2020年06月19日

天使のにもつ いとうみく 2020課題図書

天使のにもつ いとうみく 童心社 2020課題図書

 読み始めで、中学生の授業としての職場体験について書かれていることがわかります。主人公の中学2年生男子が、なにやら、いやいや、保育園の職場体験に臨みます。時期は、6月です。

 斗羽風汰(とば・ふうた):主人公。明功中学校2年生男子 団地暮らし 父親はタイへ単身赴任中で、母の茜さんとふたり暮らし。母の茜さんは、編集・制作プロダクション会社で働いています。

 エンジェル保育園:主人公の職場体験先。0歳児から5歳児まで50人くらいの規模の保育園でした。
 
 登場人物として、
 西本:エンジェル保育園長。女性
 石塚:中学校主人公斗羽風汰(とば・ふうた)のクラス担任。男性
 真田:音楽教師
 吉岡:クラスメイト。男子。主人公の風汰と職場体験の話をする。どちらかといえば、悪友っぽい。彼の職場体験先はハンバーグショップ
 麻田と柏崎:主人公の同級生女子。職場体験先はペットショップ。斗羽風汰は、拾った捨て犬の子犬を柏崎にあげようとする。
 チビ:ダンボールに入れられて捨てられていた子犬。斗羽風汰が名付けた。
 堀内:団地のご意見番おじいさん。捨て犬チビの処遇を5日間と斗羽風汰に通告する。
 林田:保母。斗羽風汰が、読みを「リンダ」と間違える。「はやしだ」が正しい。
 ポン先生:保母の本田さん
 あっくんセンパイ:吉岡にハンバーガーショップを職場体験先として勧めた。
 まーくんセンパイ:B棟2階に住む。斗羽風汰より3歳年上の17歳、高校2年生。じーちゃんとばーちゃんが好き。彼の過去の職場体験先は、「いこいの里」という老人ホームだった。
 日吉のじいさん:認知症徘徊高齢者
 土田:パートの保母さん

 職場体験の期間は、5日間で、事前に、現地で打合せが1回あります。

 職場体験先において、子どもと遊ぶだけだから『楽しそう』という理由での保育園の選択があります。間違っています。保育士は、子どもの命を預かるという非常に責任の重い仕事です。
 もめごとが起きたときにお金で解決できる仕事はまだ安心なほうの仕事です。生きるか死ぬかで、サービスを提供する相手が亡くなったり、相手がケガをして、もうもとの体に戻せなくなったりすると、大変なことが起こります。原因をつくった人は、一生その苦しさを背負って生きていくことになります。
 物事を表面だけで見て、楽でお金になる仕事と判断することは誤りです。
 小さなこどもの事故は一瞬で起ります。止めきれません。だからこそ、こどもからは片時も目を離してはいけないのです。それと、向かい会ったときに、おとなは感情と経験があるので、手加減してくれますが、こどもは限度を知らないのでとことんやってくるというこわさがあります。

 さあ、斗羽風汰くん(とば・ふうた)は、うまく職場体験をできるかな。まわりのおとなは、彼を教育しなければなりません。
 斗羽風汰くんは、なにかしら、すべてに対して後ろ向きです。あれこれりくつをつけてやりたがりません。なにもしなくて、楽しみたいというタイプに見えて、がっかりします。
 
 子犬が捨てられている話がでました。斗羽風汰くんは、ダンボール箱に入れられた子犬を見つけますが家に連れて帰って飼うことはできません。保健所は捨て犬を殺処分につなぐところです。どういう権限があるのかわかりませんが、団地のC棟の二階に住んでいる堀内じいさんに保健所に連絡するまでとして5日間の猶予が斗羽風汰に与えられました。

 スクエアリュック:四角いボックス型のリュックサック
 
 だんだんややこしくなってきたので、別紙にメモを始めました。「 」のなかは、こどもさんの名前です。
 0歳児 ひよこ組 帽子は赤
 1歳児 りす ピンク 「はな」
 2歳児 ひつじ 黄 「太郎」
 3歳児 ぱんだ オレンジ 「きな」
 4歳児 きりん 緑 男5人 女3人 「せのお・しおん」男の子、もしかしたら親から虐待されているのでは。それから、「りくと」「かほ(まきちゃんという小学5年生の姉がいる)」「いつき」「こうたろう」「あいざわ・つぐみ」「きさらぎ・あいり」「そう」
 5歳児 ぞう 青
 教育の特徴としては、「はだし」で過ごすこと。木登りOK。どろ遊びOK

体験初日のこと
 6月20日火曜日午前8時20分スタートです。
 52ページの「チャボのふーたくん」の記述には笑いました。おもしろい。
 こどもたちの動作はかわいい。そして、とてもにぎやかです。
 斗羽風汰の仕事をする姿勢にやる気がみられないためか、保母さんから職場体験が受け入れる方としては負担になっているという話が出てきます。保母にとっては、保育園児と中学生の両方のめんどうをみなければなりません。

