2024年06月03日

ドアのむこうの国へのパスポート 岩波書店

ドアのむこうの国へのパスポート トンケ・ドラフト&リンデルト・クロムハウト・作 リンデ・ファース・絵 西村由美・訳 岩波書店

 19ページまでとりあえず読んでの情報収集として、どこの国のお話だろうか。
 書いた人たちのことを確認しました。
 トンケ・ドラフト:オランダの児童文学作家。1930年生まれ(昭和5年)。現在93歳。男性かと思っていたら女性でした。
 リンデルト・クロムハウト:オランダの児童文学作家。1958年生まれ。現在65歳。児童養護施設暮らしの体験あり。夜学で幼児教育について学び作家を志した。図書館勤務後、作家となった。
 リンデ・ファース:オランダのイラストレーター(イラスト(絵)を描く職業の人)。1985年生まれ。現在39歳女性。
 西村由美:翻訳者。オランダ在住歴あり。

 出てくる場所が、『マックス・ベルジェイス小学校』です。
 以下、登場人物です。
 
 ラヴィニア・アケノミョージョ役をするのが、トンケ・ドラフトとあります。『明けの明星(金星(きんせい))』みたいです。

 ラウレンゾー:児童の名前。男の子。クラス29人の小学校から、クラス10人のマックス・ベルジェイス小学校に変わってきた。いつもひとりぼっちでいる男児。ふだんはほとんどしゃべらない。なにか障害があるような書き方がしてあります。
 マンションの8階にママとふたりで住んでいる。マンションは同じタイプが2棟並んで建っている。最上階が13階である。そこから砂丘と海が見える。ラウレンゾーは、海が好きです。
 パパは3年前に家を出て行った。じぶんの国イタリアへ帰って行った。(オランダからイタリアへということでしょう)。さびしい母子家庭の雰囲気がただよっています。ママは仕事で疲れています。
 教室では、本読みの授業をしています。今教室のみんなで読んでいる本が、『追跡――ひきょう者を追って』、作者が、ラヴィニア・アケノミョージョという人です。担任のトム先生のお気に入りの作家です。
 主人公の少年エドゥが、命がけで森を進んでいく。少年は牢獄の鍵を探している。少年は、無実の罪で牢獄に閉じ込められている父親を救い出すために、父親が閉じ込められている牢獄の鍵を探している。敵がいっぱいいる。

 ロベルトとイゴール:ケンカしている。

 テヤ:机の上に座っている。

 フランス:トイレに行った。

 トム・ヴィット先生:クラス担任の先生です。

 メーリー:学校は楽しくなくちゃと言った。

 イドゥナ:イドゥナとクリスティンは、教室の中で、特別な座席を使っています。なんというか、この学校自体が、障害児のための学校のような雰囲気がありますが、今は、最初のほうを読んでいますが、まだ明確にはそのことを書いてありません。イドゥナは、人からいやなことを言われるとすぐに泣きだすそうです。
 教室には10人用の普通の席がある。クラスの人数は10人ですから、そのうちの8人は普通の席に座っていて、イドゥナとクリスティンは、しきられた小さな席に座っているそうです。壁を目の前にして座っているそうです。先生を見るわけではなく、壁を見て授業を受けています。不思議です。

 クリスティン
 ヨリス
 バルト

 イワン・オソロシ:黒猫の名前です。

 この本のタイトルは、『ドアのむこうの国へのパスポート』です。
 本の冒頭に、本の表紙にある絵を見てくださいと読み手に対して指示があります。
 少年が家のドアを開けて、顔と右腕だけをドアから出して、外のようすをうかがっています。
 玄関の階段を黒猫がおりいく途中です。
 ドアの向こうに別世界があるようです。このパターンは、『ナルニア国物語』とか、『ハリーポッター』とか、『不思議の国のアリス』とか、『クマのプーさん』とか、『ドラえもんのタイムマシンとかどこでもドア』とかと似ています。こどもさん向けの児童文学です。

