2019年06月18日

かみさまにあいたい 当原珠樹

かみさまにあいたい 当原珠樹(とうはら・たまき) 2019課題図書 ポプラ社

 小学3年生、3年1組に属するふたりの少年の物語です。ひとりは、主人公の藤本雄一、3か月前におばあちゃんを亡くしています。おばあちゃんのお墓参りをしているときに出てきたのが、小松崎竜也(小柄でとがったあご、よく動く目)、学習障害がありそうな、教室ではじっとしていることができない少年です。
 場所は田舎町のようで、小高い丘の上に神社があったり、自然が豊かだけれど、人をあまり見かけない場所があったりします。
 88ページまで読んだところで、感想を書き始めます。
 お墓参りのシーンから始まりました。最近は、お墓参りをする人が減ったような気がします。また、書中に出てくるシーンとして、野球遊びをする少年の数も減りました。全般的に家の中でゲームとか塾通いなのでしょう。
 小松崎竜也が、地面にうつぶせになって、神社のおさいせん箱に入れそこなって箱から落ちたおさいせんの小銭を拾おうとします。お金は、働いて手に入れましょう。それから、そのあとに出てくる自動販売機の下をまさぐって小銭をさがすのもやめましょう。みっともないです。

 小松崎竜也は、河川敷に穴を掘って、神さまとの交信を試みます。
 小松崎竜也が思う神さまは女性の姿をしています。

 「友情」の本だろうか。

 両親共働きらしく亡くなった祖母に育てられてきたのが藤本雄一、それから、両親離婚で、母親に引き取られて、片親母子家庭で育つのが小松崎竜也です。
 3年前の12月20日小松崎竜也の誕生日近くだった頃、父親が家を出て行ったそうです。
 小松崎竜也の誕生日に母親は夜勤で(看護師です)、竜也は自宅のこたつの中で眠ってしまい、金縛りにあいます。そのとき、女性の姿をした神さまに会った。神さまは、小松崎竜也に言いました。「いつもそばにいてあげたい」
 小松崎竜也が目が覚めるとこたつの上にカステラがありました。女の人は、ひとちぼっちの小松崎竜也をはげましにきてくれたにちがいない。小松崎竜也は今いる場所が不満で、もう天国へ行きたい。つまり、もう死んでもいいと思っています。そういうことを自暴自棄といいます。悲しい話です。ちょっと湿っぽい話です。

 おばあちゃんと一緒に柔道場へ通ったことがあるのが藤本雄一です。
 藤本勇一は思うところあって、「強くなりたい」、「強くて、まっすぐな男になりたい」

 かみさまへのお願いとして、
 藤本雄一は、「強くなれますように」
 小松崎竜也は、「かみさまにあえますように」
 ふたつのお願いは、これから先、どうなるのだろう。
 
 かくれ家は、古い一戸建てで大きい。レンガの門、鉄の柵は赤くさびている。かくれ家は、小さな手づくりの小屋を予想していたので、ちょっとびっくり。関係者以外立ち入り禁止の住宅です。

 鹿は神の使い。

(つづく)

 かくれ家で、頭がい骨を発見(のちに人体模型と判明)
 かくれ家で、ドクター佐藤ナンシーさん(父親がドイツ人)と初対面となりました。
 藤本勇一は足を骨折して、ドクター佐藤先生と病院で再会します。ふたりの間に縁がありました。かみさまはいるのかいないのかはよくわかりませんが、人間界には縁(えん)というものがあることは事実だと実感があります。会う人とは、こんなところでと思うところでも、何度も会います。旅先の観光地で、こんなところでという時刻に偶然会ったりもします。
 
 一般的に小学3年生の頃は、新しい世界がいくらでも目の前に広がっています。書中では、冒険好きなふたりの少年です。なんども冒険を続けていくと、最後には歳をとってしまい、からだも思うように動かせなくなって、やがて冒険することに飽きてしまいます。

 小松崎竜也は、あまり自分のめんどうをみてくれない母親を疑います。(おれさ、母ちゃんにきらわれているのかな)
 それは、違います。生活をしていくためにはまず、生活費のお金をかせがなければなりません。お金をかせいでから、こどもと遊びます。優先順位があります。お金がなければ、親子が別れなければならないこともあります。

