2015年05月13日

ぼくの、ひかり色の絵の具 2015課題図書

ぼくの、ひかり色の絵の具 西村すぐり ポプラ社 2015課題図書


 読み終えましたが、読書感想文は、書きにくいのではないかと感じました。

 その理由は、小学校6年生の主人公として、ユク(栗林ユク。男子児童)、ハネヅ(東田ハネヅ、女子児童)、問題児として、同級生ケイタ、6年1組のやっかいな男性教師として、石丸先生52歳ぐらい。6年2組の先生が、あだ名がガウディ先生(サグラダファミリア教会、スペインの建築家ガウディが由来)会田先生男性26歳ぐらい、このふたりが比較されていて、年配の先生は融通がきかず良くない、若い先生は理解があって良いというような先入観に満ちています。
フリークライミングをする若い女性がサヤさん、アララギ・ウツギさんという男性の絵描きさんがいて、彼の奥さんがカエデ先生(大学の先生)、主人公に戻って、ユクの両親が理容師・美容師でお店「栗林理髪店」・「マロン美容室」を経営している。
ユクの父親は、東田農園の娘ハネヅの父親の後輩、以上は読みながら徐々にわかってくる内容で、人物像を把握したり、イメージしたりするのに、文章の固まりの切れ目があまりなく、休息して考える時間がとれないこともあって、人物構成と物語展開が、なかなか腹に落ちてきませんでした。

 小学生から見た町を見渡す風景は、日本の田舎なら、どこにでもある風景だと思います。その点で、読み手の小学生たちは共感をもちやすいでしょう。
 山があって、町を見下ろすことができる。この物語の場合は、「てんぐんじょう(てんぐ城山)です。東田ユクは、石丸先生の緑色の絵の具を選択した言動が原因だとして、自分が描いたてんぐんじょうの絵を自分で破り捨ててしまいます。だから、展示のときに彼の絵だけがありません。緑色の状態にこだわったから彼は自分の絵を破りました。そこには、先生に対する怒りが含まれていました。
ユクは石丸先生に言います。ぼくの絵の具はひかり色です。透明水彩絵の具という絵の具の種類の意味があるのですが、「ひかり色」のほうが、気持ちがこもっています。

 時代背景を察すると、100ページあたりから、主人公のユクが鉄道で旅を始めるのですが、IC乗車券の現在、物語の内容は、思い出の記です。

 主人公の名前「ハネヅ」にこだわるのは、ハネヅ色という色があるからです。ピンク色ぽいけれど、ピンクではない。同様に、「ユク」にこだわるのは、「ユクの木」があるからです。
 作者は他のシーンでも緑色にこだわっています。ユクは自分が書いた風景画のなかで、緑色の部分がうまくいかず、自ら絵を破り捨てています。
 色イコール人間の個性にまで、考えが届きます。人間は千差万別、同じ色(個性)の人はいないのです。おおぜいの人間が同時に地球上で生きていくためにはお互いの個性を尊重し合って譲り合いましょうというメッセージが聞こえました。いっけん、6年1組石丸先生攻撃のように思える文章運びです。ちょっと抵抗感が残りました。そのほかにも、色に関する情報があふれています。川土手に咲く黄色い花は、特定外来生物でオオキンケイギク、他の植物を守るために排除しなければならないというのは、人間にたとえることもできるわけで、意味深です。

 植物絵画物語でもあります。なかなか珍しい物語設定でした。絵を描くこと、植物の生態を知って絵にしていくこと、それを将来の職業としての「夢」にすること。ただ、絵では食べていけないと思うのは、大人の常識です。
 地域に住むお年寄りに絵手紙を出す学校の行事があります。小学校6年生男子・女子児童間の恋のようなものもあってほほえましい。思春期前の平和な時期です。

 ユクがときおり万華鏡を手にします。ユクは、無限に広がる色とりどりの世界が好きです。
 タイ焼きの話とか、サバ寿司の話、水泳とか英会話とかのいくつもの習い事の話、そして、実は、共働きだから預ける都合で習い事をさせてられているのではないかという疑問、小学生の生活も忙しい。小学生でもストレスはたまります。
 
 ハネヅがユクのテレパシーをキャッチする超能力の話が出ます。ユクのいいたいことをハネヅが当てるのです。言葉を心で聞く。

 サヤがフリークライミングをして、人が行けない場所に咲く花の写真を撮影して、みんなに花を紹介したい話もありました。

 ビワを食べるのは6月中旬、梅雨時の始まりからなので、物語の設定は、6月あたりだろうと考えました。作者さんは、舞台を中国地方のとある県と説明されていますが、自分は、九州の熊本県で設定して思いをはせました。

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この記事へのコメント
ちゃんとした物語も載せて欲しい!
Posted by ういんなあ りっくん at 2015年08月04日 13:29
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