 4歳児きりん組の男の子「しおん」の虐待話になりそうで、この先お話が暗くなりそう。それから、捨てられていた子犬はどうなるのだろうか。

 スウェット姿:体操をするときに着るジャージみたいな上着とズボン
 ガパオライス:バジル炒めごはん
 トムヤムクン:からい、すっぱい、特別な香り。エビを入れて煮たスープ
 パッタイ:米粉でつくった麺を炒めた料理

体験二日目
 ひつじ組の2歳児と関わりをもつ主人公の斗羽風汰です。
 たら先生(滝川さら先生)の「小さい子はまだ言葉でうまく伝えられないから、つい手がでちゃう」というような話は道理にかなっています。言葉を知っていても、自分の考えを相手に正確に伝えるということも、実はむずかしいです。
 ふね公園(砂川花森公園)への2歳児のお散歩はハードです。安全確保第一でゆっくり行きましょう。ドライバーの運転を信じてはいけません。
 ぺんぺん草:ナズナ
 こどもたちのお昼寝の準備は、簡単だとは書いてありますが、けっこう細かい順序に従った作業があります。
 園長先生の大事なお話があります。「保育士は子守りじゃない。こどもを幸せにすることが保育士の役割」とあります。

体験三日目
 保育園で飼っている黒いウサギの登場です。ウサギの名前は、「くろちゃん」です。

 せのお・しおんくんは、熱が出て休みですが、なにかしら疑わしい。熱が出て休みじゃないような。38度の熱は仮病ではないか。あるいは、なにかの口実ではないか。事件発生か。

 園庭で穴掘り大会が始まります。りくと君が斗羽風汰に穴掘りを依頼します。ほったあとにできた土の山でトンネルづくりの遊びが始まります。
 中学生のこどもである斗羽風汰が、保育園児のみんなをこどもとして見て観察している部分がおもしろい。こどもがこどもを評価しています。

 読みながら、以前は、ひとりっ子が多かったような気がするのですが、最近はどうなのかなと思いました。兄弟姉妹がいるかいないかで、こどもの毎日の活動とか性格がだいぶ変わってくるような気がします。(調べたらひとりっ子の割合は右肩上がりで増えているようですが、こどもがふたりいる世帯が多いそうです)

 4歳児きりん組のまきちゃんから、小学5年生のまきちゃんのおねえちゃんから聞いた話として、「ウサギはさみしいとしんじゃう」という話題が出ますが、人間もさみしいと死んじゃうことがあります。まきちゃんは、まだちっちゃいけれど、人間の本質をもう知っています。(本質:根本的な性質)まきちゃんは、斗羽風汰の心の優しさに触れます。

 斗羽風汰は、なりゆきで、ピンクのジャージを着て、プール開きのときに遊びとして使う磁石をつけた魚をつくり始めます。魚釣り遊びの道具です。

 熱を出して休んでいるしおん君の話が出ます。
 園長先生の言葉は何を意味しているのだろうか。「わたしたちは、お母さんの代わりはできないけれど、お母さんのできないことをほんの少し補うことはできると思っているの」「平等とは、全員に同じことをしてあげることではなく、その子にとって必要なことをしてあげること」

体験四日目
 保護者の苦情シーンがあります。働く世界では、クレームトラブルはつきものです。
 
 トイプードル:犬の品種。ヨーロッパ産。水中回収犬。
 ティーカッププードル:ちっちゃいプードル
 バスソルト:入浴剤
 バロメーター:指標

 良かったセリフとして、「犬を捨てる人間もいるけど、守ろうとする人間も少なくない」
 まだ四歳男児のしおん君をとおして、こどもにとっての悲しみが、こどもの「つくり笑顔」という形で表現されています。

 しおんくんの母親は、しつけということで、しおん君に厳しく接していますが、子どもを押さえつけると、将来子どもが力をつけたときに、親には子どもから仕返しが来ます。押しつけは、危険な育て方です。
 
 少しずつ読みながら感想を継ぎ足してきましたが、読み終えました。5日間ぐらいで読みました。後半はなんだかばたばたした内容で、少ないページ数のなかに、保育所での職場体験と、認知症高齢者の徘徊と、捨てられていた子犬の話が重ねてありました。いっぽう前半からちらちら出ていたきりん組の男児せのお・しおん君の虐待されているのかもしれないという話は中途半端に終わりました。ちなみに、敬称なしの「しおん」という表記で進めてもらったほうが読みやすかった。「しおん君」だと読むときのリズムがひっかかって読みにくかった。

 主人公中学2年生の斗羽風汰が、中学校の職場体験授業を体験することによって、心の成長がみられた作品でした。斗羽風汰君は、まだ中学生です。これからいろんな体験を積んで人生を楽しんでください。

 作品のタイトル「天使のにもつ」の意味はいまだにとれません。天使は、保育園児だと思いますが、にもつは何のことかわかりません。生まれてきて、人として背負った人生の重い荷物だろうか。
 あとは、たくさんの情報が出てきて、メモで整理しないとわかりにくかった。それから、表記が、「〇歳児」となっているのは形式的にそう書くものなのでしょうが、「〇」が数値の「0」に見えず、「0歳児」という表示で良かった気がします。
 最後に、伏線の「ちょんまげ」はおもしろかったです。

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