2020年06月24日

トイストーリー 洋画アニメDVD

トイストーリー 洋画アニメDVD 1995年公開

 初めて観ました。キャラクターは、Windows95が出たころの大きなデスクトップパソコンにこのアニメの画像が入っていたことを覚えていますが、当時は、自分自身がおとなだったこともあり、興味をもてませんでした。

 ウッディ・プライド:カウボーイ
 バズ・ライトイヤー:宇宙飛行士
 このふたりのケンカがおもしろい。どちらかといえば、バズのキャラクターがおもしろい。考えがいちずでシンプルなところがいい。ウッディは、期待したのとは違う性格設定で、けっこうずるい。

 おもちゃの人形たちがにぎやかに遊んでいます。童謡の「おもちゃのチャチャチャ」が思い浮かびました。

 映像は動きが俊敏で豊かです。最初のうちに登場する小さな緑の兵隊さんたちの動きがいい。特撮はたいへんだったでしょうが、十分いい表現ができています。
 バズがおもしろい。宇宙映画に見えます。そして、ミュージカルです。
 その他大勢のおもちゃたちはみな仲良しです。互いに協力することを惜しみません。

 自分としては、緑色をしたカエルのようなカタツムリのような「エイリアン」が好みです。
 
 いたずらっ子であるシドの行為は怖い。おもちゃの一部分を取り外して、別のおもちゃに接合して楽しみます。残酷です。

 観ているこどもたちに、「おもちゃを大切に扱いましょう」というメッセージがあります。

 知恵を出して、スピード感にのって、がんばるふたりです。洋画、「バックトゥザフューチャー」みたいな雰囲気もあります。中身が良かった。  

2020年06月23日

キングダム 邦画DVD

キングダム 邦画DVD 2019年公開

 キングダム:王国

 中国、始皇帝が誕生していく物語でした。
 紀元前255年、中華・西方の国から始まります。七つの国があります。「秦、趙、燕、斉、魏、韓、楚」です。

 奴隷の少年「信(しん)」が、のちに始皇帝になるえいせいをサポートしていきます。えいせいは、一人二役です。

 わたしの好みにはちょっと合わなかった。
 スーパーマン物語です。
 ごたく(行為の前の説明、自慢、感情表現)が多い。ああだこうだと前置きが長い。感情をセリフ以外の手法で表現してほしい。
 現代言葉づかいについていけなかった。「ダサい」「びびって」「はぁ?」
 説明ゼリフが多くて、弱そう。遊びの「なになにごっこ」の感じがした。なんどか思ったのですが、「仮面ライダー」の世界が顔を出していました。

 山民族のトップ役である長澤まさみさんはかっこよかった。
 山の人「かりょうてん」役の橋本環奈さんは、感じがよく、可愛らしかった。
 王騎役の大沢たかおさんは、威厳があった。
 ランカイ役の阿見201さんは豪快で良かった。  

2020年06月22日

ライオンキング 洋画アニメDVD 

ライオンキング 洋画アニメDVD 1994年

 有名なお話ですが初めて観ました。
 最初は、手塚治虫作「ジャングル大帝」を受け継いだ作品だろうと想像していましたが、製作側はそういう意識はないらしく、ストーリーが類似なのかどうなのかは不明瞭でわかりません。ただ、よく似ています。
 テレビでジャングル大帝レオを見たのは50年以上前のもう遠い昔なので、記憶が定かではありませんが、レオのほうは人間が登場していました。ライオンキングには人間は出てきませんでした。
 
 というところで、もうおとなになってしまった自分が、今の常識で、観ながらあれこれ注文をつけたくなったのです。
 アフリカのライオンが生活する場所は草原であり、映像に出てくるような岩場はないと思うのです。ましてや、切り立った険しい崖があるわけもなく、その崖から遥か遠い下方へライオンが突き落とされることがあるとは思えません。
 ライオンは夜行性でありますから、映像のなかで、(朝)いつまで寝ているの起きなさいというようなシーンは不可解なのです。ライオンは昼間寝て、夜活動する動物なのです。
 
 王さまである父親がいて、その後継ぎである息子のシンバがいて、王の弟(シンバからだと叔父さん)が、自分が王になりたくて、自分が王を消す犯行の発想者であることを隠して、自分の兄であるシンバの父親を陥れる。まるで、日本史の室町時代後半から戦国時代の親族関係の争いを見ているようでした。  

