2019年08月25日

そらのレストラン 邦画DVD

そらのレストラン 邦画DVD 2019年公開

 たとえば、アジア各国の人たちが映画鑑賞者の対象で(とくに韓国の方)、北海道への観光客誘致が目的の映画ではなかろうかと思った次第です。
 出だしは、沖縄を舞台にした「カフーを待ちわびて」に似ている。UFO話は、ドラマ「北の国から」の原田美枝子先生を思い出します。
 冒頭付近からしばらくかなり長い間、正直、おもしろくありません。山場みたいなシーンがありますが、既視感があります。
 北海道の雄大で美しい映像に頼りすぎではなかろうか。
 料理は、サラダごはんのようなものばかり。叱られるかもしれませんが、量が少ない。太らないための健康食です。おいしいものをおなかいっぱい食べたい。たまの観光旅行なら、たらふく、腹がちぎれるほど食べたい。
 動きのあるサングラスの男の人(有名シェフ)はつまらない。
 チーズ職人が突然椅子から崩れ落ちるのは違和感が大きい。不自然。
 ギャグバラエティ映画ではない。
 美しくて、おだやかな、動植物の自然探訪(たんぼう)物語です。おとぎ話でもあります。  

2019年08月24日

世界の果てまでイッテQ! DVD

世界の果てまでイッテQ! DVD Vol.1と2

 テレビ番組ですが、観たことがありません。DVDで観てみることにしました。

「鳥人まつり 2007年 メキシコトトナカ族 宮川大輔」
 やらせ疑惑の報道がありましたが、テレビ番組というものは、加工してあると思って見ています。目的に沿って(視聴率をとる。広告料を得る)、テーマを決めて、企画して、台本をつくって、撮影して、目的に沿うように内容を加工する。見る方は、その前提で見る。
 旅番組かと思っていました。タレントさんが体を張って、無理だと思われることに挑戦する番組でした。
 高さ35mの鉄棒にのぼって、くるくるまわりながらさかさの体制でおりてきます。儀式です。最初はどうなるのかと思いましたが、できました。すごいなあ。楽しめました。

「世界一癒される場所ってどこ 南米ガイアナ協同共和国 カイチェールの滝 手越さんと小学生の男の子」
 過酷です。標高1500mの場所は暑いそうです。小型プロペラ機で空を横切って、細いカヌーをこいで川を進んで、絶景の滝に着いて、ロープで岸壁にぶらさがる。
 怖い思いをするのが、この番組の趣旨なのか。

「人食いザメでワサビがおろせるか 出川哲朗さんと黒川智花さん オーストラリア」
 サメをいじめているように見えました。なんだかへんな企画。おもしろいのだろうか。

「世界一暑いところにいたら24時間でどれだけやせられるか 森三中 サハラ砂漠 チュニジア」
 ラクダとともに砂漠を歩きます。大島美幸さん81.1kg 村上知子さん63.9kg 黒沢かずこさん65.5kg やせたというより、体内の水分が少なくなっただけのような。
 砂漠の朝方、涼しい時に出てきた生き物たち、フェネックとかがかわいかった。

「珍獣ハンター イモトアヤコさん対インドネシアコモド島のコモドドラゴン(恐竜みたい)」
 オーディションシーン(たぶんあらかじめ勝者が決まっている)からおもしろかった。イモトさんが若い。21才。別人みたい。
 全体をとおしてですが、笑いをとる番組でもないみたい。世界の風景美を楽しむ番組でもない。旅番組でもない。バラエティか。

「24時間で何か国旅行できるの? 西ヨーロッパ」 ベッキーさん
 そんな無茶なと思いながら観始めました。オランダ→ベルギー→スイス→スペイン→フランス→モナコ(国だと思っていませんでした)→イタリア。各地で、観光、食事、お土産体験をします。
 最初のオランダ、チーズがらみがおもしろかった。木靴が良かった。あとは、とにかく忙しい。2007年当時に広く流通していたデジカメがなつかしかった。

