2024年03月19日

死刑にいたる病(やまい) 邦画

死刑にいたる病(やまい) 邦画 2022年(令和4年) 2時間9分 動画配信サービス

 阿部サダヲさんの出る金曜夜のドラマ、『不適切にもほどがある!』を毎週楽しみにして観ています。アメリカ映画の『バックトゥザフューチャー』みたいに、昭和61年(1986年)と現在を行ったり来たりするタイムトラベルドラマです。
 先日は、同じく阿部サダヲさんが出る邦画、『シャイロックの子供たち』を観ました。なかなか良かった。同じく、『謝罪の王様』も観ました。途中首をかしげるシーンも多々ありましたが、映画全体が終わってみれば、なかなか良かった。

 こちらの映画は、阿部サダヲさんが、連続殺人鬼を演じます。17歳・18歳のまじめでおとなしく学力優秀な高校生である男女23人と、26歳の成人女性1人を殺した罪で、死刑判決を受けて服役中です。
 彼の主張があります。『罪は認めるが、最後の事件(26歳成人女性の死)は冤罪だ。(えんざいだ。自分は無実だ)。殺人犯が他にいることを証明してほしい』
 そういう内容の手紙を書いて、刑務所から知り合いの大学法学部在籍中の雅也に調査を依頼します。雅也が弁護士事務所にアルバイトとして入り、推理と調査が始まります。

 阿部サダヲさんはなんでも演じる人です。すごいなあ。いろいろな役をやるんだ。仕事は役者です。コメディもやるし、今回のような恐ろしい殺人犯の役もやります。映像の中に彼の狂気が散らばっています。阿部サダヲさんが演じる男は、一見(いっけん)心優しい善人なのですが、スイッチが入ると残虐な鬼になります。阿部サダヲさんの口調には説得力があります。自信満々です。

 人生において自分も何度か現場で体験した火葬場風景から始まります。
 映像では、雅也の祖母の葬式と火葬です。
 頼りない雅也の母親の姿があります。自分でものごとを決められません。
 雅也の父親は、Fクラスの大学に入った雅也を軽蔑しています。息子が三流大学だから恥ずかしい。
 うまくいっていない家庭です。(Fクラス大学:受験すれば合格できるという、学力の低い者でも入れる大学。「F」は、ボーダーフリー(BF)のFからきている)

 映画を観ながらこの感想を書いています。
 この映画のメッセージは何だろう。
 何を表現したいのだろう。
 
 まあ、設定と経過には、いろいろつっこみどころはありますが、これは、映画です。
 自分はつくり手の立場で映像を見るので、殺人シーンは怖く(こわく)ありません。
 監督以下スタッフがカメラをにらんで撮影している様子を想像しながら見ます。光と影を駆使して(くしして)、殺人行為の残虐さを強く描いてあります。役者はじっさいに殺されるわけではなく、殺される人物を演じています。(監督が撮影中に、『カット!』といえば、殺された役の人は生き返り、「おなかすいた~ 休憩で、なに食べる~」なんて、言っているのだと思います)
 ひどい殺し方です。この映画はひとりで観る映画です。生きている少年少女の爪をはいでから、じわりじわりと殺していきます。とうぜん叫び声が響き渡ります。
 犯人は、脳みそに異常ありです。病(やまい)です。
 ふと、思う。殺人鬼である阿部サダヲさんが演じる榛村(はいむら)は、親から虐待を受けていたのではないか。(その後、当たらずとも遠からじという展開になっていきました。なかなか自分は勘(かん)がいいとうぬぼれました)

 BLTO:ベーコン、レタス、トマト、オレンジ。なお、殺人鬼の職業は、パン職人であり、パン屋の自営業です。少年少女にパンやジュースをおまけして、手なずけて犠牲者にする手法です。けしからん奴です。

 何かしら、学歴偏重(かたよった学歴重視)の意識が、映画の底辺にあります。
 いまどきは、行かなくてもいい人まで大学に行くようになりました。
 昔は、お金がなければ、大学進学はあきらめて就職しました。
 働いて、お金を貯めてから会社を辞めて、大学に入学する人もいました。
 夜間の大学や定時制高校に行く人も多かった。
 そんな人たちが中小企業に入って、がんばってまじめに働いて、サービス残業みたいな長時間労働をがまんしてやって、日本の社会を支えていました。堅実(けんじつ。てがたく、まじめに)に働く労働者にとっては、職場が家でした。
 いまどきは、学力がなくても大学に行くのか……
 また、いらぬことを書いてしまいます。
 60歳を過ぎたら、学歴は関係ありません。義務教育だけで卒業の人でも、老後を迎えて経済的に豊かな人はいます。社会においては、学力だけで豊かになれるものではありません。本人の才能と努力、人間関係という周囲の支えがいります。老後は、本人のそれまでの人生の成果です。だれかに評価してもらうようなものでもありません。
 どうして目的がないのに、なんとなくとか、みんなが行くからとか、とりあえずという理由で大学に行くのだろう。人にもまれて働きたくないから、勉強を口実(こうじつ。理由付け)にして、労働から逃げているように見えます。資格取得など、学習目的がない大学生は、合法的な失業者です。
 ムダなお金を、大学を始めとした教育関係の法人組織に払うよりも(親のカネとか奨学金とかで)、自分が働いて稼いだお金で、自分が食べたいものを食べて、自分が着たい洋服を着て、自分が行きたいところへ旅に出たほうが、気持ちがすっきりします。
 あわせて、返済のめどがつかない借金(奨学金)はつくらないほうがいい。お金というものは、貸してもらうよりも、まずは、自分で稼ぐ(かせぐ)ものです。

