2023年01月02日

人生計画の立て方 本多静六

人生計画の立て方 本多静六(ほんだ・せいろく) 実業之日本社

 本多静六:1866年(江戸時代。明治維新が1868年)-1952年(昭和27年)。85歳没。林学者。造園家。株式投資家。「公園の父」。投資で得た巨万の富を匿名で教育機関、公共機関に寄附した。

 自分がまだ二十代のころ、職場の先輩から、10年先の自分はどうあるべきかを考えて、プランをつくって目標に向かっていくというようなことを教えられました。
 先輩はその後病気になって、職場に顔を見せなくなりました。
 計画を立てても思うようにはならないのです。
 自分もその後、体を壊したりもしました。まずは健康第一です。スタイルがかっこよく、イケメンや美女で、背が高くてスタイルがいいということよりも、健康な体であることのほうが大事なのです。

 そんなことを思い出してのこの本の読書の始まりです。

(1回目の本読み)
 ざーっと最後までゆっくりページをめくってみました。
 1952年(昭和27年)に発行された本を2005年(平成17年)に出版しています。本は昭和26年に書かれています。(昭和20年(1945年終戦の年)にできあがっていた原稿に手を加えて、著者が亡くなる昭和27年の前年に書籍化されています)
 ページをめくっていて目に留まった部分です。
 『文芸家を志す人々には、とくに直覚力、識別力、記憶力等にすぐれ、綿密なる観察力……』と続き、好きだからではできない。簡単なものではないと書いてあります。できないのに、取り組んで、一生をむだにしないようにと忠告があります。
 
 先日ニュースで、宮崎駿監督(みやざきはやおかんとく)の映画が来夏に公開されると聞きました。タイトル『君たちはどう生きるか』は、吉野源三郎氏の本にあり、自分は読んだことがあります。1938年(昭和13年)の本です。公開される映画は、タイトルだけ同じで、内容は異なるようです。雰囲気として、今から読むこの本と似ているなと感じました。

『計画結婚・計画産児』
 計画結婚はしませんでしたが、計画産児はしました。計画出産です。共働きの子育てだったので、4月にこどもが保育園に入れるように、1月か2月で出産になるようにしました。だから、うちの子たちは2月生まればかりです。

『本多式貯金法のすすめ』
 たいへんな資産家の方です。学びたい。

『結婚はどうしたらいいのか 恋愛の導き方』
 最初はひとめぼれで、見た目で入る人が多いのでしょう。
 見た目と中身は違うので、だんだん中身で考えるようになるのでしょう。
 縁(えん)がないとなかなかくっつけません。
 最近は、婚活アプリでマッチする相手を探す人が増えているようです。
 昔は、学校の同窓生とか、職場結婚が多かった。見合い結婚も多かった。恋愛感情よりも経済的に生活していけるかいけないかが優先だったような気がします。昭和20年代後半に出たこの本にはなんと書いてあるのだろう。男尊女卑の時代です。(だんそんじょひ。女性は家政婦、道具のような扱い)女性が選挙で投票できるようになったころです。(昭和21年女性参政権実施)

『若い未亡人について』
 夫が第二次世界大戦で亡くなった女性のことだろうか。何が書いてあるのだろう。2回目の本読みの楽しみです。

 この本全体は、だれに向けて書いてあるのだろうか。
 読者の対象者はまだわかりません。(読後:青少年に向けて書いてありました。ただし、男子に向けて書いてあります。女子に向けてではありません。そういう男尊女卑の時代の人です)
 何十年もたって、ご自身の死後読まれているとは想定されていなかったのではないか。

『遺言状を常備せよ』
 そうか。実はわたしも今年、公正証書遺言の手続きをするつもりでいます。うむ。自分の考えは、間違っていないなとこの部分を見て安心しました。

(2回目の本読み)
 最初に白黒写真を背景にした人生訓のような短文が掲載されています。
 説得力があります。読みながら同意する内容です。
 『世の中には、濡れ手で粟を摑む(つかむ)ような旨い(うまい)ことがそうザラにあるわけのものではない……』
 『蓄財を通して、われわれは色々の蓄財法を学ぶ。力の蓄財、知識体験の蓄財……』
 『……学校で学び得るぐらいは知れたもの 職業の精進によって初めて本当の人格は磨かれ……』