「世界で一番盛り上がる祭りは何祭り イギリスグロスター チーズ祭り」 宮川大輔さん
 斜面からの転落の勢いあり。ころがり落ちていきます。ケガします。(ねんざされました)
 チャンピョンになる条件は、「あたまがおかしいこと」、笑いました。
 最初にころがるチーズの位置は関係ないようです。チーズを捕まえる競技ではありませんでした。1レースごとに1位の人がチャンピョンでした。宮川さんの2位はたいしたものです。35度の斜面、180メートルを12秒でくだれればチャンピョンだそうです。

「恐怖のバンジージャンプランキング ニュージーランド」 イモトさん
 最初は、オークランドのスカイタワーの上からジャンプです。タワーは328mの高さ、スカイイウォーク(歩く)のが、192mの高さ、そのあたりから降りる。
 5位が、ハーバーブリッジ、橋げたの下から40mです。現地スタッフが日本語で「とびます」がおかしかった。イモトさんはすごい。見事でした。
 4位が、スカイスクリーマー(遊園地の乗り物みたい)、3位が、レッジバンジー、クィーンズタウン、だんだんマンネリ化してきました。宇宙飛行士を職とする人だったらなんともないんだろうなあとか、イモトさんもだんだん慣れてくるんじゃなかろうかとか。ところが、イモトさんは何回体験しても慣れないようです。されど、割り切りとふんぎりがいい。2位のチェア(椅子と一緒に落ちていく)は、スタートがかかってから2時間30分後にようやく飛び降りたそうです。すばらしい。
 1位がカワラウバンジー、頭が水面に着きます。なんだか、ニワトリ料理みたい。

「世界最大級の灯籠流し(とうろうながし) タイ」 オセロ松島尚美
 精霊流しとか灯籠流しは川や海ですが、タイの場合は、空へ浮かびあがっていきます。
 ハチの巣からろうそくをつくり、別途、紙すきをして神をつくり、手作業で、空にうかぶ灯籠を5000個つくって飛ばします。
 午後9時の暗い空に大量の灯籠があがっていきました。

*DVDを2枚見ましたが、自分には合いませんでした。のんびりした旅先の風景映像を観たいので、これ以上見るのはもういいかなあという気分です。  

2019年08月23日

出川充電バイク 奈良県十津川村から熊野古道

出川充電バイク 奈良県十津川村から熊野古道、熊野三山、和歌山県那智の滝がゴール テレビ放送


 山の中の田舎です。あいにくの雨です。ゲストは、狩野英孝さんです。神社の息子です。
 BGMのミュージックがナイスです。もう、記憶から消えていた歌が流れ始めて、ちょっぴり郷愁にひたれます。
 充電量が0%に近くなったときの「やばいよ、やばいよ」の表示もおもしろい。
 全体的に暗い雰囲気のつくりに見えるのですが、通りすがりの人たちの笑顔が明るい。こどもたちも可愛い。
 92才のおばあさんがよかった。お元気です。
 狩野英孝さんの神社のお参りのしかたもわかりやすかった。
 温泉「つぼ湯」はかなり熱そうでした。

(次回へ続く)

 爆笑しました。
 那智勝浦町の地元民の大歓迎がすごい。ゲストの言葉にもありますが、素朴でいい町でした。平和です。
 まぐろ屋食堂の大将が、「まずかったらお金はいりません」がカッコイイー。まずいわけがありません。おいしそうー。
 スイカヘルメットの兄と妹、お母さんの部分がおもしろ楽しかった。「少女」を「少年」と間違えたところが笑えました。
 ゲストのスピードワゴン小沢一敬さんによる飴「那智黒」を紹介するコマーシャルは昭和50年代によくテレビで観ました。なつかしい。東京人間の出川さんが全然知らなかったところも番組的にはおもしろい。
 冒頭の川湯温泉は本当に川原にある温泉でした。
 新宮市でのご家庭で、迷惑そうだった奥さんが、スピードワゴン小沢さんの相方井戸田潤さんのファンで、電話で彼と話がつながって、ハンバーグギャグをやったとたん表情が豹変して奥さんに受けたのが愉快でした。
 ロケは2月中旬の寒い頃だったようです。太平洋の海原の色がきれい。
 出川哲朗さんの人柄(まじめ)と景色シーンがいい番組です。  

