2020年09月09日

ペイ・フォアード 可能の王国 アメリカ映画DVD

ペイ・フォアード 可能の王国 アメリカ映画DVD 2000年公開

 「PAY IT FORWARD」が原題の小説を映画化してあります。小説の映画化なので、2時間ぐらいの映像にまとめるのは難しかったのではないかという感想をもちました。設定としては、現実にはなさそうな出来事の連続で、筋立てに無理があり、苦しい展開でしたが、趣旨は伝わってきました。
 こどもさんが主人公の映画ですが、内容は、「哲学的」です。難しい。ひとりひとりが人に言えないことをいっぱい抱え込んでいます。物語をリードしていく社会科教師もしっかりしているようで、実は弱い。男女の付き合いで、嫉妬心(しっとしん。やきもち)を押さえられません。

 他人から自分が受けた善意を、善意を与えてくれた人ではなく、その他の無関係は人たち3人に善意や思いやりを渡していく。そうすると、善意が、ネズミ算式に広がって、平和で温かい社会ができる。それを、ペイ・フォアードという。ペイ・フォアードという行為を広めましょうとというメッセージです。されど、そうするのには、いろいろと困難があるのです。

 主人公は11歳で、学年の制度が日本とは異なりますが、日本でいうところの中学1年生であるという設定のトレバー少年です。
 彼は、アル中の母親と暮らす母子家庭で育っていて、父親は母親に家庭内暴力を振るう男だったというっことで、映画の始まりでは行方不明の設定です。
 いいことはあまりありません。薬物中毒のホームレスとか、父親からの虐待体験がある社会科の先生とか、ホームレスの男性たちなどが登場します。そして児童間には、いじめがあります。
 新聞記者が、「ペイ・フォアード」といういいニュースを取材するという方式で、ストーリーが流れていきます。

 正直者は結局はバカをみる。自分を守るためには、知らん顔をする。だれも助けてくれないから、自分自身が敵となる相手と闘うしかない。そういう終わり方をするのかという感じでしたが、ラストシーンに強いメッセージがありました。鑑賞後に考える映画です。

 良かったセリフなどとして、
「(学校という束縛は、永遠じゃない)いつか君たちは自由になる」自由になったあとの君たちの生活が、「失望」にならないようにしたいというような趣旨の社会科教師の発言
「(ホームレスになって、夜、新聞紙を毛布代わりにしたときに)人生を台無しにしたと思った」ホームレスの発言
「世の中はクソだよ」
「君のせいじゃない。できないこともある」
「世界が変わるのを見たかったが、(ペイ・フォアードというプランは)失敗した」
「(飛び降り自殺をしようとしている女性が)わたしのことをわかってもらえない」
「(飛び降り自殺を止めようとする通りがかりの男性が)いっしょにコーヒーを飲んでください。オレを助けると思って(自分には、あなたが必要です)」
「(母親の言葉)また、間違えたみたい」「(息子が)間違えてばかりだね。おかあさん」
「無理だからやるんじゃないか。ボクはできると思う。ボクのために(やってよ)」
「人間のやることには、限界がある」
「(アル中の祖母に向かって、アル中の母が)ママを許すわ。(でもいっしょに)元の暮らしはできない」

 舞台はアメリカ合衆国ラスベガスでしたが、シーンにギャンブルの雰囲気はまったくなく、それはそれで、自然の風景を映像で見ることができて良かった。