2014年04月26日

星空ロック 那須田淳 2014課題図書

星空ロック 那須田淳 あすなろ書房 2014課題図書

 全体で239ページの作品ですが、167ページまできたところで感想を書き始めます。複数の本を同時進行で読み進めるので、読み終わるまでにけっこう時間がかかります。今は、ほかに、昔のテレビで放映されたドラマの脚本と「永遠の0(ゼロ)」の作者が書いたクラシック音楽の解説本を読んでいます。この「星空ロック」も含めた3冊の本の内容を重ねて、この世に存在しない1冊の物語を想像します。「星空ロック」と「永遠の0」の作者の本は、パイプオルガンが奏でる(かなでる)旋律の説明部分で内容が重なりました。そこに、テレビドラマの脚本に出てくる独身女性たちの行動にバックグラウンドミュージックをつけて楽しみます。
 「星空ロック」は、主人公立花玲音(レオ)14才中学2年生男子が、90歳を超える高齢で亡くなった彼のギターの先生竹村猛(たける。愛称ケチル。ケチだから)から頼まれたことを果たすために、ひとり旅で、成田発、フランクフルト経由にて、 ドイツのベルリンへ行くお話です。
 最初にイントロダクションがあって、第1章から第5章まで、最後に終章がきて、全体で、ベルリン滞在中4日間の出来事が記されています。
 それほど長い物語ではありませんが、親族・友人関係が複雑なので、途中まで読んでから二度ほどページを戻って、ひとりずつ氏名・年齢・ポジションなどを書いて整理しました。
 立花玲音(レオ)には日本人の両親がいます。玲音がドイツでお世話になるのは、母親のきょうだいの娘であるいとこのマリ(24歳でベルリンの大学に留学中、デザインを学んでいる)です。マリと部屋をシェア(共同使用)しているのが、ユリアンファミリーです。ユリアンは14歳男子でピアノを弾く。父親はドイツ人ザシャ(ユリアンが母親のおなかの中にいたときに浮気をしてユリアン出生後離婚し、女とフィリピンへ行った。バイオリニストでコンサートマスター。養育費の支払いあり。年に1回親子が会う取り決めだが、ユリアンはそのことを歓迎していない。)、ユリアンの祖母はピアニスト、母加奈子は音大講師であり、収入を補うために通訳もします。ここからが、ややこしい。ユリアンの妹がリサですが、ユリアンとリサは同い年の14歳です。でも、ふたごではありません。リサの母親は和美で美容師です。父親は日本人の大ちゃんだからリサは日本人です。その後、和美さんと大ちゃんは離婚して、大ちゃんはユリアンの母親である加奈子さんと結婚してから交通事故で亡くなっています。ややこしい。
 登場人物相関図についてはこれぐらいにして、読書感想の経過をたどってみます。
 ケチル(竹村猛90歳超えぐらい)は病室にいる。つまり入院している。立花玲音(れお)が同室にいる。今はまだ意味不明の数ページが冒頭に置かれている。
 立花玲音(レオ)は中2の夏休みに家族旅行でスイスへ行く予定だった。それは、なかなか一般家庭での設定ではありません。ドイツ語のセリフあり。ちょっと、このお話の船に乗っていけるかと不安になりました。
 ケチルはレオ家族が住む三軒長屋であるぼだいじゅ荘の家主です。小学校6年生だったレオがエレキギターの騒音面で、近所迷惑にならずにギターの練習ができるよう、自宅敷地内にあるバンガロー風のボロ小屋(隠れ家と呼ばれる)を練習場所として提供したことがふたりの関係の始まりです。
 始まりからかなりのページ数を費やして、レオのちょっと重たいひとり語りが続く。レオは、「不満があるからロック」をやる。レオはロックが好きだけど、ケチルはジャズとクラッシクが好き。
 次々と曲名が出てくる小説です。ロックとして、レッド・ツェッペリンの「天国への階段」、クラシックとして、バッハの「G線上のアリア」、ケチルがドイツ語で歌った「リリー・マルレーン」、ホルストの「木星」。 ケチルにはドイツ留学中の思い出があります。彼が、1940年、19歳の頃、思い出話はどうも恋話です。シューベルトの歌曲集「冬の旅」が出てきました。
 19世紀末ドイツで活躍した音響学者田中正平の名前が出てきました。彼がつくった純正調のパイプオルガンは焼失してもうこの世にはない。「ドの♯(シャープ)とレの♭(フラット)の音は違う。だけど、ピアノだと同じ音にしてある。純正調と平均律がある。」。同時に読んでいる「永遠の0」の作者が書いた本「至高の音楽」では、バッハの「平均律クラヴィーア曲集」(副題として完璧な音楽)という部分で類似の解説があります。
 「星空ロック」では、90歳を超えたケチルが14歳のレオに自分の体験をとおしてなにかを伝承しようとしています。ケチル老人が70年前の青春時代にドイツベルリンで出会った恋の相手、クララ・ゾフィーにSPレコードを渡したい。ケチル老人の口から、ユダヤ人狩りの話が出てきました。でもクララはドイツ人です。SPレコードには、ユダヤ人メンバーが半分を占めた音楽グループ「コメディアン・ハーモニースツ」の男性コーラスによる「世界のどこかで」という曲が録音されています。<世界のどこかで、小さな幸せのかけらがきっとみつかるはずさ。ぼくはそれをいつも夢みているんだ>。それは、ユダヤ人が好んで歌う歌でした。古代からの彼らの歴史において彼らは祖国をもっていません。常に追い払われる差別を受け続けていました。彼女がもっていたSPレコードはドイツ人にユダヤの曲だからという理由で割られてしまいました。 ケチルは同じSPレコードをドイツでさがしましたが見つかりませんでした。彼は、日本に徴兵されて戦地である中国、ソ連に渡り、シベリアで終戦後も11年間抑留されました。その後帰国したケチルは、東京吉祥寺で念願のSPレコードを見つけて購入しました。(ここまでが第1章終了までの感想などです。レオはまだ離日(りにち。日本を離れて)していません。

