2019年05月06日

季節のごちそう ハチごはん 横塚眞己人

季節のごちそう ハチごはん 横塚眞己人(よこつか・まこと) 2019課題図書 ほるぷ出版


 ハチの幼虫とかサナギを食べる食習慣のお話です。希少価値があるごちそうです。自分は食べたことはありません。場所は岐阜県です。
 カバーに五平餅の写真がありますが、五平餅のなかにハチの子がねりこまれています。五平餅は岐阜県の郷土料理です。五平餅は秋田県のきりたんぽにも似ています。
 書中に登場する「付知(つけち)」には、昔、キャンプで行ったことがあります。川があって、山の中です。ハチの子は、都会のようなところでは料理にしません。本のなかの世界には、人間が自然のなかで育む食生活・食習慣があります。
 ハチの巣の六角形の穴が美しい。この本は写真集です。分解したあとの巣盤がきれいです。クロスズメバチがつくった規則的な形状と構造は神秘的です。
 食べるハチの種類は2種類、クロスズメバチとシダクロスズメバチです。スズメバチというと巨大な恐ろしげなハチを思い浮かべますが、意外にふたつとも小さなスズメバチです。41ページに絵があります。オオスズメバチはでかい。クロスズメバチの何十倍もありそうな大きさです。
 このハチは天敵である人間から逃れるために土の下、わかりにくいところに巣穴をつくるそうです。まるでアリです。わたしは、ハチの巣は、木の幹にあると思い込んでいました。
人間とハチの知恵比べです。人間は、しかけをつくって、クロスズメバチの巣があるところを探します。「ハチ追い」です。いろんな暮らし方があります。イカの切り身がエサです。クロスズメバチのことを「ヘボ」と呼んでいます。
 おじいさんたちは仲間をつくって、ハチの子を探します。役割分担をして仕事を進めます。
 ハチも生きて、繁殖するために必死です。
 魚の養殖に似た記事が出てきます。ハチも少なくなってきているようです。「捕る」から「育てて収穫」する手法への転換に迫られています。時代の変化でしょう。
 巣箱の仕組みがあります。職人技があります。空間とか、紙で工夫が凝らされています。エサは、シカ肉、ウズラ肉、ニワトリ肉、ニジマスと、けっこう豪華です。
 家族総出でする「ハチの子抜き」は、細かい作業で、根気がいります。ときどき、交代で休憩しながら、ほかの用事を済ませながら時間をかけて進めます。
 調べた言葉として、「甘露煮:かんろに。醤油、みりん、砂糖、水飴などで、甘辛く煮詰めた食べ物」
 食べ方として、「ヘボ釜飯」、「五平餅」、「瓶詰甘露煮」、「冷凍もの」、「ほおば寿司」、「炊き込みご飯」、いろいろあります。
 本にはどんな味かは書いてありません。調べました。香ばしくて甘みがあるそうです。わたしは、うなぎのひつまぶしを思い浮かべました。
 日本には、地域の歴史や食文化があります。人間の思考の広がりがあります。40ページの写真にある飛んでいるハチを追いかけるときにめじるしにするいろいろな「しるし」を見て、人の数だけアイデアがあると思いました。
 そして、「食べる」って素敵なことです。  