 本の内容は、子どもの頃から入院生活を送っているこどもとか、認知症のおばあさんとか、ごほうびが健康には良くないコーラとか、小学生の死への願望とか、それに対する自殺防止の呼びかけとか、話題がけっこう複雑で、もりだくさんです。あと、先生はどうしてハーフなんだろうか(かくれ家が洋風の建物だからかも)

 11月に入っての最初の土曜日です。
 
 カステラのつくり方:卵と粉とはちみつ。型に入れて焼く。

 バーベキューがはやったのは、バブル経済の頃なので、ドクター佐藤ナンシーは、その頃に子ども時代を過ごしたのかも。
 
 遺品を燃やして、煙を上げて、空の上にいる亡き人に贈る。生きている者は、品物を記憶にとどめる。書中で『永久保存』とあります。

 小松崎竜也がもう一度会いたいのは、自分のことを世話してくれる優しいお母さん。藤本勇一が誓うのは、ウソをついてだましていた亡きおばあちゃんへのつぐない。

 調べた言葉などとして、「おさいせん:神仏へのお願いがかなったときのお礼。自分は神社仏閣を維持管理するための費用ととらえています」、「(学校給食の)きなこあげパン:甘くておいしいパン。コッペパンを揚げて、きな粉と砂糖をつける」、「ローズマリーの木:地中海沿岸原産の常緑低木。香りあり。せっけん、香水のもと」、「びんぼう草:ハルジオン。多年草。白い花」

 印象に残った部分などの趣旨として、「人がしぬときはあっさり(即死だと本人も死の自覚がありません)」、「死んだ人は空の上にいる」、「雪は空に住む人からのプレゼント」

 主題は、「感謝」なのか。  

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2019年06月17日

星の旅人 小前亮

星の旅人 小前亮(こまえ・りょう) 2019課題図書 小峰書店

 江戸時代に、日本列島の測量を行った「伊能忠敬(いのう・ただたか)」という人物の伝記です。
 わたしは、以前、伊能忠敬は若い頃に日本を巡ったと思っていましたが、50代半ばから全国の測量を始めたと聞いて驚いたことがあります。その当時の人間の寿命は、50代で終わりだったろうと思っていたので、伊能忠敬の体力と精神力に人間の能力を超えたものを感じました。
 物語は、1800年6月11日から始まりました。数え56歳の伊能忠敬が全国制覇を目指して江戸を出発します。
 桃太郎の始まりのようです。わたしは、伊能忠敬はひとりで全国を回ったものと思っていました。この物語では、本人を含めて合計6人です。次男の伊能秀蔵15歳を含む弟子3人、従者2人、そして伊能忠敬です。架空の連れとして、上林平次(うえばやし・へいじ)12歳ぐらいが入ります。彼の父親上林彦左衛門は幕府の天文方で働く堀田仁助(ほった・にすけ)に同行する測量士で、蝦夷地(えぞち、北海道)で測量業務従事中に事故で消息不明になっています。事故で死んだという話もありますが確かではありません。この物語は、12歳の平次が父親を見つける旅でもあります。
 測量、天文の師匠が、「高橋至時(たかはし・よしとき)」さん。
 地球が丸いということが日本で判明したのは、明治時代以降だと勘違いしていたことがあります。日本人は、江戸時代には、地球が丸いことを知っていたと本で読みました。この本でも、織田信長がキリスト教宣教師に地球儀をプレゼントされて、地球が丸いことを知っていたと解説があります。日本人の学力もたいしたものだなと思うのです。西洋人に負けていません。
 誤解はほかにもあります。わたしは、伊能忠敬は、自分の興味で日本を回って測量をしたと思っていました。「仕事」として回られたのです。仕事なら、できます。毎日、同じようなことを繰り返して報酬をもらって生活していかなければならないのが仕事です。
 解説部分の記述で、マゼランの地球一周が、1519年~1522年。地球が丸いことの証明。最初の場所に戻ってくる。
 
(つづく)

