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2018年01月10日

(再読))ふなふな船橋 吉本ばなな

(再読))ふなふな船橋 吉本ばなな 朝日新聞出版

 つらい出だしです。父母離婚、父失踪、母再婚、自分は、母親の妹(叔母)とふたり暮らしをこれからする。主人公女子花さん15歳、選択肢のない年齢です。
 ふなっしーのぬいぐるみを母と思って抱いてくれは、なんと、ひどい母親です(母の分身として)。そんな母も病死します。なんにせよ、母との別れは淋しい。

 柔らかく読みやすい文章です。ここを目指したい。
 とかく、文芸小説は、読めない漢字や意味がわからない珍しい漢字が多用されています。だから売れない。

 本好きの人の話がたくさん出てきます。みなさん本を読んで、いまある自分の境遇の困難に耐えている。

(つづく)

 実母の妹と実父ができていたり、心中事故物件の分譲マンションで父親に殺された女児の霊が夢に出てきたりして、不気味ですが、生きることには前向きな主人公です。
 
 繊細です。生きていくのに苦しい。

 船橋市を讃える小説でもあります。

 そして、若い。

 漢字のひらがな表記(たとえば、けんめい)がやわらかで味わいがあっていい。

 生きていることの追求が「小説」の目的と思わせてくれる良作でした。

調べた言葉として、「チャネリング:自己睡眠に入り霊界と交信して情報を現実世界に流す」、「冥界:死後の世界」

良かった表現として、「館山の静かな海」、「(男が)性欲が強くて、ついていけなかった」、「本に支えられて大きくなった」、「もう人生にはなにも残っていない」、「だれのことも裁かない人」、「失ったものを別のもので埋めようとしない」、「もう男性はいらない」、「彼の支配下で生きてしまった」、「好かれたいから合わせていた」、「条件付きが嫌だった」、「ぺちゃんこになっていたわたしの心」、「自分を罰する」



2015年12月14日記事
ふなふな船橋 吉本ばなな 朝日新聞出版

 明るい内容ではありません。
 168ページまで読みました。
 実父は借金をつくって失踪、15歳の立石花は、実母と千葉県船橋市の駅前で立っています。雨が降っています。実母はこれから再婚します。花は継父と彼の連れ子(花からみて義理の妹)とは暮らしません。実母の妹奈美さんと彼女のマンションで二人暮らしを続けます。その後、実母は病死しています。
 立石花28歳、恋人との別れ話から始まります。

 船橋という街を讃える。その街にいる人が好きだから、ふなっしー(妖精として)が好きだから、そういう思いが込められた作品です。
 作家さんの文章です。わずか数ページで、長い歴史を深く表現してある文章です。読んでいると、「こども」がかわいそうになってきます。こどもは非力です。かよわい。
 花は、継父・義理妹、実母と自分の4人で暮らしたくないと言ったけれど、本当は、強引に暮らそうと言ってほしかった気持ちが伝わってきます。ほとんど天涯孤独みたいな身分です。
 孤独だから、本読みが好きになります。だから書店で働くようになりました。ひきこもりの親友幸子さん32歳がいます。千葉県佐倉市川村記念美術館で知り合いました。
 落ち着いた安心感のある文章が続きます。立石花を囲む状況はさらに悪化するのですが、幻想的です。気に入った表現として、「私はしばらくそおっと暮らした」。太宰治に対する愛着が見受けられます。太宰も昔船橋にいたらしい。ふなっしーは、先日読んだ本にいたコロボックル(アイヌ語の妖精。こびと)と合い通じます。

(つづく)

 ときおり登場するのが、「ロスコの絵」です。川村記念美術館にある壁画だそうです。深い色が特色とあります。小説にある人の経歴の深さと重ねてあります。
 異父・異母きょうだいの物語です。暮らしていると表面には出てこないのですが、そういう境遇の人って多いのでしょう。ふつうの家族関係で育つ人ばかりではありません。
 小説の登場人物たちは、それに悩みながらもそれを受け入れてひっそりと生活しています。女子にとっては、いざ結婚というようなときに、壁とまではいかなくても相手方親族がすんなり受け入れてくれるか不安になるでしょう。
 そんなところを恋愛にからめて、立石花28歳女性に決断を求めていきます。

