2023年05月25日
ラブカは静かに弓を持つ 安檀美緒
ラブカは静かに弓を持つ 安檀美緒(あだん・みお) 集英社
24ページまで読んだところで感想を書き始めます。
本屋大賞の候補作でした。(大賞は別の作品が受賞しました)
タイトルの意味がわからなかったのですが、ラブカと呼ばれる人物が、チェロを弾くのだと、24ページまで読んで理解しました。
音楽著作権の不正利用を素材にした話になっていると思うのですが、著作権者にお金を払わずに楽譜を使用している大手の音楽教室会社を裁判で訴えて、著作権使用料を支払ってもらうというような流れに見えます。
この物語では、その不正使用を証拠として立証するために、著作権協会の職員がスパイとして音楽教室に入り込みドラマがスタートするようです。
自分の親族に、音楽教室運営がらみの仕事をしている人間がいます。
この本の素材は、以前、わたしたちふたりの雑談の中で話題になったことがらです。
たしか、裁判は、最終的には、最高裁判所で判決が出て、生徒には著作権使用料を支払う義務はないけれど、教える先生には著作権使用料の支払いを著作権協会が求めることができるというような内容で話を聞いた記憶です。(「求めることができる」ですから任意規定です。請求してもいいし、しなくてもいい)
なお、音楽教室は、演奏行為をする人物(法人格としての人)ではないので、著作権使用料の支払い義務の対象ではないという判断だったと思います。(ゆえに、生徒から集める月謝の中から著作権使用料は払わなくていい)
自分はその道のしろうとなので自信はありませんが、そんな雑談でした。
今度会った時に、この本の話をしてみます。(追記:話をしてみました。東京で実際にスパイ事件があったそうです。その事件がこの物語の素材になっているのかもしれません)
さしあたっての登場人物紹介です。(読みながら、徐々に書き足していきます)
橘樹(たちばな・いつき):12年ぶりにチェロを弾くことになりそうです。この人がスパイのポジションを務める『ラブカ』になるのでしょう。全日本音楽著作権連盟(通称「全著連」一般社団法人という設定でしょう)の職員です。13歳でチェロをやめて、12年がたっているので今は25歳です。
この春に人事異動で「広報部」から「資料部」に異動してきた。資料部は、閑職(かんしょく。簡単な業務で、暇な職場)である。広報部の前は、仙台支社にいました。
5歳から13歳までの8年間、チェロを弾いた。平成26年7月15日就職試験の面接でそう本人が面接官に語った。そのときの面接記録メモが人事担当部署の資料に残っている。
長野県松本市の出身のようです。松本市には、オーケストラのまちというようなイメージが自分にはあります。
実家は地元の名士のようです。祖父の勧めで、大きな屋敷でチェロを弾いていた。祖父と母親と自分の三人暮らし。祖父と母親は険悪な関係にあったらしい。橘樹の父親は、樹が小さい頃に家を出て行った。樹には父の記憶はない。
スパイ行為をするために録音機能付きボールペンを持っている。ウソの職業が公務員(東京都目黒区役所職員を名乗っている。緑地・公園、街路樹管理の仕事をしているように振る舞う)
こどものころになにやら事件に巻き込まれて、チェロを弾くことを辞めたらしい。
親族間の争いが原因で心の病(やまい)があるらしくクリニックに通院している。
スパイ活動を始めてから、自分が弾くチェロの音がメンタルの病気にはいいそうです。落ち着く。橘はチェロの演奏がうまくなりたい。
全著連の本社は、最上階が「理事室」、地下1階が「資料室」です。なにやら理事がらみで、組織内の権力闘争があるような雰囲気が、文脈にただよっています。派閥(はばつ。利害で結びついたグループ。人事権をもった人間がボスの場合が多い)があります。
全著連の役割は、日本国内の音楽著作権の管理です。
塩坪信弘(しおつぼ・のぶひろ):橘樹の新しい上司です。橘に音楽教室にもぐりこんで、二年間スパイ活動を行うよう指示します。小柄な中年男。鷹揚(おうよう。ゆったり。小さなことにこだわらない)。仕事人間
三船綾香:全著連の職員。橘樹になれなれしい。美人。所属は総務
湊良平:全著連の職員。橘樹より二歳年上
ミカサ:音楽教室を全国展開している大企業。生徒総数35万人。音楽教室内での演奏は、『公衆に対する演奏ではない』から、著作権使用料を支払う義務はないと裁判で主張する。(公衆に対する演奏をするときは、著作権者の許可が必要であるというようなことが、著作権法の第22条に書いてあるそうです)
(ミカサのチェロの先生)浅葉桜太郎(あさば・おうたろう):27歳。ハンガリー国立リスト・フェレンツ音楽院卒業。最初はピアノをやっていた。4歳でピアノを始めて、11歳からチェロを始めた。兄と姉がいる。ハンガリーでのチェロの先生は、ハンス先生
(ミカサのチェロ教室の生徒)花岡千鶴子:初老の女性。レストラン『ヴィヴァーチェ』を経営している。最年長
(同じく生徒)青柳かすみ:女子大生。最初の登場時は大学2年生。二十歳ぐらい。人からは、かすみちゃんと呼ばれている。純朴そう。大学で幼児教育を学んでいる。幼稚園教員の資格試験を受ける。
(同じく生徒)蒲生芳実(がもう・よしみ):おっとり年配男性。ほっそり色白頬(ほほ)。花岡千鶴子の次に年長。東京都庁職員
(同じく生徒)梶山:42歳。化粧品会社勤務営業課長。体育会系の男性。ガードマンぽい。息子が10歳
(同じく生徒)片桐琢郎(かたぎり・たくろう):ひょうろ長い風貌(ふうぼう)。メガネが印象的。へらへら笑う青年。文系の大学院生
小野瀬晃(物語の中だけの架空の人物です):作曲家、チェロ奏者
海部(かいふ):作曲家
磯貝:全著連の職員
ピアスの医師:橘樹の主治医。精神科医師。自分の読み落としなのか、男性か女性かわかりませんでした。ピアスを付けているから女性なのでしょう。
小野瀬晃コンサート:チェロの演奏である『The Play』というタイトルの東京公演は、9月半ばの二日間。代表作『雨の日の迷路』
物語の構成は、第一楽章、第二楽章、エピローグです。オーケストラが奏でる(かなでる)クラッシック曲の演奏順みたいです。
第一楽章
音楽教室は、自分たちの都合がいいように勝手にタダで楽譜を使っていたという理屈と主張が上司の塩坪信弘にあります。そして、彼と橘樹は、裁判では、全著連が必ず勝つという確証をもっています。つまり、音楽教室は生徒から集めた受講料収入(月謝)のなかから、何パーセントかを全著連(著作権者)に支払うという判決が出る。(現実社会では、最終的には、そうはなりませんでしたが……)
カラオケスナックを対象とした著作権料を争う裁判の判決は、「管理・支配・利益性」がお店にあった。ゆえに、お店は「演奏の主体」と判断できるから、お店は著作権使用料を支払う義務があるという理屈です。(法律論は、なかなかむずかしい。音楽教室もカラオケスナックのお店と同様な気がします。作者はどんなメッセージをこの物語で読者に送ろうとしているか?)
