2020年09月30日

優雅に叱責する自転車 エドワード・ゴーリー

優雅に叱責する自転車 エドワード・ゴーリー 柴田元幸・訳 河出書房新社

 同作者の「うろんな客」「ギャシュリークラムのちびっ子」と読んできて、今度はこの大人向け絵本です。どれも独特なお話ですが記憶には残ります。

 最初に「訳者あとがき」を読まないと、物語を理解できないのが、この作者さんです。
 自転車が人間を非難する物語らしい。
 
 「プロローグ」が、「火曜日の翌日で 水曜日の前日のこと」とあります。なんだ。火曜日じゃないかということになります。
 第1章から始まることは始まるのですが、第3章はありません。第4章になって、次が第7章、その次が第12章、第15章、第19章、第22章(最終章)で終わっています。きちんとやらないというリズムがあります。途中で章が抜けている理由はわかりません。作者本人に理由を聞きたいところですが、2000年に心臓発作のため75歳で亡くなっています。もう聞けません。

 ふたりのきょうだいが出てきます。小学生か中学生に見えます。
 ふたりは、もちつきの杵(きね)のような形をしたクリケットの槌(つち)というもので、相手をたたくけんかをしています。
 突然、壁の向こうから自転車が登場しました。
 兄弟は自転車の奪い合いでまたけんかを始めます。
 けんかに疲れたふたりは、仲良く自転車で遊ぶことにしました。
 それから、こうして、そうして、ああなって……
 嵐が来て、雷に打たれそうになって、不幸が襲ってきて、立ち向かって勝利して、納屋(なや)に入って行きます。納屋を出たところに方尖塔(ほうせんとう。オベリスク。古代エジプトの記念碑。先がとがった四角柱。寺院、宮殿の入口に立つ)がありました。
 たぶん173年前に自転車事故で亡くなった兄弟の物語だろうと想像しました。方尖塔には、「ふたりを偲ぶ(しのぶ)」と書いてあります。兄弟も自転車も幽霊でしたというオチでしょう。あいかわらず不気味な絵本です。  

Posted by 熊太郎 at 06:53Comments(0)TrackBack(0)読書感想文