皿がない。計画殺人。バッグのもちかたの変化(右肩にかけるが、左肩にかけるに変わった理由)
 しいていえば、雰囲気が暗かった。(つづく)

「第2話」
 前回のお話のつづきです。珍しく内容が湿っぽい。殺人犯に高校の同級生を殺害した理由を懇願してたずねる亀山刑事です。
 角田六郎課長のセリフがいい。「私はふたりを(杉下右京、亀山薫)を監視しております」
 日本政府からカンボジアへの援助品をごまかしているという犯罪です。
 そんなにうまくいくのだろうかと思いつつも、よくできた殺人計画です。
 次の第3話も同じですが、「なりすまし」が犯行行為です。
 前の話で亀山刑事がカンボジアに行ったのは捜査の一環だと思っていましたが違っていました。

「第3話」
 殺人の動機はたいていが、「復讐」です。
 今回は、推理ドラマというよりも人間ドラマで、松本清張作品のようでした。犯人は、誤解をして、恩人を殺害してしまいました。
 衆議院議員会館で贈り物が爆発して政策担当秘書が死にます。
 バイナリ式爆弾だそうです。洋ランの土に栄養剤をさすと爆発する仕掛けです。
 炭鉱の話が出ます。炭鉱は遠い世界になりましたが、これが放映された2008年頃は、まだ、かけらが残っていたようです。

「第4話」
 6年前に失踪した会社員男性の他殺体が発見されます。当時不倫相手だった女性が犯人と疑われますが、凶器に残された指紋が一致しません。
 犯罪被害者家族の悩みを扱った作品で、なりすましがあります。長いセリフのやりとりが続きました。なにかしら、このシーズンは、お話が湿っぽくて暗い。

「第5話」
 ラジオ放送局女性DJがからんだ刺殺事件です。
 犯行の動機の鍵を握るのは、「声」を間違えたことです。さらに、殺すべき人まで間違えています。第4もそうでしたが、ややこしい。

「第6話」
 飛び降り自殺に見える将棋の棋士の死体が発見されます。
 八百長試合が素材です。
 この第7シリーズの脚本は、精度が落ちてきているような印象があります。杉下右京と亀井薫へのバッシング(排他的な攻撃)が、度が過ぎていて、見にくいです。

「第7話」
 公務員特別なんとか罪にあたると思いますが、違法な暴力的取り調べで、取調室内で被疑者が死亡します。
 組織の隠ぺい工作が始まりますが、当然、杉下右京が立ちはだかります。
 上層部はブラックです。そんななかで、伊丹憲一刑事の正義感が光ります。
 言葉数がいやに多い台本です。

「第8話」
 さきに、特典ビデオで亀山夫婦おふたりのインタビューを見ました。ああ、降板されるんだと、しかも、このシーズン7で、さらに第8話を見始めたら、このお話の回で、ご夫婦は外国へ行かれるのだと、いまさらですが、知りました。
 インタビューでは、おふたりとも、俳優として、亀山薫と美和子夫婦の個性を演じるということを熱心に語られていました。苦労したこととして、寺脇康文さんは、髪型で、2週間に1回は短髪を整えに行かねばならなかったこと。それが、時間がなくて、休業日とか夜中にお願いしてやってもらったこともある。あとは、2話分を同時に撮影していたことがあり、頭が混乱したことなどをお話されていました。鈴木砂羽(すずきさわ)さんもやはり、ロケ地が遠かった。群馬県、栃木県が多かった。とにかく遠かったとのことでした。鈴木砂羽さんは、ドラマのなかの映像で見るよりも威圧感がある人でした。
 このドラマを見たことがなかったので、2018年の夏から最初から見始めました。1年4か月間ぐらい、毎週のように見ていたので、ドラマからおふたりがいなくなるのは淋しい。

