2024年05月20日
アフリカで、バッグの会社はじめました 江口絵里
アフリカで、バッグの会社はじめました 寄り道多め仲本千津の進んできた道 江口絵里 さ・え・ら書房
とりあえず27ページまで読みました。
読みながら感想をつぎ足していきます。
偉人伝、伝記のようです。
仲本千津さんという女性の方について、江口絵里さんが聞き取りをして文章をつくって、この本ができあがっています。
仲本千津(なかもと・ちづ):1984年生まれですから、40歳ぐらいの女性です。社会起業家。ブランド(特定の商品、品物のこと。会社、組織)RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)の共同創業者兼COO(シーオーオー。チーフ・オペレーティング・オフィス。組織の責任者という役職名)。ロングヘアの小柄な女性。いつも心に秘めている思いは、『人の命を救いたい』です。
仲本千津さんは、アフリカにあるウガンダの工房で、現地の女性たちと布製のカバンをつくって日本で販売しています。
仕事をするときの動機付けは大事です。気持ちの根っこに、『世のため人のために働く』と、強く思わないと、職場での不祥事につながります。
『仕事は楽で、給料が良くて、休みが多いほうがいい』とだけ思う人は、仕事の手順を省略したり、会社や同僚のお金をポケットに入れたりすることがあります。働く場所では、仕事仲間同士の信頼関係は、とてもだいじです。
仲本千津さんの母親である律江さん:会社名の由来です。律(りつ)から「り」と千津から「ち」で、『リッチーエブリデイ』という社名です。おかあさんも会社のスタッフのひとりです。
ウガンダ:東アフリカにある国。旧イギリス植民地(1962年(昭和37年)にイギリスから独立)。人口約4570万人。首都カンパラ。
43ページに詳しい記事があります。赤道直下だが、高地にあるので(標高が高い。平均標高1200mぐらい)、一年中、日本の初夏のような気候が続く。湿度が低く快適な環境にある。治安がいい。人々が穏やか(おだやか)。農作物がよくとれる。マンゴー、スイカ、くだもの、お米、トウモロコシ、牛肉、鶏肉(とりにく)など。暮らしやすい。
されどウガンダは、世界で最も貧しい国のひとつだそうです。『産業』が不足している。『観光業』はある。国民は、大学を出ても安定した仕事がない。
男性が働かない。男性は、おしゃべりとギャンブルをしている。女性が働く。女性はとても忙しい。ある意味、女性で社会が成り立っている。でも、女性の立場は弱い。浮気男や暴力を振るう夫がいる。離婚するので、シングルマザーが多い。母子家庭です。
『はじめに』があって、第1章から第11章まであって、『おわりに』で終わります。
ウガンダの布地(色鮮やか。アフリカンプリント)を素材にして、ミシンで布バッグを縫って(ぬって)、日本で販売する組織の運営をしている人です。
ウガンダ人の女性8人(シングルマザーが多い)が、ミシンの前に座って、作業をしているようすが書いてあります。
社会起業家:社会にある課題を、事業によって解決することに取り組む人。社会にある課題とは、『貧困』、『格差』、『差別』、『戦争』、『環境破壊』、『地球温暖化』などです。
こどもたちに、社会起業家になることを勧める本だろうか。それとも、社会起業家という職種もありますという情報を提供する本だろうか。
『第1章 社会起業家 仲本千津』、『第2章 「私、国連で働く』
6歳ぐらいのころのエピソードがひとつ書いてあります。すべり台をすべって、泥水の水たまりに頭からつっこんだというような勇敢な姿です。
仲本千津さんは、4人きょうだいの一番上だそうです。
静岡県生まれ、その後千葉県居住ののち小学4年生から、静岡県内で育ったそうです。
両親と祖母、4人きょうだいの7人家族です。
小学5年生のとき、医師になりたいと思った。『国境なき医師団』に入ろうと思った。
中学一年生のときに、洋画、『シンドラーのリスト』を観て、深い感銘を受けたそうです。
わたしもシンドラーのリストを何回か観ました。最初シンドラーは、けしていい人ではありませんでしたが、ナチス・ドイツが、ユダヤ人を迫害するようすを見て、これはおかしいと思い、収容所に収容されているユダヤ人を自分の工場で雇用して、最終的にたくさんのユダヤ人の命を救います。シンドラーは、金もうけという商売をしながら、自分の利益を確保しつつ、ばれたら自分もナチス・ドイツに殺されるかもしれないという危険をくぐりぬけて生き延びた人でした。
わたしが映画を観たときの感想の一部をここに落としてみます。
『商人と軍人との贈収賄(ぞうしゅうわい)の世界です。給料以外の金と酒とタバコと宝石とが世の中を動かしています。(軍人が商人から金銭や物品を不正に受け取って、商品たちの有利なはからいをする)。(軍人が)裁量(さいりょう。決める)する権限を物々交換で自由自在に操って私腹をこやす者たちがたくさんいます。
捕まえたユダヤ人を雇用する。ユダヤ人には人件費がいらない。まるで懲役刑のようです。彼らはシンドラーが設立したお鍋をつくる会社で働きます。拘束はされますが、命は助かります。
シンドラーに命を助けられた片腕のない老人がシンドラーに、『アイ ワーク ハード(シンドラーあなたのために一生懸命働きます)』、シンドラーが軍人に、『ヴェルリ ユースフル(彼は有益な人物です)』、されど、その後老人は射殺されてしまいました。(片腕のない人間は道具として工場で役に立たないから)。それは、シンドラーの人として守るべき道を優先しようという方向への心変わりとなる出来事のひとつでした。
金もうけのことしか考えていなかった悪人のシンドラーが、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の実態を見て、これではいけないと考え直して善人に変化していきます。人としてあるべき姿に目覚めたのです』
仲本志津さんは中学時代コーラス部に所属していた。学級委員、生徒会役員、部活の部長などリーダー的な役をやった。そのころのご本人の気持ちの持ち方として、『人の話をよく聞いて、それを実現する』というようなことが書いてあります。
緒方貞子(おがた・さだこ):国際政治学者。国際協力機構理事長。国連人権委員会日本政府代表。1927年(昭和2年)-2019年(令和元年)92歳没。
自分は長い間生きてきて、国連の職員として働いている人には一度だけ出会ったことがあります。ご近所に子どもさん連れのご家族で引っ越してこられて、話を聞いて、『国連』というところに就職するのにはどうやって試験などを受けるのだろうかとびっくりしました。その後数年たって、転居していかれました。
国際協力機構(JICAジャイカ)は、昨年秋、東京見物に行ったときに見学しました。中央線の市ヶ谷駅で降りて、坂道を上って行きました。『地球ひろば』を見学して、レストランで、そのとき提供されていたペルーのランチを食べました。おいしいというよりも、現地の人たちがふだん食べているもので、安価なふつうの味の主食という食事でした。
ジャイカの見学では、食事に加えて展示の内容も含めて、貧しい国を援助するということが、国際協力機構の果たす役割だと理解しました。
ウクライナへのロシアの攻撃を見ていて、国連(国際連合)の無力さを感じます。
国連は、そういう組織(集まり)があるというだけで、平和を成し遂げる機能を果たしていません。お役所的です。みための形が整っていればいいだけなのです。仕事はしていないけれど、仕事をしているふりをしていれば、給料がもらえて、自分の地位が保たれるのです。よくある話です。
仲本千津さんは、早稲田大学で、『国際関係論』を学んで、一橋大学大学院に進まれて、アフリカのサブサハラ(サハラ砂漠より南。アフリカの南部)で起きていた民族紛争を研究されています。
アフリカがヨーロッパの植民地だったことが書いてある本を読んだことがあります。アフリカの国境というのは、直線的なのですが、その土地の国民が引いた線ではなくて、よそから来た外国人が現地の人たちの意向とは関係なく引いた線だというものでした。
現地に住んでいるアフリカの人たちにとっては、意味のない国境線だったのです。
19世紀の中ごろから、イギリス、フランス、ドイツなどが、アフリカの地域を植民地にしたのです。その後、アフリカの国々として独立しています。民族ごとに国ができあがっていないので、民族紛争があるそうです。民族紛争はかなり深刻なようすです。
読んでいて思い出した本が一冊あります。
『インパラの朝 中村安希 集英社』読んだ時の感想の一部です。
この本は旅行記です。作者が26歳から28歳までの2年間、ユーラシア大陸からアフリカ大陸を女ひとり、バックパッカーとして旅をした記録です。
作者のテーマは、『貧富の差を目の当たりにすること(まのあたり)』そして、人間にとって大事なことは、『自由』であることです。『自由』とは、移動の自由です。旅であり、住む場所の選択でもあります。加えて、日本の国際貢献活動に関する批判があります。
予算の消化、派遣数の確保、宣伝のために、現地の人たちが望まない援助を無理やり押し付けている。これに対する作者の怒りは正当であり、正義があります。何ができるのか、真実をつきとめたいという若さがみなぎっています。
『援助』は、現地住民の平衡感覚を狂わせる。学校が建っても裕福なこどもしか通えない。ねたみ、そねみ、嫉妬(しっと)、対立が始まり、やがて『援助』が原因で地域内紛争が始まる。
外国人の日本人の性質に対する評価は低い。(厳しいご指摘です。援助は大切ですが、やり方を考えないと現地で暮らす人たちの迷惑になります)
-読後の記録が残っていないのですが、たしかこの本に次のようなことが書いてあった記憶です。
アフリカのジャングルの中で道に迷って一夜を過ごした。翌朝、現地住民に出会った。恐怖と不安で心が震えた。そしたら、みんなとても親切にしてくれた。みんな優しかった。
作者は、日本に自分の居場所がなかったから海外へ出た。作者が知ったのは、世界の国々に住む人たちは、お互いを知ろうとせず、マスメディア等でつくられたイメージで相手を判断する。おおいなる勘違いで世界が成り立っている。
そんなことが書いてあった記憶です。人間は本来、心優しい生き物なのです。いろいろな欲が入り混じると鬼になるのです。
こちらの本では、49ページに、支援されたほうが支援先に依存してしまうから、『自立』できる支援が大事だと書いてあります。国の上下関係、人間の上下関係はつくりたくないようすです。
さて、仲本千津さんは、大学院一年生の終わりに、アメリカ合衆国で栃迫篤昌(としさこ・あつまさ)さんという起業家に会い、彼が行っていた開発途上国の人を助けるビジネスを知ります。今後の進路を決めるきっかけがあった時です。
仲本千津さんは、大学院を二年生で修了し、大手銀行へ就職します。
27ページまで読みましたが、少ないページのなかに、大量の情報が入っている文章の書き方です。こどもさんが読むのには、ついていくのがたいへんかもしれません。
『第3章 銀行からアフリカ支援NGOへ』
NGO:非政府組織。市民が主体。営利を目的としない活動。ノン・ガヴァメンタル・オーガニゼーションズ。世界的な問題に取り組む。貧困、飢餓、環境などに取り組む市民団体のこと。
(つづく)
56ページまで読み終えました。
う~む。仕事の選択に関する小学校高学年向きの本なのでしょうが、一般的ではありません。
特殊な職業選択です。なかなか真似(まね)はできません。
第3章のはじめのところに書いてありますが、仲本千津さんは、大手銀行に就職したあと、業務内容が自分の望むものではなかったということで退職されています。
ひとつは、制服職場であることが理由でした。銀行に限らず、制服を着用して働く職場は、上司からの職務命令と、従業員の服従が基本で仕事を進めていきます。
従業員は、機械の歯車のようなものです。組織の上層部から言われたことを言われたとおりにやっていきます。
そうすれば、毎月決まった日に決まった給料がもらえます。ボーナスももらえます。たいていは退職金ももらえます。福利厚生があって、年金も本人負担と事業主負担(同額)分を納めることで、国民年金よりも多い額で年金の受給ができます。医療保険もあります。病気になったとき、安心して病院にかかることができます。そしてたいてい従業員は、一度や二度は、大きな病気やケガで入院をしたりもします。そうなっても、従業員の立場を守る規則があります。
組織目標は(会社の目標は)、まずは社会貢献ですが、大きな目標として、利潤の追求(りじゅんのついきゅう。お金を稼ぐ(かせぐ))ということがあります。お金がなければ会社や組織を維持していくことができません。
営利目的の組織で働く時には、自分ではない自分のようなものを演じて働きます。仕事用の自分を演じます。立場に応じてものを言います。かなり苦しいです。でも、お金をもらって、生活していかなければなりません。家族がいれば、家族を養っていかなければなりません。
人間にはふたつのタイプがあります。雇われて生活していく人と、自営で働いていく人です。
仲本千津さんは、自営で働いていくことにされました。
ご自分では銀行に就職されて、『やばっ! 私、まちがったところに来ちゃった……』と気づかれています。
仲本千津さんは、『決められた通りに、確実にやること』ができません。銀行職場には場違いの資質と能力の持ち主でした。
仕事を選ぶ時は、よ~く考えたほうがいい。わたしは、仕事は、才能と努力と人間関係だと思っています。自分は何だったらできるか、どんな苦痛だったら耐えられるか(仕事は苦痛に耐えるという面があります)、よ~く考えて仕事を選んだほうがいいです。
仲本千津さんは、三年間ぐらい銀行で働かれたあと、自分が希望する職に転身されています。
最近は、就職後すぐに辞めてしまう大卒の人が多い。
仕事を辞めて、食べていける(生活できる)ということが不思議です。親の援助でもあるのでしょうか。それとも、わざわざ正社員の職を捨てて、アルバイト生活を選択するのでしょうか。老齢である自分の世代にとっては不可解です。人生においては、なるべく無職の期間を短くすることが、生涯獲得賃金を十分確保するコツです。老後に受け取る年金の受給額にも影響してきます。若い頃はそういったことがわかりません。あとになって後悔します。
雇う側の立場として、ひとこと書いておきます。人、ひとり雇うのでも、時間と経費と手間がかかっています。この会社で働きたいと言ってきたから採用したのに、短期間で辞められたら、雇うほうにとっては、採用までに費やした、時間、経費、手間が水の泡です。損失が出ます。採用後の研修計画の実施にも変更がいります。ちゃんと手順を踏んだ段取りがしてあるのです。新人に仕事を教える先生役もあらかじめ決めてあります。
そして、仕事を辞めた人間にはわからないことでしょうが、辞めたあとのポスト(職)に欠員が出てしまいます。辞めた人の代わりはそうそう簡単には見つかりません。欠員となったひとり分の仕事量をほかの人たちでやらなければならなくなります。やりたくもない残業、やるはずでなかった残業を、在籍している従業員たちが、ぶつぶつ文句を言いながらやることになります。チームワークが乱れます。新規採用の早期退職は、まわりの人たちにたくさん迷惑をかけることに気づいておいてほしい。
あわせて、年休は全部消化してから辞めますとか、夏のボーナスをもらってから辞めますなどと言われると、仕事もしていないのにお金と休みだけもらって辞めるのか、バカヤローとなります。
それでも辞めるのなら引き止めませんが、みんな、あいつの顔は二度と見たくないと思うでしょう。
次の仕事がすんなり見つかるとも思えません。履歴書を見て、なぜ短期間でやめたのかという話になります。ああ、この人は仕事が続かない人だと判断されて、以降の求職活動では不採用になる可能性が高いでしょう。どこの会社や組織でも、負の財産になりそうな人は雇いません。自分のことだけ考えて、会社に貢献する意志がない人は雇えません。
2011年3月11日に起きた東日本大震災のことが書いてあります。
『死』を意識します。
仲本千津さんの中で、自分はいつ死ぬかわからないから、後悔のないような職業選択をしようという気持ちが湧いてきます。
小暮さん(こぐれさん):テーブル・フォー・ツー代表
凡人には、大学院に行ったり、アフリカに行ったりということはなかなかできません。発想すらしません。
笹川アフリカ協会(ささかわアフリカきょうかい):農業で、アフリカの貧困を救う。
英語はガッツで話せるようにしたというようなことが書いてあります。
鮫島弘子(さめじま・ひろこ):途上国で作った商品を先進国の人に売るビジネスをしている。バッグのブランドをつくった。エチオピア特産の羊の革(かわ)で高品質なバッグをつくり日本で売る。仲本千津さんは、鮫島弘子さんと行動を共にします。
豊田育雄:銀行の上司。
プロボノ:ボランティア。社会人経験、専門技術、知識のある人が、そのスキル(技術)を使ってボランティア活動をする。
師弟関係は仕事を身に着けるうえで必要な手段でしょう。教えてもらわないとできないことってあります。鮫島弘子さんが師匠で、仲本千津さんが弟子(でし)です。ファッション業界で事業をしていく手法を学びます。鮫島弘子さんの会社名が、『アンドゥアメット』。
メンター:自分の悩みや夢を聞いてくれる人。相談にのってくれる人。
仲本千津さんは、笹川アフリカ協会の配慮で、ウガンダ駐在員になりました。任期は一年以上です。
『第4章 起業』
仲本千津さんのウガンダ・首都カンパラでの生活スタートです。
母国語が英語ではないところの人が話す英語は聞き取りやすくわかりやすい。記号のようなものです。
60年ぐらい前の日本のいなかの暮らしに似ています。いなかでは、畑があって自給自足の暮らしがベースにありました。都市部で生活するには買い物をしなければならないのでお金がいります。
こどもの世話も田舎(いなか)なら、親族や近所の人に頼めましたが、都市部ではお金を出してどこかに預けなければなりません。
カンパラは都市部なので、お金がいります。シングルマザーたちには負担です。
いなかでの燃料は、豆炭、練炭(れんたん。七輪を使用していました(しちりん)、薪(まき))など、都市部では光熱費がいります。また、家賃がいります。
競争社会ではとかく弱者がおいてきぼりにされます。女、こども、高齢者、障害者などがおいてきぼりです。
仲本千津さんの願いは、人のためになる仕事をしたいことです。
仲本千津さんは、色鮮やかなアフリカンプリントに目を付けました。
布地を買ってきて、オーダーメイドで服をつくって、日本で売るという商売を思いつきます。おおもとの気持ちは、シングルマザーでがんばっている地元の主婦を応援するためです。
グレース・ナカウチ:自分のこども3人と亡姉のこども1人、ひとりで4人の子育てをしているシングルマザー。手先が器用(きよう。細かい作業をじょうずにできる)。
ウガンダの人は、お金で学歴を買う面があります。まあ、日本も同様ですが。
経済的な事情で、学力、能力があっても学校に行けない人たちが多いそうです。
ウガンダは、豚(ぶた)がお金代わりになる社会です。一度に8匹ぐらいの子豚が生まれる。子豚はお金になるそうです。子豚を売って学費にあてるそうです。
投資として豚を飼う。
先日読んだ長崎県を舞台にした本にも同類のことが書いてありました。豚ではなく、ニワトリでした。
『ニワトリと卵と、息子の思春期 繁延あづさ(しげのぶ・あづさ) 婦人之友社』以下、感想の一部です。
自立したいという、お子さんの反抗期の始まりがあります。
これまでは、おかあさんの言うことをきいてきた。でも、これからは、おかあさんのいうことをききたくないのです。母は母で、どう対応したらいいのかわからず悩みます。まっこうからダメと言えなくて、条件闘争になったりもします。(そうしたかったら、こういう条件をのみなさいというパターンです) 『お母さんがなんと言おうと、オレは放課後ゲームを買いに行く!』強い主張があります。オレの人生はオレのもので、お母さんのものではない。オレの人生をお母さんが支配することはできないというこどもさんからの強い主張が母親に対してあります。オレのことはオレが一番わかる。オレのことは、お母さんにはわからない。
ゲーム機を買うと吠えていた(ほえていた)ご長男が、ゲーム機ではなく、ニワトリを買ったというところがおもしろいエピソードです。理由は、卵がとれるからでした。
スーザン・アグーチ:従業員のひとり。バッグをつくってもらった。縫製(ほうせい。ミシンで縫ってつくる)の技術が高い女性だそうです。
ナジェラマ・サラ:革を縫う技術をもった女性。
雇う側の仲本千津さんの心の持ち方が書いてあります。『この人たちがいなかったら事業が成り立たない、対等のパートナー』として、三人のウガンダ人女性と接する。『従業員の生活に責任を負う経営者』になる。
『第5章 おかあちゃん 百貨店飛び込み営業事件』
ハンドメイドの生産です。(てづくり)。内職仕事のようでもあります。(主婦が、家事の合間に家でする仕事)。アフリカのシングルマザーを支援するバッグのビジネスを始めます。かわいそうな人たちが作ったバッグではない。同情で一度だけ買ってもらうバッグではなく、“サステナブル(持続可能な)”なビジネスにする。
実のお母さんにスタッフに入ってもらう。
アフリカンプリントの布地でバッグをつくって売る商売に参加してもらいます。
バイヤー:商品の買い付けや商品管理の仕事をする人
ポップアップストア:期間限定の特設ショップ
農業支援の仕事を辞めて、バッグ作りと販売に専念する。
レベッカアケロ:ウガンダでの会社組織名。仲本千津さんのウガンダ名からきているそうです。アケロが、『幸運』で、幸運を呼ぶ女性という意味だそうです。バッグの商品名が、『アケロバッグ』です。そこまでたどり着くまでに4年がかかりました。
『第6章 原石が宝石に変わるとき』
最初のうちは、バッグに不良品もあったそうです。根気よくやり直します。
ウガンダには、健康保険制度(みんなで、保険料を納めて、いざというときに保険料から医療費を支払う)がなく、借金をしてその場をしのぐそうです。
従業員の医療費を会社で出す。(年間限度額あり)
会社のお金を自分のポケットに入れてしまう人がいるそうです。本にも書いてありますが、盗んだお金で生活を続けることは容易ではありません。盗むことを仕事にするよりも、ちゃんと毎日働く方がお金になります。盗んだお金は一時的な収入でしかありません。
給料だけでは、従業員の確保がむずかしい。医療費支援や無利子のローンを提供したそうです。経営する人と雇われる人の間に信頼関係を築きます。
相場よりも高い給料も払います。
工房で働く現地女性の生活が豊かになっていきます。
『第7章 罪深きファッション産業』
「大量に作って大量に捨てる」やり方を問題視されています。
自然環境に悪影響を与えている面もあるそうです。「染料」とか、化学薬品の使用です。
大手のファストファッションブランドは、大量に作って、売れ残りを大量に捨てるそうです。
大量生産、大量消費、大量廃棄のサイクルがあるそうです。
いろいろ課題は多いです。
中国やインドから、コピー商品がウガンダに入ってくるそうです。布地の質が落ちるそうです。
西アフリカのガーナに、アフリカンプリントの工場がある。ウガンダとガーナの間は飛行機で10時間以上もかかるそうです。アフリカはなんて大きな大陸なのでしょう。
材料費はかかるけれど、本物のアフリカンプリントを仕入れていいものを作ります。
エシカル:倫理的という意味。エシカル消費は、①環境にダメージを与えていない。②その会社で働く人を苦しめていないというような商品をつくる。
『生産現場』のことが書いてあります。
ウガンダでは、劣悪な環境の中で労働者が働いているそうです。安い給料で長時間労働です。
政府に頼っても動いてくれないようです。
仲本千津さんは、快適な生産現場(職場)をつくって、インターネットで公開する取り組みをされています。お客さんから、いい商品をつくってくれてありがとうの声が労働者に届きます。働く張り合いがあります。
インスタライブ:インスタグラムを使って、リアルタイムで配信ができる機能。
『第8章 ウガンダのために、日本のためにも』
アフリカンプリントは、もとは、ヨーロッパ生まれだそうです。
ウガンダ生まれの素材を使ってものづくりをしたい。
『バークロス』:木からつくる。スエードのような革のような素材。不思議な風合い(ふうあい:手ざわり、感触、見た目、着心地など)がある。木の幹からとれる布。木は、『ムトゥバ』という種類。木の幹をはいで、素材にする。
マサカ:バークロスづくりで有名な土地。首都カンパラから車で、何時間もかかる。
大島紬(おおしまつむぎ):テレビ番組、『東野・岡村の旅猿 プライベートでごめんなさい』で、奄美大島ロケのときに、工程を観ました。泥で黒く染めた織物です。黒いバークロスは泥で染めるそうです。黒、白(もともとの色のようです)、茶色(日光にあてる)がある。バークロスでバッグをつくって売る。作り方の手法を知っている首都カンパラ在住ベルギー人女性エバと一緒に考える。できあがった商品に、『エバ・バッグ』と名づけました。