 パスポート:国家が、その人の国籍と身分を証明する証明書。公文書

 さて、読みながら感想をつぎ足していきます。

 ドア:ドアを開けると、別の世界がある。本を読むことは、ドアを開けることと同じことというお話があります。

 先日読んだ本と同じ言葉が出てきました。
 『ディスレクシア』です。読字障害。難読症。読み書き障害。
 『宙わたる教室(そらわたるきょうしつ) 伊予原新(いよはら・しん) 文藝春秋』
 主人公の柳田岳人(やなぎだ・たけと)に学習障害があります。文章を読めない。ディスなんとか。(読み進めていたら31ページに『ディスレクシア』という言葉が出てきました。文字の読み書きが困難。俳優のトム・クルーズ、アメリカ大統領だったブッシュ、映画監督のスティーブン・スピルバーグがディスレクシアですという記事を読んだことがあります)
 文字のフォント(デザイン)で、ディスレクシアの人でも文字や文章を読めることがある。
 
 こどもたちのほとんどは、スクールバスで通っている。
 ラウレンゾーは、母子家庭で母親が働いているので、自分でサンドイッチのお弁当をつくってきて教室で食べる。
 児童たちは、小学校の高学年でしょう。日本の制度だと、5年生とか6年生とか。
 メーリーが言います。『……この学校は、ばかとへんな子の学校よ』
 
 こどもたちが、先生の指導のもと、本の作家に手紙を書きます。『追跡――ひきょう者を追って』、本の作者が、ラヴィニア・アケノミョージョという人です。女性です。トム先生のお気に入りの作家で、どうも先生とその女性作家は知り合いです。
 児童のうち、ふたりだけが、作家と作家の家で会ってくれることになりました。
 ラウレンゾーとテヤが、ふたりだけで作家宅を訪問することになりました。
 
 学校でともだちがいなと、かなりさびしい思いをすることになります。
 ひとりでも話ができるともだちがいてほしい。
 そのために、遊びがあります。
 遊びは、ともだちづくりをするためにあります。
 いろんな遊び方を覚える。
 いろんな人と接してみる。
 気が合う子を友だちにする。

 オランダらしい。交通手段に、『渡し船』があります。オランダアムステルダムは、運河の街です。
 渡し守(わたしもり):おじいさん。いっけん、こわそう。歯が黄色い。
 乗船料が、『2ユーロ50セント』とあります。これを書いている今日の日本のレートだと、1ユーロが、168.83円です。
 
 作家ラヴィニア・アケノミョージョの家の所在地が、『外見と実体通り 76番』というところです。変な地名です。外見(がいけん):見た目。実体:存在の基本。

 クロウタドリ:ヨーロッパほかに生息するツグミの一種。日本には迷い鳥として来ることがある。黒い鳥。くちばしは黄色い。

 作家ラヴィニア・アケノミョージョ:背の高い女性。はなやかな色のワンピースを着ている。ストッキングは白い。サンダルをはいている。指に、青い石の大きな指輪をつけている。

 作家ラヴィニア・アケノミョージョの家にある部屋のドアに、『KR』という文字がはってある。その部屋には、ちゃんとしたパスポートをもっている人だけが入ることができる。
 ドアのむこうには、『コスモポリタン連邦』がある。コスモポリタン連合は、何十もの国からできている。それぞれの国に入るためには、それぞれの国の許可(ビザ。入国許可証。査証)が必要になる。
 コスモポリタン:世界のどこででも、だれとでも、うちとけられる人のこと。
 ドアの色が変わるらしい。最初のときはみどり色だった。次のときは、青色だった。その後、赤色、次に黄色に変化します。大使が、ドアを塗っているらしい。虹の七色があるらしい。(せきとうおうりょくせいらんし)赤橙黄緑青藍紫です。
 
 イワン・オソロシ:黒猫の名前。

 大使:パスポート発行の決定権者。

 『小さき門をくぐれぬ者が、パスポートを送る』(まだ、この言葉の意味は明かされません)
 しんぼう強くまっていれば、答えはしぜんにやってくるそうです。

 (イワンという黒い猫は、このあと、しゃべるんじゃないかと思いつきました。さて、どうなりますか)

 『送り主 コスモポリタン連邦大使代理 ラヴィニア・アケノミョージョ』
 パスポート申請書あり。
 この申請書は、12歳より年上の人は対象外とあります。
 なんだか、ピーターパンのお話みたい。こどもだけが対象です。おとなにならない少年少女です。
 パスポート申請書に書く変なことです。声の色、目の数、職業など。ビザを希望する国の名前というのもありますが、そもそもどんな国があるのかは教えてくれません。
 