公衆とは:①特定多数の者 ②不特定の者
ミカサ音楽教室二子玉川店(ふたこたまがわてん。6階建て、1・2階が楽器店舗、3・4階が音楽教室とスタジオ、5・6階がコンサートホール):橘樹が音楽教室の生徒になりすまして、スパイとして潜入する店舗です。
数年前にリニューアルした旗艦店(きかんてん。中核となるべき店舗)職務命令です。断れません。いや、違法行為なら断れるか。でも、違法行為ではないでしょう。
スパイ行為を断ればこの仕事を辞めてくれ。断らなければ出世・昇進・昇給を約束するとも言われそうです。まあ、物語ですから、橘は、この仕事を受けるでしょう。
橘は、12年ぶりにチェロを演奏することになりそうです。
橘は、人づきあいが得意ではないから、潜入先で深い関係になる人間はいないだろうという上層部の見込みです。(なかなかそうはならないと思います)
上司が『ポップスを弾いてみたい』と店側に言うように橘くんに指示しました。
おもしろそうです。
橘樹に、リスクとチャンスが与えられました。
実地調査委員会:全著連内にある秘密のチームのようです。
(つづく)
チェロ:バイオリンの三倍の厚みがある。高さは約130cm
橘樹には依存症があるのだろうか。
アルコール依存症とか、薬物依存症の気配があります。
今は、通院・服薬をしながら耐えている。
やっかいな病気があるようです。
眠れないそうです。
不眠症ですが、睡眠不足と限界まできたときの突然の寝落ちがあるそうです。危ない。(あぶない)
赤坂派と神楽坂派(かぐらざかは):全著連内の派閥。会合に使う場所で分けてある。
赤坂派:橘の上司である塩坪に言わせると、下品な人たちが所属しているそうです。
神楽坂派:上品。橘の上司である塩坪信弘が所属している。
著作権収入である『利益』という砂糖の山に集まった人間たちがいます。みんなでその『利益』をワケワケして生活していくのです。
公務員の天下りがあるようです。国家公務員の定年退職後のポストが関連法人に用意してある。
文化庁と全著連のなれあいです。関係者みんなで、利益を共有します。
いま47ページを読んでいます。
チェロではありませんが、葉加瀬太郎さんが演奏するバイオリンの音が脳内に流れてきます。情熱大陸のメロディーです。
文章や話の運びが平坦な感じがします。
でこぼことしたものが、いまのところありません。
映画の台本のような流れです。
シーンが目に浮かびます。
感覚を『地上1.5メートル』と高さで表現する。
舞台劇のようでもあります。
7月初旬、訴状が全著連に届く。
ミカサ側が著作権使用料規定に関する協議をしたい。
新聞は、全著連を悪役扱いしている。
ミカサは全著連と著作権使用料の取り扱いについて協議したい。
合意しない時は、ミカサは、文化庁長官に裁定を申請するが、新規程『音楽教室における演奏等』の前に裁定の申請があれば、裁定があるまで全著連は新規程を実施できない。音楽教室からお金をとれない。使用料徴収は過去にさかのぼれない。
12年前、橘樹はチェロ教室の帰り道に誘拐されそうになった。
路上でかかえあげられて、拉致(らち:連れ去り)されて車に押し込ませそうになったが、背中に背負ったチェロとそのケースがワンボックスカーのドアにひっかかって体が車両の中に入らないところにタクシーが通りかかって犯人は誘拐をあきらめた。誘拐未遂事件です。北朝鮮のしわざのようです。犯人は、こどものときにいなくなった父親だろうか。それとも金持ちのこどもだと思われたからの誘拐だろうか。(実は実家はお金がないそうです。門と塀だけが立派なだけの古くて大きな屋敷だそうです)
どういうわけか、祖父と母の怒りが『チェロ』に向かっています。チェロ教室に通っていたから誘拐されそうになった。祖父はチェロを庭で焼いて灰にしてしまいました。(読後、このへんの扱いが未回収になっていると感じました)なお、チェロの教室通いを勧めたのは祖父です。その理由はわかりません。
橘樹は13歳でチェロをやめていますから、12年前のことなら、今は25歳です。
トランジット:乗りかえ、移動
レンタルのチェロを借りて自宅に持って行ってカラオケボックスで練習する。
レッスンの時は、スタジオのチェロを借りる。
眠れない病気をチェロに治してもらうのか。
二子多摩川(ふたこたまがわ):テレビ番組『出没!アド街ック天国』で、ニコタマというふうに言われているのを見たことがあります。
シャンディガフ:ビールベースのカクテル。ビールをジンジャーエールで割る。
不遜(ふそん):おごりたかぶっている。
味に煩い:あじにうるさい
パテ:フランス料理。肉や魚をつぶしてペースト状、ムース状にする。
アラビアータ:イタリア料理。唐辛子をきかせたトマトソース
パブロ・カザルス:スペインのチェロ奏者、指揮者、作曲家。1973年(昭和48年)96歳没
マジャール語:ハンガリーで話されている言葉
音楽業界で演奏者としてやっていくのには人脈が必要
人事権をもっている人とケンカすると干される。(ほされる)
実力一本だけでは、勝負できない世界
そんなことが書いてあります。
ハンガリーには、音楽と温泉がある。
首都はブタペスト
12月23日に発表会がある。土曜日。場所は、ミカサ音楽教室二子玉川店5階ホール
モンテスラ:観葉植物。葉に穴があいている形。サトイモ科
戦慄のラブカ(わななきのラブカ):曲名。チェロ奏者小野瀬晃(物語の中だけの架空の人物です)の作品。映画音楽で使用された。ピアノから始まる。ピアノ伴奏が付いたチェロ演奏のための曲。わななき:体や手足が震える。声や楽器の音が震える。
使用された映画は、スパイ映画。「ラブカ」は深海魚の名前。醜い魚(みにくい)。スパイを指す(さす)。ラブカは、ヘビのような、サメのような、ウナギのような顔と体をもつ。(本のカバー絵を見ていたら、その魚の絵が描いてありました)165cmから200cm近くの長さ。水深120mから1280mの位置ぐらいで生息している。妊娠期間が三年半と長い。