やりたいと思っていないことを仕事としてやっていくか、自分のやりたいことを仕事としてやっていくかというような迷いと選択のことが書いてあります。人はたいていやりたくないことをやってお金をもらうことでがまんしています。まずは、生活していくことが優先なのです。
テーブル・フォー・ツー(ふたりのための食卓。こどもたちが食事を分かち合う):途上国の課題と先進国の課題を同時に解決するビジネスのあり方。
『第9章 救えなかった命』
暗い話です。仲本千津さんの弟さんが、2歳のときに川遊び中、水の事故で亡くなっています。仲本千津さんは10歳でした。
こどもの事故は一瞬で起きるので、目を離さないようにしなければなりません。うちの息子も幼児のときに片足を大やけどしたことがあります。長いこと通院しました。まだ小さかったので、やけどのあとは消えました。ホッとしましたが、親として深く後悔しました。こどもが小さい時は、外へはあまり出歩かないほうが安全です。とくに水のそばと火のそばは危険です。キャンプやバーベキューは要注意です。車を動かすときにも車のそばに幼児がいないか注意を払います。最近のニュースだと、マンションの上階から幼児の転落事故などがあることを聞きます。
仲本千津さんとお母さんの律江さんは、会社リッチーエブリデイの創業日を、弟の大毅(だいき)さんの命日である8月26日にされました。みんなでがんばります。
『第10章 夢見る力』
2019年(令和元年)5月、代官山(東京都渋谷区)で直営ショップのオープンです。
2020年(令和2年)3月下旬、コロナ禍の影響が出始めます。ウガンダはロックダウンになってしまいました。仲本千津さんは、会社の倒産が心配です。工房スタッフに出勤しなくても給料は払う。3か月後にはロックダウンは終わると予想している。(そうしないと、優秀な従業員が離れて行ってしまう)。1か月半後に、ロックダウンが解除されています。
クラフト:工芸品、民芸品、手芸品
『第11章 平和をつくるバッグ』
ウガンダの工房:20人近いスタッフがいる。
仲本千津さんは、日本とウガンダを行ったり来たりしている。
UNHCR:ユーエヌエイチシーアール。国連難民高等弁務官事務所。難民の保護と支援をする国連の組織。難民:武力紛争や戦争などから他国に逃げてきた人。
国境なき医師団:国際的緊急医療団体。非政府組織。非営利の医療、人道援助団体。
赤十字(せきじゅうじ):人道支援を目的とする団体。人道:じんどう。人として行うべき道。
アフリカの課題:貧困、女性差別。
仲本千津さんの意思、願いとして、『女性が「こうありたい自分」を実現できるように支えたい』
なかなかできないことです。
まずは、将来自分がなにをして生活を成り立たせていくのかをじっくり考えることでしょう。そのためには、人の話を聞いたり、本を読んだりするといいでしょう。
とりあえず27ページまで読みました。
読みながら感想をつぎ足していきます。
偉人伝、伝記のようです。
仲本千津さんという女性の方について、江口絵里さんが聞き取りをして文章をつくって、この本ができあがっています。
仲本千津(なかもと・ちづ):1984年生まれですから、40歳ぐらいの女性です。社会起業家。ブランド(特定の商品、品物のこと。会社、組織)RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)の共同創業者兼COO(シーオーオー。チーフ・オペレーティング・オフィス。組織の責任者という役職名)。ロングヘアの小柄な女性。いつも心に秘めている思いは、『人の命を救いたい』です。
仲本千津さんは、アフリカにあるウガンダの工房で、現地の女性たちと布製のカバンをつくって日本で販売しています。
仕事をするときの動機付けは大事です。気持ちの根っこに、『世のため人のために働く』と、強く思わないと、職場での不祥事につながります。
『仕事は楽で、給料が良くて、休みが多いほうがいい』とだけ思う人は、仕事の手順を省略したり、会社や同僚のお金をポケットに入れたりすることがあります。働く場所では、仕事仲間同士の信頼関係は、とてもだいじです。
仲本千津さんの母親である律江さん:会社名の由来です。律(りつ)から「り」と千津から「ち」で、『リッチーエブリデイ』という社名です。おかあさんも会社のスタッフのひとりです。
ウガンダ:東アフリカにある国。旧イギリス植民地(1962年(昭和37年)にイギリスから独立)。人口約4570万人。首都カンパラ。
43ページに詳しい記事があります。赤道直下だが、高地にあるので(標高が高い。平均標高1200mぐらい)、一年中、日本の初夏のような気候が続く。湿度が低く快適な環境にある。治安がいい。人々が穏やか(おだやか)。農作物がよくとれる。マンゴー、スイカ、くだもの、お米、トウモロコシ、牛肉、鶏肉(とりにく)など。暮らしやすい。
されどウガンダは、世界で最も貧しい国のひとつだそうです。『産業』が不足している。『観光業』はある。国民は、大学を出ても安定した仕事がない。
男性が働かない。男性は、おしゃべりとギャンブルをしている。女性が働く。女性はとても忙しい。ある意味、女性で社会が成り立っている。でも、女性の立場は弱い。浮気男や暴力を振るう夫がいる。離婚するので、シングルマザーが多い。母子家庭です。
『はじめに』があって、第1章から第11章まであって、『おわりに』で終わります。
ウガンダの布地(色鮮やか。アフリカンプリント)を素材にして、ミシンで布バッグを縫って(ぬって)、日本で販売する組織の運営をしている人です。
ウガンダ人の女性8人(シングルマザーが多い)が、ミシンの前に座って、作業をしているようすが書いてあります。
社会起業家:社会にある課題を、事業によって解決することに取り組む人。社会にある課題とは、『貧困』、『格差』、『差別』、『戦争』、『環境破壊』、『地球温暖化』などです。
こどもたちに、社会起業家になることを勧める本だろうか。それとも、社会起業家という職種もありますという情報を提供する本だろうか。
『第1章 社会起業家 仲本千津』、『第2章 「私、国連で働く』
6歳ぐらいのころのエピソードがひとつ書いてあります。すべり台をすべって、泥水の水たまりに頭からつっこんだというような勇敢な姿です。
仲本千津さんは、4人きょうだいの一番上だそうです。
静岡県生まれ、その後千葉県居住ののち小学4年生から、静岡県内で育ったそうです。
両親と祖母、4人きょうだいの7人家族です。
小学5年生のとき、医師になりたいと思った。『国境なき医師団』に入ろうと思った。
中学一年生のときに、洋画、『シンドラーのリスト』を観て、深い感銘を受けたそうです。
わたしもシンドラーのリストを何回か観ました。最初シンドラーは、けしていい人ではありませんでしたが、ナチス・ドイツが、ユダヤ人を迫害するようすを見て、これはおかしいと思い、収容所に収容されているユダヤ人を自分の工場で雇用して、最終的にたくさんのユダヤ人の命を救います。シンドラーは、金もうけという商売をしながら、自分の利益を確保しつつ、ばれたら自分もナチス・ドイツに殺されるかもしれないという危険をくぐりぬけて生き延びた人でした。
わたしが映画を観たときの感想の一部をここに落としてみます。
『商人と軍人との贈収賄(ぞうしゅうわい)の世界です。給料以外の金と酒とタバコと宝石とが世の中を動かしています。(軍人が商人から金銭や物品を不正に受け取って、商品たちの有利なはからいをする)。(軍人が)裁量(さいりょう。決める)する権限を物々交換で自由自在に操って私腹をこやす者たちがたくさんいます。
捕まえたユダヤ人を雇用する。ユダヤ人には人件費がいらない。まるで懲役刑のようです。彼らはシンドラーが設立したお鍋をつくる会社で働きます。拘束はされますが、命は助かります。
シンドラーに命を助けられた片腕のない老人がシンドラーに、『アイ ワーク ハード(シンドラーあなたのために一生懸命働きます)』、シンドラーが軍人に、『ヴェルリ ユースフル(彼は有益な人物です)』、されど、その後老人は射殺されてしまいました。(片腕のない人間は道具として工場で役に立たないから)。それは、シンドラーの人として守るべき道を優先しようという方向への心変わりとなる出来事のひとつでした。
金もうけのことしか考えていなかった悪人のシンドラーが、ナチス・ドイツによるユダヤ人迫害の実態を見て、これではいけないと考え直して善人に変化していきます。人としてあるべき姿に目覚めたのです』
仲本志津さんは中学時代コーラス部に所属していた。学級委員、生徒会役員、部活の部長などリーダー的な役をやった。そのころのご本人の気持ちの持ち方として、『人の話をよく聞いて、それを実現する』というようなことが書いてあります。
緒方貞子(おがた・さだこ):国際政治学者。国際協力機構理事長。国連人権委員会日本政府代表。1927年(昭和2年)-2019年(令和元年)92歳没。
自分は長い間生きてきて、国連の職員として働いている人には一度だけ出会ったことがあります。ご近所に子どもさん連れのご家族で引っ越してこられて、話を聞いて、『国連』というところに就職するのにはどうやって試験などを受けるのだろうかとびっくりしました。その後数年たって、転居していかれました。
国際協力機構(JICAジャイカ)は、昨年秋、東京見物に行ったときに見学しました。中央線の市ヶ谷駅で降りて、坂道を上って行きました。『地球ひろば』を見学して、レストランで、そのとき提供されていたペルーのランチを食べました。おいしいというよりも、現地の人たちがふだん食べているもので、安価なふつうの味の主食という食事でした。
ジャイカの見学では、食事に加えて展示の内容も含めて、貧しい国を援助するということが、国際協力機構の果たす役割だと理解しました。
ウクライナへのロシアの攻撃を見ていて、国連(国際連合)の無力さを感じます。
国連は、そういう組織(集まり)があるというだけで、平和を成し遂げる機能を果たしていません。お役所的です。みための形が整っていればいいだけなのです。仕事はしていないけれど、仕事をしているふりをしていれば、給料がもらえて、自分の地位が保たれるのです。よくある話です。
仲本千津さんは、早稲田大学で、『国際関係論』を学んで、一橋大学大学院に進まれて、アフリカのサブサハラ(サハラ砂漠より南。アフリカの南部)で起きていた民族紛争を研究されています。
アフリカがヨーロッパの植民地だったことが書いてある本を読んだことがあります。アフリカの国境というのは、直線的なのですが、その土地の国民が引いた線ではなくて、よそから来た外国人が現地の人たちの意向とは関係なく引いた線だというものでした。
現地に住んでいるアフリカの人たちにとっては、意味のない国境線だったのです。
19世紀の中ごろから、イギリス、フランス、ドイツなどが、アフリカの地域を植民地にしたのです。その後、アフリカの国々として独立しています。民族ごとに国ができあがっていないので、民族紛争があるそうです。民族紛争はかなり深刻なようすです。
読んでいて思い出した本が一冊あります。
『インパラの朝 中村安希 集英社』読んだ時の感想の一部です。
この本は旅行記です。作者が26歳から28歳までの2年間、ユーラシア大陸からアフリカ大陸を女ひとり、バックパッカーとして旅をした記録です。
作者のテーマは、『貧富の差を目の当たりにすること(まのあたり)』そして、人間にとって大事なことは、『自由』であることです。『自由』とは、移動の自由です。旅であり、住む場所の選択でもあります。加えて、日本の国際貢献活動に関する批判があります。
予算の消化、派遣数の確保、宣伝のために、現地の人たちが望まない援助を無理やり押し付けている。これに対する作者の怒りは正当であり、正義があります。何ができるのか、真実をつきとめたいという若さがみなぎっています。
『援助』は、現地住民の平衡感覚を狂わせる。学校が建っても裕福なこどもしか通えない。ねたみ、そねみ、嫉妬(しっと)、対立が始まり、やがて『援助』が原因で地域内紛争が始まる。
外国人の日本人の性質に対する評価は低い。(厳しいご指摘です。援助は大切ですが、やり方を考えないと現地で暮らす人たちの迷惑になります)
-読後の記録が残っていないのですが、たしかこの本に次のようなことが書いてあった記憶です。
アフリカのジャングルの中で道に迷って一夜を過ごした。翌朝、現地住民に出会った。恐怖と不安で心が震えた。そしたら、みんなとても親切にしてくれた。みんな優しかった。
作者は、日本に自分の居場所がなかったから海外へ出た。作者が知ったのは、世界の国々に住む人たちは、お互いを知ろうとせず、マスメディア等でつくられたイメージで相手を判断する。おおいなる勘違いで世界が成り立っている。
そんなことが書いてあった記憶です。人間は本来、心優しい生き物なのです。いろいろな欲が入り混じると鬼になるのです。
こちらの本では、49ページに、支援されたほうが支援先に依存してしまうから、『自立』できる支援が大事だと書いてあります。国の上下関係、人間の上下関係はつくりたくないようすです。
さて、仲本千津さんは、大学院一年生の終わりに、アメリカ合衆国で栃迫篤昌(としさこ・あつまさ)さんという起業家に会い、彼が行っていた開発途上国の人を助けるビジネスを知ります。今後の進路を決めるきっかけがあった時です。
仲本千津さんは、大学院を二年生で修了し、大手銀行へ就職します。
27ページまで読みましたが、少ないページのなかに、大量の情報が入っている文章の書き方です。こどもさんが読むのには、ついていくのがたいへんかもしれません。
『第3章 銀行からアフリカ支援NGOへ』
NGO:非政府組織。市民が主体。営利を目的としない活動。ノン・ガヴァメンタル・オーガニゼーションズ。世界的な問題に取り組む。貧困、飢餓、環境などに取り組む市民団体のこと。
(つづく)
56ページまで読み終えました。
う~む。仕事の選択に関する小学校高学年向きの本なのでしょうが、一般的ではありません。
特殊な職業選択です。なかなか真似(まね)はできません。
第3章のはじめのところに書いてありますが、仲本千津さんは、大手銀行に就職したあと、業務内容が自分の望むものではなかったということで退職されています。
ひとつは、制服職場であることが理由でした。銀行に限らず、制服を着用して働く職場は、上司からの職務命令と、従業員の服従が基本で仕事を進めていきます。
従業員は、機械の歯車のようなものです。組織の上層部から言われたことを言われたとおりにやっていきます。
そうすれば、毎月決まった日に決まった給料がもらえます。ボーナスももらえます。たいていは退職金ももらえます。福利厚生があって、年金も本人負担と事業主負担(同額)分を納めることで、国民年金よりも多い額で年金の受給ができます。医療保険もあります。病気になったとき、安心して病院にかかることができます。そしてたいてい従業員は、一度や二度は、大きな病気やケガで入院をしたりもします。そうなっても、従業員の立場を守る規則があります。
組織目標は(会社の目標は)、まずは社会貢献ですが、大きな目標として、利潤の追求(りじゅんのついきゅう。お金を稼ぐ(かせぐ))ということがあります。お金がなければ会社や組織を維持していくことができません。
営利目的の組織で働く時には、自分ではない自分のようなものを演じて働きます。仕事用の自分を演じます。立場に応じてものを言います。かなり苦しいです。でも、お金をもらって、生活していかなければなりません。家族がいれば、家族を養っていかなければなりません。
人間にはふたつのタイプがあります。雇われて生活していく人と、自営で働いていく人です。
仲本千津さんは、自営で働いていくことにされました。
ご自分では銀行に就職されて、『やばっ! 私、まちがったところに来ちゃった……』と気づかれています。
仲本千津さんは、『決められた通りに、確実にやること』ができません。銀行職場には場違いの資質と能力の持ち主でした。
仕事を選ぶ時は、よ~く考えたほうがいい。わたしは、仕事は、才能と努力と人間関係だと思っています。自分は何だったらできるか、どんな苦痛だったら耐えられるか(仕事は苦痛に耐えるという面があります)、よ~く考えて仕事を選んだほうがいいです。
仲本千津さんは、三年間ぐらい銀行で働かれたあと、自分が希望する職に転身されています。
最近は、就職後すぐに辞めてしまう大卒の人が多い。
仕事を辞めて、食べていける(生活できる)ということが不思議です。親の援助でもあるのでしょうか。それとも、わざわざ正社員の職を捨てて、アルバイト生活を選択するのでしょうか。老齢である自分の世代にとっては不可解です。人生においては、なるべく無職の期間を短くすることが、生涯獲得賃金を十分確保するコツです。老後に受け取る年金の受給額にも影響してきます。若い頃はそういったことがわかりません。あとになって後悔します。
雇う側の立場として、ひとこと書いておきます。人、ひとり雇うのでも、時間と経費と手間がかかっています。この会社で働きたいと言ってきたから採用したのに、短期間で辞められたら、雇うほうにとっては、採用までに費やした、時間、経費、手間が水の泡です。損失が出ます。採用後の研修計画の実施にも変更がいります。ちゃんと手順を踏んだ段取りがしてあるのです。新人に仕事を教える先生役もあらかじめ決めてあります。
そして、仕事を辞めた人間にはわからないことでしょうが、辞めたあとのポスト(職)に欠員が出てしまいます。辞めた人の代わりはそうそう簡単には見つかりません。欠員となったひとり分の仕事量をほかの人たちでやらなければならなくなります。やりたくもない残業、やるはずでなかった残業を、在籍している従業員たちが、ぶつぶつ文句を言いながらやることになります。チームワークが乱れます。新規採用の早期退職は、まわりの人たちにたくさん迷惑をかけることに気づいておいてほしい。
あわせて、年休は全部消化してから辞めますとか、夏のボーナスをもらってから辞めますなどと言われると、仕事もしていないのにお金と休みだけもらって辞めるのか、バカヤローとなります。
それでも辞めるのなら引き止めませんが、みんな、あいつの顔は二度と見たくないと思うでしょう。
次の仕事がすんなり見つかるとも思えません。履歴書を見て、なぜ短期間でやめたのかという話になります。ああ、この人は仕事が続かない人だと判断されて、以降の求職活動では不採用になる可能性が高いでしょう。どこの会社や組織でも、負の財産になりそうな人は雇いません。自分のことだけ考えて、会社に貢献する意志がない人は雇えません。
2011年3月11日に起きた東日本大震災のことが書いてあります。
『死』を意識します。
仲本千津さんの中で、自分はいつ死ぬかわからないから、後悔のないような職業選択をしようという気持ちが湧いてきます。
小暮さん(こぐれさん):テーブル・フォー・ツー代表
凡人には、大学院に行ったり、アフリカに行ったりということはなかなかできません。発想すらしません。
笹川アフリカ協会(ささかわアフリカきょうかい):農業で、アフリカの貧困を救う。
英語はガッツで話せるようにしたというようなことが書いてあります。
鮫島弘子(さめじま・ひろこ):途上国で作った商品を先進国の人に売るビジネスをしている。バッグのブランドをつくった。エチオピア特産の羊の革(かわ)で高品質なバッグをつくり日本で売る。仲本千津さんは、鮫島弘子さんと行動を共にします。
豊田育雄:銀行の上司。
プロボノ:ボランティア。社会人経験、専門技術、知識のある人が、そのスキル(技術)を使ってボランティア活動をする。
師弟関係は仕事を身に着けるうえで必要な手段でしょう。教えてもらわないとできないことってあります。鮫島弘子さんが師匠で、仲本千津さんが弟子(でし)です。ファッション業界で事業をしていく手法を学びます。鮫島弘子さんの会社名が、『アンドゥアメット』。
メンター:自分の悩みや夢を聞いてくれる人。相談にのってくれる人。
仲本千津さんは、笹川アフリカ協会の配慮で、ウガンダ駐在員になりました。任期は一年以上です。
『第4章 起業』
仲本千津さんのウガンダ・首都カンパラでの生活スタートです。
母国語が英語ではないところの人が話す英語は聞き取りやすくわかりやすい。記号のようなものです。
60年ぐらい前の日本のいなかの暮らしに似ています。いなかでは、畑があって自給自足の暮らしがベースにありました。都市部で生活するには買い物をしなければならないのでお金がいります。
こどもの世話も田舎(いなか)なら、親族や近所の人に頼めましたが、都市部ではお金を出してどこかに預けなければなりません。
カンパラは都市部なので、お金がいります。シングルマザーたちには負担です。
いなかでの燃料は、豆炭、練炭(れんたん。七輪を使用していました(しちりん)、薪(まき))など、都市部では光熱費がいります。また、家賃がいります。
競争社会ではとかく弱者がおいてきぼりにされます。女、こども、高齢者、障害者などがおいてきぼりです。
仲本千津さんの願いは、人のためになる仕事をしたいことです。
仲本千津さんは、色鮮やかなアフリカンプリントに目を付けました。
布地を買ってきて、オーダーメイドで服をつくって、日本で売るという商売を思いつきます。おおもとの気持ちは、シングルマザーでがんばっている地元の主婦を応援するためです。
グレース・ナカウチ:自分のこども3人と亡姉のこども1人、ひとりで4人の子育てをしているシングルマザー。手先が器用(きよう。細かい作業をじょうずにできる)。
ウガンダの人は、お金で学歴を買う面があります。まあ、日本も同様ですが。
経済的な事情で、学力、能力があっても学校に行けない人たちが多いそうです。
ウガンダは、豚(ぶた)がお金代わりになる社会です。一度に8匹ぐらいの子豚が生まれる。子豚はお金になるそうです。子豚を売って学費にあてるそうです。
投資として豚を飼う。
先日読んだ長崎県を舞台にした本にも同類のことが書いてありました。豚ではなく、ニワトリでした。
『ニワトリと卵と、息子の思春期 繁延あづさ(しげのぶ・あづさ) 婦人之友社』以下、感想の一部です。
自立したいという、お子さんの反抗期の始まりがあります。
これまでは、おかあさんの言うことをきいてきた。でも、これからは、おかあさんのいうことをききたくないのです。母は母で、どう対応したらいいのかわからず悩みます。まっこうからダメと言えなくて、条件闘争になったりもします。(そうしたかったら、こういう条件をのみなさいというパターンです) 『お母さんがなんと言おうと、オレは放課後ゲームを買いに行く!』強い主張があります。オレの人生はオレのもので、お母さんのものではない。オレの人生をお母さんが支配することはできないというこどもさんからの強い主張が母親に対してあります。オレのことはオレが一番わかる。オレのことは、お母さんにはわからない。
ゲーム機を買うと吠えていた(ほえていた)ご長男が、ゲーム機ではなく、ニワトリを買ったというところがおもしろいエピソードです。理由は、卵がとれるからでした。
スーザン・アグーチ:従業員のひとり。バッグをつくってもらった。縫製(ほうせい。ミシンで縫ってつくる)の技術が高い女性だそうです。
ナジェラマ・サラ:革を縫う技術をもった女性。
雇う側の仲本千津さんの心の持ち方が書いてあります。『この人たちがいなかったら事業が成り立たない、対等のパートナー』として、三人のウガンダ人女性と接する。『従業員の生活に責任を負う経営者』になる。
『第5章 おかあちゃん 百貨店飛び込み営業事件』
ハンドメイドの生産です。(てづくり)。内職仕事のようでもあります。(主婦が、家事の合間に家でする仕事)。アフリカのシングルマザーを支援するバッグのビジネスを始めます。かわいそうな人たちが作ったバッグではない。同情で一度だけ買ってもらうバッグではなく、“サステナブル(持続可能な)”なビジネスにする。
実のお母さんにスタッフに入ってもらう。
アフリカンプリントの布地でバッグをつくって売る商売に参加してもらいます。
バイヤー:商品の買い付けや商品管理の仕事をする人
ポップアップストア:期間限定の特設ショップ
農業支援の仕事を辞めて、バッグ作りと販売に専念する。
レベッカアケロ:ウガンダでの会社組織名。仲本千津さんのウガンダ名からきているそうです。アケロが、『幸運』で、幸運を呼ぶ女性という意味だそうです。バッグの商品名が、『アケロバッグ』です。そこまでたどり着くまでに4年がかかりました。
『第6章 原石が宝石に変わるとき』
最初のうちは、バッグに不良品もあったそうです。根気よくやり直します。
ウガンダには、健康保険制度(みんなで、保険料を納めて、いざというときに保険料から医療費を支払う)がなく、借金をしてその場をしのぐそうです。
従業員の医療費を会社で出す。(年間限度額あり)
