2020年04月30日

これは経費で落ちません①② ~経理部の森若さん~

これは経費で落ちません①② ~経理部の森若さん~ 原作・青木祐子 漫画・森こさち マーガレット コミックス 集英社クリエイティブ


 テレビドラマは観ていませんが、興味が湧いたので読んでみます。

 石けんとか入浴剤を扱う会社の内輪話のようです。会社のお金を無駄遣い、横領に近い泥棒行為だろうか。金銭の不正操作が題材のお話のようです。メロドラマの要素もあるような(感傷的な恋愛劇)

 会社のお金を私的に流用しているのを止めるのが経理担当社員の務めとあります。通常は、会計規則のような根拠に基づいて、上司を含めて決裁行為がないと支出ができないような。個人の判断で融通がきく範囲は狭い。

 「数字は合っています。なんの問題もありません!」が、決めゼリフです。

 森若紗名子さん27歳未婚が主人公です。
 
 読み続けていますが、おもしろさが伝わってきません。わたしには合わない世界かも。経費のお金の話とラブの話が並行で進行するところに違和感があります。

 予想した内容とは違っていました。お金の操作が優先のストーリーだと思っていました。
 ラブコメディです。

 主人公である森若紗名子の身上として、「(私はフェアではありません)イーブンです」(ドラマ相棒の正義感だけの塊(かたまり)杉下右京とは違うパターンです)

 作品にときおり作者が出てきます。最近、読んだことがない有名なマンガの単行本を読んでいるのですが、このパターン、多い。読者と身近な距離をつくるマンガの文化なのでしょう。

 パラカフェ:パラダイス・カフェ。温泉とカフェが一体化した施設
 
 読みづらさがあります。コマ割りとか、セリフのおきかたの配置のせいのような気がするのですが、そのほかにも、文字の字体(ゴシック体、明朝体ほか)や大きさ(ポイント数)が大きくなったり小さくなったり、小さな字が作者の手書きであったりして、読んでいて、気が散ります。それでも、絵はきれいでした。いいところもあれば、そうでないところもあるマンガによる表現作品という印象が残りました。  

Posted by 熊太郎 at 07:29Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2020年04月29日

たおやかに輪をえがいて 窪美澄

たおやかに輪をえがいて 窪美澄(くぼ・みすみ) 中央公論新社

 好みの作家さんです。

 酒井絵里子52才ホームセンターでパート就労、夫は54歳で企業で物流課長、ひとり娘が20歳大学2年生、「(娘との関係として)凪のじょうたい(なぎのじょうたい)」と表現があるように、生活が落ち着いてきたのはいいけれど、それとなく、主婦の孤独感があります。主人公である主婦の未来に夢がみられません。

 ご主人が、「渋谷ブルーベリージャム」という性風俗のお店で遊んでいるかもしれない証拠が洋服だんすから発見されて物語が始まりました。あわせて二十歳の娘さんも、陰で派手な行動があるかの気配です。

 「雨が降ってくるように頭の上から赤ん坊の泣き声がした。」という独特な出だしが最初の一文です。
 最初のわずか2ページで、状況説明が克明に行われました。感嘆しました。
 
 夫が風俗に行くお金はどこから出ているのだろう。読んでいてだんだんさみしくなってきました。(このあとのページで、「夫は今までいくら費やしたのだろう」とう文章が出てきました)
 
 52歳パート主婦酒井絵里子の日常が本人によって淡々と語られ続けます。スラムのようなすさんだ生活が見えてきます。きちんとした文章が延々と続きます。すごい筆力です。恐れ入りました。
 同窓会、顔の整形手術、LGBT、親友の離婚、性生活、男性遍歴、心の病の気配まで感じます。話題は尽きません。
 夫とのなれそめ付近の記述がゆるいのは意図的なものか。夫への強い愛情はなく、父の癌による看病と父の死を迎えて、そのときはなんとなく、今の夫に寄りかかったのか。

 わからないことがあったら、言葉を発して相手にたずねればいいだけなのに、この家族は、夫婦、親子間で、それができない。

 夫婦は、似た者同士がいっしょになったほうがいい。

 夫婦は、同じ方向を見ていないと離婚が近くなる。

 結婚に向いている人と、向いていない人がいる。

 男の風俗遊びは、「そんなこと」だし、あわせて、「ふつうの男なら」、男の体はそういうふうにできているということもあります。書中にもありますが、風俗通いと浮気・不倫は異なる。風俗で働く女性は、男性の介護職という理屈にもうなずけます。

