2024年06月11日

アザラシのアニュー あずみ虫・作

アザラシのアニュー あずみ虫・作 童心社

 白い流氷の上に白いアザラシのこどもがのっているのが表紙です。
 アザラシのこどもと母親が出てくるこどもさん向けの絵本です。
 ひととおり読みました。
 これからまた最初から読んでみます。

 こどものアザラシに、『アニュー』と名前が付けられたのですが、現実社会では、野生のアザラシにおいて、(アザラシに限らず)アザラシの母親が自分のこどもに名前を付けるわけはなく、では、どうやって、その子が、自分が産んだこどもだとわかるのだろう? 不思議です。においでわかるというような話がありますが、そうだろうか。
 あんがい、母親がこどもを認識するのではなく、こどもが、母親を認識して、常に母親から離れないようにしているのではなかろうか。
 母親は、自分にくっついてくるこどもアザラシは、自分のこどもだと判断するのではなかろうか。
 そんな流れではなかろうか。
 アザラシの脳みそに記憶する領域があるとするなら、親子はいつまで親子だという記憶が残るのだろうか。あんがい、短期間で自分たちが親子であった記憶が、親子ともに消えるような気がします。
 こどもは自立して、すんだことは忘れて、自分の相方(あいかた。配偶者)をさがすような気がします。
 
 あかちゃんアザラシの体の色が、成長するにつれて変化していきます。
 黄色(おかあさんのお乳(ちち)を飲んでいる。甘くておいしいそうですが、甘くもないし、おいしいという感覚もないのが現実だと思います)→毛が白くなる(白い毛は、寒さ、冷たさから体を守ってくれる)→アザラシのこどもは遊ぶそうだけれど、何をして遊ぶのだろう。遊ぶための道具がありません→あかちゃんは、1週間で3倍の大きさになる→生まれて10日目に海に入る練習を始める(泳ぐ練習を始めます)→生まれて2週間がたち、春が近づいて、氷がとけ始めたそうです。母親は、自分だけが北極へ泳いでいくそうです。あかちゃんは、成長して毛が灰色になって、しっかり泳げるようになったら自分で北極まで来なさいだそうです→こどもアザラシのアニューに灰色の毛が生えてきました。海に入ってオキアミ(エビのような姿をしたプランクトン)を食べました。アニューは、いつまでもあかちゃんではありません。自立して自活しなければ死んでしまいます→アニューの全身が灰色になりました。流氷もだいぶ、とけてしまいました。さあ! 北極へ行こう→アニューは、外の世界を知ることになります。引きこもっていてはなんにも楽しくありません。失敗してもいいから冒険するのです。外の世界には、アニューが初めて見る生き物がたくさんいます。→シロイルカの家族に出会いました。ツノメドリという鳥たちといっしょに魚とりをしました→アニューは、3頭のシャチに襲われました。外の世界は、自分の味方ばかりではありません。自分を守るためにがんばろう→同じアザラシに出会いました。お仲間です。そのアザラシは、『トック』という名前だそうです→トックについていくと、アザラシがたくさんいる場所に着きました。サンクチュアリです(安全な地域という意味)あるいは、コロニー(生物集団の定着地)です→お母さんには会えないまま物語は終わりました。

 『あとがき』にこまかい話が書いてあります。
 タテゴトアザラシは、生まれてから2週間で親離れをしなければならないそうです。
 野生動物の世界では、食物連鎖(しょくもつれんさ。弱肉強食)という自然の流れがあるから、シャチなどの食べ物として命を終えるタテゴトアザラシのあかちゃんもいることでしょう。
 タテゴトアザラシの母親は、カナダであかちゃんを産む。そこは、安全な地域だそうです。(ホッキョクグマがいない)。
 地球温暖化で、あかちゃんが育つための海氷(かいひょう。海に浮かんでいる氷のかたまり)が減少しているそうです。
 地球温暖化をなんとしてもくいとめなければなりません。だけど最終的にはできそうもありません。これから地球はどうなるのだろう。人類にとっても生き物にとっても、ゆっくりと破滅に向かっているような気がします。
 
 ページをめくると、タテゴトアザラシの説明があります。
 タテゴトアザラシは、ごちそうを食べています。
 タラ、シシャモ、ニシン、エビ、カニなどです。お寿司みたいです。
 
 天敵は、ホッキョクグマ、シャチ、サメだそうです。襲われたらこわそうです。
 
 タテゴトアザラシは、成長するにつれて毛の色や模様が変化します。
 黄色→白→灰色に黒い点→灰色に竪琴(たてごと)に見える模様が現れます。
 
 実際には、自分のこどもに名前を付けることはないけれど、自分のこどもは、こどものにおいと声で見分けがつくそうです。
 (でも、たまには、間違えて、よそのこどもを自分のこどもと勘違いすることがあるかもしれません)  

Posted by 熊太郎 at 07:19Comments(0)TrackBack(0)読書感想文