2024年03月06日

沈黙のパレード 東野圭吾 文春文庫

沈黙のパレード 東野圭吾 文春文庫

 映画のほうは、先日、動画配信サービスで観ました。
 出川哲朗さんの充電バイクの旅にゲストで出ていたずん飯尾和樹さんが、劇中で、殺された娘さんの父親役を好演されていました。なかなか良かった。

 もう筋書きは知っているので、文章を楽しみながらの読書になります。東野圭吾さんの文章は読みやすいので、スムーズにページが進んでいきます。

 並木祐太郎・真智子夫婦とこどもさん:犠牲者が長女沙織当時19歳(頭蓋骨陥没で発見される)、次女が夏美三歳歳下です。

 戸島修作(とじま・しゅうさく):並木雄太郎の幼馴染で親友。白髪混じりの五分刈り頭(1.5センチぐらい)。

 宮沢摩耶(みやざわ・まや):大型書店『宮沢書店』の跡継ぎ娘。三十代前半。町内会の理事。パレードの実行委員長。

 新倉直紀・留美夫婦:代々医者の家で、資産家。音楽家。歌手を目指していた並木沙織の歌の先生。

 高垣智也:殺された並木沙織の交際相手。

 草薙:容疑者を捕らえたものの、証拠不十分で無罪にしてしまった刑事
 間宮:警察の管理官
 内海薫:女性刑事
 多々良:捜査一課。昔は、管理官をしていた。今は課長の次の位のポストの人
 岸谷:警視庁警部補。40歳前後。穏やか(おだやか)。武藤の上司
 武藤警部補:色黒。顔の彫りが深い。北国生まれ。岸谷の部下

 湯川学:帝都大学で物理を教えている教授

 本橋優奈ちゃん事件(もとはし・ゆうなちゃん):12歳の少女が行方不明になって殺された。19年ぐらい前の出来事です。山中で骨が発見された。

 蓮沼寛一:ふたつの殺人事件の犯人。犯行を完全否認して無罪になった。(この点が、理不尽(りふじん。人の道の道理に合わないこと)として強調されます。被害者家族、そして、映画や本を観る者に、怨み(うらみ)とか、復讐心が芽生えます。無罪確定の代償として、刑事補償金1000万円以上を要求して受け取ったもよう。(本当は有罪なのに)。父親は警察官で、息子の寛一は、父親を見て、自白しなければ罪に問われにくいことを学んだようすがある。本人が黙秘権を行使した動機に、死んだ父親の言動があります。

 蓮沼芳恵:蓮沼寛一の継母。高齢で死去。ごみ屋敷で暮らしていた。年金生活者だった。

 冤罪(無実の罪)というのがありますが、本件事件の場合は、冤罪の反対で、犯人なのに、証拠不十分で無罪になっています。殺人事件の犯人がのうのうと暮らしています。(のうのう:心配なくのんびりと)

 映画を観ましたが、小説は、やはり、情報をち密に書いてあります。

 死体遺棄の時効を過ぎているから逮捕できない。(遺棄行為から3年)

 キクノ・ストリート・パレード:もともとは、静岡県にある菊野商店街秋祭りパレード。コンテスト形式で全国から参加がある。(仮想のイベントです)。参加者は、予選を経て、10月に行事を開催している。

 被害者の父親の言葉として、『犯人扱い? 俺はあんたを犯人だと思っているよ』

 増村英治:70歳前後の男。小柄。蓮沼寛一の同居人。傷害致死の前科あり。

 映画を観て、もう中身がわかっているので、読んでいても、なんとはなしにつまらない。
 映画の台本を読んでいるような感じです。
 原作に忠実に映画がつくられていることがわかります。

『検察審査会』について書いてあります。
 自分の印象としては、検察審査会は、正義の味方という位置づけの組織ではないというものです。
 検察審査会の話し合いで、不起訴になった事件を起訴できたとしても、やっぱり不起訴になることが多いような印象があります。
 この制度は、無念を晴らしたい人へのあきらめへの時間稼ぎにしか思えないのです。
 もう昔の話ですが、知っている人が検察審査会のメンバーに選ばれたことがあります。メンバーは、衆議院選挙の有権者の名簿から選挙管理委員会のくじ引きで選ばれるのです。なんとなく、裁判員制度に似ています。ご指名があるのです。あなたはクジにあたったのです、よろしくと。