 ご本人の経歴です。慶応2年生まれ。(1866年)11歳で父を失う。19の春、東京山林学校入学後、試験に落第し古井戸への投身自殺を図るも死にきれず。(死ななくて良かった。生きていたからこそ大金持ちになれました)
 その後努力して成績優秀者となる。
 決めた人生計画として、40歳までは『勤倹貯蓄』、60歳までは『専心究学』、70歳までは『お礼奉公』、70歳からは『晴耕雨読の楽居』とあります。晴耕雨読:いなかで心おだやかに暮らす。悠々自適(ゆうゆうじてき)。晴れた日は畑を耕し(たがやし)、雨の日は家で本を読む。

 (読んでいて、いろいろと、なかなか力強い)

 『希望をもつ』(どこまでも明るい希望をもつとあります。楽観的になる。めげない。くさらない)心を快活に保つ。人は気持ちの持ち方ひとつで陽気にも陰気にもなるとあります。
 
 人生計画といっても、本を読んでいる年金生活者の自分の場合は、もう最後のほうまできてしまいました。
 本の目次でいえば『楽老期をどう過ごすか』です。なんだか、楽しくなれそうな項目です。

 計画について:仕事なら、ずいぶん先のことまでプランが組まれています。ゆきあたりばったりではありません。プランを立てて行うことの根拠が仕事にはあります。

 『向上心が必要』
 『満40歳までの十五年間は、馬鹿と笑われようが、ケチと罵られ(ののしられ)ようが(がんばると続きます)』

 まずは生きていなければなりません。健康第一です。
 
 江戸時代から明治時代へと、社会が大きく変化する時期に人生を送られた方です。
 第二次世界大戦も体験されておられます。
 日本人は、たいしたものだと感心します。

 目標を立てる。
 『続ける』ことが大事です。
 そして、筆者は前向きです。

 個々の事情として『…… 生まれつきの貧富、境遇並びに時流の変化に伴って……』こども時代が貧しかったからといって、一生貧しいと決まったわけではないのです。

 アブハチ取らず:ふたつのものを同時にとろうとして、どちらもとれない。よくばらないといういましめ。

 筆者は好奇心が強い人です。関心をもつことが多く、調べることが好きです。「めんどうくさい」とは言わない人です。

 お金の話があります。
 収入の4分の1と臨時収入は貯える(たくわえる)。
 師弟関係を大事にする。師匠への恩は忘れない。
 お金は貸さない。お金はくれてやるもの。
 
 学校では、職業的な、なんらの素地は養われない。
 義務教育だけで、働くのもよし。15歳から20歳に覚えた職業は確かなものとなる。

(つづく)

 『できるだけ自分自身で考え、判断し、取捨し、適用もしくは適応して生かし……』(同感です。働いていた時、質問ばかりされて、イヤになることがありました。自分の頭で考えて、判断して、決断して、実行して、反省してほしい。うまくいかなかったからと言って、あのときあなたがこう言ったからこんなことになったと、質問に答えた相手のせいにしないでほしい。責任転嫁(せきにんてんか。人のせいにする)のずるい手法をとる人がいます。試行錯誤も自活・自立もせず、他者に依存する生き方をする人がいます。

 著者はまじめな人です。
 楽しみながら目標を達成していく。食べすぎ、飲み過ぎ、ぜいたくしすぎに注意するとあります。
 近道、裏道を選んではいけない。(正直であること)
 
 項目『職業はどう選ぶか』のところに、『政治家は職業ではない』とあります。
 『政治家』は、『奉仕(ほうし。利害を離れて、国や社会のために尽くす)』であるとして、政治家は、政治家という職業で生計を立ててはいけない。ほかに本職をもちなさいとあります。
 他の職業で成功した人が政治家をやりなさい。経済的に後ろ盾がある人が政治家をやりなさい。そのように書いてあります。(利権(りけん。利益をともなう権利)をつかんでお金もうけをしたがる政治家にこの本を読んでもらいたい)
 公職は、無報酬でやりなさいが著者の考えのようです。