2020年06月21日

太川&蛭子路線バス乗継の旅 山口県山口駅から高知県室戸岬 

太川陽介&蛭子能収路線バス乗継の旅 第17弾 山口県山口駅から高知県室戸岬 2014年 テレビ番組

 再放送ですが観たことがありません。自分が行ったことがあるところとか、自家用車を運転していて、通ったところが出るといいなあと思いながら観ていたらそのようになったので楽しめました。山口県の岩国錦帯橋、広島県の宮島厳島神社、竹原市の古い街並み、尾道市などに行ったことがあります。

 ゲストは、宮地真緒さんでした。過酷な徒歩旅によく耐えられました。もうこりごりだと思われたのではないでしょうか。一日目の乗り換えは順調でしたが、しまなみ海道の橋を徒歩で歩いたようなもので、二日目は、20キロ以上歩かれました。

 「村上水軍」ゆかりの土地の映像を観ながら、以前読んだことがある「村上海賊の娘」を思い出しました。海賊の家に生まれた大柄な娘が大暴れする物語で、織田信長の時代でした。読んでいて気持ちがたいへん盛り上がる優れた娯楽小説でした。いつかは映画になるといいのにと思い続けています。

 おもしろかったシーンなどとして、
 えびすさんが、トイレから出たあと、服で手をふくので、あとのふたりがからかうと、「(着ている服は)全部ハンカチ(みたいなもの)」
 バス営業所案内所の職員さんが、高速道路は走ってはいけないということをすでに知っていて、なにも説明しなくても、「ルール、わかる、わかる」話が早く通じるのがいい感じでした。
 ビジネスホテルでの宿泊が大好きなえびすさんが、民宿しかない地域で、「民宿はいいよ(良いよ)」本当はしかたなくそう言っていることがわかりました。
 えびすさんがバスの中で宮地真緒さんと『あっちむいてほいゲーム』をやるのですが、じゃんけんをして勝った人が示した方向に相手の顔が向いたらそれが正しくてよろしいというゲームだと勘違いしていたシーン。加えて、ジャンケンで勝ったときに、方向を指でさすのではなく、グーで指すと思っていたらしいシーン  

2020年06月20日

11番目の取引 2020課題図書

11番目の取引 アリッサ・リングスワース作 もりうちすみこ訳 すずき出版 2020課題図書

 11番目の取引だから、その前に10回取引があったのだろうと思って読み始めました。楽器を巡るお話で、アフガニスタンとかタリバンとかが関係あるようです。タリバン=パキスタンとアフガニスタンで活動するイスラム主義の反政府組織。武装化して国の一部を支配して、「アフガニスタン・イスラム首長国」を設立している。イスラム神学校で軍事的訓練を受けた生徒で構成されている。麻薬の販売が収入源の一部。住民や外国人への暴力行為あり。1994年創立。極端な宗教解釈ですべての娯楽や文化を否定する。すべての音楽を認めない。女性が教育を受ける権利を認めない。

 「ぼく」のひとり語り一人称で物語は進行します。ぼく=サミ・サフィ。祖父の名前が、ハビブラー・サフィ。読み始めて18ページまで読んで、10歳のときに住んでいたアフガニスタンで、両親のうちのどちらかのいとこの結婚式の日にタリバンに襲われて、両親ほかの肉親を殺害されてじじ(祖父)と世界各地を逃避行して、12歳になった今は、支援団体のサポートを受けながらアメリカ合衆国ボストンで祖父とふたり暮らしをしていることがわかります。5月にボストンの学校に転入しています。6月ぐらいから夏休みに入ります。アメリカ合衆国の学年の始まりは9月に始まり、翌年の8月に終わります。学年は、Grade1からGrede12までです。この本の主人公は12歳になったところなので、Grede6、日本でいうところの小学6年生に思えます。でも、もう学校年度末なので、中学1年生みたいなものでしょう。(25ページに、自分は7年生という記事がありました。ジュニアハイスクールの1年生です)

 じじ:サミの祖父。アフガニスタンに住んでいたパシュトゥー人。ルバーブという楽器を地下鉄駅で弾くストリートミュージシャンで現金収入を得ていたが、孫のサミが大切な楽器であるルバーブを駅で知らない若い男にひったくられて奪われてしまう。じじもサミも気持ちが落ち込む。じじは、ルバーブを弾いてお金をもらうことができなくなりレストランで皿洗いの仕事を始める。