物語ではスパイをラブカにたとえてあります。なんの光も届かない真っ暗なところにいる。
映画でのスパイ(諜報員ちょうほういん)は、天涯孤独の身の上だったが、潜入先の敵国であたたかいもてなしを受けて心が変わる。
劇伴(げきばん):BGM。バックグラウンドミュージック。背景伴奏
105ページ付近を読みながら思うことは、橘樹は、最終的に仕事を辞めることになるのかもしれない。
(つづく)
『チェロという楽器は、響きがすべてだ』(納得できます)
『座標が狂う』(音を座標にたとえてあります。座標:点の位置)
この本の作者は『うまい演奏(じょうずな演奏)』という錯覚を読者に対して創り出そうとしている。(つくりだそうとしている。暗示をかける行為)
チェロの先生である浅葉桜太郎は、生徒である橘樹のスパイ行為(音楽教室への潜入調査)を知っているように見える。
すべてのことは、橘樹の上司である塩坪信宏が仕組んだことという発想もできる。その目的はわからないが…… わたしの妄想(もうそう)かもしれない。(読み終えて:わたしの妄想でした)
音楽の音の世界は、抽象的な世界です。
ドッツァウワー:ドイツのチェリスト、作曲家
オートクチュール:オーダーメイドの最高級仕立服
(ここから、第二楽章です)
二年が経過しています。
青柳かすみは、大学四年生になっています。
マスタークラス:教室の先生が受講する。研修のようなものです。三夜連続チェロのクラスで浅葉桜太郎が受講しました。教えるのは第一線のチェロ演奏家です。
読んでいて思うのは、チェロってこんなに人気があるのだろうか。(地味な楽器の印象があります)
青柳かすみの幼稚園教員試験筆記試験が6月。筆記試験に通ればその後面接と実技がある。
教室のメンバーによるレストラン「ヴィヴァーチェ」でのチェロアンサンブルの演奏は10月(アンサンブル:合奏)。その後、年末近くに教室の発表会がある。
橘樹の潜入調査は、6月で終わる。6月でミカサを退会します。教室のみんなとの縁は切れます。裁判所での証人尋問は7月の予定
トリル:装飾音
『(音楽著作権)不正使用楽曲の一覧』がある。
最初から感じていたことですが、平面的な感じがする作品です。でこぼこした感じがありません。感情のでこぼこです。
コンクールのことが書いてあります。全日本音楽コンクールとあります。国内最高峰の音楽コンクールだそうです。音楽に限らず『なんとか賞』というものは、主催団体にとって、都合がいい人、都合がいい作品が選ばれるのだとわたしは思っています。質が最高にいいかどうかは疑わしいときもあります。
小野瀬晃チェロ演奏作品として『難破(なんぱ)』
読んでいて思うのですが、作曲家である小野瀬晃という人物が、どんな人物なのかの描写が不足しています。イメージがふくらみません。彼の人物像がはっきりしません。
カノン:きれいな曲です。映像でよく使われます。
お金のことはシビア(厳しい)です。著作権で食べている人間にとっては生活がかかっています。世間では、請求されなければ、なんでもタダだと思っている人間は多い。最初からお金を払うつもりがなく、物を買ったり、お金を借りたりする人もいます。善人はだまされます。
『営利目的の楽曲使用』のことが書いてあります。
縺れて:もつれて。読めませんでした。
スパイ行動(潜入調査活動)は信頼関係を裏切る行為です。悪人がやることです。橘樹には、罰(ばつ)が下るでしょう(くだるでしょう)。
『(チェロ講師である)浅葉の無自覚な裕福さは窺えた(うかがえた)』(クラシック音楽の演奏者は、親世代などが裕福で、生活費の心配がない人たちだろうという先入観が自分にはあります)
『(盗聴録音機能付きの)ボールペン』(ばれているような気がします)
浅葉桜太郎には、橘樹のスパイ行動を知っててだまっているような雰囲気があります。(ばれていませんでした)
橘樹が属する全著連の組織、とくに上層部の人間の雰囲気として、ページを読んでいると「自分は悪くない。お前が悪いんだ。(上司である、あるいはその上の幹部である自分は、悪くない。部下のおまえが悪いんだ)」というような論調につながっていく、橘樹にとっては悲劇につながるものを感じます。
組織の上層部の人たちは、著作権者ではないけれど、著作権使用料で食べていく人たちです。著作権使用料という砂糖の山に集まる人たちです。
総務に所属する三船綾香が、なにかにからんできそうです。
裁判になれば、橘樹は、裁判所で証言することになる。その場に、教室のメンバーはいるに決まっているのです。相手にも弁護士が付きます。反論の証人を出すでしょう。
橘樹がそのプレッシャーに耐えられたら、たいしたものです。将来幹部職員になれるかもしれません。そのかわり、人望は失うでしょう。
(つづく)
橘樹のスパイ行為(潜入調査)は、音楽教室のメンバーたちの数人には、ばれているのではないか。知っている人は、知らないふりをしているだけではなかろうか。(わたしの予想ははずれました)
チェロ講師の浅葉桜太郎は、橘樹のボールペンが、録音機能付きのものだと気づいているだろう。
もうひとり、東京都庁に勤務している東京都職員の蒲生芳実なら、都内特別区の目黒区役所職員だと名乗る橘樹の名前を職員名簿で調べたのではないか。
団体や会社では、内部で情報を共有するために、職員や社員の所属と役職名、氏名を載せた名簿をつくっているでしょう。名簿には、橘樹の名前はない。橘樹は、目黒区役所の職員ではない。蒲生芳実は、橘樹が、ウソをついていると思うでしょう。
組織命令に従っているとはいえ、橘樹は悩み始めます。彼のスパイ行為で、自分に親切にチェロの弾き方を教えてくれているチェロ講師浅葉桜太郎の人生の流れが変わるのです。
リスケ:リ・スケジュール。予定変更