 古い言葉がいくつかあります。
 日華事変(にっかじへん):日中戦争。1937年(昭和12年)~1945年(昭和20年)。大日本帝国VS中華民国。
 耄碌(もうろく):歳をとって、頭の働きや心身の状態が悪くなること。
 隠居(いんきょ):老夫婦は、他の家族とは別居すること。
 老耄(ろうもう):歳をとってぼけること。
 規矩準縄(きくじゅんじょう):規則、法則、手本。
 叫喚怒号(きょうかんどごう):大声をあげて怒鳴る(どなる)

 現代の感覚では違和感がある表現もあります。
 『時至れば良妻を迎えて家庭生活に入ること』(良妻という言葉でもめそうです。良妻とは、男にとって都合のいい女性をさすとわたしは思います。反対語が「悪妻(あくさい)」なのでしょう)
 
 不幸や災厄、失敗した時のために、保険に加入したり、貯蓄したりしておきなさいという教えがあります。こちらの助言には従いたい。

 仕事に関しては、なかなか、なりたいものにはなれないし、つきたい仕事にはつけないというようなことから始まって、たいがいのことは、努力をし続けていれば、ある程度の熟練ができるので、うまくいくようになると思うというようなことが書いてあります。(お金を得るためと割り切ればいいのです)
 
 以前渋沢栄一氏の『現代語訳 論語と算盤 渋沢栄一 守屋淳・訳 ちくま新書』を読んだことがあります。その本と似通ったような(にかよったような)この本の文章構成です。講演会の原稿、あるいは、台本、脚本のようでもあります。
 このあとNHK大河ドラマの主人公だった渋沢栄一氏のお話が出てきました。著者と同じ時代を生きた人です。(渋沢栄一:1840年(天保11年)-1931年(昭和6年)91歳没 1868年が明治元年)
 
 25歳で20歳の妻を娶る(めとる。妻を迎える)→こどもを3人から6人つくる→こどもたちを大学まで出す(子育てと嫁入り費用がかかるので用意する)→なんだかんだとあり『辛抱(しんぼう)はお金を貯める基本』というようなお話があります。
 (そういえば、先日の夕方、スーパーを出たところで、不動産屋の営業をしているという若い女性に声をかけられて、アンケートのような質問に答えました。「どうして家を買ったのですか?」と質問されて絶句して、言葉がすぐに見つかりませんでした。どうしてと言われても困るのです。学んで、就職して、結婚して、こどもをつくって育てて、いつかはマイホームという夢をもって、そのようにすることが一般的な人生の過ごし方だと思い込んでやってきたから、理由と言われても答えようがないというように返事をしたらびっくりされました。ほかに理由があるのだろうか。たとえば、資産として保有するためとかが考えられますが、自分が住む家ですから、売ったらホームレスになってしまいます。自分が住む家は、資産のようで資産ではない感覚です)

 お金が貯まらないパターンが書いてあります。
 アルコールとタバコはだめです。お金も健康もそこなうとあります。
 
 利子でお金を増やすとあります。
 
 著者が就職した時は1ドル=2円だった。今は、1ドル=360円とあります。覚えています。わたしが中学生のころは、1ドル=360円の固定相場制でした。1973年(昭和48年)から変動相場制です。自分が新婚旅行でグァム島へ行ったときには、1ドル=178円ぐらいだった記憶です。旅行社の人と、ずいぶん円高になりましたねぇと話した記憶が残っています。

 『結婚はどうしたらよいか』という項目があります。
 おもしろいのは、時代感覚の違いで、男女は7歳を過ぎたら、学校では、別々の教室にして、遊戯場も便所も休息場所も男女別にしたほうがいいと書いてあります。
 自由恋愛は失敗に終わるとまで断定されています。
 配偶者選択の基準もすごい。『血統が純潔であること』『(女子が)必ず高等教育を受けた者であること』『容貌の美しいものであること』『財産のあること』『性質順良温和であること(従順な女性)』炎上しそうです。こわい。

