2020年09月24日

きみに読む物語 アメリカ映画DVD

きみに読む物語 アメリカ映画DVD 2005年日本公開

 感想や評判がいい映画ですが、わたしには合わない映画でした。状況説明だけでストーリーに深みがありませんでした。

 始まって15分ぐらいが経過したところで、この映画は、アメリカ合衆国の白人の人たちが観る映画だと察しました。
 インディアンが池に投げ込まれるシーンを見て、やはり、人種差別があると敏感になりました。
 アメリカ白人中心主義の意識が映像の向こう側に見えます。白人の暮らしが一番なのです。
 カップルの周りにいる人間たちの判断基準においては、「お金」のあるなしが最高位にあるのです。貧富の格差で結婚できたり、できなかったりの話が出ます。
 
 恋愛映画というよりも高齢者福祉の映画でした。
 認知症の老いた女性がいて、同じ施設に入所している年配の男性がいる。男性が女性に物語を読むという設定から始まります。
 仕掛けとか、秘密の事項は、見ていて早い時間帯に気づけます。
 男女ふたりは、夫婦で、奥さんは認知症で、夫のことを忘れているのです。
 夫は毎日奥さんに自分たちの若いころの話をするのですが、奥さんは毎日記憶が消えていくのです。
 死が近い高齢者施設入所者の話です。なかなか死ねない高齢者の物語でもあります。
 過去にしばられることを美化してあって未来が見えません。
 経過とオチはたぶんこうだろうとわかるので、単調な鑑賞時間が過ぎていきます。

 ひとめぼれ(相手の外見だけ)で、即断で恋愛に走るパターンは好きではありません。それでは、人生の深みがありません。やることは、さかりのついた犬猫同然です。ハンサムで、おもしろくて、おしゃれで、チャーミング、実家は大金持ちだけでは、愛せません。
 わざとらしい演出が何度も続きます。つくり話の連続で、途中でもういいかなあという気分になりました。まずい構築手法で物語全体の構造がくずれました。小説の映画化がうまくいかなかったのではないか。
 やっていることはめちゃくちゃで、映画だから楽しそうに見えますが、実際に人間が同じ行為をしたらただ苦しいだけです。
 男性がノア、女性がアリ―ですが、男性も女性も、いわゆるDV(ドメスティックバイオレンス。恋人間、夫婦間暴力)の加害者のようでした。相手を激しく攻撃したあと、相手に優しくしたり、慰めたり、励ましたりして相手を逃がさないようにする手法です。
 
 映画の画面の構図が中途半端で不自然でした。ラブシーンで、意図的に胸から下が映らないようにしてありました。

 それから、「君に読む物語」というタイトルですが、それほど深く読む夫のシーンがありませんでした。別の映画で、「愛を読むひと」がありますが、そちらの映画では、しっかり読んでいました。
 ダスティン・ホフマンの映画「卒業」とか、三島由紀夫小説作品「潮騒」の影響を受けているような感じがしました。

 よかったところとして、アヒル池の景色がきれいでした。だけど、快晴のあんなにいい天気だったのに、いきなりのように豪雨になりました。ありえません。がっかりしました。

 気づいたこととして、夫婦というふたりは、両方が生きていても、両方が別々の病院なり施設に入ったときが、この世での永遠の別れになるのだろうということでした。