2014年12月13日

ひとりぼっちを笑うな 蛭子能収

ひとりぼっちを笑うな 蛭子能収(えびすよしかず)  角川書店

 蛭子さんといえば、路線バスの旅番組を思い出します。几帳面で真面目な太川さんとは性格が合わないでしょうが、蛭子さんのいいかげんさに観ている人は心が安らぎます。彼のように自由気ままに振る舞いたい。
 その風貌やふるまいから考えると、この本の著者である蛭子さんは別人の雰囲気をもっています。67歳の大人としての考え方が書かれています。今年読んでよかった1冊になりました。癒されました。
 言いにくいことを素直に書いてあるところがいい。マスコミの言う「不謹慎」とか「空気を読め」を否定する内容です。「絆(きずな)」を遠くからながめておられます。だれかとつながるのは危険だと大半の人は考えているけれど口には出しません。
 協調性がないように見えますが、そうでもありません。気を使っておられますが、そのように見えないところが気の毒な部分でもあります。
 「友達」を否定されています。友達をつくるよりも「家族」をつくるこが優先で、基礎がしっかりしています。自立できている人です。
 反面、覇気(はき、積極的な意気込み)がありません。自己主張をしないスタンスをとっている。その成果として、就労でいえば長続きするとあります。そのへんは、賛否両論でしょう。
 食事のレポート番組が苦手という部分を読んで、やっぱり、全部が全部おいしくてすばらしいわけではないということが確認できました。
 マンガ家であることに強い責任感とプロ意識をもっておられることにびっくりしました。マンガに対する情熱は熱い。
 後半は案外理屈っぽい蛭子さんの顔が出てきてつまらなくなります。文句言いは、魅力が下がります。
 文章がきれいです。インタビューの聞き取り形式で文章化したもの、あるいは、優秀な編集者さんが、本人の文章を推敲(すいこう、見直し)してあるのではないかと思いました。それはそれでかまいません。
 最初の奥さん51歳を病気で亡くしたあたりのところから、再婚に至るまでの記述内容は精神的に深い。重松清作品を思い出しました。癌になったまだ若い奥さんが亡くなる前、旦那に、「(わたしを)忘れていいよ(意味として、再婚していいよ)」と告げるのです。
 以下は、印象深かった表現です。
・友人が4・5人集まると誰かが攻撃される対象になるという群れの意識
・人の思考は十人十色だから、腹を立てていたらきりがない。
・勝ち組も負け組もない。勝ち組はいつまでも勝ち組でいられるわけでもない。
・収入の範囲内でつましく暮らしていく。借金はしないし、お金は貸さない。
・若い頃から葬式が苦手。葬式で笑ってしまう。でも、前妻の葬式の時は、涙が止まらなかった。
・自分は、みんなで仲良くおとなしく生きていきましょうという雰囲気の老人ホームには入れない。
・「自由」が大切


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この記事へのコメント
蛭子さんの本を読んで、親友はいつまでも親友ではない。この言葉に深く感銘を受けました。やはり親友とて自尊心を傷つけたらだめだし、自分が親友よりも上の立場にいるということを相手に思わせては、下手をすると絶好状態になってしまいます。その親友は仲が良かった分私の悪口をばらまくでしょう。よく年老いた母が今でも自分のことだけを考えて生きなさいと言います。私も中年です。いつ何が起こるのかわかりません。母の意見を尊重して生きていきます。生きる上で参考になればと思い筆をしたためました。
Posted by りんご at 2015年07月26日 06:39
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