 大学の実験室で殺人事件が起こって、保管してあった殺人ウィルスが盗まれたという状況でスタートしました。生物化学兵器です。
 組織内部の人間が、悪意をもって、悪事を働こうとすると防げません。信頼関係は大事です。
 ウィルスがいるという入れ物があるのですが、ダミー(偽物)の試験管に見えます。犯人がつかまるのが、あっけない。
 やっぱり。つづきがありました。第9話へ続くそうです。

「第9話」
 手に汗かくような時間帯が続きます。
 レベル4の実験室(最近化学兵器の拡散対応)の稼働のことはよくわかりませんでした。
 杉下右京の「おかしい」と思ったら、とことん解明する姿勢がいい。なにか、意図があって、おかしい状態になっている。
 事件解決が落ち着いたあとは、亀山薫刑事夫妻との送別シーンです。亀山薫さんのセリフ「(外国で)正義を教える」をきいたときに、先日アフガニスタンで射殺された日本人医師のことを思い出しました。残念なことです。殺しで物事を解決することはできません。
 最後は、右京さんが淋しそうでした。

「第10話」
 テレビ朝日50周年記念とあります。2時間ぐらいのロングサイズです。
 二酸化炭素CO2排出反対、自然環境破壊に反対という口実を利用したエコテロリストによる爆破事件です。
 前回、相棒の亀山薫さんがいなくなりました。今回の相棒は、法務大臣補佐官の女性姉川さんです。田畑智子さんが演じます。
 栃木県の山奥にあった銅山で、明治時代にあった田中正造公害直訴事件を思い出すような内容でした。よーく映像を観ていると、ロケ地として背景に現地の風景が写り込んでいるような気がしました。もうずいぶん昔に見たことがある風景です。
 テーマに関しては、最近だと環境活動家のグレタ・トゥンベリさんを思い浮かべます。
 犯行の動機は復讐です。いささか、動機が復讐ということに飽きてきました。人間は複雑です。相手が同一人物でも尊敬する人もいれば怨む人もいます。二面性があります。同じ人でも被害者になるときもあるし加害者になるときもあります。時の運が作用します。すんなり優しく本音を言えるときもありますが、立場上、相手に厳しいことを言わなければならない時もあります。人間は複雑です。そのあたりが、ドラマとか小説の素材になるのでしょう。
 「(経済的な地域振興のための)お金と引き換えに、自然と健康を失った」という趣旨には説得力がありました。
 杉下右京は、ばか正直な人です。そこが、魅力でもあります。

「第11話」
 すごい。すばらしい作品でした。
 拳銃を発砲してそのまま逃走した逃走犯の事件と小学3年生の女児誘拐事件が並行して同じ地域で進行していきます。
 杉下右京は、角田六郎課長の応援で事件に関与していきます。
 誘拐事件のほうで、共謀説と仮定して、父親が自分の愛人に自分の娘を誘拐させるだろうかという疑問が湧きました。だとしたら、なんてひどい父親だという思いが湧きました。
 推理がおもしろい。見ていて楽しい。
 家政婦さんのエアコンの入り切りが気になりました。やはり、右京がそこを突きました。
 もうひとつの事件で、発砲犯の人質にされていた中年女性が警察に向かって、「さっさとつかまえなさいよ!男が大勢そろっていて!」とか、「はやくつかまえなさいよ!」とわめいたところ、それから、誘拐事件のほうで、お手伝いさんが、「わたしはリストラされる」と言ったところが笑いどころでおもしろかった。

「第12話」
 いまさらですが、整理します。警察庁が、国の組織で、警視庁が、東京都の組織。
 杉下右京(水谷豊) 警視庁特命係 警部(課長補佐・係長級)
  警視総監-警視監-警視長-警視正-警視-警部-警部補-巡査部長-巡査長-巡査
 小野田公顕・おのだこうけん(岸部一徳) 警察庁長官官房室長
 米沢守(六角精児) 警視庁鑑識課巡査部長
 大河内春樹(神保悟志) 警視庁警務部首席監察官 警視正
 内村完爾・うちむらかんじ(片桐竜次) 警視庁刑事部長 警視正
 中園照生(小野了) 警視庁刑事部参事官 警視正
 三浦信輔(大谷亮平) 警視庁捜査一課刑事 巡査部長
 伊丹憲一(川原和久) 警視庁捜査一課刑事 巡査部長
 芹沢慶二(山中崇史) 警視庁捜査一課刑事 巡査部長
 
