2024年04月05日
財布は踊る 原田ひ香
財布は踊る 原田ひ香 新潮社
『会議は踊る』というタイトルの洋画を思い出しました。1931年(昭和6年)ドイツ製作の映画です。
さて、こちらは、短編6本です。
『第一話 財布は疑う』
ルイ・ヴィトンの財布です:フランスのファッションブランド(葉月みづほが、欲しい物です)
葉月みづほ(はづき・みずほ):母子家庭育ち。埼玉県川越生まれ。母親は川越に住んでいる。高校時代に両親は離婚した。自分自身は既婚で、長男が圭太(10ヶ月)。みづほは、元派遣社員で、派遣先の会社で夫(20代後半。みづほより3歳年上。年収450万円。手取り30万円前後)と知り合って結婚した。みづほは、毎月2万円を貯金している。
みづほは、高校生の時、クラスメイトからハブられていた。(仲間外れ。村八分(むらはちぶ))
みづほは、善財夏美(ぜんざい・なつみ)のコラム『お財布からこんにちは』が好き。主婦の節約雑誌『KATE(ケイト)』が愛読書で、そのコラムが掲載されている。図書館で読む。節約のために雑誌は買わない。
夫が、雄太(生活オンチ。母親に甘やかされた。オタク。システムエンジニア。ヒマな時はゲームをしている)。
母親教室で知り合った彩花(あやか)ちゃんママがみづほの友だち。
名古屋人はケチというようなことが書いてあります。(同感です。人によりけりもありますが、びっくりするぐらい値切ったり、お金を出さなかったりするときがあります。あとは、節約家です)
葉月みづほは主婦で、節約のことがいろいろ書いてあるのですが、お金が欲しかったら、働くべきです。葉月みずほは、結婚して仕事を辞めたことを後悔しています。お金が足りない。夫はお金のやりくりに無頓着(むとんちゃく)です。家賃は、10万8000円。夫が通勤も便利な新築マンションに決めた。(東京は家賃がめちゃ高い……)
(この短編部分を読み終えました)
う~む。かなりリアルな家庭の家計事情です。
あまりにリアルすぎて、身を引く思いがあります。
よその家の金銭管理のしかたは知りませんが、こんなに、いいかげんなものなのか。
正直、あきれました。
葉月みづほファミリーは、念願のハワイ旅行に行って、みづほさんは、これまた念願のルイ・ヴィトンのお財布をハワイで買いますが、(10万円)、ご主人のいいかげんな金銭処理が原因で、家計が破たんしそうになります。ご主人の自覚のないカードローンの借金総額がすごい額です。
みづほの母親から借金をして、ご主人の親からは借金を断られて、カード会社に返済方法の相談にのってもらって返済します。
あやうくご主人は、自己破産しそうでした。
みづほがハワイで買ったルイ・ヴィトンの財布は、メルカリで値切られて、売ってしまいました。そんなふうでは、一般的な若い家庭の夢である、『家』なんか買えません。
読んでいて、書きたいことはたくさんありますが、長くなりそうなので、ポイントだけ落としていきます。
ご主人が、こどもです。スマホゲームばかりしています。だらしない男性です。『離婚』という文字が見えてきます。衣食住の生活能力が低いというか、能力がない。お金のやりくりがたいへんな人は、ビールなんか飲んではいけません。(第三のビールですけど、ご主人は、それでも飲むようなご身分ではありません)
ふと考えました。
たとえば、芸能人同士とか有名人同士で結婚したとき、家計はどのように管理・運用していくのだろうか。
あんがい、双方のふところぐあいは明かさないのではないか。
お金がたくさんあっても、家計の全体像はお互いに見えない。
もしかしたら、相手には、財産だけではなくて、大きな負債があるかもしれない。
一般人でも、たとえば、親子がべったりで、結婚した息子や娘の預金通帳と印鑑を親が保管して管理していたりもするかもしれません。そんなふうに、結婚してもこどものまま夫婦をやっている夫婦がいるのかもしれません。ちょっとこわい。中学生同士が結婚しているようなものです。
いまどきは、自立とか自活から遠い位置にいるおとながいてもおかしくない世の中です。
『クレジットカードのリボ払い』
毎月定額3万円の返済額のうち、元金の返済額は1500円だそうです。あとの2万8500円は、手数料だそうです。恐ろしい。そんなふうでは、いつまでたっても、借りた元金が減っていきません。
紙の通帳ではないから、金銭管理ができない状態です。デジタル通帳というのでしょうか。夫の通帳の中身を、夫の許可がないと妻が見ることができません。夫自身も手元に通帳がないので、なにがどうなっているのか、把握できていません。
ご主人がつくった多額の借金の返済のために、ご主人の親にお金を借りに行ったら、老後はあなたたちの世話になるつもりだったから、貯金はないと言われてしまいました。(それまでは、あいそのいい親だったのに)
こんなことで苦しむ人生はつらい。
『第二話 財布は騙る(かたる。だますという意味)』
第一話とつながります。第一話で葉月みづほがメルカリで売って手離したルイ・ヴィトンの財布が、水野文夫という男に渡ります。メルカリの落札者ですが、この水野文夫は、一筋縄ではいかない曲者(くせもの)で、悪人の類(たぐい)に入る人間です。
第二話を読み終えて、その内容がまた、お金に関する生々しい話で驚きました。現実味があります。人をだまして大金を手に入れるのです。だまされたほうは悲惨(ひさん)な目に遭います。(あいます)
お財布セミナー:参加費4800円。元タレントで今は実業家のお財布アドバイザー善財夏美が講師。財布と財布の中身がきれいな人は金銭管理がしっかりしている。(そのとおりです。財布の持ち主は、財布の中身の金額も把握できています)。いい財布をもちましょうというのが宣伝文句のセミナーです。