2019年08月22日

サムライマラソン 邦画DVD

サムライマラソン 邦画DVD 2019年公開

 映画を観終わったあとの爽快感がありません。
 最初から最後まで暗い雰囲気が続きます。せつなさがただよいます。
 ゲーム画面を見ているようでした。物語をつくりそこねたのではないか。役者の味わいも出ていません。
 史実に基づいて、とある藩の「遠足(とおあし、マラソン。15里ですので、60キロぐらい)」大会を描く。日本マラソン発祥の出来事だそうです。だから、最後のシーンに違和感があります。大河ドラマいだてんのイメージもあります。オリンピックのコマーシャルだったのか。
 黒船来航開国話を背景にして、隠密(スパイ)の話と、江戸に出たい雪姫の話、足の速い足軽の貧しい生活を送る家族の話などが同時進行していきます。
 日本刀はあのように振り回せないし、拳銃のシーンはいらなかったのではないか。鉄砲玉は、撃っても、あんなに簡単には当たりません。
 突然の刃傷沙汰(にんじょうざた)、首切りシーンはむごい。殺し合いが続きます。BGMの音楽で、感情を引っ張っています。
 黄金色に輝く農地の風景は美しかった。  

2019年08月21日

渦 UZU 妹背山婦女庭訓魂結び 大島真寿美

渦 UZU 妹背山婦女庭訓魂結び(いもせやまおんなていきんたまむすび) 大島真寿美 文藝春秋

 「近松門左衛門:浄瑠璃、歌舞伎の脚本作者。1725年72歳ぐらいで没」
 「浄瑠璃:三味線伴奏、太夫が語る。人形は三人の人形遣いが操作する」
 「近松半二:1725年生まれ。1783年58歳ぐらいで没。270年ぐらい前の浄瑠璃作者。役行者大峰桜えんのぎょうしゃおおみねざくら。妹背山婦人庭訓(人形浄瑠璃、歌舞伎の演目)」
 「狂言:こっけいな笑いの劇」

 物語の主人公の名前は、近松半二ですが、近松門左衛門との血縁関係はありません。半二の父親儒学者以貫(いかん)と近松門左衛門が面識があります。ただし、半二生誕時には、門左衛門はすでにあの世の人となっていました。
 9つの章です。

「硯(すずり)」
 読むのに1時間少々かかりました。
 近松門左衛門が使用していた硯を半二が父親から譲り受けます。おまえも浄瑠璃の台本を書けという指令です。
 でもそうそう簡単には書けません。
 生い立ちから、13歳ぐらいのときのようす、その後のていたらくですが、青年期は浄瑠璃づくりに関わりをもちはじめます。
 「師弟関係」があります。やはり、師弟関係がないと仕事が完成に導かれません。師匠として、実父、数人の老人たちが関与します。先生と生徒、師匠と弟子、職人世界です。
 硯から文章が生まれる様子は生き生きとした表現でした。
 浄瑠璃観劇の様子をうまく表した文節として、「この世のようで、この世ではない」
 舞台は、大阪から京都と移り、再び大阪道頓堀に戻ります。
 本名は、穂積成章(ほづみ・なりあき)、筆名近松半二の由来がいい。
 自分の居場所探しの放浪です。
 この物語は、史実なのだろうか。(実在の人物でした)
 
「廻り舞台」
 廻り舞台:舞台のまんなかが円になっていて、場面転換時に回転する。
 気に入った表現として、「芝居語り」、「あの人の書くものは太い」、「板にのせるとなったら芯がいる」、「頭の中にあるものが字にならない」
 仮名手本忠臣蔵:人形浄瑠璃、歌舞伎の演目。仇討話」
 前回の直木賞受賞作「宝島」では、沖縄言葉に苦労しました。今回は関西弁です。いろいろ評価はあろうかと思いますが、標準語でも良かったと思います。読み手は、なじみのない言語は読むのにくたびれます。
 