 映像では、いろいろ複雑な事情が、雅也探偵の調査で、明らかになっていきます。
 
 『暗示』があります。殺人鬼は、人を操作する能力に長けているのです。(たけている。能力が高い)。人がいいとだまされます。殺人鬼のくちびるから出てくる言葉は、すべてウソだと決めつけたほうがいい。

 洋画『羊たちの沈黙』の雰囲気があります。殺人鬼の話でした。精神科医で殺人鬼の人物が出ていました。

 児童虐待の映画でした。(やっぱり)
 ふーっ。(内容が)重たいなあ。
 
 殺人鬼は、人心をつかむことがうまい。味方のようにふるまって、実は相手を、殺人の対象者候補にリストアップしている。逃げたくなったらいつでもおいでと声をかけて、殺人の餌食(えじき)にする。なんだか、最近のSNSで少女をおびきだす事件を連想させます。

 あっちもこっちも児童虐待だらけです。
 ひどいことをする親がいます。加害者が継父というパターンもあるでしょう。
 こどもの心は壊れていきます。自傷行為があります。壁土を食べます。
 なんて、暗い内容の映画だろう。救いの光が見えない。ラストで光が見えるのだろうか。
 
 幻想の世界に入っていきます。
 だれがだれを殺したのか、混乱があります。
 狂気をもった人間がいます。
 暗示と催眠術があります。病んでいる。(やんでいる)
 犯行の手法は、現実には無理です。これは、映画です。
 
 親から抑圧(よくあつ)されたこどもは、自尊心(プライド。自分が自分であることの誇り(ほこり)。自意識(自分のことは自分で決める)。自信)が低い。いたわってあげれば、こちらになつく。なついたら、利用する。そんな流れです。自己否定があるのかもしれません。虐待されたこどもは、虐待する親を責めずに、自分を責める。自分がだめだから、親が怒って自分を虐待すると考える。
 殺人鬼の言葉です。『信頼関係を築いてから、いたぶる。(おどかして、いじめぬく)。ぼくは、そういうふうにしか人と付き合えない』。そんな人と結婚したら、おおごとになります。

 まあ、つくり話です。説得力はありません。まあ、映画です。
 阿部サダヲさんは、怖い殺人鬼をじょうずに演じていました。また、殺人鬼と対等にやりあう大学生を演じた俳優さんも良かった。(改名されているようです。岡田健史さん→水上恒司さん)

 『こっち側(殺人で死刑判決を受けて服役)に来たら、もう戻れないよ』。最近簡単に殺人事件が起きます。人生でとりかえしがつかないのが、自殺と殺人です。カッとなっていらぬ行動をしてしまう前によく考えたほうがいい。自分の思いどおりにならない相手に対して、表面には出さないけれど、仕返ししてやりたいと思っている人はいます。されど、実行する人はほとんどいません。一時的な憂さ晴らしができても(うさばらし。気晴らし(きばらし))、そのあとで失うものは大きい。
 思いつめると発狂します。気持ち60%ぐらいで、そのことはあきらめるという選択肢の気持ちを40%ぐらい残しておいたほうがいい。気持ちの余裕とか、寛容です。まあいいかです。そのうちいいこともあるだろうと淡い(あわい)期待をもちます。

 ラストは、びっくりシーンなのでしょうが、わたしの心には響きませんでした。

 タイトルクレジット(映画の最後に流れる文字群)を見ていて、原作が、櫛木理宇さんであることを知りました。ホラー小説を書かれる方です。以前一冊読んだことがあります。
『寄居虫女(ヤドカリオンナ) 櫛木理宇(くしきりう) 角川書店』。以下は感想の一部です。
 読んでいる途中も、読み終えても、気持ちが晴れる内容ではありません。ある日、男児が家に迷い込む、しばらくしてその母親という女が家に入りこむ、というようにして、家を乗っ取られていく物語です。DVとか虐待とかが下地にあって、とある国のような洗脳(思考をコントロールされる)とか互いを監視し合う手法が記載されています。皆川ファミリーが崩壊していきます。けっこう恐ろしい(おそろしい)内容です。

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