 逃避行のルートとして、「ふるさとアフガニスタンカンダハールの自宅から国境に近い国の南西部にあるニームルーズ州へ(密輸業者に有り金前部を巻き上げられて国外脱出をした)」→「アフガニスタンの隣国のイランの親せきの家に(路地裏の薄暗い部屋)1か月居た」→「トルコイスタンブールのスラム街(貧民街)2、3日は公園で寝泊まりのあと、安ホテルで20人のすし詰めの部屋」→「(いまから3年前に地中海をプラスチックボートに乗って、トルコからギリシャへと渡った)ギリシャアテネの狭苦しいホテルの一室から難民キャンプへ。ギリシャで、難民支援ボランティア団体で働いていたパイーシア軍曹と再会した。難民を助けてくれる支援団体のメンバーである軍隊を退役したパイーシア軍曹の世話になった」→「アメリカ合衆国ボストンの小さなアパート」

 たくさんの登場人物と多くのわからない言葉が出てきます。

 マイク:オペラ歌手のような大道芸人。地下鉄駅で、サミとじじのそばで歌って収入を得ている。
 ノーラン先生:主人公のサミが通う学校の先生。国語の先生
 ジム:ノーラン先生のブレスレットを盗んだ生徒。肌がサミより少し黒くて、髪がサミより三センチほど長い角刈りの生徒。小柄な体格をしている。
 ダン(ダニエル・リーヴズ):サミが図書館で出会ったサッカー好きの生徒。父親はアメリカ陸軍所属の兵士で、アフガニスタンで働いた経験あり。母子家庭。サミには、夫とは、死別か離別かはまだわからない(164ページ付近)(その後判明したこと:ダンの父親はアフガニスタンに派遣されて過酷な経験をして人が変わってしまい、家族関係をうまくやれなくなって家を去った)
 メグ・リーヴズ:ダンの母親
 マリガン先生:ジュニアハイスクール1年生であるサミの学級担任
 ジャスティン:サッカークラブのメンバー
 マイク:サッカークラブのメンバー
 ピーター:サッカークラブのメンバー。背が高い。オフェンス担当。サミをだまして、サミのもっていたキーホルダーと自分の壊れていたiPadを交換した。(物語の最初のほうに出てきた ピート:悪事を働く生徒。ジムが盗んだノーラン先生のブレスレットをそうとは知らずに売りさばこうとしたと同一人物)
 カトリーナ・クーパー:ピーターの母親
 ジューニパー:サッカークラブの受付カウンターにいる女性
 レイラ:サミがサッカークラブで出会った女子。オフェンス担当
 ミシェル:レイラの母親。こどもは三人。マイカ(男)とアレックスとレイラと末っ子がジャレド(あかちゃん)
 タイ:レイラの父親で、ミシェルの夫
 ジョンソン:レイラの母ミシェルの知人
 パトリック・バーン:レイラの母親ミシェルが働いているアンティークショップ(古いものを売るお店)の経営者。アイルランドからの移民
 オミド:サッカーチームのメンバー
 ジュリー:女子。サッカークラブのメンバー。背が高い。針金のようなチリチリの黒髪
 ハミダ:女子。サッカークラブのメンバー。長く伸ばした前髪をしょっちゅう手でかきあげる。兄がいる。
 オマル:サッカーチームのメンバー。ハミダの兄
 トルネード・シャークス:レイラ、サミ、ダンのチーム名。もうひとつのチームが、グリズリー・ベア・バンパイア
 レイラのビーズ:アクセサリーとして身につけてサッカーをしているようですが、具体的になんなのかはわかりませんでした。
 ベンジ:サッカークラブの男子
 オースティン:サッカーのコーチ。両親は、ソマリアからの移民(ソマリア:アフリカの東端。無政府状態が続いていた)
 イマーム:アラビア語で、「共同体の指導者」
 ファリド・ワジル:サミがイスラム教会で出会った男性。ストリートミュージシャンをしていたじじのルバーブの演奏に対して20ドルをくれた。サッカーチームの女子ハミダの叔父さん。
 パイーシァ軍曹:退役軍人。ギリシャで難民支援活動を行っているボランティア団体のメンバー
 マイヤー:学校長
 スーザン:サミが通う学校長の秘書
 ジュリー:サミがサッカーの試合をしたときの相手チームの女子キーパー。だぶだぶのTシャツ。黒いチリチリのちぢれっけをひっつめてポニーテールにしていた。サミがダンからもらったダンの父親の「戦闘ブーツ」をほしがる。戦闘ブーツの交換品として、画材を提供してくれる。
 リンカーン・トルドー:サッカーのコーチオースティンの友人。ノースイースタン大学で博士号をとる研究をしている大学院生。研究テーマは、難民危機として、「移民についの考察」
 シェリル・マイゼル:女性。ノースイースタン大学で学生助手をしている。
 ホマユン・サキ:アフガニスタンのルバーブ演奏者。男性
 アニマ、イサ、ラシッド、ナヴィド:自爆テロが発生した結婚式にいたサミのいとこたち
 マリハ:じじの盗まれたルバーブをギター店で購入したアフガニスタン人女性。難民。夫と夫の家族から家庭内暴力を受けていた。(硫酸、塩酸を顔にかける虐待)
 ジニー:マリハのアメリカ合衆国での保証人。