ライフハック:アイデア、テクニック
たくさん登場人物が出てきます。たいへんなので、ここには書きません。
わたしは、メルカリというものは知りません。FXというものもわかりません。株式投資はしていますが、株式の用語など詳しい意味は知りません。それでも損はしていません。なんというか、ことこまかく、すべてのことを知らなくてもできるということはあります。以前テレビで、女子サッカーの澤穂希さん(さわ・ほまれさん)が、自分はサッカーのルールを知らないからサッカーチームの監督はできないと言っていました。それから、同様に選手だった丸山桂里奈さんも、自分はサッカーのルールはよくわからない。自分は勢いで、ビューンとやるだけだと言っていました。そういうものなのです。事細かい知識はいりません。仕事は、才能と努力と人間関係でまわっていきます。
たくさん借金をかかえたどうしようもない人たちが、いっぱい出てきます。ひとりあたりの借金が、290万円とか450万円、900万とか、そして、いいかげんな借金のしかたをしているので、だれにいくら借りていて、返済がどうなっているのかもわかりません。メチャクチャです。
舞台は新宿歌舞伎町です。だれから借りていて、だれに返しているのかもわからないホストの世界です。ホストクラブの顧客の三十代後半女性にも売掛金(うりかけきん)という種類の借金が500万円ぐらいのっかっています。
ホストクラブの借金取り立ては、女性の実家がある栃木県まで行くのです。実家で親が追い詰められます。
負債のある人間は、いつだれにいくら借りたかの記録もとっていないので、そんな人にお金を貸したら返済してくれるわけがありません。
顔はきれいな男でも、金銭管理はできない男です。(ホスト)
『…… 自分はもう一生、結婚は無理かもしれない。借金もあるし、今後、安定した職に就ける希望もない。』(されど、人生はまだはるかに長い。どこかで、腹を決めて(決断して)、給料が安くてもいいからちゃんとした仕事についたほうがいい。(ホストのことです)
大学生がだまされていくようすを読むと、なんのために若者は東京に出るのだろうと思ってしまいました。
詐欺師(さぎし)にだまされてお金を奪われるためにわざわざ東京に出てくる。人をだましてお金をせしめたい人間にとって、上京したての若い人は、いいカモ(被害者。だまされる人。だましやすい人)です。笑顔で近づいてくる人間は要注意です。下心があります。(したごころ:悪だくみ)
友だちだからお金を貸してくれという人間も拒否しなければなりません。本当の友だちならお互いにお金の貸し借りなどしません。利用されているだけです。貸したお金は返ってきません。はっきり、わたしは、貸し借りはしませんと断りましょう。お金を貸してくれというような人とは付き合わないほうがいい。
葉月みづほがハワイで買って、メルカリに出した新品のルイ・ヴィトンの財布は、落札した水野文夫の不始末があて、立ち飲み屋で盗まれて、どこかへいってしまいました。
『第三話 財布は盗む』
かなりおもしろい内容です。この本が、いつかテレビドラマになるといいのになあ。
葉月みづほがハワイで買って、メルカリに出したルイ・ヴィトンのお財布が、ぐるぐる回ります。(そしてなんと、葉月みづほがその財布に再会します)
その財布を盗んだ野田裕一郎という若い男の転落話です。一時期は投資で何千万円も儲けたのに、仕手株(してかぶ。株式のだまし)詐欺(サギ)に遭って(あって)、すってんてんになります。野田裕一郎は、複数の窃盗事件を起こして逃避行中です。
ツイッターとかツイートというのは、わたしにはなんのことかわかりませんが、本では、最後のツイートというものが、こう書いてあります。『――やってしまいました。あなたのUはついに退場です。皆様、短い間でしたが、ありがとうございます』
一時期は大金持ちになって、SNSの世界では有名人になられたようですが、一瞬にして貧困に落ちていき、さらにご自身は、どろぼうの犯罪者になられてしまいました。今は、住所不定のホームレスです。
アベノミクス、投資信託、昇給、年金、為替、インデックスファンド、ネット証券、アメリカ株、S&P500、いろいろ出てきます。クレジットカード、ポイント、お金の話ばかりです。
書中で紹介される本、『金持ち父さん 貧乏父さん』は、読んだことがあります。そのときの感想の一部です。
『金持ち父さん貧乏父さん ロバート・キヨサキ 筑摩書房』
金持ち父さんとは、著者の友人の父さんです。実業家です。貧乏父さんとは著者の実父です。教員です。
著者は友人の父さんをほめます。友人の父は不動産投資と株を軸にして、お金儲けをする人です。
著者は、教員で、コツコツまじめに長年働く実父を否定します。人生における時間と労力がむだだと断定します。
その本を読んだときには、違和感をもちました。著者にとっては、(お金のことに関しては)友人の父が理想で、実父はだめな人という評価だったからです。
わたしは、仕事は、給料が安くても辞めてはいけない。仕事があるだけありがたいと思いなさいと教育されてがまんして働き続けました。その本の著者から見れば、否定されるほうの働き方です。
わたしは、年金生活者の老齢期を迎えて、3年ぐらい前から、株式投資を始めてその違和感が消えました。お金でお金を増やすことを知ったからです。株式投資をやっているとわかるのですが、なにかのきっかけで複数の株の株価が急上昇して、1か月半ぐらいで、パートの主婦の年収分ぐらいの利益が生まれることがあります。パートの主婦が知ったらショックを受けると思います。いっぽう、なにかのきっかけで、複数の株の株価が急落して、半日程度のことで、パートの主婦の1か月分の収入が溶けるように消えていくこともあります。ハイリスク・ハイリターンです。されど、じょうずに運用すればお金が増えていきます。『業績がいい』『信用できる』会社を選べば、株価の上下動の幅は小さくても配当金や株主優待が得られます。
