2019年12月24日

ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治

ケーキの切れない非行少年たち 宮口幸治(みやぐち・こうじ) 新潮新書

 売れている本です。児童精神科医、医療少年院勤務歴ありの著者です。
 これから読み始めます。非行の原因に迫る内容です。意外な理由があるというメッセージがあるようです。
 読み始める前に、タイトルから、ケーキをだいたい同じ分量の三等分に切って分ける能力がないこどもたちと理解します。学力がないのかあるのかわかりませんが、ものの分量の感覚がない脳の病気のような状態だろうと推測します。
 「認知機能:記憶、思考、理解、計算、学習、言語、判断」に問題があるそうです。
 病院では、根本的には治せない。投薬治療だけしかできないとのこと。

(つづく)

 図の模写ができない。
 ふまじめとかやる気がないとかの性格・資質ではなく、もともと能力がない。
 非行行為をした理由を説明する力が本人にない。
 深刻な雰囲気です。
 外見ではわからない。むしろ弱々しくて、線が細い。ふだんは、おとなしく、無口。人なつこい面あり。あいさつはできる。
 九九ができない。日本地図が理解できない。日本国首相の名前が言えない。日本国首相の名前が、「オバマ」という返答にはあぜんとしました。学校では、いない者として扱われていたのではないかと読みながら思ってしまいます。不登校、暴力、万引きが始まります。

 今年読んで良かった1冊になりそうです。ぜひ、読んでほしい1冊です。

 犯罪被害者はたまりません。やられ損です。補償も期待できません。非行行為が実行される前に、加害者予備群に対して、粘り強い「教育」が必要であると説いておられます。
 
 非行少年たちが見ている風景は、事実とは異なる。彼らに彼らが見えている事象の絵を書いてもらうと事実とは異なっていることがわかる。

 こどものころの本人たちはだんだん周囲から忘れられた存在になっていく。

 人間の能力は、読み書き計算から始まることがわかります。そうすると、乳幼児期の絵本の読み聞かせは重要です。「見る・聞く」が重要とあります。

 以前、殺人行為をしたこどもの親の手記を読んだことがあります。こども本人に理由を何度たずねても、「人を刺してみたかった」という言葉がくりかえし返ってくるだけで、根本的な理由がわからず、とほうにくれたというものでした。この本を読むと、その理由が見えてきます。
 殺人、暴力、盗み、詐欺、契約不履行や未払い、不作為、中毒、そういうことをすると、自分や親族があとさきどうなるのかを考えず、感情のままに不可解な行為をして、周囲に損害を与えてもケロッとしている人がいます。本人には、いけないことをしてしまったという自覚も理解もありません。心からの謝罪もありません。同じ事が繰り返されます。この世には、そういう人が、いくらか存在するということを理解して対応をしていかなければならないと気づかせてくれる本です。

 高学歴だからといって、認知度も高いわけではないようです。ペーパーテストを解く力と認知度は比例していないようです。

 読んでいると、人間というのは、むずかしい生き物だと思えてきます。

 刑務所が福祉施設のようになっているそうです。

 「ほめる」、「話を聞いてあげる」は、その場限りの対応でしかない。
 勉強ができない子は、勉強ができるようにしてあげなければならない。

 人間は不完全な生き物で、自分自身と他人の不完全な部分を許せる人間になることが、平和につながると理解しました。

 読んでいて気づいたことがあります。それは、「鏡」です。神社に行くと鏡がまつられています。自分の姿を見なさいということだと思います。本では、とある駅のホームの壁に鏡が設置された。それまで続いていた飛び込み自殺が減ったとあります。鏡で、自分の姿を見て、自分が今なにをしようとしているのかを脳で理解できたとき、人間は自分の行動にブレーキをかけることができる。自分で自分をなんとかしようと思う気持ちの芽生えが期待できます。たとえば、殺人行為をしようとしている人の目の前に鏡があって、鏡に自分の姿が大きく映し出されているのを見たとき、行為を思いとどまることができる気がします。

 犯罪心理学とか、犯罪者行動学の本でした。犯罪防止のために、また犯罪者の矯正のためにどうしたらいいのかを考える本です。

 犯罪が起こる原因が脳の損傷にあるようです。考えてみれば、同じような恵まれない悲惨な家庭環境で育ったとしても全員が犯罪者になるわけではありません。たいていの人はがんばっています。