 いろいろと、ここまできちんとしゃべる女性たちはなかなかいません。小説だから表現できる世界があります。

 重苦しい妻の時間帯が続きます。

 作家さんは、ぶちまけた材料をこれからどのように回収していくのだろう。

 妻は、家出をしたあとの最初の朝、どんな気持ちになるのだろう。
 それは、事実ではなく、夢想のようにも思える記述内容です。非日常という旅の体験を空想のなかだけでする。鹿子(かのこ)さんは、実在しないのではないかという感覚があります。静岡の下田には行ったことがないので、類似の土地を想像しながら読んでいます。

 人それぞれかなと思うこともあります。この本は主婦層向けなのでしょう。

 再婚した夫が死んだら、夫の遺言には、前妻と前妻との間にできた実子へ手厚い相続が記されていたということがあるのだろうか。でも、あるのだろう。死んだ夫としては、前婚の離婚の原因が自分にあるから償うとしたのだろう。そしてやっぱり、自分の血がつながっているこどもは可愛いのだろう。

 いろいろあるのだろうけれど、配偶者が亡くなれば、最後はひとりになります。離婚しなくても、夫が死ねば、あるいは妻が死ねば、最後はひとりです。

 女性の自立、夫に依存しない、自分の人生を歩く。作品からのメッセージです。主人公は解決策を模索して力強く実行していきます。この本は、だれかの人生を変える一冊になるのかもしれません。

 風俗嬢のつらさがあります。お金のために割り切って働く。女性がする男性相手の仕事です。期間と金額目標を決めて、その間をがまんする。自分の仕事に誇りをもつ。前だけを見る。

 風俗に通っている夫を許しがたいという下地が、作品づくりとしては、動機がゆるいかなと思われる作品でもあります。
 最後付近は、ばたばたと駆け足でした。
 結末は読者の想像にまかせるパターンで終わっています。うーん。自分としては、ハッピーエンドにはしたくない。
 
 調べた言葉などとして、「CCクリーム:肌の色、素肌を美しくコントロールする軟膏。BBクリームが、傷を修復する軟膏」、「コンシーラー:局所的に用いる化粧品。シミ、クマ、にきびあとなどのカバーで用いる」、「チュニック:丈が長めの上着」、「ポータルサイト:玄関、入口、インターネットのウェブサイト」、「ジェノベーゼ:香草バジリコ。パスタ」、「ランチョンマット:一人前ずつの食器をのせる敷物」、「ブルートゥース:近距離無線規格。Wi-Fiワイファイみたいなもの」、「ギムレット:カクテル。ジンがベース。ライムジュース、シロップ」、「曖昧模糊:あいまいもこ。あやふや」、「夏目漱石の『門』親友を裏切って親友の妻と結婚してひっそり暮らす男の話。『三四郎』『それから』『門』の三部作」、「キンパ:キムパプ。のりでごはんを巻いた韓国料理。のり巻き」、「アールグレイ:紅茶」、「フューシャ―ピンク:あざやかに輝くピンク」、「ベルガモット:柑橘類。ミカン。香料にする」、「アッシュブラウン:グレーに近いブラウン。髪染めの色」、「チーク:頬紅」、「デパコス:デパートで販売されているコスメ(化粧品)」

 印象的だった言葉などとして、「だからどうか、このまま何も起こりませんように」、「土曜日の今日はどこか宝石の硬さを感じさせるような青空が広がった。」、「(主婦をさして、主婦は)気持ち悪い。男の面倒をみて、毎日、家事に子育て。それは、家政婦の仕事」、「日本の女性はやせすぎ」、「風の子と水の子:風俗の女子と水商売の女子」、「夫と自分の関係は、伸びきったゴムのようだ」、「未熟な親が未熟な子どもを育てる」、「社会問題は、自分の人生に起こったことじゃない。関係ない」、「今は、やりたいようにやらせて」、「ネガティブシンキング」、「男って馬鹿。男は弱い。男ははけ口を求めている。男は甘えたい」、「男は強がって無理をしながら生きているというような表現」、「こどもに対して怒らない親は親じゃないというような趣旨の記述」、「いくら好きでも最後にはいっしょには死ねない」、「結婚生活から卒業したい」、「子育てなんて後悔ばかりだ」、「話半分で聞きなさい(偽りや誇張があるので、事実は半分ぐらいだろうということ)」、「見た目にこだわる。ファッションとかお化粧とか。こだわったほうが、自分のためになる」
  

Posted by 熊太郎 at 06:42Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2020年04月28日