「あおによし」
 あおによしとは、奈良にかかるまくら言葉。奈良のこと。
 章中にある吉野山の金峯山寺(きんぷせんじ)はなんどか訪れました。わらぶき屋根が美しいお寺さんでした。
 主人公近松半二の兄の許嫁(いいなずけ)だったが、兄の母の策略で結婚できなかったお末が登場します。兄とお末のふたりは愛し合っていた。心中を考えたことがある。「心中」というワードで、作品制作へつながっていくようです。
 読みながら、浄瑠璃というのは、現代のテレビのバラエティ、ドラマ、映画のようなかんじなのだろうと。
 お末をとおして、女の性(さが)が表に出てきます。怖い。思い込んだら命がけとあります。
 「朴念仁:ぼくねんじん。無口で愛想のない人」
 なにかしら気に入った言葉として、「好人物」
 だんだん、小説家を目指している人にとっては、素敵な文章の熱風が吹いてきます。「ええ、文句が書きたい」、「やけくそや、書きたいように書いたる。あそこで、書くしかない」
 この作品全体自体が、小説家を目指している人が読むと心強くなる主題を含んでいます。
 妹背山の形が見えてきます。妹山と背山が向かい合わせであって、間を吉野川が流れている。泣く泣く別れた恋の話です。なんだか、天の川のようです。

「人形遣い」
 浄瑠璃人形遣いの名人が芝居小屋の経営者と対立してクーデター(奇襲による権力奪取)を企図するお話です。浄瑠璃という素材で、ここまで、厚みのある記述ができるのは、強い筆力があるからでしょう。
 「詞章:ししょう。文字表現の言葉」、「小股の切れ上がった:ひざからももが引き締まって、すらりとしている」、「作病:さくびょう。病気のふりをする」、「仁義にもとる:筋道をはずれる」、「海千山千:うみせんやません。経験を積んで悪賢い」、「
 半二は30歳ぐらいです。未婚。芸能事務所のタレント独立騒動に巻き込まれたような様相でおろおろしていますが、半二の意見は正しい。偶然起こった「火事」が運命を分けました。
 共感したセリフなどとして、「もうええ歳や。やれるうちにやりたいことをやって死んでいきたい」、「長生きしてたら(いいことがある)」
 人形遣いは、人形なしでは生きていけない。

「雪月花」
 雪月花:雪・月・花。自然美。
 「奢侈:しゃし。度を超えてぜいたくなこと」、「薹が経つ:とうがたつ。年頃が過ぎる」
 江戸時代のこの頃の景気は下がり気味です。主人公半二は40歳に近くなりました。
 主人公近松半二の母親が死にます。半二を嫌っていた半二から見れば鬼のような母親でした。いいかげんな暮らしぶりに愛想をつかした実母でした。半二は二十年、家に帰っていません。
 舞台の上にいる役者のセリフを間近で聴いているようで心地よい。
 半二は結婚します。妻は妊娠します。

「渦」
 人形浄瑠璃のからくり舞台のことが出てきます。観客席が半分動いたり、舞台が動いたり、その話に人形遣いとか浄瑠璃作者の竹田治蔵(大酒飲み)・宇蔵兄弟の話がからんで、「渦」が生まれるのです。文章、文脈も渦化していきます。生き生きと文章表現がなされます。
 「立作者:歌舞伎で筆頭の作者」
 良かった表現として、「書きたかったから酒に走った」、書くことの怖さが広がります。書くことで、作者自身の心が壊れていきます。そこを酒でカバーする。そして、命を落とす。
 のりうつったような文脈です。
 「三千世界:仏教用語、全宇宙」
 舞台は、道頓堀。
 多用される単語は、「拵える:こしらえる」
 さらに、良かった表現として、「筆は走り続ける。勢いが止まらない」、「虚実の渦に呑み込まれていく」

「妹背山(いもせやま)」
 吉野山、吉野川川岸道路を車で走ったことがあります。小説の記述がリアルに迫ってきます。
 「空が燃えた」から始まります。天変地異。オーロラです。
 主人公近松半二の亡父への感謝の思いがあります。
 人形操り浄瑠璃の衰退があります。
 「切り:浄瑠璃の山場」、「追善供養:命日に法事をして供養する」、「神鹿:しんろく。奈良の鹿」
 ロミオとジュリエットのようなお話なのか。
 首が飛んで鳥になって、なんだかすごい。
 名文句として、「わしが文字になってここへ溶けていく」