 印象的だった言葉の趣旨などとして、「少年院版特別支援学校」、「苦手なことをそれ以上させないという行為は危険」、「更生しての社会復帰は不可能ではない」、「非行少年たちは、学ぶこと、認められることに飢えている」、「気持ちにブレーキをかけるトレーニング」、「わかったふりをしている」

 調べた言葉などとして、「騙し取る:だましとる」、「自尊感情:自分を適切に評価して受け入れて自分を好きになる感情。自信」、「(少年)鑑別(所):かんべつ。よく調べて、種類、性質を見分ける」  

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2019年12月23日

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか ナイツ 塙宣之

言い訳 関東芸人はなぜM-1で勝てないのか ナイツ 塙宣之(はなわ・のぶゆき) 聞き手 中村計 集英社新書

 50ページぐらいまで読んだところです。今年読んで良かった1冊になりそうです。
 最近お笑い番組に興味が湧いて、M-1ぐらんぷりのDVDを借りて来て観ています。仕事優先で20年間ぐらいあまりテレビを観ていなかったので新鮮です。だから、芸人さんのことをあまり知りません。

 うまいだけでは、M1でチャンピョンにはなれない。コンテストでのその瞬間に、「芸人としての強さ」がいると書いてあります。
 
 本人の芸人志望の動機がおもしろい。小学4年生の時に「ウンコの歌」をつくったときから始まります。本人は、お笑いを求めることを「病(やまい)」と称しています。
 本気モードでできあがっている本だと感じました。

 第1回大会参加者1603組が、第10回で4835組まで増加した。本人いわく、「M1がなかったら芸人を辞めていたかも」人材発掘のためにコンテストは必要です。

 M1ぐらんぷりに4年間のブランクがあったことは知りませんでした。(だから、DVDがレンタル店においてないのかと気づきました)

 これから、関東芸人の自分たちが優勝できなかった言い訳をするそうです。

 いいわけのひとつは、漫才には関西弁が合うということです。いろいろ書いてあります。「『なんでやねん』は魔法の言葉」納得できます。

 「しゃべくり漫才」、「コント漫才」。ボケとツッコミというのは、わたしには実際の漫才を見ていてもどっちがどっちなのかよくわかりません。両方を演じているコンビもいるように見えます。知っていてとぼける、あるいは、知らずにとぼけるのが、ボケのほうとも思えません。
 知らないことが多いので、勉強のためのテキストを読むつもりで読んでいます。「NGK:なんばグランド花月」、「NSC:吉本総合芸能学院」

 上方漫才は、きちんとしたかっこうをする。スーツとネクタイなど。

 「練習しすぎないようにする」、漫才はお客さんといっしょにつくっていくもの。無観客の前でやっても得るものがない。

 コンビだからといって、必ず仲がいいわけでもない。

 調べた言葉として、「あざとい:抜け目なくあくどい」、「色物:寄席で、落語と講談以外の芸。東京では漫才が色物。関西では逆」、「漫才は、東京では靴下姿でやる。関西では、靴を履いてやる」

 愛知県出身のスピードワゴンは異色。漫才の定義が狭かった時代だったので彼らの漫才が受け入れられないことがあったことは残念とのこと。

(つづく)

 「M-1は100メートル走」の説明には納得します。
 ひたすらダッシュの内容のなかで、2010年のスリムクラブは逆転の発想でおもしろかったという部分に共感します。DVDで観ました。無言の時間帯がとても長かった。でも、大笑いできました。新鮮でショックを受ける漫才でした。本人たちの個性が放つ魅力が大きかった。
 
 M1は、持ち時間が、一回戦で2分間しかないそうです。短い。二・三回戦で3分間、以降が4分間だそうです。
 参加者の数が多いからしかたないのでしょう。テレビ的です。

 ネタ=よくできている話。だれでもできる。いろんな人が演じることができる。フリートークとは異なる。(このへんは、簡単には理解できそうにありません)