会社のお金を自分のポケットに入れてしまう人がいるそうです。本にも書いてありますが、盗んだお金で生活を続けることは容易ではありません。盗むことを仕事にするよりも、ちゃんと毎日働く方がお金になります。盗んだお金は一時的な収入でしかありません。
給料だけでは、従業員の確保がむずかしい。医療費支援や無利子のローンを提供したそうです。経営する人と雇われる人の間に信頼関係を築きます。
相場よりも高い給料も払います。
工房で働く現地女性の生活が豊かになっていきます。
『第7章 罪深きファッション産業』
「大量に作って大量に捨てる」やり方を問題視されています。
自然環境に悪影響を与えている面もあるそうです。「染料」とか、化学薬品の使用です。
大手のファストファッションブランドは、大量に作って、売れ残りを大量に捨てるそうです。
大量生産、大量消費、大量廃棄のサイクルがあるそうです。
いろいろ課題は多いです。
中国やインドから、コピー商品がウガンダに入ってくるそうです。布地の質が落ちるそうです。
西アフリカのガーナに、アフリカンプリントの工場がある。ウガンダとガーナの間は飛行機で10時間以上もかかるそうです。アフリカはなんて大きな大陸なのでしょう。
材料費はかかるけれど、本物のアフリカンプリントを仕入れていいものを作ります。
エシカル:倫理的という意味。エシカル消費は、①環境にダメージを与えていない。②その会社で働く人を苦しめていないというような商品をつくる。
『生産現場』のことが書いてあります。
ウガンダでは、劣悪な環境の中で労働者が働いているそうです。安い給料で長時間労働です。
政府に頼っても動いてくれないようです。
仲本千津さんは、快適な生産現場(職場)をつくって、インターネットで公開する取り組みをされています。お客さんから、いい商品をつくってくれてありがとうの声が労働者に届きます。働く張り合いがあります。
インスタライブ:インスタグラムを使って、リアルタイムで配信ができる機能。
『第8章 ウガンダのために、日本のためにも』
アフリカンプリントは、もとは、ヨーロッパ生まれだそうです。
ウガンダ生まれの素材を使ってものづくりをしたい。
『バークロス』:木からつくる。スエードのような革のような素材。不思議な風合い(ふうあい:手ざわり、感触、見た目、着心地など)がある。木の幹からとれる布。木は、『ムトゥバ』という種類。木の幹をはいで、素材にする。
マサカ:バークロスづくりで有名な土地。首都カンパラから車で、何時間もかかる。
大島紬(おおしまつむぎ):テレビ番組、『東野・岡村の旅猿 プライベートでごめんなさい』で、奄美大島ロケのときに、工程を観ました。泥で黒く染めた織物です。黒いバークロスは泥で染めるそうです。黒、白(もともとの色のようです)、茶色(日光にあてる)がある。バークロスでバッグをつくって売る。作り方の手法を知っている首都カンパラ在住ベルギー人女性エバと一緒に考える。できあがった商品に、『エバ・バッグ』と名づけました。
やりたいと思っていないことを仕事としてやっていくか、自分のやりたいことを仕事としてやっていくかというような迷いと選択のことが書いてあります。人はたいていやりたくないことをやってお金をもらうことでがまんしています。まずは、生活していくことが優先なのです。
テーブル・フォー・ツー(ふたりのための食卓。こどもたちが食事を分かち合う):途上国の課題と先進国の課題を同時に解決するビジネスのあり方。
『第9章 救えなかった命』
暗い話です。仲本千津さんの弟さんが、2歳のときに川遊び中、水の事故で亡くなっています。仲本千津さんは10歳でした。
こどもの事故は一瞬で起きるので、目を離さないようにしなければなりません。うちの息子も幼児のときに片足を大やけどしたことがあります。長いこと通院しました。まだ小さかったので、やけどのあとは消えました。ホッとしましたが、親として深く後悔しました。こどもが小さい時は、外へはあまり出歩かないほうが安全です。とくに水のそばと火のそばは危険です。キャンプやバーベキューは要注意です。車を動かすときにも車のそばに幼児がいないか注意を払います。最近のニュースだと、マンションの上階から幼児の転落事故などがあることを聞きます。
仲本千津さんとお母さんの律江さんは、会社リッチーエブリデイの創業日を、弟の大毅(だいき)さんの命日である8月26日にされました。みんなでがんばります。
『第10章 夢見る力』
2019年(令和元年)5月、代官山(東京都渋谷区)で直営ショップのオープンです。
2020年(令和2年)3月下旬、コロナ禍の影響が出始めます。ウガンダはロックダウンになってしまいました。仲本千津さんは、会社の倒産が心配です。工房スタッフに出勤しなくても給料は払う。3か月後にはロックダウンは終わると予想している。(そうしないと、優秀な従業員が離れて行ってしまう)。1か月半後に、ロックダウンが解除されています。
クラフト:工芸品、民芸品、手芸品
『第11章 平和をつくるバッグ』
ウガンダの工房:20人近いスタッフがいる。
仲本千津さんは、日本とウガンダを行ったり来たりしている。
UNHCR:ユーエヌエイチシーアール。国連難民高等弁務官事務所。難民の保護と支援をする国連の組織。難民:武力紛争や戦争などから他国に逃げてきた人。
国境なき医師団:国際的緊急医療団体。非政府組織。非営利の医療、人道援助団体。
赤十字(せきじゅうじ):人道支援を目的とする団体。人道:じんどう。人として行うべき道。
アフリカの課題:貧困、女性差別。
仲本千津さんの意思、願いとして、『女性が「こうありたい自分」を実現できるように支えたい』
なかなかできないことです。
まずは、将来自分がなにをして生活を成り立たせていくのかをじっくり考えることでしょう。そのためには、人の話を聞いたり、本を読んだりするといいでしょう。
2024年05月18日
東京証券取引所 日本橋 貨幣博物館 日本銀行
東京証券取引所 日本橋 貨幣博物館 日本銀行
昨年秋に訪れて、『株式投資』のカテゴリー(項目)に入れていた記事の一部分について、観光案内を目的として、カテゴリー『東京』にも再掲しておきます。
最初に見学したのは、東京証券取引所です。東証アローズです。
無料で見学ができました。写真撮影もできました。そこそこの人数の見学者がありました。外国の人も見学されていました。
なんというか、いい職場だなーーと勝手な解釈をしました。静かです。見学者の人たちはどなたも上品そうです。
医療とか福祉の仕事だと、生きるか死ぬかで悩んだり、すったもんだしたりするのですが、お金扱いのことだけなら生きるか死ぬかまではいかないので安心な仕事だと、熊太郎夫婦は見学を終えて話をしたのでした。こちらは、『損か得か』の世界です。
次の写真は、儀式の時に鳴らす鐘です。
次のパネル写真は、大河ドラマの素材になった渋沢栄一さんです。
以前本を読んだことがあります。『現代語訳 論語と算盤 渋沢栄一 守屋淳・訳 ちくま新書』渋沢栄一:1840年(天保11年)-1931年(昭和6年)91歳没 1968年が明治元年 農家、武士、官僚、実業家、慈善家。この本は、渋沢栄一さんが書いたものではなく、渋沢栄一さんの講演の口述をまとめたものだという説明が冒頭にあります。
渋沢栄一さんは、「近代日本の設計者の一人」と「はじめに」の記述にあります。設立に関わった会社が481社、500以上の慈善事業に関わった。
資本主義は、金もうけが推進力だから、ときに、大きな惨事を引き起こす。バブル経済の崩壊、金融危機があったとあります。それにブレーキをかけるのが孔子の「論語」とあります。「人はどう生きるべきか」を前提にして経済活動を行う。
先日三重テレビで放送されている株式の番組『東京マーケットワイド』を観ていたときに、次の写真のまんなかにある空間で上場の儀式が行われていました。エスカレーターをおりて、わたしたち夫婦もその場所に立ってみました。とても静かでした。
見学を終えて川沿いに歩き始めたら、『兜神社(かぶとじんじゃ)』がありました。
世界が平和で、みんながお金持ちになりますようにと、おさいせんを100円入れてお参りしておきました。
日本橋のモニュメントです。橋の欄干(らんかん)にある青銅の麒麟像(きりんぞう)です。モニュメント:記念碑(きねんひ)
日本銀行と道をへだてて建っている『貨幣博物館』を見学しました。無料です。手荷物検査があります。館内の写真撮影はできません。
孫たちが好きな『人生ゲーム』が、ガラス張りの中にある棚に展示してあったので、ひっくりかえるほどびっくりしました。ただし、孫の人生ゲームは、ドラえもん版の人生ゲームです。細長い紙の箱に、おもちゃのお札が種類別に差し込んであるつくりはいっしょです。
館内では、貨幣の歴史が詳しく、実物を展示しながら説明がなされていました。小判とか紙幣とか、外国のものも含めて展示があります。けっこうたくさんの人が見学されていました。
貨幣博物館の出入口付近から日本銀行の建物を撮影しました。木の枝がいっぱいでうまく撮影できませんでした。
事前予約で日銀の見学ができるそうなので、いつか中を見学したいものです。
東京は、狭い区域の中にぎっしりとたくさんのものが凝縮されています。
便利ではありますが、少し疲れます。
昨年秋に訪れて、『株式投資』のカテゴリー(項目)に入れていた記事の一部分について、観光案内を目的として、カテゴリー『東京』にも再掲しておきます。
最初に見学したのは、東京証券取引所です。東証アローズです。
無料で見学ができました。写真撮影もできました。そこそこの人数の見学者がありました。外国の人も見学されていました。
なんというか、いい職場だなーーと勝手な解釈をしました。静かです。見学者の人たちはどなたも上品そうです。
医療とか福祉の仕事だと、生きるか死ぬかで悩んだり、すったもんだしたりするのですが、お金扱いのことだけなら生きるか死ぬかまではいかないので安心な仕事だと、熊太郎夫婦は見学を終えて話をしたのでした。こちらは、『損か得か』の世界です。
次の写真は、儀式の時に鳴らす鐘です。
次のパネル写真は、大河ドラマの素材になった渋沢栄一さんです。
以前本を読んだことがあります。『現代語訳 論語と算盤 渋沢栄一 守屋淳・訳 ちくま新書』渋沢栄一:1840年(天保11年)-1931年(昭和6年)91歳没 1968年が明治元年 農家、武士、官僚、実業家、慈善家。この本は、渋沢栄一さんが書いたものではなく、渋沢栄一さんの講演の口述をまとめたものだという説明が冒頭にあります。
渋沢栄一さんは、「近代日本の設計者の一人」と「はじめに」の記述にあります。設立に関わった会社が481社、500以上の慈善事業に関わった。
資本主義は、金もうけが推進力だから、ときに、大きな惨事を引き起こす。バブル経済の崩壊、金融危機があったとあります。それにブレーキをかけるのが孔子の「論語」とあります。「人はどう生きるべきか」を前提にして経済活動を行う。
先日三重テレビで放送されている株式の番組『東京マーケットワイド』を観ていたときに、次の写真のまんなかにある空間で上場の儀式が行われていました。エスカレーターをおりて、わたしたち夫婦もその場所に立ってみました。とても静かでした。
見学を終えて川沿いに歩き始めたら、『兜神社(かぶとじんじゃ)』がありました。
世界が平和で、みんながお金持ちになりますようにと、おさいせんを100円入れてお参りしておきました。
日本橋のモニュメントです。橋の欄干(らんかん)にある青銅の麒麟像(きりんぞう)です。モニュメント:記念碑(きねんひ)
日本銀行と道をへだてて建っている『貨幣博物館』を見学しました。無料です。手荷物検査があります。館内の写真撮影はできません。
孫たちが好きな『人生ゲーム』が、ガラス張りの中にある棚に展示してあったので、ひっくりかえるほどびっくりしました。ただし、孫の人生ゲームは、ドラえもん版の人生ゲームです。細長い紙の箱に、おもちゃのお札が種類別に差し込んであるつくりはいっしょです。
館内では、貨幣の歴史が詳しく、実物を展示しながら説明がなされていました。小判とか紙幣とか、外国のものも含めて展示があります。けっこうたくさんの人が見学されていました。
貨幣博物館の出入口付近から日本銀行の建物を撮影しました。木の枝がいっぱいでうまく撮影できませんでした。
事前予約で日銀の見学ができるそうなので、いつか中を見学したいものです。
東京は、狭い区域の中にぎっしりとたくさんのものが凝縮されています。
便利ではありますが、少し疲れます。
2024年05月17日
さよならプラスチック・ストロー ディー・ロミート文
さよならプラスチック・ストロー ディー・ロミート文 ズユェ・チェン絵 千葉茂樹・訳 光村教育図書
これから読みながら文章をつくりますが、地球環境を守ろうという呼びかけの本でしょう。
プラスチックが、地球上でゴミとなって、分解されずに(土に戻らない)、生物に対して悪い影響を及ぼしています。生物が死んじゃいます。
そんな話が始まるのでしょう。
5000年以上前に地球上にいた古代シュメール人が、いまでいうところのストローがなくて困っていたという話から始まります。
その部分を読んで思い出した一冊があります。
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 ムンディ先生こと山﨑圭一 SBクリエイティブ』
メソポタミア文明(『メソポタミア』は、『川の間の土地』という意味らしい)。ティグリス川とユーフラテス川にはさまれた現在のイラクに昔いた民族の文明です。
アッカド王国と古バビロニア王国があります。シュメールの都市国家として、『ウルク』と『ウル(この絵本では、ウルの女王であった「女王プアビ」のことが書いてあります)』があります。約6000年前にメソポタミア文明が成立したと書いてあります。
シュメール人の土木に関する技術が非常に高度だった。シュメール人は、高さ20mのジックラド(聖塔)を建てた。
さて今読んでいるこの絵本では、シュメール人がつくったビールを飲むのに、ビールの上に麦の殻(から)や、かけらが浮いていて飲みにくかったとあります。ビールの底には、おり(かす)が沈んでいた。
シュメール人には、知恵があったようで、いろいろ工夫しています。シュメール人が、世界で最初の文字を考案した。農作業用の鋤(すき)をつくった。帆船や車輪を発明したとあります。
ストローがわりに、植物の『葦(あし)』を使うことを発案したとあります。
『人間は考える葦である』という言葉を思い出しました。フランスの思想家・哲学者パスカル(1623年-1662年39歳没)の言葉です。人間は葦のように弱弱しいけれど、考えることができるという意味だそうです。考えることができるということは、偉大な力をもっているということらしい。(言葉の意味は、自分には、ちょっとよくわかりません。いずれにしても、シュメール人は、ストローの役割をするものを考え出しました。そして、葦(あし)のストローは、使わなくなれば、自然界にかえるのです)(その後:人間は考えることで、『無限の可能性をもっている』けれど、『人間の力は有限(限りがある)でもある』という表現だそうです。葦(あし)はちっぽけなのです)
絵本の表紙では、海鳥やウミガメが、海に捨てられたストローで困っています。かれらにとって、ストローが命を落とす原因になっているからです。
人間はわがままです。自分たちだけがいい思いをすれば、ほかの生き物はどうなろうと、知ったこっちゃないという気持ちで生活しているのです。
理科の本みたいです。
中国でワインを飲むときに使用した、『植物のくき』とか、南アメリカでお茶を飲むときに使用した、『ボンビージャ』という金属のチューブが書いてあります。
1800年代で、ライ麦のくきが使われています。
ストロー=稲や麦など穀物のくきだそうです。
アメリカのマービン・ストーンという人が、紙をくるくると丸めてのりでとめて、自前のストローを考案します。考えたら、簡単なことでした。1888年に特許をとって、事業化しています。さぞやもうかったことでしょう。『人造ストロー』です。
日本のことは書いてありませんが、日本人の頭脳だって優秀ですから、ストローぐらいのことは、昔の日本において、考案できていたと想像します。
ストローの歴史紹介です。
まっすぐなストローは飲みにくい。発明家のジェゼフ・フリードマンと彼の娘のジュディスが、ミルクシェークを飲むことをきっかけにして、曲がるストローをつくりだしています。
1937年(日本だと、昭和12年)に、『ドリンキング・チューブ』と名づけて特許をとっています。それでもすぐには売れなかった。10年ほどがたって、病院で使用が始まった。さらに10年ぐらいがたって、1960年代にプラスチックのストローが世界中に普及した。なにせ、ストローは便利です。
やがて、使い捨てのプラスチック製品が地球環境を破壊するものとして問題になります。
プラスチックには、『生分解性』がない。土にかえらない。自然に腐らない(くさらない)。水にとけない。
プラスチック製品が捨てられて、海にたどりついて、海で暮らす生き物たちの命を奪っていく。
利用する人間にも問題があるのでしょうが、そういうものをつくって、お金もうけをする人間に問題があります。
『ストローをやめて海を守ろう』
『ストローをなくそう』
そう考える人間もいます。人間は考える葦(あし)なのです。
2011年にマイロ・クレスという少年が、『ストローをなくそう』というキャンペーンを始めたそうです。キャンペーン:宣伝活動
絵本にはいろんなストローの絵があります。竹のストロー、紙のストロー、金属製のストローなどです。
絵本のタイトルどおり、『さようならプラスチック・ストロー』です。
地球環境保護のための啓発本です。けいはつ:教えて、理解してもらえるよう導くこと。
ウミガメの鼻につまったプラスチック製のストローを引き抜くシーンの動画があったそうです。
もうひとつは、太平洋のミッドウェー島に生息するコアホウドリの胃に、ぎっしりとプラスチックがつまっていたそうです。
3Rについて書いてあります。
地球環境を守るための行動指針です。(目標)
Reduce(リデュース):ゴミを減らす。
Reuse(リユース):再利用する。
Recycle(リサイクル):資源として再利用する。
もうひとつ、Refuse(リフューズ):必要がないものを断るとあります。
そういったことは、今言われ始めたことではなく、日本ではごみ処理問題が顕在化(けんざいか。表に出た)した2000年過ぎぐらいから、とても細かいごみの分別収集への取り組みがあったことを思い出しました。
ゴミ捨て場となる埋立地がごみで満杯になりそうで、大慌てになったことがありました。ごみの埋め立てをするための代替え地が見つからないのです。結局、人間はやりたい放題やると、自分たちの居場所までなくしてしまうのです。地球に住めなくなってしまいます。
これから読みながら文章をつくりますが、地球環境を守ろうという呼びかけの本でしょう。
プラスチックが、地球上でゴミとなって、分解されずに(土に戻らない)、生物に対して悪い影響を及ぼしています。生物が死んじゃいます。
そんな話が始まるのでしょう。
5000年以上前に地球上にいた古代シュメール人が、いまでいうところのストローがなくて困っていたという話から始まります。
その部分を読んで思い出した一冊があります。
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書 ムンディ先生こと山﨑圭一 SBクリエイティブ』
メソポタミア文明(『メソポタミア』は、『川の間の土地』という意味らしい)。ティグリス川とユーフラテス川にはさまれた現在のイラクに昔いた民族の文明です。
アッカド王国と古バビロニア王国があります。シュメールの都市国家として、『ウルク』と『ウル(この絵本では、ウルの女王であった「女王プアビ」のことが書いてあります)』があります。約6000年前にメソポタミア文明が成立したと書いてあります。
シュメール人の土木に関する技術が非常に高度だった。シュメール人は、高さ20mのジックラド(聖塔)を建てた。
さて今読んでいるこの絵本では、シュメール人がつくったビールを飲むのに、ビールの上に麦の殻(から)や、かけらが浮いていて飲みにくかったとあります。ビールの底には、おり(かす)が沈んでいた。
シュメール人には、知恵があったようで、いろいろ工夫しています。シュメール人が、世界で最初の文字を考案した。農作業用の鋤(すき)をつくった。帆船や車輪を発明したとあります。
ストローがわりに、植物の『葦(あし)』を使うことを発案したとあります。
『人間は考える葦である』という言葉を思い出しました。フランスの思想家・哲学者パスカル(1623年-1662年39歳没)の言葉です。人間は葦のように弱弱しいけれど、考えることができるという意味だそうです。考えることができるということは、偉大な力をもっているということらしい。(言葉の意味は、自分には、ちょっとよくわかりません。いずれにしても、シュメール人は、ストローの役割をするものを考え出しました。そして、葦(あし)のストローは、使わなくなれば、自然界にかえるのです)(その後:人間は考えることで、『無限の可能性をもっている』けれど、『人間の力は有限(限りがある)でもある』という表現だそうです。葦(あし)はちっぽけなのです)
絵本の表紙では、海鳥やウミガメが、海に捨てられたストローで困っています。かれらにとって、ストローが命を落とす原因になっているからです。
人間はわがままです。自分たちだけがいい思いをすれば、ほかの生き物はどうなろうと、知ったこっちゃないという気持ちで生活しているのです。
理科の本みたいです。
中国でワインを飲むときに使用した、『植物のくき』とか、南アメリカでお茶を飲むときに使用した、『ボンビージャ』という金属のチューブが書いてあります。
1800年代で、ライ麦のくきが使われています。
ストロー=稲や麦など穀物のくきだそうです。
アメリカのマービン・ストーンという人が、紙をくるくると丸めてのりでとめて、自前のストローを考案します。考えたら、簡単なことでした。1888年に特許をとって、事業化しています。さぞやもうかったことでしょう。『人造ストロー』です。
日本のことは書いてありませんが、日本人の頭脳だって優秀ですから、ストローぐらいのことは、昔の日本において、考案できていたと想像します。
ストローの歴史紹介です。
まっすぐなストローは飲みにくい。発明家のジェゼフ・フリードマンと彼の娘のジュディスが、ミルクシェークを飲むことをきっかけにして、曲がるストローをつくりだしています。
1937年(日本だと、昭和12年)に、『ドリンキング・チューブ』と名づけて特許をとっています。それでもすぐには売れなかった。10年ほどがたって、病院で使用が始まった。さらに10年ぐらいがたって、1960年代にプラスチックのストローが世界中に普及した。なにせ、ストローは便利です。
やがて、使い捨てのプラスチック製品が地球環境を破壊するものとして問題になります。
プラスチックには、『生分解性』がない。土にかえらない。自然に腐らない(くさらない)。水にとけない。
プラスチック製品が捨てられて、海にたどりついて、海で暮らす生き物たちの命を奪っていく。
利用する人間にも問題があるのでしょうが、そういうものをつくって、お金もうけをする人間に問題があります。
『ストローをやめて海を守ろう』
『ストローをなくそう』
そう考える人間もいます。人間は考える葦(あし)なのです。
2011年にマイロ・クレスという少年が、『ストローをなくそう』というキャンペーンを始めたそうです。キャンペーン:宣伝活動
絵本にはいろんなストローの絵があります。竹のストロー、紙のストロー、金属製のストローなどです。
絵本のタイトルどおり、『さようならプラスチック・ストロー』です。
地球環境保護のための啓発本です。けいはつ:教えて、理解してもらえるよう導くこと。
ウミガメの鼻につまったプラスチック製のストローを引き抜くシーンの動画があったそうです。
もうひとつは、太平洋のミッドウェー島に生息するコアホウドリの胃に、ぎっしりとプラスチックがつまっていたそうです。
3Rについて書いてあります。
地球環境を守るための行動指針です。(目標)
Reduce(リデュース):ゴミを減らす。
Reuse(リユース):再利用する。
Recycle(リサイクル):資源として再利用する。
もうひとつ、Refuse(リフューズ):必要がないものを断るとあります。
そういったことは、今言われ始めたことではなく、日本ではごみ処理問題が顕在化(けんざいか。表に出た)した2000年過ぎぐらいから、とても細かいごみの分別収集への取り組みがあったことを思い出しました。
ゴミ捨て場となる埋立地がごみで満杯になりそうで、大慌てになったことがありました。ごみの埋め立てをするための代替え地が見つからないのです。結局、人間はやりたい放題やると、自分たちの居場所までなくしてしまうのです。地球に住めなくなってしまいます。
