2023年05月26日
それで、いい! 礒みゆき・文 はたこうしろう・絵
それで、いい! 礒みゆき(いそ・みゆき)・文 はたこうしろう・絵 ポプラ社
絵描きさんの絵本です。
絵描きさんは、人間ではなくて『きつね』です。
絵を描くのにも悩みます。そんな話が書いてありました。
きつねとうさぎ、きつねが描いた絵を気に入らないきつねは、絵を丸めて、ポイとうしろのほうへ放り投げて捨てます。
うさぎが、紙のボールになった空中の紙ごみを見上げています。そんな絵から始まります。
登場人物が、いっぱいいます。順番に拾ってみます。
ショウリョウバッタ:草むらでよく見かけるバッタです。熊じいさんは、小学二年生のときに野原で捕まえて、お菓子の空き箱で飼育を試みたことがあります。最後は乾燥してカラカラの体になってしまいました。
えのころぐさ:キャラクターとして、動物や昆虫ではありませんが、これもよく見かける草です。稲のようなつくりで、穂があります。
やまねこ:野生のねこですな。
あひる:きつねとやまねこのけんかの仲裁役です。絵の展覧会があるよと、きつねに教えてくれます。
ニジマス:川魚(かわざかな)。サケ科。食用魚。おいしい。
いたち:いのししと、ボールあそびをしていた。
いのしし:いたちと、ボールあそびをしていた。
わし:鳥です。名古屋の東山動物園にいます。かっこいいです。かっこいいから、運動チームのシンボルマークになることも多いです。
あらいぐま:てつぼうで、前回りをしています。
ぶた:てつぼうで、前まわりをしています。4回できました。こぶたたちは、きょうだいで、兄と弟がいます。姉さんもいます。
りす:てつぼうで、前まわりをしています。16回できました。
やまねこ:てつぼうで、前回りをしています。25回もできました。
うさぎ:てつぼうで、前回りをしています。みんなとちがって、1回もできません。
てつぼうで前回りが1回もできないうさぎは、やまねこにばかにされて、元気をなくして、家に帰ってしまいました。きつねがうさぎを追いかけます。
ことり:きつねとうさぎは、空中を飛んでいることりを見て、絵画制作における創作のコツに気が付きます。なにかを見て、心が動く、感動する。感動=『すごいもの』ではなかろうか。自由な発想をする。なにものにもしばられない自由な思考が華(はな。人の心をつかむもの)を生む。本では『かきたいものをかく。かきたいからかく』と表現してあります。
きつねの絵を描く道具は、8色入りのクレヨンです。
描く紙はいろいろです。さんすうのノートのすみっこ、チラシや包み紙の裏(白いのでしょう)、地面、絵を描くことが大好きなきつねです。壁にも書いちゃうそうです。
絵本の絵が生き生きとしていていい。
どうぶつたちが、生きているようです。
絵をかくきつねは、神経質です。
自分が描いた絵が、人からどんなふうに見られるのか、どのように評価されるのか、とても気になります。(自分の書きたいように自由に書くのが『絵』です。いい絵を描こうとするといい絵は描けません)
きつねは、人をびっくりさせるようないい絵を描こうとチャレンジします。絵を描くためには素材が必要です。素材探しが始まります。素材=『すごいもの』です。
きつねは、ニジマスの絵を描いて、みんなから「じょうず」とほめられたい。
きつねは、できあがったニジマスの絵に不満があるらしく、絵を丸めてぽいと捨ててしまいました。
きつねは次に、りんごの絵を描きましたが、その絵もくしゃくしゃと丸めてぽいと捨てました。
2ページ見開きの大きな絵が出てきました。
きつねが木の枝の上にいて、きりっとした顔つきで左方向を見ています。
その隣の枝で、リスがやっぱり左方向を見ています。いい絵だなあ。
左方向に何が見えるのだろう?