 調べたことなどとして、「ギャロップ:林健 毛利大輔 吉本興業」、「ミキ:昴生こうせい、亜生あせい 兄弟 吉本興業」、「内海桂子師匠:現役、97歳」、「自家薬籠中:じかやくろうちゅう。いつでもすきなときに使うことができる。自分の薬箱の中にある薬のたとえ」、「隘路:あいろ。狭くて通行困難な道」、「貶める:おとしめる」

 著者は、アメトークで、運動が苦手な芸人というコーナーで出ています。運動のできなさがとても笑えるのですが、この本では、漫才を学者さんのように分析されておられます。人には、複数の面があると知るのです。

 ぼけとつっこみと客席が三角になって雰囲気をつくって笑いを生み出すということを強調されています。共感します。客席を意識しないと漫才ではなく、コントになるそうです。

 いろいろ読んでいると、阪神巨人さんというのは偉大であることがわかります。

 志望動機が、幼稚園の時にうんちをもらして、ばかにされて、いじめられて、そのストレスをドリフターズや俺たちひょうきん族で解消して、自分も笑いをとる人になりたいと考えて、「うんこの歌」をつくって、人気者になって、小学生で、お笑い芸人になることを決心したとあります。
 だから、お笑い芸人の仕事を苦しいとは思わないそうです。むしろ楽とあります。
 
 上達のコツは、とにかく1本でも多くのネタを書くこと。
 台本は細かく書かない。箇条書きとおおまかな流れでいい。
 自分らしさをだすために、M1で優勝をめざさない。
 
 関西弁とか江戸弁のところを読んでいるときに、フーテンの寅さんの口上(こうじょう。型にはめた口頭伝達)を思い出しました。

 言葉の学習本のようです。

 本音がいっぱい書いてあるいい本です。

 準決勝、そして、決勝にもってくるネタがむずかしいそうです。M-1は新しいものを求めているのですが、新しすぎるネタを打つと空振りしてしまう。かといって、古いネタでは、飽きられる。

 印象に残ったフレーズなどとして、「漫才において、笑いと時事ネタは相性がいい」、「笑いは庶民が権力者に対抗するために身につけた最強の武器」、「言い間違え漫才」、「練習しなければならないネタは、機械っぽくなってしまう」、「霜降りは、お客さんに喜んで欲しいという思いが体全体からあふれ出ていた」

 芸人さんは、学校時代にいじめにあっていた人が多い。芸人には、笑いでいじめをはねかえす強さがある。

 いい本でした。  

Posted by 熊太郎 at 07:18Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2019年12月22日

M-1ぐらんぷり 2010 DVD

M-1ぐらんぷり 2010 DVD

優勝は、笑い飯でした。長年の夢がかなってよかった。

「カナリア」 安達健太郎 ポン溝黒 606点
 音楽ネタらしく、著作権の影響があるので、ほぼカットされていました。なので、なかみがわかりません。

「ジャルジャル」 後藤淳平 福徳秀介 606点
 コンビニの店員とお客さんです。ほかのコンビも含めて、素材にコンビニが多い。と思いきや、漫才の練習の話に話題が転換します。なんだかよくわからない雰囲気になりますが、動作とかけ声がおもしろい。コント風です。くだらないけれど、おもしろい。

「スリムクラブ」 真栄田賢 内間政成 644点
 不思議な漫才でしたが、新鮮、意外性があって笑いました。「この世で一番強いのは…放射能」のパターンで、お互いに声を出していない間が長くて、ふつうとは、真逆の漫才でした。設定上、初対面なのに、知り合いのような話し方をする真栄田さんでした。

「銀シャリ」 鰻和弘(うなぎ・かずひろ) 橋本直 627点
 落ち着いた漫才でした。アルファベットの歌が素材です。

「ナイツ」 塙宣之 土屋伸之 626点
 スポーツネタです。老練な話術でした。

「笑い飯」 西田幸治 哲夫 668点
 サンタクロースとトナカイの合体、ケンタウロスみたいな動物真似。おもしろい。ただ、キャラクターを交互に演じるパタ―ンに少し飽きてきました。

「ハライチ」 岩井勇気 澤部佑 620点
 こどものころなりたかったものとして「刑事」、いろんな刑事が、だんだん変化して刑事から離れて言葉いじり、言葉遊びになっていきます。バカリズムさんの「トツギーノ」を思い出しました。

