2023年07月29日

5番レーン ウン・ソホル作

5番レーン ウン・ソホル作 ノ・インギョン絵 すんみ訳 すずき出版

 小学生高学年向けの韓国児童文学で、小学校の水泳部員のお話です。

カン・ナル:主人公女子。漢江小学校(はんがんしょうがっこう。漢江(はんがん)は韓国ソウルを流れる川です)日本とは制度が違うのか13歳で小学生です。(あとのページで、韓国は数え年で、生まれたときが1歳で年齢計算が始まるそうです)
 水泳部のエース。水泳部員6年生でグループチャットをつくっている。カン・ナルは6年2組です。6年3組のチ・スンナムと付き合っているらしい。(あとでわかるのですが、チ・スンナムとは、幼稚園のときからの友だち。恋愛関係にはない)
 カン・ナルの水泳人生は8年。5歳からYMCAの子どもスポーツ団で水泳を始めた。水泳部長の男子部員チ・スンナムも同時期にその場にいた。
 カン・ナルは、競泳での勝負に負ける『いいわけ』が多い。
 わたしなりに表現すると『やりくり』という言葉と同意味です。
 自分にとって都合のいいように物事を解釈するのが『やりくり』です。
 カン・ナルは、タイムを0.1秒縮めるために学校のプールを百往復する。

カン・ボドゥル:カン・ナルの姉でカン・ナルより2歳年上。中学2年生だろうか。水泳をしているが、中学になって、競泳から飛込(とびこみ)に種目変更した。タイムが伸びず身長も伸びなかった。両親はスポーツ選手。飛び込み台は10mが一番高い。この本の中では5mでの飛び込み台シーンから始まります。
 作品中に『競泳』と『飛込』の比較があるようです。『競泳』は他人との闘いで、『飛込』は自分との闘いと読み取れます。高いところから落ちながら体を回したりねじったりするわけですから、恐怖なのですが、演技している本人には快感があるようです。
 とくに水中に入ったあとの泡の光景がいいらしい。ボドゥルは、3位以内のメダルにはこだわりません。自分のめざす目標の演技に近づければいい。ボドゥルは『克服する』喜びを知っています。

テム・サラン:女子水泳部員

パク・セチャン:男子水泳部員。背泳ぎ担当

シン・ドンヒ:女子水泳部員。平泳ぎ担当

チ・スンナム:水泳部部長。わたしは最初おとなだと思っていましたが違っていました。6年生の水泳部員の中での部長です。そして、わたしは最初女子だと思っていましたが違っていました。男子児童で、主人公のカン・ナルと付き合っているといううわさがあります。(でも、たんなる幼ななじみの友だちです)

キム・チョヒ:他校(プルン小学校)の優秀な水泳アスリート(競技者)女子。カン・ナルよりも腕が長く、泳ぎも速い。主人公のカン・ナルが5番レーン、ライバルのキム・チョヒが4番レーンです。(4番は予選タイムで一番速い人のレーン)キム・チョヒの水着が光るそうです。(なにかを隠している?)

チョン・テヤン:転校生男子。6年2組。背が高い。水泳部に入って、水泳をやりたい気持ちが強い。カン・ナルの隣の席に座る。
 テヤンは『大洋』と書く。広い海に向かって進め。小学3年生から近所のスポーツセンターで水泳を習っていた。けっこう速そうです。
 チョン・テヤンの見た目はかっこいいそうです。それから、腕が長い。バタフライ担当。
 将来科学者になりたい夢がある。人類は月の土地に今まで12人が立った。アメリカ合衆国のアポロ計画でした。

イ・ジフン:児童。同学年でしょう。

ウ・ジミン:児童。クラスメート女子。チョン・テヤンに片思いをしている。

ジンミョン:アイドルグループ『ブラックホール』のメンバー

ライカ:犬の名前

 ざーっとページをめくって250ページにある『訳者あとがき』から読んでみる。
 韓国の学校では、水泳を習わないそうです。(でもこの物語では、漢江小学校の水泳部員です。訳者の学校では水泳の授業がなかったということだろうか。ちょっとよくわかりません)
 大学受験や就職活動における競争社会のことが書いてあります。(人生は、そこまでよりも、そこからのほうがはるかに永い(ながい))
 物語の主題として(テーマ)『勝ち負けにこだわらない』『なぜ水泳をしているのか(自分は何をしたいのか)を考える』ということが提示されています。

