2019年05月12日

ディアガール エイミー・クラウス・ローゼンタール

ディアガール おんなのこたちへ エイミー・クラウス・ローゼンタール 主婦の友社

 絵本です。
 先日、同作者の「おかあさんはね」を読んで、この本にきました。
 51歳で亡くなった女性の遺作です。娘さんとの共作となっています。
 
 親愛なる女子たちへのメッセージでいいのだろうか。
 絵が可愛らしい。線は細く、絵はおおきくまるく柔らかです。
 いまある自分の姿形を素直に受け止めて、「これがわたし」という開き直りと肯定、自信をもとうという基本精神があります。私はこれで生きて来たしこれからも生きていきますという強い意志表示があります。
 写真のような写実的な絵もあります。
 生きているんだという実感が伝わってきます。
 ファッションを楽しもう。
 趣味を楽しもう。
 ぐちばっかり言うのはやめよう。
 ひとりでも大丈夫
 疲れたときは、ひとやすみ
 さいごに、この本を大切にしてほしい。
 倒れそうなとき、心が折れそうなとき、この絵本を開いてください。
 本のなかに、あなたの味方がいます。いつでも本の中で待っています。
 励ましの本です。作者が、死んじゃいけないって言っています。  

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2019年05月11日

ある晴れた夏の空 小手毬るい

ある晴れた夏の空 小手毬るい(こてまり・るい) 2019課題図書 偕成社

 タイトルは、広島、長崎、原爆投下の日をさします。
 原爆投下の是非をめぐって、ディベートするアメリカ合衆国にいる少年少女たちの話です。
 1945年8月6日午前8時15分広島市に原爆投下、同月9日午前11時2分長崎市に同じく投下がありました。
 最近読んだ原爆がらみの本は、井伏鱒二「黒い雨」、百田尚樹「日本国紀」です。
 投下の是非に関しては、戦争を終結させるためというのは建前で、アメリカ合衆国は実験をしたかったという文章を読んだことがあります。
 原子爆弾の種類が、広島市投下爆弾がウラン型リトルボーイ、長崎市投下爆弾がプルトニウム型ファットマン。さらに、外国は、満州を始めとして、もともと日本を自国のものにしたかったという説も読んだことがあります。日本が、他国の植民地になってしまうのです。日本は必要に迫られて、戦争を始めなければならない状況に追い込まれていった。そして、戦争に負ける可能性があることは日本政府・軍部上層部の人間はわかっていたという説があります。なかなか複雑です。
 26ページまで読んだところで、感想を書き始めてみます。

 メモ用紙に原子爆弾投下肯定派として、ノーマン(男性。原爆を必要悪と表現します)、ケン・カワモト(日系人男性)、ナオミ、エミリーと書きました。
 その反対側に、否定派として、ジャスミン、メイ(日系人。母親が日本人。されど日本での成育歴短く、実態としてアメリカ人)、スコット、ダリウス(男性)と書きました。
 日系人もいますが、全員、本人の意識はアメリカ人です。
 コミュニティセンター主催の公開討論会で、テーマが「戦争と平和を考える」です。ディベートです。白か黒かよりもグレーを選択する日本人には苦手な分野です。
 ディベートの内容は、2004年、平成16年頃のお話で、メンバーは高校1年生が2年生になるぐらいの時期です。アメリカ合衆国は新学期が9月で、6月から8月の夏休みの頃の出来事というお話になっています。

(つづく)

 主人公のメイが語ってくれますが、当時15歳だった彼女は、今はすでに25歳になっています。時は2014年、日本でいうと平成26年です。ですので、内容は、ふりかえりです。
 お話は、2004年5月から始まります。
 
 討論をするにあたって、「友情と意見」を分ける。
 30ページ付近は、まだ、原爆がなんなのかを知らない子どもたちです。

 公開討論会第1回が始まりました。
 戦争を終わらせるために原子爆弾を使用したという理由、動機から始まります。平和のために人殺しをするは、してはいけないことです。復讐が延々と続きます。争いは終わりません。
 アメリカ合衆国に原子爆弾が投下されたらアメリカ国民はどう思うのか。アメリカ国民は、自分たちが戦争で負けるとは思っていない。原爆を投下されることもないと思っているのか。(でも現実には北朝鮮が核搭載のロケットを撃ち込むと威嚇します)
 読みながら、アメリカ国民のアメリカ人がナンバー1という「うぬぼれ」、そして、「誤解」を含みながら討論会は始まったと考えました。
 