 母は、恋愛のために子を捨てることがあります。
 花は、結婚のために、船橋を離れることはしませんでした。見事でした。   

Posted by 熊太郎 at 18:55Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年01月09日

お金をかけない「老後の楽しみ方」 保坂隆

お金をかけない「老後の楽しみ方」 保坂隆 PHP文庫

 コンビニの書架で手にしました。
 魅力的なタイトルです。571円と安価です。2013年1刷、17年39刷、よく売れています。
 長引く出版不況の中、文芸書は売れていませんが、実用書は売れていると思うのです。

 実用書は、必要な部分だけを拾い読みします。
 冒頭付近第一章の外国のお話は身近ではありませんので、割愛(かつあい。思い切って省略)するように飛ばし読みをしました。

 良かった点です。
 定年後こそ健康診断にお金を使う:体第一です。お金を惜しまない。
 おごらない。おごられない。:友情を長持ちさせる手法です。
 家族・親族への一番の贈り物:一緒に過ごす時間
 
 お金よりも命、お金よりも時間です。

 借金がないこと。
酒もたばこもやらない。車も手放す。これだけで、かなりのお金が残ります。
 毎月生活保護基準額以下で暮らしている人はいくらでもいます。
 身の丈に合った暮らしをしていく。
 粗衣粗食。原則として、外食はしない。
 ただし、数点豪華主義。めりはりをつけて支出する。
 
 シルバーパスを使うよりも、健康のために歩く。

 書中にもあるとおり、マスコミの「老後何千万円必要」記事に不安を抱かない。そんなに用意できないし、そんなに必要でもない。

 著者の定年前退職、アルバイト体験は意外でした。自由な「時間」が欲しかった。同感です。読んで良かった1冊です。親族や親しき友と過ごす時間が大事です。何か目的をもって過ごすのではなく、ただ、一緒にいて、歩いたり、ながめたり、飲んだり、食べたりするだけでいい。思い出づくりです。
 束縛されない何もしなくていい時間がたっぷりあることが最高の贅沢です。(ひきこもりが頭に浮かびましたが、それとは違う。これまでにさんざん働いてきたのです。)

 いつものように、内容に賛同する部分もあるし、そうでない部分もあります。自分のスタイルに取り込んでいける部分を取り込んでいきます。  

Posted by 熊太郎 at 18:40Comments(1)TrackBack(0)読書感想文

2018年01月08日

笑うお葬式 野沢直子

笑うお葬式 野沢直子 文藝春秋

 別の本を買ったときにその本にはさまれていたチラシをみて、おもしろそうな内容だなということで、書店で手に取りました。

 まだ、読み始めてまもなくの感想ですが、ろくでもないオヤジさんです。80歳過ぎで亡くなっていますが、ご家族のご苦労、お察しします。こんな家にはいられません。自立心が育ちます。ただ、人間界、デメリットがあれば、メリットもあります。プラスマイナス0(ゼロ)が、世の習わし(習慣、慣例)です。このオヤジさんだったからこそ、いまの作者の地位があるのです。
 オヤジさんは、自己顕示欲が強くて、自制心が弱い、爆発、自己破滅型です。あと経済感覚はなく、金銭管理ができない人でした。

 いろんな親がいますが、作者宅は普通ではありません。
 オヤジさんは、晩年はアル中です。生活不安定。
浮気性。すごい出だしです。「壮絶」という言葉がぴったりです。「破天荒」でもあります。書中にありますが、同居する家族は、正しくなくても受け入れるしかない。そういう時期がありました。
 オヤジさんの生い立ちを調べるといい。どうやったら、このような人格ができあがるのか。自分は何をやっても周囲は許してくれると甘えている。
 そんな部分を読んでいたら、自分はまだましだと、救われる思いがしました。

 文章が切れ目なく続くので読みづらいです。著者は、学校の成績は悪かったとありますが、本を出して売れるぐらいですから、学力は高い方でしょう。
 とくに後半は文章に力が入りすぎで、読み手は疲れます。

(つづく)