「婦女庭訓おんなていきん」
 庭訓というのは、親が子に教えることの定めと解するようです。おんなですから、おんなの道の教えです。しつけともあります。
 主人公近松半二の幼なじみで、兄の許嫁だったお末が5年前に急死していたことが判明します。半二の愚痴のような過去を悔いるひとりごとが続きます。あまり好きになれない章だと思いながら読んでいましたが、そこから新しい物語づくりのヒントが生まれてきます。
 作品は、飛鳥時代蘇我入鹿とか天智天皇とかの背景と舞台でスタートするようです。
 「嬢はん:いとはん。お嬢さん」、「世話物:人形浄瑠璃の分類。町人の日常生活。対して時代物が、遠い過去、武家・公家社会のこと」、「台無し:すっかりだめになる。役に立たない」
 名言として、「生きるとは、絶えず死ぬものを見送ること」、「おきゃんなところ:女性が活発でかるはずみなところ」、「わしはそこにおらんが、それが、わしの内側に広がっている」、「無量無辺百千万:数が多い」、「なゆたあそぎこう:数の単位。かなり大きい」、「外題:げだい。書名、題名」
 書くことを躊躇する部分があるのですが、書くのは自由ではないかという疑問が湧きました。まず、書いて仕上げる。その作品を演じて発表できるかできないかは次の段階で判断すること。
 読んでいたら歌舞伎とか浄瑠璃を見たくなります。
 三角関係、心中、恋が中心です。
 終わりに近づくにつれて、話を最初に戻る。「硯(すずり)」の記事あり。

「三千世界」
 いきなり、筆記の文字タイプが筆タイプに変わったので、びっくりしました。(章の途中までです)浄瑠璃人形が自らの意志でしゃべります。
 「悋気:りんき。男女間のやきもち」
 小説の全体を読み終えてみて、道頓堀を舞台にして、一点集中、その場所で、物語を空に向かって高めていくイメージでした。
 この章は幻想的です。
 上演される限り、物語の登場人物は江戸時代から現代まで、命を得て生き続ける。
 「柝の音:きのね。拍子木の音」  

Posted by 熊太郎 at 05:57Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2019年08月20日

ふるさとって呼んでもいいですか ナディ

ふるさとって呼んでもいいですか ナディ 大月書店

 外見は外国人、中身は日本人、日本をふるさとと呼んでもいいですかという問い。①いいですよ②呼ぶのはあなたの自由です。だれかの許可を得るものではありません③だめですよ。①が答えになるのでしょう。
 イラン人1991年に来日した30代イラン人女性ですが、6才から日本育ちです。日本人同様の文章作成能力があります。
 子ども時代のつらい時期があります。子ども時代、日本人の子どもでもつらい時期があります。同じです。
 子どもが健やかに育つには「幸運」が必要です。
 見た目で外国人を怖いという偏見をもたないでくださいというメッセージがあります。
 いい人そうに見えるけれど、いじめる人は多いです。
 かっぱえびせんのえびの絵がむかでに見えたという思い出話には、そういう発想がないのでへーっと感心しました。
 ちょうど、イラン・イラク戦争の頃の誕生です。米軍等介入の湾岸戦争もありました。不法就労ファミリーなので、ルール違反なのはどうかという思いはありますが、未来の見えてこない難民・移民の困難さもあります。
 戦争がなければ、ずっとイランで暮らしていた人たちです。戦争や災害は人生を変えてしまいます。(後半部に、もし、日本に来ていなかったら自分は浮浪児になっていてもおかしくなかったとあります)
 別の本で、「10代の頃には負荷をかけたほうが、将来役に立つ」という記述を最近読みました。そのとおりだと思います。今は苦しくてもそれが将来役立つ時が来ます。
 今年読んで良かった1冊になりました。
 イランでは、「おしん」が人気だった。日本人役者は吹き替えでペルシャ語だったのですが、日本人はみんなペルシャ語をしゃべることができると勘違いしていた。「みなしごハッチ」を見て、日本のハチはしゃべることができると思っていた。こども時代の楽しいお話が続きます。
 来日時の暮らしぶりは悲惨なのですが、半世紀前の日本人の肉体単純労務者ファミリーの日常もそれと同じでした。読みながら思い出しました。
 イランを出国するファミリーは、もしかしたら親族とのこの世で最後の別れの瞬間です。こどもにはそれがわかりません。ご両親のご苦労が伝わってきます。
 奥さんはお金持ちのお嬢さまの出だったのに、旦那さんの商売の借金で人生が大きく変わりました。
 ようやく手に入ったテレビが日本語の先生だったをはじめとして、日本人にとっては、初めて聞くようなエピソードが続きます。
 いじめる人間もいますが、かばう人間もいます。差別する人もいるし、しない人もいます。
 ひらがな・カタカナを覚える喜びがあります。
 新入りはいつでもどこでも不安です。
 