2024年05月16日
ゴジラ‐1.0(ゴジラマイナスワン) 邦画 2023年
ゴジラ‐1.0(ゴジラマイナスワン) 邦画 2023年 125分 動画配信サービス
テレビをつけたら、『ゴジラ‐1.0』が動画配信サービスで無料ですと表示が出たので、すぐに観始めました。話題になった映画です。夕食を食べながら家族と最後まで観ました。
動画配信サービスに加入しているので、別途料金はいりませんということでした。
『ゴジラ‐1.0』は、話の中身というよりも映像を楽しむ映画だろうという先入観をもちながら観ました。そのとおりでした。
舞台は、南太平洋の島で始まります。時代は第二次世界大戦中です。ゴジラが出て来て暴れて犠牲者複数が出ました。
ゴジラが人間を口にくわえる映像を初めて見ました。これまでは、技術的に人間を口にくわえさせることができなかったのかもしれません。
ゴジラの動きや表情がリアルでした。(怖い(こわい))
ゴジラはなんだか爬虫類(はちゅうるい)みたいです。
半世紀以上前、自分が小学生だった時は、怪獣の中では、ガメラが好きで、ガメラはカメでした。自分が、カメが好きだったということもあります。
小学生の時に、中学のときに病気で死んだオヤジとふたりで映画館に行きました。たしか、『ガメラ対バルゴン』という映画でした。
オヤジは、たまに、小学生だったわたしを映画に連れていくことがあり、クレージーキャッツのお気楽なサラリーマンの映画を見ていた時に、オヤジが大イビキをかきながら座席で寝てしまい、オヤジがもう起きなかったらどうしようかと、スクリーンよりもオヤジのほうばかりを見ながらハラハラドキドキしていた記憶があります。
映画のスクリーンでは、クレージーキャッツの植木等さんが、ビルの外側につかまってのぼるような、あるいはおりるようなシーンを見た覚えがありますが、記憶が定かではありません。ああ、話が脱線してしまいました。
まあ、こちらのゴジラですが、ストーリーの進行にはムリがあります。
人間たちが、ゴジラに向かっていきますが、ゴジラは、弾丸を撃って倒せるような相手ではありません。
東京の昭和二十年終戦頃の風景は、つくってある風景です。邦画、『三丁目の夕日シリーズ』を思い出す映像づくりでした。
話の展開は、マンガチックです。(おおげさ、誇張、単純)。登場人物同士の会話が稚拙な面もありました。(ちせつ:こどもっぽい)
主人公男子が周囲からかなり責められますが、現実社会ではそのようなことはありません。だれだって失敗はあります。お互い様です。映像は、いじめのようでした。
映像に広がる荒廃した集落は、パレスチナのガザ地区のような風景、光景でした。
虐殺された民族が、今度は虐殺する側の民族になる。人間という存在は地球の大自然にとっては、悪魔のような存在でしょう。
1946年3月(昭和21年。終戦の翌年)になりました。
深海魚がたくさん海面に浮かぶと、ゴジラが現れます。
映画の内容をひっぱるフレーズとして、『政府はこの情報を国民に隠しています。情報統制はこの国のお家芸です』というものです。現在はSNSがあるので、隠すことはむずかしい。逆にフェイク(ウソの情報)が流れたりもします。
炎(ほのお)のシーンが何度か出てきます。撮影で使っているあの炎は灯り(あかり)のようなもので、物は燃えない炎だろうとか、案外あの炎は、触る(さわる)と冷たかったりもするのではなかろうかと思いを巡らせました。
ゴジラに立ち向かっていく木造船はかなり古いタイプです。日本史の古代、卑弥呼(ひみこ)の時代とか、飛鳥時代、奈良時代の遣隋使とか遣唐使で使用されていたような船です。びっくりしました。
物語では、妻でもない同居していた女性の死の情報が、登場人物男子のゴジラを倒す強い動機になりますが不自然です。人間の感情はそのようには動きません。
登場人物に、特攻隊(自爆)のようなことをさせてはいけません。(アニメ映画、『宇宙戦艦ヤマト』に出ていた、たしか山本という隊員を思い出しました。彼は、映画の最後のほうで、地球を救うために、自らの命を犠牲にしました)
女性の死と自爆という動きは、最終部で回収されました。結果は、現代的な良い方向に動いています。命を粗末にはしません。
わだつみ作戦:『わだつみ』は、海の神のこと。
電報のシーンがなつかしかった。
先日観た邦画、『銀河鉄道の父』でも電報のシーンがありました。
もう今どき、電報は打つことも受けることもなくなりました。
ゴジラの大暴れは、迫力のあるシーンでした。
元プロ野球選手の松井秀喜さんを思い出しました。『ゴジラ松井』と呼ばれていました。今は、『お~たにさ~ん』の時代です。
タイトルのマイナス1.0の意味をとれなかったのですが、恐怖度指数のようです。戦争に負けて、何もかもを失って、基準点が、『0』で、そこからマイナスに至っていく。
次につくるときのゴジラ映画は、『-1.1』とかで、不幸の指数が上昇していくというような意味あいだと、ネットのどこかに書いてありました。
わたしは、温度かと思いました。超低温になると、ゴジラの動きが止まって、ゴジラが冬眠しているような状態になる。だから、ゴジラの体をマイナス何百度というくらいの温度で冷やすというような流れになるのかもと思いながらこの映画を観始めました。だから、ネットで見たさきほどの説明のとおりとも思えないのです。
テレビをつけたら、『ゴジラ‐1.0』が動画配信サービスで無料ですと表示が出たので、すぐに観始めました。話題になった映画です。夕食を食べながら家族と最後まで観ました。
動画配信サービスに加入しているので、別途料金はいりませんということでした。
『ゴジラ‐1.0』は、話の中身というよりも映像を楽しむ映画だろうという先入観をもちながら観ました。そのとおりでした。
舞台は、南太平洋の島で始まります。時代は第二次世界大戦中です。ゴジラが出て来て暴れて犠牲者複数が出ました。
ゴジラが人間を口にくわえる映像を初めて見ました。これまでは、技術的に人間を口にくわえさせることができなかったのかもしれません。
ゴジラの動きや表情がリアルでした。(怖い(こわい))
ゴジラはなんだか爬虫類(はちゅうるい)みたいです。
半世紀以上前、自分が小学生だった時は、怪獣の中では、ガメラが好きで、ガメラはカメでした。自分が、カメが好きだったということもあります。
小学生の時に、中学のときに病気で死んだオヤジとふたりで映画館に行きました。たしか、『ガメラ対バルゴン』という映画でした。
オヤジは、たまに、小学生だったわたしを映画に連れていくことがあり、クレージーキャッツのお気楽なサラリーマンの映画を見ていた時に、オヤジが大イビキをかきながら座席で寝てしまい、オヤジがもう起きなかったらどうしようかと、スクリーンよりもオヤジのほうばかりを見ながらハラハラドキドキしていた記憶があります。
映画のスクリーンでは、クレージーキャッツの植木等さんが、ビルの外側につかまってのぼるような、あるいはおりるようなシーンを見た覚えがありますが、記憶が定かではありません。ああ、話が脱線してしまいました。
まあ、こちらのゴジラですが、ストーリーの進行にはムリがあります。
人間たちが、ゴジラに向かっていきますが、ゴジラは、弾丸を撃って倒せるような相手ではありません。
東京の昭和二十年終戦頃の風景は、つくってある風景です。邦画、『三丁目の夕日シリーズ』を思い出す映像づくりでした。
話の展開は、マンガチックです。(おおげさ、誇張、単純)。登場人物同士の会話が稚拙な面もありました。(ちせつ:こどもっぽい)
主人公男子が周囲からかなり責められますが、現実社会ではそのようなことはありません。だれだって失敗はあります。お互い様です。映像は、いじめのようでした。
映像に広がる荒廃した集落は、パレスチナのガザ地区のような風景、光景でした。
虐殺された民族が、今度は虐殺する側の民族になる。人間という存在は地球の大自然にとっては、悪魔のような存在でしょう。
1946年3月(昭和21年。終戦の翌年)になりました。
深海魚がたくさん海面に浮かぶと、ゴジラが現れます。
映画の内容をひっぱるフレーズとして、『政府はこの情報を国民に隠しています。情報統制はこの国のお家芸です』というものです。現在はSNSがあるので、隠すことはむずかしい。逆にフェイク(ウソの情報)が流れたりもします。
炎(ほのお)のシーンが何度か出てきます。撮影で使っているあの炎は灯り(あかり)のようなもので、物は燃えない炎だろうとか、案外あの炎は、触る(さわる)と冷たかったりもするのではなかろうかと思いを巡らせました。
ゴジラに立ち向かっていく木造船はかなり古いタイプです。日本史の古代、卑弥呼(ひみこ)の時代とか、飛鳥時代、奈良時代の遣隋使とか遣唐使で使用されていたような船です。びっくりしました。
物語では、妻でもない同居していた女性の死の情報が、登場人物男子のゴジラを倒す強い動機になりますが不自然です。人間の感情はそのようには動きません。
登場人物に、特攻隊(自爆)のようなことをさせてはいけません。(アニメ映画、『宇宙戦艦ヤマト』に出ていた、たしか山本という隊員を思い出しました。彼は、映画の最後のほうで、地球を救うために、自らの命を犠牲にしました)
女性の死と自爆という動きは、最終部で回収されました。結果は、現代的な良い方向に動いています。命を粗末にはしません。
わだつみ作戦:『わだつみ』は、海の神のこと。
電報のシーンがなつかしかった。
先日観た邦画、『銀河鉄道の父』でも電報のシーンがありました。
もう今どき、電報は打つことも受けることもなくなりました。
ゴジラの大暴れは、迫力のあるシーンでした。
元プロ野球選手の松井秀喜さんを思い出しました。『ゴジラ松井』と呼ばれていました。今は、『お~たにさ~ん』の時代です。
タイトルのマイナス1.0の意味をとれなかったのですが、恐怖度指数のようです。戦争に負けて、何もかもを失って、基準点が、『0』で、そこからマイナスに至っていく。
次につくるときのゴジラ映画は、『-1.1』とかで、不幸の指数が上昇していくというような意味あいだと、ネットのどこかに書いてありました。
わたしは、温度かと思いました。超低温になると、ゴジラの動きが止まって、ゴジラが冬眠しているような状態になる。だから、ゴジラの体をマイナス何百度というくらいの温度で冷やすというような流れになるのかもと思いながらこの映画を観始めました。だから、ネットで見たさきほどの説明のとおりとも思えないのです。
2024年05月15日
エーザイとか、レカネマブとか 株式取引
エーザイとか、レカネマブとか 株式取引
今年2024年(令和6年)4月25日(木)日経平均株価がまた急落して、831.60円下がりました。がっかりして、自分の持ち株を見たら、とある株が、爆上げみたいになっていてびっくりしました。
製薬会社のエーザイの株です。認知症の薬、『レカネマブ(商品名は、レケンビです。おおもとは、レカネマブで、これからさき、レカネマブを下地(したじ)にした薬がまたできて、新しい商品名を付けていくようです)』の使用量が米国や日本で増えてきているというニュースがあったことが理由でした。
わかる人にはわかると思うのですが、この一年間、エーザイ株は乱調でした。激しく上がったあと、長らく右肩下がりのグラフを描いて、株価はずいぶん安くなってしまいました。
思い起こせば一年ぐらい前、証券会社の担当者に勧められて、熟考(じゅっこう。十分よく考えた)をした末に手に入れた株でした。
認知症に効く新薬、『レカネマブ』が世界中で承認だか認可だかされて、たくさん使われるようになるので、企業の利益上昇とともに、株価も上がっていくと聞きました。
超高齢でふたりとも身体障害者だった義父母の介護で7年間ぐらい苦労したあとでした。義母は認知症の状態で幻覚がありました。
3年前の秋に、最初は義父、翌月に義母が亡くなり、2か月続けて同じ葬祭場で葬儀をしました。
妻が一番たいへんな思いをしました。そんな体験が下地にあって、証券会社の担当者の話を聞いて、認知症の薬が世界中に普及するのなら協力したいと思いました。
もうひとつの理由が、太川陽介さんとえびすよしかずさんのローカル路線バス乗り継ぎ人情旅の再放送を見ていてのことでした。『太川&えびすのローカル路線バス乗り継ぎの旅 第14弾 名古屋から能登半島最北端の岬 2013年4月放送分の再放送(平成25年分) BSテレ東』、ゲストの森下千里さんを含めた3人が、旅の途中で次のバスが来るまで待ち時間があったので、たまたま立ち寄った場所があります。3人は、岐阜県各務原市(かかみがはらし)にあるエーザイの、『くすり博物館』を見学しました。最初は、えびすよしかずさんが、そんなおもしろくもなさそうなところは見たくないと言っていたのですが、えびすさんはくすり博物館を見学後、見て良かった。ためになったと展示の内容をほめていました。
自分はおふたりのバス旅番組のファンであるので、これも縁だと思って、思い切ってエーザイの株を買いました。
不思議なもので、そんなことがあったえびすよしかずさんが、認知症になってしまいました。今はもう別人のようによろよろです。たまに、NHKの福祉関係の番組に出ておられます。また、週刊誌に、『えびすごろく』というコラムが書いてありますが、病状的に、きちんとした文章を書けるような心身の状態ではないので、どなたかが、えびすさんの話を聞いて、えびすさんの代わりに文章をつくられて記事にされているのだろうと推測しています。
先日は、太川陽介さんがえびすよしかずさんと会われたことを知りました。えびすさんは、太川陽介さんのことは覚えていましたが、ふたりでいっしょに路線バスの旅番組に出ていたことは覚えていないようすでした。
エーザイの株価は、わたしが購入したその後、急激に上昇したあと、下落していきました。
理由は、レカネマブが認知症を完治させるまでの効果がない薬であること、病気の進行を遅らせるだけであること、副反応(副作用)が起きる可能性があること、そして、保険が適用されるとはいえ、薬価が高価であることなどでした。
自分は、長期保有のつもりでエーザイの株を買ったので、薬の使用が世界中にゆきわたれば、株価もそれなりにあがるだろうと思っています。
思うのは、薬で認知症の病気が完治しなくても、認知症の状態が悪くなることを、数年でも先のばしにできるのであれば、介護する親族の負担も軽減されると思います。
介護体験がない人には介護の苦しみはわからないと思います。介護するということは、自分の時間を相手に奪われるということです。自分がしたいことができなくなります。かなりつらいです。
以前とは人格が変わって、別人になってしまった配偶者なり、おやごさんを介護することは本当にたいへんです。
ときおり、介護をされている方や施設で働いている方のブログをじっくり読みますが、頭が下がる思いです。理屈をとおして話をしても話をわかってもらえない相手との接遇になります。根気と寛容さがいります。
自分としては、エーザイ株は、来年2025年5月(令和7年)の年間本決算が、薬が普及してからの中身がある初めての決算になると判断しています。米国、日本、カナダ、中国、ヨーロッパと少しずつこの薬の使用が広がっていって、患者本人や、介護で苦しむ人たちの助けになればいいと思っています。さらに、もしかしたら、自分自身が将来アルツハイマー型認知症になってこの薬を使用する立場になるかもしれないという、めぐりあわせの縁があったりするかもしれません。
認知症に関する本を一冊紹介しておきます。認知症専門医の長谷川和夫さん自身が、認知症になったという内容の本です。
『ボクはやっと認知症のことがわかった 医師 長谷川和夫 読売新聞編集委員 猪熊律子(いのくま・りつこ) KADOKAWA』
『長谷川式簡易知能評価スケール』という認知症の判定基準を発案された方です。2021年(令和3年)に92歳で老衰のためにお亡くなりになっています。
今年2024年(令和6年)4月25日(木)日経平均株価がまた急落して、831.60円下がりました。がっかりして、自分の持ち株を見たら、とある株が、爆上げみたいになっていてびっくりしました。
製薬会社のエーザイの株です。認知症の薬、『レカネマブ(商品名は、レケンビです。おおもとは、レカネマブで、これからさき、レカネマブを下地(したじ)にした薬がまたできて、新しい商品名を付けていくようです)』の使用量が米国や日本で増えてきているというニュースがあったことが理由でした。
わかる人にはわかると思うのですが、この一年間、エーザイ株は乱調でした。激しく上がったあと、長らく右肩下がりのグラフを描いて、株価はずいぶん安くなってしまいました。
思い起こせば一年ぐらい前、証券会社の担当者に勧められて、熟考(じゅっこう。十分よく考えた)をした末に手に入れた株でした。
認知症に効く新薬、『レカネマブ』が世界中で承認だか認可だかされて、たくさん使われるようになるので、企業の利益上昇とともに、株価も上がっていくと聞きました。
超高齢でふたりとも身体障害者だった義父母の介護で7年間ぐらい苦労したあとでした。義母は認知症の状態で幻覚がありました。
3年前の秋に、最初は義父、翌月に義母が亡くなり、2か月続けて同じ葬祭場で葬儀をしました。
妻が一番たいへんな思いをしました。そんな体験が下地にあって、証券会社の担当者の話を聞いて、認知症の薬が世界中に普及するのなら協力したいと思いました。
もうひとつの理由が、太川陽介さんとえびすよしかずさんのローカル路線バス乗り継ぎ人情旅の再放送を見ていてのことでした。『太川&えびすのローカル路線バス乗り継ぎの旅 第14弾 名古屋から能登半島最北端の岬 2013年4月放送分の再放送(平成25年分) BSテレ東』、ゲストの森下千里さんを含めた3人が、旅の途中で次のバスが来るまで待ち時間があったので、たまたま立ち寄った場所があります。3人は、岐阜県各務原市(かかみがはらし)にあるエーザイの、『くすり博物館』を見学しました。最初は、えびすよしかずさんが、そんなおもしろくもなさそうなところは見たくないと言っていたのですが、えびすさんはくすり博物館を見学後、見て良かった。ためになったと展示の内容をほめていました。
自分はおふたりのバス旅番組のファンであるので、これも縁だと思って、思い切ってエーザイの株を買いました。
不思議なもので、そんなことがあったえびすよしかずさんが、認知症になってしまいました。今はもう別人のようによろよろです。たまに、NHKの福祉関係の番組に出ておられます。また、週刊誌に、『えびすごろく』というコラムが書いてありますが、病状的に、きちんとした文章を書けるような心身の状態ではないので、どなたかが、えびすさんの話を聞いて、えびすさんの代わりに文章をつくられて記事にされているのだろうと推測しています。
先日は、太川陽介さんがえびすよしかずさんと会われたことを知りました。えびすさんは、太川陽介さんのことは覚えていましたが、ふたりでいっしょに路線バスの旅番組に出ていたことは覚えていないようすでした。
エーザイの株価は、わたしが購入したその後、急激に上昇したあと、下落していきました。
理由は、レカネマブが認知症を完治させるまでの効果がない薬であること、病気の進行を遅らせるだけであること、副反応(副作用)が起きる可能性があること、そして、保険が適用されるとはいえ、薬価が高価であることなどでした。
自分は、長期保有のつもりでエーザイの株を買ったので、薬の使用が世界中にゆきわたれば、株価もそれなりにあがるだろうと思っています。
思うのは、薬で認知症の病気が完治しなくても、認知症の状態が悪くなることを、数年でも先のばしにできるのであれば、介護する親族の負担も軽減されると思います。
介護体験がない人には介護の苦しみはわからないと思います。介護するということは、自分の時間を相手に奪われるということです。自分がしたいことができなくなります。かなりつらいです。
以前とは人格が変わって、別人になってしまった配偶者なり、おやごさんを介護することは本当にたいへんです。
ときおり、介護をされている方や施設で働いている方のブログをじっくり読みますが、頭が下がる思いです。理屈をとおして話をしても話をわかってもらえない相手との接遇になります。根気と寛容さがいります。
自分としては、エーザイ株は、来年2025年5月(令和7年)の年間本決算が、薬が普及してからの中身がある初めての決算になると判断しています。米国、日本、カナダ、中国、ヨーロッパと少しずつこの薬の使用が広がっていって、患者本人や、介護で苦しむ人たちの助けになればいいと思っています。さらに、もしかしたら、自分自身が将来アルツハイマー型認知症になってこの薬を使用する立場になるかもしれないという、めぐりあわせの縁があったりするかもしれません。
認知症に関する本を一冊紹介しておきます。認知症専門医の長谷川和夫さん自身が、認知症になったという内容の本です。
『ボクはやっと認知症のことがわかった 医師 長谷川和夫 読売新聞編集委員 猪熊律子(いのくま・りつこ) KADOKAWA』
『長谷川式簡易知能評価スケール』という認知症の判定基準を発案された方です。2021年(令和3年)に92歳で老衰のためにお亡くなりになっています。
2024年05月14日
オデッセイ アメリカ映画 2015年
オデッセイ アメリカ映画 2時間21分 2015年(平成27年)公開 動画配信サービス
この映画は、定時制高校の生徒たち(21歳ヤンキー男子、16歳不登校だったリストカット女子、40歳フィリピン人ハーフのフィリピン料理店ママさん、74歳金属加工業自営だった高齢者男性(妻がじん肺で長期入院中))が、有力大学教授からにらまれて干された定時制高校の物理教師と共に、コンピューター準備室に火星をつくるため、部活としての科学部をつくって、千葉市幕張メッセでの『日本地球惑星科学連合大会』で研究成果を発表して受賞するまでの活躍を小説にした(実話がモデルになっています))『宙わたる教室(そらわたるきょうしつ) 伊予原新(いよはら・しん) 文藝春秋』の98ページで紹介されている小説、映画作品です。
そちらの本を読み終えて、動画配信サービスを調べたら、すぐに出てきたのでさっそく観てみました。小説は、『火星の人 アンディ・ウィアー ハヤカワ文庫SF 1巻・2巻各上・下』です。
物語は、6人のメンバーによるアメリカ合衆国NASA(ナサ。アメリカ航空宇宙局)の火星探検において、砂嵐の発生で、火星にひとりぼっちで残された男性植物学者宇宙飛行士を、みんなで救出する筋立てになっています。
地球の科学者たちみんなが、国籍を問わずに協力し合って、火星に取り残された男性を救い出します。
感動的です。
現実社会では、アメリカ合衆国と中国は仲が悪いようですが、映画の中では仲良しです。
最終的には、アメリカ合衆国が一番という映画です。かまいません。それがアメリカ合衆国の人の誇りであり心の支えなのでしょう。アメリカ合衆国らしい娯楽映画です。
思いつくままに感想を並べてみます。
6人のメンバーで火星の調査をしていたら、砂嵐が起きて、ひとりだけ救出できなかったというところから始まります。5人は、残されたひとりが事故死したと誤認して宇宙船に乗って、地球への帰還の旅に出てしまいます。
火星にひとりぼっちで残された男性は死んだと判断されたのですが、その男性ががんばります。自力で通信装置を回復させて、地球へ電波を送り、いったん亡くなったとされた彼の生存が地球で確認されました。
そのあと、いろいろあります。救出に消極的な組織のトップがいます。まあ、いろいろあります。人間ですから。
映像の火星は、赤い風景です。冒頭に紹介した本には、火星の空の色は、地球とは反対で、昼間は赤く、夕焼けは青い色ですと書かれてありました。
最初のうちは、短時間に砂嵐や事故っぽいものが起きて、なんだかドタバタで落ち着きません。
えらく早い展開です。
火星に取り残された男性宇宙飛行士が、どれくらいの間生きられるか?という、生きるか死ぬかの話です。
以前映画館で類似の映画を観ました。『ゼロ・グラビティ(無重力のこと)』というタイトルで、女性宇宙飛行士が、船外作業中に宇宙服のまま宇宙空間に取り残されてしまいました。
青い地球は見えているのに、地球にかえることができません。そんな設定でスリルがありました。映画ですから、彼女は、最後は無事に地球へ帰還します。なかなかいい映画でした。
上司と部下とか、職務命令とか、組織ですから、外部の目を気にしたいさかいがあります。トップはメンツにこだわります。(対面(たいめん)、名目(めいもく)、世間体(せけんてい))
権力者は、自分や組織の身を守るために、自分たちにとって都合の悪いことは隠そうとします。隠蔽(いんぺい)です。
観ていて、人間というものは冷たいものだと思います。見捨てる命があります。組織の上層部にいる人に、いい人はいません。それが人間です。
まあ、現実的なことを考えると、むずかしい問題です。映画だから、人道的なことを言えるということもあります。
無難な策をとりたがるリーダーに対して、『あんたは、腰抜けだ!』という言葉が飛び出します。