絵を描く場合に、きつねが言うには、というか、きつねがまわりの人に言われるには、形がおかしかったり、クレヨンの色がはみだしたりするのはいけないらしい。(そんなことはありません。天才画家のピカソの絵は、素人目で見て、何が描いてあるのかわからない絵もあります。サルバドールダリの絵もそうです)
絵を描くときには、人からどう言われようと自分が描きたいように書くのです。自分を信じて、自分に自信をもって描くのです。いい絵を描こうと思って描いたら、そのさもしい(心が欲にまみれていやしい)気持ちが絵に表れます。いい絵にはなりません。
きつねは思うように絵を描けないので、崖の上に腰かけてさみしそうです。
夕焼け小焼けの空が赤く広がっています。
きつねの口から出てくるのは、ためいきばかりです。
きつねは、うさぎの家で知りました。
うさぎは、きつねが捨てたきつねが書いた絵を拾っていたのです。
うさぎは、そうやって拾った絵をたくさん、自宅の部屋の壁に掲示して飾っているのです。
くすのき:みきが太く、背は高くなる大きな木です。
うさぎは、くすのきに登ってみたいけれど、登れない。
きつねが描いた一枚一枚の絵について、うさぎの夢がうさぎの口から語られます。
見てみたいけれど、自分には見ることができない光景(シーン)が絵になっています。
小鳥が飛ぶシーンで、きつねがハッと気づきます。
(描きたいように描く)
きつねとうさぎの恋愛関係の始まりを感じさせるような後半部です。
てんらんかいの日がきました。
やまねこは、悪者役ですな。きつねの絵をけなします。
きつねが描いた絵は『うさぎの顔』です。
うさぎの顔は、写真のように写実的ではありませんが、いい感じの色合いです。描いたきつねの愛情が見た人に伝わってきます。全体的にオレンジ色の絵です。
うさぎの絵を見た人たちに笑顔が生まれます。
うさぎも喜んでいます。
幸福感に満ちたラストシーンです。
絶景を見る時は、スマホもデジカメも横に置いて、自分の瞳で風景をしっかり見て、脳みそにすばらしいシーンを焼き付けたほうがいい。自分で自分の脳みそに絵を描いて残しておくのです。
(つけたしとして)
先日動画配信サービスTVer(ティーバー)で番組『有吉クイズ』を見ました。(よくはわかりませんが、東海地区の地上波では放映されていないようです)
えびすよしかずさんと有吉弘行さんが合作で絵を描いている映像でした。
えびすさんは、太川陽介さんと路線バス乗り継ぎの旅をしていたころのような、はつらつとした輝きはない75歳ぐらいの認知症お年寄りになられていましたが、絵を書き出すと(本業は漫画家)のめり込むように時間が過ぎていきました。独特な絵なのですが、専門家の方はほめておられました。
絵が好きな人は、ちょっとほかの人とは生活習慣が違うのかもしれない。そんなことをこの絵本を読んだあとに思いました。自由な気持ちになりたいから絵を描くのでしょう。自分の世界をのびのびと、ひろびろと実現するのです。自分の気持ちを正直に表現できる人が、人を感心させる絵を描けるのでしょう。
絵描きさんの絵本です。
絵描きさんは、人間ではなくて『きつね』です。
絵を描くのにも悩みます。そんな話が書いてありました。
きつねとうさぎ、きつねが描いた絵を気に入らないきつねは、絵を丸めて、ポイとうしろのほうへ放り投げて捨てます。
うさぎが、紙のボールになった空中の紙ごみを見上げています。そんな絵から始まります。
登場人物が、いっぱいいます。順番に拾ってみます。
ショウリョウバッタ:草むらでよく見かけるバッタです。熊じいさんは、小学二年生のときに野原で捕まえて、お菓子の空き箱で飼育を試みたことがあります。最後は乾燥してカラカラの体になってしまいました。
えのころぐさ:キャラクターとして、動物や昆虫ではありませんが、これもよく見かける草です。稲のようなつくりで、穂があります。
やまねこ:野生のねこですな。
あひる:きつねとやまねこのけんかの仲裁役です。絵の展覧会があるよと、きつねに教えてくれます。
ニジマス:川魚(かわざかな)。サケ科。食用魚。おいしい。
いたち:いのししと、ボールあそびをしていた。
いのしし:いたちと、ボールあそびをしていた。
わし:鳥です。名古屋の東山動物園にいます。かっこいいです。かっこいいから、運動チームのシンボルマークになることも多いです。
あらいぐま:てつぼうで、前回りをしています。
ぶた:てつぼうで、前まわりをしています。4回できました。こぶたたちは、きょうだいで、兄と弟がいます。姉さんもいます。
りす:てつぼうで、前まわりをしています。16回できました。
やまねこ:てつぼうで、前回りをしています。25回もできました。
うさぎ:てつぼうで、前回りをしています。みんなとちがって、1回もできません。