 原爆投下の最終判断を下したトルーマン大統領のことを考えます。彼は、人体実験をしたかった。白人は、有色人種を差別する性質をもっていて、有色人種を奴隷制度として扱っていた歴史をもふまえて、白人であるアメリカ人は、日本人を、「人間」だとは考えていなかった。彼らにとっては、アメリカ人のうちの白人の利害関係者だけが、「人間」だった。
 ドイツ人はユダヤ人を差別する。
 では、日本人はどうだろう。胸を張っていられるのだろうか。

 日本人、峠三吉という人の被ばくしたときの詩の紹介があります。
 表面と裏面、感情と理論、ごっちゃにしながら、物語は進んでいきます。
 原爆を投下しなくても、日本は8月中に降伏する予定があった。
 書中では、主人公のメイが、「落とす必要のなかった爆弾」と説明します。
 国家が、人心を操作する恐怖があります。
 国民は、国にもマスコミにも自分の心を操作されないぞという心構えが必要になります。上手な詐欺的行為にひっかかってはいけません。正確な情報を早くたくさんつかむことが大切です。
 原爆投下の当時の候補地として、広島、長崎、小倉(こくら。北九州)、新潟。
 メイは、発表という行為に、自己陶酔していっているような気がします。

 原子爆弾投下の肯定派が、ノーマン(リーダー男子。愛称スノーマン)、ケン・カワモト(ジャパニーズ・アメリカン。両親はアメリカ生まれのアメリカ育ち。日系人だが、本人の気持ちはアメリカ人)、ナオミ(ユダヤ系)、エミリー。
 原爆投下の否定派が、ジャスミン(リーダー。ハワイ生まれ、西海岸育ち、高1から東海岸、父は作家、母は画家)、メイ・ササキ・ブライアン(日系人。本作の主人公。母が日本生まれの日本人、父がアイルランド系アメリカ人)、スコット(アイルランド人。ナチス嫌い)、ダリウス(黒人)です。

(つづく)

 読み終えました。
 討論会の勝敗にはこだわる必要がないような。ひとつのことを深く掘り下げて考えることを推奨する部分もある作品です。

 白人と有色人種の問題があります。白人が、有色人種を差別するのです。
 
 真珠湾攻撃の話が出ます。
 日本は、宣戦布告をする前にハワイ真珠湾を空爆した(1941年12月8日)。卑怯者だ。これに対して、そもそも米国上層部は日本が宣戦布告することを知っていた。知っていて知らぬふりをしてアメリカ国民の憎しみを盛り上げて戦意高揚にこの件を利用した。日本からみれば、不運も重なって、宣戦布告の手続きが遅れた。
 以下、事実が正確ではないものの、そう思いこまされたという事例が続きます。ねつ造。なかったことをあったこととして混乱しています。
 原爆は、パールハーバーの罰。パニッシュメント。
 アメリカ大統領ルーズベルトは、戦争を望んでいた。終戦の年、終戦前に63歳脳卒中で死去。後任がトルーマン。
 「南京虐殺(事実誤認の議論があります)」、

 胸に響いたフレーズなどとして、「(黒人ダリウスの言葉)差別されたからといって、黒人が白人を処罰してもいいとはならない」、「国を守るために軍隊は必要」

 移民の国アメリカ合衆国ですが、東京も日本全国各地から来た日本人の移民の都市という雰囲気があります。
 アメリカは、多人種が寄り合い、手をつなぎあって、自由な国をつくると記述がありますが、トランプ政権はそれに背を向けているかのように白人社会優先です。
 書中の判断では、アメリカ人は自分を中心にして、「個人」としてものを考える。日本人は、他の人はどう思っているかと「集団」として考える。(ただ、現代の日本人は、個人単位で、ものごとを考えるように変化しています。いろいろいやなことがあって、大家族とか、濃密な近所づきあいを避ける傾向にあります)
 
 日本への原爆投下は間違いであった。

 伝承を怠ると、人間は再び過ちを繰り返します。

 調べた単語や印象に残った言葉などとして、「俳優のデンゼル・ワシントン:現在64歳。黒人、背が高い」、「ミッドウェイ海戦:1942年6月。日本の惨敗」、「国家総動員法:政府は戦争のために国民に命令できる」、「バターン死の行進:フィリピンにて、捕虜の移動時に捕虜2万2000人が亡くなった」、「442:日系人部隊。日系アメリカ人がアメリカ軍人として戦い白人アメリカ人を助けた。442連隊戦闘団」、「ユダヤ人収容所もあったが、米国には、日本人収容所もあった」、「虚をつかれる:油断していてすきを突かれる」、「日本人に対する、日本人が悪かったという教育、思いこませ」、「人はまず個人」、「(原爆投下の理由として)ソ連にみせつけたかった」、「アメリカ合衆国は南太平洋で23回も核実験を行った」、「大韓民国、北朝鮮の成立は、1948年。まだそれほど経っていない」、「2011年東日本大震災。福島原子力発電所事故発生」  