 結婚観がおもしろい。『結婚の幸福感はそれほどながくつづくもではない……』(現実的で合っています)

 媒酌人(ばいしゃくにん。仲人(なこうど))の話が出ます。確かに、自分たちの時代には、結婚式の時に両側に仲人さんが座っていました。結婚式では、必要なポジションの人でした。今どきは聞かなくなりました。それだけ、昔は手配や段取りがたいへんでした。今の時代の人たちは楽ができていい環境にあります。

 結婚前の注意事項も不思議です。
 ほかの男女関係をきっぱり断ち切ってあるか確認すること。
 花柳病(はなやぎびょう。性病)にかかっていないか確認してかかっていたら治療しておくこと。
 (昔は、そういう人が多かったらしい。そんなことが書いてあります)
 
 なかなかおもしろい。人間は、いかようにも生きていけるという発想が自分に生まれました。

 『人生の不幸として起こりうる再婚の問題……』(そうか。再婚は不幸なのか。自分には、理解できません)
 男子の再婚は勧める。老女ではなく、若い方がいい。(そのあと、連れ子とか、異母弟妹(いぼていまい)、相続のこと、今の時代だったら怒られそうなことがたくさん書いてあります。

 人生の成功者の助言です。助言に従うか否かは、自分の意思で判断して決めます。
 この本は、自分のために人間を管理する本、人生をコントロールする本です。
 ご本人の人生を肯定する本です。わたしのようにやりなさい。(そうするかどうかは読者自身で考えます)
 
 『尉と姥(じょうとうば)』人間最後の幸せな生活を示す。年寄り夫婦が掃除をするようす。

 貧乏、失敗、苦悩、悲哀は、貴重な体験で、乗り越えることで、いい人生を送ることができるというような表現があります。

 昔の相続の方法が独特です。今だったらもめそうです。財産は後継ぎ(長男)が全部もっていくのです。その当時はあたりまえだったのでしょう。(この本は、昭和20年当時の原稿です(1945年))

(読み終えました)
 参考になるかどうかわかりませんが、自分は自分なりに10年ごとにテーマを決めてこれまでやってきて老齢を迎えました。

三十代のテーマが『迷い』
 いろいろやってみる。試行錯誤を繰り返して、体験を積んで、その後の人生に生かす。(かなり悩みます)

四十代のテーマが『頑固(がんこ)』
 三十代で体験したことを下地にして、最善の方法で物事に取り組む。ひとつの手法を決めて貫く。(敵が半分、味方が半分、それでよしという気持ちでやりましたが、10年経ったら、まわりは敵だらけでした)

五十代のテーマが『謝罪』
 四十代を頑固に過ごした結果、たくさんの人たちに迷惑をかけたと気づきまた。
 素直に反省して、人に優しくなることにしました。

六十代のテーマが『転換』
 これはこうでないといけないという考えをやめる。良かれと思ってやって嫌がられることが多かったので、基本的には何も働きかけない。頼まれたら手助けする。
 相手の勧めに従う。鍵を握る言葉は『おまかせします』
 (ただ、なかなかむずかしいです)

予定ですが、七十代のテーマが『行動あるいは活動』
 人生最後の力ふりしぼりで、燃え尽きる前を過ごしたい。

生きていられたら、八十代のテーマが『無限』です。
 子孫と後世につなげたいことを遺したい。(のこしたい)

 2023年の方針を決めました。『がんばりすぎない』です。さてどうなりますか。

(追加記載 2024年2月8日木曜日)
 70代が近づいてからの自分のテーマを決めました。
 『あきらめる、そして、忘れる』です。
 あきらめればいいのです。あきらめても、物事はなるようになります。なるようになった状態で、ものごとは進んでいきます。いき止まりになるということはありません。それが、自分にとって悪い状態になったとしてもしかたがありません。
 そして、忘れるのです。過去を変えることはできません。前(自分にきっと明るいと言い聞かせる未来)を見るほうが、気持ちが楽になれます。  

Posted by 熊太郎 at 07:33Comments(0)TrackBack(0)読書感想文