洋画『タイタニック』のなかのひとつのシーン:音楽演奏家たちが、沈んでゆく大型船の甲板で楽器を弾き続けながら、明るい雰囲気で、海に沈んでいく。(映像を覚えています。人間はだれしもいつかは死ぬ。自殺しなくてもだれもが最後は死ぬ。どんな死に方を迎えるのか、自分で考えておく。この部分の文章を読みながら、そんなことを思いました)
三十歳になろうとする浅葉桜太郎がチェロのコンクールに挑戦します。(いまさら感があります)
この部分を読みながら世代の差を感じました。自分たちの世代は、三十歳のときは、もう小さなこどもをかかえていて、生活することに追われていました。
橘樹が動きます。
昔、読んだ本を思い出しました。『勇気ってなんだろう 江川紹子 岩波ジュニア文庫』ちゃんとやろうとした人とその家族が、ボロボロになっていった実話です。一般社会の大衆からみれば、標準的な生活の枠の外で生きることを実行した人たちです。「正義」を貫くのです。仕返しを受けるのは不正を告発した本人だけではありません。本人と同居する何も知らない家族も攻撃されます。孤立とか孤独という厳しい環境を体験されています。
橘樹もその本の内容と似たような行動をとります。
橘樹は、イヤならイヤときちんと上司に話をすべきです。無言の行動は身を滅ぼします。まわりも巻き込み不幸に堕ちます。(おちます)選択の仕方や、やり方が間違っています。
小野瀬晃のチェロコンサートが二日間の連続で開催される。
橘樹は、初日のチケットをゲットした。
青柳かすみは二日目のチケットを手に入れた。
なるほど、やっぱりという展開になります。(ここには書けません)
傾いでいく:かしいでいく。かたむいていく。
繋がる:つながる。
有耶無耶:うやむや。こういう漢字だとは知りませんでした。ふりがながふってあります。
大団円(だいだんえん):物事がうまく収まり、円満な結末を迎えること。
ピンズ:ピンバッジ。この物語の場合は『社章(しゃしょう)』。サラリーマンのたぐいは、会社のシンボルマークをスーツの左襟に付けます。身分証明とともに、本人にとっては、心理的な支えとしての誇りや自信であったりもします。
被る:かぶる。こうむる。229ページにある『女だって被ったことないし……』は、意味がわかりませんでした。
佳人:かじん。美しい女性
抉る:えぐる。心臓をもするどくえぐった。(243ページ)
シーリングファン:天井に取り付ける扇風機
ターコイズのピアス:トルコ石の耳飾り。青から緑の色
身を竦ませる:すくませる
カウンセリング:メンタルクリニックにて。保険適用はない。60分1万円。わたしはそういうものはきらいです。相手にみおろされて評価されることは屈辱です。
(ところどころ、読めない漢字や意味がわからない漢字が出てきて、読書の目が止まってしまいます。書き手さんには「ひらがな」でいいですとお伝えしたい。こちらの本の書き手さんには、話が盛り上がってくると、むずかしい漢字を使うことを好む傾向がみられます。読み手は苦しい)
悲しくなってくる話です。
橘樹は、ラブカになった。
『講師と生徒のあいだには、信頼があり、絆(きずな)があり、固定された関係がある……』(講師も生徒も音楽が好きだから演奏するのです。橘樹は違う目的で教室に参加していた)
『音楽教室には、信頼と絆(きずな)があるんだそうですよ』(権力を行使する組織にはないのかもしれません)
チェロを弾くときは、弦を押さえる左手よりも、弓を弾く右手のほうが重要だそうです。
音楽教室のメンバーは、みなさん人柄がいい。
制服職場(サラリーマンのスーツも制服のようなものです)の場合は、命令には服従です。見返りが給料や社会保障です。お金のためには、イヤなこともがまんしてやります。生活していくためです。家族のために働いています。
262ページ、まだ話は終わっていませんが、いい話でした。
スパイというものは、敵からも味方からも責められる立場にあります。
『仕事』じゃなくて『会社』が好きな人はいます。
会社が家庭で、上司や先輩・同僚・後輩が家族です。昭和の時代は、会社の名前を最初につけて、○○一家(いっか)と言って仲良しをアピールするベテランがいました。ボスがいて、子分がいる社会です。徒弟制度(とていせいど)の面もあります。師匠と弟子です。
あばれる人は、思索ができない人です。(しさく:深く、広く、考える)
良かった表現として『……この世のすべてはおまえのせいか……』
『花』には、気持ちとか、願いとか、祈りがこめられています。
橘樹は新卒から五年の就労を経て、春の時期を迎えています。
手に入る予定だった二億円以上を失い、その代わりになにかを得ました。
物語づくりの基本は、最後は最初のシーンに戻るのです。
ラストは、なにかのシーンで観たような(みたような)気がしますが、思い出せません。
いい話でした。
24ページまで読んだところで感想を書き始めます。
本屋大賞の候補作でした。(大賞は別の作品が受賞しました)
タイトルの意味がわからなかったのですが、ラブカと呼ばれる人物が、チェロを弾くのだと、24ページまで読んで理解しました。
音楽著作権の不正利用を素材にした話になっていると思うのですが、著作権者にお金を払わずに楽譜を使用している大手の音楽教室会社を裁判で訴えて、著作権使用料を支払ってもらうというような流れに見えます。
この物語では、その不正使用を証拠として立証するために、著作権協会の職員がスパイとして音楽教室に入り込みドラマがスタートするようです。
自分の親族に、音楽教室運営がらみの仕事をしている人間がいます。
この本の素材は、以前、わたしたちふたりの雑談の中で話題になったことがらです。
たしか、裁判は、最終的には、最高裁判所で判決が出て、生徒には著作権使用料を支払う義務はないけれど、教える先生には著作権使用料の支払いを著作権協会が求めることができるというような内容で話を聞いた記憶です。(「求めることができる」ですから任意規定です。請求してもいいし、しなくてもいい)