 一日十里40km歩く。

 この本は、科学の本です。天文学と測量です。また、生き方の選び方の本でもあります。努力、根気、探求心。それでいて、仕事を楽しむという気持ちもあります。

 江戸時代の時刻は、まるで「サマータイム制」です。日の長い短いで、夜明けや日暮れの時点が変化します。また、時間の長さが変わります。
 
 天動説、地動説のお話が出ます。最初は、自分たちを中心に考えますが、自分たちは中心ではないと気づきます。自己中心からの脱却がおとなになることのようにも思えます。

 江戸時代は、住宅建築のために江戸とその周辺の木がなくなってしまったというのは意外でした。

 江戸時代最大の飢饉として、「天明の飢饉1782年~87年。5年間は長い。
 
 伊能忠敬は事業家です。先見の明がありました。自然災害への備えが十分で、見習いたい。
 50歳までは家業のことや一族のことを中心に考えて働く生活をして、事業の前線から退いてから自分の好きな学問に専念したところも見習いたい。義務を果たしてから権利を行使する。それから、病弱であったということは意外でした。老齢でも病気でも、日本中を歩くことができた。熱意のたまものでしょう。健康第一、健康管理が徹底していたのでしょう。
 1800年7月1日に青森県津軽の最北端に到着しています。
 測量は海岸沿いに歩く。
 
 身分を超えた文化人のつきあいがあった。1804年~1830年。身分差別のない平和で豊かな江戸時代です。天明の飢饉のあとに幸福な時が訪れています。苦労があれば、楽もあります。

 ねつ造は学問の世界ではやってはいけないこと。されど、たまにやる人が出ます。心してやめましょう。

 オランダ国は、いまは身近ではないけれど、江戸時代は身近だった。アンネ・フランクはオランダ育ち。親日家が多い国。あまり多くのことは知りません。

 北海道は、ロシア船が多い。もうこの頃から北方領土問題が発生するきざしがあったのでしょう。

 1669年、シャクシャインの戦い。アイヌと和人の戦い。

 1854年。日米和親条約締結。1855年、日露和親条約。ロシアとの国境制定。

 必要性の低い負担となる道具をわざと置き忘れる。(大方位盤)

 歩測だけでは、正確な地図は描けないので、天体観測で緯度を確定させる。

 飲酒は、禁止でいいと思います。夜飲むと、星の観測ができません。

 間宮林蔵21歳が登場しました。樺太を樺太を探検した人という記憶があります。この本では、間宮海峡は冬に凍る。歩いてロシアに渡れると書いてあります。
 測量士たちは、何度も同じところを歩いて地図をつくっています。地図は道しるべです。ありがたい。測量士たちは、美しい日本の自然を満喫したに違いありません。日本国内は、歩いて回ることができるということがわかります。
 人間は、生きていて、まずは仕事として、コツコツやれば、偉業を成し遂げられることがわかります。知恵と工夫、根気と努力、そして、記録、読み書き計算です。記録を残せないと、偉業も消去されてしまいます。

 上林平次の父親上林彦左衛門は事故死してはおらず、遠くロシアの地で生きて働いています。父親は、自らの思いを手紙にしたためて、アイヌに暗号を託します。てんもんかたの人が来たらわたせ。「神の魚より壬(みずのえ)に二里二十町(にりにじゅっちょう)【神の魚から北北西に約十キロメートルという意味】」
 神の魚の場所がすぐにはわかりません。
 
 話ははずれますが、書中にロシアのことが多く書かれているので、読みながら「北方領土」のことを考えてしまいました。どっちかのものに決めなければならないのか。共有とか、共存ではだめなのか。とかく、陣地取りは、人間界ではもめる元なのですが。

 「神の魚」とは、「シャケ」のこと。アイヌ語で、「神」は「カムイ」、魚は「チェプ」、カムイチェプが「シャケ」、厚岸湾に(あっけしわん)、ピラッカムイというでかい魚が出た。ピラッカムイは、伝説の魚でやがて崖になった。バラサン岬と呼ぶ。

 シーボルトのことが書いてあります。長崎オランダ商館の医師でした。
 
 いい仕事をして、実績を残すには、「手間を惜しんではいけない」と学びました。めんどくさいはだめなんです。

 半世紀ぐらい前は、サラリーマンの役職者の定年は55歳でした。その頃は、60代で亡くなる人も多くて、60代ぐらいで、もう人生は終わり、静かに死ぬのを待つだけみたいな雰囲気がありました。その頃の孫は、祖父母に長生きしてねと言ったものでした。今では、みんな長生きになったので、孫のその言葉はあまり聞かなくなりました。伊能忠敬の本業リタイア後の日本全国測量という偉業をみると、定年後に違う分野で活躍できるという勇気をもらえます。書中にあるように、多くの人たちに希望を与えてくれるでしょう。