 次に読んだのが、245ページにある選評です。選評:選ばれた作品の講評。第21回文学トンネ児童文学賞大賞を受賞した作品です。(トンネは出版社)
 ここまで読んできて、先日テレビ番組アメトークを思い出しました。『スイミングクラブ芸人』というものでした。こどものころスイミングクラブに通っていた芸人さん男女が楽しい思い出話を話してくれて盛り上がりました。

 タイトル『5番レーン』というは、プールのコースが5つ(いつつ)あるということだろうか、それとも、5番目のレーンということだろうか。(5番目のレーンということでした。ちなみに、4番レーンに立つ人の予選タイムが良くて、一番速い人が泳ぐレーンのようです)
 
 さて、最初から読み始めます。
 10ページの挿絵(さしえ。物語のシーン(場面))がきれいです。透き通った(すきとおった)色合いです。
 50m自由形の競争です。韓国の全国ジュニア体育大会です。
 キム・チョヒ26秒75、カン・ナル29秒33(かなり遅い)4位
 
 16ページまで読んできて、韓国における競争社会の窮屈さ(きゅうくつさ)が伝わってきました。
 
 『(体育館のどっかにプールがあるはずだから』(韓国の小学校のプールは屋内プールなのだろうか。競技用として、たぶんそうなのでしょう)

 6年生の教室は5階にある。
 
 水泳部がある小学校とない小学校がある。
 チョン・テヤンの母親が息子に中学校に行く準備をしなければならないと言います。私立中学校を受験するのだろうか。それから、中学校には部活はないそうです。韓国の中学校には部活がないのか。

 いいなと思った表現です。
 『……体育会系では何よりも重要なのは顔ではなく体だ。』
 
 キム・チョヒの水着があやしい:キラキラ輝いているそうです。反則があるというような指摘ですが、意味がわかりません。反則とか不正というとドーピング(薬物使用)を思い出します。「特殊な水着」と表現されています。

 競泳のことが書いてあります。1人の勝者と、その他おおぜいの引き立て役が構図です。
 
 小学6年生の競泳タイムとして、50mを37秒以内で泳ぐのは早いほうなのでしょう。(速い子は30秒を切るようです)

 ロールモデル:お手本にする人。チョン・テヤンの場合は「ブルース・バナー」とあります。アメリカ合衆国のコミックマンガに出てくる超人ハルク(天才的な物理学者ロバート・ブルース・バナー)のことだそうです。

 仁川文鶴競技場:インチョンムンハツきょうぎじょう。仁川空港には行ったことがあります。その近くだろうか。(グーグルマップで見ました。ちょっと離れていました。競技場は立派な施設のようです)

(つづく)

 カン・ナルは、学校で、0時間目(なぜ1時間目から始まらないのか? 授業開始前という意味か?)、7時間目、8時間目に水泳がある。

 外国人名は性別がわからないので、読むのにちょっと苦労があります。この物語の場合は韓国です。

 上弦の月(じょうげんのつき):弓の弦が左手にある。月の右側の部分が見える。下弦は反対

 体育中学校:韓国の制度。トップアスリートの養成機関(選ばれた運動競技者)世界的レベルで韓国代表をめざす。

 大統領杯全国水泳大会が、8月28日に開催される。

 メドレーリレー:4人。各自100m。背泳ぎ:パク・セチャン-平泳ぎ:シン・ドンヒ-バタフライ:チョン・テヤン-自由形(泳法はなんでもいいがクロールが一番速いのでクロールで泳ぐ選手がほとんどなのでしょう):チ・スンナム

 読んでいてのおとなとしての感想ですが、なんというか、小学校高学年生のこどものことです。
 おとなのように働いて税金を納めているわけでもありません。
 まだまだこどもの世界にいる人たちです。

 136ページ付近まできて、読んでいても楽しくありません。

(つづく)