デイパック:軽量・コンパクトなリュックサック
野田裕一郎は、まず、マクドナルドの株で儲けます。(もうけます)数週間で5万円の儲けでした。
野田裕一郎は、アラシ池田という詐欺師にひっかります。ツイッターでフォローします。(わたしには意味がわかりません。わからなくてもいいし、わからないほうがいいと思っています。深みにはまると、だまされます)
ひとつの銘柄に全財産(3000万円ぐらい)をつぎこむのは、ギャンブルです。たいてい失敗します。(この人は、いったいいくらお金があれば満足するのだろうか。何かに使うためのお金ではありません。お金のゲームになっています)。なんだか、最近話題になった米国野球選手の通訳だった人みたいです。ギャンブル依存症です。おおきくもうけたら、パっとギャンブルをやめるのが金もうけのコツです。ギャンブルはしょせん損をするものです。中毒になるまでやってはいけません。
野田裕一郎は、罠(わな)にはまったことが自分でわかっているのに、損切り(そんきり)ができません。(損した状態で資金を引き揚(あ)げる。それ以上の損失を止める)
こんな人と結婚したらたいへんな目にあいます。金銭感覚がおかしい。
たとえば、住宅ローンなら、完済すれば、不動産が残ります。財産を築くための借金返済です。借金返済ですが、貯金みたいな面もあります。
株は、資金が消えたら終わりです。精神的には地獄にいるような気分です。だって、もともとはお金があったわけですから、消えたら、成果は、なんにもなしです。
物語は、葉月みづほに戻ります。
お金が欲しかったら共働きは必須です。
葉月みづほは、金銭管理能力がない夫を軽蔑(けいべつ)します。どうして、こんな男と自分は結婚してしまったのだろうか。
葉月みづほに、新しい発想の投資話が舞い込みます。
安い家を買って、リフォームして、貸し出す。不動産収入を得る。これから葉月みづほが自身の名義で購入するボロ家の値段は、210万円ぐらいです。でも住める物件です。
貧困ビジネスみたいな話になります。生活保護をもらっている人に貸せば、家賃は安く設定しても、生活保護で家賃が支給されるので必ず家賃が入ってきます。(話のうしろのほうに、役所が直接大家(おおや)に家賃を払ってくれるやり方を利用するそうです。生活保護をもらっている人の家賃滞納を避けるための役所にとっての手法なのでしょう。生活保護をもらっている本人から、「いいよ。了解します」の承諾書でもとっているのでしょう)
生活保護は役所が支払いを保証してくれるような堅実さがあります。医療費とか、住宅費(家賃)とか、葬儀代とか。なにかトラブルがあれば、連絡すれば、役所の担当者が対応してくれるのでしょう。
さて、これからお話はどうなるのだろう。
おもしろい本です。
『第四話 財布は悩む』
後半で、葉月みづほさんのがんばりが表現されます。応援したい。
詐欺師、善財夏実こと蛇川茉美34歳(へびかわ・まみ。イニシャルM・H。葉月みづほと同じ。ルイ・ヴィトンのお財布に葉月が入れたイニシャルです。めぐり巡って、ルイ・ヴィトンのお財布は、蛇川茉美の手に渡ります)は悪人です。根拠のない迷信で人をだまします。風水です。風水(ふうすい):中国発祥、『気(き)』というものがあるらしい。(わたしは信じません)
スピリチュアル:精神世界ということか。(こちらもわたしは信じません。目に見えないものをわたしは信じません)
いい財布を持てば、お金がたまるそうな。(ふつうの財布でいいと思います)
コンサバ:保守的、無難な服装
保坂:雑誌の編集長
稲盛瞳:蛇川茉美がOL時代の同僚。既婚。こどもが2歳。お金持ち
上質なキャメルのAラインのコートを着ている。(Aの文字のように、末広がりのコート。ラクダの毛でつくった織物)
鉄道の忘れ物市のことが書いてある部分を読んでいた時です。そういえば、もう何十年もむかし、自分が若かったころ、イベント会場で、忘れ物の傘を売る売り子をしたことがあります。何回かやりました。もうひとり若い男性とペアになって、『もうすぐ雨が降りそうですよーー』とゆきかう人に声をかけて、1本250円だったか、300円だったかぐらいで、忘れ物の傘売りの仕事をしました。もう、すっかり忘れていました
雑誌が売れない事情が書いてあります。
エロ記事や写真を載せないと男性向けの雑誌が売れないのです。
あとは、お金に関するコラムで売ります。
女性の裸記事を載せる関係者は、自分たちがお金を得るために働いています。
マネーリテラシー:お金の知識をもってうまく活用する能力。
せどり:転売(違法なときもあるようです。買い占めて高値で転売する。コロナ禍のときのマスクを思い出しました)
セリーヌ:フランス・パリのファッションブランド。
すごい迫力です。葉月みづほが覚醒します。(かくせい。不動産投資に目覚める)
現在のマンションの家賃が10万8000円です。
埼玉のボロ家の値段が210万円です。
銀行からお金を210万円借り、ボロ家に住みながら、ローンを2年間で返済します。
その後、家賃4万5000円で、自分たちが住んでいたリフォーム後の家を人に貸します。
毎月4万5000円、年額54万円がみづほさんの不労所得になります。(単純計算ですが)
自分たち家族は、2年後別の古い家をまた買って転居します。