 ユダの窓:推理小説。密室が素材(そざい)。

 森元:自動車修理工場の自営業者

 磁気物理学研究部門の第一研究室・第二研究室の磁気物理学研究部門主幹室

 23年前の事件:本橋優奈ちゃん事件(12歳の少女が行方不明になり4年後山中にて、遺骨で発見された)。事件は、東京都足立区内で起きた。

 クミコ:並木沙織の同級生

 ヤマダ:腹痛を訴えた女性

 沢内幸江(さわうち・さちえ):本橋優奈の父親である亡本橋誠二の妹

 本橋由美子:本橋優奈の母親。旧姓藤原。本橋優奈が不明になって1か月後に自殺した。24歳で、32歳の本橋誠二と結婚した。本橋誠二は歳をとったあと亡くなっている。

 岡野勇:増村英治が6歳のときに離婚した生き別れの父親。
 (おそらく岡野)貴美子:増村英治の母親。貴美子は再婚している。
 
 島岡:鑑識課員主任

 拘る:こだわる。

 塚本:高垣智也の上司。課長。
 田中:高垣智也の後輩。
 佐藤:高垣智也の会社の新人女子社員。

 349ページ付近を読んでいて思ったことです。
 証拠不十分で無罪になった容疑者に復讐しても、死んだ被害者は生き返ってはこない。
 割り切れるか、割り切れないかで、生きている人の未来が変わってきます。(わりきる=あきらめる)

 ブラフ:はったり。うそに近いことを言って、相手の言動をおびきだすための手段。

 『…… 懸命に沈黙を続けてくれている人たちに顔向けができません』

 『…… この男は人間ではない。人間の皮を被った(かぶった)邪悪な生き物だと思った。』

 『国が裁いて(さばいて)くれないならこの手で……』、それから、家族のことは考えなくていいから(復讐、仇討ち(あだうち))をやってくれという流れになっていきます。なんだか、大石内蔵助(おおいしくらのすけ)、赤穂藩(あこおはん)の忠臣蔵(ちゅうしんぐら)のようでもある。

 黙っていた人が、今度は、ウソを並べる。愛する人をかばうためにウソを並べる。

 『…… だから最後まで彼は黙秘を続けられたのです』

 良心の呵責(かしゃく):悪いことをした自分について、良心から自分を責めて悩むこと。

(全部を読み終えてびっくりしたこと)
 読み終えたとき、おかしいと思いました。
 映画の最後に出てくる犯人と、小説の最後に出てくる犯人が違うのです。
 (こんなことがあるのだろうか)
 小説は、読み終えたばかりなので、本当は人を殺していて有罪なのに、黙秘権を行使して、証拠不十分で無罪になった犯人を殺害したのは、Aという人物であることは確実だと納得がいきましたが、映画でのその人物は、Bという人物だった記憶なのです。
 もう一度、動画配信サービスで映画を観ました。
 わかりました。
 わたしの勘違いでした。
 犯人を憎んでいる人が複数いるので、AもBも眼鏡をかけていたことから、人間を勘違いしていました。そうかと、腑に落ちました。(ふにおちる。はらにおちる。納得する)
 ただ、また老化(加齢)を実感することになりました。アルツハイマー型認知症の新薬であるエーザイのレカネマブを、さきざき投与してもらわなければならなくなるかもしれないと心配になりました。トホホ…… 最近物忘れや勘違いや錯覚、記憶力の衰えが著しくなりました。(いちじるしくなりました)

 映画では、事故が起きたときに、すぐに救急車を呼べば、こんなにおおごとにはならなかった出来事です。
 救急車のピーポー音が聞こえてきたことが、紛らわしい(まぎらわしい)勘違いです。(劇中の関係者にとって)
 とはいえ、『うまくできている推理小説』です。たいしたものです。

 映像を観ながら、映像に出ているのは、役者であり、本物の警察職員ではないという感想をもちました。
 こちらの映画には、女優の檀れいさんが出ておられました。
 二年前、長野県松本市を旅した時に、たまたま市内で檀れいさんをお見かけしました。たいへんおきれいな方で、輝いておられました。旅は思い出の一里塚です。(いちりづか。めじるし。ランドマーク。江戸時代に4キロおきぐらいに街道に置かれためじるし)

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