2023年07月06日

とうさんまいご 五味太郎

とうさんまいご 五味太郎(ごみ・たろう) しかけ絵本 偕成社

 しかけ絵本なので、楽しみにして読んでみましたが、いまいちいでした。(いまいち:期待はずれ)
 もう一回読んでみます。

 茶色の中折れ帽(なかおれぼう。ぐるっとまわりにつば(プリム。ひさし)がある)をかぶってスーツとネクタイの父親です。鼻の下に立派なヒゲがあります。背広とネクタイの仕事着姿です。どちらかといえば、とうさんというよりもおじいさんの雰囲気です。
 その父親の息子でしょう。五歳ぐらいに見えます。絵本の表紙で、百貨店にある上りエスカレーターで、上階にのぼってきたふたりがいます。
 ちびっこである息子が迷子になるのではなく、父親のほうが迷子になることが、この絵本を楽しむポイントなのでしょう。1983年(昭和58年)初版の絵本です。
 
 父親のほうが迷子になるという設定はちょっと考えづらく、不自然でした。
 親というものは、こどものことが心配です。こどもから目を離すことはそうそうありません。
 とはいえ、ふらりといなくなる、おとうさんもいるのでしょう。おとうさんの役割として失格です。
 『いつのまにか とうさん まいご……(こどもの声です)』
 絵では、タイプライターが販売されています。昭和58年ころは百貨店でタイプライターが売られていました。わたしもその頃、仕事で和文タイプライターを毎日打っていました。
 
 サラリーマンの背広・ネクタイ姿ですから、百貨店内では、そういう人が多いので、少年はおとうさんを見つけきれません。
 先日観た日曜日朝の番組『早く起きた朝は』で、出演者の磯野貴理子さんが、フランスのパリに行って来た時のことを熱弁されていたシーンを思い出しました。
 パリには、日本人サラリーマンのような地味なかっこうをした職業人はいない。おしゃれな人が多い。日本だと昼休憩中に、首からネームプレートをぶら下げた会社員がたくさん歩いているけれど、パリでは、お昼休みに首から名札をぶらさげて歩いている会社員はひとりもいない。パリでそういう光景を見て驚いたというようなお話でした。パリは素敵だと感心したそうです。(なるほど。日本にいると感覚がマヒして、変なことでもあたりまえのことと思い込んでしまうことがあります)

 しかけ絵本の中の少年は、百貨店の中にある各売り場をまわりながら父親を探し回ります。
 ページにしかけがしてあって、めくってもめくっても父親に出会えません。
 からだの一部が父親に似ているのですが、父親ではありません。
 ありゃりゃーー ネクタイと見えたものはネクタイではないもので、男性と思えたのに確認したら女性でした。
 トイレで立ちションの後ろ姿でもわからない。
 少年は父親をさがしているのに、もういっぽうの父親は、わが子である少年をさがしていない。むしろ、少年から逃げているのではないか。ネグレクト(育児放棄)ですな。
 少年はまだ無力で非力だから、そんな親でも頼るしかない。ちょっとせつない読後感が残る絵本の読書でした。  

Posted by 熊太郎 at 06:58Comments(0)TrackBack(0)読書感想文