なお、音楽教室は、演奏行為をする人物(法人格としての人)ではないので、著作権使用料の支払い義務の対象ではないという判断だったと思います。(ゆえに、生徒から集める月謝の中から著作権使用料は払わなくていい)
自分はその道のしろうとなので自信はありませんが、そんな雑談でした。
今度会った時に、この本の話をしてみます。(追記:話をしてみました。東京で実際にスパイ事件があったそうです。その事件がこの物語の素材になっているのかもしれません)
さしあたっての登場人物紹介です。(読みながら、徐々に書き足していきます)
橘樹(たちばな・いつき):12年ぶりにチェロを弾くことになりそうです。この人がスパイのポジションを務める『ラブカ』になるのでしょう。全日本音楽著作権連盟(通称「全著連」一般社団法人という設定でしょう)の職員です。13歳でチェロをやめて、12年がたっているので今は25歳です。
この春に人事異動で「広報部」から「資料部」に異動してきた。資料部は、閑職(かんしょく。簡単な業務で、暇な職場)である。広報部の前は、仙台支社にいました。
5歳から13歳までの8年間、チェロを弾いた。平成26年7月15日就職試験の面接でそう本人が面接官に語った。そのときの面接記録メモが人事担当部署の資料に残っている。
長野県松本市の出身のようです。松本市には、オーケストラのまちというようなイメージが自分にはあります。
実家は地元の名士のようです。祖父の勧めで、大きな屋敷でチェロを弾いていた。祖父と母親と自分の三人暮らし。祖父と母親は険悪な関係にあったらしい。橘樹の父親は、樹が小さい頃に家を出て行った。樹には父の記憶はない。
スパイ行為をするために録音機能付きボールペンを持っている。ウソの職業が公務員(東京都目黒区役所職員を名乗っている。緑地・公園、街路樹管理の仕事をしているように振る舞う)
こどものころになにやら事件に巻き込まれて、チェロを弾くことを辞めたらしい。
親族間の争いが原因で心の病(やまい)があるらしくクリニックに通院している。
スパイ活動を始めてから、自分が弾くチェロの音がメンタルの病気にはいいそうです。落ち着く。橘はチェロの演奏がうまくなりたい。
全著連の本社は、最上階が「理事室」、地下1階が「資料室」です。なにやら理事がらみで、組織内の権力闘争があるような雰囲気が、文脈にただよっています。派閥(はばつ。利害で結びついたグループ。人事権をもった人間がボスの場合が多い)があります。
全著連の役割は、日本国内の音楽著作権の管理です。
塩坪信弘(しおつぼ・のぶひろ):橘樹の新しい上司です。橘に音楽教室にもぐりこんで、二年間スパイ活動を行うよう指示します。小柄な中年男。鷹揚(おうよう。ゆったり。小さなことにこだわらない)。仕事人間
三船綾香:全著連の職員。橘樹になれなれしい。美人。所属は総務
湊良平:全著連の職員。橘樹より二歳年上
ミカサ:音楽教室を全国展開している大企業。生徒総数35万人。音楽教室内での演奏は、『公衆に対する演奏ではない』から、著作権使用料を支払う義務はないと裁判で主張する。(公衆に対する演奏をするときは、著作権者の許可が必要であるというようなことが、著作権法の第22条に書いてあるそうです)
(ミカサのチェロの先生)浅葉桜太郎(あさば・おうたろう):27歳。ハンガリー国立リスト・フェレンツ音楽院卒業。最初はピアノをやっていた。4歳でピアノを始めて、11歳からチェロを始めた。兄と姉がいる。ハンガリーでのチェロの先生は、ハンス先生
(ミカサのチェロ教室の生徒)花岡千鶴子:初老の女性。レストラン『ヴィヴァーチェ』を経営している。最年長
(同じく生徒)青柳かすみ:女子大生。最初の登場時は大学2年生。二十歳ぐらい。人からは、かすみちゃんと呼ばれている。純朴そう。大学で幼児教育を学んでいる。幼稚園教員の資格試験を受ける。
(同じく生徒)蒲生芳実(がもう・よしみ):おっとり年配男性。ほっそり色白頬(ほほ)。花岡千鶴子の次に年長。東京都庁職員
(同じく生徒)梶山:42歳。化粧品会社勤務営業課長。体育会系の男性。ガードマンぽい。息子が10歳
(同じく生徒)片桐琢郎(かたぎり・たくろう):ひょうろ長い風貌(ふうぼう)。メガネが印象的。へらへら笑う青年。文系の大学院生
小野瀬晃(物語の中だけの架空の人物です):作曲家、チェロ奏者
海部(かいふ):作曲家
磯貝:全著連の職員
ピアスの医師:橘樹の主治医。精神科医師。自分の読み落としなのか、男性か女性かわかりませんでした。ピアスを付けているから女性なのでしょう。
小野瀬晃コンサート:チェロの演奏である『The Play』というタイトルの東京公演は、9月半ばの二日間。代表作『雨の日の迷路』
物語の構成は、第一楽章、第二楽章、エピローグです。オーケストラが奏でる(かなでる)クラッシック曲の演奏順みたいです。
第一楽章
音楽教室は、自分たちの都合がいいように勝手にタダで楽譜を使っていたという理屈と主張が上司の塩坪信弘にあります。そして、彼と橘樹は、裁判では、全著連が必ず勝つという確証をもっています。つまり、音楽教室は生徒から集めた受講料収入(月謝)のなかから、何パーセントかを全著連(著作権者)に支払うという判決が出る。(現実社会では、最終的には、そうはなりませんでしたが……)
カラオケスナックを対象とした著作権料を争う裁判の判決は、「管理・支配・利益性」がお店にあった。ゆえに、お店は「演奏の主体」と判断できるから、お店は著作権使用料を支払う義務があるという理屈です。(法律論は、なかなかむずかしい。音楽教室もカラオケスナックのお店と同様な気がします。作者はどんなメッセージをこの物語で読者に送ろうとしているか?)