てつぼうで前回りが1回もできないうさぎは、やまねこにばかにされて、元気をなくして、家に帰ってしまいました。きつねがうさぎを追いかけます。
ことり:きつねとうさぎは、空中を飛んでいることりを見て、絵画制作における創作のコツに気が付きます。なにかを見て、心が動く、感動する。感動=『すごいもの』ではなかろうか。自由な発想をする。なにものにもしばられない自由な思考が華(はな。人の心をつかむもの)を生む。本では『かきたいものをかく。かきたいからかく』と表現してあります。
きつねの絵を描く道具は、8色入りのクレヨンです。
描く紙はいろいろです。さんすうのノートのすみっこ、チラシや包み紙の裏(白いのでしょう)、地面、絵を描くことが大好きなきつねです。壁にも書いちゃうそうです。
絵本の絵が生き生きとしていていい。
どうぶつたちが、生きているようです。
絵をかくきつねは、神経質です。
自分が描いた絵が、人からどんなふうに見られるのか、どのように評価されるのか、とても気になります。(自分の書きたいように自由に書くのが『絵』です。いい絵を描こうとするといい絵は描けません)
きつねは、人をびっくりさせるようないい絵を描こうとチャレンジします。絵を描くためには素材が必要です。素材探しが始まります。素材=『すごいもの』です。
きつねは、ニジマスの絵を描いて、みんなから「じょうず」とほめられたい。
きつねは、できあがったニジマスの絵に不満があるらしく、絵を丸めてぽいと捨ててしまいました。
きつねは次に、りんごの絵を描きましたが、その絵もくしゃくしゃと丸めてぽいと捨てました。
2ページ見開きの大きな絵が出てきました。
きつねが木の枝の上にいて、きりっとした顔つきで左方向を見ています。
その隣の枝で、リスがやっぱり左方向を見ています。いい絵だなあ。
左方向に何が見えるのだろう?
絵を描く場合に、きつねが言うには、というか、きつねがまわりの人に言われるには、形がおかしかったり、クレヨンの色がはみだしたりするのはいけないらしい。(そんなことはありません。天才画家のピカソの絵は、素人目で見て、何が描いてあるのかわからない絵もあります。サルバドールダリの絵もそうです)
絵を描くときには、人からどう言われようと自分が描きたいように書くのです。自分を信じて、自分に自信をもって描くのです。いい絵を描こうと思って描いたら、そのさもしい(心が欲にまみれていやしい)気持ちが絵に表れます。いい絵にはなりません。
きつねは思うように絵を描けないので、崖の上に腰かけてさみしそうです。
夕焼け小焼けの空が赤く広がっています。
きつねの口から出てくるのは、ためいきばかりです。
きつねは、うさぎの家で知りました。
うさぎは、きつねが捨てたきつねが書いた絵を拾っていたのです。
うさぎは、そうやって拾った絵をたくさん、自宅の部屋の壁に掲示して飾っているのです。
くすのき:みきが太く、背は高くなる大きな木です。
うさぎは、くすのきに登ってみたいけれど、登れない。
きつねが描いた一枚一枚の絵について、うさぎの夢がうさぎの口から語られます。
見てみたいけれど、自分には見ることができない光景(シーン)が絵になっています。
小鳥が飛ぶシーンで、きつねがハッと気づきます。
(描きたいように描く)
きつねとうさぎの恋愛関係の始まりを感じさせるような後半部です。
てんらんかいの日がきました。
やまねこは、悪者役ですな。きつねの絵をけなします。
きつねが描いた絵は『うさぎの顔』です。
うさぎの顔は、写真のように写実的ではありませんが、いい感じの色合いです。描いたきつねの愛情が見た人に伝わってきます。全体的にオレンジ色の絵です。
うさぎの絵を見た人たちに笑顔が生まれます。
うさぎも喜んでいます。
幸福感に満ちたラストシーンです。
絶景を見る時は、スマホもデジカメも横に置いて、自分の瞳で風景をしっかり見て、脳みそにすばらしいシーンを焼き付けたほうがいい。自分で自分の脳みそに絵を描いて残しておくのです。
(つけたしとして)
先日動画配信サービスTVer(ティーバー)で番組『有吉クイズ』を見ました。(よくはわかりませんが、東海地区の地上波では放映されていないようです)
えびすよしかずさんと有吉弘行さんが合作で絵を描いている映像でした。
えびすさんは、太川陽介さんと路線バス乗り継ぎの旅をしていたころのような、はつらつとした輝きはない75歳ぐらいの認知症お年寄りになられていましたが、絵を書き出すと(本業は漫画家)のめり込むように時間が過ぎていきました。独特な絵なのですが、専門家の方はほめておられました。
絵が好きな人は、ちょっとほかの人とは生活習慣が違うのかもしれない。そんなことをこの絵本を読んだあとに思いました。自由な気持ちになりたいから絵を描くのでしょう。自分の世界をのびのびと、ひろびろと実現するのです。自分の気持ちを正直に表現できる人が、人を感心させる絵を描けるのでしょう。