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2019年05月10日

「ごめんやさい」と「けんかはやめやさーい」 わたなべあや

「ごめんやさい」と「けんかはやめやさーい」 わたなべあや ひかりのくに

「ごめんやさい」
 だいこん、れんこん、グリーンピース、ナス、みどりピーマン、きいろピーマン、あかピーマンが、登場人物です。みんなかわいい絵です。
 相手に「ごめんなさい」と声がけをすることで、人間関係を円滑に保とうというメッセージがあります。
 ナスちゃんが間違えてダイコンさんの帽子をかぶりました。ごめんやさーい。ダイコンさんが、いーいーよーと許します。
 そんな感じで、お話が続きます。
 ダイコンさんの表情がいい。
 レンコンさんも素敵な笑顔です。
 しつけ絵本の意味合いもある本でした。

「けんかはやめやさーい」
 ひとつのものをふたりで取り合いをする。
 ままごとあそびでよくあるトラブルです。
 「かーしーてー」
 なかよくわける。
 「どうぞ」のひと声がほしいときがあります。
 処世術が紹介してあります。  

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2019年05月09日

せんろはつづくまだつづく 竹下文子・文 鈴木まもる・絵

せんろはつづくまだつづく 竹下文子・文 鈴木まもる・絵

 先日読んだ「せんろはつづく」の続編です。
 登場する少年少女は生き生きとしています。実際に動いているようです。可愛い。
 大人が読むと、「線路=人生」です。そして、物語は、障害物競争です。次々と困難な状況にぶつかります。しかし、こどもたちは、障害に向かって行き、解決して、次を目指します。力強い。
 知恵比べが続きます。最初は軽い障害物ですが、だんだんおおものになります。
 文章はリズミカルで、蒸気機関車の走行音を聞くようでもあります。
 スイカ畑を切り抜けたのは爽快でした。
 あひるの集団も数が半端なかった。どいてちょうだーい。
 踏切だよー
 駅もできあがりました。
 ループ橋はグッドアイデア
 うさぎさんも拍手してくれます。
 がけ地、深い谷、断崖絶壁をなんとかして通します。
 すばらしい発想です。絵に勢いがあります。
 夕映えがきれいでした。  

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2019年05月08日

ぼくとニケ 片川優子

ぼくとニケ 片川優子 2019課題図書 講談社

 小学5年生の仁菜(にな)という登校拒否の子が、捨て猫(のちにニケと名付けられる)を同級生である幼なじみの立石玄太(げんちゃん)に押し付けて飼わせるという手法は、立石家にとっては義務ではないので、設定にちょっと無理があるのではないかと思いつつ物語はスタートしました。
 途中、ネコ嫌いと呼ばれる仁菜の母親雅(みやび)が、立石玄太の母親にその子ネコを飼うことはいけないことだというように抗議するポーズが出てくるのですが、雅が猫を飼っているわけではないので、雅さんに負担があるわけではなく、ちょっとそこも状況設定に無理があると感じるところまで読みました。今、全体で221ページのうちの90ページ付近にいます。内容は、子猫の成長記録を読んでいるようです。
 拾われたときの体重420グラムの子ネコ「ニケ」はかわいい。上野動物園で生まれたパンダシャンシャンを思い出します。毛の色が二色だからニケと名付けられた子ネコは、生後2・3週間だそうです。
 仁菜の登校拒否の理由が、先生に恋の告白をしてふられたからというのは、どうなのか。小学5年生女子の心理は複雑です。学校へは行きましょう。失恋なんてしょっちゅうあることです。その人がだめなら次の人をさがせばいい。
 ニケの「ふみふみ」という両前足で押す動作がかわいい。
 ペット用のシャンプーというものがあるのか。
 雑種の三毛猫であることが判明するのですが、たしか性別がどっちかにかたよっているということを以前どこかで読んだことがあります。たしか、基本的に三毛猫は「メス」ばかりでした。
 登場人物がたくさんです。メモ用紙にメモしながら把握します。
 読んでいても、登校拒否児の仁菜さんは、ふつうの小学5年生女子に見えます。どうして学校へ行ってくれないのだろう。不思議なのは、母親の雅さんがそのことで悩んでいる様子がありません。
 母親と娘の関係になにか問題がありそうです。母親が娘を支配しているのかも。それに対して娘が反発しているとか。
 動物を飼うことの責任のお話になってきました。死を含めて、ちゃんとめんどうをみなければなりません。動物の世話をきちんとできないのなら飼わないことです。だれかに迷惑をかけてしまいます。