公衆とは:①特定多数の者 ②不特定の者
ミカサ音楽教室二子玉川店(ふたこたまがわてん。6階建て、1・2階が楽器店舗、3・4階が音楽教室とスタジオ、5・6階がコンサートホール):橘樹が音楽教室の生徒になりすまして、スパイとして潜入する店舗です。
数年前にリニューアルした旗艦店(きかんてん。中核となるべき店舗)職務命令です。断れません。いや、違法行為なら断れるか。でも、違法行為ではないでしょう。
スパイ行為を断ればこの仕事を辞めてくれ。断らなければ出世・昇進・昇給を約束するとも言われそうです。まあ、物語ですから、橘は、この仕事を受けるでしょう。
橘は、12年ぶりにチェロを演奏することになりそうです。
橘は、人づきあいが得意ではないから、潜入先で深い関係になる人間はいないだろうという上層部の見込みです。(なかなかそうはならないと思います)
上司が『ポップスを弾いてみたい』と店側に言うように橘くんに指示しました。
おもしろそうです。
橘樹に、リスクとチャンスが与えられました。
実地調査委員会:全著連内にある秘密のチームのようです。
(つづく)
チェロ:バイオリンの三倍の厚みがある。高さは約130cm
橘樹には依存症があるのだろうか。
アルコール依存症とか、薬物依存症の気配があります。
今は、通院・服薬をしながら耐えている。
やっかいな病気があるようです。
眠れないそうです。
不眠症ですが、睡眠不足と限界まできたときの突然の寝落ちがあるそうです。危ない。(あぶない)
赤坂派と神楽坂派(かぐらざかは):全著連内の派閥。会合に使う場所で分けてある。
赤坂派:橘の上司である塩坪に言わせると、下品な人たちが所属しているそうです。
神楽坂派:上品。橘の上司である塩坪信弘が所属している。
著作権収入である『利益』という砂糖の山に集まった人間たちがいます。みんなでその『利益』をワケワケして生活していくのです。
公務員の天下りがあるようです。国家公務員の定年退職後のポストが関連法人に用意してある。
文化庁と全著連のなれあいです。関係者みんなで、利益を共有します。
いま47ページを読んでいます。
チェロではありませんが、葉加瀬太郎さんが演奏するバイオリンの音が脳内に流れてきます。情熱大陸のメロディーです。
文章や話の運びが平坦な感じがします。
でこぼことしたものが、いまのところありません。
映画の台本のような流れです。
シーンが目に浮かびます。
感覚を『地上1.5メートル』と高さで表現する。
舞台劇のようでもあります。
7月初旬、訴状が全著連に届く。
ミカサ側が著作権使用料規定に関する協議をしたい。
新聞は、全著連を悪役扱いしている。
ミカサは全著連と著作権使用料の取り扱いについて協議したい。
合意しない時は、ミカサは、文化庁長官に裁定を申請するが、新規程『音楽教室における演奏等』の前に裁定の申請があれば、裁定があるまで全著連は新規程を実施できない。音楽教室からお金をとれない。使用料徴収は過去にさかのぼれない。
12年前、橘樹はチェロ教室の帰り道に誘拐されそうになった。
路上でかかえあげられて、拉致(らち:連れ去り)されて車に押し込ませそうになったが、背中に背負ったチェロとそのケースがワンボックスカーのドアにひっかかって体が車両の中に入らないところにタクシーが通りかかって犯人は誘拐をあきらめた。誘拐未遂事件です。北朝鮮のしわざのようです。犯人は、こどものときにいなくなった父親だろうか。それとも金持ちのこどもだと思われたからの誘拐だろうか。(実は実家はお金がないそうです。門と塀だけが立派なだけの古くて大きな屋敷だそうです)
どういうわけか、祖父と母の怒りが『チェロ』に向かっています。チェロ教室に通っていたから誘拐されそうになった。祖父はチェロを庭で焼いて灰にしてしまいました。(読後、このへんの扱いが未回収になっていると感じました)なお、チェロの教室通いを勧めたのは祖父です。その理由はわかりません。
橘樹は13歳でチェロをやめていますから、12年前のことなら、今は25歳です。
トランジット:乗りかえ、移動
レンタルのチェロを借りて自宅に持って行ってカラオケボックスで練習する。
レッスンの時は、スタジオのチェロを借りる。
眠れない病気をチェロに治してもらうのか。
二子多摩川(ふたこたまがわ):テレビ番組『出没!アド街ック天国』で、ニコタマというふうに言われているのを見たことがあります。
シャンディガフ:ビールベースのカクテル。ビールをジンジャーエールで割る。
不遜(ふそん):おごりたかぶっている。
味に煩い:あじにうるさい
パテ:フランス料理。肉や魚をつぶしてペースト状、ムース状にする。
アラビアータ:イタリア料理。唐辛子をきかせたトマトソース
パブロ・カザルス:スペインのチェロ奏者、指揮者、作曲家。1973年(昭和48年)96歳没
マジャール語:ハンガリーで話されている言葉
音楽業界で演奏者としてやっていくのには人脈が必要
人事権をもっている人とケンカすると干される。(ほされる)
実力一本だけでは、勝負できない世界
そんなことが書いてあります。
ハンガリーには、音楽と温泉がある。
首都はブタペスト
12月23日に発表会がある。土曜日。場所は、ミカサ音楽教室二子玉川店5階ホール
モンテスラ:観葉植物。葉に穴があいている形。サトイモ科
戦慄のラブカ(わななきのラブカ):曲名。チェロ奏者小野瀬晃(物語の中だけの架空の人物です)の作品。映画音楽で使用された。ピアノから始まる。ピアノ伴奏が付いたチェロ演奏のための曲。わななき:体や手足が震える。声や楽器の音が震える。
