2019年05月11日

ある晴れた夏の空 小手毬るい

ある晴れた夏の空 小手毬るい(こてまり・るい) 2019課題図書 偕成社

 タイトルは、広島、長崎、原爆投下の日をさします。
 原爆投下の是非をめぐって、ディベートするアメリカ合衆国にいる少年少女たちの話です。
 1945年8月6日午前8時15分広島市に原爆投下、同月9日午前11時2分長崎市に同じく投下がありました。
 最近読んだ原爆がらみの本は、井伏鱒二「黒い雨」、百田尚樹「日本国紀」です。
 投下の是非に関しては、戦争を終結させるためというのは建前で、アメリカ合衆国は実験をしたかったという文章を読んだことがあります。
 原子爆弾の種類が、広島市投下爆弾がウラン型リトルボーイ、長崎市投下爆弾がプルトニウム型ファットマン。さらに、外国は、満州を始めとして、もともと日本を自国のものにしたかったという説も読んだことがあります。日本が、他国の植民地になってしまうのです。日本は必要に迫られて、戦争を始めなければならない状況に追い込まれていった。そして、戦争に負ける可能性があることは日本政府・軍部上層部の人間はわかっていたという説があります。なかなか複雑です。
 26ページまで読んだところで、感想を書き始めてみます。

 メモ用紙に原子爆弾投下肯定派として、ノーマン(男性。原爆を必要悪と表現します)、ケン・カワモト(日系人男性)、ナオミ、エミリーと書きました。
 その反対側に、否定派として、ジャスミン、メイ(日系人。母親が日本人。されど日本での成育歴短く、実態としてアメリカ人)、スコット、ダリウス(男性)と書きました。
 日系人もいますが、全員、本人の意識はアメリカ人です。
 コミュニティセンター主催の公開討論会で、テーマが「戦争と平和を考える」です。ディベートです。白か黒かよりもグレーを選択する日本人には苦手な分野です。
 ディベートの内容は、2004年、平成16年頃のお話で、メンバーは高校1年生が2年生になるぐらいの時期です。アメリカ合衆国は新学期が9月で、6月から8月の夏休みの頃の出来事というお話になっています。

(つづく)

 主人公のメイが語ってくれますが、当時15歳だった彼女は、今はすでに25歳になっています。時は2014年、日本でいうと平成26年です。ですので、内容は、ふりかえりです。
 お話は、2004年5月から始まります。
 
 討論をするにあたって、「友情と意見」を分ける。
 30ページ付近は、まだ、原爆がなんなのかを知らない子どもたちです。

 公開討論会第1回が始まりました。
 戦争を終わらせるために原子爆弾を使用したという理由、動機から始まります。平和のために人殺しをするは、してはいけないことです。復讐が延々と続きます。争いは終わりません。
 アメリカ合衆国に原子爆弾が投下されたらアメリカ国民はどう思うのか。アメリカ国民は、自分たちが戦争で負けるとは思っていない。原爆を投下されることもないと思っているのか。(でも現実には北朝鮮が核搭載のロケットを撃ち込むと威嚇します)
 読みながら、アメリカ国民のアメリカ人がナンバー1という「うぬぼれ」、そして、「誤解」を含みながら討論会は始まったと考えました。
 
 原爆投下の最終判断を下したトルーマン大統領のことを考えます。彼は、人体実験をしたかった。白人は、有色人種を差別する性質をもっていて、有色人種を奴隷制度として扱っていた歴史をもふまえて、白人であるアメリカ人は、日本人を、「人間」だとは考えていなかった。彼らにとっては、アメリカ人のうちの白人の利害関係者だけが、「人間」だった。
 ドイツ人はユダヤ人を差別する。
 では、日本人はどうだろう。胸を張っていられるのだろうか。