そうやって借家をふやしていく作戦です。葉月みづほさんは、不動産賃貸収入で資産をつくるつもりです。
金銭管理能力のないだんなさんに対して、その作戦を了解しないなら離婚すると突き放します。大金のカードローンをつくるこんな男といっしょにいてもしかたがない。さよならあなた(わたしの夫)です。
ご主人は了解します。通勤時間が長いと不満が出ますが、片道1時間以内の通勤で済むならいいほうです。サラリーマンの通勤時間が片道1時間半ぐらいは、めずらしくもありません。ありふれています。
葉月みづほには、今はまだ2歳のこども(男児)に将来高等教育を受けさせたいという願いがあります。息子にお金の苦労をさせたくないという強い意思があります。
最近、NHKドラマ、『正直不動産』という番組を動画配信サービスで観ています。最初のシリーズを観終えて、今は、セカンドのシリーズを少しずつ観ています。この短編部分と重なるような意思があります。
すごいなあ。いい本です。今年読んで良かった一冊です。
『第五話 財布は学ぶ』
奨学金の返済ができなくて、危険なめにあいそうになる若い女性の話でした。
う~む。わたしも貧しい母子家庭育ちだったので、日本育英会の奨学金を借りましたが、結婚した時に一括返済をしました。
へんな話ですが、昔は結婚式を挙げると、経費を差し引いてお金が残りました。それを原資にして奨学金を一括返済しました。
昔は、結婚式をめでたいことだとして、親族、友人、職場の人たち、おおぜいで祝ってくださいました。相互扶助の精神がありました。(農耕民族の名残です。いざというとき、農家はお互いに助け合って作業をするのです。田植えの時期とか、稲刈りの時期とか、わらぶき屋根の大きな家のわら屋根のふきかえなど、各戸を順番に、おおぜいで共同作業をして協力するのです。近所に親類縁者が固まって住んでいたということもあります。昔は、先祖をたどると、たいていの人が農家につながりました)
結婚式に出席しない人でもお祝いをくださいました。
いただいたお金のうちの半分をお返しの物として送りました。
残ったお金を結婚式の費用にあてましたが、とくに親族からは、たくさんお祝いをいただいたので、お金が残るのが普通だったと思います。結婚式はそれなりの式で、豪華にはしませんでした。
今はもう、そういうことはないのでしょう。お葬式もそうでした。香典をたくさんいただけたので、葬式代にあてることができました。
さて、短編の内容のほうです。
平原麻衣子(ひらはら・まいこ):大卒。新宿観光案内所の案内員。派遣社員なので、契約を切られそうになっている。(期限を更新しない)。奨学金の借金が300万円ぐらいある。(すごい額です。どうしてそんなに借りたのだろう)
月給手取り15万円。ボーナスなし。アパートの家賃6万円。食費等が1万5000円。携帯代約1万円。母へ仕送り1万円。光熱費1万円。手元に残るのは4万円ぐらい。そのうち3万円が奨学金の返済になる。貯金0円。金なし。カレシなし。他人に奨学金という借金があることを言えない。隠している。結婚がイメージできない。小学生のときに父親が心臓病で急死してお金がなくなった。母は働いたがうつ病になった。兄はバイトをしていたが、家を出て行った。平原麻衣子は、大学進学にあたって、月12万円支給される奨学金を申し込んだ。びっくりするような高額です。とても返済できません。自分で自分の未来をつぶしています。
斉田彩(さいた・あや):新宿カラオケボックス勤務。大卒。奨学金の借金あり。複雑な家庭事情あり。ふたりとも奨学金の返済が、月3万円あります。
お金がすべてという書き方の話が続きます。
大卒なら就職OKというのは幻想です。(円滑に就職できる)
借金は厳禁です。
細く長く働いて、無職の期間をなるべく短くする。基本的に一度始めた仕事はずっと辞めない。
昔は、欲しいものはお金がたまってから買いなさいと教えられました。今は、借金してから返せばいいと180度変化しているようです。
若い女性ですから、男性の変態相手に体を売るような商売へと導かれていきます。
そんなことまでしなければならないのなら、奨学金なんて借りなければいいのに。
若いふたりは、変態おじさんに、ラブホテルで丸裸にされてしまいそうです。
救世主があらわれます。
これまでの話に何度か登場していたファイナンスアドバイザー善財夏美(本名蛇川茉美(へびかわまみ)ルイ・ヴィトンのお財布を持っている)です。
いろいろアドバイスがあって、ルイ・ヴィトンのお財布は、若い二人へと引き継がれました。
『第六話 財布は踊る』
本の全部を読み終えました。
投資の本でした。
葉月みづほは、不動産オーナーのお金持ちになりますが、夫婦関係は冷めました。(さめました)
『そうだ。もう夫も手放そう(てばなそう)。』
ルイ・ヴィトンのお財布をめぐって、いろいろドラマが生まれます。
内見(ないけん):不動産物件の実地見学、調査
自分の来しかた行く末:こしかたいくすえ。過去と未来。
これまでの話で登場した人たちにつながりがでてきます。
かぼちゃの馬車事件:女性専用シェアハウスのこと。経営破たんで、投資家たちが自己破産した。
新宿のルノアール:高級喫茶店。コーヒーの値段は高いが、ゆったりできる。商談とか、大事な打ち合わせで使う場所。
レバレッジ:てこの原理。他人の資本を使って、自己資本の利益率を高める。
ルイ・ヴィトンのお財布が、関係者の間をめぐりました。お話は終わりましたが、これからもめぐるような気がします。
なかなかいい本でした。女性の自立・自活が表現されています。
今月始まったNHK朝ドラの、『虎に翼(鬼に金棒(かなぼう)の意味らしい)』で、女性差別撤廃のメッセージがあるのに似ています。
