2020年01月14日

杉原千畝 邦画DVD 

杉原千畝 邦画DVD 2015年公開

 岐阜県加茂郡八百津町にある杉原千畝記念館へは、20年ぐらい前に、観光バスに揺られた団体旅行で訪れたことがありますが、当時は本人のことをあまり知らず、施設の中をひととおり歩いた記憶があります。こじんまりとしたところでした。
 訪問当時は、ヨーロッパにあるとある国の領事館に勤務していて、ユダヤ人をドイツ軍の虐殺から守るために、自分の命をかえりみず、条件に合致していないユダヤ人にビザ(日本国への入国許可証)を発給した人という知識だけしかありませんでした。今回この映画を観てだいぶわかりました。
 ビザ発給の取り扱いは不正であるので、微妙な心理で鑑賞することになるのですが、命乞いをする人たちに対して、自らの命をかけて、たとえ不正とはいえ、命を助ける行為をしたことは、人道的には称賛に値します。そうでなければ、おおぜいの人たちが不当に虐殺の対象になっていました。
 ヨーロッパでの本人の呼び名は、スギウラチウネではなく、センポスギウラであったということは映画を観て初めて知りました。(チウネは発音しにくいから、通称センポ)
 リトアニアという国もよく知りませんでした。ソ連崩壊まで、強制的にソビエト連邦に含まれていたようです。
 ビザの発行については、いろいろ考えさせられました。しょせん紙切れという理屈もわかります。紙が有効なのは、国が存在しているという実態があってこそのものです。ドイツに占拠されてしまったオランダ国領事もからんでいたことでわかりました。
 外交官という名目のスパイ行為もあるのかと、複雑な心境になりますが、人間の行動と行為はもともと複雑です。
 外国侵略という不正には、ビザの不正発行でのりきる。対抗策です。
 杉浦千畝氏を追放した日本国外務省が、リトアニア国及び命を助けられたユダヤ人の人々からの抗議を受けて、名誉回復の措置をしたことは、驚きをもちつつ、いいことだと賛同します。
 良かったセリフなどとして、千畝がポーランド人スパイを雇用するときに「残っているのは、運転手の枠だけだ」、「(千畝に向かって)あなたは世界を変えたいと思っていますか→(千畝の返答として)常に思っている。すべてを失うことになってもそう思っている。(ビザを)できるだけたくさん発給する」、「お世話にならない。お世話をする。報いを求めない。(日本人の美徳とか、サムライの心意気を感じました)」、「(国籍が違っても同じ人間)私はかれらを(ユダヤ人を)救いたい」、「きみは最低の外交官だった。そして、最高の友人だった」
 戦争の愚かさが伝わってくる映画でした。軍人は丸腰の庶民、老若男女こどもにまでも、冷酷に、機械的に銃殺行為をします。人間は教育によって殺人マシーンにもなれてしまうのです。怖い。