生き残りのドラマです。
残された男性宇宙飛行士は、排泄物を肥料にして、地球から持ち込んだ気体から水をつくりだして(水素と聞き取れましたが自信はありません)、じゃがいもを育てるという農業を始めます。人間の居住地であるテントのような構築物の中で畑をつくります。
生きようとする気持ちがあります。
『ここで(火星で)死ねるか!』ガッツがあります。
『ソル』さきほど紹介した定時制高校を舞台にした本の物語に書いてあったので、映画を観始めてすぐに理解できました。
火星における一日の単位がソル(約24時間40分です。映画では、ソル561ぐらいまで時間が経過します。火星における521日間です。
この映画は、2時間ちょっとの長さですが、映画の中では何日も時間が過ぎていきます。宇宙船の移動には日にちがかかるのです。
火星の風景は、オーストラリア中心部にある砂漠地帯のマウントオルガとか、エアーズロックを見るようです。赤い砂漠の上に赤い岩盤のような山が見えます。
科学的なアイデアでのりきる。
電波のスピードはどれぐらいなのだろうかと考えていたら、映画の中で、地球からの交信は、32分後に、火星にいる彼のもとへ届くというようなセリフがありました。ネットで調べたら、電波は、光と同じ速度だそうです。かなり速い。
火星に残された音楽とゲームが孤独をまぎらわせてくれます。ただ、男性宇宙飛行士は、女性船長が残した音楽は古すぎると、何度も嘆きます。
『火星は君のものだ』
植物を育てたら、星の所有者になるという理屈だそうです。
ふと思いました。
自分が死ぬまでの時間を楽しむ。
地上にいても同じです。
孤独なようで孤独ではありません。
通信装置は稼働しています。
火星の地上にあるものとしてハブ:建物のことだろうと思いました。小型の火星基地みたいになっています。
命がかかっているのですが、もともと宇宙飛行士には死の危険が隣り合わせであるわけで、自ら(みずから)がその仕事を選んだわけで、覚悟はできているのでしょう。
最悪死ぬこともある。宇宙飛行士以外でもそういう職業はあります。
映画の中では、こどもたちや家族を大事にするセリフが多いのに、アメリカ合衆国ではどうして離婚する人が多いのだろうかと不思議でした。
『オデッセイ』の意味は、『長い冒険旅行』だそうです。原題は、『The Martian(火星人)』です。
ヘルメス:5人のメンバーが、火星から地球に帰るために乗船している宇宙船の名称。
後半のクライマックスは緊張感が走ります。
映画ですから、話をもりあげるために、製作側の思惑(おもわく。計略。意図(いと))どおり、救出作戦はうまくいきません。いろいろ障害が発生します。
インターセプト:捕(と)らえる。宇宙空間で、火星から脱出した男性宇宙飛行士を捕らえる。つかまえる。(素手(すで)で捕まえるようなものです)
アイアンマン:アメリカ合衆国映画、空を飛ぶヒーロー。
最後の見せ場はかなり良かった。
すごいなあ。対象者を宇宙空間で確保しました。
『会えて良かったです』本当に良かった、とても良かった。
ひとつの小さな植物の芽が映像に出ます。朝顔の種から出てきた芽に形状が似ていました。
先日観た草薙剛さん(くさなぎつよしさん)出演のドラマ、『罠の戦争(わなのせんそう)』でも、植物学者のような国会議員秘書見習いみたいな若者が出ていて、伏線として、植物の話が流れていたことを思い出しました。
どちらも新しく生まれてきた命を大切にしようというような意味合いがあるのでしょう。
この映画は、定時制高校の生徒たち(21歳ヤンキー男子、16歳不登校だったリストカット女子、40歳フィリピン人ハーフのフィリピン料理店ママさん、74歳金属加工業自営だった高齢者男性(妻がじん肺で長期入院中))が、有力大学教授からにらまれて干された定時制高校の物理教師と共に、コンピューター準備室に火星をつくるため、部活としての科学部をつくって、千葉市幕張メッセでの『日本地球惑星科学連合大会』で研究成果を発表して受賞するまでの活躍を小説にした(実話がモデルになっています))『宙わたる教室(そらわたるきょうしつ) 伊予原新(いよはら・しん) 文藝春秋』の98ページで紹介されている小説、映画作品です。
そちらの本を読み終えて、動画配信サービスを調べたら、すぐに出てきたのでさっそく観てみました。小説は、『火星の人 アンディ・ウィアー ハヤカワ文庫SF 1巻・2巻各上・下』です。
物語は、6人のメンバーによるアメリカ合衆国NASA(ナサ。アメリカ航空宇宙局)の火星探検において、砂嵐の発生で、火星にひとりぼっちで残された男性植物学者宇宙飛行士を、みんなで救出する筋立てになっています。
地球の科学者たちみんなが、国籍を問わずに協力し合って、火星に取り残された男性を救い出します。
感動的です。
現実社会では、アメリカ合衆国と中国は仲が悪いようですが、映画の中では仲良しです。
最終的には、アメリカ合衆国が一番という映画です。かまいません。それがアメリカ合衆国の人の誇りであり心の支えなのでしょう。アメリカ合衆国らしい娯楽映画です。
思いつくままに感想を並べてみます。
6人のメンバーで火星の調査をしていたら、砂嵐が起きて、ひとりだけ救出できなかったというところから始まります。5人は、残されたひとりが事故死したと誤認して宇宙船に乗って、地球への帰還の旅に出てしまいます。
火星にひとりぼっちで残された男性は死んだと判断されたのですが、その男性ががんばります。自力で通信装置を回復させて、地球へ電波を送り、いったん亡くなったとされた彼の生存が地球で確認されました。
そのあと、いろいろあります。救出に消極的な組織のトップがいます。まあ、いろいろあります。人間ですから。
映像の火星は、赤い風景です。冒頭に紹介した本には、火星の空の色は、地球とは反対で、昼間は赤く、夕焼けは青い色ですと書かれてありました。
最初のうちは、短時間に砂嵐や事故っぽいものが起きて、なんだかドタバタで落ち着きません。
えらく早い展開です。
火星に取り残された男性宇宙飛行士が、どれくらいの間生きられるか?という、生きるか死ぬかの話です。
以前映画館で類似の映画を観ました。『ゼロ・グラビティ(無重力のこと)』というタイトルで、女性宇宙飛行士が、船外作業中に宇宙服のまま宇宙空間に取り残されてしまいました。
青い地球は見えているのに、地球にかえることができません。そんな設定でスリルがありました。映画ですから、彼女は、最後は無事に地球へ帰還します。なかなかいい映画でした。
上司と部下とか、職務命令とか、組織ですから、外部の目を気にしたいさかいがあります。トップはメンツにこだわります。(対面(たいめん)、名目(めいもく)、世間体(せけんてい))
権力者は、自分や組織の身を守るために、自分たちにとって都合の悪いことは隠そうとします。隠蔽(いんぺい)です。
観ていて、人間というものは冷たいものだと思います。見捨てる命があります。組織の上層部にいる人に、いい人はいません。それが人間です。
まあ、現実的なことを考えると、むずかしい問題です。映画だから、人道的なことを言えるということもあります。
無難な策をとりたがるリーダーに対して、『あんたは、腰抜けだ!』という言葉が飛び出します。
生き残りのドラマです。
残された男性宇宙飛行士は、排泄物を肥料にして、地球から持ち込んだ気体から水をつくりだして(水素と聞き取れましたが自信はありません)、じゃがいもを育てるという農業を始めます。人間の居住地であるテントのような構築物の中で畑をつくります。
生きようとする気持ちがあります。
『ここで(火星で)死ねるか!』ガッツがあります。
『ソル』さきほど紹介した定時制高校を舞台にした本の物語に書いてあったので、映画を観始めてすぐに理解できました。
火星における一日の単位がソル(約24時間40分です。映画では、ソル561ぐらいまで時間が経過します。火星における521日間です。
この映画は、2時間ちょっとの長さですが、映画の中では何日も時間が過ぎていきます。宇宙船の移動には日にちがかかるのです。
火星の風景は、オーストラリア中心部にある砂漠地帯のマウントオルガとか、エアーズロックを見るようです。赤い砂漠の上に赤い岩盤のような山が見えます。
科学的なアイデアでのりきる。
電波のスピードはどれぐらいなのだろうかと考えていたら、映画の中で、地球からの交信は、32分後に、火星にいる彼のもとへ届くというようなセリフがありました。ネットで調べたら、電波は、光と同じ速度だそうです。かなり速い。
火星に残された音楽とゲームが孤独をまぎらわせてくれます。ただ、男性宇宙飛行士は、女性船長が残した音楽は古すぎると、何度も嘆きます。
『火星は君のものだ』
植物を育てたら、星の所有者になるという理屈だそうです。
ふと思いました。
自分が死ぬまでの時間を楽しむ。
地上にいても同じです。
孤独なようで孤独ではありません。
通信装置は稼働しています。
火星の地上にあるものとしてハブ:建物のことだろうと思いました。小型の火星基地みたいになっています。
命がかかっているのですが、もともと宇宙飛行士には死の危険が隣り合わせであるわけで、自ら(みずから)がその仕事を選んだわけで、覚悟はできているのでしょう。
最悪死ぬこともある。宇宙飛行士以外でもそういう職業はあります。
映画の中では、こどもたちや家族を大事にするセリフが多いのに、アメリカ合衆国ではどうして離婚する人が多いのだろうかと不思議でした。
『オデッセイ』の意味は、『長い冒険旅行』だそうです。原題は、『The Martian(火星人)』です。
ヘルメス:5人のメンバーが、火星から地球に帰るために乗船している宇宙船の名称。
後半のクライマックスは緊張感が走ります。
映画ですから、話をもりあげるために、製作側の思惑(おもわく。計略。意図(いと))どおり、救出作戦はうまくいきません。いろいろ障害が発生します。
インターセプト:捕(と)らえる。宇宙空間で、火星から脱出した男性宇宙飛行士を捕らえる。つかまえる。(素手(すで)で捕まえるようなものです)
アイアンマン:アメリカ合衆国映画、空を飛ぶヒーロー。
最後の見せ場はかなり良かった。
すごいなあ。対象者を宇宙空間で確保しました。
『会えて良かったです』本当に良かった、とても良かった。
ひとつの小さな植物の芽が映像に出ます。朝顔の種から出てきた芽に形状が似ていました。
先日観た草薙剛さん(くさなぎつよしさん)出演のドラマ、『罠の戦争(わなのせんそう)』でも、植物学者のような国会議員秘書見習いみたいな若者が出ていて、伏線として、植物の話が流れていたことを思い出しました。
どちらも新しく生まれてきた命を大切にしようというような意味合いがあるのでしょう。
2024年05月13日
宙わたる教室(そらわたるきょうしつ) 伊予原新
宙わたる教室(そらわたるきょうしつ) 伊予原新(いよはら・しん) 文藝春秋
本の帯を読むとどうも定時制高校のお話らしい。
まだ、自分が二十歳前後の頃、定時制高校に通っていた親族がいて、一度見学に行ったことがあります。また、大学の夜間部も見たことがあります。
なんというか、年齢がさまざまでした。昼間の学校のように、学年に応じた年齢の生徒・学生のかたまりではありません。年齢層の幅がとても広い。夜間の大学では、60代の男性もいました。彼は、片道2時間半ぐらいかけて、遠方にある港町のご自宅から電車で休まず通学されているということでした。それだけ、学習意欲が強い人たちが集う(つどう)学校でした。
定時制高校にしても大学の夜間部にしても、勤め先の企業や組織が、通学する社員のためにいろいろ配慮をしてくれていました。仕事の終業時刻が午後4時半ぐらいに設定されていました。企業や組織にとって、優秀な人材を確保して働いてもらって、企業や組織の寿命を継続していくという目的がありました。お金も大切ですが、人材はお金以上に大切な財産でした。昭和時代は、終身雇用の時代でした。
さて、この小説の出だしでは、柳田岳人(やなぎだ・たけと)という若い人が、定時制高校の授業をサボっているような記述から始まります。タバコも吸っています。
現実の学生が柳田岳人のようないいかげんな人間ばかりだと誤解を生むような内容ではないことを願って文章を読み始めます。勉強ができないから夜学に行っているのではないのです。経済的に通うことが無理だから夜学に行っているのです。夜学には、昼間の学生に負けない学力をもっている人もおられました。
第一章から始まって、第七章まであります。全体で282ページの小説です。
仮想の高校でしょう。都立東新宿高校です。昼間は昼間部の生徒、夜は、夜間定時制の生徒がいます。1学年に1クラスある。クラスの定員が30人。定員割れになっている。5時45分開始、9時に4時限が終了する。一日4時限で、4年間で卒業する。
『第一章 夜八時の青空教室』
柳田岳人(やなぎだ・たけと):21歳。2年生。喫煙者。授業に途中から出席する。愛称、『ガッくん』。麻薬の売買に関与しそうになっている。大麻はやらない。酒はほとんど飲まない。常にシラフ(飲酒せず通常の状態)でいたい。柳田岳人が在籍する2年生のクラスは、在籍者数が18人。本人いわく、自分はごみ収集の仕事をしている。リサイクル作業所。定時制高校を辞めたいという気持ちがある。計算式を解く能力が高いが、文章題問題を解けない。なにか障害があって文章を読めないようすです。
藤竹:柳田岳人のクラスの担任教師。34歳男性。見た目は頼りない。なでがた。なまっちろい(顔色が白い)。態度はでかい。理科、数学担当。口癖として、『自動的にはわからない』。つかみどころのない人間。頭脳明晰(ずのうめいせき)、冷静沈着。怒らない(おこらない)。論理的な思考で行動する。
佐藤:藤竹の前の担任教師。メンタルの不調で休職中。
三浦:定時制高校の退学者。一年で中退。原付、ノーヘル(ヘルメット)で校内を走る。麻薬の売人をしている。
朴(パク):退学者。一年で中退。三浦と同じく原付、ノーヘル。坊主頭を赤く染めている。麻薬の売人をしている。
長老:柳田のクラスメート。70代男性。やせこけている。最前列に座っている。だれよりも勉強熱心。
麻衣:新宿歌舞伎町のキャバクラ嬢。授業中に男性客からスマホに電話が入ると教室を出て廊下に出て行く。
クラスメート:40代~50代の女性がふたり。ひとりはいつもノートをとっている。もうひとりは東南アジア系小太りでよくしゃべる。ニックネームは、『ママ(フィリピンパブのママのイメージ)』。外国にルーツをもつ生徒が複数いる。かれらは、日本語が不自由である。ほかに、素行不良で全日制の高校をつまみだされた生徒たち。それぞれ、カラフルな髪色にごついアクセサリーを付けている者。授業中は寝ている者。それから、中学校での元不登校組、小中学校でいじめにあった者。集団生活になじめなかった者。アニメオタクが多い。クラスとしてのまとまりはない。
場所は、東京新宿駅近くの牛丼屋から始まります。
20ページまで読んで、心配していたとおり、おちこぼれの人間たちが定時制高校に通っているような書き方で不快です。
『こんなとこに(定時制高校)、まともに勉強してるやつなんているかよ』(こんなセリフは書かないでほしい。勉強したくて来ている人間がちゃんといます)
関係者が読んだら、世間に誤解が広がると怒るでしょう。
昔、『同情するなら金をくれ』という決めゼリフで大ヒットした、『家なき子』というドラマがありました。その後、似たようなドラマを放映したところ、関係先から猛攻撃を受けて(事実とは違うという理由で)、スポンサーが全部降りて、途中で放送がたちいかなくなったことがあったと思います。
大麻の価格表として、ヤサイ7500:(乾燥大麻の隠語1グラムの単価(円)7500円)そして、リキッド18000:(大麻リキッド(大麻から抽出された液体)単位は本。1本の単価(円)18000円)
三浦と朴(パク)は、やくざや不良外国人とのつきあいあり。
柳田岳人が廃棄物処理工場の職場で暴力を振るいます。定時制高校に通っていることを馬鹿にされたからです。
柳田岳人は、もともと、周囲の同僚と仲良くしようという気持ちがありません。だからまわりから嫌われます。『金さえもらえりゃそれでいいんだ』(そんな気持ちで働いてほしくありません。仕事は楽で、給料が良くて、休みが多いほうがいいと思っているだけの人間は不祥事を起こします。会社のお金を自分のポケットに入れたりします。まずは、世のため人のために働くという動機付けが必要です)
柳田岳人が暴力をふるった相手は、暴力を振るわれる前に、定時制高校の生徒を馬鹿にするセリフが出てきます。また、柳田岳人の人格を否定するような発言があります。一般的に、人格を否定された人間は、一生そのことを忘れず、相手を憎み続けます。
まあ、意図的につくってある物語です。つまらなくなりました。流し読みに入ります。
主人公の柳田岳人に学習障害があるようです。文章を読めない。ディスなんとか。(読み進めていたら31ページに『ディスレクシア』という言葉が出てきました。文字の読み書きが困難。俳優のトム・クルーズ、アメリカ大統領だったブッシュ、映画監督のスティーブン・スピルバーグがディスレクシアという記事を読んだことがあります)だからこれまで、家庭や学校で苦労をしてきた。柳田岳人は、大手電機メーカーの社員である父親に突き放されています。
柳田岳人は、運転手の仕事に就きたい。ひとりでする仕事がいい。他人とはできるだけ関わり合いになりたくない。
でも、文章を読めない。運転免許を取得するための教本の文章を読めない。運転実技は合格できても学科試験に合格できない。文章を読めるようになるために、定時制高校に入学した。彼が定時制高校で学ぶ動機です。
藤竹教諭が柳田岳人を導きます。
文字のフォント(デザイン)で、ディスレクシアの人でも文字や文章を読めることがある。
まあ、たばこの話が多いです。
ヒムネ:韓国のことばで、がんばれ。
柳田岳人は、科学的なことに興味が強い。理科教師の藤竹が、柳田岳人をいい方向へと誘導していきます。
話が飛びますが、毎週日曜日の午前10時過ぎから、NHKのラジオ番組で、こども科学電話相談が流れています。そのラジオ番組でこどもたちがする質問と柳田岳人の考える質問が重なります。
自分の長い人生をふりかえってみると、自分がとても世話になった人が何人かいます。逆に、自分が一生懸命世話をして立ち直ってくれた人も何人かいます。人は、やってもらうと、お返しをしようという気持ちになります。
お世話になった人たちはもう他界されました。世話をした人からは年賀状が届きます。
歳をとって、今は、特段世話になることも、世話をすることもなくなりました。
今どきの日本人は、なんだか、人の性質が変わってしまいました。自分が悪いとは定義せずに、うまくいかないのは、自分ではなく、相手のせいだと主張する人が出てきました。
他者への依存では、いつまでたっても、自活や自立はできません。
柳田岳人は、普通の昼間の高校に行きたかった。
『空がなぜ青いのか』を知りたかった。宇宙とか地球のことを知りたかった。雲はどうして白いのか、虹はどうして七色なのか、知りたかった。
教師である藤竹は柳田岳人と、科学部をつくりたい。
『第二章 雲と火山のレシピ』
以下、定時制高校の生徒として、
越川アンジェラ:40歳。日本とフィリピンのハーフ。フィリピン料理店、『ジャスミン』を夫婦で営んでいる。店の営業は今年で12年目である。夫は商業高校を出ている。娘が、栄養専門学校に通っている。母が定時制高校に通学している時間帯は、娘が店を手伝っている。夫も娘も、アンジェラの通学に協力している。アンジェラは、『高校』にあこがれて入学した。クラスメートからは、『ママ』と呼ばれている。フィリピンパブのママの印象がある。若い頃は、ホステスをしていたことがある。越川アンジェラは、ほんとうは、小学校の先生になりたかった。
池本マリ:16歳。愛嬌(あいきょう。人と接するとき、相手に好感を与える雰囲気)がある。中学を卒業して定時制高校に入学してきた。昼間は、清掃業の会社で働いている。ホテルや病院の清掃をしている。父親は日本人、母親はフィリピン人のハーフである。両親はマリが幼いころに離婚した。以降、母親と妹と三人で暮らしている。母親は体調がすぐれない。マリが家族の生活を支えている。大学に行って教師になりたいという希望がある。
長嶺(ながみね):70代の男性。陰で、『長老』と呼ばれている。
昼間の女子生徒が教室に入って来て、夜、定時制で自分の机を使っている池本マリが、机の中に入れてあった自分のペンケースを盗んだんじゃないかと言い出す。
池本マリが知らないと返答する。
そんなことがあった。
昼間の生徒は、ブレザーの制服姿ですが、夜の生徒は私服です。柳田岳人は、清掃会社の作業服姿です。
物理準備室:物理担当藤竹教師の部屋。ここが、なにかの本拠地になるようです。
みそ汁で、積乱雲をつくる実験をする。柳田岳人と越川アンジェラがいます。
『対流(たいりゅう)』の実験です。
カラマンシージュース:カラマンシーは、フィリピン方面東南アジアの柑橘系(かんきつけい)果実。さわやかな酸味がある。別名「フィリピンレモン」
2年2組の黒田玲奈(くろだ・れな):昼間の生徒。黒髪ロング。定時制の生徒をばかにする。定時制の生徒を泥棒扱いする。生活保護者をばかにする。
べっこう飴を使って、地震発生モデル実験を行う。逆断層、正断層。
物語に出てくる中学校というところは、いじめがあって、教師たちは知らん顔をしてひどいところです。
わたしは、中学校は、父親が中1の6月に、いきなり病死したことで、どたばたがあって、3校通いました。最初の中学校にいじめはありませんでした。転校した次の中学校もいじめはありませんでした。さらに転校した3校目もいじめはありませんでした。だけど、先生の体罰がありました。けっこうきつい体罰でした。体罰があったから生徒がおとなしくしていたということはありました。まあ、そんな時代でした。親も教師の体罰を容認していました。思うに、第二次世界大戦中の軍国教育が、終戦後30年間ぐらいは尾を引いていたのだと思います。
キムワイプ:アメリカ製のふきんみたいな布。油をふきとる。藤竹の物理準備室に置いてある。
『じゃぱゆきさん』という言葉が出てきます。フィリピン生まれの女性が、日本に渡って風俗の仕事をするのです。
わたしは逆に、『からゆきさん』という言葉を知っています。九州の西海岸地方で生まれた女性が、東南アジアの国へ行って風俗の仕事をするのです。小説作品があります。『サンダカン八番娼館 山崎朋子 文春文庫』、映画にもなりました。
どこもかしこも、女性は、売られる扱いです。
倉橋先生:小学校の先生。越川アンジェラがこどもの頃に世話になった。
火山の噴火実験をする。重曹(じゅうそう)と酢を使う。
短い推理小説にも似た書き方です。
『第三章 オポチュニティの轍(わだち)』
オポチュニティ:チャンス、良い機会、タイミング
名取佳純(なとり・かすみ):定時制高校1年生。三人家族。母と姉。父親は、佳純が7歳のときに出て行った。母がおかしい。姉と妹を比較して、妹を差別する。佳純は中学時代不登校になった。中学3年生からリストカット(カミソリで手首を切る。自殺企図だが死ねない)を始める。定時制高校は、5月23日から保健室登校になり、3週間が経過している。教室は1A。
佐久間:定時制高校保健室の先生。養護教諭。読んでいて最初保健師かと思いましたが、元看護師でした。いろいろわけありです。髪を真っ赤に染めている。30歳より上ぐらい。
松谷真耶(まつたに・まや):定時制高校一年生。この子もわけありです。リストカットの常習者。なお、名取佳純も同様の常習者です。年齢は、名取佳純より1歳上ですから、17歳ぐらいか。全身黒づくめで、肩までの黒髪にピンクのメッシュ(髪全体に薄いピンク色をつけてある。立体感が出る)。起立性調節障害(自律神経の異常)がある。全身がだるい。立ちくらみと頭痛がする。松谷摩耶のバイト代を、母親が、パチンコと酒に使う。(とんでもない母親です)
<来室ノート>:保健室に置いてあったノート。4年間ぐらいだれも書き込みをしていなかった。保健室登校をしている名取佳純が書き込んでいる。(定時制高校にも保健室登校というものがあるのかと驚きました)
火星の話です。
ソル:火星における一日のこと。約24時間40分
ハブ:火星での居住施設
星を継ぐもの:イギリスのSF(サイエンス・フィクション)作家ジェームス・P・ホーガン(1941年(日本だと昭和16年)-2010年(平成22年)69歳没)のSF小説。
EVA:宇宙服を着ての船外活動(施設外活動)
火星の人:アメリカ合衆国のSF作家アンディ・ウィアー(1972年生まれ(昭和47年)51歳)の作品。アメリカの小説家。火星の人は、2011年発表(平成23年)
定時制高校を火星とし、ハブを保健室とする。名取佳純は、ハブでしか、呼吸ができない。
名取佳純は、EVAを着て、教室に行く。決死の覚悟がいる。
過換気:発作的に息苦しくなって、呼吸が早くなる。
過呼吸:緊張、ストレスで、呼吸の深さが増加する。