『会議は踊る』というタイトルの洋画を思い出しました。1931年(昭和6年)ドイツ製作の映画です。
さて、こちらは、短編6本です。
『第一話 財布は疑う』
ルイ・ヴィトンの財布です:フランスのファッションブランド(葉月みづほが、欲しい物です)
葉月みづほ(はづき・みずほ):母子家庭育ち。埼玉県川越生まれ。母親は川越に住んでいる。高校時代に両親は離婚した。自分自身は既婚で、長男が圭太(10ヶ月)。みづほは、元派遣社員で、派遣先の会社で夫(20代後半。みづほより3歳年上。年収450万円。手取り30万円前後)と知り合って結婚した。みづほは、毎月2万円を貯金している。
みづほは、高校生の時、クラスメイトからハブられていた。(仲間外れ。村八分(むらはちぶ))
みづほは、善財夏美(ぜんざい・なつみ)のコラム『お財布からこんにちは』が好き。主婦の節約雑誌『KATE(ケイト)』が愛読書で、そのコラムが掲載されている。図書館で読む。節約のために雑誌は買わない。
夫が、雄太(生活オンチ。母親に甘やかされた。オタク。システムエンジニア。ヒマな時はゲームをしている)。
母親教室で知り合った彩花(あやか)ちゃんママがみづほの友だち。
名古屋人はケチというようなことが書いてあります。(同感です。人によりけりもありますが、びっくりするぐらい値切ったり、お金を出さなかったりするときがあります。あとは、節約家です)
葉月みづほは主婦で、節約のことがいろいろ書いてあるのですが、お金が欲しかったら、働くべきです。葉月みずほは、結婚して仕事を辞めたことを後悔しています。お金が足りない。夫はお金のやりくりに無頓着(むとんちゃく)です。家賃は、10万8000円。夫が通勤も便利な新築マンションに決めた。(東京は家賃がめちゃ高い……)
(この短編部分を読み終えました)
う~む。かなりリアルな家庭の家計事情です。
あまりにリアルすぎて、身を引く思いがあります。
よその家の金銭管理のしかたは知りませんが、こんなに、いいかげんなものなのか。
正直、あきれました。
葉月みづほファミリーは、念願のハワイ旅行に行って、みづほさんは、これまた念願のルイ・ヴィトンのお財布をハワイで買いますが、(10万円)、ご主人のいいかげんな金銭処理が原因で、家計が破たんしそうになります。ご主人の自覚のないカードローンの借金総額がすごい額です。
みづほの母親から借金をして、ご主人の親からは借金を断られて、カード会社に返済方法の相談にのってもらって返済します。
あやうくご主人は、自己破産しそうでした。
みづほがハワイで買ったルイ・ヴィトンの財布は、メルカリで値切られて、売ってしまいました。そんなふうでは、一般的な若い家庭の夢である、『家』なんか買えません。
読んでいて、書きたいことはたくさんありますが、長くなりそうなので、ポイントだけ落としていきます。
ご主人が、こどもです。スマホゲームばかりしています。だらしない男性です。『離婚』という文字が見えてきます。衣食住の生活能力が低いというか、能力がない。お金のやりくりがたいへんな人は、ビールなんか飲んではいけません。(第三のビールですけど、ご主人は、それでも飲むようなご身分ではありません)
ふと考えました。
たとえば、芸能人同士とか有名人同士で結婚したとき、家計はどのように管理・運用していくのだろうか。
あんがい、双方のふところぐあいは明かさないのではないか。
お金がたくさんあっても、家計の全体像はお互いに見えない。
もしかしたら、相手には、財産だけではなくて、大きな負債があるかもしれない。
一般人でも、たとえば、親子がべったりで、結婚した息子や娘の預金通帳と印鑑を親が保管して管理していたりもするかもしれません。そんなふうに、結婚してもこどものまま夫婦をやっている夫婦がいるのかもしれません。ちょっとこわい。中学生同士が結婚しているようなものです。
いまどきは、自立とか自活から遠い位置にいるおとながいてもおかしくない世の中です。
『クレジットカードのリボ払い』
毎月定額3万円の返済額のうち、元金の返済額は1500円だそうです。あとの2万8500円は、手数料だそうです。恐ろしい。そんなふうでは、いつまでたっても、借りた元金が減っていきません。
紙の通帳ではないから、金銭管理ができない状態です。デジタル通帳というのでしょうか。夫の通帳の中身を、夫の許可がないと妻が見ることができません。夫自身も手元に通帳がないので、なにがどうなっているのか、把握できていません。
ご主人がつくった多額の借金の返済のために、ご主人の親にお金を借りに行ったら、老後はあなたたちの世話になるつもりだったから、貯金はないと言われてしまいました。(それまでは、あいそのいい親だったのに)
こんなことで苦しむ人生はつらい。
『第二話 財布は騙る(かたる。だますという意味)』
第一話とつながります。第一話で葉月みづほがメルカリで売って手離したルイ・ヴィトンの財布が、水野文夫という男に渡ります。メルカリの落札者ですが、この水野文夫は、一筋縄ではいかない曲者(くせもの)で、悪人の類(たぐい)に入る人間です。
第二話を読み終えて、その内容がまた、お金に関する生々しい話で驚きました。現実味があります。人をだまして大金を手に入れるのです。だまされたほうは悲惨(ひさん)な目に遭います。(あいます)
お財布セミナー:参加費4800円。元タレントで今は実業家のお財布アドバイザー善財夏美が講師。財布と財布の中身がきれいな人は金銭管理がしっかりしている。(そのとおりです。財布の持ち主は、財布の中身の金額も把握できています)。いい財布をもちましょうというのが宣伝文句のセミナーです。
ライフハック:アイデア、テクニック