使用された映画は、スパイ映画。「ラブカ」は深海魚の名前。醜い魚(みにくい)。スパイを指す(さす)。ラブカは、ヘビのような、サメのような、ウナギのような顔と体をもつ。(本のカバー絵を見ていたら、その魚の絵が描いてありました)165cmから200cm近くの長さ。水深120mから1280mの位置ぐらいで生息している。妊娠期間が三年半と長い。
物語ではスパイをラブカにたとえてあります。なんの光も届かない真っ暗なところにいる。
映画でのスパイ(諜報員ちょうほういん)は、天涯孤独の身の上だったが、潜入先の敵国であたたかいもてなしを受けて心が変わる。
劇伴(げきばん):BGM。バックグラウンドミュージック。背景伴奏
105ページ付近を読みながら思うことは、橘樹は、最終的に仕事を辞めることになるのかもしれない。
(つづく)
『チェロという楽器は、響きがすべてだ』(納得できます)
『座標が狂う』(音を座標にたとえてあります。座標:点の位置)
この本の作者は『うまい演奏(じょうずな演奏)』という錯覚を読者に対して創り出そうとしている。(つくりだそうとしている。暗示をかける行為)
チェロの先生である浅葉桜太郎は、生徒である橘樹のスパイ行為(音楽教室への潜入調査)を知っているように見える。
すべてのことは、橘樹の上司である塩坪信宏が仕組んだことという発想もできる。その目的はわからないが…… わたしの妄想(もうそう)かもしれない。(読み終えて:わたしの妄想でした)
音楽の音の世界は、抽象的な世界です。
ドッツァウワー:ドイツのチェリスト、作曲家
オートクチュール:オーダーメイドの最高級仕立服
(ここから、第二楽章です)
二年が経過しています。
青柳かすみは、大学四年生になっています。
マスタークラス:教室の先生が受講する。研修のようなものです。三夜連続チェロのクラスで浅葉桜太郎が受講しました。教えるのは第一線のチェロ演奏家です。
読んでいて思うのは、チェロってこんなに人気があるのだろうか。(地味な楽器の印象があります)
青柳かすみの幼稚園教員試験筆記試験が6月。筆記試験に通ればその後面接と実技がある。
教室のメンバーによるレストラン「ヴィヴァーチェ」でのチェロアンサンブルの演奏は10月(アンサンブル:合奏)。その後、年末近くに教室の発表会がある。
橘樹の潜入調査は、6月で終わる。6月でミカサを退会します。教室のみんなとの縁は切れます。裁判所での証人尋問は7月の予定
トリル:装飾音
『(音楽著作権)不正使用楽曲の一覧』がある。
最初から感じていたことですが、平面的な感じがする作品です。でこぼこした感じがありません。感情のでこぼこです。
コンクールのことが書いてあります。全日本音楽コンクールとあります。国内最高峰の音楽コンクールだそうです。音楽に限らず『なんとか賞』というものは、主催団体にとって、都合がいい人、都合がいい作品が選ばれるのだとわたしは思っています。質が最高にいいかどうかは疑わしいときもあります。
小野瀬晃チェロ演奏作品として『難破(なんぱ)』
読んでいて思うのですが、作曲家である小野瀬晃という人物が、どんな人物なのかの描写が不足しています。イメージがふくらみません。彼の人物像がはっきりしません。
カノン:きれいな曲です。映像でよく使われます。
お金のことはシビア(厳しい)です。著作権で食べている人間にとっては生活がかかっています。世間では、請求されなければ、なんでもタダだと思っている人間は多い。最初からお金を払うつもりがなく、物を買ったり、お金を借りたりする人もいます。善人はだまされます。
『営利目的の楽曲使用』のことが書いてあります。
縺れて:もつれて。読めませんでした。
スパイ行動(潜入調査活動)は信頼関係を裏切る行為です。悪人がやることです。橘樹には、罰(ばつ)が下るでしょう(くだるでしょう)。
『(チェロ講師である)浅葉の無自覚な裕福さは窺えた(うかがえた)』(クラシック音楽の演奏者は、親世代などが裕福で、生活費の心配がない人たちだろうという先入観が自分にはあります)
『(盗聴録音機能付きの)ボールペン』(ばれているような気がします)
浅葉桜太郎には、橘樹のスパイ行動を知っててだまっているような雰囲気があります。(ばれていませんでした)
橘樹が属する全著連の組織、とくに上層部の人間の雰囲気として、ページを読んでいると「自分は悪くない。お前が悪いんだ。(上司である、あるいはその上の幹部である自分は、悪くない。部下のおまえが悪いんだ)」というような論調につながっていく、橘樹にとっては悲劇につながるものを感じます。
組織の上層部の人たちは、著作権者ではないけれど、著作権使用料で食べていく人たちです。著作権使用料という砂糖の山に集まる人たちです。
総務に所属する三船綾香が、なにかにからんできそうです。
裁判になれば、橘樹は、裁判所で証言することになる。その場に、教室のメンバーはいるに決まっているのです。相手にも弁護士が付きます。反論の証人を出すでしょう。
橘樹がそのプレッシャーに耐えられたら、たいしたものです。将来幹部職員になれるかもしれません。そのかわり、人望は失うでしょう。
(つづく)
橘樹のスパイ行為(潜入調査)は、音楽教室のメンバーたちの数人には、ばれているのではないか。知っている人は、知らないふりをしているだけではなかろうか。(わたしの予想ははずれました)
チェロ講師の浅葉桜太郎は、橘樹のボールペンが、録音機能付きのものだと気づいているだろう。