 調べた言葉などとして、「数え年:年齢計算をするときに、生まれた時が1歳から始める。以降、正月を迎えるたびに1歳プラスする。昔の日本の年齢のカウントのしかた」、「人事をつくす:人としてできる限りのことを実行する」、「肺病:肺結核」、「如才のない(じょさいのない):あいそがいい。形式だけのものではない」、「入り鉄砲に出女(いりでっぽうにでおんな):江戸街道関所における規制。江戸への鉄砲、江戸から地方への人質としての大名の家族関係者である妻女の転出」、「梵天持ち:ぼんてんもち。(説明記述あり。280ページに絵あり)棒の先に何枚もの細長い紙をつるした器具。測量の目印にする」、「羅針盤:らしんばん。方位磁石」、「(書中にあり)GPSグローバル・ポジショニング・システム、全地球測位システム。複数の人工衛星から出る電波の時間から距離を測り位置を測定する」

 気に入った言葉などとして、「値(あたい)。あと、緯度とか経度とか」、「(忠敬の昔の名前で三治郎は)よく勉強しました」、「蝦夷地の測量は自然との戦い。ただし、勝ち負けを競うのではなく、自然を受け入れる度量が必要になる。厳しいのは、湿地」、「測量は誤差との戦い。伊能隊は特別な測量はしていない。ていねいな測量を地道に続けた」  

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2019年06月16日

百年の孤独 ガブリエル・ガルシア=マルケス

百年の孤独 ガブリエル・ガルシア=マルケス 新潮社

 長い読書になりそうです。また、一度読んだだけでは内容を理解できそうもない雰囲気がただよっています。とりあえず、ざーっと一度読んでみます。
 舞台はラテンアメリカコロンビアあたりのイメージでいってみます。時代は、1700年代ぐらいの想像で読んでみます。
 アルカディオとウルスラという夫婦がいます。ジプシーのメルキアデスという人物が登場します。
 マコンド村という場所を開拓していくようです。
 1967年出版。
 
(つづく)

 「イグアナ」が生まれるというのは、近親婚によって、お尻にブタのしっぽみたいなものが付いた赤ちゃんが生まれるということを指していると考えました。
 
(つづく)

 よくわからないので、もう一度最初から読み直すことにしました。30ページ付近から引き返します。
 ネットで他の人の書評を見たら、ノーベル賞受賞作で、名作、おもしろいと評価が高い。されど、読んでも何が書いてあるのかわかりません。

 「氷」を「ダイヤモンド」と勘違いする一族最初の父親である登場人物です。
 軍鶏(しゃも)は飼わない家畜。
 未開地を切り開くにあたり、方位磁石は貴重な道具。方角を知る。
 「マコンド」という土地は、海に囲まれている。これまで、岬、半島だと思われていた。地図に誤りあり。

 中心人物のひとりであったジプシーのメルキアデスがシンガポールで熱病で病死しました。

(つづく)

 時代は1600年代、場所は南米コロンビアあたりという感覚で読んでいます。
 決闘で死んだプルデシオ・アギラルという男性の幽霊が出てくるのがおもしろい。

 軽い性描写が多く、ポルノみたいです。エロ行為の表現です。

 同じ名前の人物が複数出てくるのでややこしい。

 タイトル「百年の孤独」って、なんのことだろう。

 みんなが、伝染性があるような「不眠症」にかかって、物忘れがひどくなる。

 春を売る娘が現れて、春を買う男がいて、男は「孤独」を感じている。

(つづく)

 読み続けていますが、あいかわらず、何が書いてあるのかわかりません。地名として、「マコンド」、「マナウレ」、マコンドから20キロ離れて「ネールランディア」、人物としては、最古の女性配偶者として、「ウルスラ・イグアラン」、その息子アウレリャノ大佐、その配偶者レメディオス(モスコテ)、兄ホセ・アルカディオと2兄アウレフャノ大佐をもつ女性「アマランタ」、同名の人物が他にも出てきているようで、時代背景が移動しているような雰囲気がただよいます。
 三世代の歴史が、「百年の孤独」なのだろうかという思い出読み続けています。
 「豚のしっぽ」が、近親婚によって生まれた奇形児で、叔母と甥の関係が記されています。

 アウレリャノ・ブエンディアは、胸に銃弾を撃ち込んでも死なない男です。

 弟アウレリャノ・セグンド(アウレリャノを名乗るものは内向的だが頭がいい)、兄ホセ・アルカディオ・セグンド、アマランタの孫の代のお話になりました。ひとりの女ペトラ・コテスをめぐって、兄弟との交渉があります。祖母のウルスラは100歳を超えてもなお生存しています。現実味のない創作話です。