たくさん登場人物が出てきます。たいへんなので、ここには書きません。
わたしは、メルカリというものは知りません。FXというものもわかりません。株式投資はしていますが、株式の用語など詳しい意味は知りません。それでも損はしていません。なんというか、ことこまかく、すべてのことを知らなくてもできるということはあります。以前テレビで、女子サッカーの澤穂希さん(さわ・ほまれさん)が、自分はサッカーのルールを知らないからサッカーチームの監督はできないと言っていました。それから、同様に選手だった丸山桂里奈さんも、自分はサッカーのルールはよくわからない。自分は勢いで、ビューンとやるだけだと言っていました。そういうものなのです。事細かい知識はいりません。仕事は、才能と努力と人間関係でまわっていきます。
たくさん借金をかかえたどうしようもない人たちが、いっぱい出てきます。ひとりあたりの借金が、290万円とか450万円、900万とか、そして、いいかげんな借金のしかたをしているので、だれにいくら借りていて、返済がどうなっているのかもわかりません。メチャクチャです。
舞台は新宿歌舞伎町です。だれから借りていて、だれに返しているのかもわからないホストの世界です。ホストクラブの顧客の三十代後半女性にも売掛金(うりかけきん)という種類の借金が500万円ぐらいのっかっています。
ホストクラブの借金取り立ては、女性の実家がある栃木県まで行くのです。実家で親が追い詰められます。
負債のある人間は、いつだれにいくら借りたかの記録もとっていないので、そんな人にお金を貸したら返済してくれるわけがありません。
顔はきれいな男でも、金銭管理はできない男です。(ホスト)
『…… 自分はもう一生、結婚は無理かもしれない。借金もあるし、今後、安定した職に就ける希望もない。』(されど、人生はまだはるかに長い。どこかで、腹を決めて(決断して)、給料が安くてもいいからちゃんとした仕事についたほうがいい。(ホストのことです)
大学生がだまされていくようすを読むと、なんのために若者は東京に出るのだろうと思ってしまいました。
詐欺師(さぎし)にだまされてお金を奪われるためにわざわざ東京に出てくる。人をだましてお金をせしめたい人間にとって、上京したての若い人は、いいカモ(被害者。だまされる人。だましやすい人)です。笑顔で近づいてくる人間は要注意です。下心があります。(したごころ:悪だくみ)
友だちだからお金を貸してくれという人間も拒否しなければなりません。本当の友だちならお互いにお金の貸し借りなどしません。利用されているだけです。貸したお金は返ってきません。はっきり、わたしは、貸し借りはしませんと断りましょう。お金を貸してくれというような人とは付き合わないほうがいい。
葉月みづほがハワイで買って、メルカリに出した新品のルイ・ヴィトンの財布は、落札した水野文夫の不始末があて、立ち飲み屋で盗まれて、どこかへいってしまいました。
『第三話 財布は盗む』
かなりおもしろい内容です。この本が、いつかテレビドラマになるといいのになあ。
葉月みづほがハワイで買って、メルカリに出したルイ・ヴィトンのお財布が、ぐるぐる回ります。(そしてなんと、葉月みづほがその財布に再会します)
その財布を盗んだ野田裕一郎という若い男の転落話です。一時期は投資で何千万円も儲けたのに、仕手株(してかぶ。株式のだまし)詐欺(サギ)に遭って(あって)、すってんてんになります。野田裕一郎は、複数の窃盗事件を起こして逃避行中です。
ツイッターとかツイートというのは、わたしにはなんのことかわかりませんが、本では、最後のツイートというものが、こう書いてあります。『――やってしまいました。あなたのUはついに退場です。皆様、短い間でしたが、ありがとうございます』
一時期は大金持ちになって、SNSの世界では有名人になられたようですが、一瞬にして貧困に落ちていき、さらにご自身は、どろぼうの犯罪者になられてしまいました。今は、住所不定のホームレスです。
アベノミクス、投資信託、昇給、年金、為替、インデックスファンド、ネット証券、アメリカ株、S&P500、いろいろ出てきます。クレジットカード、ポイント、お金の話ばかりです。
書中で紹介される本、『金持ち父さん 貧乏父さん』は、読んだことがあります。そのときの感想の一部です。
『金持ち父さん貧乏父さん ロバート・キヨサキ 筑摩書房』
金持ち父さんとは、著者の友人の父さんです。実業家です。貧乏父さんとは著者の実父です。教員です。
著者は友人の父さんをほめます。友人の父は不動産投資と株を軸にして、お金儲けをする人です。
著者は、教員で、コツコツまじめに長年働く実父を否定します。人生における時間と労力がむだだと断定します。
その本を読んだときには、違和感をもちました。著者にとっては、(お金のことに関しては)友人の父が理想で、実父はだめな人という評価だったからです。
わたしは、仕事は、給料が安くても辞めてはいけない。仕事があるだけありがたいと思いなさいと教育されてがまんして働き続けました。その本の著者から見れば、否定されるほうの働き方です。
わたしは、年金生活者の老齢期を迎えて、3年ぐらい前から、株式投資を始めてその違和感が消えました。お金でお金を増やすことを知ったからです。株式投資をやっているとわかるのですが、なにかのきっかけで複数の株の株価が急上昇して、1か月半ぐらいで、パートの主婦の年収分ぐらいの利益が生まれることがあります。パートの主婦が知ったらショックを受けると思います。いっぽう、なにかのきっかけで、複数の株の株価が急落して、半日程度のことで、パートの主婦の1か月分の収入が溶けるように消えていくこともあります。ハイリスク・ハイリターンです。されど、じょうずに運用すればお金が増えていきます。『業績がいい』『信用できる』会社を選べば、株価の上下動の幅は小さくても配当金や株主優待が得られます。