キン肉マン ゆでたまご

キン肉マン ゆでたまご 集英社文庫 1

 テレビ番組「しくじり先生」で話題になっていたことで興味をもちました。さわりの部分だけでも読んでみることにしました。

 なつかしい。歴史書を読むようです。1979年(昭和54年)当時の連載スタート時期の作品群です。
 ウルトラマンのスタイルでおでこの「肉」と描いたキン肉マンが登場します。プロレスを素材にしたコメディのギャグマンガです。知りませんでした。おもしろい。筋立てよりも、一瞬、一発の「笑い」を求めます。大昔に見た「おそ松くん」を思い出しました。
 思い出すのは、ジャイアント馬場さん、アントニオ猪木さん、ジャイアンツ江川卓選手。小林繁さんがなつかしい(故人。2010年57歳死去)いろいろありました。
 ネッシー、北海道屈斜路湖のクッシーを思い出しました。(結局あれはクマが泳いでいたのかも)
 100円札。使っていました。昭和49年(1974年)まで。
 マンガの中の九州弁の部分は?でした。 西部警察、石原軍団、大平首相のアー、ウー、お話に、社会的な背景があります。キャンディーズのランちゃん(40年の時を超えて60代になっての再デビュー)、ロッキーとシルベスター・スタローン
 読者にキャラクターを考えてもらう読者参加型の手法あり。
 ティラノサウルス、プテラノドン、トリケラトプス、ステゴサウルス、恐竜はいつの時代も話題にのぼります。

 主人公は人間だろうし、舞台は地球でしょうが、話は宇宙規模です。出身はキン肉星の超人という扱いです。

 ミートくん:キン肉マンの同居人
 
 最後は、江川卓さんのインタビュー記事でした。

 最近は、過去をふりかえることが多くなりました。  

Posted by 熊太郎 at 07:06Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2020年04月27日

あの日のオルガン 邦画DVD

あの日のオルガン 邦画DVD 2019年公開

 うんとこしょ、どっこいしょの影絵から始まります。
 東京大空襲から保育園に通う幼いこどもたちを守るために、埼玉県内のお寺で、「疎開保育園」を開設して運営していく物語でした。実話の映画化です。
 感動しました。戦争はやめよう。反戦映画です。
 冒頭、こどもたちだけを疎開させることに反対する親たちの姿があります。東京には空襲はないと主張されます。危機感がありません。病気にしても自然災害にしても、「自分は大丈夫」は、大丈夫ではありません。被害者になってようやく自分が当事者であることに気がついても遅いのです。

 いろいろとなつかしい。ちいちいぱっぱの歌は久しぶりに聴きました。すずめのがっこの先生です。
 現在高齢となられた女性向けの映画と受け取りました。
 昭和30年代から40年代のなつかしい感触がただよっていました。こどものころ、公民館とか、集落にあった集会所で観た映画の雰囲気です。
 映像の中の世界は、舞台劇を観ているような感覚もありました。保母たちの会議、話し合いのシーンでは、労働組合の活動映画のようなイメージが湧きました。

 力と緊張感のこもった映画です。ときに、くそまじめすぎる面もあります。屋外でのトイレのことは、当時の農家の暮らしぶりをふりかえってみると、村人たちは意外におおらかだったと思います。農作業中の排泄は屋外でするものでした。
 また男女の恋愛に関しても映像で表現されているほど村人たちはいじわるではなかったと考えます。

 物語を歌でつなく一面があります。「どんぐりころころ」→「ちいちいぱっぱ、すずめの学校」→「おててつないで」→「おさるのかごやだほいさっさ」→「杉の子おきなさい」→「この道はいつか来た道」→「あかりをつけましょ ひなまつり」→「ふるさと うさぎおいしかのやま」

 子役のこどもたちが生き生きしていました。
 ケン坊がかわいい。両親を戦災で亡くなったことを、保母がケン坊に告知するときのリズム感のあるかけあいが涙を誘いました。ケン坊は戦争孤児になってしまいました。

 疎開保育園が、孤児院のようになっていきます。

 ちいさなこどもといっしょに寝るとあったかい。

 もう亡くなった自分の祖父が、戦争で、貯金は全部パーになってしまったと言っていたことを劇中のシーンを見ていて思い出しました。同じく亡くなった親父が、自分がこどものころに、竹トンボをつくってくれたことも思い出しました。この映画を観ていると、もうとうに亡くなった親族の記憶がよみがえってきます。

