2024年04月04日

月の満ちかけ絵本 大枝史郎・文 佐藤みき・絵

月の満ちかけ絵本 大枝史郎・文 佐藤みき・絵 あすなろ書房

 理科・科学の絵本です。
 月の見え方について、新月から満月まで、上弦の月(じょうげんのつき)から下弦の月(かげんのつき)まで紹介します。(吉田拓郎さん(よしだたくろうさん)の歌を思い出しました。『上弦(じょうげん)の月だったっけ ひさしぶりだねぇーー 月見るなんて(つきみるなんて)……』というような歌詞でした。たしか、歌のタイトルは、『旅の宿』でした。

 夜の星を見上げる絵本でもあります。
 以前類似の絵本を見たことがあります。外国の絵本でした。思い出せるかなあ。
 『夜をあるく マリー・ドルレアン作 よしいかずみ訳 BL出版』でした。でも夜空の星を見たあと、家族で、夜明けを見る結末でした。月のことは書いてありませんでした。でも、満点の星空の中に、白い月は輝いていたと想像します。

 さて、文字数が多い絵本です。
 これから文章を指でなぞりながら読んでみます。

 月の輝きの部分は、太陽に照らされている部分である。
 地球の自転と公転:1日1回自転。1年365日で公転(太陽のまわりを1周する)
 月は、地球のまわりを回っている。
 新月:地球から月が見えない。
 三日月→半月→満月→欠けていく→新月:約29.5日
 月が地球を1周する(公転周期):27.3日
 
 文章と絵なので、わかったような、わからないような気分での読書です。

 日食:太陽と月、地球が一直線に並ぶ。金環日食(きんかんにっしょく。太陽がはみだしてリングが見える)、皆既日食(かいきにっしょく。太陽が全部隠れる)、部分日食。

 1日目の月は見えない。「朔月(さくげつ)」という。朔は、はじめという意味。新月ともいう。
 旧暦:月の満ち欠けで1か月とする。日本の古代から明治時代はじめまで使用された。

 2日目の月。二日月(ふつかづき)
 2日目なのに『ついたち』とあります。
 糸のように細い月です。
 大昔の日本では、この二日目の月を一日目の月として数えていた。
『ついたち』は、『月立ち(つきたち)』が由来となった。
小説作品を思い出しました。以前読んだことがある本です。『月の立つ林で 青山美智子 ポプラ社』 次は、読んだ時の感想の一部です。
朔ヶ崎怜花(さくがさき・れいか):主人公女性。41年間ずっと同じ一軒家に住んでいる。41歳です。未婚。元看護士。三か月前、総合病院を辞めた。実家暮らし。40歳過ぎの無職の未婚女性に貸してくれる不動産物件なしのため実家で暮らしている。印刷所の事務員の求職に申し込んだ。高校生のとき、うさぎ(小雪という名前)を飼っていたことがある。(そんな設定から始まります)

 絵本に戻ります。
 3日目の月。三日月(みかづき)
 戦国時代、武将は兜に(かぶとに)三日月を付けて戦に臨んだ(のぞんだ)。三日月はだんだん満ちて満月になる。望みがかなえられる。(なるほど)

 7日目の月。上弦の月(じょうげんのつき)。半月(はんげつ)。弓矢の弓のつるが、上にある状態で地平線に沈む。武将の弓矢からきている。

 15日目の月。満月。ひと晩じゅう見えるのは満月だけだそうです。
 春の満月。『菜の花や 月は東に 日は西に』 江戸時代の俳人の与謝蕪村(よさぶそん)作。1716年-1784年。68歳ぐらいで没。
 
 思い出してみれば、こどものころ、月が身近にありました。
 さらにさかのぼれば、電灯がゆきわたっていない時代がありました。
 停電もよくありました。
 停電して、ろうそくをつけて、夜をすごした体験があります。
 テレビ放送が始まって、一般家庭にテレビが普及したのは、昭和40年代(1965年代)だったと思います。それまでは、こどもは、テレビがある家に招かれて、近所のみんなとひとつのテレビを囲んで見ていました。夜8時になるとこどもは寝る時間だと言われて、解散して、夜空に月が見える中を家に帰って行きました。