デイパック:軽量・コンパクトなリュックサック
野田裕一郎は、まず、マクドナルドの株で儲けます。(もうけます)数週間で5万円の儲けでした。
野田裕一郎は、アラシ池田という詐欺師にひっかります。ツイッターでフォローします。(わたしには意味がわかりません。わからなくてもいいし、わからないほうがいいと思っています。深みにはまると、だまされます)
ひとつの銘柄に全財産(3000万円ぐらい)をつぎこむのは、ギャンブルです。たいてい失敗します。(この人は、いったいいくらお金があれば満足するのだろうか。何かに使うためのお金ではありません。お金のゲームになっています)。なんだか、最近話題になった米国野球選手の通訳だった人みたいです。ギャンブル依存症です。おおきくもうけたら、パっとギャンブルをやめるのが金もうけのコツです。ギャンブルはしょせん損をするものです。中毒になるまでやってはいけません。
野田裕一郎は、罠(わな)にはまったことが自分でわかっているのに、損切り(そんきり)ができません。(損した状態で資金を引き揚(あ)げる。それ以上の損失を止める)
こんな人と結婚したらたいへんな目にあいます。金銭感覚がおかしい。
たとえば、住宅ローンなら、完済すれば、不動産が残ります。財産を築くための借金返済です。借金返済ですが、貯金みたいな面もあります。
株は、資金が消えたら終わりです。精神的には地獄にいるような気分です。だって、もともとはお金があったわけですから、消えたら、成果は、なんにもなしです。
物語は、葉月みづほに戻ります。
お金が欲しかったら共働きは必須です。
葉月みづほは、金銭管理能力がない夫を軽蔑(けいべつ)します。どうして、こんな男と自分は結婚してしまったのだろうか。
葉月みづほに、新しい発想の投資話が舞い込みます。
安い家を買って、リフォームして、貸し出す。不動産収入を得る。これから葉月みづほが自身の名義で購入するボロ家の値段は、210万円ぐらいです。でも住める物件です。
貧困ビジネスみたいな話になります。生活保護をもらっている人に貸せば、家賃は安く設定しても、生活保護で家賃が支給されるので必ず家賃が入ってきます。(話のうしろのほうに、役所が直接大家(おおや)に家賃を払ってくれるやり方を利用するそうです。生活保護をもらっている人の家賃滞納を避けるための役所にとっての手法なのでしょう。生活保護をもらっている本人から、「いいよ。了解します」の承諾書でもとっているのでしょう)
生活保護は役所が支払いを保証してくれるような堅実さがあります。医療費とか、住宅費(家賃)とか、葬儀代とか。なにかトラブルがあれば、連絡すれば、役所の担当者が対応してくれるのでしょう。
さて、これからお話はどうなるのだろう。
おもしろい本です。
『第四話 財布は悩む』
後半で、葉月みづほさんのがんばりが表現されます。応援したい。
詐欺師、善財夏実こと蛇川茉美34歳(へびかわ・まみ。イニシャルM・H。葉月みづほと同じ。ルイ・ヴィトンのお財布に葉月が入れたイニシャルです。めぐり巡って、ルイ・ヴィトンのお財布は、蛇川茉美の手に渡ります)は悪人です。根拠のない迷信で人をだまします。風水です。風水(ふうすい):中国発祥、『気(き)』というものがあるらしい。(わたしは信じません)
スピリチュアル:精神世界ということか。(こちらもわたしは信じません。目に見えないものをわたしは信じません)
いい財布を持てば、お金がたまるそうな。(ふつうの財布でいいと思います)
コンサバ:保守的、無難な服装
保坂:雑誌の編集長
稲盛瞳:蛇川茉美がOL時代の同僚。既婚。こどもが2歳。お金持ち
上質なキャメルのAラインのコートを着ている。(Aの文字のように、末広がりのコート。ラクダの毛でつくった織物)
鉄道の忘れ物市のことが書いてある部分を読んでいた時です。そういえば、もう何十年もむかし、自分が若かったころ、イベント会場で、忘れ物の傘を売る売り子をしたことがあります。何回かやりました。もうひとり若い男性とペアになって、『もうすぐ雨が降りそうですよーー』とゆきかう人に声をかけて、1本250円だったか、300円だったかぐらいで、忘れ物の傘売りの仕事をしました。もう、すっかり忘れていました
雑誌が売れない事情が書いてあります。
エロ記事や写真を載せないと男性向けの雑誌が売れないのです。
あとは、お金に関するコラムで売ります。
女性の裸記事を載せる関係者は、自分たちがお金を得るために働いています。
マネーリテラシー:お金の知識をもってうまく活用する能力。
せどり:転売(違法なときもあるようです。買い占めて高値で転売する。コロナ禍のときのマスクを思い出しました)
セリーヌ:フランス・パリのファッションブランド。
すごい迫力です。葉月みづほが覚醒します。(かくせい。不動産投資に目覚める)
現在のマンションの家賃が10万8000円です。
埼玉のボロ家の値段が210万円です。
銀行からお金を210万円借り、ボロ家に住みながら、ローンを2年間で返済します。
その後、家賃4万5000円で、自分たちが住んでいたリフォーム後の家を人に貸します。
毎月4万5000円、年額54万円がみづほさんの不労所得になります。(単純計算ですが)
自分たち家族は、2年後別の古い家をまた買って転居します。
そうやって借家をふやしていく作戦です。葉月みづほさんは、不動産賃貸収入で資産をつくるつもりです。
