2020年09月06日

最初の質問 詩・長田弘(おさだ・ひろし) 絵・いせひでこ

最初の質問 詩・長田弘(おさだ・ひろし) 絵・いせひでこ 講談社

 絵本ですが、「詩」の絵本です。本のカバーには、「講談社の創作絵本」と小さく表示があります。
 とにかく、絵がきれいです。
 透きとおる美しさがあります。
 孤高(ひとりぼっちだけれどさびしくない)の鋭さがあります。
 三歳ぐらいに見えるちいさな女の子は、未知の世界をこれから知ろうとしています。
 「本当のこと」を知ろう。この世は、嘘ばかりだから。
 まずは、「生きていること」が大切です。
 死んじゃいけない。じぶんは、長生きするんだって、自分に言い聞かせることが大切です。
 グリーン、ブルー、ホワイト、どのページも光り輝いています。
 生命の悦び(よろこび。じぶんの中からわきあがってくるよろこび)に満ちています。生きているという悦びです。
 大きな木の下にいるぼくちゃんへ。どうか、「泣かないで」
 きっといいこともある。
 おとなになるにつれて、忘れていく自然とのかかわり合いがあります。川や、鳥や、水のこと。
 作者は読者に問います。「あなたと、あなたのまわりにあるものは、何ですか」と。
 人間が成長するにつれて忘れがちになっていくものにストップをかけて、人間性を回復させていく絵本です。
 哲学書を読むようです。
 個々の人生をはかるモノサシは存在しない。
 作者からは、「あなたが、あなた自身で決着をつけるのです」と言われました。
 言葉を信じなさいというメッセージがありました。言葉は、「愛」だったり、「夢」だったり、「希望」だったり、「平和であること」であったりするのでしょう。それとも、言葉以上のものがなにかあるから気づきなさいという教えでしょうか。もしかしたらそうかもしれません。最後のページのことは、いくら時間があっても答えを出せそうにありません。これを書いてくださった詩人は、2015年に永眠されています。75歳でした。もうおたずねすることもできません。  

Posted by 熊太郎 at 07:03Comments(0)TrackBack(0)読書感想文