(つづく)

 第二章東京→ベルリン一日目からの感想です。
 日本で開かれたピアノコンクール「ホフマン国際コンクールアジア大会」で4位に入ったユリアンとの成田空港での出会いシーンは自然なところがよかった。(実はユリアンの策略なのだが)。14歳同い年なれど、ユリアン身長170cm超え、レオは160cmぐらい。テディベアの話とかユダヤ人の話が出てきます。読み終えてみるといささか、さまざまな情報を入れ込みすぎだと思いました。読書検討の素材は抽出しやすいのですが、あれもこれも盛り込まれていて、かえって焦点がぼやけてしまいました。
 離婚率の高さからパッチワークファミリーが増えている。ドイツの離婚率が40%~50%、ユリアンの学校でのクラスの離婚率が60%、同じクラスの同級生男女生徒の親同士が父母会などをきっかけに結婚して、生徒同士がきょうだいになるとあります。日本は10%ぐらいかと思って調べたら30%を少し超えるぐらいでした。高率だったので、昔と比較して時代は変わったと感じました。昔は経済的理由や子育て、世間体などを気にして離婚をさけることが多かった。冷たい夫婦関係をがまんしつつ、年齢を重ねるとともに、男女として夫婦として協調の秘訣や妥協点をさぐりました。ここにきて、時代の急速な変化にちょっとついていけない自分がいます。
 第三章、ベルリン二日目の感想です。
 バッハの「ゴールドベルグ協奏曲」、別の本「至高の音楽」で、バッハ(生存期間1685年-1750年)のつくった曲は彼の生存当時は大衆からの支持を得られず、忘れ去られそうになっていたのをバッハ死後30数年後にモーツアルトが発掘したように書いてありました。それは、「平均律クラヴィーア曲集」という曲集で、この「平均律」というのが、田中正平氏が制作した純正調パイプオルガン(名称としてエンハルモニウム)につながっていきます。読んでいると気づくのですが、登場人物ひとりひとりが「音符」なのです。彼らが接触して交流しあうことが「メロディー」で、交流はひとつの曲に育っていくのです。
 レオとユリアンとの会話は続き、モーツアルトの「トルコ行進曲」が出てきました。
 
(つかれてきたので、つづく)