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2019年05月05日

童話の花束 第49回JXTG童話賞作品集

童話の花束 第49回JXTG童話賞作品集

 他県に行ったおりに、親戚から借りた車を満タン・洗車して返そうと入ったガソリンスタンドのサービスルームに、この冊子が置いてありました。「ご自由に」とあったので、軽く目を通して持ち帰り、家で読み返しました。童話のコンテスト入賞作品集です。
 いくつかピックアップして感想を記してみます。1話がだいたい原稿用紙5枚の長さです。
 童話というのは、自分なりに、小学1・2年生ぐらいまでが読む子ども向けのお話、空想的な物語と解釈していますが、おさめられている作品は、年配の方のものも多く、大人向け童話、亡き人を思う心とか、思い出の記録という内容のものもあります。とはいえ、特段抵抗感はありません。
「月の道」
 大人向けの物語です。亡くなった奥さんが優しい人で良かった。死んだあとまでわたしについて来ないでと言われたら男はつらい。
「ばあちゃんからのラブレター」
 片親家庭の中学生男子です。お弁当箱に祖母からの手紙が入っています。いよかんのダジャレが良かった。
「おいっ子のギモン」
 髪の毛がない話です。審査員の受けはいいのですが、わたしにはピンときませんでした。
「一番星」
 年配の人の作品です。長生き競争という単語が良かった。
「漢字仙人がやってきた」
 好みです。わたしの好きな世界です。
「ゆらゆらな傘の空」
 冊子の中では一番好みの作品です。色彩描写がすばらしい。宮沢賢治作品のようにカラフルでキラキラ輝いています。物語性が弱いのかもしれませんが、わたしは十分満足しました。
「今日から六月」
 出てくるなぞなぞで、「まみむねも、これなんだ」の答が、いまだにわかりません。(その後、調べました。わかりました。めがないので、「めがね」が答えです)  

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2019年05月04日

おかあさんはね エイミー・クラウス・ローゼンタール

おかあさんはね エイミー・クラウス・ローゼンタール マイクロマガジン社

 おかあさんのための絵本です。ほろりときます。
 母親がこどものことを思いやるお話です。
 英語タイトルは、I Wish You Moreとなっています。意味はわかりませんが、こどもさんのためにこどもの安全と平和を「祈る」ということだろうと受け止めました。そして、「おかあさんはね、あなたが、大好きよ」ということです。
 絵はマンガチックですが優しい。動きに気持ちがこもっています。
 「笑顔」、「譲り合い」、「協力・協調・友情」、「恋」、「積極性」、「挫折しても立ち上がる」、「根気」、「人生」、「夢・希望」、メッセージは、けっこう盛りだくさんです。

 雨が降る中で傘をさす絵は秀逸です。感嘆のため息が出ました。

 児童虐待に反対と声をあげたくなります。

 親は子どもの傘でありたい。


(作者女性はこの絵本が発売される前の月に、癌のために51歳で亡くなっています。娘さんがおられます。残念です。この世にいい本を残してくださって、ありがとうございます)

 個人的な読書の記憶としての関連ですが、「ちいさなあなたへ」アリスン・マギー作も母親向けの名作絵本です。亡くなったおかあさんが、子をもつことになる娘さんに伝えるメッセージです。机の上に置かれた写真のなかから語りかけてこられます。これもまた泣けます。いずれの2冊も子どもさんの誕生の贈り物にされると喜ばれると思います。  

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2019年05月03日

くまくまパン 西村敏雄

くまくまパン 西村敏雄 あかね書房

 2歳のこどもと電話でお話をしていたら、「えほんをかって」と頼まれました。
 本屋に行って、ならんでいるうちの2冊に目星をつけて、その日は買わずに、翌日また行ったら、1冊は本棚にありませんでした。もう1冊がこの絵本です。
 カバーにある「パンパンパパーン!」の部分を気に入りました。楽しそう。
 めくると、「くまのパンやでパピプペポ パン、ピン、プン、ペン、ポン」とあり、おもしろそう。
 でも、絵本のなかでは、パンのつくり手のくまとしろくまが対立するのです。
 くろくまとしろくまではなく、くまとしろくま。
 絵がきれいでわかりやすい。
 あんぱんとカレーパンの勝負になります。
 おきゃくさんは、ネコ、ネズミ、ウサギ、あたまにたてじまが3本あるのはなんのどうぶつかわかりません。キツネのようなうりんこ(いのししのこども)のような。
 それから、カラス、タヌキ、ロバ、リズミカルです。ワニ、サル、鳥。カバが王さまです。
 あんぱんマンみたい。ジャムおじさんとかバタコさんが出てきそう。
 パンの味を否定する王さまです。その発想が新しい。なかなかそう発想できません。
 「協力」がテーマです。
 新しいパンの完成の絵がきれい。ピカピカと輝いています。
 パピプペポで、ばいきんまんを思い出しました。
 ちいさなこどもは、おいしいものが大好物です。
 甘くて冷たいアイス、甘くとろけるチョコ、それから高いけれどひつまぶし(うなぎ)、からあげとハンバーグも大好物です。
 食べ物絵本で点数をかせぎます。  

