2019年12月20日

「死ぬんじゃねーぞ!!」 中川翔子

「死ぬんじゃねーぞ!!」 中川翔子 文藝春秋

 サブタイトルは、「いじめられている君はゼッタイ悪くない」です。
 私立中学時代にいじめにあった著者による励ましのメッセージです。

 録音を文章化してあるような文脈です。「ああ、生きててよかった」という言葉に救われます。
 中学は不登校、卒業式は出席せず。通信制の高校に通ったという経歴です。
 読んでいると、学校も教職員も信頼できません。学校という法人、教職員という個人は、隠蔽(いんぺい。策略をもって事実を伏せる)します。関係者同士の馴れ合い優先と責任逃れをしたいという一面があります。組織と職員個人を守ることが彼らの命題(最重要の課題と組織目標)です。
 
 「オタク(著者の場合、絵ばかり描いている)」とか、「キモイ(著者の場合、同級生から要求されて、急遽祖母からもらった和紙のノートをプリクラ帳にして、ひとりプリクラを貼って見せた)」が、いじめの発端になっています。

 教室には、ボスがいて、ボスは、自分になびかない人間を気に入らないから、仲間はずれにします。

 被害者には、相談相手がいない。ともだちや先生や親きょうだいなどの親族の姿が見えません。

 本の帯には、「言葉と漫画で綴る」となっていますが、同じ内容なので重複です。どちらかひとつでよかった。どうしても漫画を描きたかったという気持ちは伝わってきます。漫画を描くことが好きなのです。漫画だと自分の気持ちを表現しやすいのでしょう。

 ちょっと、気になったのは、自分の世話は、だれかがしてくれるはず、「察して欲しい」という甘えがあるような。親には遠慮してモノを言っていません。人間は、言ってもらわなければ、相手が、何を考えているのかがわかりません。あうんの呼吸とはいいますが、それは、たまのことであって、家族でも夫婦でも、相手がだれであっても言葉で意思表示をしてもらわないと、相手が何を考えているのはわかりません。「察する文化」は無理です。

 教師自身がこどもの頃にいじめの加害者の立場にいた人だと、児童や生徒にとっては最悪でしょう。

 学校が、集団生活についてくることができないこどもを排除する場になっています。

 小学3年生のときに病気で亡くなったおとうさんが、天国から守ってくれている部分もあります。

 学校生活をうまくやっていけなくても、社会ではやっていけるということはままあります。学校内での強制的な人格の標準化指導のほうがきつい。
 
 インタビュー記事があります。青春時代に歌に助けられるということはあります。

 一日中、その場、その場に合わせて、こどもが、キャラを演じるなんて、こどもにとって、負担であり、苦痛です。いつかは、心の糸が切れるときが来ます。

 学校には行かなくてもいいという雰囲気があるのですが、学校は行ったほうがいい。こどもが学校に行かないと言ったら親はつらいです。
 こどもには負けてもいいから対戦相手とは歯を食いしばってでも闘ってほしい。腕力にしても学力にしても勝負してみると案外被害者の立場の人間のほうが勝ったりもします。

 学校のトイレで時間をつぶすのはつらい。

 言いたいことは、半分の100ページあたりまでで、言い尽くされた感があります。

 まるで、「歌」を読んでいるような文脈でした。
 ふつう、人は、死にたくない。長生きしたいと思うもので、それが逆に、死にたい、死にたいと訴えるのは、悲しい。

 調べたこととして、「いじめ防止対策推進法:2013年、平成25年制定。滋賀県大津市の中学2年生自殺事件がきっかけ。学校、行政の責務。いじめの定義といじめのない学校生活をめざしての決め事。保護者への伝達」

 心に残ったフレーズの趣旨などとして、「大好きなことをやめたら、「わたし」は、「わたし」でなくなってしまう」、「逃げたのではなくて、違う道を選択したと考える」、「いじめはなくならないけれど、いじめ自殺はなくせるかもしれない」、「人間関係において、どうしても合う、合わないという相性はある」、「理性が育つまでは、お互いに傷つけあうという過程を省けない」、「学校以外の快適な居場所をつくる」、「インターネットによる在宅通学を認める」、「SNSには、メリットとデメリットがある」、「LINEやツイッターはいじめが発生しやすい場所になる」、「いまの学校には、いじめを引き起こす仕組みがある」、「30代になってから、ともだちといちばん遊んでいる」、「十代の暗かった時代が三十代の今の明るい時代につながった。十代の時代は無駄ではなかった」


この記事へのトラックバックURL

http://kumataro.mediacat-blog.jp/t137382
※このエントリーではブログ管理者の設定により、ブログ管理者に承認されるまでコメントは反映されません
上の画像に書かれている文字を入力して下さい