 芸能人は家庭に恵まれていない人が多い。だから芸能人になる。

 脳梗塞で倒れて、その後亡くなったお母さん。
健康第一です。「売れる」よりも「生きる」を優先して選択したい。

 バスをタイムマシンにたとえる記述があります。飛行機や、電車も同様にタイムマシンになれるときがあります。

 お金について考えさせられました。住宅が狭くても幸せ。広くても幸せ。気持ちの持ち方次第。そんな生き方について書いてあり、人生哲学っぽい。そのとおりですが、最低限のお金はあったほうがいい。作者はお金があったから、こんな素行の悪い親の世話ができた。
 借金取りは悪党みたいな部分は共感しかねます。お金を貸した人間、返してもらえない苦労があります。催促するのは当然です。催促するための時間や手間やめんどうさのことを借りた人間は考えてくれません。公共料金の滞納も感心しません。払うべきものを払わない。払えるのに払わない。最低です。

 亡くなったから書ける部分もあります。基本的には、子どもから見て、世話することに耐えられな父親です。離れて住んでいたから書ける部分もあります。

 読んでいて、NHKのルーツを探す番組みたいになってきました。作者も思い出の中で生きる年齢に達しました。

 自分のせいで、父が酒浸りになったと、自分を責めることはやめたほうがいい。81歳、十分長寿です。

 ひまわりのような母親の要因を知りたい。生い立ちに理由があるのでしょう。

 著者の長女についていえば、オヤジさん譲りの遺伝子を受け継いだのでしょう。

 良かった部分です。「手に職」、「(タイに)来て良かった」、「娘さんの戦闘シーン」、「子育ての苦労はやったことのある人しかわからない」、「大学という学歴にこだわらない趣旨」

 父親を描きつつ、自分自身を浮き彫りにしていく書き方、作品としてできあがっています。

調べたことです。「ターコイズブルー:緑がかった明るい青色」、「ポンデリング:ミスドのドーナッツ」、「ローラーコースター:ジェットコースターとは違うのだろうか。調べました。アメリカではローラーコースターというそうです」、「バイタリティー:活力、活気、生命力」  

Posted by 熊太郎 at 07:55Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年01月07日

2018年新年の展望(東山スカイタワーから)

2018年新年の展望(東山スカイタワーから)





去年は、鳥インフルエンザのための動物園閉園で災難でしたが、今年は快晴で順調なスタートを切りました。名古屋駅方向です。バックに雪をかぶった山並みが見えて、ビューティフルでした。  

Posted by 熊太郎 at 08:56Comments(0)TrackBack(0)名古屋市

2018年01月05日

おらおらでひとりいぐも 若竹千佐子

おらおらでひとりいぐも 若竹千佐子 河出書房新社

 タイトルの意味は、「おらは、おらで、ひとりで、生きていく!」という意思表示ととらえて、読み始めました。(読みながら、やがて、おらは、おらで、ひとりで逝くけれどもという、反対の意味に考えが変わりました。その後、どうも、ひとりで行くが妥当らしいとなりました。)
 東北弁がきつい。全部この調子だったら、理解に苦労する。(そんなことはありませんでした。されど、わかりにくい。)
 どうも、おらは、二人いるようです。自問自答です。

 一人暮らし高齢者おばあさんのお話です。
 一人称のようで、一人称ではない。「桃子さん(主人公のおばあさん)は…」
 
 休憩場所のない長文が続きます。読むのに少ししんどい。
 8ページのジャズセッションの表現はリズミカルで良かった。おもしろい。
 詩が挿入されているのですが、うーむ。詩の挿入をすると小説の構築が崩れる気がして、わたしはお勧めしません。
 
 桃子さんを支える人として、「ばっちゃ(亡くなった祖母)」
 娘直美さんとの関係にこだわりあり。(こだわらないほうが、幸福になれると読み手は思う。)
 
 44ページあたりからおもしろくなってきました。(されど、具体的な伸びはなかった。)
 なかなか理解することがむずかしい作品です。

 孤独と付き合う内容です。
 東京オリンピック(昭和30年代開催)がからめてあるのは、2年後のオリンピックを意識してあるのかも。

 今は一人暮らしとなった75歳日高桃子さんの過去の生活内容は苦しい。
 猛烈な孤独感が満載された作品です。
 夫が病死、ふたりのこどもは家を出てしまった。
 自分は何をしてきたのだろう。