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2019年05月02日

オニのサラリーマン 富安陽子

オニのサラリーマン 富安陽子 福音館書店

 仕事の鬼ではなく、オニがサラリーマンをする絵本です。
 名刺を見ると、「じごくカンパニーの平社員」です。笑えます。
 オニというよりもふつうのパパです。
 昭和時代の雰囲気がただよいます。こどもがおみやげをねだったり、おべんとう持参だったり。
 ママ、ボク、妹の四人家族で、ママは専業主婦です。猫もいます。
 関西弁です。
 黒くて太いこん棒をもって出勤です。重たいだろうなー
 絵はこわーい。妖怪絵画です。
 こわがりの子はいやがるかも。
 職種は警備員、単純労務職です。地獄で、死後の霊を監視します。
 青森県恐山、大分県別府温泉、芥川龍之介のクモの糸、それらがベースにあります。
 オニがいて、死後の人間がいます。
 オニたちは公務員のようです。えんまだいおうがトップです。
 お弁当の中身の絵がおもしろい。目玉焼きが目で、瞳のまんなかにあるのは、のりだろうか。
 「ごくらくなんかいってもひまなだけだ」には笑いました。
 おおさわぎでにぎやかです。
 職務怠慢には懲戒処分です。
 「鬼ころし」、そういう銘柄の日本酒があったような。
 最後のページ、「お疲れさま」と声をかけたくなりました。サラリーマンはつらい。  

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2019年05月01日

ゴージャスなナポリタン 丸山浮草

ゴージャスなナポリタン 丸山浮草 産業編集センター

 純文学の私小説の趣がある文章です。ページいっぱいの文字には他作品で既視感があります。ひとりがたりの一人称が続きます。描写が続きます。心の中にあるつぶやきが文章化されています。
 主人公は、ともふさ40歳、昔からいつまでたっても三人家族の核家族、父と母がいます。独身。彼女あり。仕事は、デザイン会社のライター。文章を書くことを仕事とする人です。この本には、彼の日常が書いてあります。
 リズム感のある曲にのっているような感じで読む文章です。
 業界内の他社にはわかりにくい話もあります。出版広告業界です。
 得るものがないような不安を抱えながら読書は続きます。
 まだ途中なので、感想を継ぎ足します。

(つづく)

 読み終えました。文章量が多く、かつ独特な書き方なので疲れてしまい、途中から流し読みをしました。
 幻想的です。死体が出てきたところが新鮮な発想で気に入りましたが、話が集団のゾンビ化したので残念でした。単体の死体として続けるとおもしろかったのに。
 書き方は、既視感があります。昔の芥川賞作品を思い出しますが、個性は異なります。
 
 思いどおりにいかない人生や生活があります。
 何年たっても核家族で未婚の主人公に基本があります。
 タイトルのナポリタンは、なんやかんやいろいろ混ざっているという日常生活のぐちゃぐちゃしたものを言い例えてあるのでしょう。虚無感、焦燥感、いろいろあります。
 文章はうまいのですが、だからなにという、次に続くものが欲しい。
 自分で自分を見つめます。日記を作品化してあるような。ときおり、思いつめるあまり、神経症にまでなっていないかと心配します。
 
 終わってみれば、力作でした。

 良かった文節などとして、「結婚は…ないなあ」、「おれって、サイテーだ」、「だれにだって、持ち場がある」、「うまけりゃいい」

 調べた言葉として、「アンチテーゼ:否定するための反対の主張」、「マンガ ロビンソンの恋:?」  

Posted by 熊太郎 at 06:36Comments(0)TrackBack(0)読書感想文