 ルバーブ:アフガニスタンの民族楽器。ギターや三味線のような形態。三本の太い弦のほかに何本もの細い弦あり。桑の木でできた胴のふくらみあり。ヤギの皮。なお、別の意味で、「ルバーブ」という野菜がある。
 パシュトゥー語:アフガニスタンやパキスタンに住むパシュトゥー人の話す言語
 マンチェスター・ユナイテッド:イングランドマンチェスターのプロサッカークラブ。サミとじじがファン。
 チャント:サッカーでリズムにのってする応援行為。サミと祖父は、マンチェスター・ユナイテッドのファン。サミは祖父に買ってもらったキーホルダーをもっている。チャントは、「ハロー! ハロー! おれたちゃ、バズビー・ボーイズ!(バズビーはイギリスに伝わる呪いの椅子)」
 カンダハール:アフガニスタンにある都市。人口32万人ぐらい。アフガニスタンの首都は、カブール。
 赤いヘナ:植物。染料として使用されてきたハーブ
 ケバブ:肉、魚、野菜などをローストする中東の料理
クレシェンド:だんだん強く
 スィンク・オブ・ミー:オペラ座の怪人で歌われる歌。男女の過去の恋愛の思い出とわたしを忘れないでという思い。
 パネンカ:サッカーのわざ。ペナルティキックのとき、ゴールポストの端に蹴るとみせかけて、ど真ん中に蹴る。
 ロックスベリー:アメリカ合衆国マサチューセッツ州ボストンの行政区
 ラマダン:イスラム歴の9月。日本の暦とは一致しない。日の出から日没まで飲食を絶つイスラム教徒の儀式。日没後の食事はOK。食事を絶つことで不便さを体験し、思いやりと感謝の気持ちをもつ。周囲にいる人との協調を大事にする。
 サッカーのオフェンス、フォワード:オフェンスは攻撃中心のポジション、フォワードは、得点を取ることが役割のポジション。相手ゴールに近い二人か三人。センターフォワード、セカンドトップ、ウィング
 ケサディア:ジュニアハイスクールのランチで出てきた料理。メキシコ料理。トルティーヤにチーズをはさんで焼き、サルサを付けて食べる。トルティーヤは、トウモロコシをすりつぶした生地からつくる薄焼きパン。サルサは、スペイン語で、ソース
 iPad:アイ・パッド。アップル社の携帯用デジタル音楽プレーヤー
 eBay:イーベイ。アメリカ合衆国の企業。インターネットオークションを扱う。
 インシャッラー:イスラム教の教えの言葉。神の御心(みこころ)のままに。なんとかなるさーみたいに使う。
 ゲーム・インフォーマー:アメリカ合衆国の月刊コンピューター雑誌
 チャドリ:イスラム圏の女性の衣装。顔や体形を隠す。
 ビブス:チーム分けをするためのカラーゼッケン
 プロフ:プロフィール。自己紹介
 レクリエーションセンター:アメリカ合衆国の公営の施設のようです。
 トシャク:アフガニスタンのじゅうたん
 プリズマカラー:鮮やかな色
 ゲルマーカー:クレヨンみたいな書き味
 チャコールペンシル:デッサン(素描)の画材
 「アッサラーム・アライクム」:あなたに神の平和がありますように。こんにちはの意味。
 アンティーク&ジュエリー クモの巣:レイラの母親が働いている店。骨董品を扱っている。
 フンメル人形:高級陶磁器人形
 イードのプレゼント:イスラム教のラマダン(断食。一か月ぐらい)を終えたあとのお祭り
 モスク:イスラム教の礼拝堂
 イスタンブールのバザール:イスタンブールはトルコ最大の都市で、歴史、文化、経済の中心地。トルコの首都は、アンカラ。バザールは、市場。
 シャルワール・カミーズ:南アジアの民族衣装。シャルワールは白いズボン、カミーズは青いシャツ。制服のスーツを着ているように見える。
 スマッシュブラザーズ:対戦型アクションゲーム
 会衆:宗教儀式に集う人々
 イマーム:アラビア語で指導者
 ペグ:弦楽器で、弦を巻き付けて巻き上げる部分。糸巻
 イスラム帽:ひさしのないニット帽(ニット:編み物)
 ヒジャブ:イスラム教徒で女性が頭や体をおおう布
 ケミカルライト:化学発光による照明器具
 ダンブラ:アフガニスタンの弦楽器