 ところどころ難しいのか、感覚の違いなのか、意味がわからない部分があります。笑いでいっぱいという作品ではありません。
 ひとりぼっちの淋しさを笑ってごまかす。心の声は、桃子本人の声以外にも亡夫の声であったり、祖母の声であったりもする。

調べた文字です。「弄う:いらう。いじる。さわる。」、「身罷う:みまかう。死ぬ」、「深く肯んずる:がえんずる。承諾する。聞き入れる。」、「独りごつ:ひとりごとを言う」、「太母たいぼ:祖母。書中ではこどもを大切に育てた母親」、「贖罪しょくざい:キリスト教。罪への償い」、「仮託かたく:他の物事を借りて言い表す」、「燭光しょっこう:火の灯り」、「屹立きつりつ:高くそびえ立つ」、「睥睨へいげい:にらみつける」、なんだか、漢字検定みたいになってきました。「恣意的しいてき:論理的でなくその場しのぎで、きままに扱う」、「けんじゅう:宮澤賢治作品の登場人物」、「朋輩ほうばい:同僚」、「歓心:よろこび」、「十全:十分に整っている」、「何如なんじょ:どうであるか」

良かった表現などです。「吐き出ほきだす」、「長年の主婦という暮らし」、「桃子さんの心情を地球の地層で表す。地学のようです。」、「この人には、この人の時間が流れている」、「(心の動きを)柔毛突起」、「早く起きても何もすることがない」、「目的がある一日はいい」、「町も老いる」、「人の期待を生きる(ことが苦行)」、「全体でもあり部分でもある」、「食べらさる(さあ、食べるぞ!)」、「まぶる(見守る)」、「自分の心を友とする」

ちょっとわたしには、むずかしすぎました。  

Posted by 熊太郎 at 18:43Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年01月04日

くちなし 彩瀬まる

くちなし 彩瀬まる(あやせ・まる) 文藝春秋

 短編7本のうち、2本を読んだところで感想を書き始めます。
 正直、何が書いてあるのか理解できません。
 ほかの人には、訴えるものが伝わってくるのだろうか。
 それから、カバーの絵は、何の絵だろう。くちなしには見えない。

「くちなし」
 書き手は心の病ではなかろうかというような内容です。
 未来小説を目指したとは思えない。
 好き嫌いが別れる作品です。わたしには合わない。
 不倫の別れ話です。
 別れる条件として、相手の左腕をもらいます。
 無理。わからない。
 詩の世界なら、こういう素材の扱い方があると思いますが、小説には向かない。

「花虫」
 若い夫婦の出会いから始まります。
 彼の体に虫がいるのです。彼女の顔には紫色の花が咲いている。
 わけがわからない。
 葬儀と結婚式は似ているとあります。(似ていないと思う。)
 虫が人間を操る。
 「偽物」の意味をとれない。
 わからなかった単語として、「蠱惑的:こわくてき。惹きつけ惑わす」
 ちんぷんかんぷん。

「愛のスカート」
 美しい文章です。
 ようやく、少しだけ慣れました。
 美容師のミネさんが、鎌倉に住むトキワ社長(ミネと同い年)の髪をカットしに行きます。
 社長は人嫌いとい設定ですが、人嫌いの人は、社長職を、ふつうはしません。
 前作が美大生、本作も美術系の設定ですから、芸術関係会社ではそういうこともあるのでしょう。
 調べた言葉として、「スウェット:汗を吸い取りやすい生地で、裏がタオル地」、「シュシュ:ドーナツ状の装身具。髪飾り、腕輪」
 男を追いかける女のお話。これまでの2作が奇抜だったので、ここで気持ちが落ち着きました。

「けだものたち」
 化身。心が不安定な思春期、高校生ぐらいの時期の発想です。
 独特な世界です。
 うーむ。女性向きの小説なのでしょう。
 読み終えて、「わからない」