もうひとり、東京都庁に勤務している東京都職員の蒲生芳実なら、都内特別区の目黒区役所職員だと名乗る橘樹の名前を職員名簿で調べたのではないか。
団体や会社では、内部で情報を共有するために、職員や社員の所属と役職名、氏名を載せた名簿をつくっているでしょう。名簿には、橘樹の名前はない。橘樹は、目黒区役所の職員ではない。蒲生芳実は、橘樹が、ウソをついていると思うでしょう。
組織命令に従っているとはいえ、橘樹は悩み始めます。彼のスパイ行為で、自分に親切にチェロの弾き方を教えてくれているチェロ講師浅葉桜太郎の人生の流れが変わるのです。
リスケ:リ・スケジュール。予定変更
洋画『タイタニック』のなかのひとつのシーン:音楽演奏家たちが、沈んでゆく大型船の甲板で楽器を弾き続けながら、明るい雰囲気で、海に沈んでいく。(映像を覚えています。人間はだれしもいつかは死ぬ。自殺しなくてもだれもが最後は死ぬ。どんな死に方を迎えるのか、自分で考えておく。この部分の文章を読みながら、そんなことを思いました)
三十歳になろうとする浅葉桜太郎がチェロのコンクールに挑戦します。(いまさら感があります)
この部分を読みながら世代の差を感じました。自分たちの世代は、三十歳のときは、もう小さなこどもをかかえていて、生活することに追われていました。
橘樹が動きます。
昔、読んだ本を思い出しました。『勇気ってなんだろう 江川紹子 岩波ジュニア文庫』ちゃんとやろうとした人とその家族が、ボロボロになっていった実話です。一般社会の大衆からみれば、標準的な生活の枠の外で生きることを実行した人たちです。「正義」を貫くのです。仕返しを受けるのは不正を告発した本人だけではありません。本人と同居する何も知らない家族も攻撃されます。孤立とか孤独という厳しい環境を体験されています。
橘樹もその本の内容と似たような行動をとります。
橘樹は、イヤならイヤときちんと上司に話をすべきです。無言の行動は身を滅ぼします。まわりも巻き込み不幸に堕ちます。(おちます)選択の仕方や、やり方が間違っています。
小野瀬晃のチェロコンサートが二日間の連続で開催される。
橘樹は、初日のチケットをゲットした。
青柳かすみは二日目のチケットを手に入れた。
なるほど、やっぱりという展開になります。(ここには書けません)
傾いでいく:かしいでいく。かたむいていく。
繋がる:つながる。
有耶無耶:うやむや。こういう漢字だとは知りませんでした。ふりがながふってあります。
大団円(だいだんえん):物事がうまく収まり、円満な結末を迎えること。
ピンズ:ピンバッジ。この物語の場合は『社章(しゃしょう)』。サラリーマンのたぐいは、会社のシンボルマークをスーツの左襟に付けます。身分証明とともに、本人にとっては、心理的な支えとしての誇りや自信であったりもします。
被る:かぶる。こうむる。229ページにある『女だって被ったことないし……』は、意味がわかりませんでした。
佳人:かじん。美しい女性
抉る:えぐる。心臓をもするどくえぐった。(243ページ)
シーリングファン:天井に取り付ける扇風機
ターコイズのピアス:トルコ石の耳飾り。青から緑の色
身を竦ませる:すくませる
カウンセリング:メンタルクリニックにて。保険適用はない。60分1万円。わたしはそういうものはきらいです。相手にみおろされて評価されることは屈辱です。
(ところどころ、読めない漢字や意味がわからない漢字が出てきて、読書の目が止まってしまいます。書き手さんには「ひらがな」でいいですとお伝えしたい。こちらの本の書き手さんには、話が盛り上がってくると、むずかしい漢字を使うことを好む傾向がみられます。読み手は苦しい)
悲しくなってくる話です。
橘樹は、ラブカになった。
『講師と生徒のあいだには、信頼があり、絆(きずな)があり、固定された関係がある……』(講師も生徒も音楽が好きだから演奏するのです。橘樹は違う目的で教室に参加していた)
『音楽教室には、信頼と絆(きずな)があるんだそうですよ』(権力を行使する組織にはないのかもしれません)
チェロを弾くときは、弦を押さえる左手よりも、弓を弾く右手のほうが重要だそうです。
音楽教室のメンバーは、みなさん人柄がいい。
制服職場(サラリーマンのスーツも制服のようなものです)の場合は、命令には服従です。見返りが給料や社会保障です。お金のためには、イヤなこともがまんしてやります。生活していくためです。家族のために働いています。
262ページ、まだ話は終わっていませんが、いい話でした。
スパイというものは、敵からも味方からも責められる立場にあります。
『仕事』じゃなくて『会社』が好きな人はいます。
会社が家庭で、上司や先輩・同僚・後輩が家族です。昭和の時代は、会社の名前を最初につけて、○○一家(いっか)と言って仲良しをアピールするベテランがいました。ボスがいて、子分がいる社会です。徒弟制度(とていせいど)の面もあります。師匠と弟子です。
あばれる人は、思索ができない人です。(しさく:深く、広く、考える)
良かった表現として『……この世のすべてはおまえのせいか……』
『花』には、気持ちとか、願いとか、祈りがこめられています。
橘樹は新卒から五年の就労を経て、春の時期を迎えています。
手に入る予定だった二億円以上を失い、その代わりになにかを得ました。
物語づくりの基本は、最後は最初のシーンに戻るのです。
ラストは、なにかのシーンで観たような(みたような)気がしますが、思い出せません。
いい話でした。