 『お金』を中心にして回っていく物語です。お金がないから、ルバーブを盗む人がいる。
 ギター店が、盗品とは知らずに、あるいは、知っていても知らんふりをして、盗まれたルバーブを盗んだ人間から買う。盗難であるということを知らなかったという状態から、ルバーブの所有権は楽器屋にある。(善意の第三者。善意とは、ここでは、『知らなかった』ということ)
 サミは、リサイクルバザーを繰り返すような行為をしてルバーブを買い戻すお金をサッカー仲間と協力してつくる。そこに友情がある。祖父に対する愛情がある。故郷アフガニスタンに対する郷愁がルバーブという楽器を取り戻すという行為で表現してある。

 印象的だった部分として、
「アフガニスタンから逃げたとき、ぼくたちは何もかも失った」
(アフガニスタンのことわざとして)「初めてあった日は、友だち。再会した日には、兄弟」
(サミの言葉の趣旨として)父さんは自分が(アルカイダに殺されて)死ぬことを知っていたからあの時に沈黙していた。
「もし、じじまで失ったら、ぼくはどうなるの」
(じじの言葉)わしらにはもう家族がいない。これからは、世界じゅうの人が家族になるのだ。
「あなたの向かうところに善きこと(よきこと)のみありますように」
「(見下して)アラブ野郎」
「アフガニスタン人の言う『ともだち』は、肉親に近い意味をもつ」
「(じじに隠し事をしているサミの気持ちとして)道路に張りついたガムにでもなれたらと本気で考えた」
「人ごみの中にいると、目立たなくてすむし、まわりのたくさんの体に守られているような気がする」
「ぼくはパソコン。おうちをさがしています」
花火は、銃撃を思い出す。
アメリカ人は銃を持っている者がたくさんいる。今この中に、銃をもった人間がどれくらいいるんだろう。
自爆テロとアルカイダの銃撃から生き残ってもなにもいいことはない。両親と一緒に死んでいれば良かったというサミの心情。生き残りたくなかった。
(アメリカ合衆国で空にあがる花火を見たサミが)爆発を娯楽にしている社会を憎む。
「(じじの言葉)わしは、サミのために生きていなければならない」
「(サミの言葉の趣旨として)もう父さんも母さんもいない。ぼくがふたりの元へ帰ることもできないし、ふたりがぼくのところへもどってくることもできない」
「(サミの言葉)いつになったら、希望が生まれるのだろう」
欲しい物は、お金を渡してすぐ手に入れるのがアメリカ流のやり方。アフガニスタンでは、マット一枚買う時でも店主と何時間も世話話をする。
アフガニスタンでは、女性が楽器を弾くことは許されない。
「あなたは三回断ったし、わたしは三回差し出した。これ以上断るのはわたしに対する侮辱です」

 アフガニスタンでのタリバン支配下の暮らし:停電の時は、ランプ生活。音楽は禁止

 ダンのおかげで、携帯電話のアプリで、サミの祖父のルバーブの今のありかがわかりました。インターネットを活用する今どきの社会背景を上手に利用した児童文学を初めて読みました。ようやく、こういう児童文学作品が顔を出してきました。

 ギター店においてあるルバーブを買い戻すためには、700ドル(7万5000円ぐらい)が必要ですが、サミにはそのお金が今ないのでつくらなければなりません。期限は、4週間以内。7月5日までです。
 
 47ページからおもしろくなりそうな気配がしてきました。サミが、ルバーブを買い戻すための700ドルをつくるために、物々交換を始めます。「わらしべ長者」方式です。この本のタイトル「11番目の取引」につながっていきます。最初に、サッカーチームのキーホルダーが、壊れているiPadに交換されました。買戻しの期限まであと26日です。ひねりがきいています。壊れているiPadはこれからどうなるのか。サミが書く「取引日誌」がスタートします。