 今から60年ぐらい昔は、静かで、暗い夜がありました。
 秋になると、秋の虫たちの鳴き声が家のまわりで響いていました。

 28日目・29日目の月。細い糸のような三日月型の月です。
 明け方に出るので、『明けの三日月(あけのみかづき)』と呼ばれるそうです。

 月の大きさは、だいたい地球の4分の1だそうです。
 本の最後のほうに、月と宇宙の豆知識、日食、月食の説明があります。
 地球の海の潮の満ち引きは、月の引力が関係しているそうです。遠くにあっても影響力ありです。
 月のもようが何に見えるかという説明もあります。うさぎとか、カニとか、ライオンとか。
 最後に月の満ち欠け一覧表がありました。これを書いている3月27日は、満月を過ぎたあたりです。

(その後)
 これまで読んだことがある本で、月にちなんだものをいくつかピックアップしてみました。

 『月と散文 又吉直樹 KADOKAWA』
  エッセイ集です。どこかに掲載していた文章をまとめてあるようです。
『はじめに』に、小学生の時に書いた作文が笑われたとあります。なぜかというと、ひとつの作文の中に、『はずかしかったです。』という文節が大量に書かれていたからだそうです。なるほど。笑えます。リフレインのように(くりかえし)、『はずかしかったです。』と書かれていれば、読み手には自然と笑いが生まれてきます。

『つきのぼうや イブ・スパング・オルセン やまのうち・きよこ訳 福音館書店』
 まず、絵本のサイズが変わっています。縦が、34cmで、横が、12.7cm。細長い本です。この細長さを利用して、空の月から下にある地面、そして、海底までを絵で表現してあります。1975年(昭和50年)初版の絵本です。

『おやすみなさい おつきさま マーガレット・ワイズ・ブラウン作 クラメント・ハート絵 せた・ていじ 訳 評論社』
 絵は、反対色の構成です。緑と赤の反対色です。昔懐かしいダイヤル式の黒電話機です。この絵本は、アメリカ合衆国における1947年(日本では昭和22年)の作品で、日本では、1979年(昭和54年)に初版が出版されています。

『きょうはそらにまるいつき 荒井良二 偕成社』
 2016年発行の絵本です。月夜ですから、月の姿があります。『あかちゃんがそらをみています』から始まります。風景は、外国、イギリスに見えます。背の高いビルディングを背景にして、樹木が生えた都市公園が見えます。ページをめくると、黄色で大きな満月の絵が目に飛び込んできました。こどもにはいい絵です。月がどかーんと見開き2ページの半分ぐらいを占領しています。

『まんげつのよるに 木村裕一・作 あべ弘士・絵 講談社』
 シリーズ「あらしのよるに」の第7話でこれが最終話です。第6話で雪崩に飲み込まれたオオカミのガブはどうなったのか心配です。ガブは物語の主人公ですから必ず生きているはずです。ほら生きていました。よかった。えッ?! なんとそれはヤギのメイの夢でした。

『パパ、お月さまとって! エリック=カール・さく もりひさし・やく 偕成社』
 こどもさん向けの絵本です。まずは、全体を1ページずつめくってみました。なんというか、すごい絵本です。しかけがある絵本です。ダイナミックです。1986年が初版です。アメリカの田舎町でしょう。夜空も地上も広い。なんていう長いハシゴなんだ。

『月と珊瑚(るなとさんご) 上條さなえ(かみじょう・さなえ) 講談社』
 「月(るな)」も「珊瑚(さんご)」も人の名前です。「月」は、つきとは読まずに、「るな」と読みます。 「月」は英語でいうと、「ムーン」です。「ルナ」は、ラテン語で、「月の女神」です。ローマ神話に出てきます。この物語の舞台は、沖縄で、第二次世界大戦のことが書いてあるのかもしれないと予想しました。

『流浪の月(るろうのつき) 凪良ゆう(なぎら・ゆう) 東京創元社』
 流浪:住むところを定めず、さまよい歩くこと。小説の中では、小学校上級生ぐらいの女児である家内更紗(かない・さらさ)が、両親がいなくなって、預けられた叔母の家の居心地が悪くて、公園で見かけた大学生男子のマンションにころがりこんでいます。「月」は、家内更紗をさしているような。

『おつきさまこんばんは 林明子 福音館書店』
 絵本です。最初にスリムなネコの黒い影絵があります。アメリカ映画のピンクパンサーみたい。かっこいい。黒い影の一戸建ての家があって、ネコが2匹いて、あたりは、真っ暗。室内に黄色い電灯がついている。屋根の上が少しだけ黄色いだ円になる。ほんの少し明るい。エジプト絵画みたい。明るい。太陽のような月が目を閉じている。おめめをあけてくださーい。金太郎顔のお月さんです。猫2匹がお月さんの顔に見とれています。こんばんは。