(つづく)
 この物語を、4月22日から読み始めて、6月8日に読み終わりました。正直、文字を読んだだけで、何が書いてあったのかよくわかりません。
 マコンドという土地でのアルカディオという一族の物語で、お話を引っ張るのが、ウルスラ、アマランタ、メメという女性たちで、ウルスラは145歳まで生きていて、同じ名前が世代に渡って存在していて、混乱します。男性たちが、ホセ・アルカディオ、アウレリャノ、「セグンド」は、二代目の「セカンド」だろうか。

 印象に残った言葉などとして、「地球はオレンジのように丸い」、「われわれにとって、銃殺は自然死と変わらない」、「ゴキブリ退治に有効な手段は太陽のまぶしい光」

 調べた言葉などとして、「人煙まれ:じんえん。人が住んでいない。かまどの煙がない」、「索具:さくぐ。船具」、「放恣:ほうし。勝手気ままでだらしない」、「騾馬:らば。ロバとウマの交配種」、「金剛鸚哥:こんごういんこ。インコ」、「香具師:やし。縁日で見世物を見せる。興行、物売り」、「大黄:だいおう。薬用植物。消炎、止血」、「しかつめらしい:まじめくさっていて、かたぐるしい」、「闖入者:ちんにゅうしゃ。突然入って着た者」、「グアバ:熱帯性低木の果実。お茶にする」、「蚯蚓:読みは、きゅういん、みみず。環形動物の総称」、「破瓜:はか。女性の数え16歳」、「ライプチッヒ大学:ドイツにある大学」、「棕櫚:しゅろ。ヤシの木」、「常倉:じょうそう。官舎の倉」、「宥和的:ゆうわてき。相手の要求をある程度尊重して平和的解決を図る」、「アステカ族:メキシコで1428-1521年に栄えた国家」、「従卒:じゅうそつ。身の回りの世話をする兵卒」、「蛆虫:うじむし」、「白貂:シロテン。オコジョ、イタチ科」、「谺でくりかえす:こだま。やまびこ」、「アナキスト:無政府主義者」、「イベリア半島:スペインやポルトガルがある半島」、「カタルニャ:スペイン北東部の自治州」、「アマゾン原産のカメリアの大木:ツバキ科の樹木」、「やくたいもないこと:役に立たない」、「周縁的:しゅうえんてき。もののまわり」、「謂い:いい。思い、意味」  

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2019年06月15日

長いお別れ 映画館

邦画 長いお別れ 映画館

 本は読んだことがあります。喜劇でとても面白かった記憶が残っていますが、内容はもう思い出せません。本を読んだ当時に、いつか映画になるといいなと願っていましたら、映画になったので、観てきました。
 「長いお別れ」は、認知症の人の発病から亡くなるまでの期間が長いことをさします。山崎努さんが演じる昇平さんは、認知症を70歳で発病して、77歳をすぎて亡くなっています。本では10年間ぐらいの闘病期間でした。
 役者さんたちは熱演でした。全力投球です。まじめな映画です。映画館内でもっと笑いが出ていいと思うのですが、観客は年配層ばかりで、あまりにも身近で、明日は我が身の雰囲気もあるので、わりとしんとしており、ときおり涙する人たちのすすり泣きが響いていました。
 結婚で今話題になっている蒼井優さんのシーン時間が長いので、昇平さんの次女役をしている蒼井優さんの映画でもありますが、認知症になった山崎努さんもその奥さんの松原智恵子さんも好演されています。蒼井優さんは山里亮太さんとの結婚の記者会見とは違って、映画での演技は、とことんのめりこむものでした。
 劇中、ぼけた山崎さんがさかんに「帰る、帰る」というのですが、自分なりに、彼は、昔のことを思い出して、昔の若かった自分たち夫婦と、まだ、小さかった娘たち姉妹のいた、あの場所へ帰りたいのだと途中でわかりました。でも、そこへはもう帰れないのです。今、いくら探しても、その場所は地球上のどこにもないのです。(だから、今この瞬間を大切に過ごすのです)
 最後は、誕生日を祝うシーンで終わってもよかった。みんなで頭にかぶる三角帽子がよかった。
 医師が親族に延命治療の希望を聞くシーンは、後半部まできてのもう時間がない時刻でのものであり最後にけっこう重い課題を提示してしまいました。金髪の孫のセリフが良かった。「生きているかぎり生きていてほしい」最後は「優しさ」で包むのが映画です。映画はそれでいいと思いますが、現実は厳しい。本人自身がちゃんとしているうちに延命治療を望むのか望まないのか、自分でしっかり一筆書いておいてほしい。
 長女の壊れた家庭も含めて、家族を考える映画にしあがっています。
 山崎努さんが言った「くりまるな」だったっかの言葉の意味を考えています。「くよくよするな。なんとかなる」という意味かなという自分なりの結論です。
 大きな河川敷と大きな鉄橋を渡る鉄道シーンでは、映画男はつらいよで、葛飾柴又江戸川河川敷あたりにいる寅さんの笑顔が目に浮かびました。