(つづく)

 保護猫ボランティアのお話が出てきます。捨てネコのお世話をする活動のようです。
 
 人間の心をいやすために動物の力を借りる。

 今風だなと感じた単語類として、「タブレット」、「キャットタワー(室内遊具):柱があって、鳥小屋みたいな箱がのっている」

 ネコ好きな人たちのための物語です。読みながら、拾われたネコの成長を楽しみにします。

 ネコのニケにとってみれば、人間に捨てられたあげくに病気になって、さんざんな人生です。

 「(生き物を飼う)責任」の話が出てきます。責任を果たせないのなら飼育してはいけないのです。命を預かるのですから。

 仁菜さんの登校拒否の話があります。一般的には「いじめ」が原因ですが、彼女の場合は事情が違います。「反抗」です。副担任に天然パーマをいじられて怒っています。

 ニケの成長記録が続きます。
 体重1.3キログラム、生後2か月あたりまできました。
 ニケはおもちゃじゃありません。生き物です。
 
 親しくても、べたべたしてくるとイヤになってくるから、距離はおきたい。
 立石玄太と松木仁菜との間の距離です。

 おもしろかった表現として、「お父さんはもう大人だから、言っても無駄」、「反面教師(悪い見本)」、「ニケがいる新しい日常」、「木曜日、唯一習い事がない平日」

 ニケの病名は、猫伝染性腹膜炎

 父親に対する反発と共感があります。ただ、相手の言いなりになることを良しとするのはむずかしい。

 安楽死の話にまで至ります。

 思い出づくり。

 オス猫モン

 ネコ=自分なのかも。命を大切にしよう。  

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2019年05月07日

魔女ののろいアメ 草野あきこ

魔女ののろいアメ 草野あきこ 2019課題図書 PHP

 タイトルが怖い。復讐のお話だろうか。子どもさん向けに、いいのだろうか、というところから読み始めました。
 姉と妹がいます。妹の立場で、姉に文句があります。姉に、魔女からもらったのろいのアメを食べさせて気絶させるのが目標です。うらみはらします。上に立って、下にひどり命令をする者に対する仕返しです。
 おねえちゃんがいて、妹のサキちゃんがいます。15冊も図書館の本をかかえるからサキちゃんは腹が立ちます。嫌なら嫌と姉に言えばいいのです。5冊が、自分が借りたものであれば、5冊だけ図書館へ返せばいい。あるいは、姉の分も返却する代わりに見返りを求める。
 本読みは、紙芝居を見るようです。各ページに絵があって、絵本とか、動画、マンガの雰囲気です。わかりやすい。
 魔女とカラスは悪者。定番です。基本的な設定です。カラスは悪者扱いされるのは心外でしょう。
 『アメ屋』は、最初、雨屋を想像しました。お菓子、なめる、飴です。
 経営者は、自称、いい魔女です。悪い魔女、いい魔女、区別がよくわからない。
 比較があります。きょうだい間は、よく、比較されます。上は下を見下し、下は平等を求めます。
 『のろいアメ』は、悪口でつくるアメです。きょうだいでなくても他人同士でもありそうな話です。恨む相手に害を加える。
 魔女にはばちがあたります。サキちゃんは思い直します。
 だまっていないで、けんかしたほうがいいと思うよ。言わなきゃ仲良くなれません。自分は自分、ねたまない。がまんして、いい子でいないほうがいい。
 悪口が10個に届かなかったのがよかったのかも。
 おねえちゃんは、
 ①いばりんぼう
 ②くいしんぼう
 ③うそつき
 ④ねぼすけ
 ⑤おこりんぼう
 ⑥けち
 ⑦ブス(顔がたぬき)
 ⑧ばか
 メガネをかけたおねえちゃんは、いいとこなしです。
 サキちゃんは、正直者です。
 きょうだいというものは、上は下を家来のように思うのですが、下は上を上司とは思っていません。きょうだいの上下関係は一時的なもので、最初は身近な遊び相手ですが、そのうち、それぞれにともだちができて、人間関係が広がって、それぞれ別の世界で暮らすようになります。  

Posted by 熊太郎 at 06:14Comments(0)TrackBack(0)読書感想文