『太陽と月の大地 コンチャ・ロペス=ナルバエス作 宇野和美訳 福音館』
 スペインの昔の話です。1492年、コロンブスがアメリカ大陸を発見しています。日本は、室町時代です。宗教の対立があります。キリスト教とイスラム教です。100年間ぐらいかけて、イスラム教徒がキリスト教徒に追い出されたような内容と、冒頭付近を読むと、書いてあります。キリスト教が上で、イスラム教が下みたいな雰囲気がただよいます。

『月の満ち欠け 佐藤正午 岩波書店』
 かなりおもしろい。こういう話は読んだことがありません。某作家の作品「秘密」に似ていますが違います。佐野洋子さんの「百万回生きたねこ」には通じています。舞台は青森八戸、千葉県稲毛、市原、船橋、福岡、名古屋、そのほか、自分が知っている地名が次々と出てきます。憑依(ひょうい)とか、時間移動、輪廻転生(りんねてんせい)、ホラーの要素もあります。

『月はぼくらの宇宙港 佐伯和人 新日本出版社』
 60年ぐらい前、月はまだロマンチックな存在でした。うさぎが、もちつきをしている影絵を見た記憶があります。その後、たくさんのアポロが、何度も月を訪れて、荒涼とした月面風景を画像で観ることが重なり、月がもっていた神秘性は消えていきました。この本では、月学者である作者(ときにおたくっぽい)が、科学的に月のありようを解説しています。そんななかでも、月を港とし、地球を宇宙船とたとえるロマン(夢や冒険へのあこがれ)があります。作者が記しているとおり、もともと宇宙開発は、戦争のためのものでした。宇宙から、相手の国を攻撃するのです。もし、それが、現実となれば、勝者はいません。地球は滅びます。

『みかづき 森絵都(もり・えと) 集英社』
 時は、昭和36年です。登場人物は、大島吾郎22歳、赤坂千明27歳、赤坂頼子40代、赤坂蕗子(ふきこ)小学1年生ほかです。それから茶々丸とかブラウニとかいう愛犬が出てきます。この時代に、学習塾をつくろう!とするようです。

『二日月(ふつかづき) いとうみく・作 丸山ゆき・絵 そうえん社』
 障害者差別解消をめざした作品です。主人公夏木杏(なつき・あん)小学校4年生に、障害児の妹が生まれます。両親、とくに母親が妹の芽生(めい)にかかりっきりになります。母親に相手にしてもらえなくなった杏は母親の愛情不足のストレスに陥ります。そこを、克服していかねばなりません。同級生の磯部真由が支えになってくれます。

『月と蟹 道尾秀介 文春文庫』
 直木賞受賞作品ですが、読み始めは、児童文学を読み始めたような感じがします。小学校5年生の利根慎一、富永春也、葉山鳴海(女子)たちが登場人物で、舞台は神奈川県、地名は書いてありませんが、わたしは、藤沢市あたりだろうと勝手に設定して読み始めました。(読み進めた先で、横須賀線沿線のような記述があったので、はずれでしょう。)慎一と春也が、鎌倉の鶴岡八幡宮、建長寺、十王岩を訪れています。

『チャーシューの月 村中李衣(むらなかりえ) 小峰書店』
 児童養護施設で暮らす少年少女たちの暮らしぶりです。最初の数ページを過ぎたあたりから、泣けそうになります。最後は涙がにじみました。子どもを育てる気がない親はいらない。
 小学校6年生女子美香の視点から見た世界がつづられています。美香の相方が、小学校1年生新米入所の明希(あき)です。彼女は正確な記憶力をもっています。

『赤い月 なかにし礼 新潮社文庫 上巻・下巻』
 スタートは冷酷非情です。戦争において殺人は罪に問われません。簡潔平易な文章であるが実情がよく伝わってきます。「説明」ではないことが不思議なくらいです。情景、状況の表現がわかりやすい。これは自伝なのだろうか。満州での逃亡列車の様子は凄惨(せいさん)です。人の行為は詐欺です。善も悪もありません。植物的で無表情で平らな心が広がります。日本人が第二次世界大戦をとおして、どのように生きてきたのかをたどるいい本です。

 けっこうたくさんありました。  

Posted by 熊太郎 at 06:42Comments(0)TrackBack(0)読書感想文