熊太郎は長いこと生きてきて、一度だけ、リストカットというものを見たことがあります。手首に無数の細い切り傷がある人でした。わたしには、理解できない行動です。心の病気です。よっぽどひどい目にあったのでしょう。自殺するために切ったというよりも、自分を傷つけるという軽い傷の付き方でした。自傷行為で心が満たされる。異常です。
この物語では、リストカット常習者の松谷摩耶が、名取佳純に、『(自分たちは)同類だね』と声をかけます。
夏への扉:1956年(昭和31年)発表のSF作品。アメリカ合衆国SF作家ロバート・A・ハインライン(1907年(明治40年)-1988年(昭和63年)80歳没)。タイムトラベルもの。1970年(昭和45年)と2000年(平成12年)を行き来する。3月に放送が終わったドラマ、『不適切に問ほどがある!』みたいです。
アイザック・アシモフ:アメリカ合衆国の生化学者(生物化学)、作家。1992年(平成4年)72歳没。
アーサー・C・クラーク:イギリスのSF作家。2008年(平成20年)91歳没。作品として、『2001年宇宙の旅』
いろいろむずかしい言葉が多い。
アムカ:アームカット。腕を傷つけること。
ふと気づいたのですが、『リストカットの痕(あと)』と、この章のタイトル、『オポチュニティの轍(火星探査車のわだち)』が、重ねてあるのです。痕(あと)も轍(わだち)もどちらも、『これまで生きてきた証(あかし。軌跡)』なのです。
物理準備室で、科学クラブの実験です。
『火星の夕焼けを再現する』という実験です。
透過光(とうかこう):透明な物体を通した光。
オデッセイ:『火星の人』を原作としたハリウッド映画。2015年(平成27年)のアメリカ合衆国のSF映画。(この本を読んだあと、動画配信サービスで観ました。アメリカらしい豪快な映画でした)
100ページで、この第三章の部分のタイトル、『オポチュニティの轍(わだち)』の意味が解き明かされます。味わいがあります。
オポチュニティ:火星で活動する無人探査船の名称。オポチュニティの轍(わだち。左右に3つずつの車輪の2本の跡(あと))が、人生の軌跡と重なります。
火星探査船オポチュニティを擬人化してあります。オポチュニティは、遠く離れた火星で、ひとりぼっちでがんばったのです。火星の写真をたくさん撮って、地球に送ってくれたのです。
オポチュニティは、2003年(平成15年)7月に打ち上げられ、2004年(平成16年)に火星に到着した。運用期間3か月の予定だったが、気がつけば、14年間火星での旅を続けてくれた。
2018年(平成30年)、オポチュニティは、大規模な砂嵐に襲われて、太陽電池がダウンして、機能が停止した。
2019年(平成31年)2月、NASA(アメリカ航空宇宙局)は、ミッション終了を宣言した。
オポチュニティは、調査中に、前輪を一つ失ったり、砂だまりにはまりこんだり、原因不明の電力低下に見舞われたり、数々の困難に直面したが、克服し続けた。
『この子(オポチュニティにたとえて)は、自分の後ろに続く轍(わだち)を見て、ただ孤独を感じたわけではないのだ。きっと、もう少しだけ前へ進もうと思ったに違いない……』オポチュニティの背後には、地球に応援してくれる仲間がいた(NASAのスタッフメンバー)。この子にも、仲間が必要だ(定時制高校科学部の生徒)。
108ページにいいことが書いてあります。共感します。
『……わたしの第一の仕事は、学校の中で子どもたちを死なせないこと……』
小学生や中学生をもつ親が教師に望むことは、『生きて卒業させてください』ということです。勉強も運動もできなくてもかまいません。いじめや体罰や事故でこどもが死んだら、親は教師や学校を許しません。
トリアージ:おおぜいの負傷者が出たとき、患者の状態に応じて、治療や搬送の順位を決めること。
レイリー散乱(さんらん):地球の空は青い。夕焼けは赤いという理由の説明があります。昼間は、波長の長い青色の光が散乱する。日没時は、太陽光が大気を通る距離が長くなり、散乱されにくい赤い光が生き残って夕焼けになる。火星ではその逆になるそうです。火星の昼間は赤色の空で、日没のころは青い夕焼けだそうです。空気が薄い、塵(ちり)が多いことが理由だそうです。
『第四章 金の卵の衝突実験』
長嶺省造:定時制高校二年生。昭和23年生まれ。74歳。金属加工の会社を自営で経営していたが、70歳で会社経営を閉じた。子どもはふたりで、孫がいる。福島の常磐炭田(じょうばんたんでん)の炭鉱町で育った。炭鉱が斜陽化したためもあり、中卒で、集団就職で東京に来て町工場でがんばった。37歳で独立した。父親は10歳のときに炭鉱事故で亡くなった。
長嶺江美子:長嶺省造の妻。『じん肺(仕事中に大量の粉塵(ふんじん。ほこり、金属の粒(つぶ)などを長期間吸い込んで肺の組織が壊れた)』で現在は入院中。退院はいつになるのかわからない。学歴は中学卒業。青森から集団就職で上京して、タイル工場で10年間粉まみれで働いた。高校に行きたかった。
木内:50代。英語教師
正司麻衣(しょうじ・まい):定時制高校二年生。いつもスマホをさわっている。
昭和三十年代から四十年代、日本の高度経済成長期にあった、地方に生まれた中学卒業者男女を列車に乗せて都市部へ就職させるという『金の卵』という歴史を振り返ります。長嶺省造夫婦が紹介されます。
現在の六十代以上で体験者がいると思います。こちらの本では、青森、福島の東北地方ですが、九州の鹿児島あたりからでもありました。電車に乗せられて延々と都会まで義務教育卒業の男女のこどもたちが運ばれていくのです。当時、新幹線はなかったか、あっても東京・大阪間で、今ほど普及していませんでした。みなさんたいへんな思いをされました。
いっぽう、もともと都会暮らしをしていた人たちは、景気がいい時期で、生まれてから歳をとるまでずっと貧困暮らしを体験したことがないという人もいます。人は、生まれる場所で人生の過ごし方が大きく変わります。
物語の中の学校では、世代間の対立が、くっきりと出てきて、荒っぽい言動も出てくる表現になってきます。世代間衝突です。
老齢者は、いまどきの若いもんはと定時制高校に来ても勉強しない若い人たちを𠮟りつけ、若い人は、自分たちのことを何も知らないくせにうっとおしいと高齢者の世代を攻めます。
気づくのは、貧困という苦労はあったけれど、昭和時代の若い人には未来への夢があった。地方から出て来てがんばって、じっさいに経済的に豊かになった人が多い。ところが、今の若い人には、未来への夢がないということです。
社会制度とか社会秩序が変わりました。人口構成も大きく変化しました。
この部分を読んでいて思ったのは、昔は、たいてい、まわりにいるみんなが、同じように貧乏だった。
今は、貧富の差とか、学歴・学力の差が、極端に分かれてしまった。格差というのでしょう。
わたしが高校生の頃、大学進学にあたって、家が経済的に苦しい母子家庭だったので、日本育英会の奨学金を申請しました。審査のために面接があったのですが、今はどうか知りませんが、当時は集団面接で、面接会場に行ってみたら、同じ高校に通っている顔見知りの生徒がたくさんいて、なんだおまえもかという雰囲気になり、みんな貧乏なんだなあとお互いにお互いを思った次第です。あんな、頭が良くてかっこいい奴でも、家は貧乏なんだなあです。いいとこのボンボンなんていない田舎でした。
クレーター実験。砂地に鉄球を落とす。
食えん:ずるがしこくて油断ができない。
『第五章 コンピューター室の火星』
昼間部の高校生が出てきます。2年2組です。定時制の柳田岳人と同じ机を共用しています。
丹羽要(にわ・かなめ):高校2年生17歳ぐらい。この子もわけありです。学力が高かったのに、いろいろあって低レベルの高校にしか入学できなかったと嘆いています。家庭が壊れています。両親はケンカして父親が家を出て行き、弟は素直ないい子だったのですが、荒れて、家庭内暴力で暴れています。丹羽要は、自宅に帰りたくない。昼間の高校のコンピュータークラブの部員です。部員とはいえ、まあ、ひとりぼっちです。陰キャらのパソコンオタクだと書いてとあります。
第五章を読み終えたときに思ったことです。(読みながら感想をつぎ足しています)
社会に出ると、学校で何があったかはまったく問題になりません。
学校であったことは、社会では、関係ないのです。
社会では、年齢層の幅が広い、人が多い、広い空間で自分の居場所を探します。
学校で何があったかなんて気にすることはありません。
社会に出ると、一日一日、日にちがたつごとに、学校のことは、日常生活から遠ざかっていきます。そのうち学校に通っていたことも忘れてしまいます。
山崎:丹羽要の前の席に座っている。
河本(こうもと):コンピュータークラブの部員一年生。一年生部員3人のうちのひとり。丹羽要を入れて、実質4人しかコンピュータークラブの部員はいない。
津久井:昼間の高校の数学教師。コンピューター部顧問。
コンピューター室:別棟の校舎にある。4階にある。以前は、地学実験室で使用されていた部屋である。室内には、白いパソコンがずらりと並んでいる。隣に、コンピューター準備室がある。
藤竹教師が、コンピューター準備室の天井パネルをはずして、実験の下準備をしている。
定時制のメンバーが利用している物理準備室は同じ建物の2階にある。
エンカウント:ゲーム用語で、「敵との遭遇(そうぐう)」のこと。
アルゴリズム:手順、計算方法、問題解決の手法
筐体(きょうたい):機器の箱
日本情報オリンピック:丹羽要がチャレンジしている。プログラミング能力を競う。数学・物理の大会、『科学オリンピック』の種目のひとつ。『国際情報オリンピック』日本代表の選考を兼ねている。
定時制の科学部が、コンピューター準備室を実験で利用したい。数か月間毎日利用したい。
拒否反応を示すコンピュータークラブの丹羽要です。
定時制の科学部は、実験成果を、学会で発表したい。(毎年5月に開催される日本地球惑星科学連合の大会にある高校生セッションで発表したい。セッション:期間、時間
実験では、『火星を作る』作業を行う。
最小二乗法(さいしょうじじょほう):わたしには説明できる能力がありません。ご自分で調べてくださいな。データをとって、グラフ化するようです。もっとも確からしい結果を表現するようです。
リム:クレーター作成実験で、鉄の玉を砂地に落とすと、砂がはじかれて、円形に穴があき、その穴のふちが盛り上がるのですが、その盛り上がった部分をリムと呼ぶようです。
ランパート・クレーター:リムのまわりに、エジェクタ堆積物が花びらみたいに広がった状態をいうようです。
エジェクタ:排出。エジェクタ堆積物を研究者は、『ローブ』と呼ぶ。
火星のランパート・クレーターを実験室で再現する。
丹羽要と定時制科学部との間で、コンピューター準備室の利用について衝突があります。
丹羽要は、パソコンがあればしたいことができるのですが、自宅にある彼のパソコンは、弟の家庭内暴力で破壊されてしまったそうです。だから、学校のパソコンをどうしても神経を集中できる静かな環境下で使いたい。
丹羽要の弟は、母親は殴らない。自分を守るために、親を殴るかわりに、物をぶっこわしている。(おそろしいけれど、かわいそうでもあります。暴力ではなにも解決しません)
弟の名前は、『衛(まもる)』。兄の要が高一のとき、衛は中一だった。半年ほどで不登校になり、家の中の物を破壊する家庭内暴力が始まった。
丹羽要は、小学三年生の時に、システムエンジニアだった父親が、中古のノートパソコンを要にくれたことがきっかけでプログラミングを始めた。
丹羽要の両親の性格:ふたりとも、自分の考えが常に正しいと思っているタイプの人間。
藤竹:大学研究者。席はまだ大学にある。(無給)。なにやら事情があって、定時制高校で教師をしている。
秘密兵器:滑車のこと。
タワー・オブ・テラー:ディズニーシーにあるアトラクション
重力可変装置:重力の力を変えることができる装置と理解しました。火星の重力をつくる。
加速度計:部費の予算1万円で買ったそうです。
食えん:ずるがしこくて、油断できない奴。
第五章まで読んで、第三章まで戻ることにしました。
実験装置のことが文章で書かれています。
絵本なら実験装置の絵が描いてあるでしょうから、すんなりわかりますが、文章ではわかりにくいというか、わかりません。
第三章から流し読みをしながら、自分で、いらなくなった紙の裏に実験装置の絵を描いてみます。
トロ舟:一般的には、セメントをこねる容器に使用するようです。長さ1m四方ぐらいのプレスチック容器のようです。長方形かもしれない。
乾燥珪砂(かんそうけいしゃ):石英の粒(つぶ)。陶磁器、ガラスの原料。
クレーターの形成実験:鉄球をトロ舟に落とす。鉄球が隕石(いんせき)のつもり。鉄球は、直径4cm、3cm、2cmがあるが、藤竹は、4cm以上のものがほしいらしい。
高さ2mから直径4cmの鉄球を珪砂に落とすと、鉄球がくぼみに沈んで頭を出す。頭のまわりに、輪ができる。砂が持ち上げられて、放出された砂がたまる。たまった砂が盛り上がった部分を、『リム』という。くぼみは直径が10cmぐらい。
鉄球の運動エネルギーとクレーターの直径には、比例関係がある。そこからスクーリング則(そく)という話になるのですが、わたしには理解できません。規則的なものがあるのでしょう。
科学部のメンバーはさらに、砂の固まりを加工して(お湯で溶かした寒天を流し込んである)、色付けをした砂を地層のように扱います。下から、緑色、青色、赤色、茶色とし、火星の地面を表現します。そこへ鉄球を落とします。同心円状に飛び散った4色の砂の飛び散り方の規則性を調べます。
次は、鉄球の発射装置の図面です。溶接やネジやバネをつくる製造業をしていた長嶺省造のアイデアが登場します。上等なパチンコ、下に向けて撃つとあります。
科学部のメンバーで研究して、全国的な学会で発表して、栄誉をもらうという人生の思い出づくりをするのです。学会は年に一度千葉市にある幕張メッセで開催されるそうです。(幕張メッセには行ったことがあるので、身近に感じます)
鉄球発射装置は、台のような形で、トロ船の上に設置する。アルミの4本足の上に木の板の台がある。代のまんなかに穴が開いている。穴の中に直径20cmの塩ビ管が通してある。
塩ビ管の上に、幅広ゴムが十文字に設置してある。このゴム紐(ひも)の弾力で、鉄球を飛ばす。
塩ビ管の下に、速度測定装置(光センサー使用)が取り付けてある。
3m50cmの高さが必要になるから、コンピューター準備室の天井のパネル板をはずして、実験装置をつくる。滑車を利用する。数か月間、同室を利用する。
この装置のことを、『重力可変装置』と呼ぶ。火星の重力を再現する。
直径50cm~60cmのプラスチック製たらいに、粒(つぶ)が非常に細かい砂が入れてある。砂は、火山灰のつもりである。砂は、水気(みずけ)を含んでいる。砂の火山灰が100gに水が56gでつくってある。越川アンジェラがなんどもチャレンジして適度な火山灰をつくった。
櫓(やぐら)のようなもの:メンバーいわく、『秘密兵器』。てっぺんに自転車のホイールがはめてある。
ホイールには、金属の細いワイヤーがかけてある。ワイヤーの両端に金具で木製の箱が取り付けてある。片方は長辺が40cmほどの箱で、もう片方は、一片15cmの箱で、小さい箱のほうが軽い。これを、『重力可変装置』と呼ぶ。大きいほうの木箱を、『実験ボックス』と呼ぶ。大きいほうの木箱を落下させる。底に4cm角ほどの加速度計が取り付けてある。小さいほうの箱は、おもりの役割を果たす。火星の重力が発生するように砂を入れてある。(地球の0.38倍)
火星は意外に小さい。半径が地球の半分ぐらいしかない。大気は二酸化炭素で、地表の気圧は地球の0.6%しかない。休眠状態の微生物とか、地中で生きている生命体がいる可能性はある。寒い。赤っぽい地面ばかりしかない。質量は地球の10分1。
加速度計:物体の加速度を測定する装置。1万円ぐらい。
『第六章 恐竜少年の仮説』
相澤(あいざわ):藤竹の友人。准教授。ふたりは、東都大学の同期生。オフィスの主人。ずんぐりした体と短い指をしている。藤竹は、東都大学大学院理学研究科で無給の学術研究員の立場にある。藤竹の研究テーマは、『天体衝突と惑星の進化』
奥多摩の雪景色が見えるオフィスには、探査機『はやぶさ2』、金星探査機『あかつき』、月周回衛星『かぐや』のプラモデルなどが飾ってある。時は、2月である。
JAXA(ジャクサ):宇宙航空研究開発機構。
宇宙科学研究所:所在地は、神奈川県相模原市(さがみはらし)。
アカデミア:大学や公的機関で働く研究者。教授、准教授など。
日本地球惑星科学連合大会:千葉市幕張メッセで5月に開催される。
藤竹の実験:定時制高校に科学部をつくるということ。定時制高校に科学部をつくり、どんなことが起きるのかを観察する。
首肯(しゅこう):うなずくこと。
メンバーの多様性:メンバーが同じような能力だと伸びない。
逡巡(しゅんじゅん):決心がつかずためらう。
(ちょっと横道にそれます)
たまたま先日の夜、BSフジのプライム・ニュースという番組を見ていたら、JAXA(ジャクサ)の人たちが出ていて、今年月面に着陸したSLIM(スリム。小型月着陸実証機)についてお話をされていました。ちょうどこの本に出ていた組織なので興味をもって見ました。
AI(エーアイ)みたいなもので、着陸20分前に相模原市のJAXAから指示を出すと、あとはSLIM(スリム)が自分自身で判断して月面に着陸していくそうです。
横流れしながら着陸して転倒した状態で静止した。計画していたとおりの姿勢での着陸ではなかったが、太陽光発電は利用できる状態だった。
月面の温度は昼100℃以上、夜は、-170℃前後だそうです。
地上では、事前にいろいろなパターンを考えてあって、実際の状況があてはまるパターンで淡々と処理を進めていくというようなお話でした。冷静沈着、機械的でもありますが、落ち着いて実行していくのです。
宇宙開発は基本的には、『ものづくりです』という言葉を聞いて、この物語に出てくる74歳の定時制高校生長嶺省造さんを思い浮かべたのです。
(では、もとに戻ります)
文章を読みながら装置のイメージ図を紙に書いているのですが、だんだんわからなくなってきました。
実験ボックス(大きいほうの木箱→透明のアクリル容器に変更した。側面が扉のように開く。長辺40cmの箱である)にデジタルカメラをつける。
コンピューター準備室の角(すみ)に、角材で組まれた櫓(やぐら)がある。
天井パネルが2枚はずされている。
その穴に、櫓の頭が少しつっこんでいる。
天井の穴から、自転車のホイールが下半分だけ見える。
櫓の高さは3mである。
滑車にワイヤーが釣り下がっている。ワイヤーの片方に実験ボックス、もう片方におもりの役目の小箱が付いている。
火星の重力は、0.38Gである。
その持続時間は、0.6秒である。
実験ボックスの中に、標的の砂(これがなにかわかりません→その砂を、火星の地表として、0.38Gの環境をつくって、隕石にたとえた金属球を撃ち込むのだろうか)を入れたプラスチック容器を入れる。
実験ボックスが滑車で落下する間に、上から金属球の弾(たま)を打ち込んで、クレーターをつくる。
実験ボックスの上に、金属球の発射装置を付ける。実験ボックスと金属球の発車装置は、一体である。両者は一体となって落下する。
発射装置は、スプリング式空気銃の仕組みを応用したものとする。
発射装置はアルミ製の筒で、長さは20cmぐらい、内部に、強力なばねとピストンが仕込まれている。(こどものころ、竹でつくった水鉄砲みたいです)
押しつぶしたばねが、元に戻る力で(伸びる)ピストンを押し出し、圧縮された空気が弾を撃ち出す。
この発射装置が、実験ボックスの上ぶたに金具で取り付けられている。
アクリル製実験ボックスの箱の上に、アルミの筒が立っている。アクリル箱の上ぶたには、筒から弾を通すための丸い穴が開いている。
引き金にばねを取り付ける。収縮したばねが動かないように小さな金属の留め金でとめる。留め具と櫓の最上部とを紐(ひも)でつなぐ。実験ボックスが、紐の長さまで落下したときに、留め具がはずれて、ばねが引き金を引いて隕石にたとえた球が、火星の地表にたとえた砂に向かって発射される。
紐は、細くてがんじょうなチェーンにした。チェーンの長さで、引き金を引くタイミングを調整する。誤射を防ぐ安全装置も装着した。製造業を職としていた長嶺省造さんのアイデアと技術です。
ストッパーである留め具はアルミ製にした。
ランパート・クレーター:この意味がなかなかしっくり頭に入ってきません。花びら状のクレーター。
二重ローブのクレーター:円形が二重になっているクレーター。まずひとつ円形があって、さらにひとまわり大きな円形が囲む状態でしょう。
名取佳純の性質・資質・性格として:記録魔です。いつどこでだれがなにをどうしてそうしてどうなったのかをていねいに記録します。たぶん、こういう人って、古代大和朝廷の時代からいたと思います。そういう人たちが文書を残してくれたおかげで、昔の歴史をふりかえることができます。
ドライアイス:火星の二酸化炭素の氷とする。
間隙率(かんげきりつ):すきま。火山灰の粒子の間のすきま。ちょっとむずかしくて、わたしにはわかりません。
昇華量:ドライアイスが蒸発することだと受け取りました。
マハブランカ:フィリピンの伝統的なスイーツ。ココナッツミルクでつくる。お豆腐みたいに見えます。
220ページまで読んできて、話がうまくいきすぎている感じがします。(このあと、波乱が訪れて、研究が中断します。冒頭の定時制高校退学者ふたりがコンピューター準備室に乗り込んできて、実験装置を破壊します。バカヤローたちです)
224ページ、読んでいて、脳の中で登場人物たちが生きている感覚があります。
実験装置を壊されて、メンバー同士の諍い(いさかい)があります。
おもりの小箱を手動で操作するのをやめて、電磁石を導入した。
藤竹の思考と苦悩が明かされます。
以前ノーベル賞を受賞したアメリカ合衆国在住日本人のお話と共通します。日本では、しがらみがあって、研究に専念できないのです。
読んでいて共感します。今年になって政治家の派閥が大きな問題になりましたが、それは、国会だけのことではなくて、日本中いたるところにある組織で行われていることです。
基本的に、大学ごとという学閥で、グループで集まって、師匠と弟子の関係ができて、自分たちの利益のために物事を決めていきます。師匠のポストを弟子が引き継いでいく手法です。派閥に入れない者は、能力があっても排除されます。自由度が低い。また、上司にあたる人のいうことに従わないと上司がもつ人事権で排除されます。
税金とか保険料とか、そんなお金という、『砂糖の山』に、みんなでアリのように群(むら)がって、権利を得て、関係者でお金を分け合うのです。そこに正義はありません。不合理、不条理、理不尽な世界が広がっています。
生き残るためには、パワハラやセクハラになどに耐えて、気持ちに折り合いをつけていくことが必要です。忍耐と順応です。それが現実です。
エリート:優秀とされる人。指導者の立場になる人。人口1臆2300万人の日本人から選ばれた人。
233ページに重い言葉があります。『エリートという連中は、真っ当なレールの上を歩んでこなかった人間が自分たちの足もとまでのし上がってきた途端、手のひらを返して蹴落としにかかるものだ……』
人の足をひっぱって、快感を味わいたいとう類(たぐい)の人間がいます。心の中に、鬼が住んでいる人がいます。
夜、9時15分に教室に集合して、みんなで話し合って、困難を克服します。心を割っての、本音での話し合いはだいじです。
藤竹はこどものころ、恐竜少年だった。科学に興味があった。
裕福な家のおぼっちゃまだった。
東京世田谷区の一戸建てに生まれて住み、中高一貫の私立高に通い、大学に入った。(本では東都大学ですが、現実では東京大学でしょう)。
父は大手ゼネコンの研究職、母は小学校教師をしていた。
そんな話から、学歴差別の話へとつながれていきます。藤竹さんが推す(おす)人物は、高等専門学校卒であったために、研究の実績をなきがものとされて不利益をこうむります。藤竹さんに推(お)された人物と柳田岳人のキャラクター(個性)が重なります。
教師という人たちは、人に点数をつけることが仕事の人たちです。
成績の点数結果で人間に上下のランクをつけます。
勉強ができる頭がいい人たちがつくる世界です。
大きな組織では、『本流(主流派)』とか、『支流(非主流派)』などと表現することもあります。
学歴とか成績で人間を色分けします。思いやりなどというものは、あるようでありません。利害関係でつながります。そういう世界があります。
ツーソン:メキシコとの国境に近い。藤竹のアメリカ合衆国での就労先。アリゾナ大学の研究員。藤竹は、上司にさからったので、日本の学術派閥から排除された。
ポスドク:期限付きの研究者
なんというか、想像力とか発明とかいう能力は、学歴とは関係ない時があるのです。そのことひとつについて、生まれながらのずば抜けた能力がある。だけどそのこと以外のほかのことは何もできないという人はいます。
