2020年01月08日

恋人たち 邦画DVD

恋人たち 邦画DVD 2015年公開

 レンタルビデオ店の名画コーナーにあったので手にとりました。

 始まりからしばらく、けっこう長い時間帯、暗い雰囲気が続きます。人がたくさん出てきて、なにがなんだかわからないのですが、やがて、三つの家族の話が重なっていることに気づきます。

 通り魔事件で、精神障害者に刺殺された若妻のだんなさんの復讐したい気持ちの話だけでよかったような。ほかに、ゲイの若い男性弁護士、それから、不倫して詐欺被害に遭うような主婦、いずれも暗い話が重ねてあります。

 観ていて、途中、登場人物の怠惰なようすとか、義務を果たさないで権利を主張する態度とかに、とても同調する気になれなくなるのですが、後半に向かって、「夢はありますか」というフレーズが出てくるあたりから、雰囲気は、盛り返してきます。

 通り魔事件の犯人である精神障害者は、裁判で、心神喪失状態であったことを理由にして、服役ではなく、措置入院(強制的な精神病院への入院)という病気対応の処分になります。賠償も期待できず、やられ損です。ご主人は孤独なひとりぼっちで、気が狂いそうです。
 理不尽と向かい合って、「犯人を殺してやりたい」という気持ちを抑えて、自分自身の気持ちに、(殺すのはやめようという)という折り合いをつける作業が必要です。

 彼の勤務先にいる元左翼運動の学生だったという反政府活動で左腕を失った男性の言葉がよかった。「(妻を殺害した加害者を)殺したらだめだよ」「はらいっぱい食べて、笑っていたら、人間はなんとかなる」

 テーマは、「絶望からの再生」です。
 悲しいことがあっても、自殺してはいけない。生きていかなくちゃいけない。今この瞬間に死ななくても、いつかは必ずお迎えが来る。先に逝ってしまった愛する人には、死後の世界で再会できる。そう考えて、自分の気持ちに折り合いをつける。自然に死ぬまで、生きてみる。

 養鶏事業をやりたい男と不倫関係になる役の女優さんは見事な演技でした。ほかの方のシーンもふくめて、リアルな映像が続くのですが、そのなかでも彼女の演技は、光っていました。

 人間の世界って、「誤解」で成り立っている部分もあるんじゃないかと思わせてくれる一面もあった映画でした。

 妹を通り魔に殺されたことがきっかけになって、被害者の姉の結婚話が破談になっています。犯罪被害者なのに、被害者家族にも不幸が広がります。

 これは現実ではなく、映画なんだからと思うところもありました。そう思わないと気持ちが苦しくなる映画でした。