 戦争難民の話が出てきます。戦争で、危険なので、外国へ逃れるしかないのです。サミの両親はタリバンに殺されてしまいました。

 主人公のサミは、いろいろなことを盗まれたルバーブの持ち主であるじじに隠します。良くないことです。隠さなくてもだいじょうぶなことです。わたしが、じじの立場なら、サミには正直に話してほしい。叱りません。わたしがじじなら喜びます。じじにはありのままを言えばいい。
 サミは、戦争難民で気の毒な面がありますが、人間不信に陥っていて、卑屈な面もあります。(卑屈:いじけて、いくじがない。胸を張って自信をもってほしい)

 ピーターが悪役になってサミにからんできます。展開づくりがうまい。不快な気持ちになりますがありえる事象です。物語には悪役を演じてくれる人が必要です。だって人間はいい人ばかりじゃないんです。
 ピーターは、アフガニスタン出身のサミに対して、(おまえなんか殺人集団タリバンの仲間だろうというからかいで)「爆弾野郎」とか、「テロリスト」と言ってサミを攻撃します。してはいけない行為です。人種差別です。本の中では、「ヘイトスピーチ」と書かれています。
 この物語は、特殊な世界に置かれた戦争中のアフガニスタン難民である中学一年生の話です。
 
 サミは、じじの愛する楽器ルバーブを盗まれた自分が悪いと自分を責めますが、悪いのは、ルバーブを盗んだ男です。
 
 アフガニスタンでの大量死の舞台となった親せきの結婚式は、遠い親戚という人物の自爆テロで始まった。爆発後、タリバンが乱入して銃撃をしています。自爆ですが、自分の命を落としてまで、たくさんの人たちを殺害しなければならない主張ってなんなんだろう。このときサミは8歳でした。
 爆弾とか、銃という武力に屈するくやしさがあります。そして、武力の卑劣さがあります。自爆テロは、こっそりやることから、正々堂々としていません。武器を捨てよう! というメッセージを発したくなります。武器には、「愛」はない。武器にあるのは、「征服」と「支配」だけ。爆弾と銃を捨てよう。
 『洗脳』というのは怖い。迷信を信じてはいけません。(洗脳:学習、教育で、人の心理をゆがめる。主導者の利益のために行われる。迷信:根拠のないものを根拠があるように見せてだます。嘘を本当のことのように見せる)

 支援者の力が大きい。あとは、イスラム教が支えになっています。

 ずいぶん長い読書メモになってしまいましたが、今年読んで良かった心あたたまる一冊でした。

 『音楽』が折れそうな心を支えてくれることがあります。YouTubeでルバーブの音楽を聴きました。中近東のエキゾチックな雰囲気が伝わってきました。なにかしら物悲しい旋律でした。異国情緒たっぷりです。昔流行した歌謡曲で、『異邦人』久保田早紀さんの歌を思い出しました。  

Posted by 熊太郎 at 07:10Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2020年06月19日

天使のにもつ いとうみく 2020課題図書

天使のにもつ いとうみく 童心社 2020課題図書

 読み始めで、中学生の授業としての職場体験について書かれていることがわかります。主人公の中学2年生男子が、なにやら、いやいや、保育園の職場体験に臨みます。時期は、6月です。

 斗羽風汰(とば・ふうた):主人公。明功中学校2年生男子 団地暮らし 父親はタイへ単身赴任中で、母の茜さんとふたり暮らし。母の茜さんは、編集・制作プロダクション会社で働いています。

 エンジェル保育園:主人公の職場体験先。0歳児から5歳児まで50人くらいの規模の保育園でした。
 
 登場人物として、
 西本:エンジェル保育園長。女性
 石塚:中学校主人公斗羽風汰(とば・ふうた)のクラス担任。男性
 真田:音楽教師
 吉岡:クラスメイト。男子。主人公の風汰と職場体験の話をする。どちらかといえば、悪友っぽい。彼の職場体験先はハンバーグショップ
 麻田と柏崎:主人公の同級生女子。職場体験先はペットショップ。斗羽風汰は、拾った捨て犬の子犬を柏崎にあげようとする。
 チビ:ダンボールに入れられて捨てられていた子犬。斗羽風汰が名付けた。
 堀内:団地のご意見番おじいさん。捨て犬チビの処遇を5日間と斗羽風汰に通告する。
 林田:保母。斗羽風汰が、読みを「リンダ」と間違える。「はやしだ」が正しい。
 ポン先生:保母の本田さん
 あっくんセンパイ:吉岡にハンバーガーショップを職場体験先として勧めた。
 まーくんセンパイ:B棟2階に住む。斗羽風汰より3歳年上の17歳、高校2年生。じーちゃんとばーちゃんが好き。彼の過去の職場体験先は、「いこいの里」という老人ホームだった。
 日吉のじいさん:認知症徘徊高齢者
 土田:パートの保母さん