「薄布」
 読み終えたけれど、なんだかなあ。
 “北の子”は、北朝鮮の子としか発想できない。

「茄子とゴーヤ」
 作中によく蛇が出てきます。蛇と言えば、この作家さんというぐらいイメージが強くなります。
 この短編は秀逸です。出色の出来です。(目立って優れている。)
 本のタイトルは、「くちなし」ではなく、「茄子とゴーヤ」のほうがいい。
 それから、奇抜な設定・記述の作品数は減らして、この「茄子とゴーヤ」パターンの作品数を増加させたほうがいい。

 床屋と美容院の設定も多い。ひとり経営美容師は、だれに自分の髪をやってもらうのだろう。自分でやれるのかもしれない。

 結婚生活、子育て生活が重荷だったことがよく伝わってきました。

 一人称での語りがとてもいい。

「山の同窓会」
 気に入った表現として、「なんで産まないの?」
 かなり独特です。ついていけない。産卵=出産?
 ウシかヤギの話だろうか。
 途中で読むことに挫折しました。斜め読みをして終わりました。


〇収録全編をとおして、登場人物の名前が、下の名前だけの表記で、カタカナです。なんらかの効果と対策のためでしょう。ただ、それだと、世界が狭くなってしまう。もっとも、狭い世界を表現したい意図がありそうです。

調べた言葉として、「未開梱:みかいこん。荷物が開いてない」、「獰猛:どうもう」、「シニヨン:ポニーテールを丸くまとめたもの」

気に入った表現として、「熟年離婚」、「いつからかわたしは家を鳥かごでかこんでいた…」、「濡れた桃(果実単体)の肌」、「いい妻ごっこ」  

Posted by 熊太郎 at 17:00Comments(0)TrackBack(0)読書感想文

2018年01月02日

銀河鉄道の父 門井慶喜

銀河鉄道の父 門井慶喜 講談社

 宮澤賢治の父と賢治のうまくいかなかった親子関係を描いた作品との読む前情報です。
 まだ途中ですが、久しぶりに小説らしい小説を読んでいる気分です。奇抜な記述はありません。読みやすい。こうであってほしい。

 宮澤賢治に対する狭く一方的な父のやりとりかと予想しましたが、案外そうではありません。こどもたちが5人いて、父親宮澤政次郎さんの子育て小説のような流れです。
 愛情あるお父さんです。自分は受けたくても受けられなかった教育をこどもたちにほどこしてあげたい。本当に心優しいお父さんです。

 宮澤賢治が生まれた年に三陸沖大地震があった。(1896年6月15日明治29年)。内容は今から100年ぐらい前のお話です。

 男尊女卑の世界があります。女子に教育は不要、良妻賢母になればいい(男に仕えて男の世話をする。ただ現実には、女性が家族も商売も仕切っていたと思います。)
 質屋を継ぐのに教育は不要という厳しくて頑固なおじいさんも同居しています。

 質屋の生業(なりわい)に関する記述は興味深い。感心することばかりです。質屋は弱者を食い物にしているというような考えが街中にあります。人から恨まれる仕事です。対して父は、「援助」と割り切っています。社会奉仕とか仏教の心の流布に精力を注ぎます。身の安全を確保するためという目的もあったかもしれません。父は相当なお金もちです。家を継ぐ(質屋、古着屋)ために賢治の処遇でもめる。
 
 東北には2回行ったことがあります。花巻は、車で通過した地点です。雰囲気はわかるつもりです。岩手山は雲に隠れて見ることができませんでした。

 小学生の賢治が石に夢中なのは、先日読んだざんねんな偉人さんたちみたいなタイトルの本で知りました。研究者、学者タイプだったのでしょう。

 寮に入る。昔は、学ぶにも働くにも寮があった。

(つづく)

 408ページ中の263ページまできました。
 自分の中では、次回の直木賞はこの作品だといいなあという気持ちです。よく調べて、よく文章をこさえてあります。家族の温かみが伝わってくる良作です。

 宮澤賢治という人物の光の部分と陰の部分があります。主役は賢治ではなくお父さんの政次郎さんです。前半から中盤まで、そして最後まで、お父さんの気持ちがいっぱいです。息子を愛している。後継ぎとしての期待を裏切られても、資金援助はしていく。気が長くて寛容です。自分が行きたくても行けなかった学問の道に息子を導きます。
対して、息子は、親にお金をせびる。いつまでたっても自立できない。
父の影にいた賢治の姿が、徐々に見えてくる表現手法です。

