2020年09月16日

八月のひかり 中島信子

八月のひかり 中島信子(なかじま・のぶこ) 汐文社

 小学校中学年から高学年向けの児童文学だと思います。
 読み始める前の情報として、児童の貧困について書いてあるようです。

 とりあえず、20ページまで読みました。各章に食べ物のタイトルが付いているのですが、最初の章「味噌汁(みそしる)」は、味噌汁は出てきません。焼きそばが出てきます。
 離婚による3人世帯の母子家庭があって、主人公の田端美貴が小学5年生、弟の優希が2年生です。
 母親は、パートでスーパーのレジ担当です。
 父親は、優希が3歳のときに離婚して離別ですので、5年前が離婚時期です。以降、家族は父親とは会っていない。養育費の援助もない。
 それから横須賀に母方のおばあちゃんがいますが、母親とは仲が良さそうにはみえません。
 祖母は未婚の母だったそうです。

 今は小学校の夏休みです。8月6日広島原爆投下の日です。
 美樹が昼食の用意をしていますが、おかずを買うお金が少ないようです。今回の昼食はひとりぶんの焼きそばをきょうだいふたりで食べます。やきそばって、いまはスーパーの安売りで、ひと玉25円ぐらいで売っているところもあるので、もっと買えるはずなのにと、ちょっと意外でした。
 自分も類似のひとり親貧乏体験があるのでなつかしい。
 本の中のふたりのこどもは、いつだって、おなかがぺこぺこだそうです。
 時代背景が違うので、書きにくいのですが、お金がないということでは、昔のほうがきつかった。昔の貧乏は、テレビもエアコンもありませんでした。扇風機はもらいものがありました。小学校は、給食を食べるために行っていました。

「トマト煮」の章
 たこ焼きと鳥肉のトマト煮が出てきました。美樹さんはお料理が上手です。
 貧乏は、開き直ったほうが勝ちだし、楽です。ないものはないのです。いまのところ、食べ物の話ですが、自分は着るものがなくて困ったことがあります。パンツをはかずに登校したときに身体検査がありました。よく覚えていませんが、たぶんフリチンで受診したと思います。小学校2年生ぐらいのときです。

「お好み焼き」の章
 夜中にお母さんの具合が悪い。翌朝もだめで出勤できずにお休みします。そして、病院に行くお金がないようです。医療費の支払いがむずかしい。ひとり親家庭の医療証ってなかったかな。たしか医療費の助成があったと思います。
 ご家族は水道も節約されているのですが、こちらも水道料金の助成があったような気がします。
 
「カレーキャベツ」の章
 美樹ちゃんは万引きをする女性を発見します。万引きはだめです。
 お金があってもするのが「万引き」です。万引きは心の病気です。
 美貴ちゃんは、おかあさんに万引きおばさんのことを話せばいいのに。

「ソース炒め(そーすいため)」の章
 クワガタくん登場。だけど、彼に与えるエサがない。昆虫ゼリーを買うお金が惜しい。
 それでもいろいろ工夫して楽しい思い出ができました。
 学童保育所に通っているようですが、学童保育所での話はほとんど出てきません。

「マヨネーズ和え(まよねーずあえ)」の章
 8月11日の午後です。小学2年優希くんのお友だちである須藤大輔くんが遊びに来ました。クワガタくんを披露します。
 大輔くんもひとり親家庭のこどもです。離別で、ママのほうが出て行ったのです。よって、父子家庭です。
 ひとり親家庭が増加するいま、児童文学の素材も変化してきてもいいと思います。ひとり親家庭を扱ったこのパターンの児童向けの物語はまだ少ない。

「納豆キャベツ」の章
 8月12日水曜日です。
 類(るい。似た者同士)は類(るい)で固まるというようなお話しです。
 それから、別離した父親らしい影が出てきます。父も成長した子の姿を見たいときがある。(残念ながら、お金を貸してくれでした)
 いろいろあるけれど、秘密をかかえこむと苦しい。しゃべると楽になれます。

「クリーム煮」の章
 長女美貴の負担が重い。
 事故?
 生活保護の話が出ました。どうしても無理なら一時的なこととして受給することもやむを得ないのではないか。
 母親が病気で倒れたら終わりです。

「また、味噌汁」の章
 「くわちゃん」ってだれだろうとしばらく考えていて、コクワガタのことだとようやくわかりました。
 食べ物でリレーしていくストーリー仕立てでした。
 もう一歩踏み込めると良かったような。

 こどもは、まずは、生きていることが大事だと感じました。  

Posted by 熊太郎 at 07:08Comments(0)TrackBack(0)読書感想文