 職場体験の期間は、5日間で、事前に、現地で打合せが1回あります。

 職場体験先において、子どもと遊ぶだけだから『楽しそう』という理由での保育園の選択があります。間違っています。保育士は、子どもの命を預かるという非常に責任の重い仕事です。
 もめごとが起きたときにお金で解決できる仕事はまだ安心なほうの仕事です。生きるか死ぬかで、サービスを提供する相手が亡くなったり、相手がケガをして、もうもとの体に戻せなくなったりすると、大変なことが起こります。原因をつくった人は、一生その苦しさを背負って生きていくことになります。
 物事を表面だけで見て、楽でお金になる仕事と判断することは誤りです。
 小さなこどもの事故は一瞬で起ります。止めきれません。だからこそ、こどもからは片時も目を離してはいけないのです。それと、向かい会ったときに、おとなは感情と経験があるので、手加減してくれますが、こどもは限度を知らないのでとことんやってくるというこわさがあります。

 さあ、斗羽風汰くん(とば・ふうた)は、うまく職場体験をできるかな。まわりのおとなは、彼を教育しなければなりません。
 斗羽風汰くんは、なにかしら、すべてに対して後ろ向きです。あれこれりくつをつけてやりたがりません。なにもしなくて、楽しみたいというタイプに見えて、がっかりします。
 
 子犬が捨てられている話がでました。斗羽風汰くんは、ダンボール箱に入れられた子犬を見つけますが家に連れて帰って飼うことはできません。保健所は捨て犬を殺処分につなぐところです。どういう権限があるのかわかりませんが、団地のC棟の二階に住んでいる堀内じいさんに保健所に連絡するまでとして5日間の猶予が斗羽風汰に与えられました。

 スクエアリュック:四角いボックス型のリュックサック
 
 だんだんややこしくなってきたので、別紙にメモを始めました。「 」のなかは、こどもさんの名前です。
 0歳児 ひよこ組 帽子は赤
 1歳児 りす ピンク 「はな」
 2歳児 ひつじ 黄 「太郎」
 3歳児 ぱんだ オレンジ 「きな」
 4歳児 きりん 緑 男5人 女3人 「せのお・しおん」男の子、もしかしたら親から虐待されているのでは。それから、「りくと」「かほ(まきちゃんという小学5年生の姉がいる)」「いつき」「こうたろう」「あいざわ・つぐみ」「きさらぎ・あいり」「そう」
 5歳児 ぞう 青
 教育の特徴としては、「はだし」で過ごすこと。木登りOK。どろ遊びOK

体験初日のこと
 6月20日火曜日午前8時20分スタートです。
 52ページの「チャボのふーたくん」の記述には笑いました。おもしろい。
 こどもたちの動作はかわいい。そして、とてもにぎやかです。
 斗羽風汰の仕事をする姿勢にやる気がみられないためか、保母さんから職場体験が受け入れる方としては負担になっているという話が出てきます。保母にとっては、保育園児と中学生の両方のめんどうをみなければなりません。

 4歳児きりん組の男の子「しおん」の虐待話になりそうで、この先お話が暗くなりそう。それから、捨てられていた子犬はどうなるのだろうか。

 スウェット姿:体操をするときに着るジャージみたいな上着とズボン
 ガパオライス:バジル炒めごはん
 トムヤムクン:からい、すっぱい、特別な香り。エビを入れて煮たスープ
 パッタイ:米粉でつくった麺を炒めた料理

体験二日目
 ひつじ組の2歳児と関わりをもつ主人公の斗羽風汰です。
 たら先生(滝川さら先生)の「小さい子はまだ言葉でうまく伝えられないから、つい手がでちゃう」というような話は道理にかなっています。言葉を知っていても、自分の考えを相手に正確に伝えるということも、実はむずかしいです。
 ふね公園(砂川花森公園)への2歳児のお散歩はハードです。安全確保第一でゆっくり行きましょう。ドライバーの運転を信じてはいけません。
 ぺんぺん草:ナズナ
 こどもたちのお昼寝の準備は、簡単だとは書いてありますが、けっこう細かい順序に従った作業があります。
 園長先生の大事なお話があります。「保育士は子守りじゃない。こどもを幸せにすることが保育士の役割」とあります。