 冒頭の遊園地のシーンが、いったん離れるのはどうなのかなあ。本を読むときは、最初の短編で完結してしまうので、映像とは違う流れになります。興味がある人は、本も読んでみてください。笑えます。

 万引きのシーンはどうなのかなあ。店側の対応として、そこまでやるかなあと疑問をもちました。相手の自尊心を傷つけるまで叩くのは行き過ぎです。気持ちのいいものではありません。超えてはいけない一線があります。



長いお別れ 中島京子(なかじま・きょうこ) 文藝春秋 2017年8月23日読書感想文の記事から

 老衰、認知症、お別れの話かと思って手にした本です。
 短編8本がおさめられています。

「全地球測位システム」
 アルツハイマー型認知症の元中学校長男性とネグレクト(育児放棄)気味の姉妹とのふれあいです。
 文章運びがうまい。ベテランの味があります。
 いいなあ。

「私の心はサンフランシスコに」
 おもしろすぎる。今年読んでよかった1冊です。
 おもしろ、おかしい。
 妻72歳、夫はぼけている。

「おうちへ帰ろう」
 むずかしい漢字を読めるぼけ老人の祖父と、漢字が読めない十代男子孫とのやりとりがとてもおかしい。

「フレンズ」
 落語のようです。おもしろすぎる。
 いいセリフの趣旨として、「結婚とは、あきらめることです」
 話の運びがうまい。

「つながらないものたち」
 しあわせってなんだろう。どういう状態がしあわせというのだろう。
 それは、「標準」であることではないようで、実は、「標準」であることのような気がする。
 なんども、「家に帰る」というセリフが出てきます。自宅にいるのに、「家に帰る」というセリフを言われます。その「家」は、もう、この世には無い、過去のものとなった「(昔の雰囲気がある)自宅」なのでしょう。帰る家はもうこの世のどこにもないのです。泣けてくるような話です。

「入れ歯をめぐる冒険」
 アルツハイマー型認知症を患って9年が経過しました。夫婦ふたりともが認知になったら、家の中はどうなるのだろう。

「うつぶせ」
 読めなかった漢字として、「俄か:にわかに」、「喚く:わめく」
 短編の内容はまあ、めちゃくちゃです。介護の様子で、不謹慎ですが、(おもしろい)