 どろぼうの話です。
 キム・チョヒの水着になにかしかけがあって、それが不正であるような、あるいは、魔法の水着であるような説明は不可解で理解できません。水着は水着です。その水着をカン・ナルが出来心とはいえ更衣場所(こういばしょ。着替え)で盗むという行為も理解できません。もしそうならば、カン・ナルには物を盗む癖、盗癖(とうへき)があります。生まれもって、脳みその中にある癖です。治療が必要です。会社のお金や他人の現金を見ると、自分のポケットに入れたくなる、あるいは入れてしまう人がいます。万引き盗癖みたいなものです。心の病気です。それとも、カン・ナルが水泳のことで悩んで、そこまで自分の心を自分で追い詰めたと受け止めればいいのだろうか。

 今時の文章です。
 『ライン』や『プラスメッセージ』のような、チャットグループ(おしゃべりグループ)のようなやりとりがあります。

 小学6年生同士のお付き合いです。(男女交際)
 お互いにお互いのどういうところが良かったのかがわかりません。
 水泳という共通のものがあって、気楽に話ができる。あとは、お互いの見た目か。(外見)
 だけど、主人公のカン・ナルは、水着どろぼうです。

 付き合いを学校で秘密にするということもよく理解できません。まだ小学6年生です。どちらかといえば、これから思春期に向かうにつれて男女はお互いに話をしなくなります。
中学入学から卒業まで一度も女子と話をしないまま卒業する男子というのはいくらかいます。自分は男なので女子のことはわかりませんが、女子にも逆パターンでいると思います。

 女子をめぐって、ふたりの男子が対立するのは、女子を自分の所有物とみなす意識があるからではなかろうか。人ではなく、モノという意識で女性をみるのは、女性差別です。
 
 『競泳』よりも『飛込(とびこみ)』のほうが、格が下と読み取れる文脈があります。
 それは問題です。
 それぞれ別の種目です。上も下もありません。

 トッポギ:餅(もち)を使用した韓国の料理。棒状の餅を甘辛く(あまからく)煮込んである。
 
 なんというか、学校をやめるのは問題がありますが、水泳をやめるのは、問題はありません。

 韓国のこととして、年齢による上下関係がきついようです。妹よりも姉のほうが偉いというようなシーンがあります。年功序列です。
 韓国では『勝つ』意識が強い。息苦しさを感じる社会です。
 
 ランチジャー:保温型入れ物のお弁当

 トゥトゥデー:男女が付き合い始めて22日目。韓国での記念日
 
 210ページ、チョン・テヤンからの手紙は心やさしい内容です。『ぼくはいつもナルの味方だよ……』
 
 蚕室水泳場(チャムシルすいえいじょう):首都ソウルのオリンピック公園あたりにあるのでしょう。ソウルオリンピック(1988年。昭和63年開催 対抗馬が名古屋市であったことを、もうだれも話題にすることもありません)

 物語を読み終えましたが、よくわからない話でした。
 主人公のカン・ナルは、水泳競技大会に出場してはいけません。
 だって、ライバルの水着を更衣室で盗んだのですから。カン・ナルには窃盗(せっとう。ぬすみ)の罪があります。刑事罰の対象になります。
 222ページにカン・ナル自身の言葉として『試合に出る資格がありません』とあります。(そのとおりです。少なくとも被害者であるキム・チョヒの許しがない限り試合に出場する資格がありません)
 そしてなんと状況は複雑なのですが、キム・チョヒはカン・ナルの出場を認めます。認めたうえで、水泳の競争でカン・ナルを叩く(たたく)のです。カン・ナルに勝つのです。みせしめです。カン・ナルに恥(はじ)をかかせます。
 いろいろややこしい話があります。カン・ナルは謝罪だけではすみません。罰(ばつ)を受けねばなりません。

 韓国は、競争主義社会だということがわかります。社会が競争を容認しているようすがあります。
 生きづらそうです。
 五番レーンをめざすのです。
 五番以外のレーンでの生き方もあります。  

Posted by 熊太郎 at 06:29Comments(0)TrackBack(0)読書感想文