「ピース」 又吉直樹 綾部祐二 629点
 初めて観ました。言葉のアクセントとかイントネーションへのこだわりです。吸う、なめる、速く。おもしろかった。

「パンクブーブー」 佐藤哲夫 黒瀬純 668点
 なにも起こっていないのに、仮定の話で笑わせる手法です。こちらの予想が当たらない話術です。おもしろい。

〇決勝
「スリムクラブ」
 お葬式に知らない人が来たという状況設定でした。おかしかった。

「笑い飯」
 おもしろい。

「パンクブーブー」
 先ほどと同じパターンだったので飽きました。  

2019年12月21日

M-1ぐらんぷり2009 DVD

M-1ぐらんぷり2009 DVD

 優勝は、パンクブーブーでした。

「ナイツ」 塙宣之 土屋伸之 634点
 言葉遊び、言葉いじりです。いろんなパターンがあっておもしろかった。

「東京ダイナマイト」 ハチミツ二郎 松田大輔 614点
 総合格闘技のヒーローインタビューです。松田選手というのを知らないので自分にはわからない部分が多かった。

「ハリセンボン」 近藤春菜 箕輪はるか 595点
 近所づきあいを密にやりたいというネタで、煮物のおすそ分け。近藤さんは怒り芸です。演劇を見ているようでした。涙がこぼれた煮汁のところがおもしろかった。

「笑い飯」 西田幸治 哲夫 668点
 最高におもしろかった。爆笑です。ひよこを売っていたから始まって、お父さんにも本人にも見えないインコにいって、そして、鳥人(とりじん)の話です。顔が鳥で、体が人間です。おもしろい。愉快でした。シューベルトの魔王、チキン南蛮(出席番号に関連させて)、目やにをあげよう。期待をもたせて期待を裏切るというリズム。でばしんいち。自分たちが演じていておもしろかったという終わった後の哲夫さんの言葉どおりです。発想がいい。

「ハライチ」 澤部佑 岩井勇気 628点
 埼玉県上尾市原市出身だからハライチというのは知りませんでした。ペットを飼う話がどんどん発展して、ペット以外のことに変化していきます。ナイツと同じ世界です。言葉遊びです。

「モンスターエンジン」 西森洋一 大林健二 610点
 この仕事だけで食べて行けるようになったので、次の目標は、「結婚する」から始まります。妻役を男で演じるのでわかりにくさがありましたが、笑えることは笑えました。ストレスいっぱいの奥さんを男の態度で演じる内容でした。

「パンクブーブー」 佐藤哲夫 黒瀬純 651点
 早く売れてボロアパートから引っ越したいというネタです。TVの音が壁が薄くて筒抜けで、隣人トラブルのお話です。錬金術師とか万引き主婦の話の部分が笑えました。言葉と動作で笑いづくりです。時間のムダの部分も良かった。独特です。

「NON STYLE」 石田明 井上裕介 641点
 たしか前回の優勝者でした。今回は、敗者復活からの勝ち上がりです。ヤンキーマンガ、かさぶた、ファンキーなブス、断らぬ、一輪車、おもしろい。後半、話題をコロコロ変えるのが、ぶつぶつ話が切れているような感じで聴きずらかった。

(決勝)
「NON STYLE」
 時代劇。おもしろい。言葉と動作で、「みねうち」のいろいろなパターンでした。

「パンクブーブー」
 仕事以外で人生の楽しみ方。趣味です。陶芸入門で、入門希望者と有名陶芸家とのやりとり。皿がまじでつぼだ。言葉あやつり芸です。口、閉じろ。ここがいちばんうちから近いんで。どちらかといえば、わたしは、NON STYLEのほうが好みでした。

「笑い飯」
 野球のキャッチャーと審判のケンカ。交互に交代しながら。おもしろかった。途中で、ラグビーに変わってしまったのはマイナスでした。ネタがふたつになってしまいました。

*パンクブーブーの完全勝利でした。NON STYLEは優勝経験者ですし、消去法だったのかと思いましたが、審査員は、絶対の自信をもってパンクブーブーに投票したそうです。
 優勝インタビューで、パンクブーブーの現在の月給が13万ぐらいという話は現実味がありました。  