(翌朝)
 ビートルズの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」という曲は小説によく登場してくる曲です。長くて曲がりくねった道というタイトルは人生とか、一定期間の活動の始まりと終わりでの感情の動きを表わすのでしょう。自分は、ビートルズ世代ではないので、曲は聴いたことがあっても記憶にはありません。
 リサがボーカルで、レオも加わって、バンド演奏を始めるような流れになりました。
 第5章におけるロック・カフェ・プリンツでの、黒人少年の叩くドラムとレオのギターによるセッション(一緒に演奏する)、「スタンド・バイ・ミー」はよかった。音楽は国境を越えるし、言葉はいらない。スタンド・バイ・ミーは、洋画の曲で、親から阻害(そがい。)、じゃま者扱いされた少年たちが線路伝いに歩いて短い旅をする内容です。)ぼくのそばにいて、愛してほしいと訴える内容の歌詞です。
 最終的にレオが日本からもってきたSPレコードはあるべき場所に届きました。「躓きの石(つまづきのいし)」というお話がドイツ人女性の口から語られます。戦争を引き起こしたナチス・ドイツのことをいつまでたっても忘れないことを目的とした10cm四方の金属プレートが戦争で亡くなった故人の名前を入れた記念碑として菩提樹のそばに埋め込まれているそうです。
 パッフェルベルの「カノン」。作曲者も曲名も知りません。ケチルが好きでいつも聴いていたそうです。この曲を聴くと心が落ち着くと、70年前にケチルが好きだったドイツ人女性が語ります。
 読み終えてみると、いろいろな壁を破ることを趣旨とした小説であったことがわかります。壁は、ドイツベルリンの壁を意味します。民族差別をなくして国境の壁を破る。言葉の壁を破る(音楽交流で)、世代の壁を破る(戦争体験者と戦争を知らない世代)、みんな仲良くということが着地点です。
 レオたちは、SKIバンド(ボランティアグループ。エスカイイー)として、サマーフェスティバルでのコンサートに出場しました。お互いの呼吸やリズムを読み取り、うまくあわせながら一つの音楽をつくりあげていきました。たくさんの曲名が出てきますがもうここには書きません。
 悲しい歴史から学ぶ。できそうもないことに挑戦する意志はたとえうまくいかなくても持ち続ける。世界的な広い視野をもつ。人間には幸せに生きて死ぬ権利がある。

(再読 読書感想文のネタになる部分を箇条書きで書き落としておきます。参考にしてください。)
・宇宙にある星を音符とし、星々は、ハーモニーという法則に従って、壮大な星の音楽を奏でている。(かなでている)
・ギリシアの哲学者ピタゴラスが、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の音階を考え出した。
・万物のひとつひとつが音符なんだ。
・レオはこれからどんな音符をつくりだすんだろう。(14歳少年の希望ある未来)
・小学校6年生のときに昔使っていたけれど、ほこりをかぶったままになっていたセミ・アコースティックギターをタダでゆずってもらった。(音楽の扉が開かれたきっかけ)
・ロックにのめりこんだきっかけは「生活に不満があったから」父親の転勤で小学校6年までに6度引越しをして、小学校は3校通った。友だちができなかった。相手の顔色を読む仮面を貼り付けたような顔つきになった。ストレスがたまって、衝動的に無性に叫びたくなった。(ちなみに、わたしは、放浪癖があった亡父親に引っ張られて、小学校は6校、中学校は3校通いました。だから、レオの体験はたいしたことありません。何事も上には上がいます。)
・隠れ家で、90歳ぐらいのケチルはオルガン、12歳ぐらいのレオはギターでセッションをした。ケチルの言葉として、レオの演奏は「語り」が足りない。語りは聴いている人へのメッセージです。
・ドイツの首都ベルリンの中心地にケルン公園があって、そこに熊砦がある。本物の生きた熊がいる。
・ぼだい樹のことをドイツ語で、「リンデンバウム」と言う。(バウムクーヘンは、樹木の年輪からきているのだろうとこれを書きながら思いつきました。)
・ドイツには移民がたくさんいる。
・ドラムはアーリー(黒人少年。アフリカ・タンザニアからの移民で、ドイツ人の養子となった。)、キーボードはベアカイ、ベースはアリッサ、ギターはレオ、ボーカルはリサ

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この記事へのコメント
私は星空ロックを夏休みの感想文にしようと思い、読んでみました。
けれども、登場人物がややこしく、よくわからなくなっています。
だから、わたしも一人ずつ登場人物の名前や年齢などをメモって整理しようと思います。
参考になりました。ありがとうございました。
Posted by hr at 2014年07月31日 21:09
 承認が遅くなって申し訳ない。
 さきほど、車で千葉県から帰宅したところです。
 読書に限らず何事もメモを残す(記録を残す)ことが重要です。いつ、どこで、だれが、なにをした。簡潔でよいのです。
 読んでくれてありがとう。
Posted by 熊太郎熊太郎 at 2014年08月02日 20:48
私は中二です。
今、星空ロックの感想文を書いています。
細かく書いていただいてあるので、本当に助かりました。
<いろいろな壁を破る>の所、大変参考になりました。
ありがとうございました。
あと、もう少しで書き上がるので最後までがんばります。
Posted by ゆきだるま作ろう at 2014年08月26日 21:30
 読んでくれてありがとう。
 この項目はたくさんの学生さんたちに、もう1万6000回ぐらい観ていただいております。
 課題図書の感想文を書き始めて3年目ですが、昨年の「チャーシューの月」が8000回ぐらいでしたので、「星空ロック」への関心は非常に高いと感じております。どうしてなのか理由はわかりません。
 参考になれてうれしいです。
 
Posted by 熊太郎熊太郎 at 2014年08月26日 22:10
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