 映画の中で、保母さんのひとりが空襲で亡くなった出来事は悲しかった。そのシーンのBGMがミュージックではなく、小川のせせらぎの音だったところが良かった。

 記憶に残ったセリフなどとして、「本当に空襲が来たらどうなるか、よく想像してください」、「(亡くなった保母の)よっちゃんはここにいる。きっと」からつづく「できる」までのくだり。「悲しみかたは人それぞれよ」、「文化的生活をする」、「深いところでずっとぐらぐら怒っているんだ」、「無条件降伏」、「東京大空襲の死者10万人」、「53人の園児の命が救われた」、「乙女」

 官公庁の職員が、酒と女性の接待で権限を行使していたかのようなシーンがあります。事実ならそういうことはやめてほしい。

 「アカガミ 赤紙」という言葉は最近聞かなくなりました。戦地への召集令状です。

 女性でないと出てこないようなセリフがいっぱいあって感心しました。

 肥後守(ひごのかみ こどもの頃によく使った小刀こがたな)を映像ですが久しぶりに見ました。

 本編を鑑賞後、特典で付いていたメイキング映像も楽しみました。  

2020年04月26日

任侠学園(にんきょうがくえん) 邦画DVD

任侠学園(にんきょうがくえん) 邦画DVD 2019年公開

 さわやかな映画でした。鑑賞後の気持ちがいい。
 反社会勢力の話なれど、演じるのは、健全な役者さんたちで、その行為は、善良に教育に取り組む姿であり、青春学園ものの娯楽喜劇映画でした。
 葵わかなさんは、演技はすばらしいのですが、見た目が役に合っていない気がしながら観ていたのですが、最後はきちっと役にはまっていて、これで良かったと納得できました。後半部に、悪役、憎まれ役だった登場人物たちが善人へと転換していくので、終わったときに、爽快さが残るのでしょう。
 いろいろと細かい伏線がはりめぐらしてあります。時間をかけてつくりあげられた企画内容と脚本です。
 良かった点として、
①社会奉仕に熱意があるやくざの組長西田敏行さん。西田敏行さんも西島秀俊さんもさわやかでした。
②セリフで、「仕事上、サツとは、距離を置いております」
③「村田兆治(むらた・ちょうじ)マサカリ投法」(古い)
④「幸田シャーミン」
⑤「保健室兼理事長室」
⑥トランシーバーで、「どうぞ」合戦
⑦落とし前、ググる、Vシネのくだり
⑧この件は手打ちにしましょう。
⑨部活の復活と専念
⑩伏線として、「花」
⑪「おまえのバットは、ガラスを割るためにあるのか!」
⑫「違法も、ヤッホーもないんだよ」
⑬「おまえが一歩踏み出したことに変わりはない」
⑭「おっさん、ごめん」
⑮(喫煙シーンが多い日本映画作品群ですが、この映画では、学園活性化のために貢献してくれた組長役西田敏行さんが校長室で喫煙しようとすると、学校長が)「校内で喫煙はご遠慮ください」
⑯「そういう生き方しかできない人間がいます」(広い意味で、むしろ、この世は、そういう人間ばかりです)
  

2020年04月25日

スターウォーズ エピソード3 シスの復讐DVD

スターウォーズ エピソード3 シスの復讐DVD 2005年公開

 エピソード4とつながる要点の映画です。2005年の作品が、1977年の作品につながります。
 ダースベイダーの出身とか、ルーク・スカイウォーカーの生い立ち、ルーク・スカイウォーカーとレイア姫との関係が明らかにされていきます。
 シス(「暗黒面」を信奉する者たちの集団)VSジェダイ(「光明面」の集団)という対立構図です。結果では、暗黒面のほうが勢力を強めます。「共和国」が、「銀河帝国」になる。第二次世界大戦の経過に似て、地球上に、独裁者の独裁国家ができあがる。悪を讃えるような部分があるので、観ている視聴者の感じ方によって、映画の出来の評価が分かれるかもしれません。
 ひとりの人間を救うために、何人もの人間が(こどもも含めて)殺害されてしまいます。
 映像が美しい。大画面のスクリーンで観ると、迫力があることでしょう。
 空想の世界が、ダイナミックに展開されていきます。クモロボットみたいなのもでるし、草食動物オオトカゲみたいな草食恐竜っぽい生き物も出ます。特撮が充実しています。ただ、火山のマグマの中にいるような光景、黄色、赤色、オレンジの半液体のドロドロのなかでは、生物は、熱くておれないという気分になりました。
 シェークスピア劇のような硬い演劇シーンみたいな場面もありました。内容を理解することが、なかなか、むずかしい。