 夢を追う賢治は困窮します。父や祖父の言いつけ通り、質屋を継いでいれば富豪のままでした。向いていなかった。商売人になれない資質で生まれてしまった。人生の途中経過で、そんな結論が出てしまいますが、創作で救われます。

 作家志望の人、出版界に対するエール(応援)がある作品です。

 ひらがな表記にほっとさせられることがあります。「あたらしい」、「みたされない」

 石好き賢治の記述からは、彼の作品群にあるカラフル色彩調子の文章が目に思い浮かびました。

 父子ともに偏屈で頑固です。そこにお金とか、病気が重なってきます。何が幸せかわかりません。

 だから、どうするという発想もないのですが、時系列形式は、平凡で、退屈な面がありました。ほんの少し、時間を前後させるといい感じがすると自分は思いました。

 イーハトヴが「岩手」を表すということを初めて知りました。なんとなく嬉しい。

 自宅で死ぬということについて考えさせられた作品でした。

 親は子に先立たれると悲しい。
 死んだら息子に会えるという言葉が重い。

 最後の一節の言葉は胸にズンときました。父親の深い愛情が伝わってきました。今年読んで良かった1冊です。

調べた単語などです。「えじこ:東北地方など寒い地方で使用される乳児を入れるかご」、「巴旦杏の木:はたんきょう。スモモの一種」、「渉猟しょうりょう:探し求める」、「首肯しゅこう:うなずく」、「尾籠びろう:不潔」、「頑是がんぜ:あどけない」、「欽慕きんぼ:敬い、慕う」、「チフス:高熱、発疹、伝染する」、「カリエス:骨が栄養障害となり、骨が腐る」、「国産化:なつかしい言葉でした」、「慧眼けいがん:智恵の眼」、「杣道そまみち:鷹狩り、山師の通る細くて険しい道」、「斯界しかい:この分野」、「即物的:物・金、優先の考え方」、「肋膜ろくまく:胸膜の炎症」、「懶い:ものうい。なんとなく心が晴れ晴れとしない」、「業復:ごうはら。非常に腹が立つこと」、「突兀とっこつ:高く突き出ているさま」、「依代よりしろ:神のよりつくもの」、「須臾しゅゆ:しばらくの間」、「異心:裏切り」、「詭弁きべん:いいくるめるためのごまかしの理論」、「弄するろうする:思うままにあやつる」、「帳合い:帳簿合わせ」、「寨主さいしゅ:国柱会とう宗教団体のトップ」、「よすが:よりどころ」、「惑溺:夢中になって、心を奪われる」、「含羞がんしゅう:はじらい」、「身の裡からの天寵:みのうちからのてんちょう。その状態のまま、天の恵み」、「黄水晶シトリン:黄色で柱形の水晶」、「哀吟:あいぎん。陰の悲しみ」、「永訣えいけつ:宮澤賢治の詩。永遠の別れ。死別」、「膂力りょりょく:筋肉の力。腕力」、「詞藻しそう:言葉のあや。文章や詩歌」、「喘鳴ぜんめい:呼吸器疾患患者の息の音。ぜーぜ。ひゅーひゅー」、「銅の盥(たらい)、杉の盥:なつかしい」、「宿痾しゅくあ:長い間治らない病気。持病」、「諧謔かいぎゃく:しゃれや冗談。ユーモア」

良かった表現です。「(生活というものは)つくるものだ」、「父でありすぎる」、」、「命がそこにあるのは、あたりまえじゃない」、「客は善人ではない」、「作家になったら(妹から兄への勧めとして)」、「(生計費が)政次郎(父)ひとりの肩に乗っている」、「金は出さん」、「原稿用紙1000枚の作品」、「文学形式」、「お父さんになりたかった(賢治が父を指して父のようになりたかった。)」、「自分は父になれない。」、「(宮澤賢治の)遊び、いたずら」、「父親になるということは弱い人間になるということ」  

Posted by 熊太郎 at 06:46Comments(0)TrackBack(0)読書感想文