2013年01月24日

怖い絵 中野京子

怖い絵 中野京子 朝日出版社

 中世ヨーロッパの名画を中心にして、絵の時代背景や社会情勢を基礎に置きながら絵が描かれた隠された秘密を探求する文章作品として仕上げてあります。宗教が深く関わりをもっています。紹介されている絵画は、その時代の何人の人たちが見たのだろうかと興味をもちました。そして、これから人類はどこへいくのかという疑問をもちました。
 ヨーロッパの歴史とか人物にうといので、残念ながらほとんどの事柄については理解できませんでした。当初は、本のタイトルからオカルト的な恐怖を感じる絵が羅列(られつ)されていると予測しましたが、絵の表面的なものではなく、人間の心の汚れた部分を浮かびあがらせる批評が中心となっています。不気味なものではなく、理論的な解釈です。きっと作者も絵を描く人なのでしょう。自分で対象の絵を模写するような行為をしながら考えたことを文章化してあると推察します。
 たとえばこれが、日本史に登場する襖絵(ふすまえ)とか掛け軸であり、登場人物が日本の有名人であればもっと理解できたと感じつつ、そういう内容の本も出版できるのではないかと発想しました。
 見えない「悪意」を見る。催眠効果を図る。そうやって、人間は人間をだましてきた。本音の事実を知ることが大事だとこの本は語ってくれます。
 ヨーロッパ、ロシアの中世という時代は暗いという印象がついてしまうのですが、すべてではなく、ほかに明るくて楽しいこともたくさんあったにちがいないと思いたい。

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この記事へのコメント
HKテレビ(Eテレ)「日曜美術館」、2015.4.26放送回(女神の瞳に秘めた謎/ルネサンスの巨人・ボッティチェリ)に出演した中野京子(作家・ドイツ文学者)の解説・解釈に感銘を受けました。それで、早速 彼女の著作(『怖い絵~死と乙女篇』を購読した次第。
「作品2/ボッティチェリ『ヴィーナスの誕生』」の章が、それ。
例えば、中丸 明『絵画で読む聖書』(1997年)のようなアプローチが類書に該当するのでしょうが、謎解きの深さとリアリズムでは「中野本」に軍配が上がりますね。
かつて、NHKテレビ(Eテレ)に「NHK人間大学/謎解き日本史・絵画史料を読む」(1999年)という番組が放送されていましたが、中野女史の描く精神世界は それに近いような印象です。
Posted by 藻岩山 at 2015年05月05日 21:09
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