体験三日目
 保育園で飼っている黒いウサギの登場です。ウサギの名前は、「くろちゃん」です。

 せのお・しおんくんは、熱が出て休みですが、なにかしら疑わしい。熱が出て休みじゃないような。38度の熱は仮病ではないか。あるいは、なにかの口実ではないか。事件発生か。

 園庭で穴掘り大会が始まります。りくと君が斗羽風汰に穴掘りを依頼します。ほったあとにできた土の山でトンネルづくりの遊びが始まります。
 中学生のこどもである斗羽風汰が、保育園児のみんなをこどもとして見て観察している部分がおもしろい。こどもがこどもを評価しています。

 読みながら、以前は、ひとりっ子が多かったような気がするのですが、最近はどうなのかなと思いました。兄弟姉妹がいるかいないかで、こどもの毎日の活動とか性格がだいぶ変わってくるような気がします。(調べたらひとりっ子の割合は右肩上がりで増えているようですが、こどもがふたりいる世帯が多いそうです)

 4歳児きりん組のまきちゃんから、小学5年生のまきちゃんのおねえちゃんから聞いた話として、「ウサギはさみしいとしんじゃう」という話題が出ますが、人間もさみしいと死んじゃうことがあります。まきちゃんは、まだちっちゃいけれど、人間の本質をもう知っています。(本質:根本的な性質)まきちゃんは、斗羽風汰の心の優しさに触れます。

 斗羽風汰は、なりゆきで、ピンクのジャージを着て、プール開きのときに遊びとして使う磁石をつけた魚をつくり始めます。魚釣り遊びの道具です。

 熱を出して休んでいるしおん君の話が出ます。
 園長先生の言葉は何を意味しているのだろうか。「わたしたちは、お母さんの代わりはできないけれど、お母さんのできないことをほんの少し補うことはできると思っているの」「平等とは、全員に同じことをしてあげることではなく、その子にとって必要なことをしてあげること」

体験四日目
 保護者の苦情シーンがあります。働く世界では、クレームトラブルはつきものです。
 
 トイプードル:犬の品種。ヨーロッパ産。水中回収犬。
 ティーカッププードル:ちっちゃいプードル
 バスソルト:入浴剤
 バロメーター:指標

 良かったセリフとして、「犬を捨てる人間もいるけど、守ろうとする人間も少なくない」
 まだ四歳男児のしおん君をとおして、こどもにとっての悲しみが、こどもの「つくり笑顔」という形で表現されています。

 しおんくんの母親は、しつけということで、しおん君に厳しく接していますが、子どもを押さえつけると、将来子どもが力をつけたときに、親には子どもから仕返しが来ます。押しつけは、危険な育て方です。
 
 少しずつ読みながら感想を継ぎ足してきましたが、読み終えました。5日間ぐらいで読みました。後半はなんだかばたばたした内容で、少ないページ数のなかに、保育所での職場体験と、認知症高齢者の徘徊と、捨てられていた子犬の話が重ねてありました。いっぽう前半からちらちら出ていたきりん組の男児せのお・しおん君の虐待されているのかもしれないという話は中途半端に終わりました。ちなみに、敬称なしの「しおん」という表記で進めてもらったほうが読みやすかった。「しおん君」だと読むときのリズムがひっかかって読みにくかった。

 主人公中学2年生の斗羽風汰が、中学校の職場体験授業を体験することによって、心の成長がみられた作品でした。斗羽風汰君は、まだ中学生です。これからいろんな体験を積んで人生を楽しんでください。

 作品のタイトル「天使のにもつ」の意味はいまだにとれません。天使は、保育園児だと思いますが、にもつは何のことかわかりません。生まれてきて、人として背負った人生の重い荷物だろうか。
 あとは、たくさんの情報が出てきて、メモで整理しないとわかりにくかった。それから、表記が、「〇歳児」となっているのは形式的にそう書くものなのでしょうが、「〇」が数値の「0」に見えず、「0歳児」という表示で良かった気がします。
 最後に、伏線の「ちょんまげ」はおもしろかったです。  

Posted by 熊太郎 at 08:01Comments(0)TrackBack(0)読書感想文