 パスポートは10通、児童全員分が交付されました。

 コスモポリタン連邦は、有名な子どもの本の国々である。
 ビザ(入国許可証)としての国々です。
 『カラスが海にぷかぷかういている島のビザ』、本は、なぞなぞの答えとしては、『わたしたちの島で』です。スウェーデンの小さな島で冒険する子どもたちの話だそうです。本当の本の題名は、『ウミガラス島』だそうです。ややこしい。
 『木の枝のあいだに住める国のビザ』はなんという本か。『マジック・ツリーハウス』という本です。
 『ひょろひょろと細長い人たちの町のビザ』、答えは書いてありません。ラウレンゾーが持っていた本ですが、パパが家を出たときにイタリアへもっていってしまいました。
 『割る口(悪口のこと)をいいあいっこしない人たちの国のビザ』、それは、ヨリスが考えたビザです。
 この物語ではときおり、両親の不和についてふれます。
 『むずかしいことをしなくちゃならない学校がない国のビザ』
 『おねえちゃんのいない国のビザ』
 『わたしたちみたいな子どもだけの国のビザ』
 『楽しいことだらけの国のビザ』
 『長い鼻の国のビザ 一年に十回有効』
 
 ラウレンゾーのパパの話が出ます。パパは、ママとケンカしたのか、家を出て行ってしまいました。
 新しいママとふたりのこどもたちがいるそうです。ふたごだそうです。
 パパは、オランダから、イタリアへ行ったそうです。

 ラヴィニア・アケノミョージョが7歳のときに、ラヴィニア・アケノミョージョの父は、船で海に出かけて、それっきり、父には会っていない。やさしい母はいた。
 ラヴィニア・アケノミョージョは言う。『……父親ってみんな、自分の子どもが好きなのよ』(そうともいえないと熊太郎じいさんは思います)
 
 『ピノッキオの冒険』、お父さんにうそをつくと、鼻が長くなる木の人形の話です。

 『大使』は誰なのか。
 作家であるラヴィニア・アケノミョージョが大使ではなかろうか。
 
 渡し守が言います。
 『人はいそいでいなければ、自分の目でそれを見ることができる』

 ラウレンゾーは、ラヴィニア・アケノミョージョと家を出ていたパパに手紙を書く。

 大使(アムバサドゥーア。オランダ語でしょう):ambassadeur

 わたし船に黒いネコのイワン・オソロシが座っていた。

 本のタイトルとして、『メネッティさんのスパゲッティ』

 『頭がぐるぐるする』
 
 メナウレス・ヴィット:トム先生の父親

 クラス全員10人がビザをもつことができました。
 トム先生が同伴者として、こどもたちといっしょにコスモポリタン連邦へ行けることになりました。
 訪問は、あすの午後2時です。
 
 渡し守にはちょっとした秘密がありました。(ここには書きません)

 ドアは、虹の七色に塗られていました。
 銀色の鍵でドアを開けました。
 コスモポリタン連邦へ続く通路が見えました。
 通路の先に階段がありました。
 階段をくだって、階段をのぼります。
 黒いドアがありました。
 金色の鍵で黒いドアを開けました。
 ドアのむこうには、大きな鏡がありました。
 (ここからさきは、日本人とオランダ人の国民性の違いなのか、文章を読んでもピンときません。オランダ人には理解できて、日本人にはちんぷんかんぷんな気がします)
 
 ラウレンゾーにイタリアのパパから手紙が届きました。
 (このあたりも、文章を読んでいて複雑な気持ちになりました。息子のことを思うのなら、再婚はしないし、(結婚を継続するし)、再婚後の妻との間にこどもももたないでしょう)
 なにかしら、消化不良な気持ちで読み終えました。

 本の末尾には、作者のコメントがのっています。
 作者ふたりの出会いとそれからのことです。
 長い付き合い、互いに親友だそうです。
 
 こどもに本を読みましょうと応援メッセージをおくる本でした。
 コスモポリタン連邦は、本を読む世界です。
 
 訳者あとがきがあります。
 この本は、2023年4月に発行されています。
 オランダ人ふたりの作家について書いてあります。
 トンケ・ドラフト:女性。現在92歳とあります。
 リンデルト・クロムハウト:男性。現在64歳ぐらいでしょう。
 ふたりの出会いは、リンデルト・クロムハウト氏が19歳のときだったそうです。
 長い付き合いです。
 その出会いのときのことが、この物語の下地になっているようです。  

Posted by 熊太郎 at 06:39Comments(0)TrackBack(0)読書感想文