ひととおり、なんでも平均点のことはできるけれど、ずばぬけた能力はないという人もいますが、それはそれで、会社や組織にとっては使い勝手がいい人であり、わたしは、すばらしい能力をもった人だと判断しています。
柳田岳人の言葉には説得力があります。
なにかをやるときに、具体的な理由とか理屈なんてないのです。
『やりたいからやる』のです。
アスペクト比:モニターなどの画像において、縦横の比率。1対2とか、3対とか。
解析(かいせき):細かく調べる。
実験では、想定外の結果が出ることがあるそうです。(なるほど)
深い意味合いがあります。
藤竹にとっては、定時制高校のメンバーを科学部に集めて研究をしたら、集まった人間たちによってどのような効果が生まれるかという実験をしているのです。目の前の火星をつくるという実験はそのための素材に過ぎないのです。
252ページに藤竹さんの言葉があります。『人間は、その気にさせられてこそ、遠くまで行ける』
『第七章 教室は宇宙をわたる』
最後の章まできました。ずいぶん長い文章になってしまいました。疲れました。
根気よく最後まで読んでいただいた方には感謝します。なにかの役(やく)に立てたら幸いです。
さあラストスパートです。(最後のがんばり)
小説の舞台は、JR京葉線海浜幕張駅南口から幕張メッセ国際会議場へと移ります。
自分も何度か訪れたことがある場所と地域です。
車を運転して、海浜幕張駅まで人を送ったこともあります。読んでいて、親しみを感じます。
初めて行ったのは、息子がまだ小学生のときで、4年生ぐらいだった記憶です。
ふたりで、大恐竜博展を観たあと、プロ野球の球場を横目に歩き、海岸辺りをぶらぶらしました。
その時は、もう二度とここへ来ることはないだろうと思いましたが、縁があって、その後何度も訪れました。
物語の中では、定時制高校のメンバーが発表会に参加します。『日本地球惑星科学連合大会』です。
この章では、柳田岳人(やなぎだ・たけと)が語り手です。彼のひとり語りが続きます。彼の気持ちが表現されます。
『火星重力下でランパート・クレーターを再現する』
研究メンバーは、東京都立東新宿高校定時制課程、柳田岳人、名取佳純、越川アンジェラ、長嶺省造です。発表者は、柳田岳人と名取佳純です。
真空チャンパー:内部を真空にするための容器。
標的:攻撃目標。ただ、こちらのお話の場合は、仮定した火星の地表とか地中のことをさすようです。
読んでいて思うのは、『オタクの世界』です。
オタク:こだわりがある対象をもち、対象物に時間やお金を集中する人。まあ、だれしもそういうところはあるでしょう。
物語ですので、当然ですが、メンバーたちの研究成果は表彰対象となります。
お笑いコンビティモンディ高岸宏行さんの決めゼリフ、『やればできる!』を思い出しました。
『見えるか、先生。獲ったぞ。(とったぞ)』
あの日あの時あの場所で、あの人に会わなければ、今の私はなかったということがあるし、会ったがために、ひどい目にあったということもあります。幸運な人に出会うことは良縁です。不運な人に出会わないためには工夫が必要です。
自分が人を見るときのものさしがあります。その行動を見て近づかいないように気をつけている人がいます。たばこを吸う人にいい人はいない。ながらスマホをする人にいい人はいない。ありがとうを言わない人にいい人はいない。お酒飲みも避けたほうがいい。長い間生きてきての教訓です。
奇人でもいいから善人と付き合う。悪人と思われる人とは距離を開ける。不利益に巻き込まれないようにする。
物語にある、『部屋』の文章の部分を読みながらそう思いました。部屋=人との出会いの空間です。
282ページ、夢のような(実現性のない)話ではあるという感想で読み終わりました。
『作者あとがき』
さきほど、実現性のない夢と書きましたが、実話のモデルがあるそうです。びっくりしました。
2017年の日本地球惑星科学連合で実際にあったお話をモデルにしてこの小説ができあがっているそうです。
大阪にある定時制高校がチャレンジして成功をおさめています。『重力可変装置で火星表層の水の流れを解析する』がタイトルでした。すごいなあ。立派です。
(その後 98ページに記事がある映画、『オデッセイ』を動画配信サービスで観ました)
物語は、火星にひとり残された男性植物学者宇宙飛行士をみんなで救出する物語になっています。
地球の科学者たちみんなが、国籍を問わずに協力し合って火星に取り残された男性を救い出します。
感動的です。
現実社会では、アメリカ合衆国と中国は仲が悪いようですが、映画の中では仲良しです。
最終的には、アメリカ合衆国が一番という映画です。かまいません。それがアメリカ合衆国の人の誇りであり心の支えなのでしょう。アメリカ合衆国らしい娯楽映画です。
オデッセイ:意味は、『長い冒険旅行』だそうです。映画の原題は、『The Martian(火星人)』です。
小説は、『火星の人 アンディ・ウィアー ハヤカワ文庫SF 1巻・2巻各上・下』です。
こちらの本の登場人物の名取佳純(なとりかすみ 16歳 中学不登校 リストカット女子)が、『火星の人』を読んで、へこんだ気持ちが助けられるわけですが、小説とかマンガを読むことで、励まされたり、心が救われたりすることってあります。音楽や映画でも同様です。ですから、人間にとって、芸術や娯楽は大事です。お笑いも大事です。
本の帯を読むとどうも定時制高校のお話らしい。
まだ、自分が二十歳前後の頃、定時制高校に通っていた親族がいて、一度見学に行ったことがあります。また、大学の夜間部も見たことがあります。
なんというか、年齢がさまざまでした。昼間の学校のように、学年に応じた年齢の生徒・学生のかたまりではありません。年齢層の幅がとても広い。夜間の大学では、60代の男性もいました。彼は、片道2時間半ぐらいかけて、遠方にある港町のご自宅から電車で休まず通学されているということでした。それだけ、学習意欲が強い人たちが集う(つどう)学校でした。
定時制高校にしても大学の夜間部にしても、勤め先の企業や組織が、通学する社員のためにいろいろ配慮をしてくれていました。仕事の終業時刻が午後4時半ぐらいに設定されていました。企業や組織にとって、優秀な人材を確保して働いてもらって、企業や組織の寿命を継続していくという目的がありました。お金も大切ですが、人材はお金以上に大切な財産でした。昭和時代は、終身雇用の時代でした。
さて、この小説の出だしでは、柳田岳人(やなぎだ・たけと)という若い人が、定時制高校の授業をサボっているような記述から始まります。タバコも吸っています。
現実の学生が柳田岳人のようないいかげんな人間ばかりだと誤解を生むような内容ではないことを願って文章を読み始めます。勉強ができないから夜学に行っているのではないのです。経済的に通うことが無理だから夜学に行っているのです。夜学には、昼間の学生に負けない学力をもっている人もおられました。
第一章から始まって、第七章まであります。全体で282ページの小説です。
仮想の高校でしょう。都立東新宿高校です。昼間は昼間部の生徒、夜は、夜間定時制の生徒がいます。1学年に1クラスある。クラスの定員が30人。定員割れになっている。5時45分開始、9時に4時限が終了する。一日4時限で、4年間で卒業する。
『第一章 夜八時の青空教室』
柳田岳人(やなぎだ・たけと):21歳。2年生。喫煙者。授業に途中から出席する。愛称、『ガッくん』。麻薬の売買に関与しそうになっている。大麻はやらない。酒はほとんど飲まない。常にシラフ(飲酒せず通常の状態)でいたい。柳田岳人が在籍する2年生のクラスは、在籍者数が18人。本人いわく、自分はごみ収集の仕事をしている。リサイクル作業所。定時制高校を辞めたいという気持ちがある。計算式を解く能力が高いが、文章題問題を解けない。なにか障害があって文章を読めないようすです。
藤竹:柳田岳人のクラスの担任教師。34歳男性。見た目は頼りない。なでがた。なまっちろい(顔色が白い)。態度はでかい。理科、数学担当。口癖として、『自動的にはわからない』。つかみどころのない人間。頭脳明晰(ずのうめいせき)、冷静沈着。怒らない(おこらない)。論理的な思考で行動する。
佐藤:藤竹の前の担任教師。メンタルの不調で休職中。
三浦:定時制高校の退学者。一年で中退。原付、ノーヘル(ヘルメット)で校内を走る。麻薬の売人をしている。
朴(パク):退学者。一年で中退。三浦と同じく原付、ノーヘル。坊主頭を赤く染めている。麻薬の売人をしている。
長老:柳田のクラスメート。70代男性。やせこけている。最前列に座っている。だれよりも勉強熱心。
麻衣:新宿歌舞伎町のキャバクラ嬢。授業中に男性客からスマホに電話が入ると教室を出て廊下に出て行く。
クラスメート:40代~50代の女性がふたり。ひとりはいつもノートをとっている。もうひとりは東南アジア系小太りでよくしゃべる。ニックネームは、『ママ(フィリピンパブのママのイメージ)』。外国にルーツをもつ生徒が複数いる。かれらは、日本語が不自由である。ほかに、素行不良で全日制の高校をつまみだされた生徒たち。それぞれ、カラフルな髪色にごついアクセサリーを付けている者。授業中は寝ている者。それから、中学校での元不登校組、小中学校でいじめにあった者。集団生活になじめなかった者。アニメオタクが多い。クラスとしてのまとまりはない。
場所は、東京新宿駅近くの牛丼屋から始まります。
20ページまで読んで、心配していたとおり、おちこぼれの人間たちが定時制高校に通っているような書き方で不快です。
『こんなとこに(定時制高校)、まともに勉強してるやつなんているかよ』(こんなセリフは書かないでほしい。勉強したくて来ている人間がちゃんといます)
関係者が読んだら、世間に誤解が広がると怒るでしょう。
昔、『同情するなら金をくれ』という決めゼリフで大ヒットした、『家なき子』というドラマがありました。その後、似たようなドラマを放映したところ、関係先から猛攻撃を受けて(事実とは違うという理由で)、スポンサーが全部降りて、途中で放送がたちいかなくなったことがあったと思います。
大麻の価格表として、ヤサイ7500:(乾燥大麻の隠語1グラムの単価(円)7500円)そして、リキッド18000:(大麻リキッド(大麻から抽出された液体)単位は本。1本の単価(円)18000円)
三浦と朴(パク)は、やくざや不良外国人とのつきあいあり。
柳田岳人が廃棄物処理工場の職場で暴力を振るいます。定時制高校に通っていることを馬鹿にされたからです。
柳田岳人は、もともと、周囲の同僚と仲良くしようという気持ちがありません。だからまわりから嫌われます。『金さえもらえりゃそれでいいんだ』(そんな気持ちで働いてほしくありません。仕事は楽で、給料が良くて、休みが多いほうがいいと思っているだけの人間は不祥事を起こします。会社のお金を自分のポケットに入れたりします。まずは、世のため人のために働くという動機付けが必要です)
柳田岳人が暴力をふるった相手は、暴力を振るわれる前に、定時制高校の生徒を馬鹿にするセリフが出てきます。また、柳田岳人の人格を否定するような発言があります。一般的に、人格を否定された人間は、一生そのことを忘れず、相手を憎み続けます。
まあ、意図的につくってある物語です。つまらなくなりました。流し読みに入ります。
主人公の柳田岳人に学習障害があるようです。文章を読めない。ディスなんとか。(読み進めていたら31ページに『ディスレクシア』という言葉が出てきました。文字の読み書きが困難。俳優のトム・クルーズ、アメリカ大統領だったブッシュ、映画監督のスティーブン・スピルバーグがディスレクシアという記事を読んだことがあります)だからこれまで、家庭や学校で苦労をしてきた。柳田岳人は、大手電機メーカーの社員である父親に突き放されています。
柳田岳人は、運転手の仕事に就きたい。ひとりでする仕事がいい。他人とはできるだけ関わり合いになりたくない。
でも、文章を読めない。運転免許を取得するための教本の文章を読めない。運転実技は合格できても学科試験に合格できない。文章を読めるようになるために、定時制高校に入学した。彼が定時制高校で学ぶ動機です。
藤竹教諭が柳田岳人を導きます。
文字のフォント(デザイン)で、ディスレクシアの人でも文字や文章を読めることがある。
まあ、たばこの話が多いです。
ヒムネ:韓国のことばで、がんばれ。
柳田岳人は、科学的なことに興味が強い。理科教師の藤竹が、柳田岳人をいい方向へと誘導していきます。
話が飛びますが、毎週日曜日の午前10時過ぎから、NHKのラジオ番組で、こども科学電話相談が流れています。そのラジオ番組でこどもたちがする質問と柳田岳人の考える質問が重なります。
自分の長い人生をふりかえってみると、自分がとても世話になった人が何人かいます。逆に、自分が一生懸命世話をして立ち直ってくれた人も何人かいます。人は、やってもらうと、お返しをしようという気持ちになります。
お世話になった人たちはもう他界されました。世話をした人からは年賀状が届きます。
歳をとって、今は、特段世話になることも、世話をすることもなくなりました。
今どきの日本人は、なんだか、人の性質が変わってしまいました。自分が悪いとは定義せずに、うまくいかないのは、自分ではなく、相手のせいだと主張する人が出てきました。
他者への依存では、いつまでたっても、自活や自立はできません。
柳田岳人は、普通の昼間の高校に行きたかった。
『空がなぜ青いのか』を知りたかった。宇宙とか地球のことを知りたかった。雲はどうして白いのか、虹はどうして七色なのか、知りたかった。
教師である藤竹は柳田岳人と、科学部をつくりたい。
『第二章 雲と火山のレシピ』
以下、定時制高校の生徒として、
越川アンジェラ:40歳。日本とフィリピンのハーフ。フィリピン料理店、『ジャスミン』を夫婦で営んでいる。店の営業は今年で12年目である。夫は商業高校を出ている。娘が、栄養専門学校に通っている。母が定時制高校に通学している時間帯は、娘が店を手伝っている。夫も娘も、アンジェラの通学に協力している。アンジェラは、『高校』にあこがれて入学した。クラスメートからは、『ママ』と呼ばれている。フィリピンパブのママの印象がある。若い頃は、ホステスをしていたことがある。越川アンジェラは、ほんとうは、小学校の先生になりたかった。
池本マリ:16歳。愛嬌(あいきょう。人と接するとき、相手に好感を与える雰囲気)がある。中学を卒業して定時制高校に入学してきた。昼間は、清掃業の会社で働いている。ホテルや病院の清掃をしている。父親は日本人、母親はフィリピン人のハーフである。両親はマリが幼いころに離婚した。以降、母親と妹と三人で暮らしている。母親は体調がすぐれない。マリが家族の生活を支えている。大学に行って教師になりたいという希望がある。
長嶺(ながみね):70代の男性。陰で、『長老』と呼ばれている。
昼間の女子生徒が教室に入って来て、夜、定時制で自分の机を使っている池本マリが、机の中に入れてあった自分のペンケースを盗んだんじゃないかと言い出す。
池本マリが知らないと返答する。
そんなことがあった。
昼間の生徒は、ブレザーの制服姿ですが、夜の生徒は私服です。柳田岳人は、清掃会社の作業服姿です。
物理準備室:物理担当藤竹教師の部屋。ここが、なにかの本拠地になるようです。
みそ汁で、積乱雲をつくる実験をする。柳田岳人と越川アンジェラがいます。
『対流(たいりゅう)』の実験です。
カラマンシージュース:カラマンシーは、フィリピン方面東南アジアの柑橘系(かんきつけい)果実。さわやかな酸味がある。別名「フィリピンレモン」
2年2組の黒田玲奈(くろだ・れな):昼間の生徒。黒髪ロング。定時制の生徒をばかにする。定時制の生徒を泥棒扱いする。生活保護者をばかにする。
べっこう飴を使って、地震発生モデル実験を行う。逆断層、正断層。
物語に出てくる中学校というところは、いじめがあって、教師たちは知らん顔をしてひどいところです。
わたしは、中学校は、父親が中1の6月に、いきなり病死したことで、どたばたがあって、3校通いました。最初の中学校にいじめはありませんでした。転校した次の中学校もいじめはありませんでした。さらに転校した3校目もいじめはありませんでした。だけど、先生の体罰がありました。けっこうきつい体罰でした。体罰があったから生徒がおとなしくしていたということはありました。まあ、そんな時代でした。親も教師の体罰を容認していました。思うに、第二次世界大戦中の軍国教育が、終戦後30年間ぐらいは尾を引いていたのだと思います。
キムワイプ:アメリカ製のふきんみたいな布。油をふきとる。藤竹の物理準備室に置いてある。
『じゃぱゆきさん』という言葉が出てきます。フィリピン生まれの女性が、日本に渡って風俗の仕事をするのです。
わたしは逆に、『からゆきさん』という言葉を知っています。九州の西海岸地方で生まれた女性が、東南アジアの国へ行って風俗の仕事をするのです。小説作品があります。『サンダカン八番娼館 山崎朋子 文春文庫』、映画にもなりました。
どこもかしこも、女性は、売られる扱いです。
倉橋先生:小学校の先生。越川アンジェラがこどもの頃に世話になった。
火山の噴火実験をする。重曹(じゅうそう)と酢を使う。
短い推理小説にも似た書き方です。
『第三章 オポチュニティの轍(わだち)』
オポチュニティ:チャンス、良い機会、タイミング
名取佳純(なとり・かすみ):定時制高校1年生。三人家族。母と姉。父親は、佳純が7歳のときに出て行った。母がおかしい。姉と妹を比較して、妹を差別する。佳純は中学時代不登校になった。中学3年生からリストカット(カミソリで手首を切る。自殺企図だが死ねない)を始める。定時制高校は、5月23日から保健室登校になり、3週間が経過している。教室は1A。
佐久間:定時制高校保健室の先生。養護教諭。読んでいて最初保健師かと思いましたが、元看護師でした。いろいろわけありです。髪を真っ赤に染めている。30歳より上ぐらい。
松谷真耶(まつたに・まや):定時制高校一年生。この子もわけありです。リストカットの常習者。なお、名取佳純も同様の常習者です。年齢は、名取佳純より1歳上ですから、17歳ぐらいか。全身黒づくめで、肩までの黒髪にピンクのメッシュ(髪全体に薄いピンク色をつけてある。立体感が出る)。起立性調節障害(自律神経の異常)がある。全身がだるい。立ちくらみと頭痛がする。松谷摩耶のバイト代を、母親が、パチンコと酒に使う。(とんでもない母親です)
<来室ノート>:保健室に置いてあったノート。4年間ぐらいだれも書き込みをしていなかった。保健室登校をしている名取佳純が書き込んでいる。(定時制高校にも保健室登校というものがあるのかと驚きました)
火星の話です。
ソル:火星における一日のこと。約24時間40分
ハブ:火星での居住施設
星を継ぐもの:イギリスのSF(サイエンス・フィクション)作家ジェームス・P・ホーガン(1941年(日本だと昭和16年)-2010年(平成22年)69歳没)のSF小説。
EVA:宇宙服を着ての船外活動(施設外活動)
火星の人:アメリカ合衆国のSF作家アンディ・ウィアー(1972年生まれ(昭和47年)51歳)の作品。アメリカの小説家。火星の人は、2011年発表(平成23年)
定時制高校を火星とし、ハブを保健室とする。名取佳純は、ハブでしか、呼吸ができない。
名取佳純は、EVAを着て、教室に行く。決死の覚悟がいる。
過換気:発作的に息苦しくなって、呼吸が早くなる。
過呼吸:緊張、ストレスで、呼吸の深さが増加する。
熊太郎は長いこと生きてきて、一度だけ、リストカットというものを見たことがあります。手首に無数の細い切り傷がある人でした。わたしには、理解できない行動です。心の病気です。よっぽどひどい目にあったのでしょう。自殺するために切ったというよりも、自分を傷つけるという軽い傷の付き方でした。自傷行為で心が満たされる。異常です。
この物語では、リストカット常習者の松谷摩耶が、名取佳純に、『(自分たちは)同類だね』と声をかけます。
夏への扉:1956年(昭和31年)発表のSF作品。アメリカ合衆国SF作家ロバート・A・ハインライン(1907年(明治40年)-1988年(昭和63年)80歳没)。タイムトラベルもの。1970年(昭和45年)と2000年(平成12年)を行き来する。3月に放送が終わったドラマ、『不適切に問ほどがある!』みたいです。
アイザック・アシモフ:アメリカ合衆国の生化学者(生物化学)、作家。1992年(平成4年)72歳没。
アーサー・C・クラーク:イギリスのSF作家。2008年(平成20年)91歳没。作品として、『2001年宇宙の旅』
いろいろむずかしい言葉が多い。
アムカ:アームカット。腕を傷つけること。
ふと気づいたのですが、『リストカットの痕(あと)』と、この章のタイトル、『オポチュニティの轍(火星探査車のわだち)』が、重ねてあるのです。痕(あと)も轍(わだち)もどちらも、『これまで生きてきた証(あかし。軌跡)』なのです。
物理準備室で、科学クラブの実験です。
『火星の夕焼けを再現する』という実験です。
透過光(とうかこう):透明な物体を通した光。
オデッセイ:『火星の人』を原作としたハリウッド映画。2015年(平成27年)のアメリカ合衆国のSF映画。(この本を読んだあと、動画配信サービスで観ました。アメリカらしい豪快な映画でした)
100ページで、この第三章の部分のタイトル、『オポチュニティの轍(わだち)』の意味が解き明かされます。味わいがあります。
オポチュニティ:火星で活動する無人探査船の名称。オポチュニティの轍(わだち。左右に3つずつの車輪の2本の跡(あと))が、人生の軌跡と重なります。
火星探査船オポチュニティを擬人化してあります。オポチュニティは、遠く離れた火星で、ひとりぼっちでがんばったのです。火星の写真をたくさん撮って、地球に送ってくれたのです。
オポチュニティは、2003年(平成15年)7月に打ち上げられ、2004年(平成16年)に火星に到着した。運用期間3か月の予定だったが、気がつけば、14年間火星での旅を続けてくれた。
2018年(平成30年)、オポチュニティは、大規模な砂嵐に襲われて、太陽電池がダウンして、機能が停止した。
2019年(平成31年)2月、NASA(アメリカ航空宇宙局)は、ミッション終了を宣言した。
オポチュニティは、調査中に、前輪を一つ失ったり、砂だまりにはまりこんだり、原因不明の電力低下に見舞われたり、数々の困難に直面したが、克服し続けた。
『この子(オポチュニティにたとえて)は、自分の後ろに続く轍(わだち)を見て、ただ孤独を感じたわけではないのだ。きっと、もう少しだけ前へ進もうと思ったに違いない……』オポチュニティの背後には、地球に応援してくれる仲間がいた(NASAのスタッフメンバー)。この子にも、仲間が必要だ(定時制高校科学部の生徒)。
108ページにいいことが書いてあります。共感します。
『……わたしの第一の仕事は、学校の中で子どもたちを死なせないこと……』
小学生や中学生をもつ親が教師に望むことは、『生きて卒業させてください』ということです。勉強も運動もできなくてもかまいません。いじめや体罰や事故でこどもが死んだら、親は教師や学校を許しません。
トリアージ:おおぜいの負傷者が出たとき、患者の状態に応じて、治療や搬送の順位を決めること。
レイリー散乱(さんらん):地球の空は青い。夕焼けは赤いという理由の説明があります。昼間は、波長の長い青色の光が散乱する。日没時は、太陽光が大気を通る距離が長くなり、散乱されにくい赤い光が生き残って夕焼けになる。火星ではその逆になるそうです。火星の昼間は赤色の空で、日没のころは青い夕焼けだそうです。空気が薄い、塵(ちり)が多いことが理由だそうです。
『第四章 金の卵の衝突実験』
長嶺省造:定時制高校二年生。昭和23年生まれ。74歳。金属加工の会社を自営で経営していたが、70歳で会社経営を閉じた。子どもはふたりで、孫がいる。福島の常磐炭田(じょうばんたんでん)の炭鉱町で育った。炭鉱が斜陽化したためもあり、中卒で、集団就職で東京に来て町工場でがんばった。37歳で独立した。父親は10歳のときに炭鉱事故で亡くなった。
長嶺江美子:長嶺省造の妻。『じん肺(仕事中に大量の粉塵(ふんじん。ほこり、金属の粒(つぶ)などを長期間吸い込んで肺の組織が壊れた)』で現在は入院中。退院はいつになるのかわからない。学歴は中学卒業。青森から集団就職で上京して、タイル工場で10年間粉まみれで働いた。高校に行きたかった。
木内:50代。英語教師
正司麻衣(しょうじ・まい):定時制高校二年生。いつもスマホをさわっている。
昭和三十年代から四十年代、日本の高度経済成長期にあった、地方に生まれた中学卒業者男女を列車に乗せて都市部へ就職させるという『金の卵』という歴史を振り返ります。長嶺省造夫婦が紹介されます。
