2014年06月08日

就職がこわい 香山リカ

就職がこわい 香山リカ 講談社+α文庫

 2003年の執筆です。もう11年前です。11年が経過した今も、共通する項目です。
 仕事がしたいのに仕事がないとは違う理由で働かない。仕事があっても働かないで一生を終える。周囲はそれを止めることもできない。病巣です。
 読み始めでは、対象者に対する同情が湧きますが、読み終える頃には失望が広がります。
 完璧な人間なんていない。だれしも、なにかしら不足するものがあったり、逆に、余計なものをもっていたりする。人間はどこかが欠けた陶器のようなもの。水を注ぐと、どこかしらから水が漏れ出てくる。だから互いに協力し合って、すき間を埋めて生活していくと学びました。
 書中では「個」について指摘があります。「連」がなくなった。「個」は、ばくぜんとした不安をかかえている。
 大学在籍学生対象の内容です。卒業後の離職時期が早いとか離職率が高いとか聞くとがっくりきます。働きたくても働けない人がいっぱいいるのに。ふつう、働き始めて壁にぶつかって、それをどう克服していくかで工夫して、いくつもの壁を乗り越えていくものなのに、最初の壁で、引き返してしまう。
 規制を規制と思わなくなると働くことが楽になる。勤務時間帯は最初からないと思えばいい。仕事の半分は趣味だと思えばいい。お金のために働くけれど、それがすべてではない。遊びの部分もある。気晴らしができる時間帯もある。
 女子学生対象の記事があります。女子の就職、勤務内容は、女子であることから難しい、あるいは厳しいものがあると解説があります。最終的には、母子関係にまで分析が至ります。母親が娘の就職に悪影響を与える。このあたりから親への観察が出てきます。親も苦しい。
 パラサイトシングルという言葉の意味を初めて知りました。未婚のまま親と同居を続けて人生を終える。親が死んだら経済的に行き詰まる。最後は、親の財産を食いつぶして、福祉の世話になる。それでいいのかと思いながらもそれを止めることができない。できるとしたら「恋」とか「愛」とかを経た「結婚」とか「子育て」なのだろうが、本を読んでいる限り、期待感は薄い。

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