2019年12月20日

「死ぬんじゃねーぞ!!」 中川翔子

「死ぬんじゃねーぞ!!」 中川翔子 文藝春秋

 サブタイトルは、「いじめられている君はゼッタイ悪くない」です。
 私立中学時代にいじめにあった著者による励ましのメッセージです。

 録音を文章化してあるような文脈です。「ああ、生きててよかった」という言葉に救われます。
 中学は不登校、卒業式は出席せず。通信制の高校に通ったという経歴です。
 読んでいると、学校も教職員も信頼できません。学校という法人、教職員という個人は、隠蔽(いんぺい。策略をもって事実を伏せる)します。関係者同士の馴れ合い優先と責任逃れをしたいという一面があります。組織と職員個人を守ることが彼らの命題(最重要の課題と組織目標)です。
 
 「オタク(著者の場合、絵ばかり描いている)」とか、「キモイ(著者の場合、同級生から要求されて、急遽祖母からもらった和紙のノートをプリクラ帳にして、ひとりプリクラを貼って見せた)」が、いじめの発端になっています。

 教室には、ボスがいて、ボスは、自分になびかない人間を気に入らないから、仲間はずれにします。

 被害者には、相談相手がいない。ともだちや先生や親きょうだいなどの親族の姿が見えません。

 本の帯には、「言葉と漫画で綴る」となっていますが、同じ内容なので重複です。どちらかひとつでよかった。どうしても漫画を描きたかったという気持ちは伝わってきます。漫画を描くことが好きなのです。漫画だと自分の気持ちを表現しやすいのでしょう。

 ちょっと、気になったのは、自分の世話は、だれかがしてくれるはず、「察して欲しい」という甘えがあるような。親には遠慮してモノを言っていません。人間は、言ってもらわなければ、相手が、何を考えているのかがわかりません。あうんの呼吸とはいいますが、それは、たまのことであって、家族でも夫婦でも、相手がだれであっても言葉で意思表示をしてもらわないと、相手が何を考えているのはわかりません。「察する文化」は無理です。

 教師自身がこどもの頃にいじめの加害者の立場にいた人だと、児童や生徒にとっては最悪でしょう。

 学校が、集団生活についてくることができないこどもを排除する場になっています。

 小学3年生のときに病気で亡くなったおとうさんが、天国から守ってくれている部分もあります。

 学校生活をうまくやっていけなくても、社会ではやっていけるということはままあります。学校内での強制的な人格の標準化指導のほうがきつい。
 
 インタビュー記事があります。青春時代に歌に助けられるということはあります。

 一日中、その場、その場に合わせて、こどもが、キャラを演じるなんて、こどもにとって、負担であり、苦痛です。いつかは、心の糸が切れるときが来ます。

 学校には行かなくてもいいという雰囲気があるのですが、学校は行ったほうがいい。こどもが学校に行かないと言ったら親はつらいです。
 こどもには負けてもいいから対戦相手とは歯を食いしばってでも闘ってほしい。腕力にしても学力にしても勝負してみると案外被害者の立場の人間のほうが勝ったりもします。

 学校のトイレで時間をつぶすのはつらい。

 言いたいことは、半分の100ページあたりまでで、言い尽くされた感があります。

 まるで、「歌」を読んでいるような文脈でした。
 ふつう、人は、死にたくない。長生きしたいと思うもので、それが逆に、死にたい、死にたいと訴えるのは、悲しい。

 調べたこととして、「いじめ防止対策推進法:2013年、平成25年制定。滋賀県大津市の中学2年生自殺事件がきっかけ。学校、行政の責務。いじめの定義といじめのない学校生活をめざしての決め事。保護者への伝達」

 心に残ったフレーズの趣旨などとして、「大好きなことをやめたら、「わたし」は、「わたし」でなくなってしまう」、「逃げたのではなくて、違う道を選択したと考える」、「いじめはなくならないけれど、いじめ自殺はなくせるかもしれない」、「人間関係において、どうしても合う、合わないという相性はある」、「理性が育つまでは、お互いに傷つけあうという過程を省けない」、「学校以外の快適な居場所をつくる」、「インターネットによる在宅通学を認める」、「SNSには、メリットとデメリットがある」、「LINEやツイッターはいじめが発生しやすい場所になる」、「いまの学校には、いじめを引き起こす仕組みがある」、「30代になってから、ともだちといちばん遊んでいる」、「十代の暗かった時代が三十代の今の明るい時代につながった。十代の時代は無駄ではなかった」
  