「QOL」
 アメリカにいる孫たちのことから導入するパターンがいい。
 距離感があっていい。

 ケアマネジャーという職業のたいへんさ、重要さ、高い位置がわかります。なかなかできない。志が必要です。
 
 QOLとは、人間らしく生きることらしい。
 主人公は、自分で決めたわけではないけれど、こう言います。
 「もう、いい」
 長い10年間でした。   

2019年06月14日

出川哲朗の充電させてもらえませんか?DVD 横浜-伊勢神宮

出川哲朗の充電させてもらえませんか?DVD上巻・下巻 横浜-伊勢神宮 2017年(平成29年)4月

 旅猿のDVDシリーズをもうすぐ見終わるので、こちらへきました。
 テレビでちらちら見たことはありますが、ちゃんと見たことはない番組です。
 海がきれいです。
 6日かけて、電動バイクで伊勢神宮まで行きます。
 本人が言うとおり、「人情に頼る充電旅」です。すごいなあ。だれにでもできることではありません。各地で人気者です。たいしたものです。
 出発後立ち寄ったお菓子屋を営む85歳のおじさんがおもしろい。
 番組が長続きしますようにと、各地の神社をお参りしていくことが、ひとつのルートになっています。それから、宿泊交渉をする旅館とかホテルとか。夜遅くに、予約なしの飛び込みで、びっくりしました。
 電動バイクのバッテリーが0になるまで粘るのは、番組の企画なのでしょうが、当人たちにとってはしんどいことでしょう。
 修善寺温泉61℃の源泉は熱い。
 駿河湾フェリーから見える富士山が絶景でした。
 ゲストの具志堅用高さんが、おもしろかった。
 スイカのヘルメット「スイカメット」が奇妙でした。わかりやすい目印なのでしょう。
 行ったことがある場所も多く、親しみを感じました。見慣れた風景もあります。
 社会科の地理とか歴史の勉強みたい。
 ラーメン、「でーかわ」がよかった。お互いに海苔屋さんというのもよかった。縁でしょう。
 むかし、あんなに嫌われていた出川さんが、ここまで出世したのは、大変だったことでしょう。
 番組は、旅猿方式だと感じました。
 松阪牛のお料理がおいしそう。
 番組を見ながら、「人間って、何なのだろう(さまざまな生き方がある)」と考えさせられました。  

2019年06月13日

この川の向こうに君がいる 濱野京子

この川の向こうに君がいる 濱野京子 2019課題図書 理論社

 東日本大震災の被災者を扱った小説のようです。「この川」というのは、とりあえず、東京の荒川から始まります。列車が鉄橋を渡るシーンです。川の向こうとこちらとは異なる世界、そう予想をつけて読み始め、38ページまで読んだところで感想を書き始めます。

 登場人物は、都内にある男女共学私立緑野学園高校の生徒です。
 主人公:岩井梨乃(いわい・りの)高校1年生 吹奏楽部に入部する。希望だったクラリネットをあきらめて、アルトサックス担当。埼玉県戸田市在住。母は信販会社事務パート。たぶん東日本大震災で地震・津波の被災者。あとで、津波によって当時14歳の兄を亡くしたことが判明する。時系列では、災害から3年半ぐらいが経過しています。父親はサラリーマンのようです。被災後に転校した中学の同級生女子に会いたくないという意思が伝わってきます。被災者いじめに遭ったのだろうか。少し前まで、川を見たくなかったという思いあり。家は経済的には苦しいようす。されど、私学へ進学したいということには進学するんだというこだわりあり。
 高校に入って、主人公の最初の友だちが、赤崎陶子(あかさき・とうこ)クラリネット担当。
 すらりとした美少女が、横手美湖(よこて・みこ)秋田県田沢湖にちなんだ名前。38ページ付近までで、まだ、部活には入部していません。
 向原妃津留(むかいはら・ひづる)ぽっちゃり丸顔女子。クラリネット担当。兄と弟あり。
 崎山帆波 弦バス担当、長身 全日本(吹奏楽)コンテスト出場の常連中学校にいた。
 小関真彩(おぜき・まあや)フルートなれど、指のけがで、中2に演奏を中断
 紺野遼 小柄。トロンボーン担当。福島県原発被災者
 長尾純平 吹奏楽未経験者。トランペット担当
 吹奏楽部長高校3年生:若宮詩織 テナーサックス担当
 吹奏楽部顧問:松山美耶(まつやま・みや)40代ふくよかな音楽教師
 吹奏楽部員は、2年と3年が15人、1年が9人、合計24人、そのうち女子が、15人。
 
 東日本大震災の被災関係者が三人と思われる100ページすぎを読んでいる今です。物語は、なにか、秘密をかかえている。もういちど確認してみます。
 主人公:岩井梨乃(いわい・りの) 宮城県出身。母方祖父母は山形県
 すらっとした美少女の卓球部員:横手美湖(よこて・みこ)母親が秋田県田沢湖近くの出身
 紺野遼(こんの・りょう)小柄、トロンボーン担当、福島県、原子力発電所と関係あり。付き合っている彼女が、渡辺佑香(わたなべ・ゆうか、福島県会津にいる。結婚の約束をしている。紺野遼の中学の同窓生が沢田千亜紀で、千亜紀と同じ学校の吹奏楽部員が、主人公岩井梨乃が会うことを避けたい人物として宮沢紅美みやざわ・くみとつながっている)

 出てくる人が多いので、メモをしながら読まないと、だれが、だれなのかわからなくなります。

 主人公岩井梨乃は、宮沢紅美を嫌っています。宮沢紅美の地震・津波被害者に対する善意が岩井梨乃にとっては、重荷です。被災者を受け入れる側の態度はどうすればいいのか。被災者である岩井梨乃は、自分を特別扱いしないでほしい。普通に接してほしい。それが被災者の気持ちですと言っています。人が生活していれば、誰にも苦労はつきものです。だから、特別扱いをしないでほしい。「絆(きずな)」という言葉が好きになれない。人から、かわいそうと思われたくない。
 