 今回の話では、内村完爾刑事部長が杉下右京を毛嫌いします。小野田公顕官房室長も不祥事を闇に葬ろうとします。外国人がらみの事故的犯行ですが、帰国して逮捕が困難です。どうも、正義感に燃え怒った警察職員が外国まで行って、犯人を殺害したらしい。
 フランスで日本人女性を殺害して南米の国に帰国して逮捕されない若い男性容疑者のことを思い出しました。
 犯人引き渡しの条約が必要だそうですが、日本は、アメリカ合衆国と韓国としか条約を結んでいないそうです。(このあと、ゴーンさんの逃亡劇が起こって、すんなり理解できました)
 観終えて、すごいなあという感想をもちました。人間ドラマです。法令とか条約の決まり事を超えています。

「第13話」
 縄手拓海くん10歳に予知能力が宿って、未来の窃盗事件を言い当てます。お告げがあるのです。
 人間電波受信器というはじめて聞くからくりでした。人間が検波器になります。

「第14話」
 亀山薫夫婦がいなくなって数話がたちます。相棒のいない杉下右京です。推理する姿は、刑事コロンボのようです。
 歌劇団をめぐる殺人事件です。サーキュレーター(扇風機)の風が凶器です。
 よくできたからくりでした。

「第15話」
 密室での服毒自殺にみせかけた殺人事件で、犯人は、杉下右京の大学時代のフランス文学の恩師女性です。岸恵子(犯人)さん対水谷豊(杉下右京警部)という図式のふたり芝居でした。
 フランス語のことは、きいていてもよくわかりませんでした。男女のうまくいかない愛が悪をからめて描き出されている小説風の映像でした。

「第16話」
 映画の撮影現場がぶでした。
 正義と信義(真心をもって約束を守り役目を果たす正しい道)を貫く内容です。
 わけあって、事故死を他殺に見せかけた事件です。

「第17話」
 亀山薫巡査部長がいなくなってからだいぶたちます。相棒がいないのはさびしい。
 ドラマの内容は、自殺と警察が判断を下した事例に関して、他殺であると主張する関係者を、杉下右京が押し付けられた状態で話が進みます。
 非現実的な小説的作品です。
 詩の朗読会のときに、ステージの上で、朗読者が飲んだコップの水に毒が入っていた。毒を入れたのは本人という判断です。
 盗作行為というのは、深刻な結末を招きます。テーマはいつも「復讐」です。自殺を助けた、あるいは、自殺へと仕向けた真犯人が影にいます。悪人は悪知恵が働きます。

「第18話」
 どこかぬけている「陣川公平」の人物設定がおもしろい。(最近話題になった役者さんらしいがよく知りません)
 船に閉じ込められた陣川公平と杉下右京です。
 学校裏サイトのお話です。平成21年ころの作品です。掲示板が犯罪の原因となっています。
 ややこしい。
 締めは、「勘違い」でした。

