2023年01月04日

100年たったら 文・石井睦美 絵・あべ弘士

100年たったら 文・石井睦美 絵・あべ弘士 アリス館

 絵を描かれたあべ弘士さんの作品に『あらしのよるにシリーズ』があります。自分はその作品のファンです。オオカミとヤギが親友、カップルになるのです。そんなことはありえないと思うと拒否反応を起こすのですが、わたしはいい話だと受け取ってしまうほうの人間です。お互いが生き残るために『共存』は大事です。

 こちらの絵本は、非常に評判がいいので取り寄せました。
 ライオンがアフリカの草原にぽつんとひとりです。つまりは、ひとりぼっちで、孤独なのです。
 世界でたった一頭のライオンになってしまったようです。

 ヨナキウグイスという鳥がライオンと出会います。ふつうならライオンに食べられてしまいます。
 むしろ、食べなさいよと鳥はライオンに言います。
 ライオンは鳥を食べません。
 ライオンは一時(いちじ)の空腹を満たすことよりも、自分の話し相手としての鳥の存在を認めます。(孤独からの脱却が目的です)
 カップル成立です。ライオンは、さみしくなくなりました。

 でも、鳥の寿命がきます。
 ライオンは悲しみます。
 鳥は、だらしがないやつだなとライオンをなぐさめます。励ましたりもしてくれます。

 鳥の言葉として、鍵を握る言葉が、100年たったらまた会えるよというものです。

 鳥は息絶えます。

 (あまり書きすぎるといけないので……)

 100年がたち、また100年がたち……
 
 空想のような寓話(ぐうわ。動物にあてはめた、たとえ話)が続きます。複雑です。
 読んでいいて、日本古来の風習、慣例、ものの感じ方としての『八百万の神(やおよろずのかみ)』を思い出しました。自然界にある草木、生き物のすべてに神さまが宿っているのです。

 そして、何百年もたって、ふたりは出会うのです。人間として。

 感動的なラストです。出会いにラブ(愛)があります。
 (このあとふたりはどうなるのだろう)
 作品『100万回生きたねこ 佐野洋子 講談社』を思い出しました。同じ系統の絵本だと思います。ようやく愛する人にたどりついたのです。

 絵本を読み終えて、先日観た邦画『ぼけますから、よろしくお願いします。』を思い出しました。老いた夫婦のいい映画でした。  

Posted by 熊太郎 at 07:11Comments(0)TrackBack(0)読書感想文