 読んでいるとなんだか、さみしくなってくるお話です。

 津波の影響で、同じ川のむこうとこちらで、助かった命と失われた命があります。家族を失ったほうの気持ちは深く苦しい。助かったほうの人間も負い目を感じてしまう。生き残った者にも苦しみがあります。

 先日、震災・津波被害の3月11日の夜は、満天の星空だったというテレビ番組を観ました。被災地の電気は失われて真っ暗でしたが、星空はものすごくきれいだったそうです。星が亡くなった人の魂に見えたでしょう。

 「被災者」という身分を背負いながら生活してきた。自分が被災者であることを人に知られたくない。

 川の反対側(対岸)からこちらの岸を見ている人間もいる。

 埼玉県戸田市の漕艇場からは、オリンピック競技が思い浮かびます。

 子どもの立場で、震災体験を話す。

 気持ちの面での隔たり(へだたり)を「川」ともいう。

 東日本大震災の発生が、2011年3月11日(平成23年)14時46分18秒発生。マグニチュード9.0、最大震度7(震度7が最高の階級です)
 被災者のことをわかろうとしても同じ体験をすることはできないのでわかりません。苦しいということだけが理解できます。
 3年半後、2014年9月27日の土曜日に御岳山が噴火したとあります。平成時代は大規模自然災害が多かった。この小説の設定は、震災が発生してから3年後の設定で書いてあります。
 被災地に住んでいて、2月14日のバレンタインデーに男子に好きだと告白をした。3月11日に地震が起きた。3月14日のホワイトデーはうやむやになった。
 
 被災者を励ます小説です。内容はクリスマスコンサートでクライマックスを迎えるようです。
 言葉数が少し足りないような気がします。
 
 個人情報の漏えいとして、被災体験情報の漏出がありますが、女子の世界の難しさが伝わってきます。

 苦しさの原因として、「義務を果たすために、何者かに、言わされていた」

 本で、文字の色が黒ではなくグレーなのは、「死」の途中を意味するとうけとりました。グレー、まだ浮かばれない魂があります。

 調べた言葉などとして、「(女子の制服でスカートが)ボックスプリーツ:箱ヒダ」、「信販会社;代金立替払いの業務を行う会社」、「アンサンブル:合奏」、「一枚リードの木管楽器:リードは、薄い片(へん)。クラリネット、サクソフォーン」、「ロングトーン:ひとつの音を長くのばす」、「ネックだけで音を出す:最初の息がとおる部分」、「明澄(めいちょう):くもりなく澄みきっていること」、「黒いオルフェ:映画音楽」、「保科洋作【復興】」、「買いかぶり:実際以上に高く評価する」、「辛辣:しんらつ。きわめて手厳しい」、「パート練習のときのチューナー:音を合わせる道具」、「音に色気がある:?音色?」、「スカイプ:インターネット通話、ビデオ電話」、「ベクトル:向きと大きさ」、「タクト:拍子、指揮棒」

 印象的だった表現などの趣旨として、「(高校入学後まもなくの状態として)最初、だれもがよそよそしく、ばらばらな感じ」、「荒川の土手で楽器を演奏する(タイトルから考えると、この川のむこうにいるきみに向かって演奏するのだろうか)」、「寂しさにもいろんな色がある」、「未来を奪われてたまるか」、「川の向こうは紺野遼が住んでいる東京」、「被災者という役を強いられる(しいられる強制される)」、「おれは、東京の中学で差別された」、「攻撃的防御」、「水害のニュース映像を観ていると津波を思い出す」、「二人だけに流れる空気がある」、「補償がからむとややこしくなる」、「原発事故の放射能の影響が心配でこどもをつくることをためらう」、「(兄が被災死して、きょうだいの数は)いまは、ひとりです」、「時間を戻すことはできない」、「(川から東北新幹線をながめながら)あの新幹線は東北へ行く」」、「縁があった」、「音楽ばか、トロンボーンばか」

 主人公は、長い人生の中の通過点にいて、人生という川の流れの途中でもあります。学生時代はまだその始まりの時期で、まだまだ、これから先が、とほうもなく長い。だから、くよくよしなくていい。  

Posted by 熊太郎 at 06:21Comments(0)TrackBack(0)読書感想文