「最終話」
 シリーズを最初から見始めて、ようやく7の最後まで来ました。まだ、10年前の作品です。
 今回は、山村での怪奇スリラー風の作品です。
 イディオ・サバンとかいう、知的障害者の天才的な点描による細密画がきっかけです。きいちゃんという若い男性障害者が描いた絵は、殺人現場を描いた絵に見えます。彼は、見たものを正確に描く人です。
 保険金目当ての殺人とか、自殺とか、そんな話です。
 きいちゃんは、いつも、規則正しい行動をします。それが後半への伏線となっていきます。複数の問題点を重ねてある複合的なストーリーでした。
 ドラマからいなくなった相棒の亀山薫がなつかしい。どうも、今回から新しい相棒神戸尊(かんべ・たける)が登場したようです。亀山とは性格が真逆のようです。神戸尊は、立場としても、スパイです。「特命係」をつぶす。杉下右京を辞めさせる。そのためのスパイとして、特命係へ意図的に左遷させられてきました。
 事件は、借金から逃れるために苦渋の選択として、話はすんなり進んでいきますが、ひっくりかえしが必ずあるのが、「相棒」です。しぶとい。
 印象に残ったことがらとして、「善人なればこそ鬼の餌食になりやすい」、「彼はねずみを描いた。周囲の様子は背景でしかなかった」、「ごめんね」、「金食い虫の親不孝者の息子」、「進むも地獄、戻るも地獄。真実だけが、心を救う」、「見過ごされている犯罪」、「介護に疲れた」、「スーツを着たかった」、「犠牲」、「フラメンコミュージックで引き締める」、「ネズミの穴」
 杉下右京さんが、人形か、AIロボットのように見えました。  

2020年01月28日

こんとあき 林明子

こんとあき 林明子 福音館書店

 「こん」はきつねのぬいぐるみで、「あき」は4歳ぐらいの女の子に見えます。19見開きの心優しい絵本です。雨から孫を守るために開く傘のような立場のおばあちゃんの愛情が伝わってきます。
 こんのふるさとだという砂丘は、きっと鳥取砂丘のイメージなのでしょうが、自分は見たことがないので、見たことがある静岡県の中田島砂丘をイメージしながら読みました。
 高齢者の世代にとって、子どものころの思い出の乗り物は電車です。電車に乗って移動した記憶が多い。
 絵にあるプラットホームでの駅弁売りも今では見かけなくなりました。
 電車で砂丘のまちをめざして旅をするこんとあきのコンビは、「相棒(ともに同じことをする仲間)」です。あきは、ひとりぼっちじゃない。こんというサポーターがいます。
 読み聞かせのときには、駅弁の中身を見ながら、おかずの種類をネタにお話をします。孫との会話がはずみます。駅弁は、五目ごはんのような、ふりかけごはんのような、かつ丼のようにも見えます。ちょっとわからない。プリンが入っている駅弁は珍しい。
 優しい車掌さんが、電車の扉にはさまれたこんのしっぽを応急手当してくれました。けがをしないように、「もう、ずっとすわっていようね」
 ふたりの旅は、わざと変わったことをして、人の気をひこうとするものではありません。
 22ページと23ページに広がる砂丘の絵は、広々としていて気持ちがいい。
 突然、松林のなかから出てきた犬にくわえられてこん、どこに連れていかれるの。ちいさな文字でこんが、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とくちぐせの言葉を言い続けます。
 人は、海を見ると気持ちが落ち着きます。おばあちゃん登場。そして、ハッピーエンド。
 こんの表情がいい。こんは、笑顔がかわいい素直で素敵な妖精です。  

Posted by 熊太郎 at 07:24Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2020年01月27日

M-1ぐらんぷり2016 DVD

M-1ぐらんぷり2016 DVD

 優勝は銀シャリでした。

「アキナ」 秋山賢太 山名文和 446点
 結婚してこどもがほしい。ふたりで、父親と5歳の男児になっての役割割り当て劇です。男児がおとなびていておもしろ楽しかった。こどもが、父母離婚後の自分のあり方とか、離婚理由を述べたりしていました。

「カミナリ」 竹内まなぶ 石田たくみ 441点
 たくみさんという人が相方まなぶさんの頭をパシパシとなんどもたたくのが気になりました。叩き漫才です。ネタは川柳でした。孫とじいちゃんです。失敗したのではないだろうかと思いましたが、点数はそれほど悪くはありませんでした。

「相席スタート」 山崎ケイ 山添寛 436点
 男女のコンビです。野球で、「ふってしまう球」を女性になぞらえます。難しい流れだと思いましたが、審査員には好評でした。理屈っぽい。野球を知らないとわからない。下ネタがオチだったような。