Posted by 熊太郎 at 06:32Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2019年12月19日

カツベン

カツベン

映画を見に行く前 URPRESS UR都市機構の情報誌 ユーアールプレス 2019Vol59
 (本を注文したときにいっしょに無料で送られてきたので)
「記事 成田凌(なりた・りょう)」
 映画カツベンを観に行くつもりなので、主演俳優さんの記事についてまずは感想を書きます。
 無声映画時代の活動弁士を主人公にした映画だそうです。染谷俊太郎役だそうです。
 映画は今から100年前の設定だそうですから、1919年、大正8年です。90代の人がたくさんいる現在の日本ですから生き証人がいることでしょう。
 世界的には、1918年に第一次世界大戦が終わって、次の戦争に向かっていくような軍事の不穏があります。日本では、大正文化の華やぎがあるような。
 関東大震災が1923年です。大正12年です。
 成田凌さんが習った活動弁士の先生「坂本頼光」という方は、ご老人かと思ったら若い人だったのでびっくりしました。100年近く前の現役活動弁士の方だと誤解しました。
 もうひとつの誤解は、弁士の人は、男性の人間の声だけをやると思っていました。女優の声もやるし、動物、ナレーション、全部自分の声で表現するそうです。
 ノンストップエンターテイメントなので、スピード感あふれる喜劇なのでしょう。楽しみです。
 「いろいろな人の人生を何回も味わえる」というのは、役者さんの醍醐味(だいごみ。おもしろさ)としての言葉です。



映画を観に行ったあと カツベン 邦画 映画館

 平日昼間のためか、映画館には、お年寄りを中心におおぜいの人が観に来ていました。
 白黒映像から始まります。1915年、大正4年です。
 撮影風景では、声の録音がないので、役者はみんな「いろはにほへと」とか「ちりぬるをわか」と言うだけです。おもしろい出だしでした。
 「ぱいのぱいのぱい」の音楽も久しぶりに耳にしました。
 活動大写真、セリフのアテレコ(声の割り当て)は、ひとりだけでやると思っていたら、ひとりだけのときもあるし、男女、こどもも入れて複数のときもあることがわかりました。
 冒頭からしばらくは子役さん男女の演技で、NHK朝ドラのようでした。子役さんは二人とも達者な演技で感心しました。8歳の設定の男の子の口上(こうじょう。型にはまったものの言い方)がすばらしかった。
 3人組の生バンド(三味線と太鼓(鳴り物つづみなど)とクラリネット)が良かった。
 引っ越しのサカイのコマーシャルの人徳井優さんの演技が、なかなかおもしろかった。映像と弁士と観客と音楽担当で、映画館のなかで喜怒哀楽の心にしみる雰囲気をつくるという創作活動状況がいい。
 最後のほうに出てきたいろいろなフィルムをつないでの手法は目から鱗が落ちる思いでした。
 自転車、リヤカー、人力車の追いかけっこもおもしろかった。
 伏線として、「キャラメル」、それから「クモ」
 うまい。おもしろい構成だと思いました。
 ただ、前半は眠たくなることもありました。笑いの連続の映画だと思って観に来ましたが、まじめな映画でした。
 ときおり、ドリフターズのコント8時だよ!全員集合!みたいになるところが笑う場所でした。たんすの引き出しのところは館内で大笑いが起きていました。
 下ネタ、エロの部分は、おもしろいのですが、あまり見たくはありませんでした。
 後半に向かって、笑いが大きくなりました。ただ、なにかが足りない。そう感じた映画でした。そのなにかがいまだにわからないのですが、なにかが足りないのです。ひとりの人間の考えでこだわってほかの人の意見をとりいれずにできあがっているのか、あるいは、逆に、おおぜいの人間のアイデアを取り入れすぎて、まとまりがとれなくなっているのか、どちらかなのです。バランスがとれていないのだと感じるのです。
 得をしたなと思うのは、主人公染谷俊太郎役の成田凌さん、相方の栗原梅子役の黒島結菜(くろしま・ゆいな)さんの声当てはさすがでした。おふたりとも声がきれいです。