 日本人、峠三吉という人の被ばくしたときの詩の紹介があります。
 表面と裏面、感情と理論、ごっちゃにしながら、物語は進んでいきます。
 原爆を投下しなくても、日本は8月中に降伏する予定があった。
 書中では、主人公のメイが、「落とす必要のなかった爆弾」と説明します。
 国家が、人心を操作する恐怖があります。
 国民は、国にもマスコミにも自分の心を操作されないぞという心構えが必要になります。上手な詐欺的行為にひっかかってはいけません。正確な情報を早くたくさんつかむことが大切です。
 原爆投下の当時の候補地として、広島、長崎、小倉(こくら。北九州)、新潟。
 メイは、発表という行為に、自己陶酔していっているような気がします。

 原子爆弾投下の肯定派が、ノーマン(リーダー男子。愛称スノーマン)、ケン・カワモト(ジャパニーズ・アメリカン。両親はアメリカ生まれのアメリカ育ち。日系人だが、本人の気持ちはアメリカ人)、ナオミ(ユダヤ系)、エミリー。
 原爆投下の否定派が、ジャスミン(リーダー。ハワイ生まれ、西海岸育ち、高1から東海岸、父は作家、母は画家)、メイ・ササキ・ブライアン(日系人。本作の主人公。母が日本生まれの日本人、父がアイルランド系アメリカ人)、スコット(アイルランド人。ナチス嫌い)、ダリウス(黒人)です。

(つづく)

 読み終えました。
 討論会の勝敗にはこだわる必要がないような。ひとつのことを深く掘り下げて考えることを推奨する部分もある作品です。

 白人と有色人種の問題があります。白人が、有色人種を差別するのです。
 
 真珠湾攻撃の話が出ます。
 日本は、宣戦布告をする前にハワイ真珠湾を空爆した(1941年12月8日)。卑怯者だ。これに対して、そもそも米国上層部は日本が宣戦布告することを知っていた。知っていて知らぬふりをしてアメリカ国民の憎しみを盛り上げて戦意高揚にこの件を利用した。日本からみれば、不運も重なって、宣戦布告の手続きが遅れた。
 以下、事実が正確ではないものの、そう思いこまされたという事例が続きます。ねつ造。なかったことをあったこととして混乱しています。
 原爆は、パールハーバーの罰。パニッシュメント。
 アメリカ大統領ルーズベルトは、戦争を望んでいた。終戦の年、終戦前に63歳脳卒中で死去。後任がトルーマン。
 「南京虐殺(事実誤認の議論があります)」、

 胸に響いたフレーズなどとして、「(黒人ダリウスの言葉)差別されたからといって、黒人が白人を処罰してもいいとはならない」、「国を守るために軍隊は必要」

 移民の国アメリカ合衆国ですが、東京も日本全国各地から来た日本人の移民の都市という雰囲気があります。
 アメリカは、多人種が寄り合い、手をつなぎあって、自由な国をつくると記述がありますが、トランプ政権はそれに背を向けているかのように白人社会優先です。
 書中の判断では、アメリカ人は自分を中心にして、「個人」としてものを考える。日本人は、他の人はどう思っているかと「集団」として考える。(ただ、現代の日本人は、個人単位で、ものごとを考えるように変化しています。いろいろいやなことがあって、大家族とか、濃密な近所づきあいを避ける傾向にあります)
 
 日本への原爆投下は間違いであった。

 伝承を怠ると、人間は再び過ちを繰り返します。

 調べた単語や印象に残った言葉などとして、「俳優のデンゼル・ワシントン:現在64歳。黒人、背が高い」、「ミッドウェイ海戦:1942年6月。日本の惨敗」、「国家総動員法:政府は戦争のために国民に命令できる」、「バターン死の行進:フィリピンにて、捕虜の移動時に捕虜2万2000人が亡くなった」、「442:日系人部隊。日系アメリカ人がアメリカ軍人として戦い白人アメリカ人を助けた。442連隊戦闘団」、「ユダヤ人収容所もあったが、米国には、日本人収容所もあった」、「虚をつかれる:油断していてすきを突かれる」、「日本人に対する、日本人が悪かったという教育、思いこませ」、「人はまず個人」、「(原爆投下の理由として)ソ連にみせつけたかった」、「アメリカ合衆国は南太平洋で23回も核実験を行った」、「大韓民国、北朝鮮の成立は、1948年。まだそれほど経っていない」、「2011年東日本大震災。福島原子力発電所事故発生」

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