現在の六十代以上で体験者がいると思います。こちらの本では、青森、福島の東北地方ですが、九州の鹿児島あたりからでもありました。電車に乗せられて延々と都会まで義務教育卒業の男女のこどもたちが運ばれていくのです。当時、新幹線はなかったか、あっても東京・大阪間で、今ほど普及していませんでした。みなさんたいへんな思いをされました。
いっぽう、もともと都会暮らしをしていた人たちは、景気がいい時期で、生まれてから歳をとるまでずっと貧困暮らしを体験したことがないという人もいます。人は、生まれる場所で人生の過ごし方が大きく変わります。
物語の中の学校では、世代間の対立が、くっきりと出てきて、荒っぽい言動も出てくる表現になってきます。世代間衝突です。
老齢者は、いまどきの若いもんはと定時制高校に来ても勉強しない若い人たちを𠮟りつけ、若い人は、自分たちのことを何も知らないくせにうっとおしいと高齢者の世代を攻めます。
気づくのは、貧困という苦労はあったけれど、昭和時代の若い人には未来への夢があった。地方から出て来てがんばって、じっさいに経済的に豊かになった人が多い。ところが、今の若い人には、未来への夢がないということです。
社会制度とか社会秩序が変わりました。人口構成も大きく変化しました。
この部分を読んでいて思ったのは、昔は、たいてい、まわりにいるみんなが、同じように貧乏だった。
今は、貧富の差とか、学歴・学力の差が、極端に分かれてしまった。格差というのでしょう。
わたしが高校生の頃、大学進学にあたって、家が経済的に苦しい母子家庭だったので、日本育英会の奨学金を申請しました。審査のために面接があったのですが、今はどうか知りませんが、当時は集団面接で、面接会場に行ってみたら、同じ高校に通っている顔見知りの生徒がたくさんいて、なんだおまえもかという雰囲気になり、みんな貧乏なんだなあとお互いにお互いを思った次第です。あんな、頭が良くてかっこいい奴でも、家は貧乏なんだなあです。いいとこのボンボンなんていない田舎でした。
クレーター実験。砂地に鉄球を落とす。
食えん:ずるがしこくて油断ができない。
『第五章 コンピューター室の火星』
昼間部の高校生が出てきます。2年2組です。定時制の柳田岳人と同じ机を共用しています。
丹羽要(にわ・かなめ):高校2年生17歳ぐらい。この子もわけありです。学力が高かったのに、いろいろあって低レベルの高校にしか入学できなかったと嘆いています。家庭が壊れています。両親はケンカして父親が家を出て行き、弟は素直ないい子だったのですが、荒れて、家庭内暴力で暴れています。丹羽要は、自宅に帰りたくない。昼間の高校のコンピュータークラブの部員です。部員とはいえ、まあ、ひとりぼっちです。陰キャらのパソコンオタクだと書いてとあります。
第五章を読み終えたときに思ったことです。(読みながら感想をつぎ足しています)
社会に出ると、学校で何があったかはまったく問題になりません。
学校であったことは、社会では、関係ないのです。
社会では、年齢層の幅が広い、人が多い、広い空間で自分の居場所を探します。
学校で何があったかなんて気にすることはありません。
社会に出ると、一日一日、日にちがたつごとに、学校のことは、日常生活から遠ざかっていきます。そのうち学校に通っていたことも忘れてしまいます。
山崎:丹羽要の前の席に座っている。
河本(こうもと):コンピュータークラブの部員一年生。一年生部員3人のうちのひとり。丹羽要を入れて、実質4人しかコンピュータークラブの部員はいない。
津久井:昼間の高校の数学教師。コンピューター部顧問。
コンピューター室:別棟の校舎にある。4階にある。以前は、地学実験室で使用されていた部屋である。室内には、白いパソコンがずらりと並んでいる。隣に、コンピューター準備室がある。
藤竹教師が、コンピューター準備室の天井パネルをはずして、実験の下準備をしている。
定時制のメンバーが利用している物理準備室は同じ建物の2階にある。
エンカウント:ゲーム用語で、「敵との遭遇(そうぐう)」のこと。
アルゴリズム:手順、計算方法、問題解決の手法
筐体(きょうたい):機器の箱
日本情報オリンピック:丹羽要がチャレンジしている。プログラミング能力を競う。数学・物理の大会、『科学オリンピック』の種目のひとつ。『国際情報オリンピック』日本代表の選考を兼ねている。
定時制の科学部が、コンピューター準備室を実験で利用したい。数か月間毎日利用したい。
拒否反応を示すコンピュータークラブの丹羽要です。
定時制の科学部は、実験成果を、学会で発表したい。(毎年5月に開催される日本地球惑星科学連合の大会にある高校生セッションで発表したい。セッション:期間、時間
実験では、『火星を作る』作業を行う。
最小二乗法(さいしょうじじょほう):わたしには説明できる能力がありません。ご自分で調べてくださいな。データをとって、グラフ化するようです。もっとも確からしい結果を表現するようです。
リム:クレーター作成実験で、鉄の玉を砂地に落とすと、砂がはじかれて、円形に穴があき、その穴のふちが盛り上がるのですが、その盛り上がった部分をリムと呼ぶようです。
ランパート・クレーター:リムのまわりに、エジェクタ堆積物が花びらみたいに広がった状態をいうようです。
エジェクタ:排出。エジェクタ堆積物を研究者は、『ローブ』と呼ぶ。
火星のランパート・クレーターを実験室で再現する。
丹羽要と定時制科学部との間で、コンピューター準備室の利用について衝突があります。
丹羽要は、パソコンがあればしたいことができるのですが、自宅にある彼のパソコンは、弟の家庭内暴力で破壊されてしまったそうです。だから、学校のパソコンをどうしても神経を集中できる静かな環境下で使いたい。
丹羽要の弟は、母親は殴らない。自分を守るために、親を殴るかわりに、物をぶっこわしている。(おそろしいけれど、かわいそうでもあります。暴力ではなにも解決しません)
弟の名前は、『衛(まもる)』。兄の要が高一のとき、衛は中一だった。半年ほどで不登校になり、家の中の物を破壊する家庭内暴力が始まった。
丹羽要は、小学三年生の時に、システムエンジニアだった父親が、中古のノートパソコンを要にくれたことがきっかけでプログラミングを始めた。
丹羽要の両親の性格:ふたりとも、自分の考えが常に正しいと思っているタイプの人間。
藤竹:大学研究者。席はまだ大学にある。(無給)。なにやら事情があって、定時制高校で教師をしている。
秘密兵器:滑車のこと。
タワー・オブ・テラー:ディズニーシーにあるアトラクション
重力可変装置:重力の力を変えることができる装置と理解しました。火星の重力をつくる。
加速度計:部費の予算1万円で買ったそうです。
食えん:ずるがしこくて、油断できない奴。
第五章まで読んで、第三章まで戻ることにしました。
実験装置のことが文章で書かれています。
絵本なら実験装置の絵が描いてあるでしょうから、すんなりわかりますが、文章ではわかりにくいというか、わかりません。
第三章から流し読みをしながら、自分で、いらなくなった紙の裏に実験装置の絵を描いてみます。
トロ舟:一般的には、セメントをこねる容器に使用するようです。長さ1m四方ぐらいのプレスチック容器のようです。長方形かもしれない。
乾燥珪砂(かんそうけいしゃ):石英の粒(つぶ)。陶磁器、ガラスの原料。
クレーターの形成実験:鉄球をトロ舟に落とす。鉄球が隕石(いんせき)のつもり。鉄球は、直径4cm、3cm、2cmがあるが、藤竹は、4cm以上のものがほしいらしい。
高さ2mから直径4cmの鉄球を珪砂に落とすと、鉄球がくぼみに沈んで頭を出す。頭のまわりに、輪ができる。砂が持ち上げられて、放出された砂がたまる。たまった砂が盛り上がった部分を、『リム』という。くぼみは直径が10cmぐらい。
鉄球の運動エネルギーとクレーターの直径には、比例関係がある。そこからスクーリング則(そく)という話になるのですが、わたしには理解できません。規則的なものがあるのでしょう。
科学部のメンバーはさらに、砂の固まりを加工して(お湯で溶かした寒天を流し込んである)、色付けをした砂を地層のように扱います。下から、緑色、青色、赤色、茶色とし、火星の地面を表現します。そこへ鉄球を落とします。同心円状に飛び散った4色の砂の飛び散り方の規則性を調べます。
次は、鉄球の発射装置の図面です。溶接やネジやバネをつくる製造業をしていた長嶺省造のアイデアが登場します。上等なパチンコ、下に向けて撃つとあります。
科学部のメンバーで研究して、全国的な学会で発表して、栄誉をもらうという人生の思い出づくりをするのです。学会は年に一度千葉市にある幕張メッセで開催されるそうです。(幕張メッセには行ったことがあるので、身近に感じます)
鉄球発射装置は、台のような形で、トロ船の上に設置する。アルミの4本足の上に木の板の台がある。代のまんなかに穴が開いている。穴の中に直径20cmの塩ビ管が通してある。
塩ビ管の上に、幅広ゴムが十文字に設置してある。このゴム紐(ひも)の弾力で、鉄球を飛ばす。
塩ビ管の下に、速度測定装置(光センサー使用)が取り付けてある。
3m50cmの高さが必要になるから、コンピューター準備室の天井のパネル板をはずして、実験装置をつくる。滑車を利用する。数か月間、同室を利用する。
この装置のことを、『重力可変装置』と呼ぶ。火星の重力を再現する。
直径50cm~60cmのプラスチック製たらいに、粒(つぶ)が非常に細かい砂が入れてある。砂は、火山灰のつもりである。砂は、水気(みずけ)を含んでいる。砂の火山灰が100gに水が56gでつくってある。越川アンジェラがなんどもチャレンジして適度な火山灰をつくった。
櫓(やぐら)のようなもの:メンバーいわく、『秘密兵器』。てっぺんに自転車のホイールがはめてある。
ホイールには、金属の細いワイヤーがかけてある。ワイヤーの両端に金具で木製の箱が取り付けてある。片方は長辺が40cmほどの箱で、もう片方は、一片15cmの箱で、小さい箱のほうが軽い。これを、『重力可変装置』と呼ぶ。大きいほうの木箱を、『実験ボックス』と呼ぶ。大きいほうの木箱を落下させる。底に4cm角ほどの加速度計が取り付けてある。小さいほうの箱は、おもりの役割を果たす。火星の重力が発生するように砂を入れてある。(地球の0.38倍)
火星は意外に小さい。半径が地球の半分ぐらいしかない。大気は二酸化炭素で、地表の気圧は地球の0.6%しかない。休眠状態の微生物とか、地中で生きている生命体がいる可能性はある。寒い。赤っぽい地面ばかりしかない。質量は地球の10分1。
加速度計:物体の加速度を測定する装置。1万円ぐらい。
『第六章 恐竜少年の仮説』
相澤(あいざわ):藤竹の友人。准教授。ふたりは、東都大学の同期生。オフィスの主人。ずんぐりした体と短い指をしている。藤竹は、東都大学大学院理学研究科で無給の学術研究員の立場にある。藤竹の研究テーマは、『天体衝突と惑星の進化』
奥多摩の雪景色が見えるオフィスには、探査機『はやぶさ2』、金星探査機『あかつき』、月周回衛星『かぐや』のプラモデルなどが飾ってある。時は、2月である。
JAXA(ジャクサ):宇宙航空研究開発機構。
宇宙科学研究所:所在地は、神奈川県相模原市(さがみはらし)。
アカデミア:大学や公的機関で働く研究者。教授、准教授など。
日本地球惑星科学連合大会:千葉市幕張メッセで5月に開催される。
藤竹の実験:定時制高校に科学部をつくるということ。定時制高校に科学部をつくり、どんなことが起きるのかを観察する。
首肯(しゅこう):うなずくこと。
メンバーの多様性:メンバーが同じような能力だと伸びない。
逡巡(しゅんじゅん):決心がつかずためらう。
(ちょっと横道にそれます)
たまたま先日の夜、BSフジのプライム・ニュースという番組を見ていたら、JAXA(ジャクサ)の人たちが出ていて、今年月面に着陸したSLIM(スリム。小型月着陸実証機)についてお話をされていました。ちょうどこの本に出ていた組織なので興味をもって見ました。
AI(エーアイ)みたいなもので、着陸20分前に相模原市のJAXAから指示を出すと、あとはSLIM(スリム)が自分自身で判断して月面に着陸していくそうです。
横流れしながら着陸して転倒した状態で静止した。計画していたとおりの姿勢での着陸ではなかったが、太陽光発電は利用できる状態だった。
月面の温度は昼100℃以上、夜は、-170℃前後だそうです。
地上では、事前にいろいろなパターンを考えてあって、実際の状況があてはまるパターンで淡々と処理を進めていくというようなお話でした。冷静沈着、機械的でもありますが、落ち着いて実行していくのです。
宇宙開発は基本的には、『ものづくりです』という言葉を聞いて、この物語に出てくる74歳の定時制高校生長嶺省造さんを思い浮かべたのです。
(では、もとに戻ります)
文章を読みながら装置のイメージ図を紙に書いているのですが、だんだんわからなくなってきました。
実験ボックス(大きいほうの木箱→透明のアクリル容器に変更した。側面が扉のように開く。長辺40cmの箱である)にデジタルカメラをつける。
コンピューター準備室の角(すみ)に、角材で組まれた櫓(やぐら)がある。
天井パネルが2枚はずされている。
その穴に、櫓の頭が少しつっこんでいる。
天井の穴から、自転車のホイールが下半分だけ見える。
櫓の高さは3mである。
滑車にワイヤーが釣り下がっている。ワイヤーの片方に実験ボックス、もう片方におもりの役目の小箱が付いている。
火星の重力は、0.38Gである。
その持続時間は、0.6秒である。
実験ボックスの中に、標的の砂(これがなにかわかりません→その砂を、火星の地表として、0.38Gの環境をつくって、隕石にたとえた金属球を撃ち込むのだろうか)を入れたプラスチック容器を入れる。
実験ボックスが滑車で落下する間に、上から金属球の弾(たま)を打ち込んで、クレーターをつくる。
実験ボックスの上に、金属球の発射装置を付ける。実験ボックスと金属球の発車装置は、一体である。両者は一体となって落下する。
発射装置は、スプリング式空気銃の仕組みを応用したものとする。
発射装置はアルミ製の筒で、長さは20cmぐらい、内部に、強力なばねとピストンが仕込まれている。(こどものころ、竹でつくった水鉄砲みたいです)
押しつぶしたばねが、元に戻る力で(伸びる)ピストンを押し出し、圧縮された空気が弾を撃ち出す。
この発射装置が、実験ボックスの上ぶたに金具で取り付けられている。
アクリル製実験ボックスの箱の上に、アルミの筒が立っている。アクリル箱の上ぶたには、筒から弾を通すための丸い穴が開いている。
引き金にばねを取り付ける。収縮したばねが動かないように小さな金属の留め金でとめる。留め具と櫓の最上部とを紐(ひも)でつなぐ。実験ボックスが、紐の長さまで落下したときに、留め具がはずれて、ばねが引き金を引いて隕石にたとえた球が、火星の地表にたとえた砂に向かって発射される。
紐は、細くてがんじょうなチェーンにした。チェーンの長さで、引き金を引くタイミングを調整する。誤射を防ぐ安全装置も装着した。製造業を職としていた長嶺省造さんのアイデアと技術です。
ストッパーである留め具はアルミ製にした。
ランパート・クレーター:この意味がなかなかしっくり頭に入ってきません。花びら状のクレーター。
二重ローブのクレーター:円形が二重になっているクレーター。まずひとつ円形があって、さらにひとまわり大きな円形が囲む状態でしょう。
名取佳純の性質・資質・性格として:記録魔です。いつどこでだれがなにをどうしてそうしてどうなったのかをていねいに記録します。たぶん、こういう人って、古代大和朝廷の時代からいたと思います。そういう人たちが文書を残してくれたおかげで、昔の歴史をふりかえることができます。
ドライアイス:火星の二酸化炭素の氷とする。
間隙率(かんげきりつ):すきま。火山灰の粒子の間のすきま。ちょっとむずかしくて、わたしにはわかりません。
昇華量:ドライアイスが蒸発することだと受け取りました。
マハブランカ:フィリピンの伝統的なスイーツ。ココナッツミルクでつくる。お豆腐みたいに見えます。
220ページまで読んできて、話がうまくいきすぎている感じがします。(このあと、波乱が訪れて、研究が中断します。冒頭の定時制高校退学者ふたりがコンピューター準備室に乗り込んできて、実験装置を破壊します。バカヤローたちです)
224ページ、読んでいて、脳の中で登場人物たちが生きている感覚があります。
実験装置を壊されて、メンバー同士の諍い(いさかい)があります。
おもりの小箱を手動で操作するのをやめて、電磁石を導入した。
藤竹の思考と苦悩が明かされます。
以前ノーベル賞を受賞したアメリカ合衆国在住日本人のお話と共通します。日本では、しがらみがあって、研究に専念できないのです。
読んでいて共感します。今年になって政治家の派閥が大きな問題になりましたが、それは、国会だけのことではなくて、日本中いたるところにある組織で行われていることです。
基本的に、大学ごとという学閥で、グループで集まって、師匠と弟子の関係ができて、自分たちの利益のために物事を決めていきます。師匠のポストを弟子が引き継いでいく手法です。派閥に入れない者は、能力があっても排除されます。自由度が低い。また、上司にあたる人のいうことに従わないと上司がもつ人事権で排除されます。
税金とか保険料とか、そんなお金という、『砂糖の山』に、みんなでアリのように群(むら)がって、権利を得て、関係者でお金を分け合うのです。そこに正義はありません。不合理、不条理、理不尽な世界が広がっています。
生き残るためには、パワハラやセクハラになどに耐えて、気持ちに折り合いをつけていくことが必要です。忍耐と順応です。それが現実です。
エリート:優秀とされる人。指導者の立場になる人。人口1臆2300万人の日本人から選ばれた人。
233ページに重い言葉があります。『エリートという連中は、真っ当なレールの上を歩んでこなかった人間が自分たちの足もとまでのし上がってきた途端、手のひらを返して蹴落としにかかるものだ……』
人の足をひっぱって、快感を味わいたいとう類(たぐい)の人間がいます。心の中に、鬼が住んでいる人がいます。
夜、9時15分に教室に集合して、みんなで話し合って、困難を克服します。心を割っての、本音での話し合いはだいじです。
藤竹はこどものころ、恐竜少年だった。科学に興味があった。
裕福な家のおぼっちゃまだった。
東京世田谷区の一戸建てに生まれて住み、中高一貫の私立高に通い、大学に入った。(本では東都大学ですが、現実では東京大学でしょう)。
父は大手ゼネコンの研究職、母は小学校教師をしていた。
そんな話から、学歴差別の話へとつながれていきます。藤竹さんが推す(おす)人物は、高等専門学校卒であったために、研究の実績をなきがものとされて不利益をこうむります。藤竹さんに推(お)された人物と柳田岳人のキャラクター(個性)が重なります。
教師という人たちは、人に点数をつけることが仕事の人たちです。
成績の点数結果で人間に上下のランクをつけます。
勉強ができる頭がいい人たちがつくる世界です。
大きな組織では、『本流(主流派)』とか、『支流(非主流派)』などと表現することもあります。
学歴とか成績で人間を色分けします。思いやりなどというものは、あるようでありません。利害関係でつながります。そういう世界があります。
ツーソン:メキシコとの国境に近い。藤竹のアメリカ合衆国での就労先。アリゾナ大学の研究員。藤竹は、上司にさからったので、日本の学術派閥から排除された。
ポスドク:期限付きの研究者
なんというか、想像力とか発明とかいう能力は、学歴とは関係ない時があるのです。そのことひとつについて、生まれながらのずば抜けた能力がある。だけどそのこと以外のほかのことは何もできないという人はいます。
ひととおり、なんでも平均点のことはできるけれど、ずばぬけた能力はないという人もいますが、それはそれで、会社や組織にとっては使い勝手がいい人であり、わたしは、すばらしい能力をもった人だと判断しています。
柳田岳人の言葉には説得力があります。
なにかをやるときに、具体的な理由とか理屈なんてないのです。
『やりたいからやる』のです。
アスペクト比:モニターなどの画像において、縦横の比率。1対2とか、3対とか。
解析(かいせき):細かく調べる。
実験では、想定外の結果が出ることがあるそうです。(なるほど)
深い意味合いがあります。
藤竹にとっては、定時制高校のメンバーを科学部に集めて研究をしたら、集まった人間たちによってどのような効果が生まれるかという実験をしているのです。目の前の火星をつくるという実験はそのための素材に過ぎないのです。
252ページに藤竹さんの言葉があります。『人間は、その気にさせられてこそ、遠くまで行ける』
『第七章 教室は宇宙をわたる』
最後の章まできました。ずいぶん長い文章になってしまいました。疲れました。
根気よく最後まで読んでいただいた方には感謝します。なにかの役(やく)に立てたら幸いです。
さあラストスパートです。(最後のがんばり)
小説の舞台は、JR京葉線海浜幕張駅南口から幕張メッセ国際会議場へと移ります。
自分も何度か訪れたことがある場所と地域です。
車を運転して、海浜幕張駅まで人を送ったこともあります。読んでいて、親しみを感じます。
初めて行ったのは、息子がまだ小学生のときで、4年生ぐらいだった記憶です。
ふたりで、大恐竜博展を観たあと、プロ野球の球場を横目に歩き、海岸辺りをぶらぶらしました。
その時は、もう二度とここへ来ることはないだろうと思いましたが、縁があって、その後何度も訪れました。
物語の中では、定時制高校のメンバーが発表会に参加します。『日本地球惑星科学連合大会』です。
この章では、柳田岳人(やなぎだ・たけと)が語り手です。彼のひとり語りが続きます。彼の気持ちが表現されます。
『火星重力下でランパート・クレーターを再現する』
研究メンバーは、東京都立東新宿高校定時制課程、柳田岳人、名取佳純、越川アンジェラ、長嶺省造です。発表者は、柳田岳人と名取佳純です。
真空チャンパー:内部を真空にするための容器。
標的:攻撃目標。ただ、こちらのお話の場合は、仮定した火星の地表とか地中のことをさすようです。
読んでいて思うのは、『オタクの世界』です。
オタク:こだわりがある対象をもち、対象物に時間やお金を集中する人。まあ、だれしもそういうところはあるでしょう。
物語ですので、当然ですが、メンバーたちの研究成果は表彰対象となります。
お笑いコンビティモンディ高岸宏行さんの決めゼリフ、『やればできる!』を思い出しました。
『見えるか、先生。獲ったぞ。(とったぞ)』
あの日あの時あの場所で、あの人に会わなければ、今の私はなかったということがあるし、会ったがために、ひどい目にあったということもあります。幸運な人に出会うことは良縁です。不運な人に出会わないためには工夫が必要です。
自分が人を見るときのものさしがあります。その行動を見て近づかいないように気をつけている人がいます。たばこを吸う人にいい人はいない。ながらスマホをする人にいい人はいない。ありがとうを言わない人にいい人はいない。お酒飲みも避けたほうがいい。長い間生きてきての教訓です。
奇人でもいいから善人と付き合う。悪人と思われる人とは距離を開ける。不利益に巻き込まれないようにする。
物語にある、『部屋』の文章の部分を読みながらそう思いました。部屋=人との出会いの空間です。
282ページ、夢のような(実現性のない)話ではあるという感想で読み終わりました。
『作者あとがき』
さきほど、実現性のない夢と書きましたが、実話のモデルがあるそうです。びっくりしました。
2017年の日本地球惑星科学連合で実際にあったお話をモデルにしてこの小説ができあがっているそうです。
大阪にある定時制高校がチャレンジして成功をおさめています。『重力可変装置で火星表層の水の流れを解析する』がタイトルでした。すごいなあ。立派です。
(その後 98ページに記事がある映画、『オデッセイ』を動画配信サービスで観ました)
物語は、火星にひとり残された男性植物学者宇宙飛行士をみんなで救出する物語になっています。
地球の科学者たちみんなが、国籍を問わずに協力し合って火星に取り残された男性を救い出します。
感動的です。
現実社会では、アメリカ合衆国と中国は仲が悪いようですが、映画の中では仲良しです。
最終的には、アメリカ合衆国が一番という映画です。かまいません。それがアメリカ合衆国の人の誇りであり心の支えなのでしょう。アメリカ合衆国らしい娯楽映画です。
オデッセイ:意味は、『長い冒険旅行』だそうです。映画の原題は、『The Martian(火星人)』です。
小説は、『火星の人 アンディ・ウィアー ハヤカワ文庫SF 1巻・2巻各上・下』です。
こちらの本の登場人物の名取佳純(なとりかすみ 16歳 中学不登校 リストカット女子)が、『火星の人』を読んで、へこんだ気持ちが助けられるわけですが、小説とかマンガを読むことで、励まされたり、心が救われたりすることってあります。音楽や映画でも同様です。ですから、人間にとって、芸術や娯楽は大事です。お笑いも大事です。