2020年06月01日

そこのみにて光り輝く 邦画DVD

そこのみにて光り輝く 邦画DVD 2014年公開

 少し前に観た「海炭市叙景」と関連がある作品だそうです。舞台は、函館、作者は、亡くなった芥川賞候補作作家佐藤泰志さんです。この作品は、三島由紀夫賞候補作だったそうです。映画は、芸術作品でした。人間を暗い場所へ力づくで押し込めます。そして、最後に笑みが漏れるのです。

 どうも製作陣は、行政(市役所)に文句があるようです。
 
 生々しい家族が登場します。父親は、認知症の介護が必要な寝たきり状態だけれど、性欲の固まりです。元気で正常だったときの父親とは別人になっているのでしょう。
 生活費が足りません。力を失くした母親がいます。弟の会社の社長と不倫の愛人関係をしているお姉ちゃんがいます。お姉ちゃんはほかにも売春をして収入を得ています。
 弟は、人を刺して刑務所に入っていましたが、いまは仮釈放中です。そこに、仕事で部下を事故死させてしまった綾野剛さんが現れます。お姉ちゃん役の池脇千鶴さんも芸達者でふたりとも演技がたいしたものです。
 さらに、弟役をしている菅田将暉さんの演技が爆発します。日本映画界は、こういう、心に深い印象を残す邦画を年に何本かつくるのでしょう。人間の汚い部分をさらけだします。

 北海道といっても、牧場や草原、広々としたじゃがいも畑ばかりではないことがわかりました。風景は、日常のありふれた景色ですが、ラストシーンの場所はやっぱり海岸の砂浜が『家族』には、似合います。

 雇ってもらっている仮釈放中の弟の仕事が継続するために、やむにやまれず、いやいやながら、弟の会社の社長と不倫関係を続けている姉です。社長も仕事のストレスがあるらしい。されど、彼は、女性を自分のストレスとか性欲のはけ口にしています。とんでもない人間です。

 綾野剛さんと池脇千鶴さんによる押したり引いたりの恋愛のかけひきがあります。ふたりともうまい。
 心が満たされない者同士が、ひかれあって恋愛をする。されど、ふたりの仲をひきさこうとする人間が出てくる。
 池脇千鶴さんの叫び声「うあああーっ!」が、おもしろかった。笑いました。「あたま、おかしいやつばっかり」というセリフでした。
 「もうこんな仕事辞めろよ(売春)」に、「(9時5時のサラリーマンみたいな仕事は)わたし、いるとこないんだよね」(だから、女優をしているのかと考えてしまいました)

 退廃があります。ちょっと、暗くて、途中、どうして、こんな映画を(自分は)観ているのだろうという気分になりました。

 登場人物たちがあこがれているのは、「平和な家族」です。
 お互いの秘密を抱えながら生きるのが、夫婦とか、家族と悟りました。

 うらみがあっても相手を殺してはいけない。殺さなくても相手は必ずいつか寿命で死にます。相手よりも長生きすることが、合法的で安全で平和的な復讐です。

 年寄りの介護の苦しさがにじみ出ていた作品でもあります。介護する側の人間にとっては、この世の地獄でした。父親は、施設入所で、いいのじゃないだろうか。娘の父親との昔の思い出話にはほろりときましたが、もう現在は、そのときの父親ではありません。共倒れは避けたい。