(つづく)

 読み終えました。終わりに近い部分は理屈っぽくなって固い文脈で、最初のころのおもしろおかしい柔らかい感じがなくなっていますが、いたしかたありません。主人公である作者は6才から30代の人に成長しています。
 不法滞在外国人の扱いについては、読書の読み手としては対応のしようがありません。法令違反を容認することはむずかしい。実態もわかりません。専門機関、担当部署にお任せするしかありません。
 人種混在で社会を支え合っていくには、国籍差別問題を克服していかねばならないことと、多様化する人種構成社会のなかで、これまでの区別意識からは脱却しなければならないというメッセージはよく伝わってきました。

 小学校生活スタートにあたって、外国人こどもの日本語での学習は、学力的につらい。漢字でゆきづまります。楽しみなのは、図工と音楽と体育。
 サポートしてくれる日本人家族がいます。貴重な存在です。
 国語辞典と漢和辞典が宝物です。ファミリーに日本語文字がわかるのが、著者である小学生の娘しかおらず、彼女が学校からのお知らせや回覧板に書いてあることを解読していきます。
 黙々と辞書を引くイラン人の小学生女児です。勉強というものは、人の見ていないところで、ひとりで、黙々と取り組むものだと思っています。フードコートやファストフード店で、不特定多数の人に囲まれてテーブルに資料を広げている人を見ると、勉強をしているふりをしている人だという感想をもっています。
 イスラムの宗教のことが書いてありますが、かなり自由度が高い。信仰のしかたは自分で決めていい。
 興味深かった記述として、「日本風のお弁当をつくることができないお母さん」、「家の中で何語で話すか」、「在日28年で運転免許取得に挑戦」、「身体的特徴を無理に変えさせる校則は時代に合わない」、「初めての給料をもらって、宅配ピザでお祝いをした」、「イラン人のおとうさんが町内会長をしていたときがある。おまつりで、自分では食べられない焼き鳥をたくさん焼いて喜ばれた」、「お客さまがハッピーになるためには、まず、従業員がハッピーな気持ちにならなければならない」、「ますます多文化になる日本」、「内なる国際化」

 「CCS:学生主体の団体。世界の子どもと手をつなぐ学生の会 毎週土曜日にボランティアセンターで宿題をみてもらえる」

 様々なシーンで、人脈がきっかけになります。戸籍制度で身分保障されている日本国籍の人間とは違います。

 在留資格の取得をはばむものは犯罪歴なのでしょう。

 11年ぶりの祖国訪問のことが書いてあります。「歓迎」というものは、たいていは最初の感激だけで、時間が経つごとにお互いに嫌に思う面が出てくるものです。長年日本で暮らした彼らにとってはもうイランは祖国という感じがしない。居心地が良くない。かれらはもうイラン系日本人です。
 日本人はイラン人を見下す。イラン人はアフガニスタン人を見下す。
 
 「自分とは何者なのか=アイデンティティ」

 外国人だからバイトや就職試験に落ちているわけではなく、日本人も同じように落ちているという気づきは良かった。

 最後付近では、日本とか、日本人の良さがにじみ出てきて、日本人としてうれしくなります。  

Posted by 熊太郎 at 05:51Comments(0)TrackBack(0)読書感想文