「銀シャリ」 鰻和弘 橋本直 470点
 DVD本番のほうは、「権利の都合上カット」と表示されて映像がありません。特典映像で、30分ぐらいかけて、発したセリフを追いながら漫才解説があります。ドレミの歌が素材になっています。漫才のつくり方の説明を聞いているようでおもしろかった。内容は、アドリブの集合体です。

「スリムクラブ」 真栄田賢 内間政成 441点
 おもしろかったと思うのですが、審査員の評価は辛かった。工夫が必要とのこと。
 登山の話から始まって、天狗の話になります。祖母が車を山に捨てて、すいませんからずっと、聞いていて笑えました。ただ、最後がきちんと締まらなかった。

「ハライチ」 岩井勇気 澤部佑 446点
 RPG(ロールプレイングゲーム)の設定がうまくいかないという話。審査員には好評で、点数も良かったのですが、ひとりの審査員が言ったとおり、RPGを知らない人が聴いたらわからないということで、わたしはわかりませんでした。

「スーパーマラドーナ」 田中一彦 武智 459点
 エレベーターに閉じ込めらた男女の話。男が変態、挙動不審です。どんでん返しがありますが、全体的にはふつうな感じがしました。

「さらば青春の光」 東ブクロ 森田哲也 448点
 みっちゃんが池で溺れているからはじまって、「マンガや」、つづいて、もうかたほうが、「能や」とか、「浄瑠璃や」と流れていきます。審査員にはひとつのことを最後まで貫き通したのが良かったと好評でしたが、「能」が唐突で、不思議で、笑えませんでした。むずかしい笑いでした。

「和牛」 水田信二 川西賢志郎469点
 ドライブの役割割り当て劇です。しっかりまとまっている漫才でした。

〇決勝
「スーパーマラドーナ」
 わたしは、ここが優勝だと思いましたが、はずれました。時代劇の殺陣(たて。斬りあいのポーズつけ)です。不死身なのが笑えました。スピードが速くて、すごい。

「和牛」
 花火大会、まなみちゃん、カエルに婚約指輪をはめる、おもしろかった。ただ、玄人漫才の感じで、若々しさがほかのコンビより落ちます。

「銀シャリ」
 うんちくばなしです。(雑学豊富な知識)語源をたどります。アンデスメロン、ビッグマック、カーディガンなど。おもしろいけれど、ちょっとつまらなかった。優勝したのは、準決勝との合わせ技なのでしょう。
  

2020年01月26日

はじめてのキャンプ 林明子

はじめてのキャンプ 林明子 さく・え 福音館書店

 全体を読み終えたとき同作者作の「こんとあき」を思い出しました。おさなごのあきちゃんと、しゃべるきつねのぬいぐるみこんちゃんとのおばあちゃんの家(鳥取砂丘の近く)を目指したほのぼのとしたふたり鉄道旅でした。そのときのふんいきをこの絵本にも感じました。

 おんなのこの名前は、「なほ」で、ともこおばさんが、なほちゃんのサポーターです。
 なほちゃんは、キャンプに行きたいのですが、大きい子たちが、小さい子は、すぐ泣く、荷物をもてない、夜にこわがるとかいって、仲間に入れるのをいやがります。
 でも自立心が強いなほちゃんはだいじょうぶだと宣言して仲間に入れてもらいました。
 それなりの苦労の連続がありますが、なほちゃんは、がんばります。

 ちいさいこどものころに、自然とのふれあい体験という思い出を残すことは大切です。星、風、川、キャンプファイヤーの炎、打ち上げ花火、とんぼが群れになっての飛行、光るほたる、野鳥のさえずりなど。
 40ページのすいかの絵、おいしそう。
 夜、テントの中でのこわい話も定番です。
 男なら立ちションベンの座りションベン。
 なほちゃんは、がんばりました。
 こどもの自立心、独立心、冒険心をたたえる絵本でした。
 そして、幼き時期は、あっという間に過ぎていきます。
  

Posted by 熊太郎 at 06:52Comments(0)TrackBack(0)読書感想文