金銭管理能力のないだんなさんに対して、その作戦を了解しないなら離婚すると突き放します。大金のカードローンをつくるこんな男といっしょにいてもしかたがない。さよならあなた(わたしの夫)です。
ご主人は了解します。通勤時間が長いと不満が出ますが、片道1時間以内の通勤で済むならいいほうです。サラリーマンの通勤時間が片道1時間半ぐらいは、めずらしくもありません。ありふれています。
葉月みづほには、今はまだ2歳のこども(男児)に将来高等教育を受けさせたいという願いがあります。息子にお金の苦労をさせたくないという強い意思があります。
最近、NHKドラマ、『正直不動産』という番組を動画配信サービスで観ています。最初のシリーズを観終えて、今は、セカンドのシリーズを少しずつ観ています。この短編部分と重なるような意思があります。
すごいなあ。いい本です。今年読んで良かった一冊です。
『第五話 財布は学ぶ』
奨学金の返済ができなくて、危険なめにあいそうになる若い女性の話でした。
う~む。わたしも貧しい母子家庭育ちだったので、日本育英会の奨学金を借りましたが、結婚した時に一括返済をしました。
へんな話ですが、昔は結婚式を挙げると、経費を差し引いてお金が残りました。それを原資にして奨学金を一括返済しました。
昔は、結婚式をめでたいことだとして、親族、友人、職場の人たち、おおぜいで祝ってくださいました。相互扶助の精神がありました。(農耕民族の名残です。いざというとき、農家はお互いに助け合って作業をするのです。田植えの時期とか、稲刈りの時期とか、わらぶき屋根の大きな家のわら屋根のふきかえなど、各戸を順番に、おおぜいで共同作業をして協力するのです。近所に親類縁者が固まって住んでいたということもあります。昔は、先祖をたどると、たいていの人が農家につながりました)
結婚式に出席しない人でもお祝いをくださいました。
いただいたお金のうちの半分をお返しの物として送りました。
残ったお金を結婚式の費用にあてましたが、とくに親族からは、たくさんお祝いをいただいたので、お金が残るのが普通だったと思います。結婚式はそれなりの式で、豪華にはしませんでした。
今はもう、そういうことはないのでしょう。お葬式もそうでした。香典をたくさんいただけたので、葬式代にあてることができました。
さて、短編の内容のほうです。
平原麻衣子(ひらはら・まいこ):大卒。新宿観光案内所の案内員。派遣社員なので、契約を切られそうになっている。(期限を更新しない)。奨学金の借金が300万円ぐらいある。(すごい額です。どうしてそんなに借りたのだろう)
月給手取り15万円。ボーナスなし。アパートの家賃6万円。食費等が1万5000円。携帯代約1万円。母へ仕送り1万円。光熱費1万円。手元に残るのは4万円ぐらい。そのうち3万円が奨学金の返済になる。貯金0円。金なし。カレシなし。他人に奨学金という借金があることを言えない。隠している。結婚がイメージできない。小学生のときに父親が心臓病で急死してお金がなくなった。母は働いたがうつ病になった。兄はバイトをしていたが、家を出て行った。平原麻衣子は、大学進学にあたって、月12万円支給される奨学金を申し込んだ。びっくりするような高額です。とても返済できません。自分で自分の未来をつぶしています。
斉田彩(さいた・あや):新宿カラオケボックス勤務。大卒。奨学金の借金あり。複雑な家庭事情あり。ふたりとも奨学金の返済が、月3万円あります。
お金がすべてという書き方の話が続きます。
大卒なら就職OKというのは幻想です。(円滑に就職できる)
借金は厳禁です。
細く長く働いて、無職の期間をなるべく短くする。基本的に一度始めた仕事はずっと辞めない。
昔は、欲しいものはお金がたまってから買いなさいと教えられました。今は、借金してから返せばいいと180度変化しているようです。
若い女性ですから、男性の変態相手に体を売るような商売へと導かれていきます。
そんなことまでしなければならないのなら、奨学金なんて借りなければいいのに。
若いふたりは、変態おじさんに、ラブホテルで丸裸にされてしまいそうです。
救世主があらわれます。
これまでの話に何度か登場していたファイナンスアドバイザー善財夏美(本名蛇川茉美(へびかわまみ)ルイ・ヴィトンのお財布を持っている)です。
いろいろアドバイスがあって、ルイ・ヴィトンのお財布は、若い二人へと引き継がれました。
『第六話 財布は踊る』
本の全部を読み終えました。
投資の本でした。
葉月みづほは、不動産オーナーのお金持ちになりますが、夫婦関係は冷めました。(さめました)
『そうだ。もう夫も手放そう(てばなそう)。』
ルイ・ヴィトンのお財布をめぐって、いろいろドラマが生まれます。
内見(ないけん):不動産物件の実地見学、調査
自分の来しかた行く末:こしかたいくすえ。過去と未来。
これまでの話で登場した人たちにつながりがでてきます。
かぼちゃの馬車事件:女性専用シェアハウスのこと。経営破たんで、投資家たちが自己破産した。
新宿のルノアール:高級喫茶店。コーヒーの値段は高いが、ゆったりできる。商談とか、大事な打ち合わせで使う場所。
レバレッジ:てこの原理。他人の資本を使って、自己資本の利益率を高める。
ルイ・ヴィトンのお財布が、関係者の間をめぐりました。お話は終わりましたが、これからもめぐるような気がします。
なかなかいい本でした。女性の自立・自活が表現されています。
今月始まったNHK朝ドラの、『虎に翼(鬼に金棒(かなぼう)の意味らしい)』で、女性差別撤廃のメッセージがあるのに似ています。
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