2023年05月31日

ころべばいいのに ヨシタケシンスケ

ころべばいいのに ヨシタケシンスケ ブロンズ新社

 表紙をめくると、暗い雰囲気の女の子が登場します。表紙の裏に細かい絵が12シーン(場面)描いてあります。
 女の子は、5歳か6歳ぐらい、幼稚園の年中さんか、年長さんぐらいに見えます。
 さらにページをめくると、人の不幸を願う、人の不幸を喜ぶような表情をした女の子がランドセルをしょって、小学校の校門から出てきます。(幼稚園児だと思っていた女の子は小学生でした。だとすると、小学二年生か三年生ぐらいに見えます)
 それはさておき、人の不幸を願う人って、現実社会にいます。

 人が嫌がることを相手に対してやって、相手が困る姿を見て、うれしがる人がいます。幼児期のこどもの行動に多い。
 そういうことをするのは、いじめっ子が多いのですが、この女の子の場合は、それにくわえて、ガミガミしかる小学校の先生も、いじわるな人に思えています。
 
 おもしろい。女の子は、嫌いな小学校の先生を小人(こびと)にして、左手の手のひらの上にのせて、右手でパンとたたきつぶしました。
 まるで、メガネをかけた男のおじさん先生が、会社の上司のようにも見えます。
 仕返し(しかえし)の絵は、刑事ドラマ『相棒(復讐が動機の殺人が多い)』のようです。
 ページに描かれていることを見ていると、絵本というよりも、大人(おとな)のためのドキュメンタリー物語です。(実話としての社会的な事件の内情を追う映像作品)
 
 人は、人からかけられた一言(ひとこと)で救われることがあります。
 そのひとつが『ほめ言葉』です。

 東京都内市街地に、怪獣ゴジラ(女の子の姿)が現れたみたいな絵がかっこいい! 赤い炎がメラメラと燃えあがっています。ほかも含めて、絵の色彩がきれいです。

 リフレッシュ(気分転換)のために、趣味をもつ。
 自分で自分にご褒美(ほうび)を贈る。(欲しい品物を買ったり、おいしいものを食べたり、旅行に出たりするなど)
 
 世の中には、いろんな人がいます。
 自分が社会に出て驚いたことがいくつかありました。
 五体満足で口が達者でも働けない人がいます。ふりかえってみると、なにかを最後までやりとげたという実績がないのです。短期間でやめてしまう。だけど、どうしようもないのです。しかたがないのです。現実社会の事実として、そういう人もいます。
 もうひとつは、オギャーとこの世に産まれたとたん、(相続で)お金や財産がたくさんくっついてくるあかちゃんがいます。一生働かなくても生活できる人がいます。
 生活のしかたのひとつとして、自分が自立・自活はせずに、なにかに『寄生』して生活していく生活パターンを送る人がいます。
 この世では、不合理(理屈に合わない)、不条理(筋道がとおらない)、理不尽(人の道に反する)なことが横行しています。
 されど、それらのことについて、心の中で、そういうものだと、気持ちに折り合いをつけて生活していくことが、おとなになるということです。
 グレーゾーン(どっちつかずの灰色の区域)の中で、工夫をして、強くしぶとく生活していくのです。

 人間全員と仲良くなることはできません。
 善人をだます悪人がいます。
 いい人だと思っていた人が、じつは悪人で、相手に都合のいいように自分が利用されていたということもあります。
 賢い人(かしこいひと)にならねばなりません。
 この絵本には『サタン』みたいな影が出てきます。
 宗教的です。
 思考を極めると宗教にたどりつくのか。
 非科学的です。
 見えないものは見えないし、聴こえないものは、聴こえないのです。
 洗脳されてはいけません。(他者に、脳みその働きをコントロールされる)
 
 この絵本は、途中まではおもしろかった。
 理屈ばかりになると、おもしろみが薄れていきます。
 
 人間界の『お悩み克服法』というハウツー本(なにをどうしたら最善か)というノウハウ本でした。(know-how「知る」)
 無理をして環境に順応しようとすると心の病(やまい)になりますよというメッセージがあります。
 自分を変えるか、自分がいる場所の環境を変えるか(移動する)の選択はむずかしいけれど、若い人なら、時間はたっぷりあります。よく考えて判断して実行してほしい。
 気が合うパートナーとか親族、友人がいるといい。その数は多くなくていい。
 哲学書のようでした。
 人は、このつらい世の中を、どうやって生きていくかが主題の絵本です。  

Posted by 熊太郎 at 06:16Comments(0)TrackBack(0)読書感想文